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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】ゴム被覆装置およびゴム被覆方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/24 20060101AFI20230306BHJP
   B29D 30/38 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
B29C43/24
B29D30/38
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019040606
(22)【出願日】2019-03-06
(65)【公開番号】P2020142435
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(74)【代理人】
【識別番号】100099933
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 敏
(72)【発明者】
【氏名】木村 俊太
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-065318(JP,A)
【文献】特開2017-039209(JP,A)
【文献】特開平08-011506(JP,A)
【文献】特開2016-215465(JP,A)
【文献】特開2010-188553(JP,A)
【文献】特開平09-019964(JP,A)
【文献】特開2017-065926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/00-43/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
引き揃えられた複数本のコードに未加硫ゴムを被覆するゴム被覆装置であって、
複数の加温ロールにより前記コードを乾燥させる乾燥手段と、
未加硫ゴムを前記コードに圧着し、前記未加硫ゴムを被覆するゴム被覆手段と、
前記ゴム被覆手段により形成されたゴム被覆コードを複数の冷却ロールにより冷却する冷却手段とを備え、
各々の前記加温ロールと前記コードとを離間させる第1の離間手段、および/または、各々の前記冷却ロールと前記ゴム被覆コードとを離間させる第2の離間手段を備えており、
前記第1の離間手段が、前記コードの搬送路から離隔した複数の第1の離間用ロールを備え、
前記乾燥手段が所定の時間を超えて停止した時、前記第1の離間用ロールが、前記加温ロールの外周面と前記コードとの間に移動して、前記コードを前記加温ロールの外周面から離間させるように構成されていることを特徴とするゴム被覆装置。
【請求項2】
引き揃えられた複数本のコードに未加硫ゴムを被覆するゴム被覆装置であって、
複数の加温ロールにより前記コードを乾燥させる乾燥手段と、
未加硫ゴムを前記コードに圧着し、前記未加硫ゴムを被覆するゴム被覆手段と、
前記ゴム被覆手段により形成されたゴム被覆コードを複数の冷却ロールにより冷却する冷却手段とを備え、
各々の前記加温ロールと前記コードとを離間させる第1の離間手段、および/または、各々の前記冷却ロールと前記ゴム被覆コードとを離間させる第2の離間手段を備えており、
前記第2の離間手段が、前記ゴム被覆コードの搬送路から離隔した複数の第2の離間用ロールを備え、
前記冷却手段が所定の時間を超えて停止した時、前記第2の離間用ロールが、前記冷却ロールの外周面と前記ゴム被覆コードとの間に移動して、前記ゴム被覆コードを前記冷却ロールの外周面から離間させるように構成されていることを特徴とするゴム被覆装置。
【請求項3】
前記加温ロールが、径1~2mのロールであると共に、表面温度を50~150℃に制御する制御手段を備えており、
前記第1の離間用ロールの径が、50~100mmであることを特徴とする請求項1に記載のゴム被覆装置。
【請求項4】
前記冷却ロールが、径1~2mのロールであると共に、表面温度を10~50℃に制御する制御手段を備えており、
前記第2の離間用ロールの径が、50~100mmであることを特徴とする請求項2に記載のゴム被覆装置。
【請求項5】
前記第1の離間用ロールが、1個の前記加温ロールに対して、3個以上配置されていることを特徴とする請求項1に記載のゴム被覆装置。
【請求項6】
前記第2の離間用ロールが、1個の前記冷却ロールに対して、3個以上配置されていることを特徴とする請求項2に記載のゴム被覆装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載のゴム被覆装置を用いて、引き揃えられた複数本のコードに未加硫ゴムを被覆するゴム被覆方法であって、
複数の加温ロールにより前記コードを乾燥させる乾燥工程と、
未加硫ゴムを前記コードに圧着し、前記未加硫ゴムを被覆するゴム被覆工程と、
前記ゴム被覆工程により形成されたゴム被覆コードを複数の冷却ロールにより冷却する冷却工程とを有し、
前記乾燥工程において、前記加温ロールが所定の時間を超えて停止した時、前記コードを前記加温ロールから離間させるコード離間工程、
前記冷却工程において、前記冷却ロールが所定の時間を超えて停止した時、前記ゴム被覆コードを前記冷却ロールから離間させるゴム被覆コード離間工程の、少なくともいずれかの工程を備えていることを特徴とするゴム被覆方法。
【請求項8】
前記引き揃えられた複数本のコードの幅が、1.4~1.5mmであり、
前記乾燥工程において、前記加温ロールの温度を50~150℃に制御し、
前記冷却工程において、前記冷却ロールの温度を10~50℃に制御することを特徴とする請求項に記載のゴム被覆方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤの製造工程において、コードにゴムを被覆するゴム被覆装置およびゴム被覆方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの製造工程においては、複数本のコードが引き揃えられたディップ反の両面に、カレンダーロールにて所定の厚さに圧延した未加硫ゴムシートを被覆することにより、トップ反などのゴム被覆コードを生産するトッピング工程がある(特許文献1参照)。
【0003】
図5は、このトッピング工程において使用されるゴム被覆装置の一例を説明する模式図である。図5に示すように、このゴム被覆装置は、ゴム被覆手段12(カレンダーロール21、22、23、24)の上流側には、ディップ反38の水分を加温ロール30により加熱して除去する乾燥手段14が、また、下流側には、冷却ロール32により冷却することでトップ反36の表面の粘着力を適切に維持する冷却手段16が配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平3-65318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゴム被覆コードの製造時において、ディップ反38の銘柄が変更される際、あるいは、トップ反36のゴム種が変更される際などの場合には、ゴム被覆装置が一時停止される。その場合、ディップ反38やトップ反36は、加温ロール30や冷却ロール32の表面と局所的に接触した状態で保持されることになるため、以下のような問題が発生する恐れがある。
【0006】
即ち、ディップ反38が加温ロール30の表面に長時間接触していると、ディップ反38が長時間加熱されてコードの熱収縮を招いてしまう。このように熱収縮が発生したディップ反が使用されたタイヤは、品質の低下を招くため、スクラップとして廃棄せざるを得ない。
【0007】
一方、トップ反36が冷却ロール32の表面に長時間接触していると、トップ反36が長時間冷却されて、未加硫ゴムシート内に含まれる硫黄が表面に析出し、粘着力の低下を招いてしまう。このように粘着力が低下したトップ反が使用されたタイヤは、品質の低下を招くため、スクラップとして廃棄せざるを得ない。
【0008】
そこで、本発明は、コードやゴムの種類を変更するためにゴム被覆装置が長時間停止した場合でも、熱によるコードの熱収縮や、冷却によるゴム内の硫黄の析出によるゴムの粘着力の大きな低下が生じ難いゴム被覆装置およびゴム被覆方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題の解決について鋭意検討を行い、以下に記載する発明により上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
請求項1に記載の発明は、
引き揃えられた複数本のコードに未加硫ゴムを被覆するゴム被覆装置であって、
複数の加温ロールにより前記コードを乾燥させる乾燥手段と、
未加硫ゴムを前記コードに圧着し、前記未加硫ゴムを被覆するゴム被覆手段と、
前記ゴム被覆手段により形成されたゴム被覆コードを複数の冷却ロールにより冷却する冷却手段とを備え、
各々の前記加温ロールと前記コードとを離間させる第1の離間手段、および/または、各々の前記冷却ロールと前記ゴム被覆コードとを離間させる第2の離間手段を備えており、
前記第1の離間手段が、前記コードの搬送路から離隔した複数の第1の離間用ロールを備え、
前記乾燥手段が所定の時間を超えて停止した時、前記第1の離間用ロールが、前記加温ロールの外周面と前記コードとの間に移動して、前記コードを前記加温ロールの外周面から離間させるように構成されていることを特徴とするゴム被覆装置である。
【0012】
請求項に記載の発明は、
引き揃えられた複数本のコードに未加硫ゴムを被覆するゴム被覆装置であって、
複数の加温ロールにより前記コードを乾燥させる乾燥手段と、
未加硫ゴムを前記コードに圧着し、前記未加硫ゴムを被覆するゴム被覆手段と、
前記ゴム被覆手段により形成されたゴム被覆コードを複数の冷却ロールにより冷却する冷却手段とを備え、
各々の前記加温ロールと前記コードとを離間させる第1の離間手段、および/または、各々の前記冷却ロールと前記ゴム被覆コードとを離間させる第2の離間手段を備えており、
前記第2の離間手段が、前記ゴム被覆コードの搬送路から離隔した複数の第2の離間用ロールを備え、
前記冷却手段が所定の時間を超えて停止した時、前記第2の離間用ロールが、前記冷却ロールの外周面と前記ゴム被覆コードとの間に移動して、前記ゴム被覆コードを前記冷却ロールの外周面から離間させるように構成されていることを特徴とするゴム被覆装置である。
【0013】
請求項に記載の発明は、
前記加温ロールが、径1~2mのロールであると共に、表面温度を50~150℃に制御する制御手段を備えており、
前記第1の離間用ロールの径が、50~100mmであることを特徴とする請求項1に記載のゴム被覆装置である。
【0014】
請求項に記載の発明は、
前記冷却ロールが、径1~2mのロールであると共に、表面温度を10~50℃に制御する制御手段を備えており、
前記第2の離間用ロールの径が、50~100mmであることを特徴とする請求項2に記載のゴム被覆装置である。
【0015】
請求項に記載の発明は、
前記第1の離間用ロールが、1個の前記加温ロールに対して、3個以上配置されていることを特徴とする請求項1に記載のゴム被覆装置である。
【0016】
請求項に記載の発明は、
前記第2の離間用ロールが、1個の前記冷却ロールに対して、3個以上配置されていることを特徴とする請求項2に記載のゴム被覆装置である。
【0017】
請求項に記載の発明は、
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載のゴム被覆装置を用いて、引き揃えられた複数本のコードに未加硫ゴムを被覆するゴム被覆方法であって、
複数の加温ロールにより前記コードを乾燥させる乾燥工程と、
未加硫ゴムを前記コードに圧着し、前記未加硫ゴムを被覆するゴム被覆工程と、
前記ゴム被覆工程により形成されたゴム被覆コードを複数の冷却ロールにより冷却する冷却工程とを有し、
前記乾燥工程において、前記加温ロールが所定の時間を超えて停止した時、前記コードを前記加温ロールから離間させるコード離間工程、
前記冷却工程において、前記冷却ロールが所定の時間を超えて停止した時、前記ゴム被覆コードを前記冷却ロールから離間させるゴム被覆コード離間工程の、少なくともいずれかの工程を備えていることを特徴とするゴム被覆方法である。
【0018】
請求項に記載の発明は、
前記引き揃えられた複数本のコードの幅が、1.4~1.5mmであり、
前記乾燥工程において、前記加温ロールの温度を50~150℃に制御し、
前記冷却工程において、前記冷却ロールの温度を10~50℃に制御することを特徴とする請求項に記載のゴム被覆方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、コードやゴムの種類を変更するためにゴム被覆装置が長時間停止した場合でも、熱によるコードの熱収縮や、冷却によるゴム内の硫黄の析出によるゴムの粘着力の大きな低下が生じ難いゴム被覆装置およびゴム被覆方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係るゴム被覆装置の一実施の形態の第1の離間手段の一例を示す一部拡大模式図であり、(a)は基本の位置を示し、(b)は移動後の位置を示す。
図2】本発明に係るゴム被覆装置の一実施の形態の第2の離間手段の一例を示す一部拡大模式図であり、(a)は基本の位置を示し、(b)は移動後の位置を示す。
図3】第1の離間手段の移動動作を示す説明図である。
図4】第2の離間手段の移動動作を示す説明図である。
図5】ゴム被覆装置の一例を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。
【0022】
1.本発明のゴム被覆装置の概要
本実施の形態に係るゴム被覆装置は、基本的に、複数の加温ロールによりコードを乾燥させる乾燥手段と、未加硫ゴムをコードに圧着して被覆するゴム被覆手段と、複数の冷却ロールによりゴム被覆コードを冷却する冷却手段とを有する点においては、図5に示した従来のゴム被覆装置と同様である。しかし、本実施の形態においてはコードを加温ロールから離間させる第1の離間手段、およびゴム被覆コードを冷却ロールから離間させる第2の離間手段を備えている点において、従来と異なっている。
【0023】
そして、第1の離間手段および第2の離間手段を備えることによりコードが長時間加温ロールに接触することによる熱収縮や、ゴム被覆コードが長時間冷却ロールに接触することによる粘着力の低下を抑制することができる。
【0024】
2.ゴム被覆装置の基本的構成(従来のゴム被覆装置と共通する構成)
最初に、本実施の形態のゴム被覆装置の基本的構成、即ち、従来のゴム被覆装置と共通する構成について、図5を用いて説明する。
【0025】
図5に示すように、本実施の形態のゴム被覆装置も、ゴム被覆手段12と乾燥手段14と冷却手段16とを備えている。
【0026】
ゴム被覆手段12は、1組のカレンダーロール21、22と、別の1組のカレンダーロール23、24とを備えている。
【0027】
カレンダーロール21、22間に供給された混練りされた未加硫ゴムG1は、回転するカレンダーロール21、22間を通過することにより、薄く帯状に連続した未加硫ゴムシート37aに形成される。そして未加硫ゴムシート37aは、カレンダーロール22の外周面に沿って移送される。
【0028】
同様に、カレンダーロール23、24間に供給された混練りされた未加硫ゴムG2は、回転するカレンダーロール23、24間を通過することにより、薄く帯状に連続した未加硫ゴムシート37bに形成される。そして未加硫ゴムシート37bは、カレンダーロール23の外周面に沿って移送される。
【0029】
未加硫ゴムシート37a、37bは、カレンダーロール22、23間において、ディップ反38の両面に圧着(トッピング)、被覆されて、トップ反36(ゴム被覆コード)に加工される。
【0030】
乾燥手段14は、ゴム被覆手段12の上流側に配置されている。乾燥手段14は、ディップ反38の水分を除去するために設けられており、千鳥状に配置された複数の加温ロール30を備えている。なお、本実施の形態においては、圧延シートをフラットに保つことができるという観点から、引き揃えられた複数本のコード(ディップ反38)の幅は1.4~1.5mであり、加温ロール30の径は1~2mであることが好ましく、制御手段によって、加温ロール30の表面温度を50~150℃に制御することが好ましい。
【0031】
冷却手段16は、トップ反36が形成されるゴム被覆手段12の下流側に配置されている。冷却手段16は、トップ反36の表面の粘着力を適切に維持するために、千鳥状に配置された複数の冷却ロール32を備えている。なお、本実施の形態においては、狙いのトップ反の表面温度を達成するという観点から、冷却ロール32の径は1~2mであることが好ましく、制御手段によって、冷却ロール32の表面温度を10~50℃に制御することが好ましい。
【0032】
3.第1の離間手段および第2の離間手段
次に、本実施の形態に係るゴム被覆装置の特徴部である第1の離間手段および第2の離間手段について説明する。
【0033】
図1は、本発明に係るゴム被覆装置の第1の離間手段の一例を示す一部拡大模式図であり、図2は本発明に係るゴム被覆装置の第2の離間手段の一例を示す一部拡大模式図である。なお、第2の離間手段18は、第1の離間手段19と同様の構成をしている。
【0034】
第1の離間手段19は、乾燥手段14の複数の加温ロール30毎に、加温ロール30の近傍に配置されている。第2の離間手段も、冷却手段16の複数の冷却ロール32毎に、冷却ロール32の近傍に配置されている。
【0035】
(1)第1の離間手段
図1(a)に示すように、第1の離間手段19は、ディップ反38の搬送路から離隔した複数個(好ましくは3個以上)の第1の離間用ロール(図1では、50、52、54の3個)を有しており、これにより、ディップ反38と加温ロール30を離間させることができる。
【0036】
そして、図1(a)に示すように、第1の離間用ロール50、52、54は、加温ロール30を間にしてディップ反38が掛け回されている側とは反対側で、かつ、加温ロール30に掛け回されているディップ反38の内側の領域の基本の位置に配置されている。
【0037】
第1の離間用ロールの幅は、トップ反の折れ皺などの発生抑制の観点から、加温ロールと同程度であり、径は、それぞれ50~100mmであることが好ましい。
【0038】
そして、加温ロール30が所定の時間を超えて停止して、ディップ反38が加温ロール30の外周面に長時間接するときには、図1(b)に示すように、第1の離間用ロール50、52、54が、それぞれ、基本の位置から加温ロール30の周囲の加温ロール30の外周面とディップ反38との間の位置に移動して、加温ロール30の外周面からディップ反38を離間させるように構成されている。これにより、ディップ反38を加温ロール30から離間させることできる。
【0039】
(2)第2の離間手段
図2(a)に示すように、第2の離間手段も、第1の離間手段と同様に、トップ反36の搬送路から離隔した複数個(好ましくは3個以上)の、第2の離間用ロール(図2では、40、42、44の3個)を有している。そして、第2の離間手段は、冷却ロール32を間にしてトップ反36が掛け回されている側とは反対側で、かつ、冷却ロール32に掛け回されているトップ反36の内側の領域の基本の位置に配置されている。なお、第2の離間用ロールの幅と径は、第1の離間用ロールと同様である。
【0040】
そして、冷却ロール32が所定の時間を超えて停止して、トップ反36が冷却ロール32の外周面に長時間接するときには、図2(b)に示すように、第2の離間用ロール40、42、44が、それぞれ、基本の位置から冷却ロール32の周囲の冷却ロール32の外周面とトップ反36との間の位置に移動して、冷却ロール32の外周面からトップ反36を離間させるように構成されている。これにより、トップ反36を冷却ロール32から離間させることできる。
【0041】
なお、第1の離間用ロールと第2の離間用ロールには、それぞれ、レール(図示せず)が設けられており、ロール端に配置された歯車に合わせて回転するチェーンに、各ロールが追従して移動するように構成されている。また、本実施の形態のゴム被覆装置は、装置の停止時に離間用ロールが自動で機能するように制御する制御手段を備えていてもよい。
【0042】
4.第1の離間手段および第2の離間手段の動作
次に、第1の離間手段および第2の離間手段の動作について具体的に説明する。図3は、第1の離間手段の移動動作を示す説明図であり、図4は、第2の離間手段の移動動作を示す説明図である。図3(a)に示すように、ゴム被覆装置が通常通りに稼働しているときは、第1の離間用ロール50、52、54は基本の位置に待機している。
【0043】
そして、ディップ反38のコードの銘柄が変更されるなどして、ゴム被覆装置が長時間停止するときは、先ず、図3(b)に示すように、第1の離間用ロール50が、基本の位置から移動して、加温ロール30の反対側に回り込んで加温ロール30の外周面からディップ反38を離間させると共に、第1の離間用ロール52が、基本の位置から加温ロール30の下側に移動して、加温ロール30の外周面からディップ反38を離間させる。
【0044】
次に、図3(c)に示すように、第1の離間用ロール54が、基本の位置から加温ロール30の上側に移動して、加温ロール30の外周面からディップ反38を離間させる。
【0045】
このとき、ディップ反38が加温ロール30の周りを大きく回り込むようになるため、ディップ反38が伸びてしまう恐れがある。このため、本実施の形態においては、第1の離間用ロール50、52、54の動作に同期して、例えば、以下に記載する(1)~(3)の構成が採用されていることが好ましい。
【0046】
(1)図示しないテンションローラを移動させてディップ反38の張力を緩め、ディップ反38と加温ロール30との間に間隔を形成して、第1の離間用ロール50、52、54をその間隔に配置するように構成される。
【0047】
(2)それぞれの隣接する上流側の加温ロール30と下流側の加温ロール30との間の距離を縮めてディップ反38の張力を緩め、ディップ反38と加温ロール30との間に間隔を形成して、第1の離間用ロール50、52、54をその間隔に配置するように構成される。
【0048】
(3)図示しない送り出しローラからディップ反38を乾燥手段14に通常より多く送り出してディップ反38の張力を緩め、ディップ反38と加温ロール30との間に間隔を形成して、第1の離間用ロール50、52、54をその間隔に配置するように構成される。
【0049】
第2の離間手段も、図4に示すように、第1の離間手段と同様に動作する。その詳細な説明は省略する。
【0050】
以上の構成からなるゴム被覆装置は、ゴム被覆装置が所定の時間を超えて長時間停止しても、第1の離間手段19がディップ反38と加温ロール30とを離間させたり、第2の離間手段がトップ反36と冷却ロール32とを離間させたりするため、熱によるディップ反38の熱収縮や、トップ反36のゴムシート表面への硫黄の析出によるゴムの粘着力の大きな低下が生じ難くなる。
【0051】
なお、停止後、ゴム被覆装置が再び稼働すると、第1の離間手段と第2の離間手段は再び基本の位置に移動し、ディップ反は加温ロールの表面に、トップ反は冷却ロールの表面に載置され再び接触する。
【0052】
5.ゴム被覆方法
次に、ゴム被覆方法を図1図5を参照して説明する。
【0053】
コード巻出し装置(図示せず)から巻き出された、幅が例えば1.4~1.5mのディップ反38は、乾燥手段14の複数の加温ロール30によって乾燥されてゴム被覆手段12に搬送される。ゴム被覆手段12のカレンダーロール21~24は、ディップ反38の両面に未加硫ゴムシート37a、37bを圧着して被覆し、幅が1.4~1.5mのトップ反36を形成する。トップ反36は、冷却手段16の複数の冷却ロール32によって冷却された後、巻取り装置(図示せず)に巻き取られる。
【0054】
そして、ディップ反38の銘柄が変更される、または、トップ反36のゴム種が変更されるなどの際には、ゴム被覆装置が一時停止される。その場合、一時停止したディップ反38やトップ反36は、加温ロール30や冷却ロール32の表面と局所的に所定の時間接触した状態となる。
【0055】
乾燥工程および冷却工程が所定の時間(通常0~5分程度)を超えて停止する時、第1の離間手段19は、それぞれの加温ロール30毎にその外周面からディップ反38を離間させると共に、第2の離間手段は、それぞれの冷却ロール32毎にその外周面からトップ反36を離間させる。
【0056】
これにより、ディップ反38が加温ロール30の表面に長時間接触する状態が解消されるため、長時間加熱されることによるディップ反38の熱収縮が起こらず、スクラップ量を減少させることができる。さらにトップ反36が冷却ロール32の表面に長時間接触する状態が解消されるため、長時間冷却されることによるゴムシートの表面への硫黄の析出が起こらず、ゴムの粘着力の大きな低下も起こらないためスクラップ量を減少させることができる。
【実施例
【0057】
1.実験方法
実験は、第1の離間手段および第2の離間手段を備えたゴム被覆装置(実施例)と、第1の離間手段および第2の離間手段を備えていないゴム被覆装置(比較例)を用いてゴム被覆コードを製造することによって行った。
【0058】
2.評価
(1)装置の停止の影響
実施例および比較例の装置を用いて、ゴム被覆装置の長時間停止後(10分)のディップ反の熱収縮率とトップ反表面の粘着力とを測定して比較した。なお、加温ロールの温度は90℃、冷却ロールの温度は30℃で行った。実験の結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
実施例の装置においては、長時間の停止後においてもディップ反の熱収縮率が小さく、トップ反のゴムの粘着力も十分であった。一方、比較例では熱収縮率が大きく、粘着力が大きく低下していた。
【0061】
(2)スクラップ量
実施例および比較例のゴム被覆装置を、347日間使用し、ゴム被覆コードを製造した際に発生したディップ反のスクラップ量とトップ反のスクラップ量とを測定して比較した。実験の結果を表2に示す。なおスクラップの判定基準は、ディップ反においては熱収縮率が2.0%以上、トップ反においては粘着力が1.0N以下とした。各スクラップ量は、1日当たりの平均値で示す。
【0062】
【表2】
【0063】
実施例の装置では、ディップ反、トップ反の両者でスクラップが発生しなかった。一方、比較例の装置ではディップ反、トップ反の両者でスクラップ量が多かった。
【0064】
以上より実施例の第1の離間手段および第2の離間手段を備えたゴム被覆装置が、優れていることが確認できた。
【0065】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0066】
12 ゴム被覆手段
14 乾燥手段
16 冷却手段
18 第2の離間手段
19 第1の離間手段
21、22、23、24 カレンダーロール
30 加温ロール
32 冷却ロール
36 トップ反
37a、37b 未加硫ゴムシート
38 ディップ反
40、42、44 第2の離間用ロール
50、52、54 第1の離間用ロール
G1、G2 未加硫ゴム
図1
図2
図3
図4
図5