(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】弦楽器用糸巻き
(51)【国際特許分類】
G10D 3/14 20200101AFI20230306BHJP
【FI】
G10D3/14
(21)【出願番号】P 2018172734
(22)【出願日】2018-09-14
【審査請求日】2021-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】592201092
【氏名又は名称】後藤ガット有限会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591032703
【氏名又は名称】群馬県
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【氏名又は名称】松村 潔
(72)【発明者】
【氏名】梶原 篤
(72)【発明者】
【氏名】後藤 昌甲
(72)【発明者】
【氏名】宮島 洋
(72)【発明者】
【氏名】新嶋 修
【審査官】菊池 智紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0247743(US,A1)
【文献】実開昭60-039096(JP,U)
【文献】国際公開第2002/019313(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 1/00-3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弦楽器のヘッドに着脱自在に取り付けられる弦楽器用糸巻きであって、
回転操作されるツマミと、
前記ツマミの回転に伴い回転するペグポストと、
発光素子と、
前記発光素子からの光により発光する導光体と、
を備え
、
前記ヘッドの取付孔内に配置された、前記ペグポストを挿通可能なスリーブを備え、
前記スリーブは光透過性素材で形成され、
前記導光体は、前記スリーブを含んで構成される、
弦楽器用糸巻き。
【請求項2】
弦楽器のヘッドに着脱自在に取り付けられる弦楽器用糸巻きであって、
回転操作されるツマミと、
前記ツマミの回転に伴い回転するペグポストと、
発光素子と、
前記発光素子からの光により発光する導光体と、
を備え
、
前記ツマミ及び前記ペグポストを回転自在に保持するケースと、
前記ケースを前記ヘッドに固定する固定具と、
前記ヘッドと前記固定具との間に配置された、光透過性素材で形成されたワッシャーと、
を備え、
前記導光体は、前記ワッシャーを含んで構成される、
弦楽器用糸巻き。
【請求項3】
前記ツマミの回転を前記ペグポストに伝達する伝達機構を備える、
請求項1
又は2に記載の弦楽器用糸巻き。
【請求項4】
前記伝達機構は、ウォームギア及びウォームホイールを有するウォーム機構を含む、
請求項
3に記載の弦楽器用糸巻き。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギター、ベース、ウクレレなどの弦楽器に用いられる弦楽器用糸巻きに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ギター、ベース、ウクレレなどの弦楽器は、ボディと、ボディの一端から延びるネックと、ネックの他端に取り付けられたヘッドと、ヘッドとボディとの間に張架された複数の弦と、を備えている。そして、ヘッドには複数の糸巻き(ペグ)が取り付けられ、ボディの正面にはブリッジが設けられており、弦は、糸巻きに一端がそれぞれ結合され、他端がネックの正面を通ってブリッジに至るまで延びている。糸巻きは、弦楽器の各弦の張力を調節して調弦を行い、その調弦状態を保持する役割がある。
【0003】
従来より、弦楽器の演奏をしやすくするために、発光素子(光源)を備えた弦楽器が種々提案されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【0004】
特許文献1に記載された弦楽器では、弦楽器の演奏において、初心者や熟練者に関係なく誰でも演奏しやすくするために、弦楽器のネックに設けられる指板上の指が押さえるべき位置(フレット位置)全てに発光素子を埋め込み、これを任意に光らせることができるようにして、任意の単音、音階・和音の構成音の位置を表示したり、任意の曲において押さえるべき位置を表示したりするようにしている。
【0005】
また、特許文献2に記載された弦楽器では、演奏者が暗い場所において演奏するときでも、フレット位置を視認しやすくするために、音程の重要なポイントとなるフレットに近接する位置に発光素子が設けられている。
【0006】
また、特許文献3に記載された弦楽器では、ボディに取り付けられた複数種のピックアップのうち、演奏時に選択されたピップアップの確認性ないし識別性を向上させるために、各ピックアップの選択状態を表示する発光素子がボディに設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平5-19751号公報
【文献】特開2001-312273号公報
【文献】特開2006-201374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、弦楽器を演奏する際に、演奏者や聴衆に対する視認性や演出効果を高めるために、弦楽器のヘッドに表示機能を付加することが望まれている。ヘッドに表示機能を付加することにより、例えば、調弦状況を表示したり、イルミネーションに用いたりすることが可能となる。
【0009】
しかし一方では、ヘッドに表示機能を付加する場合には、弦楽器の調弦操作を妨げないようにしたり、弦楽器の意匠性を損なわないようにしたりすることが重要な技術的課題の1つとなっている。
【0010】
特許文献1~3には、弦楽器のネックやボディに表示機能を適用する技術が開示されているにすぎず、その技術をヘッドに適用するための具体的な方法については何ら開示されていない。そのため、特許文献1~3に開示された技術をヘッドにそのまま適用することは困難であり、また仮に適用したとしても、上述した技術的課題を解決することはできない。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、弦楽器の意匠性を損なうことなく、また調弦操作を妨げることもなく、ヘッドに表示機能を付加することが可能な弦楽器用糸巻きを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、以下の発明を提供する。
【0013】
本発明の第1態様に係る弦楽器用糸巻きは、弦楽器のヘッドに着脱自在に取り付けられる弦楽器用糸巻きであって、回転操作されるツマミと、ツマミの回転に伴い回転するペグポストと、発光素子と、発光素子からの光により発光する導光体と、を備える。
【0014】
本発明の第2態様に係る弦楽器用糸巻きは、第1態様において、ツマミの回転をペグポストに伝達する伝達機構を備える。
【0015】
本発明の第3態様に係る弦楽器用糸巻きは、第2態様において、伝達機構は、ウォームギア及びウォームホイールを有するウォーム機構を含む。
【0016】
本発明の第4態様に係る弦楽器用糸巻きは、第1態様から第3態様のいずれか1つの態様において、ヘッドの取付孔内に配置された、ペグポストを挿通可能なスリーブを備え、スリーブは光透過性素材で形成され、導光体は、スリーブを含んで構成される。
【0017】
本発明の第5態様に係る弦楽器用糸巻きは、第1態様から第3態様のいずれか1つの態様において、ツマミ及びペグポストを回転自在に保持するケースと、ケースをヘッドに固定する固定具と、ヘッドと固定具との間に配置された、光透過性素材で形成されたワッシャーと、を備え、導光体は、ワッシャーを含んで構成される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、弦楽器の意匠性を損なうことなく、また弦調弦操作を妨げることもなく、ヘッドに表示機能を付加することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る糸巻きを備えた弦楽器を示す平面図
【
図2】本発明の第1実施形態に係る糸巻きを示す斜視図
【
図3】本発明の第1実施形態に係る糸巻きを示す断面図
【
図4】本発明の第2実施形態に係る糸巻きを示す斜視図
【
図5】本発明の第2実施形態に係る糸巻きを示す斜視図
【
図6】本発明の第2実施形態に係る糸巻きを示す分解組み立て図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る糸巻き100を備えた弦楽器10を示す平面図である。
図1に示すように、弦楽器10は、例えばギター、ベース、ウクレレなどの弦楽器からなり、ボディ12と、ボディ12の一端から延びるネック14と、ネック14の他端に取り付けられたヘッド16と、ヘッド16とボディ12との間に張架された複数の弦18と、を備えている。
【0022】
ヘッド16には、弦18の先端側(始端)を巻き付けて弦18の張力を調節可能な複数の糸巻き100が設けられている。すなわち、ヘッド16には、複数の弦18にそれぞれに対応する複数の糸巻き100が着脱自在に取り付けられている。糸巻き100は、それぞれ対応する弦18の張力を調節して調弦を行い、その調弦状態を保持するものである。なお、糸巻き100は、本発明の弦楽器用糸巻きの一例であり、その具体的構成については後述する。
【0023】
ボディ12には、弦18の後端を固定するためのブリッジ26が取り付けられており、弦18の後端はブリッジ26に開けられた穴もしくは溝(不図示)に固定されている。
【0024】
ネック14には、金属製のフレット28が特定の間隔で埋め込まれた指板30が取り付けられている。指板30の先端には、複数の弦18を所定の間隔に揃え、かつ、フレット28の上面より僅かに弦18を浮かせて支持するための溝が設けられたナット(上駒)32が固定されている。ブリッジ26には、弦18の後端(終端)近くで、弦18をフレット28の上面より僅かに浮かせて支持するためのサドル(下駒)34が固定されている。なお、楽器の種類によってはフレット28が存在しないものもある。
【0025】
弦18は、ナット32とサドル34の間、もしくは、指板30上のフレット28とサドル34の間で振動する。また、指板30上の所定の場所で弦18を押さえることで、フレット28とサドル34の間の弦長が調節され、所定の音高(ピッチ)を得ることができる。弦18に振動を付与する態様としては、弦18の押さえた指とサドル34間の所定の位置で指を弾く態様や、弓などで擦ることで振動のきっかけを与える態様がある。
【0026】
このように構成される弦楽器10では、弦楽器10の演奏を行うべく弦18に振動を与えると、弦18の振動がサドル34、ブリッジ26を介してボディ12の表板に伝達され、それによってボディ12の内部空間において共鳴が発生し、ボディ12に形成されたサウンドホール36から楽音を発する。
【0027】
次に、本発明の第1実施形態に係る糸巻き100の構成について、
図2を参照して詳しく説明する。
図2は、本発明の第1実施形態に係る糸巻き100を示す斜視図である。なお、
図2は、弦楽器10のヘッド16の裏面16b側(すなわち、
図1に示すヘッド16の弦18が配置される面とは反対側)から糸巻き100を見た場合の斜視図である。また、
図2では、ヘッド16に取り付けられる複数の糸巻き100を代表して1つの糸巻き100を示している。また、
図2において、糸巻き100の取り付け部であるヘッド16の部分は想像線(二点鎖線)で示している。
【0028】
図2に示すように、本実施形態の糸巻き100は、ベースプレート102と、回転操作されるツマミ104と、ツマミ104の回転に伴い回転するペグポスト106と、ツマミ104の回転をペグポスト106に伝達する伝達機構108と、を備えている。
【0029】
ベースプレート102は、ツマミ104及びペグポスト106を回転自在に保持する平板状部材である。ベースプレート102は、木ネジなどの固定手段(不図示)によってヘッド16の裏面16bに固定される。
【0030】
ツマミ104は、ベースプレート102に回転自在に軸支されたシャフト110を有している。シャフト110の回転軸は、ヘッド16の幅方向(
図2のW方向)と平行に配置される。シャフト110には、ウォームギア112が設けられている。ウォームギア112は、後述するウォームホイール114と噛み合っている。
【0031】
ペグポスト106は、ペグポスト本体軸部116と、ペグポスト本体軸部116のベースプレート102側の端部に設けられたペグポスト頭部118とで構成されている。
【0032】
ペグポスト本体軸部116は、ヘッド16の厚さ方向(
図2のD方向)を長手軸方向とする棒状部材である。ペグポスト本体軸部116は、ヘッド16に貫通形成された取付孔38(
図3参照)に挿通され、その先端部116aがヘッド16の表面16a側に突出した状態で配置される。ペグポスト本体軸部116の先端部116aは、弦18が巻き付けられる弦巻き付け部を構成する部分である。
【0033】
ペグポスト頭部118は、ベースプレート102の上面側に配置される部分であり、その外周部には、ウォームホイール114が設けられている。ウォームホイール114は、前述したウォームギア112と噛み合っている。
【0034】
本実施形態における伝達機構108は、ウォームギア112及びウォームホイール114を有するウォーム機構を含んで構成され、ツマミ104の回転を減速してペグポスト106に伝達する。すなわち、ツマミ104が回転操作されると、そのシャフト110に設けられたウォームギア112が回転する。そして、ウォームホイール114が、ウォームギア112に対して減速して回転し、ペグポスト106がウォームギア112と一体となって回転する。これにより、ペグポスト106に巻き付けられた弦18の張力を調節することができ、調弦操作を行うことが可能となる。
【0035】
また、本実施形態では、伝達機構108がウォーム機構を含んで構成されるので、ウォーム機構のセルフロック機能により、ウォームホイール114からの駆動力がウォームギア112に伝達されない。すなわち、ツマミ104が回転操作されない場合にはペグポスト106が回転不能にロックされるので、弦18の張力によりペグポスト106が回転して弦18が緩まないようにすることができる。
【0036】
なお、本実施形態では、好ましい態様の一例として、伝達機構108としてウォーム機構を採用したが、ウォーム機構以外の構成にしてもよい。例えば、ツマミ104とペグポスト106とを直結し、摩擦によってペグポスト106が弦18の張力によって回転するのを防ぐようにしてもよい。
【0037】
ここで、本実施形態の糸巻き100の構成について、
図3を参照して更に詳しく説明する。
図3は、本発明の第1実施形態に係る糸巻き100を示す断面図である。なお、
図3は、
図2において、ペグポスト106の長手軸(ペグポスト本体軸部116の軸線方向)を含み、且つヘッド16の幅方向(すなわち、シャフト110の長手軸方向)に平行な断面を示している。
【0038】
図3に示すように、本実施形態では、ペグポスト本体軸部116の外周部を覆う筒状の2つのスリーブ120、122(以下、「第1スリーブ120」、「第2スリーブ122」という。)を備えている。
【0039】
ヘッド16に貫通形成された取付孔38にペグポスト106を挿通して配置する場合に、第1スリーブ120及び第2スリーブ122は、ペグポスト本体軸部116の周囲をカバーし、主に木材で製作されたヘッド16との摩擦による影響を防止するために設けられるものである。
【0040】
第1スリーブ120及び第2スリーブ122は、いずれも光透過性素材により形成され、後述する発光素子136からの光を導光可能となっている。光透過性素材としては、例えば、アクリルやポリカーボネイトなどの樹脂、ガラス、コランダム等を用いることができる。
【0041】
第1スリーブ120の内部には、ペグポスト本体軸部116を挿通可能な第1スリーブ挿通孔124が設けられている。第1スリーブ120は、取付孔38に挿通される筒状の第1本体部126と、第1本体部126のベースプレート102側に設けられた第1フランジ部128とで構成されている。第1フランジ部128は、第1本体部126と一体的に形成される。
【0042】
第1フランジ部128は、第1スリーブ挿通孔124の開口端から径方向外側に向かって広がる部分であり、ベースプレート102の上面に沿って配置され、その一部は後述する発光素子136に向かって延設される。
【0043】
第2スリーブ122の内部には、ペグポスト本体軸部116を挿通可能な第2スリーブ挿通孔130が設けられている。第2スリーブ122は、取付孔38に挿通される筒状の第2本体部132と、第2本体部132のベースプレート102側とは反対側に設けられた第2フランジ部134とで構成されている。第2フランジ部134は、第2本体部132と一体的に形成される。
【0044】
第2フランジ部134は、第2スリーブ挿通孔130の開口端から径方向外側に向かって円板状に広がる部分であり、ヘッド16の表面16aに沿って配置される。
【0045】
ベースプレート102には、LED(発光ダイオード)等の発光素子136を配置した制御基板138が設けられる。制御基板138には、発光素子136の他に、発光素子136を制御するための制御回路が配置される。また、制御基板138には、発光素子136やその制御回路を動作させるための電源や各種制御(発光制御等)用の信号を伝送する配線140(
図2参照)が接続される。配線140は、不図示のマイコン等で構成される表示制御用の回路に接続される。また、制御基板138上には、配線140を接続するためのコネクタが設けられており、ヘッド16に取り付けられる他の糸巻き100の制御基板138との直列接続を可能としている。なお、発光素子136を発光させるための電気回路構成は既知であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0046】
ここで、本実施形態では、第1スリーブ120は、第1フランジ部128の発光素子136側の端面に形成された第1光入射面142と、第1本体部126の第2本体部132側の端面に形成された第1光出射面144とを有しており、それ以外の面は第1スリーブ120の内部を伝搬する光を反射する反射面として構成されている。
【0047】
また、第2スリーブ122は、第2本体部132の第1本体部126側の端面に形成された第2光入射面146と、第2フランジ部134の第1本体部126側とは反対側の端面(フランジ面)に形成された第2光出射面148とを有しており、それ以外の面は第2スリーブ122の内部を伝搬する光を反射する反射面として構成されている。
【0048】
第1スリーブ120及び第2スリーブ122の各反射面には、全反射臨界角よりも小さい入射角で反射面に入射する光も反射できるように、金属製の蒸着膜、あるいは、屈折率の異なる複数の材料により形成される多層反射膜が形成されてもよい。
【0049】
かかる構成により、発光素子136から発せられた光は、発光素子136に対向する第1光入射面142に入射し、第1スリーブ120の内部で全反射を繰り返しながら第1光出射面144に導かれ、第1光出射面144から出射される。そして、第1光出射面144から出射された光は、第1光出射面144に対向する第2光入射面146に入射し、第2スリーブ122の内部で全反射を繰り返しながら第2光出射面148に導かれ、第2光出射面148から出射される。これにより、ペグポスト106の先端部(ペグポスト本体軸部116の先端部116a)付近が照明されるため、演奏者や聴衆に対する視認性や演出効果を高めることが可能となる。
【0050】
以上のとおり、本実施形態の糸巻き100は、発光素子136からの光を導光して発光する導光体として第1スリーブ120及び第2スリーブ122を備えたので、弦楽器10の調弦操作を妨げることがないようにヘッド16に表示機能を付加することが可能となる。また、ヘッド16に表示機能を付加する際、ヘッド16の形状を変更する必要がないので、弦楽器10の意匠性を損なうことがない。
【0051】
また、本実施形態では、好ましい態様の一例として、第1スリーブ120の第1光出射面144と、第2スリーブ122の第2光入射面146とが取付孔38の内部(すなわち、ヘッド16の内部)で密接して対向配置された構成を示したが、必ずしもこの構成に限定されるものではない。すなわち、第1光出射面144と第2光入射面146とはヘッド16の内部に配置されて他の外光の影響をほぼ受けることがないので、第1スリーブ120により導かれた光を第2スリーブ122に伝達可能であれば、第1光出射面144と第2光入射面146との間に間隙部が形成されていてもよい。
【0052】
また、本実施形態では、第2光出射面148が光散乱面で構成されることが好ましい。光散乱面としては、例えばフロスト加工やシボ加工が施された面等を採用することが可能である。第2光出射面148を光散乱面で構成することにより、第2光出射面148から出射された光をより鮮明に確認することが可能となる。
【0053】
また、本実施形態では、制御基板138に接続される配線140として、FPC等で構成されたフラットケーブルが用いられることが好ましい。この構成によれば、配線140としてのフラットケーブルを、ベースプレート102とともにヘッド16に固定し、ヘッド16に密着させることができる。これにより、弦楽器10の演奏中または調弦中に配線140が邪魔になることもなく、配線断などの故障を未然に防ぐことができる。さらに、ヘッド16とベースプレート102との間にゴム等の軟質の素材でできた緩衝材を介在させることで、配線140の厚みによる段差を吸収し、ヘッド16、糸巻き100、配線140への過剰な歪みを吸収することができる。
【0054】
また、本実施形態では、糸巻き100の構成部品の1つである制御基板138や他の構成部品をケース(不図示)で覆うようにしてもよい。これにより、弦楽器10の意匠性をさらに高めることが可能となる。
【0055】
また、本実施形態では、発光素子136からの光を導光して発光する導光体として、第1スリーブ120及び第2スリーブ122を備えた構成を示したが、この構成に限らず、糸巻き100を構成する他の構成部品を導光体として用いてもよい。
【0056】
導光体の他の一例として、ペグポスト106を導光体として用いることが可能である。例えば、ペグポスト106を、強度の高い光透過性素材(例えば、ポリカーボネイト、強化ガラス、コランダム等)で形成し、ペグポスト頭部118の端面に光入射面を形成するとともに、ペグポスト本体軸部116の先端部116a(取付孔38からヘッド16の表面16a側に突出する部分)に光出射面を形成し、それ以外の面を反射面として構成する。この場合、ペグポスト頭部118の光入射面に対向する位置に発光素子136を配置する。これにより、発光素子136からの光は、ペグポスト106の光入射面に入射し、その内部で全反射を繰り返しながら、ペグポスト106の光出射面に導かれて出射されるため、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0057】
導光体の更に他の一例として、シャフト110やツマミ104を導光体として用いることも可能である。例えば、シャフト110からツマミ104にかけて中空のパイプ状の導光路を形成し、その内部に光透過性素材(例えば、アクリルやポリカーボネイト等の樹脂)からなる導光部材を挿通配置してもよい。この場合、シャフト110の端面(導光路の一端の開口面)に光入射面が形成され、ツマミ104の端面(導光路の他端の開口面)に光出射面が形成される。そして、シャフト110の光入射面に対向する位置に発光素子136を配置する。これにより、発光素子136からの光は、シャフト110の光入射面に入射し、シャフト110からツマミ104にかけて形成された導光路の内部で全反射を繰り返しながら、ツマミ104の光出射面に導かれて出射される。したがって、発光素子136からの光をツマミ104まで導くことが可能となり、ツマミ104の周囲を照明することが可能となる。そのため、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0058】
なお、ツマミ104も光透過性素材(例えば、アクリルやポリカーボネイト等の樹脂)で形成してもよい。この構成によれば、発光素子からの光によりツマミ104の一部の表面だけでなく表面全体を発光させることが可能となる。また、ツマミ104の表面にフロスト処理をかけて半透明にすることで、外観上はツマミ104全体が光って見えるので、表示の効果を高めることもできる。また、ツマミ104を不透明な素材で形成し、ツマミ104を取り付ける先端のネジ(不図示)に透明な樹脂ネジを用いれば、ネジから発光させることにより、ツマミ104全体が発光したようになるので、弦楽器10の意匠性をさらに高めることが可能となる。
【0059】
また、上述した導光路を、ツマミ104の手前となるシャフト110の基端部(ツマミ104とウォームギア112との間の部分)まで形成し、シャフト110の基端部に光出射面を形成してもよい。これにより、発光素子136からの光は、ツマミ104の手前となるシャフト110の基端部(ツマミ104とウォームギア112との間の部分)まで導かれて、シャフト110の基端部に形成した光出射面から出射される。したがって、このような構成においても、ツマミ104の周囲を照明することが可能となるので、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0060】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下の実施形態において、上述した実施形態で用いた部材と同一の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0061】
図4は、本発明の第2実施形態に係る糸巻き100Aを示す斜視図である。
図5は、本発明の第2実施形態に係る糸巻き100Aを示す斜視図であり、
図4とは異なる視点から糸巻き100Aを見た場合の斜視図である。
図6は、本発明の第2実施形態に係る糸巻き100Aを示す分解組み立て図である。なお、
図4及び
図5では、ケース本体154の開口部から蓋部材156を取り外した状態を示している。
【0062】
図4から
図6に示すように、本実施形態に係る糸巻き100Aは、ツマミ104及びペグポスト106を回転自在に保持するケース150と、ケース150をヘッド16に固定するための固定具152と、を備えている。
【0063】
ケース150は、ウォームギア112及びウォームホイール114を含む構成部品を収容するためのケースである。ケース150は、ヘッド16側とは反対側に開口する箱型のケース本体154と、ケース本体154の開口部を塞ぐ蓋部材156とで構成される。
【0064】
ケース本体154には、ツマミ104のシャフト110が回転自在に軸支されている。シャフト110に設けられたウォームギア112は、ケース本体154の内部に配置されている。また、ケース本体154の内部には、ペグポスト頭部118に設けられたウォームホイール114がウォームギア112と噛み合った状態で配置されている。なお、ツマミ104はケース本体154の外部に配置されており、ツマミ104を回転操作することが可能となっている。
【0065】
ケース本体154の開口部とは反対側の底部には、円筒状のスリーブ158が一体的に設けられている。スリーブ158は、糸巻き100Aをヘッド16に取り付ける場合に取付孔38(
図3参照)に挿通される部分である。
【0066】
スリーブ158の内部には、その軸方向に沿って貫通形成された挿通孔160(
図6参照)が設けられている。挿通孔160は、ペグポスト本体軸部116の外径よりも大きな内径を有しており、ペグポスト本体軸部116を挿通可能となっている。また、スリーブ158の内周面(すなわち、挿通孔160の内壁面)には、後述する固定具152が螺合可能な雌ネジ(不図示)が形成されている。
【0067】
固定具152は、スリーブ158の内部に形成された挿通孔160に挿通かつ螺合されるネジ軸部162と、ネジ軸部162の端部に形成されたネジ頭部164とで構成されている。なお、ネジ軸部162の外周面には、スリーブ158の内周面(すなわち、挿通孔160の内壁面)に形成された雌ネジと螺合する雄ネジが形成されている。
【0068】
固定具152は、スリーブ158の内部に形成された挿通孔160にネジ軸部162を挿通して螺合させることにより、ケース本体154とヘッド16とを固定している。なお、ネジ軸部162には後述するワッシャー166が挿通されており、ネジ軸部162を挿通孔160に挿通して螺合させた場合に、ネジ頭部164とヘッド16の表面16aとの間にワッシャー166が介在される。
【0069】
固定具152(ネジ軸部162及びネジ頭部164)の内部には、その軸方向に沿って貫通形成された挿通孔168が設けられている。挿通孔168は、ペグポスト本体軸部116の外径よりも大きな内径を有しており、スリーブ158の内部に形成された挿通孔160とともにペグポスト挿通路を構成する。これにより、ペグポスト本体軸部116は、ケース本体154の底部に形成された開口部からペグホスト挿通路(挿通孔160及び挿通孔168の内部に挿通され、その一部である先端部116aがヘッド16の表面16a側に突出した状態で配置される。
【0070】
ペグポスト頭部118は、ケース本体154の内部に配置される部分であり、その外周部には、前述のウォームギア112と噛み合うウォームホイール114が設けられている。ウォームホイール114は、ウォームギア112とともにケース本体154の内部に配置されている。
【0071】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、伝達機構108は、ウォームギア112及びウォームホイール114を有するウォーム機構を含んで構成されるので、ツマミ104の回転を減速してペグポスト106に伝達する可能となっている。したがって、ペグポスト106に巻き付けられた弦18の張力を調節することができ、調弦操作を行うことが可能となる。
【0072】
本実施形態における糸巻き100Aは、上記構成に加え、さらに、発光素子136からの光によって発光する導光体としてのワッシャー166と、発光素子136からの光をワッシャー166に導く導光ライン170と、を備えている。
【0073】
発光素子136は、ケース本体154とヘッド16の裏面16bとの間に設けられた制御基板138上に配置される。制御基板138上には、発光素子136の他に、制御回路、コネクタ、配線等が配置される。なお、制御基板138は、接着剤などの接合手段によりケース本体154と一体化されていてもよいし、別体であってもよい。
【0074】
導光ライン170は、発光素子136からの光が入射される光入射面(不図示)と、光入射面から入射した光をワッシャー166側に出射する光出射面(不図示)とを有する長尺平板状の導光体である。導光ライン170は、光透過性素材により形成される。導光ライン170を構成する光透過性素材としては、アクリルやポリカーボネイト等の樹脂等を用いることが可能である。
【0075】
ケース本体154と一体形成されたスリーブ158は、その軸方向に沿って外壁面の一部を切り欠いた溝部172(
図5参照)を備えている。この溝部172には、導光ライン170が配置される。なお、導光ライン170の配置形態によっては、ケース本体154の一部を切り欠いてもよい。
【0076】
ワッシャー166は、上述したように、固定具152によりケース本体154とヘッド16とを固定する場合に、ネジ軸部162に挿通された状態でネジ頭部164とヘッド16の表面16aとの間に介在される部材である。
【0077】
ワッシャー166は、導光ライン170の光出射面から出射した光により、その表面全体が発光するリング状の導光体であり、例えば、アクリルやポリカーボネイト等の樹脂、ガラス、コランダム等の光透過性素材により形成される。
【0078】
かかる構成により、発光素子136から発せられた光は、導光ライン170によってワッシャー166に導かれることにより、ワッシャー166の表面全体が発光する。これにより、ペグポスト106の先端部(ペグポスト本体軸部116の先端部116a)付近が照明されるため、演奏者や聴衆に対する視認性や演出効果を高めることが可能となる。
【0079】
以上のとおり、本実施形態によれば、糸巻き100Aには、発光素子136からの光を導光して発光する導光体としてワッシャー166及び導光ライン170を備えたので、弦楽器10の調弦操作を妨げることがないようにヘッド16に表示機能を付加することが可能となる。また、ヘッド16に表示機能を付加する際、ヘッド16の形状を変更する必要がないので、弦楽器10の意匠性を損なうことがない。
【0080】
また、本実施形態によれば、弦18の張力はペグポスト106を通して、ケース本体154と一体構造のスリーブ158が受けるので、ワッシャー166は弦18の張力を受けないので歪む心配がない。
【0081】
また、本実施形態では、ワッシャー166の表面が光散乱面で構成されることが好ましい。光散乱面としては、例えばフロスト加工やシボ加工が施された面等を採用することが可能である。ワッシャー166の表面を光散乱面で構成することにより、ワッシャー166の表面から発光する光をより鮮明に確認することが可能となる。
【0082】
また、本実施形態では、発光素子136からの光を導光して発光する導光体として、ワッシャー166及び導光ライン170を備えた構成を示したが、これに限らず、ペグポスト106を導光体として用いる態様や、シャフト110やツマミ104を導光体として用いる態様などと組み合わせた構成としてもよい。
【0083】
なお、本実施形態では、制御基板138をケース本体154の外部に配置した構成を示したが、この構成に限らず、制御基板138をケース本体154の内部に配置してもよいことはいうまでもない。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0085】
10…弦楽器、12…ボディ、14…ネック、16…ヘッド、18…弦、26…ブリッジ、28…フレット、30…指板、32…ナット、34…サドル、36…サウンドホール、100…糸巻き、102…ベースプレート、104…ツマミ、106…ペグポスト、108…伝達機構、110…シャフト、112…ウォームギア、114…ウォームホイール、116…ペグポスト本体軸部、118…ペグポスト頭部、120…第1スリーブ、122…第2スリーブ、124…第1スリーブ挿通孔、126…第1本体部、128…第1フランジ部、130…第2スリーブ挿通孔、132…第2本体部、134…第2フランジ部、136…発光素子、138…制御基板、140…配線、142…第1光入射面、144…第1光出射面、146…第2光入射面、148…第2光出射面、150…ケース、152…固定具、154…ケース本体、156…蓋部材、158…スリーブ、160…挿通孔、162…ネジ軸部、164…ネジ頭部、166…ワッシャー、168…挿通孔、170…導光ライン、172…溝部