(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】ポンプゲート
(51)【国際特許分類】
E02B 7/20 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
E02B7/20 104
(21)【出願番号】P 2019058127
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】591073337
【氏名又は名称】株式会社丸島アクアシステム
(73)【特許権者】
【識別番号】000197746
【氏名又は名称】株式会社石垣
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】矢延 孝也
(72)【発明者】
【氏名】半田 英明
(72)【発明者】
【氏名】馬場 真司
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 智己
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-253656(JP,A)
【文献】特開2007-332704(JP,A)
【文献】特開2006-316436(JP,A)
【文献】特開2005-002723(JP,A)
【文献】実開昭59-121028(JP,U)
【文献】特開2005-097964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路に設置されるゲート躯体と、このゲート躯体に昇降自在に支持されかつゲート閉鎖状態において流水を強制的に排水可能なポンプが組み込まれた扉体と、前記扉体を駆動する駆動装置とを備えるポンプゲートであって、
前記ゲート躯体は、前記扉体の幅方向両端を昇降自在に案内する一対のガイドを含む主躯体部と、この主躯体部の上部に配置され、前記扉体を昇降させるための機器が設置される操作台とを含み、
前記水路の長手方向を前後方向、前記水路の幅方向を左右方向としたときに、
前記操作台は、前記主躯体部の上部を覆う第1位置
と前記主躯体部の上方を開放する第2位置とに亘って
揺動可能となるように
、若しくは前記第1位置と前記第2位置とに亘って前後方向又は左右方向にスライド可能となるように前記主躯体部に連結され
、
前記扉体は、前記操作台を前記第2位置に配置した状態で、前記一対のガイドに沿って上方に引き上げられることにより前記主躯体部から取外し可能に設けられている、ことを特徴とするポンプゲート。
【請求項2】
請求項
1に記載のポンプゲートにおいて、
前記駆動装置は、前記扉体に連結されるロープと、このロープの巻取り及び送り出しを行う装置本体と、前記操作台に設置されるロープ案内用滑車と、を含み、
前記装置本体は、前記操作台以外の場所であって前記ロープ案内用滑車よりも低い位置に設置されている、ことを特徴とするポンプゲート。
【請求項3】
請求項
2に記載のポンプゲートにおいて、
前記操作台は、前記扉体から取り外した前記ロープの先端を係止させることが可能なロープ係止部を備えている、ことを特徴とするポンプゲート。
【請求項4】
請求項1乃至
3の何れか一項に記載のポンプゲートにおいて、
前記ゲート躯体は、コンクリート製の基礎上にアンカーボルトで固定される金属製のベース躯体部をさらに備え、
前記主躯体部は、金属からなりかつ前記ベース躯体部に接合されている、ことを特徴とするポンプゲート。
【請求項5】
請求項1乃至
4の何れか一項に記載のポンプゲートにおいて、
前記水路の底面に対して前記ゲート躯体の高さを調整することが可能な高さ調整機構を備えている、ことを特徴とするポンプゲート。
【請求項6】
請求項1乃至
5の何れか一項に記載のポンプゲートにおいて、
前記水路の側面に対して水路幅方向における前記ゲート躯体の位置を調整することが可能な幅位置調整機構を備えている、ことを特徴とするポンプゲート。
【請求項7】
ゲート躯体と、このゲート躯体に昇降自在に支持されかつゲート閉鎖状態において流水を強制的に排水可能なポンプが組み込まれた扉体と、前記扉体を駆動する駆動装置とを備えるポンプゲートであって、
前記ゲート躯体は、コンクリート製の基礎上にアンカーボルトで固定される金属製のベース躯体部と、金属からなりかつ前記ベース躯体部に接合されて、前記扉体の幅方向両端を昇降自在に案内する一対のガイドを含む主躯体部と、この主躯体部の上部に配置され、前記扉体を昇降させるための機器が設置される操作台とを含み、
前記操作台は、前記主躯体部の上部を覆う第1位置と、前記主躯体部の上方を開放する第2位置とに亘って変位可能となるように前記主躯体部に連結され、
前記扉体は、前記操作台が前記第2位置に配置された状態で、前記一対のガイドに沿って上方に引き上げられることにより前記主躯体部から取外し可能に設けられている、ことを特徴とするポンプゲート。
【請求項8】
ゲート躯体と、このゲート躯体に昇降自在に支持されかつゲート閉鎖状態において流水を強制的に排水可能なポンプが組み込まれた扉体と、前記扉体を駆動する駆動装置とを備えるポンプゲートであって、
水路の側面に対して水路幅方向における前記ゲート躯体の位置を調整することが可能な幅位置調整機構を備え、
前記ゲート躯体は、前記扉体の幅方向両端を昇降自在に案内する一対のガイドを含む主躯体部と、この主躯体部の上部に配置され、前記扉体を昇降させるための機器が設置される操作台とを含み、
前記操作台は、前記主躯体部の上部を覆う第1位置と、前記主躯体部の上方を開放する第2位置とに亘って変位可能となるように前記主躯体部に連結され、
前記扉体は、前記操作台が前記第2位置に配置された状態で、前記一対のガイドに沿って上方に引き上げられることにより前記主躯体部から取外し可能に設けられている、ことを特徴とするポンプゲート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川等の水路の本流と支流の分岐点等に設置されるポンプゲートに関する。
【背景技術】
【0002】
河川等の水路の本流と支流の分岐点等に設置されるポンプゲートは、従来から知られており、例えば特許文献1に開示されている。この特許文献1に開示されたポンプゲートは、左右両柱部材とそれらの両柱部材の上端に渡された上架設部材とを有するコンクリート製の門型(箱型)のゲート躯体と、このゲート躯体の上架設部材の下方側に昇降自在に吊り下げ支持されかつゲート閉鎖状態において流水を強制的に排水可能なポンプが組み込まれた扉体と、前記扉体を駆動する駆動装置とを備えている。そして、扉体が上昇してゲート開放状態にすることで支流側の水を本流側に排水可能にし、また、本流側の水位が支流側よりも上昇した場合に、扉体を下降させてゲート閉鎖状態にすることで本流側の水が支流側に逆流することを防止できるようにしている。また、そのゲート閉鎖状態において、ポンプを作動させることによって、支流側の水を本流側に強制的に排水可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば扉体に組み込まれたポンプは、定期的にメンテナンスが行なわれる必要がある。しかしながら、特許文献1に開示されたポンプゲートでは、扉体がゲート躯体の上架設部材の下方側に昇降自在に吊り下げ支持されており、扉体をゲート躯体から取り外すのが困難である。そのため、メンテナンスに際して扉体がゲート躯体の上架設部材に吊り下げ支持された状態、即ち水路上で行なわなければならず、メンテナンスを行い難いという問題点がある。
【0005】
本発明は、ポンプのメンテナンスをより容易に行い得るポンプゲートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の一局面に係るポンプゲートは、水路に設置されるゲート躯体と、このゲート躯体に昇降自在に支持されかつゲート閉鎖状態において流水を強制的に排水可能なポンプが組み込まれた扉体と、前記扉体を駆動する駆動装置とを備えるポンプゲートであって、前記ゲート躯体は、前記扉体の幅方向両端を昇降自在に案内する一対のガイドを含む主躯体部と、この主躯体部の上部に配置され、前記扉体を昇降させるための機器が設置される操作台とを含み、前記水路の長手方向を前後方向、前記水路の幅方向を左右方向としたときに、前記操作台は、前記主躯体部の上部を覆う第1位置と前記主躯体部の上方を開放する第2位置とに亘って揺動可能となるように、若しくは前記第1位置と前記第2位置とに亘って前後方向又は左右方向にスライド可能となるように前記主躯体部に連結され、前記扉体は、前記操作台を前記第2位置に配置した状態で、前記一対のガイドに沿って上方に引き上げられることにより前記主躯体部から取外し可能に設けられている。
【0007】
これによれば、操作台を第1位置から第2位置に揺動させる、又はスライドさせることにより主躯体部の上方を開放でき、これにより扉体をゲート躯体から容易に脱着することが可能となる。したがって、扉体に組み込まれたポンプのメンテナンスをゲート躯体から取り外した状態で行うことが可能になり、ポンプのメンテナンスを容易に行い得る。
【0010】
前記ポンプゲートにおいて、前記駆動装置は、前記扉体に連結されるロープと、このロープの巻取り及び送り出しを行う装置本体と、前記操作台に設置されるロープ案内用滑車と、を含み、前記装置本体は、前記操作台以外の場所であって前記ロープ案内用滑車よりも低い位置に設置されている、構成とできる。
【0011】
これによれば、例えば電動モータにより扉体を昇降させるものに比べて、操作台に設置する機器を軽量化できる。そのため、操作台を移動させる際の力がより小さくて済む。また、装置本体が操作台上に無いことで、ポンプゲートの全高を低く抑えることができ、ポンプゲートの高さによって景観を損なうことが抑制される。
【0012】
前記ポンプゲートにおいて、前記操作台は、前記扉体から取り外した前記ロープの先端を係止させることが可能なロープ係止部を備えている、構成とできる。
【0013】
これによれば、扉体から取り外したロープの先端をロープ係止部に係止し、当該ロープを装置本体により巻き取ることにより、第1位置から第2位置へ操作台を変位させることができる。つまり、駆動装置を、操作台を移動させるための手段として兼用できる。
【0014】
前記ポンプゲートにおいて、前記ゲート躯体は、コンクリート製の基礎上にアンカーボルトで固定される金属製のベース躯体部をさらに備え、前記主躯体部は、金属からなりかつ前記ベース躯体部に接合されている、構成とできる。
【0015】
これによれば、従来のようなコンクリート製の門型(箱型)構造体を施工現場で製作して設置することなく、工場で別途に製作したポンプゲートを施工現場に設置することが可能となる。従って、施工が簡単になる。
【0016】
前記ポンプゲートにおいて、水路の底面に対して前記ゲート躯体の高さを調整することが可能な高さ調整機構を備えている、構成とできる。
【0017】
これによれば、ポンプゲート(ゲート躯体)を設置する際の作業性が向上する。
【0018】
前記ポンプゲートにおいて、水路の側面に対して水路幅方向における前記ゲート躯体の位置を調整することが可能な幅位置調整機構を備えている、構成とできる。
【0019】
これによれば、ポンプゲート(ゲート躯体)を設置する際の作業性がより一層、向上する。
なお、本発明の他の一局面に係るポンプゲートは、ゲート躯体と、このゲート躯体に昇降自在に支持されかつゲート閉鎖状態において流水を強制的に排水可能なポンプが組み込まれた扉体と、前記扉体を駆動する駆動装置とを備えるポンプゲートであって、前記ゲート躯体は、コンクリート製の基礎上にアンカーボルトで固定される金属製のベース躯体部と、金属からなりかつ前記ベース躯体部に接合されて、前記扉体の幅方向両端を昇降自在に案内する一対のガイドを含む主躯体部と、この主躯体部の上部に配置され、前記扉体を昇降させるための機器が設置される操作台とを含み、前記操作台は、前記主躯体部の上部を覆う第1位置と、前記主躯体部の上方を開放する第2位置とに亘って変位可能となるように前記主躯体部に連結され、前記扉体は、前記操作台が前記第2位置に配置された状態で、前記一対のガイドに沿って上方に引き上げられることにより前記主躯体部から取外し可能に設けられている。
また、本発明の他の一局面に係るポンプゲートは、ゲート躯体と、このゲート躯体に昇降自在に支持されかつゲート閉鎖状態において流水を強制的に排水可能なポンプが組み込まれた扉体と、前記扉体を駆動する駆動装置とを備えるポンプゲートであって、水路の側面に対して水路幅方向における前記ゲート躯体の位置を調整することが可能な幅位置調整機構を備え、前記ゲート躯体は、前記扉体の幅方向両端を昇降自在に案内する一対のガイドを含む主躯体部と、この主躯体部の上部に配置され、前記扉体を昇降させるための機器が設置される操作台とを含み、前記操作台は、前記主躯体部の上部を覆う第1位置と、前記主躯体部の上方を開放する第2位置とに亘って変位可能となるように前記主躯体部に連結され、前記扉体は、前記操作台が前記第2位置に配置された状態で、前記一対のガイドに沿って上方に引き上げられることにより前記主躯体部から取外し可能に設けられている。
【発明の効果】
【0020】
本発明のポンプゲートは、扉体をゲート躯体から容易に取り外すことができ、ポンプのメンテナンスを容易に行い得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係るポンプゲートを、水路に設けられた基礎に設置した状態の平面図である。
【
図3】ポンプゲートの正面図(扉体は省略)である。
【
図4】ポンプゲートのゲート躯体(主躯体部及び操作台)の正面図である。
【
図6】主躯体部の断面図(
図4のVI-VI線断面図)である。
【
図7】主躯体部の断面図(
図4のVII-VII線断面図)である。
【
図8】主躯体部の断面図(
図4のVIII-VIII線断面図)である。
【
図9】(a)は、ゲート躯体のベース躯体部の平面図、(b)は、ベース躯体部の正面図である。
【
図10】ゲート躯体の基礎への取り付け状態を示す要部拡大側面図である。
【
図11】ゲート躯体の操作台を第1位置から第2位置に変位させた状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るポンプゲートを、水路に設けられた基礎に設置した状態の平面図、
図2は、ポンプゲートの側面図、
図3は、ポンプゲートの正面図(扉体は省略)である。
【0023】
ポンプゲート1は、河川等の水路100の本流100aと支流100bの分岐点等に設置されて使用されるものである。この実施形態では、水路100の本流100aから支流100bにかけて、断面コの字状の凹部を有するコンクリート製の基礎101が設けられており、この基礎101にポンプゲート1が設置されている。
【0024】
ポンプゲート1は、金属製のゲート躯体2と、ゲート躯体2に支持される扉体3と、扉体3を駆動する駆動装置4とを備えている。
【0025】
ゲート躯体2は、主躯体部5と、主躯体部5を保持するベース躯体部6と、主躯体部5に配置されて扉体3を昇降させるための後記ロープ案内用滑車(機器)43等の機器が載置される操作台7とを備えている。
【0026】
ベース躯体部6は、
図9に示すように、主躯体部5を受容するコの字状の受容凹部61を備えている。このベース躯体部6は、その周囲に、水路100に形成されたコンクリート製の基礎101に対して高さ調整可能に固定状に取り付ける複数の取付部62を備えている。詳しくは、
図10に示すように、基礎101には、取付部62に対応する位置にアンカーボルト101aが設けられている。そして、ベース躯体部6の各取付部62が、各アンカーボルト101aに挿通され、ナット101bを介してベース躯体部6が高さ調整されて基礎101に水平に取り付けられている。
【0027】
主躯体部5は、
図4、
図5に示すように、扉体3の幅方向両端を昇降自在に案内する左右一対のガイド51と、各ガイド51の下端に連結された連結部材52とを備えている。
【0028】
各ガイド51は、この実施形態では、
図6に示すようにガイド本体511と、ガイド本体511を両側から支持する支持部材512とを備えている。
【0029】
ガイド本体511は、下部側の主ガイド部5111と、主ガイド部5111から上方に一体に延びる上部側の副ガイド部5112とを備えている。
【0030】
主ガイド部5111は、互いに対向する一対の主ガイド対向壁5111aと、これら一対の対向壁5111aを繋ぐ側壁5111bとを備えており、これら一対の対向壁5111aと側壁5111bとによって断面略コの字型を呈している。
【0031】
副ガイド部5112は、
図7に示すように、主ガイド部5111の各主ガイド対向壁5111aそれぞれに連続して延びて互いに対向する2つの副ガイド対向壁5112aによって構成されており、前記側壁5111bのような側壁は備えていない。
【0032】
各支持部材512は、
図6に示すように断面H字型の支持柱5121と、支持柱5121を水路の側面に対して前記ゲート躯体2の位置を水路幅方向に調整可能な幅位置調整機構としての複数の位置決め部材5122とを備えている。
【0033】
支持柱5121は、主ガイド対向壁5111a及び副ガイド対向壁5112aそれぞれの両外側にこれらの上下方向に亘って配設されている。2つの支持柱5121は、
図5、
図7に示すように、副ガイド部5112に対応する領域では繋ぎ部材5123によって互いに連結されている。これにより、2つの支持柱5121の間隔が維持されている。
【0034】
各位置決め部材5122は、いわゆるアジャスターボルトからなり、
図6に示すように、支持柱5121に固定されたネジ軸5122aと、ネジ軸5122aに螺合されたナット部材5122bとで構成されている。
【0035】
連結部材52は、
図8に示すように、断面H字型の連結部材本体521と、高さ調整機構としての複数のジャッキボルト522とを備えている。
【0036】
各ジャッキボルト522は、連結部材本体521に螺合されてその先端が連結部材本体521の下端から下方に突出されているとともに、ジャッキボルト522が連結部材本体521に対して左又は右方向に回転することにより、連結部材本体521の下端からの突出量が変わるようになっている。
【0037】
このように構成された主躯体部5は、ベース躯体部6の受容凹部61内に配置され、その状態で、
図10に示すように、主躯体部5のガイド本体511の主ガイド部5111に設けられた接合部53がベース躯体部6に接合用ボルト531及び接合用ナット532を介して固定的に接合される。したがって、この状態で、主躯体部5の副ガイド部5112はベース躯体部6から上方側に突出している。
【0038】
また、この接合部53がベース躯体部6に接合される際に、
図8に示すように、主躯体部5のジャッキボルト522の先端が基礎101の底面102に形成された底凹部102aの凹部底面102bに当たるようにジャッキボルト522が回動操作されて、主躯体部5が基礎101の底面102に対して高さ位置調整される。これにより、ゲート躯体2の所定位置への設置作業を容易に行い得る。
【0039】
また、上記接合に際し、
図6に示すように、主躯体部5の位置決め部材5122のナット部材5122bが基礎101の側面103に形成された側凹部103aの凹部内対向側面103bに当たるようにナット部材5122bが回動操作されて、主躯体部5の両端が凹部内対向側面103b内において突っ張り固定される。これにより、基礎101(水路)の側面103に対して水路幅方向におけるゲート躯体2の位置を調整することができるとともに、水路の長手方向(水路方向)に直交する水流直交面に対する主躯体部5の傾きを調整することも可能になり、ゲート躯体2の所定位置への設置作業を容易にかつ正確に行い得るようになっている。
【0040】
操作台7は、
図4、
図5に示すように、主躯体部5の外幅L1と略同じ幅L2を有する略板状のものから構成されている。そして、この操作台7は、幅方向と直交する方向の一端側となる後端部側(
図5の右端部側)が、主躯体部5の上部に設けられた枢軸54に揺動可能に連結されている。これにより、操作台7が、その前端部側が主躯体部5の上端に載置されて主躯体部5の上部を覆う第1位置(
図2、
図4、
図5に示す位置)と、主躯体部5の上方を開放する第2位置(
図11に示す位置)とに亘って揺動可能となっているとともに、その自重で第1位置に保持されるようになっている。
【0041】
また、操作台7は、幅方向の中央部における前端部に、後記駆動装置4のロープ41を通すロープ挿通用凹部71を備えているとともに、ロープ挿通用凹部71近傍に、ロープ41の先端を係止させることが可能なロープ係止部72(
図11参照)を備えている。ロープ係止部72は、操作台7の下面に設けられている。
【0042】
扉体3は、
図1、
図2に示すように、矩形板状の扉本体31と、扉本体31に取り付けられたポンプ32とを備えている。
【0043】
扉本体31は、幅方向の両端部にそれぞれ、主躯体部5のガイド51それぞれの主ガイド対向壁5111a及び副ガイド対向壁5112aに当接して転動、当該ガイド本体511に沿って案内されるローラ311(
図2、
図11参照)を備えている。
【0044】
ポンプ32は、扉本体31に設けられた図示しない通水用貫通孔を介して支流100b側から本流100a側に水を送る。また、ポンプ32は、本流100a側から支流100b側への水の逆流を防止するための逆止弁321を備えている。
【0045】
また、ポンプ32の上部に、後述の駆動装置4のロープ41の先端を係脱自在に係止するポンプ用ロープ係止部322が設けられている。
【0046】
駆動装置4は、扉体3に連結されるロープ41と、このロープ41の巻取り及び送り出しを行う装置本体42と、操作台7に設置され、扉体3を昇降させるための機器であるロープ案内用滑車43とを備えている。
【0047】
装置本体42は、操作台7以外の場所であってロープ案内用滑車43よりも低い位置に設置されている。実施形態では、装置本体42は、ベース躯体部6上に設置されている。
【0048】
ロープ案内用滑車43は、操作台7上の前側に設置された第1滑車431と、操作台7上の後側に設置された第2滑車432との2つからなる。ロープ41は、装置本体42から第2滑車432に、第2滑車432から第1滑車431に順に掛け渡され、更に、第1滑車431から下方に案内されてポンプ32のポンプ用ロープ係止部322に係止されている。これにより、ロープ41の先端は、ポンプ32を介して扉体3に連結されている。
【0049】
次に、本実施形態のポンプゲート1の動作について説明する。支流100bの水位が本流100aの水位よりも高い場合は、扉体3を主躯体部5の副ガイド部5112の位置に配置して、ポンプゲート1をゲート開放状態にする(
図2中の破線で示す状態)。
【0050】
すなわち、
図2の実線に示す状態から装置本体42を作動させてロープ41を巻き取る。この巻き取りにより、扉体3が上昇して主躯体部5の主ガイド部5111から副ガイド部5112に入り込み、当該副ガイド部5112の位置に扉体3が吊り下げられた、ポンプゲート1のゲート開放状態となる。このゲート開放状態で、支流100bの水が本流100aに自然に流れる。
【0051】
その際、副ガイド部5112には上記の通り側壁が無いため(
図7参照)、ガイド51の側方からから扉体3のローラ311を目視でき、これによりローラ311を点検することが可能となる。
【0052】
一方、例えば洪水時等のように本流100aの水位が支流100bの水位よりも上昇し本流100aの水が支流100bに逆流するおそれがある場合は、扉体3を下降させて、ポンプゲート1をゲート閉鎖状態にする(
図2中の実線で示す状態)。これにより、本流100aから支流100bへの逆流を防止することができる。
【0053】
詳しくは、装置本体42を操作してロープ41を送り出す。この送り出しにより、扉体3が自重で主躯体部5の副ガイド部5112から主ガイド部5111に入り込み、扉体3が連結部材52の位置まで降下した、ポンプゲート1のゲート閉鎖状態となる。
【0054】
なお、このゲート閉鎖状態において、ポンプ32を作動させれば、逆止弁321が開いて支流100b側の水を本流100a側に強制的に送り出すことができる。
【0055】
ポンプ32を含む扉体3の整備、維持、保守、点検、手入れ等のメンテナンスを行う場合は、次のような手順で行うことができる。
【0056】
まず、
図11に示すように、ロープ41の先端をポンプ用ロープ係止部322から外し、操作台7のロープ係止部72に係止する。そして、装置本体42を作動させてロープ41を巻き取る。このようにロープ41を巻き取ると、操作台7が枢軸54を支点として揺動し、操作台7が、主躯体部5の上部を覆った第1位置(
図2参照)から主躯体部5の上方を開放した、
図11に示す第2位置に変位する。これにより、主躯体部5の上方が開放され、扉体3を主躯体部5から取り出し可能状態となる。
【0057】
この状態で、駆動装置4のロープ41とは別の扉引き上げ用ロープ、例えばクレーンのロープ(扉引き上げ用ロープ104という)の先端をポンプ用ロープ係止部322に係止し、扉引き上げ用ロープ104を介して扉体3を引き上げる。これにより、扉体3をゲート躯体2から取り出すことができる。したがって、ポンプ32を含む扉体3のメンテナンスを陸上の開放された場所で行うことができ、従来のように水路内でメンテナンスを行う場合に比べてメンテナンスを容易に行うことができる。
【0058】
なお、ポンプ32を含む扉体3をメンテナンス後にゲート躯体2に戻す(装着する)には、上記の手順とは逆の手順に従って行うことができる。
【0059】
つまり、主躯体部5の上方を開放した状態で、扉引き上げ用ロープ104によって扉体3をゲート躯体2の上方に移動させ、扉体3を下げてゲート躯体2に装着する。そして、装置本体42を作動させてロープ41を送り出し、操作台7をその自重で揺動させて当該操作台7の前部が主躯体部5の上端に載置された位置、すなわち第1位置に配置する。その後、扉引き上げ用ロープ104の先端をポンプ用ロープ係止部322から外すとともに、ロープ41の先端を操作台7のロープ係止部72から取り外してポンプ用ロープ係止部322に係止する。
【0060】
以上説明したように、上記実施形態のポンプゲート1は、操作台7を第1位置から第2位置に変位させることにより主躯体部5の上方を開放でき、これにより、扉体3をゲート躯体2に対して容易に脱着することが可能となる。したがって、扉体3に組み込まれたポンプ32のメンテナンスを、当該ポンプ32を扉体3と共にゲート躯体2から取り外した状態で行うことが可能になり、ポンプ32のメンテナンスを陸上の開放された場所で行うことができる。したがって、メンテナンス性が良いという利点がある。
【0061】
その際、ポンプゲート1の操作台7は、第1位置と第2位置とに亘って揺動可能となるように枢軸54を介して主躯体部5に連結されているため、操作台7を傾けるだけで比較的容易に主躯体部5の上方を開放して扉体3の脱着を行うことができる。
【0062】
また、ポンプゲート1における駆動装置4の装置本体42は、ロープ案内用滑車43よりも低い位置に設置されているため、例えば油圧モータでねじ軸を回転させることにより扉体を昇降させるものに比べて、操作台7に設置する機器を軽量化でき、操作台7を移動させる際の力がより小さくて済む。しかも、装置本体42が操作台7上に無いことで、ポンプゲート1の全高を低く抑えることができ、ポンプゲート1の高さによって景観を損なうことが抑制される。
【0063】
また、ポンプゲート1の操作台7は、扉体3から取り外したロープ41の先端を係止させることが可能なロープ係止部72を備えているため、扉体3から取り外したロープ41の先端をロープ係止部72に係止し、当該ロープ41を装置本体42により巻き取ることにより、第1位置から第2位置へ操作台7を難なく変位させることができる。従って、上記ポンプゲート1によれば、駆動装置4を、操作台7を移動させるための手段として兼用した合理的な構成が達成される。
【0064】
また、ポンプゲート1におけるゲート躯体2は、コンクリート製の基礎上にアンカーボルトで固定される金属製のベース躯体部6と、金属からなりかつこのベース躯体部6に接合される主躯体部5とで構成されるため、従来のようなコンクリート製の門型(箱型)構造体を施工現場で製作する必要がなく、工場で別途に製作したゲート躯体2等を施工現場に持ち込むことでポンプゲート1を容易に設置することが可能となる。従って、施工が簡単で、また施工期間を短縮することも可能になる。
【0065】
また、ポンプゲート1は、水路100の底面に対してゲート躯体2の高さを調整することが可能な高さ調整機構や、水路100に対してゲート躯体2の位置を幅方向に調整することが可能な幅位置調整機構を備えているため、ポンプゲート1(ゲート躯体2)を設置する際の作業性もよい。
【0066】
なお、上記実施形態では、操作台7は、枢軸54を介して主躯体部5に揺動可能に連結されているが、この形態のものに限らず、適宜変更できる。例えば操作台7は主躯体部5に、主躯体部5の上部を覆う位置から主躯体部5の上方を開放する位置まで前後方向又は左右方向に移動(スライド)可能に主躯体部5に連結されてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、ポンプ32にロープ41の先端を係脱自在に係止するポンプ用ロープ係止部322が形成されているが、例えば扉本体31にロープ41の先端を係脱自在に係止するロープ係止部が形成されていてもよく、適宜変更できる。また、扉本体31及びポンプ32の両方にそれぞれに、ロープ係止部を形成しておき、通常はロープ41の先端を何れか一方に係止してゲート開閉を行い、扉体3をゲート躯体2から外す場合に、それぞれのロープ係止部に扉引き上げ用ロープ104を係止して扉本体31とポンプ32の双方を引き上げるようにしてもよい。この構成によれば、扉体3をゲート躯体2に対して脱着する際に、ポンプ32を含む扉体3をより安定的に吊り上げることができる。
【符号の説明】
【0068】
1 ポンプゲート
2 ゲート躯体
3 扉体
4 駆動装置
5 主躯体部
6 ベース躯体部
7 操作台
32 ポンプ
41 ロープ
43 ロープ案内用滑車
51 ガイド
54 枢軸
100 水路
100a 本流
100b 支流
101 基礎