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特許7237311化合物、医薬組成物、KDM5C阻害剤及び抗うつ剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】化合物、医薬組成物、KDM5C阻害剤及び抗うつ剤
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/04 20060101AFI20230306BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20230306BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20230306BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230306BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
C07D401/04 CSP
A61K31/4439
A61P25/24
A61P35/00
A61P43/00 105
A61P43/00 111
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019106166
(22)【出願日】2019-06-06
(65)【公開番号】P2020200247
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-01-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「エピジェネティクス制御化合物の設計、合成と酵素活性評価」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】509349141
【氏名又は名称】京都府公立大学法人
(73)【特許権者】
【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝禎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】三宅 由花
(72)【発明者】
【氏名】児玉 英彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴間 喜教
(72)【発明者】
【氏名】内田 周作
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-514159(JP,A)
【文献】特表2016-520528(JP,A)
【文献】特表2017-512804(JP,A)
【文献】特表2016-501882(JP,A)
【文献】特表2018-511621(JP,A)
【文献】Nucleic Acids Research,Vol. 45, No. 4,2017年,pp. 1743-1759
【文献】Neuropsychopharmacology,2013年,Vol. 38,pp. 124-137
【文献】Phil. Trans. R. Soc. B ,Vol. 369, 20130514,pp. 1-10,http://dx.doi.org/10.1098/rstb.2013.0514
【文献】MedChemComm,2014年,Vol. 5, No. 12,pp. 1879-1886
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)
【化1】
(式中、R~Rのいずれか1つはCORを示し、R~Rの他の3つは、同一または相異なり、水素原子、ハロゲン原子、OH、NO、CN、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニルアミノ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、カルバモイル、アリールカルボニルアミノ、アリール、アラルキル、アルキルカルボニル、SH又はアルキルチオを示す。RとR、RとR、RとRは、メチレンジオキシを表わすか、或いは、これらが結合している炭素原子と一緒になってシクロペンテン環、シクロペンタジエン環、シクロヘキセン環、シクロヘキサジエン環、ベンゼン環、或いは5員又は6員のヘテロ環を形成してもよい。
は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル、アルコキシ、アリール、アラルキル、ヒドロキシアルキル又はシクロアルキルを示す。RとRは、これらが結合している炭素原子と一緒になって置換基を有していてもよいベンゼン環又は置換基を有していてもよいピリジン環を形成してもよい。
、Rは、同一または相異なり、水素原子、アルキル、アルコキシ、アリール、アラルキル、ヒドロキシアルキル又はシクロアルキルを示す。但し、RとRが同時に水素原子となることはない。
は、OH、アルコキシ、ヒドロキシアルキルオキシ、シクロアルキルオキシ、アリールオキシ又はアラルキルオキシを示す。
ZはNを示す
nは0~5の整数を示す。)
で表される化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を有効成分とするKDM5C阻害剤。
【請求項4】
下記式(I)
【化2】
(式中、R ~R のいずれか1つはCOR を示し、R ~R の他の3つは、同一または相異なり、水素原子、ハロゲン原子、OH、NO 、CN、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニルアミノ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、カルバモイル、アリールカルボニルアミノ、アリール、アラルキル、アルキルカルボニル、SH又はアルキルチオを示す。R とR 、R とR 、R とR は、メチレンジオキシを表わすか、或いは、これらが結合している炭素原子と一緒になってシクロペンテン環、シクロペンタジエン環、シクロヘキセン環、シクロヘキサジエン環、ベンゼン環、或いは5員又は6員のヘテロ環を形成してもよい。
は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル、アルコキシ、アリール、アラルキル、ヒドロキシアルキル又はシクロアルキルを示す。R とR は、これらが結合している炭素原子と一緒になって置換基を有していてもよいベンゼン環又は置換基を有していてもよいピリジン環を形成してもよい。
、R は、同一または相異なり、水素原子、アルキル、アルコキシ、アリール、アラルキル、ヒドロキシアルキル又はシクロアルキルを示す。但し、R とR が同時に水素原子となることはない。
は、OH、アルコキシ、ヒドロキシアルキルオキシ、シクロアルキルオキシ、アリールオキシ又はアラルキルオキシを示す。
ZはN又はCR を示す。R は水素原子、アルキル、アリール又はアラルキルを示す。
nは0~5の整数を示す。)
で表される化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を有効成分とする抗うつ剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、医薬組成物、KDM5C阻害剤及び抗うつ剤に関する。
【背景技術】
【0002】
KDM5はがんとの関係が知られており、例えば特許文献1は、KDM5拮抗剤ががん治療及びがんの薬剤耐性の防止に有効であることを開示する。また、特許文献2は、
ヒストン脱メチル化酵素の活性をモジュレートすることができる化合物ががんの治療に有効であることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2016-520528号公報
【文献】特表2017-512804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、強力なKDM5C阻害作用を有する化合物、医薬組成物及び抗うつ剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の化合物、医薬組成物、KDM5C阻害剤及び抗うつ剤を提供するものである。
項1. 下記式(I)
【0006】
【化1】
【0007】
(式中、R~Rのいずれか1つはCORを示し、R~Rの他の3つは、同一または相異なり、水素原子、ハロゲン原子、OH、NO、CN、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニルアミノ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、カルバモイル、アリールカルボニルアミノ、アリール、アラルキル、アルキルカルボニル、SH又はアルキルチオを示す。RとR、RとR、RとRは、メチレンジオキシを表わすか、或いは、これらが結合している炭素原子と一緒になってシクロペンテン環、シクロペンタジエン環、シクロヘキセン環、シクロヘキサジエン環、ベンゼン環、或いは5員又は6員のヘテロ環を形成してもよい。
は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル、アルコキシ、アリール、アラルキル、ヒドロキシアルキル又はシクロアルキルを示す。RとRは、これらが結合している炭素原子と一緒になって置換基を有していてもよいベンゼン環又は置換基を有していてもよいピリジン環を形成してもよい。
、Rは、同一または相異なり、水素原子、アルキル、アルコキシ、アリール、アラルキル、ヒドロキシアルキル又はシクロアルキルを示す。但し、RとRが同時に水素原子となることはない。
は、OH、アルコキシ、ヒドロキシアルキルオキシ、シクロアルキルオキシ、アリールオキシ又はアラルキルオキシを示す。
ZはN又はCRを示す。Rは水素原子、アルキル、アリール又はアラルキルを示す。
nは0~5の整数を示す。)
で表される化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
項2. 項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
項3. 項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を有効成分とするKDM5C阻害剤。
項4. 項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を有効成分とする抗うつ剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、強力なKDM5C阻害作用を有する抗うつ剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】NPC-3422、CPI-455、NCDM-81aのKDM阻害活性
図2】細胞におけるKDM5C選択性
図3】GxEうつモデル: smSDS model
図4】KDM5C阻害剤による抗ストレス作用
図5】うつ病モデル(sucrose preference 試験)におけるKDM5C阻害薬の効果。
図6】うつ様行動に関わるKDM5C標的遺伝子の探索。非ストレス、ストレス+溶媒、ストレス+KDM5C阻害剤、の3群の脳内遺伝子発現変動をRNA-seqにより解析した(各群n=4)。(左)主成分分析。多変量データを統合し、新たな総合指標を作り出すための手法。多次元のデータから、全体を分かりやすく1-3程度の次元に要約したデータ。群間の類似度は距離で示され、距離が離れていれば群間で有意に差のある遺伝子を抽出することができる。(右)クラスタリング解析。「非ストレス」と「ストレス+KDM5C阻害剤」の類似度(遺伝子発現パターン)が高いことが示された。すなわち、ストレス負荷によって生じた異常な遺伝子発現パターンがKDM5C阻害剤によって正常化していることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の化合物は、下記式(I)
【0011】
【化2】
【0012】
(式中、R~R、Z、nは、前記に定義された通りである。)
で表される化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0013】
本発明の1つの好ましい実施形態において、RはCORを示し、R、R、Rは同一または相異なり、水素原子、ハロゲン原子、OH、NO、CN、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、カルバモイル、アルキルカルボニルアミノ、アリール、アラルキル、アルキルカルボニル、SH又はアルキルチオを示す。RとRは、メチレンジオキシを表わすか、或いは、これらが結合している炭素原子と一緒になってシクロペンテン環、シクロペンタジエン環、シクロヘキセン環、シクロヘキサジエン環、ベンゼン環、或いは5員又は6員のヘテロ環を形成してもよい。
【0014】
本発明の他の1つの好ましい実施形態において、RはCORを示し、R、R、Rは同一または相異なり、水素原子、ハロゲン原子、OH、NO、CN、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、カルバモイル、アルキルカルボニルアミノ、アリール、アラルキル、アルキルカルボニル、SH又はアルキルチオを示す。RとRは、メチレンジオキシを表わすか、或いは、これらが結合している炭素原子と一緒になってシクロペンテン環、シクロペンタジエン環、シクロヘキセン環、シクロヘキサジエン環、ベンゼン環、或いは5員又は6員のヘテロ環を形成してもよい。
【0015】
本発明の他の1つの好ましい実施形態において、RはCORを示し、R~Rは同一または相異なり、水素原子、ハロゲン原子、OH、NO、CN、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、カルバモイル、アルキルカルボニルアミノ、アリール、アラルキル、アルキルカルボニル、SH又はアルキルチオを示す。RとR、RとRは、メチレンジオキシを表わすか、或いは、これらが結合している炭素原子と一緒になってシクロペンテン環、シクロペンタジエン環、シクロヘキセン環、シクロヘキサジエン環、ベンゼン環、或いは5員又は6員のヘテロ環を形成してもよい。
【0016】
本発明の他の1つの好ましい実施形態において、Rは水素原子、フッ素原子又はアルキルである。
【0017】
本発明の他の1つの好ましい実施形態において、R、Rは、同一または相異なり、水素原子、アルキル、アラルキル、ヒドロキシアルキル又はシクロアルキルを示し、より好ましくはアルキルを示す。
【0018】
本発明の他の1つの好ましい実施形態において、RはOH、アルコキシ、アリールオキシ又はアラルキルオキシである。
【0019】
本発明の他の1つの好ましい実施形態において、Rは水素原子又はアルキルである。
【0020】
本発明の他の1つの好ましい実施形態において、一般式(I)で表される本発明の好ましい化合物は、RがCORを示し、R、R、R、Rがいずれも水素原子である。
【0021】
nは0~5の整数、好ましくは0~4の整数、より好ましくは1~3の整数、さらに好ましくは1又は2、特に好ましくは1である。
【0022】
Zは、N(窒素原子)又はCR、より好ましくはNである。
【0023】
溶媒和物を構成する溶媒としては、水、アルコール(メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなど)、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
【0024】
薬学的に許容される塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などのアルカリ金属塩、フッ酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩などの無機酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、ピルビン酸塩、安息香酸塩などの有機酸塩が挙げられる。
【0025】
本明細書において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましく、フッ素原子、塩素原子がより好ましい。
【0026】
アルキルとしては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2-エチルヘキシル、ノニル、デシル等の直鎖又は分枝を有するC1-10アルキル、好ましくはC1-8アルキル、より好ましくはC1-6アルキルが挙げられる。
【0027】
アルキルチオとしては、メチルチオ、エチルチオ、n-プロピルチオ、イソプロピルチオ、n-ブチルチオ、イソブチルチオ、tert-ブチルチオ、n-ペンチルチオ、イソペンチルチオ、ヘキシルチオ等の直鎖又は分枝を有するC1-6アルキルチオが挙げられる。
【0028】
ヒドロキシアルキルとしては、ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、3-ヒドロキシプロピル、4-ヒドロキシブチル、5-ヒドロキシペンチル、6-ヒドロキシヘキシル等のC1-6ヒドロキシアルキルが挙げられる。
【0029】
ヒドロキシアルキルオキシとしては、ヒドロキシメチルオキシ、2-ヒドロキシエチルオキシ、3-ヒドロキシプロピルオキシ、4-ヒドロキシブチルオキシ、5-ヒドロキシペンチルオキシ、6-ヒドロキシヘキシルオキシ等のC1-6ヒドロキシアルキルオキシが挙げられる。
【0030】
シクロアルキルとしては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチル等のC3-7シクロアルキルが挙げられる。
【0031】
シクロアルキルオキシとしては、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ及びシクロヘプチルオキシ等のC3-7シクロアルキルオキシが挙げられる。
【0032】
アルキルカルボニルアミノとしては、メチルカルボニルアミノ、エチルカルボニルアミノ、n-プロピルカルボニルアミノ、イソプロピルカルボニルアミノ、n-ブチルカルボニルアミノ、イソブチルカルボニルアミノ、tert-ブチルカルボニルアミノ、n-ペンチルカルボニルアミノ、イソペンチルカルボニルアミノ、ヘキシルカルボニルアミノ等の直鎖又は分岐を有するC1-6アルキルカルボニルアミノが挙げられる。
【0033】
アルキルカルボニルとしては、メチルカルボニル、エチルカルボニル、n-プロピルカルボニル、イソプロピルカルボニル、n-ブチルカルボニル、イソブチルカルボニル、tert-ブチルカルボニル、n-ペンチルカルボニル、イソペンチルカルボニル、ヘキシルカルボニル等の直鎖又は分岐を有するC1-6アルキルカルボニルが挙げられる。
【0034】
アリールとしては、5又は6員の芳香族炭化水素環からなる単環又は多環系の基を意味し、具体的には、フェニル、ナフチル、フルオレニル、アントリル、ビフェニリル、テトラヒドロナフチル、クロマニル、2,3-ジヒドロ-1,4-ジオキサナフタレニル、インダニル及びフェナントリルが挙げられる。
【0035】
5員又は6員のヘテロ環としては、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジンが挙げられる。
【0036】
アルキルカルボニルオキシの具体例としては、メチルカルボニルオキシ、エチルカルボニルオキシ、n-プロピルカルボニルオキシ、イソプロピルカルボニルオキシ、n-ブチルカルボニルオキシ、イソブチルカルボニルオキシ、tert-ブチルカルボニルオキシ、n-ペンチルカルボニルオキシ、イソペンチルカルボニルオキシ、ヘキシルカルボニルオキシ等のC1-6アルキルカルボニルオキシが挙げられる。
【0037】
アリールカルボニルオキシの具体例としては、フェニルカルボニルオキシ、ナフチルカルボニルオキシ、フルオレニルカルボニルオキシ、アントリルカルボニルオキシ、ビフェニリルカルボニルオキシ、テトラヒドロナフチルカルボニルオキシ、クロマニルカルボニルオキシ、2,3-ジヒドロ-1,4-ジオキサナフタレニルカルボニルオキシ、インダニルカルボニルオキシ及びフェナントリルカルボニルオキシが挙げられる。
【0038】
アリールカルボニルアミノの具体例としては、フェニルカルボニルアミノ、ナフチルカルボニルアミノ、フルオレニルカルボニルアミノ、アントリルカルボニルアミノ、ビフェニリルカルボニルアミノ、テトラヒドロナフチルカルボニルアミノ、クロマニルカルボニルアミノ、2,3-ジヒドロ-1,4-ジオキサナフタレニルカルボニルアミノ、インダニルカルボニルアミノ及びフェナントリルカルボニルアミノが挙げられる。
【0039】
アルコキシの具体例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等の直鎖又は分岐を有するC1-6アルコキシが挙げられる。
【0040】
アリールオキシの具体例としては、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、フルオレニルオキシ、アントリルオキシ、ビフェニリルオキシ、テトラヒドロナフチルオキシ、クロマニルオキシ、2,3-ジヒドロ-1,4-ジオキサナフタレニルオキシ、インダニルオキシ及びフェナントリルオキシが挙げられる。
【0041】
アラルキルの具体例としては、ベンジル、ナフチルメチル、フルオレニルメチル、アントリルメチル、ビフェニリルメチル、テトラヒドロナフチルメチル、クロマニルメチル、2,3-ジヒドロ-1,4-ジオキサナフタレニルメチル、インダニルメチル及びフェナントリルメチル、フェネチル、ナフチルエチル、フルオレニルエチル、アントリルエチル、ビフェニリルエチル、テトラヒドロナフチルエチル、クロマニルエチル、2,3-ジヒドロ-1,4-ジオキサナフタレニルエチル、インダニルエチル及びフェナントリルエチルが挙げられる。
【0042】
アラルキルオキシの具体例としては、ベンジルオキシ、ナフチルメチルオキシ、フルオレニルメチルオキシ、アントリルメチルオキシ、ビフェニリルメチルオキシ、テトラヒドロナフチルメチルオキシ、クロマニルメチルオキシ、2,3-ジヒドロ-1,4-ジオキサナフタレニルメチルオキシ、インダニルメチルオキシ及びフェナントリルメチルオキシ、フェネチルオキシ、ナフチルエチルオキシ、フルオレニルエチルオキシ、アントリルエチルオキシ、ビフェニリルエチルオキシ、テトラヒドロナフチルエチルオキシ、クロマニルエチルオキシ、2,3-ジヒドロ-1,4-ジオキサナフタレニルエチルオキシ、インダニルエチルオキシ及びフェナントリルエチルオキシが挙げられる。
【0043】
置換基を有していてもよいベンゼン環又は置換基を有していてもよいピリジン環の置換基としては、ハロゲン原子、OH、NO、CN、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アミノ、カルバモイル、アルキルカルボニルアミノ、アリール、アラルキル、アルキルカルボニル、SH又はアルキルチオが挙げられる。
【0044】
本発明の化合物は、以下のスキーム1~3に従い製造することができる。
スキーム1
【0045】
【化3】
【0046】
(式中、R~R、R、R、nは前記に定義される通りである。)
スキーム2
【0047】
【化4】
【0048】
(式中、R~R、Z、nは前記に定義される通りである。Xは脱離基を示す。)
スキーム3
【0049】
【化5】
【0050】
(式中、R~R、Z、nは前記に定義される通りである。Xは脱離基を示す。)
スキーム1において、化合物(1)1モルに対し化合物(2)を1モルから過剰量、硫酸銅を1モルから過剰量、アスコルビン酸を1モルから過剰量使用し、クリックケミストリーにより溶媒の存在下に10℃~溶媒の沸点程度の温度下に1~24時間反応させることで、R=H、Z=Nである本発明の化合物(IA)を得ることができる。
【0051】
スキーム2において、化合物(3)1モルに対し化合物(4)を1モルから過剰量使用し、必要に応じて塩基及び溶媒の存在下に10℃~溶媒の沸点程度の温度下に1~24時間反応させることで、本発明の一般式(I)の化合物を得ることができる。
【0052】
スキーム3において、化合物(5)1モルに対し化合物(6)を1モルから過剰量使用し、必要に応じて塩基及び溶媒の存在下に10℃~溶媒の沸点程度の温度下に1~24時間反応させることで、本発明の一般式(I)の化合物を得ることができる。
【0053】
スキーム1~3の反応において、溶媒としては、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタンなどの塩素化炭化水素、トルエン等の芳香族溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒が挙げられる。
【0054】
スキーム2~3の反応において、塩基としては、DBU、ピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなどが挙げられる。
【0055】
脱離基としては、塩素原子、臭素原子、p-トルエンスルホニルオキシ(Ts-O)、ベンゼンスルホニルオキシ、メタンスルホニルオキシ(Ms-O)などが挙げられる。
【0056】
本発明の好ましい化合物は、KDM5C(Lysine-specific demethylase 5C)阻害剤であり、より好ましくはKDM5Cを選択的に阻害する。KDM5Cに対するIC50は100nM以下が好ましく、50nM以下がより好ましく、10nM以下がさらに好ましい。また、KDM5Cに対するIC50はKDM5Aに対するIC50よりも10倍以上低いことが好ましく、50倍以上低いことがより好ましく、100倍以上低いことがさらに好ましい。
【0057】
本発明の化合物は、KDM5Cの強力な阻害作用を有し、抗うつ剤として好ましい。
【0058】
本発明の化合物を有効成分とする医薬は、その使用目的に合わせて投与方法、剤型、投与量を適宜決定することが可能である。例えば、本発明の化合物を有効成分とする医薬の投与形態は、経口投与でも非経口投与でも良い。剤型としては、例えば錠剤、粉剤、カプセル剤、顆粒剤、エキス剤、シロップ剤等の経口投与剤、または注射剤、点滴剤、もしくは坐剤等の非経口投与剤を挙げることができる。これらの製剤は、本発明の化合物と薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物として製造することができる。本発明の化合物の抗うつ剤としての有効量は、通常、成人一日当たり経口投与の場合、0.1-1000 mg、非経口投与の場合0.01-200 mg程度が適当であり、これを一日に一回乃至複数回投与する。投与量は種々の条件で変動するので、上記投与量範囲より少ない量で充分な場合もある。
【実施例
【0059】
以下、実施例を参照して本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の特定の実施例に限定されるものではない。
【0060】
・分析
融点はYanagimoto製融点測定装置を用いて測定した。
1H NMR(300 MHz)および13C NMR(75 MHz)はBRUKER社 AVANCE300 AV spectrometerを用いて測定した。化学シフト(δ)は内部標準であるテトラメチルシランを元にparts per million (ppm)で示した。
Electrospray ionization (ESI) マススペクトルはBRUKER社HCT plus mass spectrometerを用いた。
HPLCは島津製HPLC装置にCOSMOSIL Packed Column(5C18-AR-II, 4.6ID×150 mm, ナカライ製)を取り付け、以下の条件で測定した。溶媒:(A)0.1%TFA水溶液、(B)0.1%TFAアセトニトリル溶液。流速:1.0 mL/min。測定波長:254 nm。溶媒組成:A/B 0~20 分(90/10 ~ 10/90), 20~30 分 (10/90), 30 ~ 40 (10-90 ~ 90/10).
【0061】
・試薬
試薬と溶媒はAldrich、東京化成工業、キシダ化学、関東化学、和光純薬、ナカライテスクの市販品をそのまま使用した。カラムクロマトグラフィーはTOYOTAKAKO SILICA GEL製 (#AP300D)シリカゲル(粒径 200-440 mesh) を用いた。
【0062】
KDM5阻害剤として報告されたCPI-455は、文献(Nat Chem Biol. 2016 Jul;12(7):531-8. doi: 10.1038/nchembio.2085. Epub 2016 May 23.)に従い合成した。
【0063】
KDM5阻害剤として報告されたNCDM-81aは、文献(ACS Med. Chem. Lett.2015, 6, 6, 665-670)に従い合成した。
【0064】
製造例1
2-Ethynylisoniconinic acid (Alk1)
Step 1. methyl 2-bromoisonicotinate (9).
2-ブロモニコチン酸 (1.46 g, 7.23 mmol)のジクロロメタン/メタノール(10.0 mL/15.0 mL)溶液にEDCI.HCl (1.36 g, 7.20 mmol)を加え20時間室温で撹拌した。反応終了後、溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n-ヘキサン = 1/10)で精製した。無色粉末固体1.35 gの生成物9を得た。収率87%。 1H NMR (CDCl3, 300 MHz, δ; ppm) 8.52 (dd, 1H, J = 4.2, 0.6 Hz), 8.02 (t, 1H, J = 6.6 Hz), 7.80 (dd, 1H, J = 3.9, 0.6 Hz), 3.97 (s, 3H); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz, δ; ppm) 151.04, 144.26, 141.19, 129.15, 123.30, 54.40; MS (ESI) m/z 215.7, 217.7 (MH+).
【0065】
Step 2: 2-trimethylsilylethynylpyridine-4-carboxylic acid methyl ester (10)
化合物 9 (216 mg, 1.00 mmol), PdCl2(PPh3)2(36.0 mg, 51.2 μmol)とCuI (19.0 mg,100 μmol)のトリエチルアミン(200 μL)/アセトニトリル(2.00 mL)溶液にトリメチルシリルアセチレン(165 μL, 1.17 mmol)をアルゴン雰囲気下で加えた。反応溶液を室温、アルゴン雰囲気下で3時間撹拌した。反応終了後、溶媒を留去し、残渣にジエチルエーテルを加え、ろ過により固体を除去した。ろ液を濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n-ヘキサン= 1/10)で精製し、102 mgの黄色オイル状生成物10を得た。収率70%。1H NMR (CDCl3, 300 MHz, δ; ppm) 8.68 (dd, 1H, J = 4.2, 0.6 Hz), 7.97 (s, 1H), 7.73 (dd, 1H, J = 4.2, 0.6 Hz), 3.93 (s, 3H), 0.26 (s, 9H); 13C NMR(CDCl3, 75 MHz, δ; ppm) 151.04, 144.26, 138.20, 127.06, 122.58, 103.50, 96.86,53.35, 0.18; MS (ESI) m/z 233.8 (MH+).
【0066】
Step 3: 2-Ethynyisonicotinic acid (Alk1)
化合物10 (50.0 mg, 215 μmol)のメタノール(2.00 mL)溶液に2 N水酸化ナトリウム水溶液 (236 μL, 472 μmol)を0 °Cで加えた。反応溶液を室温、12時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に飽和クエン酸水溶液を加えpHを4.0に調整した。析出した固体をろ取し、水で洗浄後、乾燥させた。粗生成物をメタノール/酢酸エチル=2/1で再結晶し、29.4 mgの白色固体Alk1を得た。収率93%。mp 203-205 °C; 1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz, δ; ppm) 8.75 (dd, 1H, J = 5.1, 0.9 Hz), 7.87-7.88 (m, 1H), 7.81 (dd, 1H, J = 4.8, 1.5 Hz), 4.45 (s, 1H); 13C NMR (DMSO-d6, 75 MHz, δ; ppm) 164.95, 150.97, 143.43, 137.88, 126.11, 122.75, 82.64, 81.05; Anal. Calcd. for C8H5NO1 : C, 65.31; H, 3.43; N, 9.52. Found: C, 64.91; H, 3.60; N, 9.28. HRMS (EI) Calcd. for C8H5O2N 147.0320, Found 147.0310.
【0067】
N-(methylsulfonyl)-2-ethynyl-4-pyridinecarboxamide (Alk2)Alk1 (147 mg, 1.00 mmol)、EDCI. HCl (388 mg, 2.00 mmol)、およびDMAP (244 mg, 2.00mmol)のジクロロメタン(15.0 mL)溶液にmethyl sulfonamide (189 mg, 2.00 mmol)を加え、室温で24時間撹拌した。反応溶液を水で洗浄し、水層を1N塩酸で酸性にした後、ジクロロメタンで抽出した。有機層を水で洗浄し、Na2SO4で乾燥したあと、エバポレーターで溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール = 10/1)で精製し、56 mgの褐色固体Alk2を得た。収率26%。 mp 141-142℃; 1H NMRDMSO-d6, 300 MHz, δ; ppm) 8.76 (1H, dd, J = 4.5, 0.9 Hz), 8.00 (1H, q, J = 0.9Hz), 7.82 (1H, dd, J = 3.6, 1.5 Hz), 4.50 (1H, s), 3.38 (3H, s); 13C NMR (DMSO-d6, 75 MHz, δ; ppm) 164.62, 151.02, 142.36, 139.99, 125.40, 121.88, 82.41, 81.39, 41.16; MS (ESI) m/z 225.1 (MH+); HPLC tR=7.58 min purity 96.5%. Anal. Calcd.for C8H5NO1: C, 65.31; H, 3.43; N, 9.52. Found: C, 64.91; H, 3.60; N, 9.28. HRMS (EI) Calcd. for C8H5O2N 147.0320, Found 147.0310.
【0068】
4-(2H-tetrazol-5-yl)-pyridine (Alk3)
Step 1:4-cyano-2-[2-(trimethylsilyl) ethynyl] pyridine (12)
2-chloro-4-cyanopyridine 11 (1.40 g, 10.0 mmol)、PdCl2(PPh3)2(138 mg, 330 μmol)およびCuI (38.0 mg, 330 μmol)のトリエチルアミン(20.0 mL)/アセトニトリル(20.0 mL)溶液にトリメチルシリルアセチレン(2.20 mL, 15.0 mmol)をアルゴン雰囲気下で加え、反応溶液をアルゴン雰囲気下3時間60 °Cで加熱した。反応終了後、溶媒をエバポレーターで留去し、ジエチルエーテルを加え1 N塩酸、飽和NaHCO3水溶液、brineで有機層を洗浄、Na2SO4で乾燥させた。溶媒を留去後、残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n-ヘキサン = 1/10)で精製し、1.96 gの黄白色固体12を得た。収率98%。 mp 46.0-48.0 °C 1H NMR (CDCl3, 300 MHz, δ; ppm) 8.75 (1H, dd, J = 4.2, 0.9 Hz), 7.67 (1H, q, J = 0.3 Hz), 7.44 (1H, dd, J = 3.6, 1.5 Hz), 0.30 (9H, s); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz, δ; ppm) 151.04, 144.62, 128.74, 124.15, 121.04, 115.89, 101.82, 98.78, 0.36; MS (ESI) m/z201.1 (MH+).
【0069】
Step 2: 4-cyano-2-ethynylpyridine (13)
化合物12 (1.96 g, 9.79 mmol)のジクロロメタン(25.0 mL)溶液に1 M TBAF/THF (14.0 mL, 14.0 mmol)を0 °Cで加え、反応溶液を2時間、0 °Cで撹拌した。反応終了後、酢酸エチルを加え、有機層を水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。溶媒を留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n-ヘキサン = 1/3)で精製し、黄白色固体13を823 mg得た。収率66%。 mp 104-106 °C; 1H NMR (CDCl3, 300 MHz, δ; ppm) 8.76 (1H, dd, J = 4.2, 0.9 Hz), 7.68 (1H, q, J = 0.3 Hz), 7.49 (1H, dd, J = 3.6, 1.5 Hz), 3.32 (1H, s); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz, δ; ppm) 151.11, 143.79, 128.84, 124.70, 121.08, 115.70, 81.10, 80.05; MS (ESI) m/z 129.2 (MH+).
【0070】
Step 3: 4-(2H-tetrazol-5-yl)-2-ethynyl-pyridine (Alk3)
化合物13 (396 mg, 3.00 mmol)のDMF (20.0 mL)溶液にアジ化ナトリウム(195 mg, 3.00 mmol)と塩化アンモニウム(162 mg, 3.00 mmol)を窒素雰囲気下で加えた。反応溶液を窒素雰囲気下、80℃で12時間加熱撹拌した。反応終了後、酢酸エチルを加え、4 N塩酸で洗浄した。有機層を水、brineで洗浄し、Na2SO4で乾燥した。溶媒を留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n-ヘキサン = 2/1)で精製し、 褐色固体Alk3を62.0 mg得た。収率12%。 mp 210-212℃; 1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz, δ; ppm) 8.79(1H, dd, J = 4.2, 0.9 Hz), 8.10 (1H, q, J = 0.6 Hz), 8.00 (1H, dd, J = 3.3, 1.8Hz), 4.51 (1H, s); 13C NMR (DMSO-d6, 75 MHz, δ; ppm) 154.74, 151.45, 142.73, 132.92, 124.12, 120.70, 82.35, 81.41; MS (ESI) m/z 172.1 (MH+); HPLC tR=7.45 minpurity 96.0%. HRMS (EI) Calcd. for C8H5N5 171.0537, Found 171.0545.
【0071】
Methyl-2-ethynylisonicotinate (Alk4)
化合物10 (380 mg, 1.60 mmol)のTHF (2.00 mL)溶液に1 M TBAF/THF (2.20 mL, 2.20 mmol)を0℃で加え、反応溶液を0℃で2時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチルを加え、水で洗浄し、有機層をNa2SO4で乾燥させた。溶媒を留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n-ヘキサン = 1/2)で精製した。さらに粗生成物をn-ヘキサンで再結晶することにより、無色固体Alk4を248 mg得た。収率96%。 mp 64.5-65.5℃; 1H NMR (CDCl3, 300 MHz, δ; ppm) 8.75 (d, 1H, J = 5.1 Hz), 8.03 (q, 1H, J = 0.6 Hz), 7.81 (dd, 1H, J = 4.2, 0.9 Hz), 3.97 (s, 3H), 3.23 (s, 1H); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz, δ; ppm) 164.95, 150.97, 143.43, 137.88, 126.78, 122.62, 82.21, 78.37, 53.00 ; MS (ESI) m/z 162.2 (MH+); HPLC tR= 11.7 min purity 99.4%
【0072】
製造例2
アジド化合物Az1-7, YMA04-110-A, YMA04-110-Dの合成
Step 1: 2-Azidoethanol (15)
2-ブロモエタノール (581 μL, 10.0 mmol)の水溶液(5.00 mL)にアジ化ナトリウム(647 mg, 8.30 mmol)を加え、反応溶液を100 °Cで12時間加熱還流した。反応終了後、塩化ナトリウムを加え、水層をジクロロメタンで抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥後溶媒を留去した。得られた無色の液体状粗生成物を直接次の反応に用いた。
【0073】
Step 2: 1-Mesyl-2-azidoethanol (16)
化合物15のジクロロメタン(10.0 mL)溶液にトリエチルアミン(1.74 mL, 12.5 mmol)とmethanesulfonyl chloride (967 μL, 12.5 mmol)を0 °Cで加え、反応溶液を室温で12時間撹拌した。反応終了後、反応溶液をろ過し、ろ液をエバポレータ―で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n-ヘキサン= 2/3)で精製し、無色オイル状の16を560 mg得た。収率34%。 1H NMR (CDCl3, 300 MHz, δ; ppm) 4.26 (2H, t, J = 5.7 Hz), 3.52 (2H, t, J = 4.5 Hz), 3.01 (3H, s); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz, δ; ppm) 67.88, 49.55, 37.17.
【0074】
Step 3: 2-Azido-1-ethylhexylmethylamine (Az1)
化合物16 (189 mg, 1.15 mmol)と炭酸カリウム(482 mg, 3.50 mmol)のアセトニトリル(5 mL)溶液にN-ヘキシルメチルアミン(151 μL, 1.00 mmol)を加え、12時間、90 °Cで加熱還流した。反応終了後、反応溶液をろ過し、ろ液をエバポレータ―で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n-ヘキサン = 1/3)で精製し、無色オイル状のAz1を50.0 mg得た。収率27%。1H NMR (CDCl3, 300 MHz, δ; ppm) 3.32 (2H, t, J = 6.0 Hz), 2.58 (2H, t, J = 6.0 Hz), 2.37 (2H, t, J = 7.8 Hz), 2.26 (3H, s), 1.42-1.49 (2H, m), 1.26-1.32 (6H, m), 0.89 (3H, t J= 6.6 Hz); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz, δ; ppm) 58.14, 56.52, 49.16, 42.34, 31.91, 27.36, 27.16, 22.74, 14.14; MS (ESI) m/z 185.1 (MH+); HPLC tR=10.2 min purity 97.6%. HRMS (EI) Calcd. for C9H20N4 185.1764, Found 185.1761.
【0075】
Azides Az2-7, YMA04-110-A, YMA04-110-DはAz1の合成法に示したものと同様の方法で合成した。
2-Azido-1-benzylmethylethylamine (Az2)
収率53%; 無色オイル 1H NMR (CDCl3, 300 MHz, δ; ppm): 7.28-7.40 (5H, m), 3.61 (2H, s), 3.36 (2H, t, J = 6.0 Hz), 2.69 (2H, t, J = 6.0 Hz), 2.31 (3H, s); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz, δ; ppm): 138.68, 128.91, 128.34, 127.15, 62.57, 56.26, 48.90, 42.15; MS (ESI) m/z 191.2 (MH+). HPLC tR=7.87 min purity 96.2%.
【0076】
2-Azido-1-diethylbutylamine (Az3)
収率24%; 無色オイル 1H NMR (CDCl3, 300 MHz, δ; ppm): 3.28 (2H, t, J = 6.3 Hz), 2.66 (2H, t, J = 6.3 Hz), 2.55 (2H, q, J = 6.9 Hz), 2.46 (2H, t, J = 7.8 Hz), 1.31-1.44 (4H, m), 1.04 (3H, t, J = 0.9 Hz), 0.93 (3H, t, J = 7.2 Hz); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz, δ; ppm): 53.60, 52.85, 49.51, 47.81, 29.37, 20.55, 14.02, 11.80; MS (ESI) m/z 171.3 (MH+). HPLC tR=22.9 min purity 95.8%.
【0077】
2-Azido-1-ethylpentylmethylamine (Az4)
収率37%; 無色オイル 1H NMR (CDCl3, 300 MHz, δ; ppm): 3.32 (2H, t, J= 6.3 Hz), 2.57 (2H, t, J = 6.0 Hz), 2.36 (2H, t, J = 6.0 Hz), 2.26 (3H, s), 1.42-1.52 (2H, m), 1.28-1.32 (4H, m), 0.90 (3H, t, J = 7.2 Hz); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz, δ; ppm): 57.95, 56.38, 49.00, 42.18, 29.52, 26.92, 22.57, 14.00; MS (ESI) m/z 171.3 (MH+). HPLC tR = 22.7 min purity 98.5%.
【0078】
2-Azido-1-ethylpropylbutylamine (Az5)
収率36%; 無色オイル 1H NMR (CDCl3, 300 MHz, δ; ppm): 3.25 (2H, t, J = 6.0 Hz), 2.65 (2H, t, J = 6.3 Hz), 2.39-2.47 (4H, m), 1.30-1.50 (6H, m), 0.89 (6H, q, J = 7.2 Hz); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz, δ; ppm): 56.49, 54.20, 53.56, 49.54, 29.38, 20.52, 20.38, 14.01, 11.76; MS (ESI) m/z 185.3 (MH+). HPLC tR = 10.2 min purity 97.6%
【0079】
2-Azido-1-ethyldibutylamine (Az6)
収率48%; 無色オイル 1H NMR (CDCl3, 300 MHz, δ; ppm): 3.25 (2H, t, J = 6.3 Hz), 2.63 (2H, t, J = 6.3 Hz), 2.44 (4H, t, J = 7.2 Hz), 1.30-1.43 (8H, m), 0.92 (6H, t, J = 7.2 Hz); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz, δ; ppm): 54.19, 53.52, 49.53, 29.39, 20.51, 13.99; MS (ESI) m/z 199.3 (MH+). HPLC tR = 9.15 min purity 99.9%.
【0080】
2-Azido-1-ethylbutylbenzylamine (Az7)
収率16%; 無色オイル 1H NMR (CDCl3, 300 MHz, δ; ppm): 7.25-7.39 (5H, m), 3.65 (2H, s), 3.26 (2H, t, J = 6.0 Hz), 2.71 (2H, t, J = 6.3 Hz), 2.51 (2H, t, J = 7.2 Hz), 1.47-1.57 (2H, m), 1.29-1.41 (2H, m), 0.92 (3H, t, J = 7.2 Hz); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz, δ; ppm): 139.49, 128.73, 128.23, 126.95, 59.09, 54.13, 53.31, 49.43, 29.29, 20.44, 14.01; MS (ESI) m/z 233.3 (MH+). HPLC tR = 11.1 min purity 96.3%
【0081】
1-(2-Azidoethyl)piperidine (YMA04-110-A)
収率42%; 黄色オイル 1H NMR (CDCl3, 300 MHz, δ; ppm) 3.31 (2H, t, J = 6.3 Hz), 2.52 (2H, t, J = 6.3 Hz), 2.41 (4H, t, J = 5.4 Hz), 1.53-1.59 (4H, m), 1.37-1.45 (2H, m); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz, δ; ppm) 57.92, 54.69, 49.77, 48.50, 25.98, 24.34; MS (ESI) m/z 155.0 (MH+)
【0082】
2-Azido-N-methyl-N-(phenyl methyl)Ethan amine (YMA04-110-D)
収率43%; 黄色オイル: 1H NMR (CDCl3, 300 MHz, δ; ppm) 7.28-7.40 (5H, m), 3.61 (2H, s), 3.36 (2H, t, J = 6.0 Hz), 2.69 (2H, t, J = 6.0 Hz), 2.31 (3H, s); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz, δ; ppm) 138.7, 128.9, 128.3, 127.2, 62.57, 56.26, 48.90, 42.15; MS (ESI) m/z 190.1 (MH+)
【0083】
製造例3
2-Azido-1-ethylbutylhexylamine (Az8)
Step1:N-butyl-1-hexanamine (17)
BH3 .SMe2(1.00 mL, 10.0 mmol)を1-ヘキセン(5.00 mL, 40.0 mmol)に0 °C、窒素雰囲気下で滴下した。滴下終了後、反応溶液を室温、窒素雰囲気下で12時間撹拌した、Sodium hypochlorite (18.4 mL, 10.0 mmol)をN-ブチルアミン(1.00 mL, 10.0 mmol)のTHF (10.0 mL)溶液に0 °C、窒素雰囲気下で滴下した。この溶液を窒素雰囲気下0 °Cでtrialkylborane溶液に素早く加えた。この反応溶液を窒素雰囲気下、室温で3時間撹拌した。反応終了後、10% HClを加えて反応溶液をpH 1.0に調整し、ジエチルエーテルで洗浄した。水層に6 N NaOH水溶液を加えpH >13に調整後、エーテルで目的物を抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥し、エバポレータ―で濃縮して650 mgの無色オイル状の生成物17 を得た。収率41%。 1H NMR (CDCl3, 300 MHz, δ; ppm) 2.56 (2H, t, J = 7.2 Hz), 2.56 (1H, t, J = 7.5 Hz), 1.26-1.47 (12H, m), 0.83-0.99 (6H, m); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz, δ; ppm) 50.16, 49.81, 32.32, 31.79, 30.15, 27.09, 22.60, 20.52, 14.00; MS (ESI) m/z158.3 (MH+).
【0084】
Step2:2-Azido-1-ethylbutylhexylamine(Az8)
化合物16 (189 mg, 1.15 mmol) と炭酸カリウム(482 mg, 3.50 mmol) のアセトニトリル(5.00 mL)溶液に化合物17 (157 mg, 1.00 mmol)を加え、90 °Cで12時間加熱還流した。反応終了後、反応溶液をろ過し、ろ液をエバポレータ―で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n-ヘキサン= 1/3)で精製し、104 mgの無色オイル状のAz8 を得た。収率46%。 1H NMR (CDCl3, 300 MHz, δ; ppm): 3.26 (2H, t, J = 6.0 Hz), 2.64 (2H, t, J = 6.3 Hz), 2.44 (2H, t, J = 7.2 Hz), 2.44 (2H, t, J = 7.2 Hz), 1.40-1.45 (4H, m), 1.27-1.32 (8H, m), 0.87-0.94 (6H, m); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz, δ; ppm): 54.67, 54.35, 53.64, 49.68, 31.96, 29.50, 27.29, 27.24, 22.80, 20.70, 14.19; MS (ESI) m/z 227.3 (MH+). HPLC tR = 13.3 min purity 98.3%
【0085】
4-(2-Azidoethyl)morpholine (YMA04-112)
モルホリン(948 μL, 10.0 mmol)のトルエン溶液(20 mL)にブロモエタノール(349 μL, 5.00 mmol)を滴下し、反応溶液を3時間加熱還流した。反応終了後、反応溶液をろ過し、ろ液をエバポレータ―で濃縮した。残渣をジクロロメタン(8 mL)に溶かし、トリメチルアミン(1.67 mL, 12.0 mmol)を加えた。さらにmethanesulfonyl chloride (902 μL, 12.0 mmol)を0 oCで滴下した後、反応溶液を室温で3時間撹拌した。反応終了後、飽和重曹水を加えジクロロメタンで抽出した。有機層をbrineで洗浄、Na2SO4で乾燥し、溶媒をエバポレータ―で留去した。残渣にDMSO (30 mL)とアジ化ナトリウム(780 mg, 12.0 mmol)を加え、反応溶液を80 oCで2時間加熱撹拌した。反応終了後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水で洗浄、Na2SO4.で乾燥し、溶媒をエバポレーターで留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル)で精製し、黄色オイル状の4-(2-Azidoethyl)morpholine (YMA04-112, 収率18%)を得た。 1H NMR (CDCl3, 300 MHz, δ; ppm) 3.69-3.78 (4H, m), 3.34 (2H, t, J = 6.0 Hz), 2.57 (2H, t, J = 1.5 Hz), 2.49-2.50 (4H, m); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz, δ; ppm) 66.95, 57.67, 53.68, 48.01; MS (ESI) m/z 157.1 (MH+)
【0086】
トリアゾール化合物NPC-3422, YMA04-115, YMA04-118, YMA04-119の合成
実施例1
2-(1-(2-(hexyl(methyl)amino)ethyl)-1H-[1,2,3]triazol-4-yl)-pyridine-4-carboxylic acid (NPC-3422)
Step 1: Methyl-2-(1-(2-(hexyl(methyl)amino)ethyl)-1H-[1,2,3]triazol-4-yl)-pyridine-4-carboxylate (NPC-3543)
Alk4 (16.2 mg, 100 μmol)とAz1 (18.3 mg, 100 μmol)のtert-ブチルアルコール (2.50mL)と水(2.50 mL)溶液にCuSO4・5H2 O (25.0 mg, 100 μmol)とsodium ascorbate (20.0mg, 100 μmol)を加え、反応溶液を室温で12時間撹拌した。反応終了後、溶媒をエバポレーターで留去し、水を加えて酢酸エチルで抽出した。有機層をbrineで洗浄し、Na2SO4で乾燥した。溶媒を留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n-ヘキサン= 1/3 to ジクロロメタン/メタノール= 5/1)で精製し、16.2 mgのオレンジ色オイルNPC-3543 得た。収率47%。 1H NMR (CDCl3, 300 MHz, δ; ppm) 8.71-8.74 (2H, m), 8.30 (1H, s), 7.78 (1H, dd, J = 3.6, 0.6 Hz), 4.52 (2H, t, J = 6.3 Hz), 3.99 (3H,s), 2.88 (2H, t, J = 6.0 Hz), 2.40 (2H, t, J = 7.5 Hz), 2.31 (3H, s), 1.22-1.42(8H, m), 0.83 (3H, t, J = 6.6 Hz); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz, δ; ppm) 165.60, 151.70, 150.21, 147.54, 138.35, 123.25, 121.74, 119.50, 57.98, 57.03, 52.70, 48.57,42.09, 31.75, 27.21, 27.02, 22.63, 14.02; MS (ESI) m/z 346.4 (MH+); HPLC tR= 12.13 min purity 95.6%
【0087】
Step 2: 2-(1-(2-(hexyl(methyl)amino)ethyl)-1H-[1,2,3]triazol-4-yl)-pyridine-4-carboxylic acid hydrochloride (NPC-3422HCl塩)
NPC-3543 (16.2 mg, 47.0 μmol)をメタノール(3.00 mL)に溶かし、2.00 mLの2 N 水酸化ナトリウム水溶液を加えた。反応溶液を室温で12時間撹拌した。反応終了後、溶媒をエバポレーターで留去し、残渣に4N HCl/ジオキサンを加えpHを1.0に調整した。溶液をろ過し、ろ液を濃縮して10.0 mgの無色固体NPC-3422(HCl塩)を得た。収率25% 1H NMR (MeOD, 300 MHz, δ; ppm) 8.79 (1H, d, J = 4.5 Hz), 8.64 (1H, s), 8.61 (1H, s), 7.89 (1H,dd, J = 3.6, 1.5 Hz), 4.99 (2H, t, J = 6.0Hz), 3.92 (2H, s), 3.30 (2H, s), 3.02(3H, s), 1.73 (2H, quin., J = 7.8 Hz), 1.38 (6H, m), 0.93 (3H, t, J = 7.2 Hz); 13C NMR (MeOD, 75 MHz, δ; ppm) 166.00, 150.45, 150.21, 147.56, 139.83, 124.01, 122.37, 119.36, 56.67, 54.24, 44.53, 39.71, 30.92, 25.73, 23.56, 22.03, 12.79; MS(ESI) m/z 332.1(MH+); HPLC tR= 10.10 min purity 99.6% HRMS (EI) Calcd. for C17H25N5O2 331.2008, Found 331.2041.
【0088】
トリアゾール化合物YMA04-115, YMA04-118およびYMA04-119は対応するアジド化合物を原料として、NPC-3422の合成と同様の方法で合成した。
【0089】
2-(1-(2-(methyl(benzyl)amino)ethyl)-1H-[1,2,3]triazol-4-yl)-pyridine-4-carboxylic acid hydrochloride (YMA04-115)
収率66%; 黄白色固体 1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz, δ; ppm): 8.82 (2H, s), 8.45 (1H,s), 7.78 (1H, d, J = 3.9 Hz), 7.59-7.56 (2H, m), 7.48-7.46 (3H, m), 5.01 (2H, t,J = 6.6 Hz), 4.40 (2H, s), 3.72 (2H, t, J = 3.0 Hz), 2.73 (3H, s); 13C NMR (DMSO-d6, 75 MHz, δ; ppm): 166.5, 159.1, 151.4, 147.4, 139.8, 131.9, 130.3, 130.2,129.4, 125.1, 122.5, 118.8, 59.5, 53.9, 45.0; HRMS (EI) Calcd. for C18H19O2N5 (MH+) 338.1612, Found 338.1609(MH+). HPLC tR=11.87 min purity 96.2%.
【0090】
2-(2-(1-piperidyl)ethyl)-1H-[1,2,3]triazol-4-yl)-pyridine-4-carboxylic acid hydrochloride (YMA04-118HCl塩)
収率 38%; 無色固体 1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz, δ; ppm): 8.88 (1H, s), 8.80 (1H, d, J = 4.8 Hz), 8.44 (1H, s), 7.77 (1H, d, J = 3.9 Hz), 5.02 (2H, t, J = 6.6 Hz),3.67 (2H, d, J = 4.2 Hz), 3.41 (2H, d, J = 3.9 Hz), 2.99-2.93 (2H, m), 1.84-1.35 (6H, m); 13C NMR (DMSO-d6, 75 MHz, δ; ppm): 166.3, 151.1, 151.0, 147.1, 139.9, 124.9, 122.4, 118.8, 54.5, 52.6, 44.6, 22.6, 21.6; MS (ESI) (MH+). HRMS (EI) Calcd. for C15H19O2N5 (MH+) 302.1612, Found 302.1610(MH+). HPLC tR=5.93 min purity 98.0%.
【0091】
2-(2-(4-morpholinyl)ethyl)-1H-[1,2,3]triazol-4-yl)-pyridine-4-carboxylic acid hydrochloride (YMA04-119HCl塩)
収率 35%; オレンジ色固体 1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz, δ; ppm): 8.82 (2H, s), 8.45(1H, s), 7.78 (1H, d, J = 3.9 Hz), 7.59-7.56 (2H, m), 7.48-7.46 (3H, m), 5.01 (2H, t, J = 6.6 Hz), 4.40 (2H, s), 3.72 (2H, t, J = 3.0 Hz), 2.73 (3H, s); 13C NMR(DMSO-d6, 75 MHz, δ; ppm): 166.5, 159.1, 151.4, 147.4, 139.8, 131.9, 130.3, 130.2, 129.4, 125.1, 122.5, 118.8, 59.5, 53.9, 45.0; HRMS (EI) Calcd. for C14H17O3N5 (MH+) 304.1404, Found 304.1406 (MH+). HPLC tR=1.75 min purity 96.0%.
【0092】
2-(1-(2-(hexyl(methyl)amino)ethyl)-1H-[1,2,3]triazol-5-yl)-pyridine-4-carboxylic acid (syn-T1)及びNPC-3422
Step 1: Methyl-2-(1-(2-(hexyl(methyl)amino)ethyl)-1H-[1,2,3]triazol-5-yl)-pyridine-4-carboxylate (syn-T4)及びNPC-3543
Alk4 (123 mg, 0.760 mmol)とAz1 (210 mg, 1.14 mmol)を5.00 mLのトルエンに溶かし、100℃で30時間加熱還流した。反応終了後溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n-ヘキサン= 1/1 to 1/0)で精製し、76.0 mgの黄色オイル状のsyn-triazole (収率29%) (syn-T4)と68.0 mgのオレンジ色オイル状のanti- triazole (収率26%) (NPC-3543)をそれぞれ得た。
syn-T4: 1H NMR (CDCl3, 300 MHz, δ; ppm) 8.79 (1H, dd, J = 4.2, 0.9 Hz), 8.12 (1H, t, J = 0.9 Hz), 8.02 (1H, s), 7.80 (1H, dd, J = 3.6, 1.5 Hz), 4.97 (2H, t, J= 7.2 Hz), 3.96 (3H, s), 2.83 (2H, t, J = 7.2 Hz), 2.32 (2H, t, J= 7.2 Hz), 2.22(3H, s), 1.15-1.29 (8H, m), 0.82 (3H, t, J = 7.2 Hz); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz,δ; ppm) 164.94, 150.46, 148.40, 138.72, 135.30, 133.77, 122.21, 122.01, 57.75,56.84, 53.02, 47.80, 42.34, 31.76, 27.14, 26.98, 22.64, 14.07; MS (ESI) m/z 346.4 (MH+); HPLC tR= 12.65 min purity 95.6%
NPC-3543: 1H NMR (CDCl3, 300 MHz, δ; ppm) 8.71-8.74 (2H, m), 8.30 (1H, s), 7.78(1H, dd, J= 3.6, 0.6 Hz), 4.52 (2H, t, J = 6.3Hz), 3.99 (3H, s), 2.88 (2H, t, J= 6.0 Hz), 2.40 (2H, t, J = 7.5 Hz), 2.31 (3H, s), 1.22-1.42 (8H, m), 0.83 (3H, t, J= 6.6 Hz); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz, δ; ppm) 165.60, 151.70, 150.21, 147.54,138.35, 123.25, 121.74, 119.50, 57.98, 57.03, 52.70, 48.57, 42.09, 31.75, 27.21, 27.02, 22.63, 14.02; MS (ESI) m/z 346.4 (MH+); HPLC tR= 12.13 min purity 95.6%
【0093】
Step 2: 2-(1-(2-(hexyl(methyl)amino)ethyl)-1H-[1,2,3]triazol-5-yl)-pyridine-4-carboxylic acid (syn-T1)及びNPC-3422
syn体およびanti体のトリアゾール化合物(50.0 mg, 145 μmol)のメタノール溶液(3.00 mL)に2.00 mLの2 N 水酸化ナトリウム水溶液をそれぞれ加え、反応溶液を室温、12時間撹拌した。反応終了後、溶媒を留去し、残渣に4N 塩酸/ジオキサンを加え、pH 1.0に調整した。溶液をろ過し、ろ液を濃縮して13.9 mgのsyn-T1および10.0 mgのanti-T1 を得た。(収率29%/21%).
syn-T1: 1H NMR (MeOD, 300 MHz, δ; ppm) 8.92 (1H, dd, J = 4.5, 0.6 Hz), 8.43 (1H, s), 8.40 (1H, t, J = 0.3 Hz), 7.97 (1H, dd, J = 3.6, 1.5 Hz), 5.36 (2H, t, J =6.0 Hz), 3.92 (2H, s), 3.29 (2H, t, J = 8.4 Hz), 3.05 (3H, s), 1.75 (2H, quin., J = 8.1 Hz), 1.37 (6H, m), 0.93 (3H, t, J = 7.2 Hz); 13C NMR (MeOD, 75 MHz, δ; ppm) 166.99, 151.80, 148.47, 141.77, 137.53, 135.20, 124.35, 123.72, 58.00, 56.08, 46.15, 41.34, 32.32, 27.14, 25.03, 23.41, 14.21; MS (ESI) m/z 332.1(MH+); HPLC tR= 10.98 min purity 99.5%
NPC-3422: 1H NMR (MeOD, 300 MHz, δ; ppm) 8.79 (1H, d, J = 4.5 Hz), 8.64 (1H, s), 8.61 (1H, s), 7.89 (1H, dd, J = 3.6, 1.5 Hz), 4.99 (2H, t, J = 6.0 Hz), 3.92 (2H, s), 3.30 (2H, s), 3.02 (3H, s), 1.73 (2H, quin., J = 7.8 Hz), 1.38 (6H, m),0.93 (3H, t, J = 7.2 Hz); 13C NMR (MeOD, 75 MHz, δ; ppm) 166.00, 150.45, 150.21, 147.56, 139.83, 124.01, 122.37, 119.36, 56.67, 54.24, 44.53, 39.71, 30.92, 25.73, 23.56, 22.03, 12.79; MS (ESI) m/z 332.1(MH+); HPLC tR= 10.10 min purity 99.6%
【0094】
試験例1
酵素活性試験
KDM酵素の活性評価はAlpha screenアッセイシステムを用いた。評価に用いたバッファーおよび試薬を表S1に示した。2.5 μLの阻害剤溶液(3.0% DMSO/アッセイバッファー溶液)もしくはアッセイバッファー(50 mM HEPES pH 7.5, 0.1% w/v BSA, 0.01% v/v Tween-20 containing 3% DMSO、コントロールとブランク用)をOptiPlateTM-384白色プレートの各ウェルに添加した。そこに5.0 μLの酵素溶液を添加した。(ブランクのウェルには5.0 μLのアッセイバッファーを加えた)。室温で5分置いた後、2.5 μLの基質タンパク質/2-OG (50 μM)/Fe(II)(5 μM)/アスコルビン酸ナトリウム (100 μM)のバッファー溶液を各ウェルに添加した。酵素や基質タンパク質の最終濃度を表S2にまとめた。これらの反応溶液を室温で1時間もしくは2時間、おだやかに振盪撹拌した(250 rpm)。5.0 μLのアクセプタービーズのepigeneticバッファー溶液(100 μg/mL)を各ウェルに添加し、室温、1時間穏やかに振盪撹拌した(250 rpm)。最後に、10 μLのドナービーズのepigeneticバッファー溶液(50 μg/mL)を加え室温、30分間暗所で振盪撹拌した(250 rpm)。その後、AlphaシグナルをEnsight(R)readers(PerkinElmer Ltd)で検出した。(励起光波長:615 nm、発光波長: 655 nm)。酵素活性(%)は阻害剤のウェルのAlphaシグナルをコントロールのウェルのシグナルで割った値で算出した。結果を図1に示す。
【0095】
細胞培養
ヒト前立腺がん細胞PC3 (Japanese Collection of Research Bioresources; JCRB9110, Japan)を10% ウシ胎児血清アルブミン(FBS; SIGMA, #172012-500ML)、5% penicillin/streptomyc (Nacalai, #09366-44)を含むHam's F-12K (Kaighn's)培地(Gibco, #21127022)で 5% CO2雰囲気下、37 °Cで培養した。ヒト前立腺がん細胞LNCaP (American type culture collection, ATCC)およびヒト胃がん細胞MKN45(provided by RIKEN BRC cell bank; RCB1001, Japan)は10% FBS, 5% penicillin/streptomycin mixtureを含むRPMI-1640 (Sigma, R8758)培地中、5% CO2雰囲気下、37 °Cで培養した。
【0096】
ウェスタンブロッティング
PC3, LnCAP および MKN45 細胞 (5 x 105cells/2 mL/dish)にNPC-3543 を処理し、48時間培養した。その後細胞ペレットをSDSバッファーで抽出した。抽出したライセートのタンパク質濃度をBCA protein assayを用いて測定した。ライセートのタンパク濃度を揃え、5-20% SDS-polyacrylamideゲルを用いて電気泳動を行った。さらにPVDFメンブレンに転写した。メンブレンを5%スキムミルクTBS-T溶液でブロッキングを行った後、一次抗体polyclonal H3K4me3 antibody (Abcam, #ab8580) (1:5000希釈), H3K4me2 antibody (CST, #9725) (1:5000希釈), H3K4me1 antibody (Abcam, #ab8895) (1:5000希釈), H3 antibody (Abcam, #ab1791) (1:200000 希釈), KDM5A antibody (CST, #3876) (1:1000希釈), KDM5B antibody (CST, #3273) (1:1000希釈)、KDM5C antibody (CST, #5361) (1:1000希釈)、mouse monoclonal α-tubulin antibody (sigma, #T8203) (1:1000希釈)をそれぞれ5%スキムミルクTBS-T溶液で希釈し、室温で1時間振盪撹拌して反応させた。メンブレンを3回TBS-Tで洗浄後、二次抗体ECL rabbit/mouse IgG, HRP-linked whole Anti-body (GE Healthcare Life Sciences, #NA934) (1:2500希釈)を室温1時間反応させた。再び3回 TBS-Tで洗浄した。バンドは化学発光により検出し、ImmobilonTMWestern Chemiluminescent HRP Substrate (Millipore, #P90718)を検出薬として使用した。結果を図2に示す。KDM5C過剰発現細胞PC3でのみ、H3K4のメチル化が亢進していた。このことから、NPC-3543は細胞系でもKDM5Cを選択的に阻害することが明らかになった。
【0097】
【化6】
【0098】
【化7】
【0099】
【化8】
【0100】
【化9】
【0101】
【化10】
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
試験例2
NPC-3543投与マウスの行動評価試験(図3-6)
8週齢の雄性DBA/2マウス(以下、DBAマウス)の内側前頭前野にカニューレを留置し、NPC-3543 (100μM)あるいは溶媒を投与し、その2時間後に社会性敗北ストレス(*1)を負荷した。これを5日間連続して行い、社会性試験(*2)を施行した。
【0105】
*1社会性敗北ストレス
テストマウスを攻撃性の高いCD-1マウスのケージに5分間入れる。この時、CD-1マウスはテストマウスに対して一方的に攻撃を仕掛ける(肉体的ストレス負荷)。5分経過後、CD-1マウスとテストマウスを透明なアクリル板で仕切り、24時間飼育する(心理ストレス負荷)。これを5日間連続で行った(図3)。
【0106】
*2社会性試験
42 cm四方の箱に新奇マウスとしてCD-1マウスを置く(ターゲットエリア)。この箱の中にテストマウス(DBAマウス)を置き、3分間でターゲットエリアに滞在した時間をビデオトラッキングシステム(Any-Mazeソフトウェア)により測定した(図4)。
【0107】
<スクロース嗜好性試験の方法>
1%スクロース溶液と通常水の入ったボトルを同時に与えた。4時間でスクロース溶液と通常水を飲んだ量を計測し、スクロース水を飲んだ割合(sucrose preference)をアンヘドニアの指標とした(図5)。通常、動物は甘いスクロースを好むが、うつ病の病態の1つであるanhedonia(無感症)の状態にある動物はスクロースに対する選択性が低下する。
【0108】
KDM5C阻害薬(NPC-3543)は、Sucrose Preference試験において、抗うつ効果を示した。このことから、KDM5C阻害剤(NPC-3543)が抗うつ薬として有効であることが示された。
【0109】
<遺伝子発現解析(図6)>
ストレス脆弱性DBAマウスに軽度ストレスを5日間与えた。このときにNPC-3543 (100μM)又は溶媒(vehicle、水)を毎日投与し、次世代シーケンサーを用いた遺伝子発現解析(RNA-seq)を行い、主成分分析(PCA)とクラスタリング解析を行った。その結果、ストレス負荷によって生じた異常な遺伝子発現パターンがKDM5C阻害剤(NPC-3543)によって正常化することが明らかになった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6