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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】マグネットシール
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
G03G15/08 233
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021142426
(22)【出願日】2021-09-01
【審査請求日】2021-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】596116363
【氏名又は名称】三和テクノ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517052792
【氏名又は名称】ライズテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福井 和郎
(72)【発明者】
【氏名】瀧埜 敏男
(72)【発明者】
【氏名】堀井 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】庄司 進
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-354855(JP,A)
【文献】特開平10-240013(JP,A)
【文献】特開2017-026937(JP,A)
【文献】特開2005-292593(JP,A)
【文献】特開2020-109507(JP,A)
【文献】特開平11-133750(JP,A)
【文献】特開2015-222403(JP,A)
【文献】特開2011-191649(JP,A)
【文献】特開2011-008163(JP,A)
【文献】特開2006-276602(JP,A)
【文献】特開2000-019842(JP,A)
【文献】特開2016-206431(JP,A)
【文献】再公表特許第2013/164871(JP,A1)
【文献】特開2005-308869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08-15/09
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸周りに回転する回転体の周囲に配置される一対のマグネットシールであって、
レーザープリンターに用いられるカートリッジ内に、前記回転体と前記マグネットシールは含まれ、
前記回転体と前記マグネットシールの間にトナーが供給されるものであり、
前記回転体は、回転方向に沿って交互に複数の芯部N極および複数の芯部S極を含むものであり、
前記マグネットシールは、
前記回転体の径方向に沿って前記回転体から隙間を空けて配置されるように構成された磁石層を備え、
前記磁石層は、前記回転方向に沿って交互に設けられた複数のN極および複数のS極を含み、
前記複数のN極および前記複数のS極は、前記複数のN極および前記複数のS極の各々の境界が前記回転体の軸方向に沿ってねじれるように配置され、
前記磁石層は、前記回転体の前記軸方向に沿って配置された第1端および第2端を含み、
前記第1端は前記回転体の内側方向の端であり、前記第2端は前記回転体の外側方向の端であり、
前記境界が、前記回転方向に進むにつれ、前記第2端から前記第1端に向かうように配置され、
前記マグネットシールは、支持層をさらに備え、
前記支持層は、前記径方向から前記回転体と前記支持層の間に前記磁石層が位置するように前記磁石層を支持し、ヨークとして構成され、
前記磁石層は、前記軸方向において前記支持層から露出している、マグネットシール。
【請求項2】
前記複数のN極および前記複数のS極は、前記境界が前記軸方向となす角度が40°以上50°以下になるように配置されている、請求項1に記載のマグネットシール。
【請求項3】
前記磁石層は、マグネットシート材によって構成されている、請求項1または2に記載のマグネットシール。
【請求項4】
前記回転体を半周にわたって囲むように構成された半円形状を有している、請求項1~3のいずれか1項に記載のマグネットシール。
【請求項5】
前記回転体を全周にわたって囲むように構成された環形状を有している、請求項1~3のいずれか1項に記載のマグネットシール。
【請求項6】
接着層をさらに備え、
前記接着層は、第1接着面と、前記第1接着面に対向する第2接着面とを含み、
前記第1接着面は、前記磁石層に対して前記回転体とは反対側において前記磁石層と接着され、
前記支持層は、前記第2接着面と接着されている、請求項1~5のいずれか1項に記載のマグネットシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マグネットシールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トナーがプリンターのカートリッジから外に漏出することを抑制するために用いられるマグネットシールがある。カートリッジの現像ローラーの両端のそれぞれにマグネットシールが配置されている。マグネットシールは、現像ローラーから隙間を空けて現像ローラーに面している。
【0003】
例えば、特開2011-8163号公報(特許文献1)に記載の磁気シール部材(マグネットシール)は、現像剤担持体(現像ローラ)の回転方向に交互に並べられた複数のN極および複数のS極を含んでいる。複数のN極および複数のS極の表面には、現像剤(トナー)が吸着される。これにより、磁気シール部材と現像剤担持体との隙間が現像剤によって埋められる。
【0004】
複数のN極および複数のS極の各々の境界において、表面磁束密度は最も小さい。このため、現像剤の磁気シール部材への吸着量は、複数のN極および複数のS極の各々の境界において最も少ない。よって、現像剤は、複数のN極および複数のS極の各々の境界において、磁気シール部材に吸着されないことがある。この場合、現像剤は、磁気シール部材と現像剤担持体との隙間を通ってカートリッジの外に漏出することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-8163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記文献に記載の複数のN極および複数のS極の各々の境界は、現像剤担持体の軸方向に沿って直線状に伸びている。したがって、トナーは、隙間を通ってカートリッジの外に漏出しやすい。
【0007】
本開示は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、トナーが漏出することを抑制することができるマグネットシールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のマグネットシールは、中心軸周りに回転する回転体の周囲に配置されるマグネットシールである。マグネットシールは、磁石層を備えている。磁石層は、回転体の径方向に沿って回転体から隙間を空けて配置されるように構成されている。磁石層は、複数のN極および複数のS極を含んでいる。複数のN極および複数のS極は、回転体の回転方向に沿って交互に設けられている。複数のN極および複数のS極は、複数のN極および複数のS極の各々の境界が回転体の軸方向に沿ってねじれるように配置されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示のマグネットシールによれば、トナーが漏出することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る2つのマグネットシールを含むカートリッジの構成を概略的に示す斜視図である。
図2】実施の形態1に係るマグネットシールの構成を概略的に示す模式図である。
図3】実施の形態1に係るマグネットシールおよび磁気ブラシの構成を概略的に示す模式図である。
図4】実施の形態1に係るマグネットシールの磁石層、接着層および支持層が積層された状態を概略的に示す側面図である。
図5】実施の形態1に係るマグネットシールの磁石層の切断される方向を概略的に示す上面図である。
図6】実施の形態1に係るマグネットシールの構成を概略的に示す側面図である。
図7図1のVII-VII線に沿った断面図である。
図8図1のVIII-VIII線に沿った断面図である。
図9図1のIX-IX線に沿った断面図である。
図10】比較例1に係るマグネットシールの構成を概略的に示す模式図である。
図11】比較例1に係るマグネットシールおよび磁気ブラシの構成を概略的に示す模式図である。
図12】比較例2に係るマグネットシールの構成を概略的に示す模式図である。
図13】比較例2に係るマグネットシールおよび磁気ブラシの構成を概略的に示す模式図である。
図14】実施の形態2に係るマグネットシール、回転体および容器部の構成を概略的に示す斜視図である。
図15】実施の形態2に係るマグネットシールおよび回転体の構成を概略的に示す断面図である。
図16】実施例に係るマグネットシールおよび試験装置の構成を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について図に基づいて説明する。なお、以下では、同一または相当する部分に同一の符号を付すものとし、重複する説明は繰り返さない。
【0012】
実施の形態1.
図1図3を用いて、実施の形態1に係るマグネットシール100の構成を説明する。
【0013】
図1に示されるように、マグネットシール100は、中心軸周りに回転する回転体200の周囲に配置されるマグネットシールである。なお、図1では、説明の便宜のため、回転体200の外形が一点鎖線によって示され、後述の感光体ローラー302の外形が二点鎖線によって示されている。回転体200は、軸方向DR1に沿って伸びている。回転体200の長手方向は、軸方向DR1に沿っている。回転体200が回転する方向は、回転方向DR2である。マグネットシール100は、回転体200の径方向に沿って回転体200から隙間を空けて配置されるように構成されている。マグネットシール100は、回転体200に接触しないように構成されている。後述されるように、マグネットシール100と回転体200との隙間は、供給部301によって供給されたトナーによって形成された磁気ブラシによって埋められ得る。なお、説明の便宜のため、図1および図2には磁気ブラシは図示されていない。
【0014】
本実施の形態において、マグネットシール100は、回転体200を部分的に囲むように構成された半円形状を有している。マグネットシール100は、回転体200を半周にわたって囲むように構成された半円形状を有している。マグネットシール100は、例えば、C字状を有している。マグネットシール100の内径は、回転体200の外径よりも大きい。
【0015】
マグネットシール100は、磁石層1を含んでいる。望ましくは、マグネットシール100は、接着層2と、支持層3とをさらに含んでいる。望ましくは、マグネットシール100は、磁石層1および接着層2によって構成された2層構造を有している。さらに望ましくは、マグネットシール100は、磁石層1、接着層2および支持層3によって構成された3層構造を有している。
【0016】
磁石層1は、回転体200の径方向に沿って回転体200から隙間を空けて配置されるように構成されている。磁石層1と回転体200との隙間は、例えば、0.1mm以上1.0mm以下である。磁石層1と回転体200との隙間は、1.0mm以上であってもよい。磁石層1の内径は、回転体200の外径よりも大きい。軸方向DR1において、磁石層1は、回転体200よりも小さい寸法を有している。
【0017】
磁石層1は、第1端1aおよび第2端1bを含んでいる。第1端1aおよび第2端1bは、回転体200の軸方向DR1に沿って配置されている。第2端1bは、軸方向DR1において第1端1aとは反対側に配置されている。磁石層1は、第1面1cおよび第2面1dを含んでいる。第1面1cは、回転体200に向かい合っている。第2面1dは、第1面1cに対して回転体200とは反対側に配置されている。第2面1dは、接着層2に接続されている。
【0018】
磁石層1は、複数のN極11および複数のS極12を含んでいる。複数のN極11および複数のS極12の各々の回転方向DR2に沿った寸法は、例えば、1mm以上3mm以下である。このため、N極11同士の間隔およびS極12同士の間隔は、例えば、1mm以上3mm以下である。複数のN極11および複数のS極12の各々の回転方向DR2に沿った寸法は、例えば、3mm以上であってもよい。複数のN極11および複数のS極12の軸方向DR1における寸法は、互いに同じであってもよい。複数のN極11および複数のS極12の表面磁束密度は、例えば、40mT以上80mT以下である。
【0019】
複数のN極11および複数のS極12は、回転体200の回転方向DR2に沿って交互に設けられている。隣接するN極11とS極12との間には、境界10が設けられている。境界10における表面磁束密度は、N極11およびS極12の他の位置における表面磁束密度よりも小さい。境界10における表面磁束密度は、例えば、0mTである。
【0020】
複数のN極11および複数のS極12は、複数のN極11および複数のS極12の各々の境界10が軸方向DR1に沿ってねじれるように配置されている。複数のN極11および複数のS極12は、境界10が軸方向DR1に対して斜めに設けられるように配置されている。複数のN極11および複数のS極12は、軸方向DR1に対して斜めに配置されている。複数のN極11および複数のS極12の各々の長手方向は、軸方向DR1に対してねじれている。
【0021】
図2に示されるように、磁石層1を径方向から見たときに、磁石層1は、境界10が第2端1bから第1端1aに近づくにつれて境界10と軸方向DR1との距離が回転方向DR2に沿って大きくなるように構成されている。図2は、平面に展開された磁石層1を示す模式図である。境界10は、回転体200の回転方向DR2に対して、内側向きに傾いている。磁石層1を径方向から見たときに、軸方向DR1が0°であり、回転方向DR2が90°である場合、境界10が軸方向DR1となす角度θは0°よりも大きく90°よりも小さい。本実施の形態において、磁石層1を径方向から見たときに境界10が軸方向DR1となす角度θは、規制角度と呼ばれる。磁石層1を径方向から見たときに、軸方向DR1が0°であり、回転方向DR2が90°である場合、規制角度は0°よりも大きく90°よりも小さい。
【0022】
望ましくは、複数のN極11および複数のS極12は、境界10が軸方向DR1となす角度θが40°以上50°以下になるように配置されている。望ましくは、磁石層1を径方向から見たときに、複数のN極11および複数のS極12は、境界10が軸方向DR1となす角度θが40°以上50°以下になるように配置されている。規制角度は、例えば、10°以上80°以下である。望ましくは、規制角度は、40°以上50°以下である。なお、規制角度は、40°以上50°以下に限定されない。後述のように、規制角度が0°の場合と比較して、規制角度が例えば10°以上80°以下の場合には、シール性が向上する。規制角度が40°以上50°以下の場合には、シール性がさらに向上する。なお、シール性は、トナーの漏れを抑制する能力である。
【0023】
境界10は、始点10aおよび終点10bを有している。始点10aは、第1端1aに設けられている。終点10bは、第2端1bに設けられている。始点10aおよび終点10bの回転方向DR2における位置は異なっている。本実施の形態において、回転方向DR2に沿って始点10aから終点10bに向かう向きは、回転方向DR2の正方向である。回転方向DR2に沿って終点10bから始点10aに向かう向きは、回転方向DR2の負方向である。
【0024】
磁石層1がp個のN極11およびq個のS極12を含んでいる場合、磁石層1にはp+q-1個の境界10が設けられている。なお、pおよびqは2以上の自然数である。望ましくは、回転方向DR2の正方向から数えてr+1番目の境界10の始点10aは、回転方向DR2の正方向から数えてr番目の境界10の終点10bよりも回転方向DR2の負方向側に設けられている。rは、1以上の自然数である。回転方向DR2において、回転方向DR2の正方向から数えてr+1番目の境界10の始点10aは、回転方向DR2の正方向から数えてr番目の境界10の終点10bと同じ位置に設けられていてもよい。
【0025】
図3に示されるように、磁性を有するトナーは、複数のN極11および複数のS極12の各々に吸着される。説明の便宜のため、図3では、磁気ブラシ9の表面は、黒点が点在するように図示されている。本実施の形態において、複数のN極11および複数のS極12に吸着されたトナーは、磁気ブラシ9を形成する。磁気ブラシ9は、穂立と呼ばれることもある。
【0026】
望ましくは、磁石層1は、マグネットシート材によって構成されている。磁石層1は、例えば、ラバーマグネットシート材によって構成されている。ラバーマグネットシート材は、例えば、押し出し成形によって形成されてもよいし、圧延成形(カレンダー成形)によって形成されてもよい。
【0027】
磁石層1の材料は、例えば、異方性フェライト磁石である。異方性フェライト磁石は、例えば、酸化鉄およびストロンチウム(Sr)を含んでいる。異方性のラバーマグネットシート材は、例えば、酸化鉄およびストロンチウム(Sr)に加えて、バインダーとしてニトリルゴム等のゴム弾性を持った高分子素材(エラストマー)を含んでいる。異方性ラバーマグネットシート材は、バインダーとして他の材料を含んでいてもよい。望ましくは、磁石層1は、ボンド磁石ではない。望ましくは、磁石層1は、ネオジム(Nd)を含んでいない。磁石層1は、ネオジム(Nd)を含んでいても良い。
【0028】
図1に示されるように、接着層2は、支持層3を磁石層1に接着している。接着層2は、第1接着面2aと、第2接着面2bとを含んでいる。第1接着面2aは、磁石層1に対して回転体200とは反対側において磁石層1と接着されている。第1接着面2aは、第2面1dに接続されている。第2接着面2bは、第1接着面2aに対向している。第2接着面2bは、支持層3を接着可能である。
【0029】
接着層2は、例えば、接着剤、ホットメルトフィルム(ホットメルトシート)および両面テープ等によって構成されている。接着層2の材料は、上記に限られず、適宜に決められてもよい。
【0030】
支持層3は、接着層2を介して磁石層1に接着されている。支持層3は、磁石層1を支持している。支持層3は、磁石層1および接着層2の形状を維持するように構成されている。支持層3は、磁石層1を半円形状に維持するように構成されている。後述のようにマグネットシール100がカートリッジ300に用いられる場合、支持層3はカートリッジ300の図示されない筐体に固定されている。この場合、磁石層1は、支持層3によってカートリッジ300の図示されない筐体に固定されている。
【0031】
支持層3は、ヨークとして構成されている。すなわち、支持層3は、磁石層1の第2面1d側から生じた磁力線を磁石層1の第1面1c側および側面(第1端1aおよび第2端1b)側に向けるように構成されている。これにより、磁石層1の第1面1cおよび側面(第1端1aおよび第2端1b)における表面磁束密度が向上する。
【0032】
支持層3は、磁石層1を回転体200の径方向において覆っている。支持層3は、第2接着面2bを覆っている。磁石層1は、軸方向DR1において支持層3から露出している。磁石層1の側面は、支持層3から露出している。
【0033】
支持層3は、例えば、めっき処理された鋼板、アルミニウム(Al)製の板および樹脂等によって構成されている。例えば、支持層3がめっき処理された鋼板によって構成されている場合、支持層3はヨークとして構成され得る。
【0034】
次に、図4図6を用いて、実施の形態1に係るマグネットシール100の製造方法を説明する。
【0035】
図4に示されるように、磁石層1に接着層2によって支持層3が貼り付けられる。例えば、磁石層1となるマグネットシート材に接着層2となるホットメルトフィルムまたは両面テープ等によって支持層3となる板金等が貼り付けられる。
【0036】
続いて、図5に示されるように、板金等が貼り付けられたマグネットシート材(磁石層1)が切断される。図5では、マグネットシート材が切断される方向は、一点鎖線によって示されている。マグネットシート材が切断される方向は、境界10が伸びる方向に対して斜めである。マグネットシート材が切断される方向が境界10となす角の大きさは、規制角度と同じ大きさである。複数のN極11および複数のS極12が交互に配置される方向が0°であり、境界10が伸びる方向が90°である場合、マグネットシート材が切断される方向は、0°よりも大きく90°よりも小さい。望ましくは、マグネットシート材が切断される方向は、30°以上60°以下である。さらに望ましくは、マグネットシート材が切断される方向は、40°以上50°以下である。なお、マグネットシート材が切断される方向は、40°以上50°以下に限定されない。マグネットシート材が切断される方向は、例えば、10°以上80°以下であってもよい。
【0037】
続いて、図6に示されるように、磁石層1、接着層2および支持層3は、例えば、プレス成型によって成型される。これにより、マグネットシール100は、例えば、半円形状に成型される。マグネットシール100は、環形状に成型されてもよい。
【0038】
なお、マグネットシート材が切断された後に、切断されたマグネットシート材が支持層3となる樹脂成型品等に接着層2によって貼り付けられてもよい。この場合、マグネットシール100の加工性が向上する。マグネットシート材は、切断される代わりに打ち抜きによって形成されてもよい。
【0039】
次に、図7を用いて、実施の形態1に係る回転体200の構成を説明する。
【0040】
本実施の形態において、回転体200は、カートリッジ300(図1参照)の現像ローラーである。現像ローラーである回転体200は、トナーを磁力によって回転体200の表面に保持するように構成されている。
【0041】
図7に示されるように、現像ローラーである回転体200は、芯部250と、筒状部260とを含んでいる。芯部250は、複数の第1極部210と、複数の第2極部220とを有している。複数の第1極部210の各々は、N極に着磁されている。複数の第2極部220の各々は、S極に着磁されている。複数の第1極部210および複数の第2極部220は、回転体200の回転方向DR2に沿って交互に設けられている。芯部250は、第1部230をさらに有していてもよい。第1部230は、第1極部210と第2極部220との間に配置されている。第1部230は、N極またはS極に着磁されているか、磁力を有していない。
【0042】
芯部250および筒状部260は、中心軸を共有している。筒状部260は、中空である。筒状部260は、径方向において芯部250を囲んでいる。筒状部260は、芯部250から間隔を空けて配置されている。筒状部260は、回転するように構成されている。筒状部260の表面には、芯部250の磁力によってトナーが吸着される。
【0043】
次に、図1を用いて、実施の形態1に係る回転体200を含むカートリッジ300の構成を説明する。
【0044】
図1に示されるように、カートリッジ300は、2つのマグネットシール100と、現像ローラーである回転体200と、供給部301と、感光体ローラー302と、図示されない筐体とを含んでいる。カートリッジ300は、レーザープリンターに用いられる。本実施の形態において、2つのマグネットシール100の間の領域は、カートリッジ300の内側の領域と呼ばれる。マグネットシール100に対して内側の領域とは軸方向DR1において反対側の領域は、カートリッジ300の外側の領域と呼ばれる。2つのマグネットシール100の各々は、第1端1aが内側の領域に面し、第2端1bが外側の領域に面するように配置されている。
【0045】
供給部301は、トナーを攪拌する攪拌フィンとして構成されている。供給部301は、内側の領域に配置されている。供給部301は、内側の領域においてトナーを回転体200に供給するように構成されている。供給部301は、例えば、回転体200に向かってトナーを送ることで回転体200にトナーを供給するように構成されている。供給部301は、軸部3011を含んでいる。供給部301は、軸部3011を回転軸として回転するように構成されている。軸部3011の回転方向DR4は、回転体200の回転方向DR2とは反対向きである。図1では、回転体200に供給されたトナーの向きは、白抜き矢印によって示されている。供給されたトナーは、隙間を通って内側の領域から外側の領域に向かって移動することがある。供給部301および感光体ローラー302は、内側の領域に配置されている。供給部301および感光体ローラー302は、筐体内に収納されている。
【0046】
2つのマグネットシール100は、供給部301を軸方向DR1において挟み込むように配置されている。2つのマグネットシール100の各々は、供給部301よりも回転体200の端部側に配置されている。2つのマグネットシール100の各々は、トナーが内側の領域から外側の領域に漏出することを抑制するためのものである。2つのマグネットシール100の各々は、供給部301から回転体200に供給されたトナーがマグネットシール100と回転体200との隙間を通って漏出することを抑制するためのものである。2つのマグネットシール100の各々は、トナーがカートリッジの外に漏出することを抑制するためのものである。第1のマグネットシール100の境界10のねじれの向きは、第2のマグネットシール100の境界10のねじれの向きと軸方向DR1において鏡面対称である。
【0047】
次に、図7図9を用いて、実施の形態1に係るマグネットシール100に形成された磁気ブラシ9について説明する。
【0048】
図7に示されるように、トナーが複数のN極11および複数のS極12の各々に吸着されることによって、磁気ブラシ9が形成されている。磁気ブラシ9は、磁石層1および回転体200の両方に接している。磁石層1と回転体200との隙間は、磁気ブラシ9によって少なくとも部分的に埋められている。磁石層1と回転体200との隙間からトナーが漏出することは、磁気ブラシ9によって抑制されている。本実施の形態では、隙間が磁気ブラシ9によって部分的に埋められることで、空隙G1が形成されている。空隙G1は、磁石層1、隣接する2つの磁気ブラシ9および回転体200に囲まれている。
【0049】
図7図9に示されるように、複数のN極11および複数のS極12は、軸方向DR1に沿ってねじれるように配置されている。このため、磁気ブラシ9は、軸方向DR1に沿ってねじれるように形成されている。空隙G1は、軸方向DR1に沿ってねじれるように形成されている。
【0050】
なお、複数のN極11および複数のS極12の各々において、表面磁束密度は、回転方向DR2の位置によって異なっている。複数のN極11および複数のS極12の各々の表面磁束密度は、回転方向DR2における中心において最も高く、回転方向DR2における両端(境界10)において最も低い。複数のN極11および複数のS極12の表面磁束密度は、それぞれの回転方向DR2における中心から両端(境界10)に向かうにつれて低下する。このため、トナーは、複数のN極11および複数のS極12の回転方向DR2における中心において最も多く吸着され、複数のN極11および複数のS極12の回転方向DR2における両端(境界10)において最も少なく吸着される。よって、磁気ブラシ9の径方向における寸法は、回転方向DR2における中心において最も大きく、回転方向DR2における両端(境界10)において最も小さい。磁気ブラシ9は、磁気ブラシ9の径方向における寸法が複数のN極11および複数のS極12の回転方向DR2における中心から両端に向かうにつれて小さくなるように形成される。
【0051】
続いて、本実施の形態の作用効果を第1の比較例に係るマグネットシール101および第2の比較例に係るマグネットシール102と比較しながら説明する。
【0052】
図10に示されるように、第1の比較例に係るマグネットシール101では、複数のN極11および複数のS極12は、境界10が軸方向DR1に沿って直線状に伸びるように配置されている。複数のN極11および複数のS極12の長手方向は、軸方向DR1に沿っている。第1の比較例に係るマグネットシール101では、規制角度が0°である。
【0053】
このため、図11に示されるように、第1の比較例に係るマグネットシール101では、磁気ブラシ9は、軸方向DR1に沿って形成されている。よって、規制角度が0°の場合における磁気ブラシ9の幅寸法は、規制角度が0°よりも大きく90°よりも小さい場合における磁気ブラシ9の幅寸法よりも小さい。第1の比較例に係るマグネットシール101の磁気ブラシ9は、本実施の形態に係るマグネットシール100の磁気ブラシ9よりも短い。したがって、第1の比較例に係るマグネットシール101における磁石層1と回転体200との隙間は、本実施の形態に係るマグネットシール100における隙間よりも短い。これにより、第1の比較例に係るマグネットシール101が用いられたカートリッジ300(図1参照)において、供給部301(図1参照)によって供給されたトナーが内側の領域から外側の領域に向かって移動する場合、トナーは隙間を通って漏出しやすい。
【0054】
これに対して、本実施の形態に係るマグネットシール100によれば、図1に示されるように、複数のN極11および複数のS極12は、複数のN極11および複数のS極12の境界10が軸方向DR1に沿ってねじれるように配置されている。このため、境界10が軸方向DR1に沿って直線状に伸びている場合(図10参照)よりも、複数のN極11および複数のS極12の境界10を長くすることができる。よって、境界10におけるマグネットシール100と回転体200との隙間を長くすることができる。したがって、トナーが隙間を通って漏出することを抑制することができる。
【0055】
図12に示されるように、第2の比較例に係るマグネットシール102では、複数のN極11および複数のS極12は、軸方向DR1に沿って交互に配置されている。複数のN極11および複数のS極12は、境界10が回転方向DR2に沿って直線状に伸びるように配置されている。複数のN極11および複数のS極12の長手方向は、回転方向DR2に沿っている。第2の比較例に係るマグネットシール102では、規制角度が90°である。
【0056】
このため、図13に示されるように、磁気ブラシ9は、回転方向DR2に沿って形成される。よって、隣接する磁気ブラシ9同士の間の領域は、内側の領域および外側の領域に接続されていない。したがって、第2の比較例に係るマグネットシール102が用いられたカートリッジ300(図1参照)において、隣接する磁気ブラシ9同士の間の領域にトナーが侵入した場合でも、トナーは外側の領域に漏出しにくい。
【0057】
しかしながら、第2の比較例に係るマグネットシール102は、以下の2つの問題を有している。第1に、隣接する磁気ブラシ9同士の間の領域が内側の領域および外側の領域に対して閉じているため、隣接する磁気ブラシ9同士の間の領域にトナーが侵入した場合には、隣接する磁気ブラシ9同士の間の領域にトナーが滞留しやすい。このため、同じ位置にトナーが滞留しやすい。トナーが滞留した場合、トナーの温度が上昇する。トナーの温度が上昇した場合、トナーは磁気ブラシ9に固着する。よって、トナーが磁石層1に固着するという問題がある。第2に、第2の比較例に係るマグネットシール102では、複数のN極11および複数のS極12が軸方向DR1に沿って交互に配置されている。このため、マグネットシール100の軸方向DR1における寸法は、2つのN極11および2つのS極12の軸方向DR1の寸法の和以上である。よって、マグネットシール100の軸方向DR1における寸法が大きいという問題がある。
【0058】
これに対して、本実施の形態に係るマグネットシール100によれば、図1に示されるように、複数のN極11および複数のS極12は、複数のN極11および複数のS極12の境界10が軸方向DR1に沿ってねじれるように配置されている。このため、隣接する磁気ブラシ9同士の間の領域は、内側の領域に接続されている。よって、隣接する磁気ブラシ9同士の間の領域にトナーが侵入した場合でも、トナーを内側の領域に移動させることができる。具体的には、トナーを磁気ブラシ9に沿って移動させることで、トナーを内側の領域に移動させることができる。すなわち、本実施の形態においてトナーは、流動性を有している。これにより、同じ位置にトナーが滞留することを抑制することができる。磁石層1に付着したトナーは、入れ替わりやすい。よって、トナーの温度が上昇することを抑制することができる。したがって、トナーが磁石層1に固着することを抑制することができる。また、複数のN極11および複数のS極12が回転方向DR2に沿って交互に配置されているため、複数のN極11および複数のS極12が軸方向DR1に沿って交互に配置されている場合よりも、マグネットシール100の軸方向DR1における寸法を小さくすることができる。
【0059】
以上より、本実施の形態に係るマグネットシール100は、トナーの漏出の抑制、トナーの磁石層1への固着の抑制およびマグネットシール100の軸方向DR1における寸法の増加の抑制を両立することができる。
【0060】
図2に示されるように、磁石層1を径方向から見たときに、磁石層1は、境界10が第2端1bから第1端1aに近づくにつれて境界10と軸方向DR1との距離が回転方向DR2に沿って大きくなるように構成されている。このため、図1に示されるように、供給部301が第1端1a側に配置されている場合、第1端1a側から第2端1b側に向かって供給されたトナーを磁気ブラシ9(図3参照)によって第1端1a側に戻すように移動させることができる。すなわち、トナーを内側向きに移動させることができる。したがって、トナーが漏出することを抑制することができる。
【0061】
図2に示されるように、望ましくは、複数のN極11および複数のS極12は、境界10が軸方向DR1となす角度θが40°以上50°以下になるように配置されている。この場合、トナーの漏出をさらに抑制することができる。なお、規制角度(境界10が軸方向DR1となす角度θ)は、40°以上50°以下に限定されない。規制角度が0°の場合と比較して、規制角度が例えば10°以上80°以下の場合には、トナーの漏出を抑制することができる。規制角度が40°以上50°以下の場合には、トナーの漏出をさらに抑制することができる。
【0062】
磁石層1は、マグネットシート材によって構成されている。このため、磁石層1がボンド磁石によって構成されている場合よりも安価に磁石層1を製造することができる。よって、磁石層1がボンド磁石によって構成されている場合よりも、マグネットシール100の製造コストを低減させることができる。
【0063】
図1に示されるように、マグネットシール100は、回転体200を半周にわたって囲むように構成された半円形状を有している。このため、マグネットシール100をトナーカートリッジに用いることができる。
【0064】
図1に示されるように、第2接着面2bは、支持層3を接着可能である。このため、第2接着面2bによって支持層3を磁石層1に接着させることができる。よって、磁石層1が変形することを支持層3によって抑制することができる。
【0065】
図1に示されるように、支持層3は、磁石層1を支持している。このため、磁石層1が変形することを支持層3によって抑制することができる。
【0066】
支持層3は、ヨークとして構成されている。このため、磁石層1の第1面1cおよび側面(第1端1aおよび第2端1b)における表面磁束密度をヨークによって向上させることができる。
【0067】
図1に示されるように、磁石層1は、軸方向DR1において支持層3から露出している。すなわち、磁石層1の軸方向DR1において支持層3に覆われていない。言い換えると、磁石層1の側面に支持層3が配置されていない。このため、磁石層1が軸方向DR1において支持層3に覆われている場合よりも、支持層3の軸方向DR1における寸法を小さくすることができる。よって、マグネットシール100の軸方向DR1における寸法を小さくすることができる。また、支持層3の軸方向DR1における寸法を小さくすることができるため、支持層3に用いる材料を低減させることができる。このため、マグネットシール100の製造コストを低減させることができる。
【0068】
図1に示されるように、マグネットシール100は、回転体200の径方向に沿って回転体200から隙間を空けて配置されるように構成されている。このため、マグネットシール100は、回転体200に接触しない。よって、マグネットシール100および回転体200の摩擦による摩耗を抑制することができる。したがって、摩耗による印刷精度の低下を抑制することができる。
【0069】
図1に示されるように、マグネットシール100は、回転体200の径方向に沿って回転体200から隙間を空けて配置されるように構成されている。このため、マグネットシール100は、回転体200に接触しない。よって、マグネットシール100および回転体200の摩擦による温度上昇を抑制することができる。したがって、回転体200の温度上昇によるカートリッジ300の故障を抑制することができる。
【0070】
実施の形態2.
次に、図14および図15を用いて、実施の形態2に係るマグネットシール100の構成を説明する。実施の形態2は、特に説明しない限り、上記の実施の形態1と同一の構成および作用効果を有している。したがって、上記の実施の形態1と同一の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0071】
図14および図15に示されるように、本実施の形態に係るマグネットシール100は、回転体200を全周にわたって囲むように構成された環形状を有している。なお、説明の便宜のため、図15には容器部400が図示されていない。マグネットシール100は、軸シールとして構成されている。本実施の形態において、マグネットシール100は、容器部400の端部に取り付けられている。回転体200は、容器部400に対して回転するように構成されている。回転体200の一端は、容器部400の内部に挿入されている。回転体200の他端は、容器部400の外部に配置されている。容器部400の内部には、磁性を有する粉体が配置されている。
【0072】
続いて、本実施の形態の作用効果を説明する。
【0073】
図14および図15に示されるように、本実施の形態に係るマグネットシール100によれば、マグネットシール100は、回転体200を全周にわたって囲むように構成されている。このため、マグネットシール100が回転体200を部分的に囲んでいる場合よりも効果的に粉体の漏出を抑制することができる。
【実施例
【0074】
続いて、図16を用いて、マグネットシール100を試験するための比較例および実施例を説明する。
【0075】
図16に示されるように、マグネットシール100は、試験装置500によって試験された。試験装置500は、筐体部501と、蓋部502と、ステージ部503と、振動部504とを含んでいる。筐体部501および蓋部502は、ステージ部503に固定されている。筐体部501は、内部空間を有している。筐体部501の内部空間には、トナーが充填されている。蓋部502は、内部空間を部分的に塞ぐように構成されている。蓋部502は、底部5021と、凹部5022とを含んでいる。底部5021は、ステージ部503に接している。凹部5022は、底部5021からステージ部503とは反対側に向かって凹んでいる。マグネットシール100は、マグネットシール100がステージ部503からギャップG2を空けてステージ部503に向かい合うように凹部5022に取り付けられている。マグネットシール100とステージ部503との間には、ギャップG2が設けられている。ギャップG2は、マグネットシール100と回転体200(図1参照)との隙間を模している。内部空間のトナーは、ギャップG2を通って筐体部501の外に漏出し得る。試験装置500は、ギャップG2の寸法を変更できるように構成されている。振動部504は、ステージ部503を振動方向DR3に沿って振動させるように構成されている。このため、筐体の内部空間に充填されたトナーは、振動方向DR3に沿って振動する。筐体部501は、振動方向DR3に沿って蓋部502に接続されている。
【0076】
試験装置500によって、振動方向DR3に沿って振動したトナーがギャップG2を通って内部空間から漏出するかどうかが試験された。内部空間からギャップG2内へのトナーの侵入量が測定された。比較例3、比較例4および実施例1~12に係る各マグネットシール100に対して、第1の条件~第10の条件に従って試験が実施された。
【0077】
具体的には、各マグネットシール100に対して、第1の条件から順に試験が実施された。第1の条件~第10の条件の全てにおいてトナーがギャップG2から漏れなかった場合、マグネットシール100の評価はOKだった。OKの評価が得られた場合、ギャップG2が大きくされてから、続けて第1の条件から順に試験が実施された。試験は、トナーがギャップG2を通って漏出するまで続けられた。トナーがギャップG2を通って漏出した場合、そのマグネットシール100の評価はNGだった。また、あるマグネットシール100からある条件においてNGの評価が得られた場合には、以降の条件における試験はそのマグネットシール100に対して実施されなかった。
【0078】
比較例3、比較例4および実施例1~12に係るマグネットシール100の各々には、8つの境界10が設けられていた。比較例3、比較例4および実施例1~12に係るマグネットシール100は、フェライト系のラバーマグネットシート材によって構成されていた。比較例3および実施例1~6に係るマグネットシール100の表面磁束密度は、60mTだった。比較例4および実施例7~12に係るマグネットシール100の表面磁束密度は、78mTだった。
【0079】
比較例3、比較例4および実施例1~12に係るマグネットシールの規制角度および寸法は、表1に示す通りである。
【0080】
【表1】
【0081】
比較例3および比較例4に係るマグネットシール100の規制角度は、0°だった。実施例1および実施例7に係るマグネットシール100の規制角度は、30°だった。実施例2および実施例8に係るマグネットシール100の規制角度は、40°だった。実施例3および実施例9に係るマグネットシール100の規制角度は、45°だった。実施例4および実施例10に係るマグネットシール100の規制角度は、50°だった。実施例5および実施例11に係るマグネットシール100の規制角度は、60°だった。実施例6および実施例12に係るマグネットシール100の規制角度は、70°だった。
【0082】
比較例3および実施例1~6に係るマグネットシール100の厚みは、1.5mmだった。比較例4および実施例7~12に係るマグネットシール100の厚みは、2.0mmだった。比較例3、比較例4および実施例1~12に係るマグネットシール100の軸方向DR1における寸法(幅)は、3.0mmだった。比較例3、比較例4および実施例1~12に係るマグネットシール100の回転方向DR2における寸法(長さ)は、45mmだった。比較例3および実施例1~6に係るマグネットシール100は、互いに同じ寸法を有していた。比較例4および実施例7~12に係るマグネットシール100は、互いに同じ寸法を有していた。
【0083】
第1の条件~第10の条件は、表2に示される通りである。各条件は、振動の加速度および振動の全振幅において異なっている。トナーは、市販のモノクロ印刷用のトナーが用いられた。試験時間は、5分だった。すなわち、振動部504は、試験において5分間にわたってステージ部503を振動させた。
【0084】
【表2】
【0085】
試験が開始されたときのギャップG2は、0.3mmだった。あるギャップG2においてOKの評価が得られた場合、ギャップG2が0.1mm広げられてから第1の条件から順に試験が実施された。例えば、ギャップG2が0.3mmの場合に第1の条件から第10の条件の全てにおいてトナーの漏出が生じないことでOKの評価が得られた場合、ギャップG2が0.4mmにされてから第1の条件から順に試験が実施された。
【0086】
試験結果は、表3~表6に示される通りだった。表3は、比較例3および実施例1~6に係るマグネットシール100の評価を示している。表4は、比較例4および実施例7~12に係るマグネットシール100の評価を示している。表5は、比較例3および実施例1~6に係るマグネットシール100のOKの評価におけるトナーの侵入量(mm)およびNGの評価が得られた加速度を示している。表6は、比較例4および実施例7~12に係るマグネットシール100のOKの評価におけるトナーの侵入量(mm)およびNGの評価が得られた加速度を示している。
【0087】
【表3】
【0088】
【表4】
【0089】
【表5】
【0090】
【表6】
【0091】
表3に示されるように、比較例3に係るマグネットシール100では、ギャップが0.7mmまでの場合には、OKの評価が得られた。実施例1に係るマグネットシール100では、ギャップが1.0mmまでの場合には、OKの評価が得られた。実施例2に係るマグネットシール100では、ギャップが1.2mmまでの場合には、OKの評価が得られた。実施例3に係るマグネットシール100では、ギャップが1.2mmまでの場合には、OKの評価が得られた。実施例4に係るマグネットシール100では、ギャップが1.3mmまでの場合には、OKの評価が得られた。実施例5に係るマグネットシール100では、ギャップが1.2mmまでの場合には、OKの評価が得られた。実施例6に係るマグネットシール100では、ギャップが1.2mmまでの場合には、OKの評価が得られた。
【0092】
表4に示されるように、比較例4に係るマグネットシール100では、ギャップが1.3mmまでの場合には、OKの評価が得られた。実施例7に係るマグネットシール100では、ギャップが1.3mmまでの場合には、OKの評価が得られた。実施例8に係るマグネットシール100では、ギャップが1.4mmまでの場合には、OKの評価が得られた。実施例9に係るマグネットシール100では、ギャップが1.6mmまでの場合には、OKの評価が得られた。実施例10に係るマグネットシール100では、ギャップが1.6mmまでの場合には、OKの評価が得られた。実施例11に係るマグネットシール100では、ギャップが1.2mmまでの場合には、OKの評価が得られた。実施例12に係るマグネットシール100では、ギャップが1.3mmまでの場合には、OKの評価が得られた。
【0093】
表5に示されるように、比較例3に係るマグネットシール100では、ギャップが0.8mmの場合に、第8の条件(加速度80m/s)において、NGの評価が得られた。実施例1に係るマグネットシール100では、ギャップが1.1mmの場合に、第8の条件(加速度80m/s)において、NGの評価が得られた。実施例2に係るマグネットシール100では、ギャップが1.3mmの場合に、第5の条件(加速度50m/s)において、NGの評価が得られた。実施例3に係るマグネットシール100では、ギャップが1.3mmの場合に、第10の条件(加速度100m/s)において、NGの評価が得られた。実施例4に係るマグネットシール100では、ギャップが1.4mmの場合に、第7の条件(加速度70m/s)において、NGの評価が得られた。実施例5に係るマグネットシール100では、ギャップが1.3mmの場合に、第9の条件(加速度90m/s)において、NGの評価が得られた。実施例6に係るマグネットシール100では、ギャップが1.3mmの場合に、第8の条件(加速度80m/s)において、NGの評価が得られた。
【0094】
表6に示されるように、比較例4に係るマグネットシール100では、ギャップが1.4mmの場合に、第9の条件(加速度90m/s)において、NGの評価が得られた。実施例7に係るマグネットシール100では、ギャップが1.4mmの場合に、第10の条件(100m/s)において、NGの評価が得られた。実施例8に係るマグネットシール100では、ギャップが1.5mmの場合に、第9の条件(加速度90m/s)において、NGの評価が得られた。実施例9に係るマグネットシール100では、ギャップが1.7mmの場合に、第9の条件(加速度90m/s)において、NGの評価が得られた。実施例10に係るマグネットシール100では、ギャップが1.7mmの場合に、第9の条件(加速度90m/s)において、NGの評価が得られた。実施例11に係るマグネットシール100では、ギャップが1.3mmの場合に、第5の条件(加速度50m/s)において、NGの評価が得られた。実施例12に係るマグネットシール100では、ギャップが1.4mmの場合に、第5の条件(加速度50m/s)において、NGの評価が得られた。
【0095】
以上より、マグネットシール100の表面磁束密度が60mTである比較例3および実施例1~6では、規制角度を30°以上70°以下にすることで、規制角度が0°の場合よりもトナーの漏出が抑制された。マグネットシール100の表面磁束密度が78mTである比較例4および実施例7~12では、規制角度を30°以上50°以下にすることで、規制角度が0°の場合よりもトナーの漏出が抑制された。規制角度が40°以上50°以下の場合において、特に比較例よりもトナーの漏出が抑制された。規制角度が40°以上50°以下の場合において、規制角度が40°未満または規制角度が50°超の場合よりもトナーの漏出が抑制された。このため、規制角度が40°以上50°以下であることが望ましい。すなわち、複数のN極11および複数のS極12は、境界10が軸方向DR1となす角度が40°以上50°以下になるように配置されていることが望ましい。なお、規制角度は、40°以上50°以下に限定されない。
【0096】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0097】
1 磁石層、1a 第1端、1b 第2端、2 接着層、2a 第1接着層、2b 第2接着層、3 支持層、9 磁気ブラシ、10 境界、11 N極、12 S極、100 マグネットシール。
【要約】
【課題】トナーが漏出することを抑制することができるマグネットシールを提供する。
【解決手段】マグネットシール100は、中心軸周りに回転する回転体200の周囲に配置されるマグネットシールである。マグネットシール100は、磁石層1を備えている。磁石層1は、回転体200の径方向に沿って回転体200から隙間を空けて配置されるように構成されている。磁石層1は、複数のN極11および複数のS極12を含んでいる。複数のN極11および複数のS極12は、回転体200の回転方向DR2に沿って交互に設けられている。複数のN極11および複数のS極12は、複数のN極11および複数のS極12の各々の境界10が回転体200の軸方向DR1に沿ってねじれるように配置されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16