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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】鈴
(51)【国際特許分類】
   A47G 33/00 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
A47G33/00 L
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018156031
(22)【出願日】2018-08-23
(65)【公開番号】P2019209102
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-08-11
(31)【優先権主張番号】P 2018068028
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018106861
(32)【優先日】2018-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】392031790
【氏名又は名称】株式会社小泉製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】小泉 俊博
(72)【発明者】
【氏名】土屋 博嗣
(72)【発明者】
【氏名】小野 久美子
【審査官】家辺 信太郎
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3124901(JP,U)
【文献】実開昭49-110578(JP,U)
【文献】実開平06-042566(JP,U)
【文献】特開平10-127322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 33/00
G10K1/06
B62J3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部にリング形状のベルト部からなる開口部を形成した、網目構造の共鳴体部を備え、
前記共鳴体部は金属製であり
前記網目構造を形成した網目部は複数のフレーム部を一体的に交差させて目開き部を形成したものであることを特徴とする鈴。
【請求項2】
前記共鳴体部は略椀形状であることを特徴とする請求項記載の鈴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仏りんやベル等として使用でき、デザイン性に優れた鈴に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、葬祭用具として用いられる仏りんや、呼び鈴等として用いられるベルにおいて、小型化が可能であったり、新たな音色が出る鈴を提供している(特許文献1,2)。
特許文献1は、りん側部にスリット部を設けたものであり、特許文献2は、りん側部に貫通孔を設けたものである。
これらは、小型でこれまでにない音色が得られる点で優れている。
本発明は、さらに新しい音色や斬新なデザインを検討した結果、得られたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-253171号公報
【文献】特開2011-101784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、デザイン性に優れ、新規の音色からなる鈴の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る鈴は、網目構造の共鳴体部を備え、前記網目構造を形成した網目部は複数のフレーム部を一体的に交差させて目開き部を形成したものであることを特徴とする。
ここで、共鳴体部とは、打鈴部材等で叩くと、音が鳴るものをいう。
【0006】
共鳴体部に網目構造を有する部分が備えられていれば、この共鳴体部の形状や構造に制限はない。
共鳴体部は、打鈴することで音が鳴るようになっていれば、その支持構造に制限はない。
例えば、支持台から立設した支持部材に支持される態様、上方から垂下した支持部材に吊り下げる態様、りん座布団等に載置する態様等が例として挙げられる。
【0007】
本発明において、共鳴体部は開口部とを有する略椀形状であってもよい。
ここで略椀形状とは、外形が球面形状のものや釣鐘形状のもの等、内側に空間部を有するものをいう。
本発明において、網目部の構造や形状に制限がない。
網目部が複数のフレーム部を一体的に交差させて複数の目開き部を形成したものであれば、目開き部の形状は菱形,長方形,正方形,三角形,円形状等、各種形状になるように形成してあってよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る鈴は、網目構造を有する共鳴体部としたので、軽量でありながら余韻のある鈴となる。
また、網目形状を変えることで、いろいろなデザインを楽しむことができる。
網目を通して内部が見え、光沢のある金属材料で製作すると、神秘的な外観となる。
本発明に係る鈴は、りん棒等の打鈴部材にて音を鳴らすものに適している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る鈴の構造例を示し、(a)は正面図、(b)は斜視図を示す。
図2】鈴の断面図を示し、(a)は共鳴体部を支持部材に一体的に連結した例、(b)は共鳴体部を支持部材にビス等にて連結した例を示す。
図3】(a)はベルト部の幅を相対的に小さくした例を示し、(b)は支持台の底面を緩やかな凸面形状にした例を示す。
図4】横方向のフレームと縦方向のフレームとを格子状に連結した共鳴体部の例を示す。
図5】上方が開口した椀形状の共鳴体部にした例を示す。
図6】音響試験に用いたサンプルの例を示す。(a)は本発明に係る鈴Aを示し、(b)は比較に用いた従来の目開き部を有していない鈴Bを示す。
図7】波形分析チャートを示す。(a)はA:本発明に係る鈴を示し、(b)はB:比較に用いた鈴を示す。
図8】スペクトル分析チャートを示す。(a)はA:本発明に係る鈴を示し、(b)はB:比較に用いた鈴を示す。
図9】比較評価に用いたサンプルを示す。(S)は目開き部の無いもの、(S)はベルト部の幅を広くとり、目開き部が少ないもの、(S)は目開き部を多く形成したものを示す。
図10】評価に用いた打鈴装置の例を示す。
図11】サンプル(S)の音圧スペクトルチャートを示す。
図12】サンプル(S)の音圧スペクトルチャートを示す。
図13】サンプル(S)の音圧スペクトルチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る鈴の例を以下図に基づいて説明するが、仏りんや各種ベルに適用できる。
図1に外観図、図2に断面図を示す。
本実施例は、支持台21から立設した支持部材22の上端部22bに共鳴体部10を連結した例になっている。
図2(a)は、支持部材22の上端部22bに共鳴体部10の項部14の裏面部を一体的に連結した例であり、図2(b)は支持部材22の上端部22bとビス部材23の間に、共鳴体部10の項部14を挟み込むように連結した例である。
この連結部は、Oリング等の弾性部材を介したり、スプリング等の弾性部材に連結してもよい。
また、共鳴体部10の項部14の裏面部を支持部材22の上端部22bに、やじろべえのように載置してもよい。
支持部材22の下端部22aは、支持台21にねじ止めした例になっている。
共鳴体部の下端と支持台21の上面との間には、所定の隙間dを有している。
支持台21の底部21aは、図1(a)に示すように平坦部に形成してもよく、図3(b)に示すように緩やかな凸面部21bにすることで、左右に揺動するようにしてもよい。
【0011】
本発明にて特徴的なのは、共鳴体部10に網目構造を有する部分を設けた点にある。
図1に示した実施例は、下側が開口した開口部からなる逆さお椀形状の共鳴体部10とした例である。
お椀の開口部に沿って、帯状からなるリング形状のベルト部11を形成し、項部14からこのベルト部11に向けて複数のフレーム部12を交互に交差させながら、放射状に連結した例になっている。
これにより、フレーム部12が交互に交差してできた菱形形状の目開き部13と、ベルト部11及びフレーム部12にて形成された三角形状の目開き部13aとを有する。
この目開き部の形状に制限はなく、例えば図4に示すように横フレーム12aと縦フレーム12bとにて格子状に形成する等、いろいろな形状が採用される。
【0012】
このような共鳴体部10を採用したことにより、例えば打鈴部材にてベルト部11の側部を叩くと、その振動がベルト部11からフレーム部12に伝わる。
ベルト部11がフレーム部12の揺れを伴って振動するので、従来にない音色が得られる。
また、振動の減衰が遅くなり、余韻が長くなる。
従って、図3に示すようにベルト部11の幅Wの寸法を変えることで、共鳴音の調整が可能になる。
フレーム12の交差部及びベルト部を一体的に形成することで振動の伝達が速く、共鳴性に優れる。
【0013】
本発明に係る共鳴体部10は、上記のように支持部材22の上端部に載置するように支持してもよく、例えば各種支持部材の下端側に吊り下げるように支持してもよい。
また、図5に示すように上部が開口したお椀形状にし、底部15をりん座布団等に載置してもよい。
【0014】
本発明に係る鈴にあっては、共鳴体部10に網目構造を有しているので、デザイン性に優れる。
共鳴体部の材質としては金属が好ましく、プラチナ,金,銀等の貴金属や、黄銅等の銅合金が例として挙げられる。
貴金属を用いると、デザイン性に優れたフレーム部12の形状及び目開き部13から内部が見えることにより、高級感がある。
よって、装飾置物としても利用できる。
【0015】
次に、音響試験を実施したので、以下説明する。
図6に示した本発明に係る鈴Aと比較のために、従来の目開き部の無い鈴Bとを白金(Pt950)を用いて製作し、以下の条件にて試験評価した。
(1)測定器
・マイクロホン:ブリュエル・ケアー社 Type4190
・分析器:ブリュエル・ケアー社 PULSE Type3160-A-042
・分析ソフトウェア:ブリュエル・ケアー社 PULSE LabShop
・測定点:水平方向30cmの距離における高さ30cmの位置
(2)測定方法
<残響時間>
図6に示した鈴A,Bを打鈴し、その後の3秒から15秒までの1/3オクターブバンドレベルの変化から残響時間(RT60)を求めた。
<波形分析>
打鈴後のA特性音圧レベルの変化を計測した。
<スペクトル分析>
3回の打鈴による平均値を計測した。
(3)試験評価結果
<残響時間>
本発明に係る鈴Aの残響時間が23.2秒であったのに対して、比較に用いた鈴Bの残響時間は、15.8秒であった(1/3オクターブバンド中心周波数3150Hz)。
<波形分析>
図7にA特性音圧レベルの打鈴後の時間経過をチャートに示す。
(a)が本発明に係る鈴Aであり、(b)が比較に用いた鈴Bである。
残響時間及び波形分析から、本発明に係る鈴Aは音圧の低下がサンプルBに対して、緩やかであり、残響時間が長いことが明らかになった。
<スペクトル分析>
分析チャートを図8に示す。
(a)は本発明に係る鈴Aのスペクトルを示し、(b)は比較に用いた鈴Bのスペクトルを示す。
本発明に係る鈴Aは、比較に用いた鈴Bよりもより多くの周波数域にて、高い音圧レベルのピークを示すことから、従来の鈴では得られない新規の音色が得られることが明らかになった。
【0016】
次に目開き部の多少による音色の変化を調査した。
図9に製作したサンプルの写真を示す。
それぞれ同じ大きさのお椀型の鈴を作成し、目開き部の数だけを変えた。
サンプル(S)は全く目開き部がないもの、(S)は開口部側に幅広のベルト部を形成したもの、(S)はベルト部を殆ど無くして、できるだけ多くの目開き部を形成した例である。
図10に打鈴装置の例を示す。
同じ強さで打鈴できるように打鈴球を回動自在に吊り下げ、所定の角度、例えば90°まで持ち上げ、手を離した。
そのときの横軸に音の周波数(Hz)をとり、縦軸に音圧(Pa)を示したスペクトルチャートを図11図13に示す。
目開き部が全くないサンプル(S)と、目開き部が少ないサンプル(S)及び目開き部が多いサンプル(S)を比較すると、目開き部の多少によりスペクトルのピーク周波数が変化するだけでなく、色々なスペクトルが出現し、音色が変化することが分かる。
【符号の説明】
【0017】
10 共鳴体部
11 ベルト部
12 フレーム部
13 目開き部
14 項部
21 支持台
21a 底部
22 支持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13