(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】移動棚用安全装置および移動棚
(51)【国際特許分類】
A47B 53/02 20060101AFI20230306BHJP
B65G 1/10 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
A47B53/02 501F
B65G1/10 D
(21)【出願番号】P 2018220497
(22)【出願日】2018-11-26
【審査請求日】2021-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000163833
【氏名又は名称】金剛株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【氏名又は名称】清水 喜幹
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【氏名又は名称】狩生 咲
(72)【発明者】
【氏名】上村 直也
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-148440(JP,U)
【文献】登録実用新案第3003708(JP,U)
【文献】特開2010-264219(JP,A)
【文献】米国特許第05417486(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 53/00、53/02
B65G 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動棚の下部に取り付けられ前記移動棚の前面に沿って横方向に伸びる安全バーが作動することにより前記移動棚の移動を停止させる移動棚用安全装置であって、
前記安全バーに外力が加わることによって直線移動する受動部材と、
前記移動棚に固定されて前記受動部材の直線移動をガイドするガイド部材と、
前記受動部材とともに直線移動する部材であって前記移動棚の走行車輪の外周に対向して配置されているストッパ部と、
前記ストッパ部が前記走行車輪から離間する向きに付勢する付勢部材と、を備え、
前記ガイド部材は、
長さ方向両端部に折り曲げ部を有し、各折り曲げ部に前記受動部材の直線移動をガイドするガイド部と、前記付勢部材の付勢力による前記受動部材の移動を規制する規制部を有する移動棚用安全装置。
【請求項2】
前記付勢部材は、前記ガイド部材と前記受動部材との間に介在して前記受動部材を付勢する請求項1記載の移動棚用安全装置。
【請求項3】
前記ガイド部材
の長さ方向一端部の折り曲げ部に形成されているガイド部はガイド孔であり、長さ方向他端部の折り曲げ部に形成されているガイド部はガイド切欠きである請求項1または2記載の移動棚用安全装置。
【請求項4】
前記
受動部材は幅広部を有し、この幅広部は、前記ガイド部材に当たって前記付勢力による受動部材の移動を規制する前記規制部を構成している請求項1乃至3のいずれかに記載の移動棚用安全装置。
【請求項5】
前記受動部材は
、幅の狭い部材と幅広の部材との結合体からなる請求項1乃至4のいずれかに記載の移動棚用安全装置。
【請求項6】
前記
幅広の部材の端部は、前記ガイド部材に当たって前記付勢力による受動部材の移動を規制する前記規制部を構成している請求項
5記載の移動棚用安全装置。
【請求項7】
前面に沿って横方向に伸びる安全バーが作動することにより移動を停止させる安全装置を備えた移動棚であって、
前記安全装置は、請求項1乃至6のいずれかに記載の安全装置である移動棚。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動で駆動する移動棚にも装着することができる移動棚用安全装置およびこの安全装置を備えた移動棚に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動可能な複数の棚を集合離散可能に配置した移動棚装置がある。移動棚装置は、物品などの出し入れが必要な棚の物品出し入れ面(以下、この面を「前面」または「間口面」という)の前方にのみ作業通路を形成すればよく、限られたスペースを有効に利用することができる。移動棚装置を構成する個々の棚は、それ自体でかなりの重量があり、これに書籍その他の物品を収納した状態では相当な重さになる。したがって、移動棚が一旦移動し始めると大きなエネルギーを持つことになり、人力で移動棚を直接押し止めようとしても止めることは困難である。
【0003】
電動式の移動棚の場合は、移動棚の前面に安全バーを設け、この安全バーが人や異物に接触して作動したとき、電気的にブレーキを掛けることによって容易に移動棚を停止させることができる。しかし、手動で駆動する移動棚の場合は、前述のとおり、移動中の棚をその場に停止させることは困難である。
【0004】
そこで本出願人は、移動棚の前面下部に設けた安全バーが人や異物に接触して作動すると移動棚の移動が停止するようにした移動棚用安全装置を提案した(特許文献1参照)。特許文献1記載の移動棚用安全装置によれば、安全バーが作動するとストッパ部が移動棚の車輪に接して車輪の回転を止めるため、手動で駆動する移動棚であっても、緊急停止させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の移動棚の安全装置は、安全バーと連係する受動部材を有し、受動部材の作動力を、レバーを介してストッパ部に伝達するようになっている。前記レバーは、長さ方向の一端部を支点として揺動可能であり、受動部材との連携部が力点、他端部が作用点となっていて、この作用点にストッパ部が連係している。安全バーが人や異物に接して作動すると、この作動力が受動部材を介しレバーの力点に伝達されてレバーが揺動し、レバーの作用点に連係しているストッパ部が移動棚の車輪に接触して車輪の回転を止め、移動棚を緊急停止させる。
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の移動棚の安全装置には、レバーが介在することを要因とする技術的な課題があることが分かった。レバーは、受動部材の移動量を増幅してストッパ部に伝えるために、支点から作用点まである程度の長さが必要であり、水平方向に長い部品になっている。そのため、受動部材に外力が加わってレバーが揺動し、ストッパ部が車輪に押し付けられると、レバーに加わる力によってレバーが変形しやすいことが分かった。また、受動部材に強い力が加わると、安全装置を台枠に固定している部材の前後の壁が変形しやすいことが分かった。
【0008】
レバーや上記前後の壁が変形すると、レバーの揺動軌跡が変形してストッパ部が設計通りに車輪に当たらず、設計通りの制動力が得られない、ストッパ部に亀裂が生じる、といった不具合が生じることもわかった。
【0009】
本発明は、ストッパ部を車輪の外周に押し付けて制動力を与えて移動棚の移動を停止させるとき、構成部品への応力集中がなく、構成部品が変形することがないようにした移動棚用安全装置および移動棚を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
移動棚の下部に取り付けられ前記移動棚の前面に沿って横方向に伸びる安全バーが作動することにより前記移動棚の移動を停止させる移動棚用安全装置であって、
前記安全バーに外力が加わることによって直線移動する受動部材と、
前記移動棚に固定されて前記受動部材の直線移動をガイドするガイド部材と、
前記受動部材とともに直線移動する部材であって前記移動棚の走行車輪の外周に対向して配置されているストッパ部と、
前記ストッパ部が前記走行車輪から離間する向きに付勢する付勢部材と、を備え、
前記ガイド部材は、前記受動部材の直線移動をガイドするガイド部と、前記付勢部材の付勢力による前記受動部材の移動を規制する規制部を有することを最も主要な特徴とする。
【0011】
本発明に係る移動棚は、前記安全装置を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、安全バーに外力が加わって移動する受動部材は、ガイド部材によって直線移動するようにガイドされる。受動部材に配置されているストッパ部は、受動部材とともに直線移動して走行車輪の外周に押し当てられ、移動棚の移動を停止させる。受動部材はガイド部材によって直線移動するようにガイドされ、レバーの支点、力点、作用点にみられるような応力の集中がなく、部品の変形、破損などを防止することができる。部品点数が少なくなることによって、コスト削減、施工や組み立てのミスが少なくなる、といった利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る移動棚の実施例であって安全装置部分の外観の例を斜視図である。
【
図2】本発明に係る移動棚用安全装置の実施例を示す側面図である。
【
図3】前記安全装置を斜め上後方から見た斜視図である。
【
図4】前記安全装置を構成するガイド部材を示す斜視図である。
【
図5】前記安全装置を構成する受動部材を示す斜視図である。
【
図6】本発明に係る移動棚用安全装置の別の実施例を示す斜視図である。
【
図7】前記移動棚用安全装置の別の実施例を別の角度から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る移動棚用安全装置および移動棚の実施例について図面を参照しながら説明する。
【0015】
[移動棚]
図1は、本発明に係る移動棚用安全装置を備えた移動棚の実施例を示す。
図1において、移動棚10は、台枠12をベースとしてその上面に立てられた適宜数の支柱14を有する。各支柱14の上端には天板が載せられ、天板で各支柱14が結合されている。台枠12、各支柱14および上記天板が一体に結合されることにより棚の枠体が構成されている。
図1は移動棚10に対して書籍や物品を出し入れする面すなわち間口面側から斜めに見た様子を示している。間口面に向かって横方向に所定間隔をおいて立てられた支柱14相互間の適宜の高さ位置において棚板16が支持されている。棚板16は支柱14相互間に固定されていてもよいし、公知の構造によって高さ位置を変更可能に支持されていてもよい。
【0016】
台枠12は、台枠12の幅方向すなわち奥行き方向に適宜数の梁材が掛け渡されて補強されている。前記梁材のいくつかには軸受けが取り付けられていて、軸受けによって回転軸19(
図2参照)が回転可能に支持されている。回転軸19は移動棚10の長さ方向すなわち間口と平行に横方向に延びている。回転軸19には適宜数の車輪18が所定の間隔ごとに嵌合され、車輪18は回転軸19と一体となって回転可能に支持されている。
【0017】
図1において、移動棚10を設置する床には、移動棚10の移動をガイドするレール22が敷設されている。レール22は、移動棚10に前述のようにして支持されている車輪18をガイドするもので、移動棚10の間口方向に並んでいる車輪18の数に対応する数のレール22が車輪18の間隔に対応して敷設されている。移動棚10の駆動形式は問わない。手動力によって駆動するものであってもよいし、電動モータによって駆動するものであってもよい。
【0018】
移動棚10下部には安全バー32が取り付けられている。安全バー32は、移動棚10の台枠12の前面に沿って横方向に伸びている。安全バー32は、移動棚用安全装置の一部を構成しており、人体や異物が安全バー32に接すると、安全バー32を有してなる安全装置が作動して、移動中の移動棚であってもこれを停止させることができる。以下、移動棚用安全装置の実施例について詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
図2乃至
図5に移動棚用安全装置の第1の実施例を示す。
図2乃至
図5において、安全装置30は、主たる構成部材として受動部材34、ガイド部材40、ストッパ部50、付勢部材48を有する。受動部材34は、前記安全バー32に外力が加わることによって直線移動する。ガイド部材40は、移動棚10の台枠12に固定されて受動部材34の直線移動をガイドする。
【0020】
図5に示すように、受動部材34は長方形状の平板の一端部を直角に折り曲げて立ち上げた形の立ち上げ部35と前記平板の他端部を直角に折り曲げて立ち下げた形の立ち下げ部39を有する。立ち上げ部35には安全バー32が接する。立ち下げ部39にはストッパ部50が取り付けられる。
【0021】
受動部材34は、立ち上げ部35側の約半分の幅が立ち下げ部39側の約半分の幅よりも狭くなっている。受動部材34の幅広の部分には、幅の狭い部分との境界近くに、幅方向の両側から角形の切欠き38が形成されている。切欠き38が形成されることにより、切欠き38と幅の狭い部分との間に角形の突起からなる規制部37が形成されている。立ち上げ部35には、付勢部材48を位置決めするための突起36が、立ち上げ部35の外側から内側に向けた打ち出し加工によって形成されている。
【0022】
図4に示すように、ガイド部材40は、長方形状の平板の両端部を直角に折り曲げて立ち上げた形をしており、一方の立ち上げ部41は高く立ち上げられ、他方の立ち上げ部45は低く立ち上げられている。立ち上げ部41はガイド部材40を前記台枠12に固定するとともに受動部材34の直線移動をガイドする部分である。他方の立ち上げ部45は、立ち上げ部41とともに受動部材34の直線移動をガイドする部分である。
【0023】
ガイド部材40の一方の立ち上げ部41には、ガイド部材40を前記台枠12に固定するための取付け孔42が2か所に設けられ、受動部材34の直線移動をガイドするスリット状のガイド孔44が形成されている。ガイド孔44は、受動部材34の前記幅の狭い部分の幅に対応した横方向の寸法と、受動部材34の厚さおよび受動部材34の突起36が通り抜けるのに必要な縦方向の寸法になっている。前記立ち上げ部41は、受動部材34の突起36に対向する位置に、内側から外側に向けて打ち出された突起43を有している。
【0024】
安全装置30の組み立て手順は以下のとおりである。
(1)受動部材34の幅の狭い部分を、立ち上げ部35からガイド部材40のガイド孔44に通す。より具体的には、まず受動部材34の立ち上げ部35をガイド孔44に通し、次に立ち上げ部35の基部を支点にして受動部材34を90度回転させ、上記立ち上げ部35と受動部材34の立ち上げ部41とを対向させる。
【0025】
(2)受動部材34の幅の狭い部分はガイド部材40のガイド孔44によって移動可能にガイドされるので、受動部材34を移動させて切欠き38の位置をガイド部材40の突起46の位置に合わせ、突起46に切欠き38を嵌める。
【0026】
(3)受動部材34の幅広部はガイド部材40のガイド切欠き47に落ち込み、受動部材34は、その幅広部がガイド切欠き47にガイドされて直線移動することができる。
図3はガイド部材40に対して受動部材34
を右側に移動させた状態を示している。この状態では、受動部材34の幅広部
の上側にガイド部材40の突起46
が位置し受動部材34のガイド部材40からの抜け止めがなされる。また、受動部材34は、ガイド部材40のガイド孔44とガイド切欠き47とによってガイドされ、直線的に移動することができる。
【0027】
(4)受動部材34の立ち上げ部35とガイド部材40の立ち上げ部41との間に付勢部材48を介在させる。本実施例における付勢部材48はコイルばねで、コイルばねが圧縮された状態で上記立ち上げ部35と立ち上げ部41との間に介在させる。コイルばねからなる付勢部材48の両端の内径部分に上記立ち上げ部35と立ち上げ部41に形成されている突起36,43を嵌めることにより、付勢部材48は安定に保持される。
【0028】
(5)付勢部材48の反発力により上記立ち上げ部35と立ち上げ部41とが互いに離間する方向に付勢される。この付勢力で受動部材34はガイド部材40に対し
図3において右方に移動するように付勢され、受動部材34の規制部37がガイド部材40のガイド孔44を画する幅方向両側の壁面に当接して、付勢力による受動部材34の移動が規制される。
【0029】
(6)受動部材34の立ち下げ部39の外面にストッパ部50を取り付ける。ストッパ部50は前記走行車輪18の外周面に押し付けられる面が傾斜面になっていて側面から見た形状が全体として直角三角形状になっている。ストッパ部50は、前記三角形の垂直面が受動部材34の立ち下げ部39に密着し、ボルトによって受動部材34に結合されている。
【0030】
図3は、以上のようにして組み立てられた安全装置30を示す。
図2は安全装置30を移動棚10に取り付けた状態を示す。
図2に示すように、受動部材34の立ち上げ部35が台枠12の前面側に突出する態様で、ガイド部材40の立ち上げ部41が移動棚10の台枠12の前面に固定される。受動部材34の立ち上げ部35を台枠12に固定する構造は任意である。上記立ち上げ部41の取付け孔42と台枠12の取付け孔にボルトを貫通させ、ボルトにナットをねじ込んでもよいし、台枠12の取付け孔に挿入したタッピングネジを台枠12にねじ込んでもよい。安全装置30を取り付けた状態で安全装置30の構成部材が台枠12と干渉しないように、台枠の一部が切除されている。
【0031】
図2に示す例では、移動棚の台枠12に安全バー32の上縁部が掛け止められ、安全バー32は台枠12の前面において上記掛け止め部を支点にして揺動可能に装着されている。安全バー32の内面側には、安全装置30を構成する受動部材34の立ち上げ部
35との当接部が設けられている。この
安全バー32の当接部に
、受動部材34の立ち上げ部
35が当接している。受動部材34は付勢部材48で移動棚の前方に突出する向きに付勢されており、この付勢力により、安全バー32は下端縁部が上端縁部よりも移動棚の前方に突出した傾斜態様をとっている。上記付勢力による受動部材の移動は、前記規制部37がガイド部材40のガイド孔44を画する両側の壁面に当接することによって規制される。
【0032】
上記のように受動部材34の移動が規制されている態様において、ストッパ部50の傾斜面が車輪18の外周面に適宜の間隔をおいて対向している。安全バー32に人体または異物が接触すると、安全バー32は前記掛け止め部を支点にして揺動し、付勢部材48による付勢力に抗して、受動部材34を移動棚の奥の方に向かって移動させる。受動部材34の移動によりストッパ部50の傾斜面が車輪18の外周面に当接する。ストッパ部50は、車輪18の外周面とレール22との間に楔のように食い込み、車輪18の回転を阻止して移動棚10を停止させる。
【0033】
上記安全装置30によれば、移動棚10の安全バー32に人体や異物が接触すると、安全バー32に当接している受動部材34が、ガイド部材40によって直線移動するようにガイドされ、ストッパ部50が車輪18に押し当てられる。したがって、安全バー32に加わる外力がストッパ部50の車輪18に対する押圧力として直接的に作用し、機械的な力の損失を軽減することができる。
【0034】
前述の特許文献1記載の移動棚用安全装置は、安全バーの動きを長いレバーの動きに変換してストッパ部を車輪に押し当てる構造になっている。そのため、力の変換部がいくつかあってその部分での力の損失があり、かつ、力の変換部に応力が集中して変形しやすいという難点があった。その点、本願の第1の実施例に係る安全装置30によれば、前述の通り機械的な力の損失を軽減することができ、応力の集中による構成部品の変形をなくすことができる。
【0035】
特許文献1記載の移動棚用安全装置は、付勢部材が引っ張りばねになっていた。この構造によれば、ストッパ部を付勢する引っ張りばねが強く、また、組み立て時に、ストッパ部とこれをガイドする部分との間に遊びを持たせる必要があることから、ストッパ部が引っ張りばねの引っ張り力によって上向きになりやすい。その点、前記本発明の実施例によれば、付勢部材として圧縮ばねを使用することができ、ストッパ部に上向きの力が働きにくくなった。
【0036】
上記安全装置30はまた、受動部材34、ガイド部材40、ストッパ部50、付勢部材48を主たる構成部材としていてシンプルな構成であり、占有空間も少ない。受動部材34とガイド部材40は、ガイド部材40のガイド孔44への受動部材34の挿入、受動部材34の切欠き38とガイド部材40の突起46の嵌め合わせという簡単な操作で組み立てることができ、締結部材の類は不要である。付勢部材48はコイルばねからなり、これを圧縮してガイド部材40と受動部材34の突起36,43間に介在させればよく、組み立てが容易である。
【実施例2】
【0037】
次に、
図6、
図7を参照しながら移動棚用安全装置の第2の実施例について説明する。この第2の実施例は、安全バーとともに移動する受動部材が、横幅の狭い受動部材64と、幅広の第2受動部材67からなり、受動部材64と第2受動部材67が一体に結合されている点が前記第1実施例と異なる。また、受動部材の直線移動をガイドするガイド部材70の構成の一部が第1実施例と異なる。第1実施例と同じ構成部分には共通の符号を付している。
【0038】
図6、
図7において、受動部材64の一端部は直角に折り曲げられた立ち上げ部65になっていて、立ち上げ部65には、付勢部材48を位置決めする突起66が形成されている。第2受動部材67は受動部材64の幅よりも幅広の部材で、一端部は立ち下げ部69になっている。
【0039】
第2受動部材67の平板状の部分に受動部材64の平板状の部分が、これらの部材を幅方向に2分する中心線すなわちこれら受動部材の移動方向に沿った中心線を合致させて載せられ、ビスによって第2受動部材67と受動部材64が結合されている。第2受動部材67と受動部材64の結合体は、第1実施例における受動部材34と実質的に同様に構成され、かつ、同様に機能する。
【0040】
ガイド部材70の両端部には、立ち上げ部71,75が形成されている。立ち上げ部71は立ち上げ部75よりも高く立ち上がっている。立ち上げ部71には、受動部材64の移動をガイドするスリット状のガイド孔74、ガイド部材70を前記台枠12に固着するための取付け孔72、付勢部材48を位置決めする突起66が形成されている。ガイド部材70の立ち上げ部75には、第2受動部材67の移動をガイドするスリット状のガイド孔77が形成されている。
【0041】
ガイド部材70のガイド孔77に立ち上げ部75の外側から第2受動部材67の平板状の部分を挿入し、ガイド部材70のガイド孔74に立ち上げ部71の外側からから受動部材64の平板状の部分を挿入する。第2受動部材67の平板状の部分の上に受動部材64の平板状の部分を載せ、第2受動部材67と受動部材64をビスによって結合する。次に、上記立ち上げ部71と立ち上げ部65との間に圧縮コイルバネからなる付勢部材48を介在させる。付勢部材48は、前記突起66,73によって位置決めされる。
【0042】
第2受動部材67と受動部材64の結合部品は、付勢部材48の付勢力により、第2受動部材67に対し
図6、
図7において右方に付勢される。付勢力による上記結合部品の移動は、第2受動部材67の一端面68が、立ち上げ部71のガイド孔74を画する両側の面に当たることによって規制されている。したがって、第2受動部材67の一端面68は、付勢力による受動部材の移動を規制する規制部を構成している。前記規制態様において、受動部材64の後端面63すなわち前記立ち上げ部75との対向面は、立ち上げ部75に対し適宜の間隔が設けられ、この間隔の範囲内で第2受動部材67と受動部材64の結合部品が直線移動可能になっている。
【0043】
以上のようにして移動棚用安全装置の第2実施例が構成される。第2実施例に係る適宜数の安全装置が、ガイド部材70の立ち上げ部71を前記移動棚10の台枠12に固着することにより移動棚に装着される。各安全装置の受動部材64の立ち上げ部65に移動棚の前面側から安全バー32が当接している。
【0044】
以上のようにして移動棚に、第2実施例に係る安全装置が装着された状態において、通常は、
図2について説明したように、車輪18の外周に対してストッパ部50が適宜の間隔をおいて対向している。安全バー32が人体や異物などによって押されて揺動すると、安全バー32は第2受動部材67と受動部材64の結合部品を付勢力に抗して押す。上記結合部品はガイド部材70にガイドされて直線移動し、ストッパ部50が車輪18に押し当てられて移動棚が緊急停止する。
【0045】
第2実施例に係る移動棚用安全装置によれば、第1実施例と同様の効果を得ることができる。また、第2実施例によれば、以下のような利点がある。受動部材64および第2受動部材67に、第1実施例における切欠き38を設ける必要がなく、部品の強度が高くなる。付勢部材48の付勢力による受動部材64および第2受動部材67の移動規制は、第2受動部材67の一端面68全体がガイド部材70の立ち上げ部71に当接することによって行われるため、受動部材の付勢力による移動規制強度を高めることができる。
【符号の説明】
【0046】
10 移動棚
12 台枠
14 支柱
16 棚板
20 床
22 レール
30 安全装置
32 安全バー
34 受動部材
37 規制部
38 切欠き
40 ガイド部材
44 ガイド孔
46 突起
47 ガイド切欠き
48 付勢部材
50 ストッパ部
64 受動部材
67 第2受動部材
70 ガイド部材