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特許7237353植物栽培用空気調和システム、茸栽培用空気調和システム及び二酸化炭素濃度調整機能付き空気調和システム
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  • 特許-植物栽培用空気調和システム、茸栽培用空気調和システム及び二酸化炭素濃度調整機能付き空気調和システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】植物栽培用空気調和システム、茸栽培用空気調和システム及び二酸化炭素濃度調整機能付き空気調和システム
(51)【国際特許分類】
   A01G 18/69 20180101AFI20230306BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
A01G18/69
A01G7/00 601Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019089164
(22)【出願日】2019-05-09
(65)【公開番号】P2020182426
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】594185097
【氏名又は名称】伸和コントロールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【弁理士】
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】西村 健二
(72)【発明者】
【氏名】山口 俊二
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-205072(JP,A)
【文献】特開2014-042483(JP,A)
【文献】国際公開第2013/035816(WO,A1)
【文献】実開昭53-032143(JP,U)
【文献】特開2004-016232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 18/00 - 18/80
A01G 7/00 - 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を取り込む取込口と、植物を栽培するための栽培室に接続される供給口とを有する空気通流路と、
前記空気通流路内を通流する空気の温度を温度制御する温度制御部と、
前記空気通流路における前記取込口と前記温度制御部が空気を温度制御する位置との間に、前記栽培室内の空気を戻すリターン流路と、
前記空気通流路における前記取込口と前記温度制御部が空気を温度制御する位置との間に設けられ、前記取込口からの空気と前記リターン流路からの空気との混合比を調整して前記温度制御部に供給する混合比調整用弁ユニットと、
前記栽培室に設けられた排出口に接続された排出管に設けられ、前記栽培室内から外部へ排出される空気と、前記栽培室内から前記リターン流路に流入する空気との流量比を調整するリターン流量調整用弁ユニットと、を備え、
前記リターン流路に、前記リターン流路内の空気を分岐させる分岐流路が接続されるとともに、前記リターン流路から前記空気通流路側に流入する空気の流量と前記リターン流路から前記分岐流路に流入する空気の流量とを調整する流量調整弁が設けられ、
前記空気通流路に、前記空気通流路内の空気と前記分岐流路が通流させた空気とを熱交換させる熱交換器が設けられる植物栽培用空気調和システム。
【請求項2】
空気を取り込む取込口と、茸を栽培するための栽培室に接続される供給口とを有する空気通流路と、
前記空気通流路内を通流する空気の温度を温度制御する温度制御部と、
前記空気通流路における前記取込口と前記温度制御部が空気を温度制御する位置との間に、前記栽培室内の空気を戻すリターン流路と、
前記空気通流路における前記取込口と前記温度制御部が空気を温度制御する位置との間に設けられ、前記取込口からの空気と前記リターン流路からの空気との混合比を調整して前記温度制御部に供給する混合比調整用弁ユニットと、
前記栽培室に設けられた排出口に接続された排出管に設けられ、前記栽培室内から外部へ排出される空気と、前記栽培室内から前記リターン流路に流入する空気との流量比を調整するリターン流量調整用弁ユニットと、を備え
前記リターン流路に、前記リターン流路内の空気を分岐させる分岐流路が接続されるとともに、前記リターン流路から前記空気通流路側に流入する空気の流量と前記リターン流路から前記分岐流路に流入する空気の流量とを調整する流量調整弁が設けられ、
前記空気通流路に、前記空気通流路内の空気と前記分岐流路が通流させた空気とを熱交換させる熱交換器が設けられる、茸栽培用空気調和システム。
【請求項3】
空気を取り込む取込口と、温度制御対象空間に接続される供給口とを有する空気通流路と、
前記空気通流路内を通流する空気の温度を温度制御する温度制御部と、
前記空気通流路における前記取込口と前記温度制御部が空気を温度制御する位置との間に、前記温度制御対象空間内の空気を戻すリターン流路と、
前記空気通流路における前記取込口と前記温度制御部が空気を温度制御する位置との間に設けられ、前記取込口からの空気と前記リターン流路からの空気との混合比を調整して前記温度制御部に供給する混合比調整用弁ユニットと、
前記混合比調整用弁ユニットを制御する制御部と、
前記温度制御対象空間に設けられた排出口に接続された排出管に設けられ、前記温度制御対象空間内から外部へ排出される空気と、前記温度制御対象空間内から前記リターン流路に流入する空気との流量比を調整するリターン流量調整用弁ユニットと、を備え、
前記リターン流路に、前記リターン流路内の空気を分岐させる分岐流路が接続されるとともに、前記リターン流路から前記空気通流路側に流入する空気の流量と前記リターン流路から前記分岐流路に流入する空気の流量とを調整する流量調整弁が設けられ、
前記空気通流路に、前記空気通流路内の空気と前記分岐流路が通流させた空気とを熱交換させる熱交換器が設けられ、
前記制御部は、前記温度制御対象空間内の空気の二酸化炭素濃度を上昇させる第1モードによる制御と、前記温度制御対象空間内の空気の二酸化炭素濃度を低下させる第2モードによる制御とを切替え可能であり、
前記第1モードでは、前記リターン流路からの空気が前記取込口から取り込まれた空気よりも高い比率で前記温度制御部に供給されるように前記混合比調整用弁ユニットが制御され、前記第2モードでは、前記取込口から取り込まれた空気が前記リターン流路からの空気よりも高い比率で前記温度制御部に供給されるように前記混合比調整用弁ユニットが制御される、二酸化炭素濃度調整機能付き空気調和システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培用空気調和システム、茸栽培用空気調和システム及び二酸化炭素濃度調整機能付き空気調和システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、植物工場が普及しつつある。植物工場は、植物を栽培するための栽培室内の温度や湿度等を制御し、計画的に植物を栽培するシステムである。このような植物工場は、野菜や茸等の栽培に利用されている。
【0003】
例えば特許文献1は、茸を栽培室内で人工的に栽培するシステムを開示する。茸を栽培する場合、栽培室内の二酸化炭素濃度が茸の形状や大きさ等に影響を及ぼすことが知られている。そのため、茸の栽培では、特許文献1に開示されるような気体濃度制御装置等により、栽培室内の二酸化炭素濃度を調整する場合がある。また、栽培室内の二酸化炭素濃度の調整は、工場管理者の経験に基づく換気時間の調整によってなされる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-55204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的な植物工場では、外気を温度制御した後に栽培室内に供給し、これに応じて栽培室内の古い空気を外部に排出する。しかしながら、このような温度制御方式では、外気の温度と栽培室内の目標温度との差が大きい場合に、温度制御にかかる電力消費量が顕著に大きくなり、ランニングコストが非常に高くなってしまう場合がある。
【0006】
また、上述したように茸を栽培室内で栽培する場合には、栽培室内の二酸化炭素濃度が茸の形状や大きさ等に影響を及ぼすため、二酸化炭素濃度の調整が求められる場合がある。特許文献1には二酸化炭素濃度を制御するための装置が開示されているが、このような装置は特殊な装置であり、一般に高額である。また、茸の栽培においては通常、野菜等よりも高湿度の環境が求められるため、湿度制御にかかる電力消費量も大きくなる場合がある。そのため、茸の栽培にかかるコスト負担は非常に大きくなってしまう場合がある。
【0007】
本発明は上記実情を考慮してなされたものであり、植物の栽培室等の空間を極めて経済的に所望の状態に制御できるシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る植物栽培用空気調和システムは、空気を取り込む取込口と、植物を栽培するための栽培室に接続される供給口とを有する空気通流路と、前記空気通流路内を通流する空気の温度を温度制御する温度制御部と、前記空気通流路における前記取込口と前記温度制御部が空気を温度制御する位置との間に、前記栽培室内の空気を戻すリターン流路と、を備えている。
【0009】
本発明に係る植物栽培用空気調和システムでは、温度制御部により温度制御されて栽培室内に供給された空気を、リターン流路によって空気通流路における取込口と温度制御部による温度制御位置との間に戻すことができ、取込口から取り込んだ空気と、温度制御部によって既に温度制御された空気とを合流させることができる。これにより、温度制御部によって温度制御される空気の温度が栽培室内の目標温度に近づくため、外気等の取込口に取り込まれる空気の温度と栽培室内の目標温度との差が大きくなった場合であっても、目標温度への温度制御にかかるエネルギー消費量を効果的に抑制することができる。
また、従来の一般的な植物工場では、栽培室内に冷却や加熱を行う空気調和装置が配置されており、空気調和装置から生じる異物が栽培室内に混入される虞があったが、本発明にかかる植物栽培用空気調和システムでは栽培室の外部に温度制御部が配置されるため、栽培室への異物混入が抑制される。
以上により、植物の栽培室を極めて経済的に所望の状態に制御できる。
【0010】
本発明に係る植物栽培用空気調和システムは、前記空気通流路に設けられ、前記取込口からの空気と前記リターン流路からの空気との混合比を調整して前記温度制御部に供給する混合比調整用弁ユニットをさらに備えてもよい。
【0011】
この場合、混合比調整用弁ユニットによって、例えば取込口から取り込まれた空気をリターン流路からの空気よりも高い比率で温度制御部に供給する態様と、リターン流路からの空気を取込口から取り込まれた空気よりも高い比率で温度制御部に供給する態様と、取込口から取り込まれた空気とリターン流路からの空気とを同じ割合で混合させて温度制御部に供給する態様と、を切り替えることができる。
例えば植物は二酸化炭素濃度が高い環境において成長が促進される場合があるが、このような環境が望まれる場合に、上記構成では、例えばリターン流路からの空気を取込口から取り込まれた空気よりも高い比率で温度制御部に供給することで、効率的に栽培室内の二酸化炭素濃度を上昇させることができ、植物の成長を温度制御にかかるエネルギー消費量を抑制しつつ促進することが可能となる。
なお、光合成を行う植物は、光合成を行わない場合に空気を吸入して二酸化炭素を排出する。したがって、光合成を行う植物を栽培室で栽培する際には、栽培室の照明を消灯した状態でリターン流路からの空気の循環を行うことで、二酸化炭素濃度を効率に上昇にさせることが可能となる。
【0012】
本発明に係る植物栽培用空気調和システムは、前記栽培室内から外部へ排出される空気と、前記栽培室内から前記リターン流路に流入する空気との流量比を調整するリターン流量調整用弁ユニットをさらに備えてもよい。
【0013】
この場合、リターン流量調整用弁ユニットによって、栽培室内の空気をリターン流路に流入する空気よりも高い比率で外部に排出する態様と、栽培室内の空気を外部に排出される空気よりも高い比率でリターン流路へ流入させる態様と、栽培室内の空気を同じ割合で外部へ排出するとともにリターン流路に流入させる態様と、を切り替えることが可能となる。これにより、例えば二酸化炭素濃度が高い環境が望まれる場合に、栽培室内の空気を外部に排出される空気よりも高い比率でリターン流路へ流入させることで、栽培室内の二酸化炭素濃度を効率的に上昇させることができ、植物の成長を温度制御にかかるエネルギー消費量を抑制しつつ促進することが可能となる。
【0014】
また、前記リターン流路に、前記リターン流路内の空気を分岐させる分岐流路が接続されるとともに、前記リターン流路から前記空気通流路側に流入する空気の流量と前記リターン流路から前記分岐流路に流入する空気の流量とを調整する流量調整弁が設けられ、前記空気通流路に、前記空気通流路内の空気と前記分岐流路が通流させた空気とを熱交換させる熱交換器が設けられてもよい。
【0015】
この場合、リターン流路からの空気を取込口から取り込んだ空気に合流させることなく、リターン流路からの空気を取込口から取り込んだ空気の温度制御に利用できる。これにより、リターン流路からの空気と取込口から取り込んだ空気とを混合させることが望まれない場合であっても、リターン流路からの空気を有効に利用でき、温度制御にかかるエネルギー消費量の抑制を図ることができる。
【0016】
また、本発明に係る茸栽培用空気調和システムは、空気を取り込む取込口と、茸を栽培するための栽培室に接続される供給口とを有する空気通流路と、前記空気通流路内を通流する空気の温度を温度制御する温度制御部と、前記空気通流路における前記取込口と前記温度制御部が空気を温度制御する位置との間に、前記栽培室内の空気を戻すリターン流路と、前記空気通流路に設けられ、前記取込口からの空気と前記リターン流路からの空気との混合比を調整して前記温度制御部に供給する混合比調整用弁ユニットと、を備えている。
【0017】
本発明に係る茸栽培用空気調和システムでは、温度制御部により温度制御されて栽培室内に供給された空気を、リターン流路によって空気通流路における取込口と温度制御部による温度制御位置との間に戻すことができ、取込口から取り込んだ空気と、温度制御部によって既に温度制御された空気とを合流させることができる。これにより、温度制御部によって温度制御される空気の温度が栽培室内の目標温度に近づくため、外気等の取込口に取り込まれる空気の温度と栽培室内の目標温度との差が大きくなった場合であっても、目標温度への温度制御にかかるエネルギー消費量を効果的に抑制することができる。
また、混合比調整用弁ユニットによって、例えば取込口から取り込まれた空気をリターン流路からの空気よりも高い比率で温度制御部に供給する態様と、リターン流路からの空気を取込口から取り込まれた空気よりも高い比率で温度制御部に供給する態様と、取込口から取り込まれた空気とリターン流路からの空気とを同じ割合で混合させて温度制御部に供給する態様と、を切り替えることができる。茸の栽培室においては、栽培室内の二酸化炭素濃度が茸の形状や大きさに影響を及ぼすことが知られており、茸にとって最適な二酸化炭素濃度は、成長段階に応じて異なる値となる。ここで、本発明に係る茸栽培用空気調和システムでは、例えば二酸化炭素濃度が高い環境が望まれる場合に、リターン流路からの空気を取込口から取り込まれた空気よりも高い比率で温度制御部に供給することで効率的に栽培室内の二酸化炭素濃度を上昇させることができ、茸を所望の環境で成長させことが可能となる。なお、茸は空気を吸収し二酸化炭素を排出する植物であるため、本発明に係る茸栽培用空気調和システムにおける二酸化炭素濃度の上昇制御は、茸自身から発生する二酸化炭素を利用でき、極めて経済的に行われる。
また、例えば茸の成長段階に応じて栽培室内の二酸化炭素濃度を低下させることが望まれる場合には、取込口からの空気を増加させて温度制御部に供給することで、二酸化炭素濃度を低下させた環境を迅速に形成できる。
また、従来の一般的な植物工場では、栽培室内に冷却や加熱を行う空気調和装置が配置されており、空気調和装置から生じる異物が栽培室内に混入される虞があったが、本発明に係る茸栽培用空気調和システムでは栽培室の外部に温度制御部が配置されるため、栽培室への異物混入が抑制される。
以上により、茸の栽培室を極めて経済的に所望の状態に制御でき、茸の仕上がりを経済的に向上させることができる。
【0018】
本発明に係る茸栽培用空気調和システムは、前記栽培室内から外部へ排出される空気と、前記栽培室内から前記リターン流路に流入する空気との流量比を調整するリターン流量調整用弁ユニットをさらに備えてもよい。
【0019】
この場合、リターン流量調整用弁ユニットによって、栽培室内の空気をリターン流路に流入する空気よりも高い比率で外部に排出する態様と、栽培室内の空気を外部に排出される空気よりも高い比率でリターン流路へ流入させる態様と、栽培室内の空気を同じ割合で外部へ排出するとともにリターン流路に流入させる態様と、を切り替えることが可能となる。これにより、例えば二酸化炭素濃度が高い環境が望まれる場合に、栽培室内の空気を外部に排出される空気よりも高い比率でリターン流路へ流入させることで、栽培室内の二酸化炭素濃度を効率的に上昇させることができ、茸の成長を温度制御にかかるエネルギー消費量を効果的に抑制しつつ所望の環境で進めることが可能となる。
【0020】
また、本発明に係る二酸化炭素濃度調整機能付き空気調和システムは、空気を取り込む取込口と、温度制御対象空間に接続される供給口とを有する空気通流路と、前記空気通流路内を通流する空気の温度を温度制御する温度制御部と、前記空気通流路における前記取込口と前記温度制御部が空気を温度制御する位置との間に、前記温度制御対象空間内の空気を戻すリターン流路と、前記空気通流路に設けられ、前記取込口からの空気と前記リターン流路からの空気との混合比を調整して前記温度制御部に供給する混合比調整用弁ユニットと、前記混合比調整用弁ユニットを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記温度制御対象空間内の空気の二酸化炭素濃度を上昇させる第1モードによる制御と、前記温度制御対象空間内の空気の二酸化炭素濃度を低下させる第2モードによる制御とを切替え可能であり、前記第1モードでは、前記リターン流路からの空気が前記取込口から取り込まれた空気よりも高い比率で前記温度制御部に供給されるように前記混合比調整用弁ユニットが制御され、前記第2モードでは、前記取込口から取り込まれた空気が前記リターン流路からの空気よりも高い比率で前記温度制御部に供給されるように前記混合比調整用弁ユニットが制御される。
【0021】
本発明に係る二酸化炭素濃度調整機能付き空気調和システムは、二酸化炭素濃度を上昇及び低下させる制御が望まれる環境において有効に利用され得る。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、植物の栽培室等の空間を極めて経済的に所望の状態に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る空気調和システムを備える茸栽培施設の概略構成を示す図である。
図2】本発明の第2の実施の形態に係る空気調和システムを備える茸栽培施設の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の各実施の形態について説明する。
【0025】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る茸栽培用空気調和システム1(以下、空気調和システム1と略す)を備える茸栽培施設P1の概略構成を示す図である。茸栽培施設P1は、空気調和システム1と栽培室100とを備える。栽培室100は茸を栽培するための部屋であり、空気調和システム1は栽培室100内に温度制御及び湿度制御された空気を供給するものである。栽培される茸は特に限られるものではないが、シイタケ、エリンギ、エノキ、マイタケ、ヒラタケ、ナメコ、シメジ等を例示できる。
【0026】
空気調和システム1は、空気通流路10と、送風機11と、温度制御部20と、加湿器24と、リターン流路30と、リターン流量調整用弁ユニット40と、混合比調整用弁ユニット50と、制御部60と、温度センサ71と、湿度センサ72と、CO濃度センサ73と、を備えている。
【0027】
空気通流路10は、外気等の空気調和システム1の外部の空気を取り込む取込口10Aと、栽培室100に接続される供給口10Bとを有している。
【0028】
送風機11は、空気通流路10において取込口10Aから空気を取り込み、取り込んだ空気を供給口10Bまで通流させるための駆動力を発生させるものである。
【0029】
温度制御部20は空気通流路10内を通流する空気を温度制御するものであり、空気通流路10内を通流する空気を冷却する冷却器21と、空気通流路10内を通流する空気を加熱する加熱器22と、を有している。例えば、冷却器21はヒートポンプ式の冷凍回路の蒸発器でもよいが、ペルチェ素子を利用するもの等であってもよい。加熱器22は電気ヒータでもよいが、冷凍回路を循環する高温の熱媒体を利用するもの等であってもよい。
【0030】
本例では、空気通流路10内において冷却器21が加熱器22よりも上流側に配置されるが、このような配置は特に限られるものではない。また、空気通流路10内において送風機11は冷却器21よりも上流側に配置され、加湿器24は加熱器22の下流側に配置されるが、このような配置も特に限られるものではない。
【0031】
加湿器24は、空気通流路10内を通流する空気を加湿するものである。加湿器24は、水を加熱することにより発生させた蒸気を空気に混入させるものでもよいし、超音波式の加湿器であってもよい。
【0032】
リターン流路30は、空気通流路10における取込口10Aと、温度制御部20が空気を温度制御する位置P(本例では冷却器21が空気を冷却する位置)との間に、栽培室100内の空気を戻すものである。
【0033】
本例では、栽培室100に排出口101が設けられ、空気調和システム1が、排出口101に接続される排出管80をさらに備えている。リターン流路30は、排出管80から分岐するように排出管80に接続されている。
【0034】
ここで、リターン流量調整用弁ユニット40は排出管80に設けられており、栽培室100内から排出管80を通して外部へ排出される空気と、栽培室100内からリターン流路30に流入する空気との流量比を調整するようになっている。リターン流量調整用弁ユニット40は、排出管80を通して外部へ排出される空気とリターン流路30に流れる空気との流量比を、0:100~100:0の範囲で調整可能であるが、このような構成に限られるものではない。
【0035】
一方で、混合比調整用弁ユニット50は、空気通流路10における取込口10Aと、温度制御部20が空気を温度制御する位置P(本例では冷却器21が空気を冷却する位置)との間に設けられており、取込口10Aからの空気とリターン流路30からの空気との混合比を調整して温度制御部20に供給するようになっている。混合比調整用弁ユニット50も取込口10Aからの空気とリターン流路30からの空気との混合比を、0:100~100:0の範囲で調整可能であるが、このような構成に限られるものではない。
【0036】
混合比調整用弁ユニット50の制御により、取込口10Aから取り込まれた空気の一部又は全部が温度制御部20に供給されない場合、この温度制御部20に供給されない空気の一部又は全部は図示しない流路から外部に排出されるようになっている。同様に、混合比調整用弁ユニット50の制御により、リターン流路30を通流する空気の一部又は全部が温度制御部20に供給されない場合、この温度制御部20に供給されない空気の一部又は全部は図示しない流路から外部に排出されるようになっている。このような混合比調整用弁ユニット50は例えば4ポート流量調整弁であってもよい。
【0037】
制御部60は、栽培室100内に配置された温度センサ71、湿度センサ72及びCO濃度センサ73と電気的に接続されている。また制御部60は、送風機11、温度制御部20、加湿器24、リターン流量調整用弁ユニット40及び混合比調整用弁ユニット50に電気的に接続され、これらの各部の動作を制御する。制御部60は、例えばCPU,ROM,RAM等を備えるコンピュータで構成され、記憶されたプログラムに従って上記各部の動作を制御してもよい。また、制御部60は、栽培室100内の照明の強度を調整可能であるとともに照明のオンオフを切換可能であってもよい。
【0038】
制御部60は、図示しない操作手段等でユーザから栽培室100内の空気の目標温度、目標室度、供給風量等を設定されるようになっている。そして、制御部60は、目標温度に応じて冷却器21の冷却能力や加熱器22の加熱能力を調整し、目標室度に応じて加湿器24による加湿量を調整するようになっている。また、制御部60は、設定された供給風量に応じて送風機11の風量を調整する。
【0039】
また、制御部60は、栽培室100内の空気の二酸化炭素濃度を上昇させる第1モードによる制御と、栽培室100内の空気の二酸化炭素濃度を低下させる第2モードによる制御とを切替え可能になっている。第1モードでは、リターン流路30からの空気が取込口10Aから取り込まれた空気よりも高い比率で温度制御部20に供給されるように混合比調整用弁ユニット50が制御部60によって制御される。第2モードでは、取込口10Aから取り込まれた空気がリターン流路30からの空気よりも高い比率で温度制御部20に供給されるように混合比調整用弁ユニット50が制御部60によって制御される。
【0040】
第1モードでは、リターン流路30からの空気のみが温度制御部20に供給されるように混合比調整用弁ユニット50が制御されてもよい。また、第2モードでは、取込口10Aから取り込まれた空気のみが温度制御部20に供給されるように混合比調整用弁ユニット50が制御されてもよい。
【0041】
また本実施の形態では、第1モード及び第2モードにおいて、制御部60がリターン流量調整用弁ユニット40も制御する。具体的に制御部60は、第1モード及び第2モードにおいて、リターン流路30からの空気と取込口10Aからの空気との混合比と、栽培室100内からリターン流路30に流れる空気と栽培室100内から外部へ排出される空気との流量比と、を一致させるようになっている。したがって、第1モードにおいて、リターン流路30からの空気のみが温度制御部20に供給される場合には、栽培室100内からリターン流路30のみに空気が流れるようにリターン流量調整用弁ユニット40が制御されることになる。また、第2モードにおいて、取込口10Aから取り込まれた空気のみが温度制御部20に供給される場合には、栽培室100内からリターン流路30に空気が流入しないようにリターン流量調整用弁ユニット40が制御されることになる。
【0042】
上述のような第1モード及び第2モードによる制御は、制御部60がCO濃度センサ73をモニタリングしつつ行われる。栽培室100内の空気が目標の二酸化炭素濃度となった場合に、本実施の形態では、目標の二酸化炭素濃度を維持できる、取込口10Aからのる空気とリターン流路30からの空気との混合比で温度制御部20に空気が供給される。第1モードでは、栽培室100内の空気が目標の二酸化炭素濃度に近づくに従い、温度制御部20に供給される空気において、リターン流路30からの空気に対する取込口10Aから取り込まれた空気の割合が増加するように混合比調整用弁ユニット50が制御されてもよい。また、第2モードでは、栽培室100内の空気が目標の二酸化炭素濃度に近づくに従い、温度制御部20に供給される空気において、取込口10Aから取り込まれた空気に対するリターン流路30からの空気の割合が増加するように混合比調整用弁ユニット50が制御されてもよい。
【0043】
以下、本実施の形態の作用について説明する。
【0044】
空気調和システム1では、温度制御部20により温度制御されて栽培室100内に供給された空気を、リターン流路30によって空気通流路10における取込口10Aと温度制御部20による温度制御位置(P)との間に戻すことができ、取込口10Aから取り込んだ空気と、温度制御部20によって既に温度制御された空気とを合流させることができる。これにより、温度制御部20によって温度制御される空気の温度が栽培室100内の目標温度に近づくため、外気等の取込口10Aに取り込まれる空気の温度と栽培室100内の目標温度との差が大きくなった場合であっても、目標温度への温度制御にかかるエネルギー消費量を効果的に抑制することができる。
【0045】
また、混合比調整用弁ユニット50によって、例えば取込口10Aから取り込まれた空気をリターン流路30からの空気よりも高い比率で温度制御部20に供給する態様と、リターン流路30からの空気を取込口10Aから取り込まれた空気よりも高い比率で温度制御部20に供給する態様と、取込口10Aから取り込まれた空気とリターン流路30からの空気とを同じ割合で混合させて温度制御部20に供給する態様と、を切り替えることができる。茸の栽培室においては、栽培室100内の二酸化炭素濃度が茸の形状や大きさに影響を及ぼすことが知られており、茸にとって最適な二酸化炭素濃度は、成長段階に応じて異なる値となる。ここで、空気調和システム1では、例えば二酸化炭素濃度が高い環境が望まれる場合に、リターン流路30からの空気を取込口10Aから取り込まれた空気よりも高い比率で温度制御部20に供給することで(第1モード)、効率的に栽培室100内の二酸化炭素濃度を上昇させることができ、茸を所望の環境に成長させることが可能となる。なお、茸は空気を吸収し二酸化炭素を排出する植物であるため、空気調和システム1における二酸化炭素濃度の上昇制御は、茸自身から発生する二酸化炭素を利用でき、極めて経済的に行われる。
【0046】
また、例えば茸の成長段階に応じて栽培室100内の二酸化炭素濃度を低下させることが望まれる場合には、取込口10Aからの空気を増加させて温度制御部20に供給することで、二酸化炭素濃度を低下させた環境を迅速に形成できる。
【0047】
また、従来の一般的な植物工場では、栽培室内に冷却や加熱を行う空気調和装置が配置されており、空気調和装置から生じる異物が栽培室内に混入される虞があったが、空気調和システム1では栽培室100の外部に温度制御部20が配置されるため、栽培室100への異物混入が抑制される。
【0048】
以上により、本実施の形態に係る空気調和システム1によれば、茸の栽培室100を極めて経済的に所望の状態に制御でき、茸の仕上がりを経済的に向上させることができる。
【0049】
また、リターン流量調整用弁ユニット40によって、栽培室100内の空気をリターン流路30に流入する空気よりも高い比率で外部に排出する態様と、栽培室100内の空気を外部に排出される空気よりも高い比率でリターン流路30へ流入させる態様と、栽培室100内の空気を同じ割合で外部へ排出するとともにリターン流路30に流入させる態様と、を切り替えることが可能となる。これにより、上述した第1モードにおける二酸化炭素上昇制御を、効率的に実施することが可能となり、茸の成長を温度制御にかかるエネルギー消費量を効果的に抑制しつつ所望の環境で進めることが可能となる。
【0050】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態に係る茸栽培用空気調和システム2を備える茸栽培施設P2を図2を参照しつつ説明する。以下の説明では、第1の実施の形態との相違点のみを説明する。
【0051】
図2に示すように、本実施の形態では、リターン流路30に、リターン流路30内の空気を分岐させる分岐流路32が接続されるとともに、リターン流路30から空気通流路10側に流入する空気の流量とリターン流路30から分岐流路32に流入する空気の流量とを調整する流量調整弁34が設けられている。さらに、空気通流路10には、空気通流路10内の空気と分岐流路32が通流させた空気とを熱交換させる熱交換器90が設けられている。
【0052】
このような第2の実施の形態では、リターン流路30からの空気を取込口10Aから取り込んだ空気に合流させることなく、リターン流路30からの空気を取込口10Aから取り込んだ空気の温度制御に利用できる。これにより、リターン流路30からの空気と取込口10Aから取り込んだ空気とを混合させることが望まれない場合であっても、リターン流路30からの空気を有効に利用でき、温度制御にかかるエネルギー消費量の抑制を図ることができる。
【0053】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、上述の実施の形態には各種の変更を加えることができる。
【0054】
例えば、上述の各実施の形態では、空気調和システム1,2が茸の栽培に適用される例を説明したが、これら空気調和システム1,2は、茸以外の植物の植物工場用ものとして利用されてもよい。また、空気調和システム1,2は二酸化炭素濃度調整機能付きの空気調和システムとして、二酸化炭素濃度を上昇及び低下させる制御が望まれる環境においても有効に利用され得る。
【符号の説明】
【0055】
1,2…茸栽培用空気調和システム、10…空気通流路、10A…取込口、10B…供給口、11…送風機、20…温度制御部、21…冷却器、22…加熱器、24…加湿器、30…リターン流路、32…分岐流路、34…流量調整弁、40…リターン流量調整用弁ユニット、50…混合比調整用弁ユニット、60…制御部、71…温度センサ、72…湿度センサ、73…CO濃度センサ、80…排出管、90…熱交換器、100…栽培室、101…排出口、P1,P2…茸栽培施設
図1
図2