IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ユニオンの特許一覧

<>
  • 特許-担架、及び担架収納体 図1
  • 特許-担架、及び担架収納体 図2
  • 特許-担架、及び担架収納体 図3
  • 特許-担架、及び担架収納体 図4
  • 特許-担架、及び担架収納体 図5
  • 特許-担架、及び担架収納体 図6
  • 特許-担架、及び担架収納体 図7
  • 特許-担架、及び担架収納体 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】担架、及び担架収納体
(51)【国際特許分類】
   A61G 1/013 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
A61G1/013
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019191309
(22)【出願日】2019-10-18
(65)【公開番号】P2021065308
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000138613
【氏名又は名称】株式会社ユニオン
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】田河 寿一
(72)【発明者】
【氏名】庄▲崎▼ 宏治
(72)【発明者】
【氏名】柳下 元宏
(72)【発明者】
【氏名】野原 春花
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】実公昭31-007295(JP,Y1)
【文献】特開2000-024037(JP,A)
【文献】米国特許第4670921(US,A)
【文献】特開2004-215733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 1/013
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直棒状であり、対向配置される一対の支持部材(10)と、
前記一対の支持部材(10)と係合する係合部(21)を有しており、前記一対の支持部材(10)に張架される搬送シート(20)と、
前記一対の支持部材(10)に沿って延びており、前記一対の支持部材(10)が対向する側と反対側から前記係合部(21)を覆い、前記搬送シート(20)を保護する一対の保護部材(30)と、
棒状又は長板状であり、長手方向の中間位置において折曲げ可能であり、前記一対の支持部材(10)を連結する連結具(40)
とを具備する担架。
【請求項2】
前記一対の支持部材(10)の少なくとも一方に取付けられ、前記連結具(40)が前記中間位置において折り曲げられたときに、前記一対の支持部材(10)の間に、前記搬送シート(20)を収容する収容空間(S)を確保するスペーサ(50)を更に具備する、請求項1に記載の担架。
【請求項3】
前記保護部材(30)は、前記一対の支持部材(10)に沿って延びている台部(32)であって、地面及び床面などの載置面(G)との間に所定の隙間を置いて前記一対の支持部材(10)を支持する台部(32)を更に有する、請求項1又は請求項2に記載の担架。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の担架を収納する箱状の担架収納体であって、
前記一対の支持部材(10)が延びる方向に沿った担架全長(L1)よりも取出遊び長さ(L2)だけ長い内法長さ(L3)を有し、上下方向に沿って設置される矩形状の箱本体(61)と、
前記箱本体(61)の前面に開口する取出口(62)であって、前記一対の保護部材(30)に各々形成されており、前記一対の支持部材(10)が対向する側と反対側から前記係合部(21)を覆う蓋板部(34)と嵌合又は遊嵌可能である取出口(62)
とを具備する、担架収納体。
【請求項5】
前記取出口(62)の下端に配設される下側係止片(63)と、
前記取出口(62)の上端に配設される上側係止片(64)
とを更に具備する、請求項4に記載の担架収納体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担架、及び担架収納体に関し、病院はもとより、特に、大学、鉄道の駅、空港など、多数の人が利用する各種施設に設置するのに好適な担架、及び担架収納体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、大学、駅、空港などの公共的施設にAED(自動体外式除細動器)などの緊急用具を設置することが推奨されており、緊急用具の一種としての担架を公共的施設に設置することが社会的に要請されている。担架は、緊急用具としては比較的に大きく、従って、公共的施設における限られたスペースに、担架をコンパクトに収納できるようにすることが求められている。
【0003】
収納性に配慮した担架として、特許文献1には、折畳み、分解が可能な組立式担架が記載されている。特許文献1に記載の担架は、人を乗せる搬送シートを有する担架本体と、担架本体を移動可能に支持する脚部とを具備する。担架本体は、脚部から取外し可能であり、長手方向に折畳み可能である。また、脚部は、上下方向に伸縮可能である。従って、特許文献1に記載の担架は、コンパクトな形状にまとめることができ、比較的に小さなスペースに収納できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-69013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の担架においては、担架本体が、人を乗せるだけの横幅を有しており、担架を収納する収納スペースにも、担架本体の横幅に対応する比較的に大きな横幅、又は奥行きが必要となる。
【0006】
また、鉄道駅などの公共的施設に担架を設置する場合には、緊急の際に担架が即座に使用できることが重要であり、収納スペースの取出口も、蓋で厳重に塞がれるのではなく、担架を容易に取出すことができるように、開放されていることが好ましい。
【0007】
ところが、担架各部のうち、搬送シートは、素材にも依るが、熱や鋭利物に弱く、担架各部の中では損傷しやすい部分である。従って、搬送シートがむき出しの状態で担架が収納スペースに収納されると、収納中に搬送シートが損傷され、緊急時に担架を正常に使用できなくなることも考えられる。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、幅及び奥行きが両方とも比較的に小さい収納スペースに設置できるとともに、当該収納スペースに、搬送シートがむき出しとならない状態で収納できる担架、及び担架収納体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願に開示する担架は、一対の支持部材(10)と、搬送シート(20)と、一対の保護部材(30)と、連結具(40)とを具備する。前記一対の支持部材(10)は、直棒状であり、対向配置される。前記搬送シート(20)は、前記一対の支持部材(10)と係合する係合部(21)を有しており、前記一対の支持部材(10)に張架される。前記一対の保護部材(30)は、前記一対の支持部材(10)に沿って延びており、前記一対の支持部材(10)が対向する側と反対側から前記係合部(21)を覆い、前記搬送シート(20)を保護する。前記連結具(40)は、棒状又は長板状であり、長手方向の中間位置において折曲げ可能であり、前記一対の支持部材(10)を連結する。
【0010】
本願に開示する担架は、スペーサ(50)を更に具備する。前記スペーサ(50)は、前記一対の支持部材(10)の少なくとも一方に取付けられ、前記連結具(40)が前記中間位置において折り曲げられたときに、前記一対の支持部材(10)の間に収容空間(S)を確保する。前記収容空間(S)は、前記搬送シート(20)を収容する。
【0011】
本願に開示する担架において、前記一対の保護部材(30)は、台部(32)を更に有する。前記台部(32)は、前記一対の支持部材(10)に沿って延びており、地面及び床面などの載置面(G)との間に所定の隙間を置いて前記一対の支持部材(10)を支持する。
【0012】
本願に開示する担架収納体は、箱状であり、上記した担架を収納する。そして、担架収納体は、箱本体(61)と、取出口(62)とを具備する。前記箱本体(61)は、矩形状であり、前記一対の支持部材(10)が延びる方向に沿った担架全長(L1)よりも取出遊び長さ(L2)だけ長い内法長さ(L3)を有し、上下方向に沿って設置される。前記取出口(62)は、前記箱本体(61)の前面に開口し、前記一対の保護部材(30)に各々形成されている蓋板部(34)と嵌合又は遊嵌可能である。前記蓋板部(34)は、前記一対の支持部材(10)が対向する側と反対側から前記係合部(21)を覆う。
【0013】
本願に開示する担架収納体は、下側係止片(63)と、上側係止片(64)とを更に具備する。前記下側係止片(63)は、前記取出口(62)の下端に配設される。前記上側係止片(64)は、前記取出口(62)の上端に配設される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の担架、及び担架収納体は、幅及び奥行きが両方とも比較的に小さい収納スペースに設置できるとともに、当該収納スペースに、搬送シートがむき出しとならない状態で収納できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)本発明の実施形態に係る担架を示す平面図である。(b)図1(a)のA-A線断面図である。
図2図1の担架を下側から見た斜視図である。
図3図1(a)のB-B線断面図である。
図4】実施形態に係る保護部材を示す横断面図である。
図5】(a)実施形態に係るスペーサを示す正面図である。(b)実施形態に係るスペーサを示す側面図である。(c)実施形態に係るスペーサを示す底面図である。
図6】(a)本発明の実施形態に係る担架収納体を示す正面図である。(b)収納スペースに設置されている担架収納体の上部を側方から見た内部透視図である。(c)収納スペースに設置されている担架収納体の下部を側方から見た内部透視図である。
図7】担架、及び担架収納体が収納スペースに設置されているときの図6(a)のC-C線断面図である。
図8】(a)担架収納体から担架を取出す取出手順における取出開始時の側方透視図である。(b)取出手順における取出途中の第1段階における側方透視図である。(c)取出手順における取出途中の第2段階における側方透視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る担架を図面に基づいて詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するのに好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に発明を限定する旨が明記されていない限り、この実施形態に限定されるものではない。
【0017】
〈実施形態〉
図1図4を参照して、本発明の実施形態に係る担架を説明する。図1(a)は、実施形態に係る担架を示す平面図である。図1(b)は、図1(a)のA-A線断面図である。図2は、図1の担架を下側から見た斜視図である。図3は、図1(a)のB-B線断面図である。図4は、実施形態に係る保護部材を示す横断面図である。
【0018】
図1に示すように、実施形態の担架1は、一対の支持部材10と、一対の支持部材10に張架され、急病人などの被搬送者を乗せる搬送シート20と、担架1の収納スペースの蓋板として機能する一対の保護部材30と、一対の支持部材10を連結する連結具40とを具備する。
【0019】
図1図3に示すように、一対の支持部材10は、直棒状の部材であり、略平行となるように、対向配置され、担架1の前後に配置される複数の搬送者によって把持される。実施形態における支持部材10は、中空のパイプ状であり、所定本数のビス、リベットなどの留具B1によって、保護部材30に留められる。支持部材10が、留具B1によって保護部材30に留められることによって、支持部材10は、保護部材30に対し、長手方向に移動せず、且つ長手方向に沿った中心軸周りに回転しないように固定される。
【0020】
一対の支持部材10の横断面形状は、搬送者が支持部材10を把持できればよく、特に限定されないが、実施形態においては、図4に示すように、支持部材10は、反対方向X2の側部に、平坦部10aが形成されている。平坦部10aは、支持部材10を把持したときに掌を当てやすくするように、所定の上下幅αを有している。上下幅αは、成年男子の平均的な掌、指の寸法に基づいて決められる。
【0021】
なお、反対方向X2とは、一対の支持部材10が対向する対向方向X1の反対方向である。対向方向X1とは、一対の支持部材10の一方から他方に向かう方向であって、一方の支持部材10に対し垂直な方向である。また、支持部材10、保護部材30の上下とは、担架1を地面、床面などの水平な載置面Gに載置した状態における上下を意味するものとする。
【0022】
また、支持部材10は、親指を掛けやすいように、対向方向X1の側部に、横断面が山形となるように突出する突出部10bが形成されている。更に、支持部材10における下端部10cの横断面形状は、親指以外の4本の指を掛けやすい曲率半径βを有する半円形状に形成されている。曲率半径βは、成年男子の平均的な指の寸法に基づいて決められる。
【0023】
搬送シート20は、図1図3に示すように、長方形状であり、一対の支持部材10の全長よりも短く、且つ人を乗せるのに十分な全長を有しており、所定本数のビス、リベットなどの留具(B1、B2)によって、一対の支持部材10及び保護部材30に対し長手方向に移動しないように留められる。
【0024】
また、搬送シート20は、図3図4に示すように、一対の支持部材10と係合する係合部21を有している。実施形態においては、搬送シート20は、樹脂製である。係合部21は、搬送シート20を一対の支持部材10に十分な強度で取付けできるものであればよく、形状、寸法、個数は特に限定されないが、実施形態においては、搬送シート20の側端部を所定長さだけ折り返し、当該側端部の溶着部22を搬送シート20の対応位置に形成することによって、支持部材10を挿通可能な一対の係合部21が、搬送シート20の両側部に、全長に亘って形成されている。
【0025】
一対の保護部材30は、図1図2に示すように、一対の支持部材10に沿って延びており、図3図4に示すように、一対の支持部材10が対向する側と反対側から搬送シート20の係合部21を覆い、搬送シート20を保護する。実施形態においては、保護部材30は、アルミニウム合金製の形材から形成されており、搬送シート20の全長と同等の全長を有している。
【0026】
また、実施形態における保護部材30は、図4に示すように、支持部材10を覆う覆い部31と、台部32と、凹部33とを有している。また、図2に示すように、保護部材30は、長手方向における両端に、樹脂製の端板30aが取付けられており、エッジによる負傷が防止される。
【0027】
図4に示すように、覆い部31は、後述する蓋板部34の一部分である蓋板上部34aと、天板片31aと、底板片31bと、留板片31cとを含む。
【0028】
蓋板上部34aは、図4に示すように、係合部21に対し反対方向X2に配設されており、係合部21と当接する。天板片31aは、蓋板上部34aの上端から対向方向X1に延設されており、支持部材10の上端部と対向する。底板片31bは、蓋板上部34aの下端から対向方向X1に延設されており、支持部材10の下端部10cと対向する。留板片31cは、底板片31bにおける対向方向X1の端部から上方向に延設されており、下端部10cと係合し、支持部材10を覆い部31の内側に保持する。
【0029】
台部32は、図1(b)に示すように、一対の支持部材10に沿って延びており、図4に示すように、載置面Gとの間に所定の隙間を置いて一対の支持部材10を支持する。実施形態においては、台部32は、蓋板下部34bと、接地部32aとを含んでいる。蓋板下部34bは、蓋板部34のうち蓋板上部34aを除いた部分である。接地部32aは、横断面が逆向きのコの字状であり、蓋板下部34bの下端から対向方向X1に延設されており、載置面Gと当接する。
【0030】
凹部33は、図4に示すように、底板片31bと、接地部32aとの間に配設されており、図3に示すように、連結具40における一対の支持部材10との各結合端が挿入される。連結具40における各結合端は、図1に示すように、軸状の留具B1によって、一対の支持部材10と一対の保護部材30とに留められる。連結具40における各結合端が、留具B1によって、一対の支持部材10と一対の保護部材30とに留められることによって、連結具40に対し、支持部材10及び保護部材30が支持部材10の軸心周りに回転することが防止される。
【0031】
連結具40は、図2に示すように、棒状又は長板状であり、長手方向の中間位置において折曲げ可能である。実施形態の担架1は、2つの連結具40を具備しており、各連結具40が中間位置において折曲げられることによって、一対の支持部材10が互いに近接され、担架1の幅が縮小される。連結具40が最大限度まで折り曲げられると、担架1の幅は最小となり、担架1は、収納に適した状態(図8参照)となる。また、担架1の幅が最小となるまで連結具40が折り曲げられると、一対の保護部材30は、面ファスナなどの締結具35によって互いに締結される。
【0032】
反対に、連結具40の折曲げが解除され、連結具40が最大限度まで引伸ばされると、一対の支持部材10の間隔は最大となり、搬送シート20が一対の支持部材10の間に張り渡され、担架1は、被搬送者を搬送可能となる。
【0033】
実施形態においては、連結具40は、図2に示すように、2本のアーム部材41と、繋ぎ金具42とを有する。2本のアーム部材41は、各々、パイプ又は細長板から形成されており、上述したとおり、一端部において、図1(a)に示すように、留具B1によって、各支持部材10に回動可能に連結される。図2に示すように、繋ぎ金具42は、連結具40が中間位置において折曲げ可能となるように、2本のアーム部材41の他端部同士を繋ぐ。
【0034】
繋ぎ金具42は、2本のアーム部材41のうちの一方に対し回動可能に、当該アーム部材41の他端部と連結され、2本のアーム部材41のうちの他方に対しては回動不可能に、当該アーム部材41の他端部と連結される。従って、2つの連結具40が最大限度まで折り曲げられているときと、最大限度まで引伸ばされているときの両方において、一対の支持部材10は、長手方向における互いの位置関係にずれを生じることなく、一定の位置関係で連結される。その結果、搬送時と収納時の両方において、担架1全体の形状を安定的に保つことができ、被搬送者を安定した状態で安全に搬送できるとともに、担架1を安定した状態で収納できる。
【0035】
以上、図1図4を参照して説明したように、実施形態の担架1においては、長手方向の中間位置において折曲げ可能である連結具40によって、一対の支持部材10が連結される。従って、長手方向にではなく、幅方向に、担架1を折り畳むことが可能となり、幅及び奥行きが、両方とも比較的に小さい収納スペースに担架1を収納でき、鉄道駅などの公共的施設における限られたスペースに、緊急の場合に備えて、担架1を設置することが容易となる。
【0036】
また、実施形態の担架1においては、一対の保護部材30によって、搬送シート20の係合部21が、一対の支持部材10が対向する側と反対側から覆われる。従って、担架1を収納スペースに収納する際に、収納スペースにおける取出口側に保護部材30を配置することによって、保護部材30が収納スペースの蓋板として機能し、収納スペースに蓋がない場合であっても、保護部材30の奥側に搬送シート20を隠し、搬送シート20がむき出しとならない状態で担架1を収納することができる。その結果、収納中に搬送シート20が損傷され、緊急時に担架1が正常に使用できなくなることを防止できる。また、搬送シート20を保護するための蓋が収納スペースに不要となることから、担架1を収納スペースから取出すことが容易となり、緊急時に、即座に担架1を収納スペースから取出し、使用することが容易となる。
【0037】
また、図4を参照して説明したように、実施形態の担架1によれば、一対の保護部材30が台部32を有しており、台部32が、地面、床面などの載置面Gとの間に所定の隙間を置いて一対の支持部材10を支持する。従って、人を乗せた担架1を載置面Gから持ち上げる際に、一対の支持部材10の下側に指を差込むことが容易となり、一対の支持部材10をより確実に把持でき、急病人などの被搬送者をより安全に搬送できる。
【0038】
また、台部32が、一対の支持部材10に沿って延びており、接地部32aにおいて広い面積で載置面Gと当接することから、例えば棒状の数本の脚を担架に設け、数本の脚で一対の支持部材10を支持する場合と比較すると、より安定的に一対の支持部材10を支持でき、搬送シート20に被搬送者を載せた状態で、より安全に担架1を載置面Gに載置できる。
【0039】
また、直棒状の支持部材10に、形材から成る保護部材30を副えることによって、支持部材10の撓みを防止でき、上下の振動を防止でき、被搬送者をより安全に搬送できる。
【0040】
次に、図2図5を参照して、本発明の他の実施形態を説明する。図5(a)は、実施形態に係るスペーサを示す正面図である。図5(b)は、実施形態に係るスペーサを示す側面図である。図5(c)は、実施形態に係るスペーサを示す底面図である。
【0041】
図2図5に示すように、実施形態に係る担架1は、スペーサ50を更に具備する。スペーサ50は、一対の支持部材10の少なくとも一方に取付けられており、連結具40が中間位置において折り曲げられたときに、一対の支持部材10の間に収容空間S(図7参照)を確保する。収容空間Sは、搬送シート20を収容する空間である。
【0042】
実施形態においては、図2に示すように、スペーサ50は、一対の支持部材10のエンドプレートとして、各支持部材10における長手方向の両端に取付けられる。従って、一対の支持部材10における同じ側の端部に取付けられる2つのスペーサ50を1つのペアとして、2ペアのスペーサ50が一対の支持部材10に取付けられている。各ペアのスペーサ50は、連結具40が中間位置において折り曲げられたときに互いに当接し、一対の支持部材10の間に収容空間S(図7参照)を確保する。
【0043】
図5に示すように、実施形態においては、スペーサ50は、スペーサ本体51と、嵌合突部52と、嵌合溝部53と、ネジ孔54とを有する。
【0044】
スペーサ本体51は、概略長方形の厚板状であり、長辺に沿った1つの側面が、他のスペーサ50と当接する当接面51aとして機能する。実施形態においては、各ペアのスペーサ50における当接面51a同士が当接することによって、一対の支持部材10の間に収容空間S(図7参照)が確保される。また、図7に示すように、スペーサ本体51の長辺方向の寸法は、保護部材30の高さと同等となっている。
【0045】
嵌合突部52は、スペーサ本体51における一方の主面に突設されており、支持部材10の長手方向における端部開口と嵌合する。当該一方の主面に対し垂直な方向から見たときの嵌合突部52の平面視形状は、支持部材10における中空部の横断面形状と同一である。また、当該一方の主面において、嵌合突部52は、収容空間Sを十分に大きくするように、当接面51aから離れる方向に偏った位置に配設されている。
【0046】
嵌合溝部53は、スペーサ本体51における一方の主面において、嵌合突部52の周囲に形成されており、支持部材10の長手方向における端部と嵌合する。嵌合溝部53の開口形状は、支持部材10における中空部周壁の横断面形状と略同一である。
【0047】
ネジ孔54は、嵌合突部52に下側から穿設されており、スペーサ50を支持部材10に固定するためのビスなどの留具B3と螺合する。
【0048】
以上、図2図5図7を参照して説明したように、実施形態の担架1においては、スペーサ50によって、一対の支持部材10の間に、搬送シート20を収容するための収容空間Sが確保される。従って、保護部材30を収納スペースの取出口側に配置し、担架1を収納スペースに収納する際に、搬送シート20が保護部材30の側方にはみ出さないように、担架1を収納することができ、より確実に、搬送シート20がむき出しとならない状態で担架1を収納スペースに収納できる。その結果、担架1の収納中に搬送シート20が損傷され、緊急時に担架1を正常に使用できなくなることをより確実に防止できる。
【0049】
また、実施形態においては、厚板状のスペーサ本体51を有するスペーサ50が、一対の支持部材10の両端部にエンドプレートとして取付けられる。従って、幅方向に折り畳まれた担架1の長手方向を上下にして、担架1を縦置きに収納スペースに収納する際には、スペーサ50が足として機能し、担架1が倒れにくくなり、担架1を安定した状態で収納できる。
【0050】
次に、図4と、図6図8とを参照して、本発明の実施形態に係る担架収納体を説明する。図6(a)は、実施形態に係る担架収容体を示す正面図である。図6(b)は、収納スペースに設置されている担架収納体の上部を側方から見た内部透視図である。図6(c)は、収納スペースに設置されている担架収納体の下部を側方から見た内部透視図である。図7は、担架、及び担架収納体が収納スペースに設置されているときの図6(a)のC-C線断面図である。図8(a)は、担架収納体から担架を取出す取出手順における取出開始時の側方透視図である。図8(b)は、取出手順における取出途中の第1段階における側方透視図である。図8(c)は、取出手順における取出途中の第2段階における側方透視図である。
【0051】
実施形態に係る担架収納体2は、図6図8に示すように、細長い箱状であり、箱本体61と、取出口62とを具備し、病院、大学、鉄道の駅、空港などの各種施設に設置され、連結具40が最大限度まで折り曲げられた状態で、実施形態の担架1を収納する。
【0052】
箱本体61は、細長い矩形状であり、図6(a)に示すように、担架全長L1よりも取出遊び長さL2だけ長い内法長さL3を有し、上下方向に沿って設置される。箱本体61は、左右に取付金具61aを有しており、図7に示すように、取付金具61aを介しボルトなどの留具B4によって、壁板Wの内部側に設けられた図示しない構造材に固定される。なお、箱本体61の前後左右は、壁板Wに対し手前側を「前」とし、奥側を「後」とし、前後方向に直交する方向を左右方向とする。
【0053】
担架全長L1は、一対の支持部材10が延びる方向に沿った担架1の長さであり、支持部材10の両端にスペーサ50が取付けられているときには、支持部材10の全長よりもスペーサ50の厚みの分だけ長い長さとなる。取出遊び長さL2は、箱本体61から担架1を取出す際に、担架1をスムーズに取出せるように、担架1の上下の移動を許容するための長さである。実施形態においては、取出遊び長さL2は、図6(b)に示す下側係止片63の上下方向に沿った長さL11よりも長い長さに設定される。
【0054】
図7に示すように、取出口62は、箱本体61の前面に開口し、図4に示す保護部材30の蓋板部34と嵌合又は遊嵌可能である。蓋板部34は、保護部材30における反対方向X2の側部に形成されており、一対の支持部材10が対向する側と反対側から搬送シート20の係合部21を覆う。
【0055】
また、図6に示すように、実施形態に係る担架収納体2は、下側係止片63と、上側係止片64とを更に具備し、箱本体61の内部に、方形厚板状の位置決め部材65を更に具備する。
【0056】
下側係止片63は、取出口62の下端に配設され、例えば縦置きにされた担架1における下側のスペーサ50と当接し、箱本体61の内部に担架1を係止する。実施形態においては、下側係止片63の上下方向に沿った長さL11は、取出遊び長さL2よりも短く、且つスペーサ本体51の厚みL21以上である。長さL11がスペーサ本体51の厚みL21以上であることによって、担架1をより確実に係止できる。
【0057】
上側係止片64は、取出口62の上端に配設され、例えば縦置きにされた担架1における上側のスペーサ50と当接し、箱本体61の内部に担架1を係止する。実施形態においては、上側係止片64の上下方向に沿った長さL12は、取出遊び長さL2よりも長く、載置面Gと箱本体61との間隙L31(図8(b)参照)よりも短い。長さL12が、間隙L31より短いことによって、担架1を箱本体61から取出すときに、縦置きにされた担架1の下端が載置面Gにつかえることなく、担架1をスムーズに取出すことができる。
【0058】
位置決め部材65は、縦置きにされた担架1における下側のスペーサ50と当接し、担架1を前後方向において位置決めする。
【0059】
図8(a)に示すように、箱本体61に収納されている担架1を取出すとき、一対の支持部材10において、例えば保護部材30よりも下の部分を把持し、下側係止片63を越えるように担架1を持ち上げ、図8(b)に示すように、担架1の下端を壁板Wの外側に引き寄せる。
【0060】
図8(c)に示すように、担架1の下端が箱本体61の外側まで完全に移動すると、担架1の下端にあるスペーサ50を載置面Gの上に置き、担架1を上下に立てるようにして、担架1を箱本体61から取出す。
【0061】
以上、図4図6図8を参照して説明したように、実施形態の担架収納体2によれば、箱本体61の前面に設けられている取出口62が、保護部材30に形成されている蓋板部34と嵌合又は遊嵌可能であることから、担架1を箱本体61に収納する際に、箱本体61における取出口62の蓋として保護部材30を機能させることができ、担架収納体2に特別の蓋を設けることなく、搬送シート20がむき出しとならない状態で担架1を収納することができる。その結果、収納中に搬送シート20が損傷され、緊急時に担架1が正常に使用できなくなることを防止できる。また、搬送シート20を保護するための特別の蓋が不要となることによって、箱本体61から担架1を取出すことが容易となり、緊急時に、即座に担架1を収納体2から取出し、使用することが容易となる。
【0062】
また、実施形態の収容体によれば、取出口62の下端に下側係止片63が配設され、取出口62の上端に上側係止片64が配設されることによって、箱本体61の内部において担架1を持ち上げ、担架1の下端を箱本体61の外側に引出すだけの簡単な操作によって、担架1を箱本体61から取出すことができ、緊急時に、即座に担架1を箱本体61から取出し、使用することができる。
【0063】
以上、図面(図1図8)を参照しながら本発明の実施形態を説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である(例えば、下記(1)~(2))。
【0064】
(1)上記実施形態においては、搬送シート20が樹脂製であったが、搬送シート20は人を乗せることができればよく、搬送シート20を布製とすることもできる。搬送シート20が布製であれば、溶着部22の位置に搬送シート20の側端部を縫い付けた縫付部を形成することによって、係合部21を形成できる。
【0065】
(2)上記実施形態においては、スペーサ50が一対の支持部材10のエンドプレートであったが、スペーサ50は、一対の支持部材10の間に収容空間Sを確保できればよく、例えばつかえ棒のような棒状の部材であってもよい。
【符号の説明】
【0066】
G…載置面
L1…担架全長
L2…取出遊び長さ
L3…内法長さ
S…収容空間
1…担架
2…担架収納体
10…支持部材
20…搬送シート
21…係合部
30…保護部材
32…台部
34…蓋板部
40…連結具
50…スペーサ
61…箱本体
62…取出口
63…下側係止片
64…上側係止片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8