(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】物品への磁界付与方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B05D 3/00 20060101AFI20230306BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20230306BHJP
H01M 4/1393 20100101ALI20230306BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20230306BHJP
H01M 4/133 20100101ALI20230306BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
B05D3/00 Z
H01M4/04 Z
H01M4/1393
H01M4/62 Z
H01M4/133
B05D7/24 303A
(21)【出願番号】P 2019533712
(86)(22)【出願日】2017-09-05
(86)【国際出願番号】 IB2017055317
(87)【国際公開番号】W WO2018047054
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-08-03
(32)【優先日】2016-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(32)【優先日】2017-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】519075786
【氏名又は名称】バトリオン・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Battrion AG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・エプナー
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス・ゲルトマッハー
(72)【発明者】
【氏名】マックス・コリー
(72)【発明者】
【氏名】デニズ・ボジイト
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-522961(JP,A)
【文献】国際公開第2012/077177(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/111161(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/124033(WO,A1)
【文献】特開2009-193932(JP,A)
【文献】特開2004-220926(JP,A)
【文献】特開2004-016858(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0135836(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 3/00
H01M 4/04
H01M 4/1393
H01M 4/62
H01M 4/133
B05D 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
層である物品(020)又は層で被覆された物品(020)に、当該物品(020)の製造及び/又は加工時に、磁界を付与する方法であって、
少なくとも1つの永久磁石(74)を含む磁気ツール(010、011)が使用され、
前記磁気ツールには、前記物品(020)の前記層に対向する表面を有しており、当該表面には、当該表面に沿っており磁界がこの方向における移動によって変化する磁気変化方向(x)と、当該表面に沿っており前記磁気変化方向(x)に垂直であり磁界がこの方向に沿って変化しない一定場方向(y)と、前記磁気ツールの表面に垂直且つ前記磁気変化方向(x)及び前記一定場方向(y)に垂直であり前記物品の前記層に対向する第3の方向(z)とを含む3方向が画定されており、
前記磁気ツールにおける磁界は、前記磁気変化方向(x)から見たときに前記一定場方向(y)に対して所定の角度(α)で傾斜した平面上で、前記磁気変化方向(x)に進むにつれて前記磁気変化方向(x)におけるベクトル成分が変化するように回転し、
前記物品(020)は
前記磁気ツール(010,011)との間の相対動作によって変化する磁界にさらされ、
前記磁気ツール(010,011)に対して移動の方向(045)に相対的に移動し、
前記磁気ツール(010,011)は、その永久磁石(074,075)がハルバッハ配列の一部であって、
前記第3の方向(z)を前記物品(020)の前記層に対向しながら前記磁気変化方向(x)が前記物品の移動の方向(045)に対して所定の角度(077)で回転した姿勢で、前記層の一方側のみから影響を与え、
前記変化する磁界は、前記物品(020)に直接に付加され、
前記磁界は、時間的及び/又は局所的に変更可能であって、それによって、炭素粒子及び/又は黒鉛粒子である前記層のうち磁気によって影響を受ける粒子それぞれの成分が2方向に
沿って整列され、且つ、これらの成分は整列時又は整列後に固定されて前記整列が維持されており、
前記2方向には、炭素粒子及び/又は黒鉛粒子である前記層のうち磁気によって影響を受ける粒子それぞれの成分が
前記磁気ツール(010,011)の磁気変化方向(x)に直交する断面視において前記物品(020)の表面に対して
所定の角度(α)で傾斜するように整列させられる第1方向と、炭素粒子及び/又は黒鉛粒子である前記層のうち磁気によって影響を受ける粒子それぞれの成分が
前記物品(020)の平面視において移動する前記物品(020)の加工
方向又は処理方向に対して
所定の角度(077)で傾斜するように整列させられる第2方向とが含まれる、物品に磁界を付与する方法。
【請求項2】
磁界の前記付与は、連続的に実行される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記磁界は、時間的及び/又は局所的に変更可能であって、周期的に変化し、若しくは回転し又は振動する、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記物品(020)上に作用する前記磁界の束密度は、0.1~0.5Tである、
請求項1~3いずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記磁気ツール(010、011)の表面から前記物品までの距離は、0~50mmである、
請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記層又は被膜は、揮発成分を含むペースト状に生じ、
前記磁界の付与は、前記ペーストの揮発成分の除去前及び/又は除去中に起こる、
請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記物品(020)は、電気エネルギ蓄電用の電極であり、及び/又はリチウムイオンバッテリ用の電極であり、及び/又はリチウムイオンバッテリ用の黒鉛系の負極である、
請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つに記載の対象物(020)に磁界を付与する方法に係る、層又は被膜の成分を固定する方法であって、
前記層又は被膜は、前記層又は被膜の固化/ゲル化に至る成分を含む、層又は被膜の成分を固定する方法。
【請求項9】
前記層又は被膜は、前記層又は被膜の温度が増大する間に、前記層又は被膜の固化/ゲル化に至る、成分を含む、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記層又は被膜は、30℃と60℃の間にある、LCSTと称される下限臨界溶解温度を示す、
請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記層又は被膜は、質量分率が重量で0.1~0.4%の熱応答性成分を含む、
請求項8~10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記層又は被膜は、加熱ローラ及び/又はIRヒータ及び/又は加熱送風機を用いて、前記層又は被膜の温度を増大させることによって、固化/ゲル化させられる、
請求項8~11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
前記層又は被膜は、前記固化/ゲル化処置の間及び/又は前記固化/ゲル化処置の後に除去される揮発成分を含む、
請求項8~12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
前記揮発成分の50%未満が、前記固化/ゲル化処置の間に前記層又は被膜から除去される、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記層又は被膜は、置換アンヒドログルコース環及び/又は非置換アンヒドログルコース環を含む熱応答性成分を含む、
請求項8~14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
前記物品(020)は、前記磁気ツール(010、011)に対して、前記磁気ツール(010、011)の表面に対する接線方向/平行に移動可能である、
請求項1~15のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
前記磁気ツール(010、011)は、層である物品(020)又は層で被覆された物品(020)に磁界を、連続的に付与し、
前記磁気ツール(010、011)は、1つの方向に局所的に変化可能な回転する磁界を、前記磁気ツール(010、011)の表面上に生じて、これに直交する方向に概ね一定の磁界を生じる、少なくとも1つの永久磁石(074、075)を含む、
請求項1~16のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
前記磁気ツール(010、011)は、複数、少なくとも2つの永久磁石(074、075)を含む、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記磁気ツール(010、011)の少なくとも1つ又は全ての永久磁石(074、075)が、ハルバッハ配列、又はハルバッハ状配列、又はハルバッハ円筒、又はハルバッハ状円筒の一部である、
請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記磁気ツール(010、011)の磁気回転周期(P)は、1mmから2mになる、
請求項17~19のいずれか1つに記載の方法。
【請求項21】
前記磁気ツール(010、011)の表面は、平面状、円筒状、又は湾曲状である、
請求項17~20のいずれか1つに記載の方法。
【請求項22】
前記磁気ツール(010、011)の前記磁界の傾斜角度(α)は、45°~135°である、
請求項17~21のいずれか1つに記載の方法。
【請求項23】
前記磁気ツール(010、011)は、前記物品(020)に作用する前記磁界の束密度は、0.1~0.5Tである、
請求項17~22のいずれか1つに記載の方法。
【請求項24】
前記磁気ツール(010、011)は、互いに対向して配置された、請求項18~23のいずれか1つに記載の少なくとも2つのツール(010、011)を含み、
前記組み合わされた磁気ツールの表面に平行な方向に並置されるように、互いに配置されている、
請求項17~23のいずれか1つに記載の方法。
【請求項25】
前記磁気ツール(011)の表面(013)は円筒状であり、それによって物品(020)は移動可能であり、磁気ツール(011)は、円筒状ツールの表面の回転によって、物品(020)の動作方向に対して逆回転又は共回転で移動可能である、
請求項17~24のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ツールを用いて、物品に磁界を付与する方法に関する。磁界の付与は、特に連続的に、特に黒鉛皮膜に、さらに特に垂直に整列された黒鉛の粒子を有する負極状の物品、例えば急速充電能及び/又は高エネルギ密度を有するリチウムイオンバッテリの製造において、生じる。本発明は、本発明に係る方法により製造されており垂直に整列した黒鉛粒子を有する、負極に、さらに関する。
【背景技術】
【0002】
炭素系の材料、特に黒鉛は、バッテリの電極、特に負極における活性材料として適用を見出す。黒鉛は、例えばリチウムイオンバッテリのリチウムイオンであるイオンを差し込むことができる個々の炭素層からなる層状構造を有している。黒鉛の層状構造は、板状の薄片形態の外観に反映されている。
【0003】
電極における活性材料としての薄片状/薄片形態の黒鉛の使用によれば、薄片形状の黒鉛粒子は、基礎をなす集電ホイルに平行(水平)に在るように典型的には生じる。これは、電極の至るところにおける回旋状又は迷路状の孔通路に至る。正極から負極及びその逆に拡散するリチウムイオンは、この曲がりくねった孔経路を通過しなければならない。特に、高充電率の場合、リチウムイオンは、孔通路を介して十分に早く移動することができず、これは使用可能な蓄電容量の減少に至り得る。黒鉛の粒子を整列させることによって、リチウムイオンが充電時及び放電時において広がる経路の長さを短縮でき、電気化学的蓄電の、充電特性及び放電特性を向上させることができる。
【0004】
負の黒鉛電極の工業的製造に関して、薄片状の黒鉛はしばしば丸み付けられる。しかしながら、原材料の70%まで、機械的丸み付け加工工程において損失が生じる。
【0005】
薄片形態の黒鉛を使用し、集電シートに垂直な片状黒鉛の整列によって曲がりくねった孔経路を大いに減少させて、それによってバッテリのより高い、充電率及び放電率を達成するという、考えは、周知であり、特許第3443227号において最初に開示された。磁界によってこの整列を得ることは周知である。しかしながら、特に、高い磁界と低い充填密度とにより、この技術の実用的な実施が、コスト効率が高い連続的な生産工程と今までのところ両立しなかった。
【0006】
公報欧州特許第2793300号は、電極の製造への適用を開示しており、本公報において、磁気微粒子が電気化学的活性粒子に適用されており、磁気微粒子は順にスラリー(懸濁液又はペースト)として基材上に被覆されて、次いで磁界が粒子に付与される。黒鉛のペーストの製造において、磁気微粒子の追加は、微粒子を有する黒鉛粒子の増大に至り、黒鉛粒子の磁気反応性を実に増大させ得るが、しかしながら、工程が複雑化し得る。磁気微粒子の追加は、また、最終製品に意図しない効果をもたらし得る、意図しない電気化学的工程に至り得る。特に連続的に磁界を付与する方法は開示されていない。
【0007】
米国特許第7326497号は、再充電可能なリチウムイオンバッテリへの適用における負極とその製造とを開示している。黒鉛の塗布が0.5Tより大きな束密度を有する磁界における2つの磁石間に整列される方法が、開示されている。塗膜における黒鉛粒子の整列は、黒鉛の反磁性異方性に基づいている。黒鉛の(002)面に垂直な反磁性磁化率は、(110)面に垂直な反磁性磁化率の約40~50倍の大きさである。望ましい垂直配向を得るために、1Tを超える又はむしろ2.3Tの束密度が提案されている。この範囲の束密度は、技術的に実行するのが困難であるので、例えば、超電導磁石がこのような高い束密度に要求される。
【0008】
他の米国特許第7976984号は、機械的に丸み付けされた黒鉛粒子が磁界に整列される、再充電可能なバッテリを開示している。磁界における丸み付けられた磁性粒子の配向により、リチウムイオンの経路長さは、実に僅かに短縮され得、それによって、充電特性及び放電特性が向上する。この向上効果は、片状黒鉛の使用によってさらに増大する。依然として、上述したように、原材料の70%に至る、丸み付け加工工程における損失が生じる。
【0009】
米国特許第7976984号及び米国特許第7326497号に説明されるように、黒鉛を一様な磁界において整列させると、粒子が、黒鉛の層が磁界に平行に在るように生じるように整列させられる。非対称例えば薄片形態の黒鉛粒子に関して、それは、その最も長い軸に対して垂直であることを意味する。ほぼ球状の粒子によれば、充填特性に関する効果は僅かであるが、非球状粒子に関しては、これは、個々の黒鉛粒子がその2番目に長い軸に沿って順不動で存在することによって、不利益な充填特性に至る。これは、低い粒子の充填密度に至る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第3443227号
【文献】欧州特許第2793300号
【文献】米国特許第7326497号
【文献】米国特許第7976984号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の主要な目的は、したがって、負極状の物品の製造に関して、磁界の付与、特に、特に層である物品又は層で被覆されている物品、さらに特に、黒鉛皮膜への磁界の連続的な付与のための方法を開発することである。
【0012】
本コンテキストにおいて、連続的とは、”持続する”又は”絶え間ない”ではなく”ロールツーロール法”などの”連続的な製造工程”における意義の意味で定義されている。
【0013】
物品は、単なる単一層であってもよく、例えば黒鉛粒子、バインダ、及び乾燥によって揮発される成分を含んでもよい。同時に、黒鉛粒子は、自然のもの又は合成起源のものであってもよく、全ての粒子形態を含んでもよい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、請求項1の特徴により達成される。
【0015】
本発明に係る方法において、磁界は、特に層又は層で皮膜された物品に、特に物品の製造及び/又は加工時に、付与される。この終わりまで、物品は変化する磁界に晒される。
【0016】
少なくとも1つの永久磁石の配置を含む磁気ツールは、磁界を付与するために利用される。
【0017】
本発明は、創意に富んだ工具及び製造される電極にさらに関する。
【0018】
好ましい実施形態が、それぞれの従属請求項に開示される。
【0019】
高エネルギ密度を有するバッテリへの適用に関して、上述した活性材料である黒鉛の充填密度は、極めて重要である。本発明は、黒鉛粒子を1つの方向に沿ってだけでなく、むしろ2つの方向に沿って整列させるように、この問題を解決する。
【0020】
例としての急速充電リチウムイオンバッテリに関して、垂直に整列された黒鉛粒子を有する負極の、例えば製造の間及び/又は加工方法に関して、磁界の特定の連続的付与を可能にすることが、本発明に係る方法の目的である。
【0021】
本発明の方法の初めに、成分、例えば皮膜中の黒鉛粒子は、移動可能であって、2つの好ましい方向にしたがって本発明に係る磁気ツールの変化する磁界の作用によって、整列させられる。これらの好ましい方向は、磁気ツールの構成と、物品及びツールの動きの相対的な方向とによって画定される。磁気ツールを用いて、成分のこの整列の間又は整列の後に、成分は、整列を固定するために、方法を完了させるべく固定されなければならない。
【0022】
整列された成分の固定が、例えば乾燥によって起こってもよい。乾燥は、皮膜に含まれる揮発成分が皮膜を出る点で特徴付けられてもよい。この揮発成分は、水性の黒鉛ペーストの場合には水である。乾燥は、垂直に整列された成分の固定に至る。乾燥は、例えば大気温度によるものであってアシストされないことを意味する受動的と、同様に例えば送風機を用いたシステマチックな乾燥によることを意味する能動的と、の両方であってもよい。代替的に、層/皮膜の成分の固定は、湿った層/皮膜のシステマチックな固化/ゲル化によって起こってもよい。例えば層/皮膜の一部として熱応答性成分を使用することによって湿った層/皮膜を固化/ゲル化する方法は、本発明の一部として開示されている。
【0023】
本発明が解決する課題は、リチウムイオンバッテリの製造用の黒鉛皮膜の例を使用して、以下に説明される。
【0024】
揮発成分が除去される乾燥工程は、整列された黒鉛粒子にそれらの配向を失わせることに至り得る。特に、送風機によるオーブンでの空気乾燥は、整列された粒子の配向に著しい影響を与え得る。より具体的には、磁気ツールによって達成された黒鉛粒子の整列は、乾燥の間に失われ得る。次いで、黒鉛粒子の整列のこの損失は、充電時及び放電時に電極の電気化学的性能を限定し得る。
【0025】
解決策A:
本発明によれば、乾燥時においても黒鉛粒子の整列を維持する解決策が開示されている。ここに説明される磁気ツールは、乾燥時に黒鉛粒子の整列を確保するように、乾燥時にも採用される。それ故、整列された黒鉛粒子は、乾燥時においても整列されたままである。
【0026】
解決策B:
本発明のコンテキストにおいて、この課題は、皮膜されるペーストに含まれる熱応答性成分などの固化/ゲル化成分の使用によって、解決されてもよい。この成分は、例としてメチルセルロールであって、熱作用の下、成膜された湿った皮膜/層に、同時に揮発成分を除去することなく、固化させる。LCSTは、下限臨界溶解温度であって、ここで重要な役割を果たす。LCSTは、メチルセルロース、又は置換無水グルコース環及び非置換無水グルコース環を含むヒドロキシプロピルセルロースなどのポリマー、又はポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)などのポリマーでさえ、混合物の成分であるときに、しばしば観察される。この場合、開鎖状クラスタ配座からぎっしり詰まった球形配座へのポリマー鎖の変遷が観察され得る。LCSTを超えると、皮膜/層の固化に至り得る混和性のギャップが存在する。LCSTの超過に到達するのに要求される加熱は、例えば加熱送風機、加熱ローラ、又はIR-ヒータによって、起こり得る。皮膜される層における重量で0.25%などの熱応答性成分の小さな質量分率(皮膜される層の重量で50%の固体内容物において結果として生じる乾燥した皮膜における重量で0.5%に相当)でさえ、温度がLCSTを超える上昇を伴い、ペーストの固化をもたらすのに適正である。
【0027】
熱応答性成分によってもたらされるペーストの固化は、黒鉛粒子を固定し、それによって、磁気ツールの磁界を経て事前に得られた整列が長期間、維持される。これは、例えば環流による皮膜内での移動が妨げられると共に、例えば黒鉛粒子である成分がそれらの配向を変えることができないので、後続する乾燥が磁界の付与なしに実行されることを可能にする。これは、垂直整列を維持するのに必要とされる磁石の要求される量を低減することを許容する。これは、それから、この方法において乾燥機における高価な高温耐熱性磁石の装備を省くことを可能とするなら、特に利点となる。
【0028】
耐久性のある再充電可能なリチウムイオンバッテリの製造には、集電器、好ましくは例えば銅ホイルなどの集電ホイルへの皮膜の付着が、特別な役目を果たす。付着が低い電極に関して、活性材料の被膜は、例えば集電ホイルの黒鉛であるが、境界面におけるストレスにより経時的に分離し又は層間剥離し得る。特に、バッテリの充電シークエンス及び放電シークエンスの間に起こる黒鉛粒子の膨張及び収縮は、これに至り得る。これは、バッテリの充電容量及び放電容量における減少という結果になり得る。水性の黒鉛負極における低付着の原因となり得るものは、(a)乾燥処置の間のSBR(スチレンブタジエンゴム)バインダ粒子の移動と、(b)黒鉛粒子と集電ホイルとの間の小さな接触領域とにある。
【0029】
水性黒鉛電極の製造時の流動体ペーストにおける黒鉛粒子の整列、及びそれに関連して短縮された経路とは、乾燥におけるバインダの移動の増大に至り得る。それによれば、被膜と集電ホイルとの間の境界面からSBRバインダ粒子の除去が増大し得、次いで貧弱な付着に至り得る。
【0030】
さらに、充電シークエンス及び放電シークエンスの間の集電ホイル上の黒鉛粒子の垂直整列と、それに付随した黒鉛粒子の膨張及び収縮は、被膜と集電ホイルとの間の境界面における、増大したストレスの形成に至り得る。黒鉛粒子の垂直配置は、バッテリを充電するときに黒鉛粒子の膨張が同じ方向に起こることを意味する。それによれば、隣り合う黒鉛粒子が互いに移動し得る。時間の経過によって、関連したストレスが、集電ホイル上への被膜の付着の減少に至り得る。
【0031】
被膜と集電ホイルとの間における向上した付着に向けた解決策が、本発明で開示される。
【0032】
解決策A
整列した黒鉛粒子の膨張時及び収縮時とバッテリの充電時及び放電時とに生じ得るストレスを減少させるために、集電フィルムに対する黒鉛粒子の傾斜角度が、製造工程の間、適切な磁気ツールの作用を介して調整されてもよい。それによって、黒鉛粒子の傾斜角度が、45°と85°との間に好ましくは在る。このように、黒鉛粒子の膨張のかなりの部分が集電ホイルから離れる方向に起こり得、それによって、より少ないストレスが黒鉛被膜と集電ホイルとの間に立ち上がるので、集電ホイルへの付着が増大する。
【0033】
解決策B
さらに、本発明は、バインダの移動による減少した付着の一連の問題に関し、被覆されるペーストに含まれる熱応答性成分の使用による解決策を開示する。この成分は、例えばメチルセルロースであるが、被覆される湿ったペーストに、適用される熱エネルギの作用の下で固化させる原因となる。固化は、乾燥段階の間にSBR(スチレンブタジエンゴム)バインダ粒子の移動を同時に減少させ得る。それによって、黒鉛被膜と集電ホイルとの間の境界面におけるSBRバインダ粒子の集中が十分に高く維持されることが、確保される。このように、より高い付着が達成される。固化成分の使用による減少したバインダの移動は、より高い乾燥温度をも許容し得る。より高い乾燥温度は、バインダの移動の増大に至りそれにより低い付着に至り得るので、一般的に避けられる。しかしながら、より高い温度は、層/被膜の乾燥を早めることを可能にするので、このように、乾燥期間の短縮を確かにし、又はより高い膜速度をも確かにする。両方ともコスト削減に至り得る。
【0034】
被覆されたホイル、例えば集電ホイル上の黒鉛被膜、の加工工程は、特定の環境下において被膜とフィルムとの間の接合面におけるストレスに至る可能性があり得る。特に、被覆されたフィルム、例えば再充電可能なリチウムイオンバッテリの製造用の負極など、のカレンダ及び巻き取りなどの工程には、被膜における層間剥離及び割れの形成が結果として生じ得る(いわゆる”ジェリーロール”電極コイルの製造)。
【0035】
本発明は、典型的にはホイルに平行な方向である加工方向又は処理方向に関連して、黒鉛粒子の管理された整列によって、この課題に対する解決策を開示する。このように、例えば、垂直に整列された黒鉛粒子は、移動する物品の加工方向又は処理方向に対して、60°まで、例えば45°、の角度で、適切な磁気ツールの操作によって、自ら整列する。これは、製造及びこれに続く加工又は処理(例えば、物品のカレンダ又は巻き取り)が同じ方向に生じる場合、このように加工時の割れが防止されると考えれば、特に有利であり得る。
【0036】
2つの方向に沿った黒鉛粒子の整列に関して、強い変化する磁界(例えば0.4テスラ)が、例えば回転する磁界であるが、黒鉛粒子に付加されなければならない。したがって、本発明によれば、磁界が、好ましくは層状又はブロック形状の物品の、特に黒鉛粒子、バインダ、及び乾燥時に揮発する成分を含む、黒鉛被膜に、直接に磁気ツールによって付与される。このような磁気ツールに対応する装置は、以下に説明される。
【0037】
束密度が100mTを超える磁界は、広い領域(10cm2から1cm2)にわたって電磁石で製造するのは技術的に難しく、永久磁石、特に希土類磁石で最も容易に生じる。したがって、磁気ツールの磁界は、1つまたは複数の永久磁石によって生じる。
【0038】
本発明に係る磁気ツールは、移動する物品に対向する表面を有している。物品の移動は、この領域に対して接線方向である。磁気ツールの表面は、種々の形状を有してもよく、好ましくは平面上、円筒状、又は湾曲状である。
【0039】
図6に示されるように、磁気ツールの表面には、3つの主要な方向が区別されており、”磁気変化方向(x)”が磁気ツールの表面に沿って延びており、磁界がこの方向における移動によって変化する。磁界変化方向(x)に垂直であるものが、磁気ツールの表面に沿った”一定場方向(y)”を示しており、磁界がこの方向に沿って変化しない。第3の方向は、磁気ツールの表面に垂直な(z)であり、この第3の方向(z)は、磁気変化方向(x)及び一定場方向(y)の両方に対して垂直である。
【0040】
以下は、磁気ツールの表面に沿った磁界の整列及び変化を説明する。
図6に示されるように、磁気ツールの表面上の点Aにおいて、磁界のベクトルは、y-方向及びz-方向に沿った成分を有するが、x-方向に沿った成分を有していない。この点Aにおける磁界の方向は、方向ベクトルM0によって説明される。M0とY-方向との間の角度は、磁界の傾斜角度(アルファ)であり、0°と180°との間である。
【0041】
周期的な場変化の一例として、ここでは回転が説明される。点Aから磁気変化方向(x)に沿った動きの間、磁界ベクトルは最初にM0方向を指向し、その後X-方向に対向し、その後M0方向に対向し、その後X-方向を指向し、その後、点Bにおいて全回転の完了に至って、M0方向に戻る。点Aと点Bとの間の距離は、”磁気変化周期(P)”であり、1mmから2m、好ましくは5mmから20cm、特に好ましくは60mmである。
【0042】
物品、特に黒鉛被膜に、例えば回転する又は周期的に変化する磁界を生じさせるために、黒鉛被膜は磁気ツールの表面に対して移動させられる。対象物と表面との間の距離は、好ましくは0~50mm、特に好ましくは1~5mmになる。対象物と表面とが接触状態にある、すなわち0mmの分離距離を示すことが可能である。
【0043】
物品と磁気ツールとの間の相対動きは、物品の変位、ツールの変位、又はこれら両方の変位の組み合わせによって、平面状ツールの表面で達成され得る。円筒状ツールの表面によって、相対動きは、例えば円筒状ツールの表面の回転又は振動であるが、
図8に示されるように、物品の移動方向に対して反対(逆回転)に回転させ、又は同じ(共回転)方向に回転させることによって達成される。
【0044】
物品、特に黒鉛被膜を有するホイル、の連続的な製造工程において、物品は典型的には、一定の動作にある。動作方向に対する黒鉛粒子の整列を管理するため、磁気ツールの磁気変化方向(x)は動作方向に対して設定される。例えば、磁気ツールの磁気変化方向(x)が物品の動作方向に平行であるとき、黒鉛粒子は動作方向に沿って整列させられる。他の例において、磁気ツールの磁気変化方向(X)は、物品の動作方向に対して45°の角度に設定されてもよく、それによって黒鉛粒子が動作方向に対して45°の角度に整列させられる。物品の表面に対する粒子の傾斜角度は、磁気ツールの磁界の傾斜角度(アルファ)によってもたらされ、これによって管理され得る。
【0045】
上記説明に対応する磁気ツールの具現化は、近似的に達成されるものでもよい。上記説明に近似的に対応する磁気ツールの可能性がある実現は、以下に説明される。
【0046】
上記説明に対応する単一の磁気ツールの単純な実現は、
図7のハルバッハ配列である。ここで、ハルバッハ配列とは、永久磁石の配置である。磁気ツールのX-方向における磁石の磁化方向は段階的に変化する。例えば、4つの磁石周期を有するハルバッハ配列において、磁界の向きが
図7に示されるように、磁石ごとに約90°変化する。周期毎にさらなる段階を有するハルバッハ配列も可能である。ハルバッハ配列における磁界の傾斜角度は、典型的には90°である。
【0047】
磁気ツールにおける磁界の0°と180°との間、好ましくは10°と170°との間の他の傾斜角度を達成するため、ハルバッハ状配列が形成され得る。この目的のため、機械的表面の1つに垂直でない磁化で永久磁石を使用してもよい。傾斜角度は、
図6の角度アルファに対応する。
【0048】
連続的な製造工程に関して、磁気変化方向(x)はこれらの方向に平行ではない場合に、物品の動作方向に平行な磁気ツールの外縁を選択することが役立ち得る。このような磁気ツールの可能性のある具現化は、
図9に見られ、永久磁石が角度077で回転されるハルバッハ状の形態によって達成される。
【0049】
他の実現は、その磁化の間に、X-方向に沿ってハルバッハ形態と同様の回転する磁界を付与された永久磁石であってもよい(
図7の下)。このような磁石の磁化において、ツールの表面に対して0°と180°との間、好ましくは10°と170°との間の磁界の傾斜角度が達成される。
【0050】
円筒状磁気ツールの他の実現は、例えば
図8に係るような、ハルバッハ円筒であってもよい。ハルバッハ配列のように、ハルバッハ円筒は、周期毎、例えば
図8に対応するような4つ毎に、複数の磁石を有していてもよい。ハルバッハ円筒において、磁界の傾斜角度は、90°であり、磁化変化方向(X)は円筒の軸に対して直交している。
【0051】
他の円筒状磁気ツールは、ハルバッハ状円筒として構成されてもよく、磁界の傾斜角度α、磁気変化方向、及び構成が、ハルバッハ状の配列に対応する。好ましくは、各円筒状磁気ツールの周長は、磁気周期長の整数倍である。
【0052】
Y-方向に沿ったより大きな幅の磁気ツールが、幾つかの磁気ツールのそれぞれのY-方向に沿った並置によって得られ得る。また、磁気ツールは、複数の磁気ツールのそれぞれのX-方向に沿った並置によってX-方向に沿って延びてもよい。同様に、より高い磁束密度を有する磁気ツールは、2つの磁気ツールをそれぞれの表面が互いに対向するように配置することによって創造し得る。これは、以下に述べる磁気ツールの全ての例に適用する(この展開性はしたがって十分詳細に繰り返されない)。
【0053】
Y-方向に沿った磁気ツールの並置の場合、ツール間の分離距離が、機械的安定のために必要であってもよい。これらの距離は、好ましくは0~10mm、好ましくは0~2mmである。これらの距離は、加工される物品における不均等性に至る、磁界の不均等性に至る可能性があり、それは、順に、最終製品、例えばバッテリにおける悪い影響に至る可能性がある。これらの影響を防止するために、これらの距離は、Y-方向に沿ってオフセットされてもよく、それによって、それらが磁気ツールの幅にわたって均等に分配されて、これによりY-方向に沿った概ね一定の場を達成する。
【0054】
本発明に係る方法及びツールの作動範囲
ロール直径:1mm~10m、1cm~1m、10cm~50cm
ロール長さ:1cm~100m、10cm~10m、1m~5m
全巻き角:0°~360°、15°~275°、90°~180°、好ましくは150°
ホイル厚み:0.1μm~10cm、1μm~1cm、1μm~1mm
磁界強さ:1μT~10T、10mT~1T、100mT~500mT
磁界傾斜角度:0~180°、45~135°、70~110°
磁気ツールの長さ(X):1cm~100m、10cm~10m
磁気ツールの幅(Y):1cm~10m、30cm~3m
回転速度:1/μs~1/h、1/ms~1/min、10/s~0.1/s
ホイル速度:1mm/min~1000m/min、1cm/min~100m/min、5m/min~50m/min
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】磁気ツールを使用する本発明の方法の概略図。
【
図2】本発明に係る平面状磁気ツールを使用する方法。
【
図4】回転可能なローラとして形成された磁気ツールを使用する方法。
【
図5】物品の巻きを有する回転可能なローラとして形成された磁気ツールを使用する方法。
【
図6】磁気面と磁気配向方向とを有する磁気ツール。
【
図10】変化する磁界の使用なしで製造された黒鉛被膜の断面における、走査型電子顕微鏡による顕微鏡写真。
【
図11】変化する磁界の付与なしで製造された黒鉛被膜の断面における層平面の配向のヒストグラム。
【
図12】変化する磁界に基づいて製造された黒鉛被膜の断面における、走査型電子顕微鏡による顕微鏡写真。
【
図13】変化する磁界の付与で製造された黒鉛被膜の断面における層平面の配向のヒストグラム。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明は、添付の図面を参照して、以下の2つの実施形態において説明される。
【0057】
実施例1(ハルバッハ配列による被覆であって、熱反応性成分なし)
97gの薄片形状の黒鉛が、25gのカルボキシメチルセルロース(CMC)溶液(重量で2%)と、41gの脱イオン水とともに、1時間、混錬され、次に、他の25gのCMC溶液(重量で2%)と30gの脱イオン水と共に攪拌によって希釈される。その後、5gのSBRラテックス(重量で40%)が、この混合物に導入されて、2分間、攪拌される。
【0058】
得られた黒鉛ペーストは、不図示の2つのゴムローラ間に予め把持されている集電ホイル025(銅ホイル15μm)上の流体フィルムとしてドクターブレードを用いて適用される。続いて、これらのゴムローラの両方が電気モータによって回転させられ、それによって集電ホイル025がその上の被膜と共に本実施例では3m/minの速度で動作045の方向に移動する(例えば
図1参照)。
【0059】
その後すぐに、磁石面013を有し硬い形態の磁気ツールであって、ハルバッハ配列の複数の永久磁石075の配置を有するパッケージを備えた平面状磁気ツール010が、物品020に対して、本実施例では移動する物品020の下方に、対向する。
【0060】
距離071が、磁気ツール010と物品020との間に設けられる。ツール010の磁界は、強い磁界072を有する側と、弱い磁界073を有する側とを有している。
図7は、連続的に変化する磁化を有する永久磁石074をさらに示している。強い磁界072は、好ましくは物品020に常時対向している。
【0061】
ツール010の磁界は、本実施例では移動する物品020を示す、移動する被覆された集電ホイルに作用する。移動する物品020(被覆された集電ホイル025)と磁気ツール010との間の相対動作は、黒鉛粒子の垂直配列に至る、物品020において時間的に変化する磁界を生じる。
【0062】
その後、熱い空気030がホットエアガンで、液状黒鉛被膜と共に移動する集電ホイル025上に吹き付けられ、このように、黒鉛被膜が乾燥される。これによって、揮発成分(水)が除去されて、垂直に整列した黒鉛粒子が固定される。
【0063】
実施例2(ハルバッハ配列による被膜と、熱反応性のゲル化)
97gの薄片形状の黒鉛が、7.5gのカルボキシメチルセルロース(CMC)溶液(重量で2%)、23.3gのメチルセルロース(MC)溶液(重量で1.5%、熱応答性成分)、及び34.7gの脱イオン水とともに、1時間、混錬され、次に、他の7.5gのカルボキシメチルセルロース(CMC)溶液(重量で2%)、23,3gのメチルセルロース(MC)溶液(重量で1.5%)、及び10gの脱イオン水と共に攪拌によって希釈される。
【0064】
その後、5gのSBRラテックス(重量で40%)がこの混合物に導入されて、2分間、攪拌される。
【0065】
得られた黒鉛ペーストは、不図示の2つのゴムローラ間に予め把持されている集電ホイル025(銅ホイル15μm)上に200μmの厚さで流体フィルムとしてドクターブレードを用いて被覆される。続いて、これらの2つのゴムローラの両方が電気モータによって回転させられ、それによって集電ホイル025がその上の被膜と共に本実施例では3m/minの速度で動作045の方向に移動する(例えば
図1参照)。
【0066】
その後、磁気面013を有し硬い形態の磁気ツールであって、ハルバッハ配列の配向で複数の永久磁石075(
図7)を有するパッケージを備えた平面状磁気ツール010が、対象物020に対して、本実施例では移動する被覆された集電ホイル025の下方に、対向する。距離071が、磁気ツール010と物品020との間に設けられる。ツール010の磁界は、強い磁界072を有する側と、弱い磁界073を有する側とを有している。
図7及び8は、連続的に変化する磁化を有する永久磁石074をさらに示している。強い磁界072は、好ましくは対象物020に常時対向している。
【0067】
ツール010の磁界は、本実施例では移動する物品020をも示す、移動する被覆された集電ホイル025に作用する。移動する物品020(被覆された集電ホイル025)と磁気ツール010との間の相対動作は、黒鉛粒子の垂直配列を生じる、物品020において時間的に変化する磁界を創造する。
【0068】
続いて、熱が、IR輻射ヒータを用いて移動する被覆された集電ホイル025に付与される。熱の作用は、被膜のゲル化を生じさせる。その後、集電ホイル025の下方の磁気ツール010は、取り除かれ、熱い空気030がホットエアガンを用いて被膜上に吹き付けられ、このように、黒鉛被膜が乾燥状態にされる(
図1)。
【0069】
円筒状磁気ツール011を有する例は、
図4、5及び8に示されている。このツール011は、磁石表面013と回転ローラ012とを順に有している。物品020は、ツール011の周りに、所定の巻き付け角度022、例えば160°で巻き付く。
【0070】
永久磁石075は、セグメント078として形成されてもよく、及び/又は回転の軸に対して垂直又は角度077で配置されてもよい。
【0071】
図10は、磁界に晒されることなく得られた、薄片形態の黒鉛を有する黒鉛被膜の断面の、走査型電子顕微鏡による顕微鏡写真を示す。薄片の黒鉛粒子は、基礎をなす集電ホイル025に平行に在る。
【0072】
図11は、磁界の作用なしに得られた黒鉛被膜における黒鉛粒子の配列分配のヒストグラムを示している。
【0073】
図13は、磁界における説明された実施例の方法によって得られた黒鉛被膜における黒鉛粒子の配列分配のヒストグラムを示している。薄片の黒鉛粒子はその大部分において、基礎をなす銅ホイル、つまり集電ホイル025に対して、垂直(90°)で在る。
【0074】
実施例の得られた黒鉛被膜の断面の、走査型電子顕微鏡による顕微鏡写真は、
図12において、薄片形状の黒鉛粒子の垂直配列を示している。示されているものは、実施例において説明した方法によって磁界で得られた薄片形態の黒鉛を有する整列された黒鉛被膜の断面の、走査型電子顕微鏡写真である。
【0075】
薄片の黒鉛粒子は、その大部分において、基礎をなす銅ホイル、つまり集電ホイル025に対して垂直(90°)で立っている。
【0076】
X線回折装置(Rigaku Smart Lab(登録商標))による被膜の分析は、
図11において、著しく増大した黒鉛粒子の量を示しており、その(110)面は、黒鉛粒子のグラフェンシートに平行であるが、回転する磁界に晒されない黒鉛被膜(
図13)に比して、集電ホイル025に対して垂直、つまり90°に配列されている。
【0077】
本発明によって得られた、垂直配列の薄片形状の粒子を含む黒鉛被膜は、次いで、30%の多孔性にカレンダされる。
【0078】
X線回折装置(Rigaku Smart Lab(登録商標))による圧縮された黒鉛被膜のさらなる次の分析は、さらに著しく増大した黒鉛粒子の強度を生じ、その(110)面は、黒鉛粒子のグラフェン層に平行であるが、集電ホイル025に対して垂直に配列される。
【符号の説明】
【0079】
010 磁気ツール
011 円筒状磁気ツール
012 回転可能な円筒が周りを移動する(固定)中心
013 磁気ツールの磁気面
020 磁界が作用するときに移動された物品
022 接触円弧/巻き付け角度
025 集電ホイル
030 例えば暖かい空気、光照射、X線放射/X線
045 物品の移動の方向
071 磁気ツールと物品との間の分離距離
072 強い磁界
073 弱い磁界
074 連続的に変化する磁化を有する永久磁石
075 永久磁石
077 角度
078 永久磁石セグメント