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特許7237371組成物、生地組成物、及びパン又は焼き菓子用生地の製造方法。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】組成物、生地組成物、及びパン又は焼き菓子用生地の製造方法。
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20230306BHJP
   A21D 13/06 20170101ALI20230306BHJP
   A21D 2/36 20060101ALI20230306BHJP
   A21D 2/18 20060101ALI20230306BHJP
   A21D 13/80 20170101ALI20230306BHJP
【FI】
A23L7/10 Z
A21D13/06
A21D2/36
A21D2/18
A21D13/80
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020535404
(86)(22)【出願日】2018-08-08
(86)【国際出願番号】 JP2018029831
(87)【国際公開番号】W WO2020031305
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】515315484
【氏名又は名称】日本ハイドロパウテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 正純
(72)【発明者】
【氏名】高井 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 宏樹
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-019489(JP,A)
【文献】特開2017-086002(JP,A)
【文献】特開2013-150587(JP,A)
【文献】特開2002-233317(JP,A)
【文献】新潟県補助事業 開発商品事例集,pp.1-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/10
A21D 13/06
A21D 2/36
A21D 2/18
A21D 13/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
米加水分解物、玄米加水分解物、及び寒天を含有する組成物。
【請求項2】
前記寒天の溶解温度は、60~100℃であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記米加水分解物、及び前記玄米加水分解物の少なくとも一方の重量平均分子量は、20万~550万であることを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記米加水分解物、及び前記玄米加水分解物の粘度について、固形分10%でのラピッドビスコアナライザーを用いた粘度分析による最終粘度は、10~200mPa・sであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物の全量に対して、前記寒天の乾燥状態での重量比率は7~10%であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物の全量に対して、前記玄米加水分解物の重量比率は、40~53%であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物の全量に対して、前記米加水分解物の重量比率は、40~53%であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物と、穀物と、膨張剤とを、含むことを特徴とする生地組成物。
【請求項9】
前記穀物は、グルテンを含まないことを特徴とする請求項8記載の生地組成物。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の生地組成物に加水し、混捏することにより得られる生地。
【請求項11】
請求項9記載の生地はパン生地であり、前記パン生地を発酵させた後に焼成したパン。
【請求項12】
請求項9記載の生地は焼き菓子用生地であり、前記焼き菓子用生地を発酵させた後に加熱製造した焼き菓子。
【請求項13】
穀物粉と、水と、膨張剤と、糖類とを混捏する工程を含むパン又は焼き菓子用生地の製造方法であって、前記穀物粉に加えて、米加水分解物、玄米加水分解物、及び寒天とを配合する工程を含むことを特徴とするパン又は焼き菓子用生地の製造方法。
【請求項14】
前記米加水分解物、前記玄米加水分解物、及び寒天とを配合した配合物の配合量は、前記生地の粉末成分の全量に対して5~30重量%である請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記穀物粉は、グルテンを含まないことを特徴とする請求項13又は14記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、生地組成物、及びパン又は焼き菓子用生地の製造方法に関し、特に、米粉を用いた組成物、生地組成物、及びパン又は焼き菓子用生地の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、発酵パンの主原料として利用されているのは、小麦粉またはライ麦粉であり、小麦パンはふっくら膨らんだ食感が好まれている。これら小麦粉に含まれるタンパク質のグリアジンとグルテニンを、加水、混練を行う事によりガム状の粘弾性を有するグルテンとし、これが発酵で生じる炭酸ガスを生地中に包蔵する機能を発揮し、発酵パンの容積拡大に繋がることが知られている。
【0003】
ところで、日本では米粉を小麦粉の替わりに利用した米粉パンの普及が進んでいる。しかし米のタンパク質にはグリアジン、グルテニンが含まれていないので、グルテンを形成させる事ができない。そのため、発酵中に生じる炭酸ガスを包蔵させる為、従来、別途グルテン等を添加する必要があった。例えば、グルタチオンを添加する方法、プラスチック発泡成形の原理を応用した製パン方法のほか、米粉にグルテン及びマルトースを含有させる方法が知られている(特許文献1)。
【0004】
また米粉にグルテン状の物性を賦与させる為、カルボキシメチルセルロースと粉末セルロースを添加する方法が知られている(特許文献2)。
【0005】
更にこれら米粉パンの製造には、澱粉損傷度が低いことが要求され、かつ微粉砕の技術が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-222548号公報
【文献】特許第5728402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1を含め、これら方法を使用した米粉パン製品は、いずれも風味に改良の余地があった。そして、従来の米粉パン製品は、焼き上がり後、急速に乾燥し生地が固くなり、時間を経ると、その寸法が縮むという問題があり、特に冷凍解凍後にその傾向が顕著である。また、グルテン添加の場合、小麦アレルギーの問題点があった。
【0008】
また、特許文献2による方法での米粉パンとは別に、米粉パンを好む層の健康志向性の幅の広がりに対応するものが求められている。
【0009】
また、従来技術を含め、現在例えば日本で利用される米粉は、浸漬された米を用い、気流粉砕方式で製粉された米粉が主流である。ここで、他国において当製粉方式が一般的でない場合、現地調達が困難であり、かつ輸出品の現地調達価格が高額であることが問題であった。
【0010】
一方、例えば米国においては、平均粒径の大きい米粉、またアマランサス粉、キヌア粉、ひよこ豆粉、テフ粉、オーツ麦粉、ホワイトソルガム粉、ミレット粉などが雑穀・穀物粉等として多種多様で安価に調達可能であって、それら雑穀・穀物粉を用いたパン・菓子のニーズがある。
【0011】
また、寒天は、上記健康志向性、ベジタリアン対応、ハラル対応といった現代の多様な食材要求の点から、さらに広範な食品への応用が期待されている材料である。
【0012】
したがって、本発明の目的は、多種多様で安価な雑穀や穀物粉等を用いてより一層食味良く、乾燥に強いパン・菓子を提供することが可能な組成物を提供し、焼成後にケービングの発生しないか、又は釜伸びがあるパン等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明者は、雑穀や穀物粉に加えて種々の成分について鋭意検討を行った結果、本発明を見出すに至った。
【0014】
本発明の組成物は、米加水分解物、玄米加水分解物、及び寒天を含有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の組成物の好ましい実施態様において、前記寒天の溶解温度は、60~100℃であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の組成物の好ましい実施態様において、前記米加水分解物、又は前記玄米加水分解物の少なくとも一方の重量平均分子量は、20万~550万であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の組成物の好ましい実施態様において、前記米加水分解物、及び前記玄米加水分解物の粘度について、固形分10%でのラピッドビスコアナライザーを用いた粘度分析による最終粘度は、10~200mPa・sであることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の組成物の好ましい実施態様において、前記組成物の全量に対して、前記寒天の乾燥状態での重量比率は7~10%であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の組成物の好ましい実施態様において、前記組成物の全量に対して、前記玄米加水分解物の重量比率は、40~53%であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の組成物の好ましい実施態様において、前記組成物の全量に対して、前記米加水分解物の重量比率は、40~53%であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の生地組成物は、本発明の組成物と、穀物と、膨張剤とを、含むことを特徴とする。
【0022】
また、本発明の生地組成物の好ましい実施態様において、前記穀物は、グルテンを含まないことを特徴とする。
【0023】
また、本発明の生地は、本発明の生地組成物に加水し、混捏することにより得られることを特徴とする。
【0024】
また、本発明のパンは、本発明の生地がパン生地であり、前記パン生地を発酵させた後に焼成したことを特徴とする。
【0025】
また、本発明の焼き菓子は、本発明の生地が焼き菓子用生地であり、前記焼き菓子用生地を発酵させた後に加熱製造したことを特徴とする。
【0026】
また、本発明のパン又は焼き菓子用生地の製造方法は、穀物粉と、水と、膨張剤と、糖類とを混捏する工程を含むパン又は焼き菓子用生地の製造方法であって、前記穀物粉に加えて、米加水分解物、玄米加水分解物、及び寒天とを配合する工程を含むことを特徴とする。
【0027】
また、本発明のパン又は焼き菓子用生地の製造方法の好ましい実施態様において、前記米加水分解物、前記玄米加水分解物、及び寒天とを配合した配合物の配合量は、前記生地の粉末成分の全量に対して5~30重量%であることを特徴とする。
【0028】
また、本発明のパン又は焼き菓子用生地の製造方法の好ましい実施態様において、前記穀物粉は、グルテンを含まないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明の組成物及び当該組成物を含む生地によれば、さまざまな雑穀パン・穀物粉パンにおいて、玄米分解物を配合する事により寸法安定性を持たせ、ケービングの発生を抑えるとともに、寒天及び精白米分解物を配合する事により、炭酸ガスをパン内に包蔵させ、容積拡大を行うことが可能である。また、本発明の生地組成物及び生地によれば、従来のパン製造上必要であった材料、例えば、グルテン、グルタチオン、食品添加物等なしに、さまざまな穀物等でパンを提供することができる。また、他に小麦由来、乳、卵由来の原料を添加しない場合、小麦、乳、卵アレルギー対応のパン・菓子を消費者に提供することができる。さらに、動物性食品を避ける必要のある消費者に、植物性原料のみからなるパン・菓子を提供できる。
【0030】
本発明の組成物によれば、従来のパン製造上の常識を超えてパン・菓子を製造できるという有利な効果を奏する。すなわち、本発明の組成物によれば、米粉を用いたパン製造等における従来の粉砕条件や澱粉損傷度、さらには雑穀・穀物等の従来から知られていた使いにくさに縛られずパン・菓子を製造することができるという有利な効果を奏する。また、本発明の生地組成物によれば、グルテン等を用いずに、消費者の幅広いニーズに沿ったパン・菓子の製造を可能とするという有利な効果を奏する。
【0031】
また、本発明により得られたパン・菓子は、時間経過による食味の劣化などが少なく、冷蔵や冷凍保存による食味の劣化も少ないという有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、本発明の一実施例に関し、穀物にアマランサスを用いて製造したパンを示す。
図2図2は、本発明の一実施例に関し、穀物にキヌアを用いて製造したパンを示す。
図3図3は、本発明の一実施例に関し、穀物にガルバンゾ豆を用いて製造したパンを示す。
図4図4は、本発明の一実施例に関し、穀物にテフを用いて製造したパンを示す。
図5図5は、本発明の一実施例に関し、穀物にオーツを用いて製造したパンを示す。
図6図6は、本発明の一実施例に関し、穀物にスイートソルガムを用いて製造したパンを示す。
図7図7は、本発明の一実施例に関し、穀物に米粉を用いて製造したパンを示す。
図8図8は、本発明の一実施例に関し、穀物にミレットを用いて製造したパンを示す。
図9図9は、本発明の一実施例に関し、ホワイトソルガム粉に、配合する寒天を変更して焼成した二つの結果の比較を示す。
図10図10は、本発明の一実施例に関し、ミレー粉に、配合する寒天を変更して焼成した二つの結果の比較を示す。
図11図11は、本発明の一実施例に関し、米粉に、配合する寒天を変更して焼成した二つの結果の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の組成物は、米加水分解物、玄米加水分解物、及び寒天を含有することを特徴とする。米加水分解物、又は玄米加水分解物に用いることが可能な米、又は玄米については、以下の通りである。本発明の好ましい実施態様に用いる米としては、うるち米、もち米等を原料とする米澱粉又は米粒を用いることができる。米粒としては、精白米、玄米、屑米、古米などを挙げることできる。なお、米加水分解物としては、味を良くする、又は油脂の酸化臭・劣化臭(穀臭)を低減するという観点から、好ましくは、精白米加水分解物を挙げることができる。本発明において、それら米や米粒の中から任意の一種類又は組み合わせたものを精白米に替えて利用可能である。なお、本発明の組成物は、食品用、好ましくは生地用組成物とすることができる。
【0034】
また、本発明において、米としては、米粉を用いることもできる。一般に、米粉は、うるち米、もち米を問わず、粳米、糯米の生米を精米し粉砕、粉末化したもので、粉砕する前の生米としては、精白米、玄米、屑米、古米などを挙げることができるが、特に制限されることなく、本発明の組成物等に米粉として用いることができる。
【0035】
なお、米粉の平均粒度としては特に限定されず、例えば、30~80μmであってもよい。本発明において、米粉としては、損傷澱粉が5%以下と少なく、製パン性の観点からは、平均粒度が30~80μmと細かなもの、さらには、損傷澱粉が4%以下で、平均粒度30~50μmが利用されてきており、かかる米粉を利用することができる。米粉の平均粒度の測定方法については、米粉業界通例で行う「メッシュパス」でおおよその粒子径を測定する方法によるものとすることができる。具体的には、ザル状の篩を使用し刷毛でこすり、何メッシュの金網を通ったものが、結果的に何μmであるかによって定めることができる。したがって、より正確には、平均粒度としては、最低150メッシュパス、最高330メッシュパスの平均粒度が30~80μmとすることができる。
【0036】
また、上述の米由来の粉の水分率は、例えば、10~15%であってもよい。
【0037】
上述の米粉の製粉方法は、胴搗き製粉、ロール製粉、石臼製粉、気流粉砕製粉、湿式気流粉砕製粉、ピンミル製粉のいずれの方法も用いられる。
【0038】
本発明においては、上述のような米、又は米粉等を利用して、米加水分解物や玄米加水分解物を得ることが可能である。
【0039】
上述の米加水分解物又は玄米加水分解物は、次のような製造方法から得ることができる。すなわち、澱粉及び/又は澱粉含有物を原料とした分解の一般的な湿式分解法においては、原料に対して100%以上の水を加えて懸濁状態にして加熱を行い、原料中の澱粉を糊化させた後に酵素もしくは酸を添加することによって分解を行う方法によって、米加水分解物又は玄米加水分解物を得ることができる。
【0040】
また、上述の米加水分解物又は玄米加水分解物は、次のような製造方法から得ることができる。すなわち、澱粉及び/又は澱粉含有物と水とを押出機のシリンダー内に添加し、前記シリンダー内で前記澱粉及び/又は澱粉含有物を圧縮、混合、混錬、加熱、せん断の処理を行うことを含む方法によって、米加水分解物又は玄米加水分解物を得ることができる。また、好ましい実施態様において、分解時の適性粘度という観点から、前記原料に水を加えて調整したときの原料水分は、15~50%であることを特徴とする。15%未満であると、押出機内で高粘度となり機械に過剰な負荷がかかる虞があり、50%を超えると、低粘度過ぎて押出機内で分解されにくい虞があるからである。
【0041】
本発明において、押出機は、単軸押出機、2軸押出機、又はタンデム型押出機とすることができる。タンデム型多段押出機は、2段から5段までのシリンダー構成が好ましく、混練の均一性、自由度という観点から、各段に存在するスクリュー本数は1~8本が望ましい。タンデム型押出機は2段以上のシリンダー構成が望ましいが、量産性、メンテナンスの簡易さから、2段から3段の構成が特に好ましい。また、前記押出機は、タンデム型押出機であって、上段シリンダーと、中段シリンダーと、下段シリンダーとからなる3段型、又は上段シリンダーと、下段シリンダーとからなる2段型であり、上段シリンダーの温度は100~150℃であり、中段シリンダーの温度は100~200℃であり、下段シリンダーの温度は100~200℃とすることができる。上記の押出機処理にあたり、原料投入口シリンダー温度は100℃以下とすることができる。
【0042】
本発明の組成物の好ましい実施態様において、前記米加水分解物、又は前記玄米加水分解物の少なくとも一方の加水分解物中の可溶性成分の重量平均分子量は、製パン性という観点から、20万~550万であることを特徴とする。20万未満であると、パンが膨らまない虞があり、550万を超えると分子が大きすぎて、逆に凝集して、パンが焼成時に潰れる虞がある(せんべい状になる虞がある)ためである。
【0043】
なお、本発明において、前記重量平均分子量は以下の方法に従って測定することができる。すなわち、固形分濃度1%の水溶液を調製し、0.45μmフィルターでろ過後、昭和電工(株)製や東ソー(株)製などのゲルろ過タイプのカラムを用い、標準を種々の分子量のプルランとした、通常のゲルろ過クロマトグラフィーにより測定することができる。
【0044】
本発明の組成物の好ましい実施態様において、前記米加水分解物、及び前記玄米加水分解物の粘度について、製パン性、形状保持の観点から、固形分10%でのラピッドビスコアナライザーを用いた粘度分析による最終粘度は、10~200mPa・sであることを特徴とする。10mPa・s未満であると、低粘度過ぎてパンが膨らまない虞があり、200mPa・sを超えると、高粘度過ぎてパンが焼成時に潰れる虞があるためである。
【0045】
本発明において、前記最終粘度については、以下の通りである。すなわち、固形分10%水溶液を調製し、RVA-4500(フォスジャパン(株)製)35℃で21分攪拌後、21-33分に掛けて5℃/分で昇温し、95℃で10分維持した後、5℃/分で冷却し、50℃まで冷却する場合に、最終粘度とは、95℃まで昇温後50℃まで冷却したときの粘度を示す。
【0046】
また、本発明の組成物の好ましい実施態様において、前記組成物の全量に対して、前記玄米加水分解物の重量比率は、製パン性の観点から、である。
【0047】
本発明の組成物の好ましい実施態様において、前記組成物の全量に対して、前記米加水分解物の重量比率は、製パン性の観点から、40~53%である。なお米、例えば精白米加水分解物と、玄米加水分解物の組み合わせ比率は、食感バランス(官能)を考慮しての比率を決定することができる。食感を軽くソフトに仕上げる場合は、例えば、精白米分解物の比率を高め、玄米分解物の比率を下げたり、また食感をハードに仕上げたい場合は上述構成比率を逆にしたりすることができる。但し、玄米加水分解物には重要な機能があり、それに含まれるセルロース(不溶性食物繊維)が構造材になることができる一方、パン生地内の発酵で生成される二酸化炭素を易溶性寒天がゴム風船のように“包含”し、玄米分解物中のセルロースが、その風船の“保持(つっかえ棒)”に寄与することができる。この効果を出す為、玄米加水分解物は、好ましくは、少なくとも40%とすることができ、つられて相方の米加水分解物の値も設定されることになる。
【0048】
また、本発明において、精白米加水分解物のみならず、玄米加水分解物と寒天、好ましくは易溶性寒天を含有することができるが、これは、例えば、2つの成分の以下の相乗効果をねらったものである。すなわち、玄米加水分解物に含まれる不溶性食物繊維により寸法安定性を持たせ、ケービングの発生を抑えることが可能である。そして、精白米加水分解物と寒天を配合することにより、炭酸ガスを、多種多様な雑穀・穀物を用いるパン・菓子内に包蔵させ、容積拡大を行うことが可能である。
【0049】
次に、本発明に使用可能な寒天について、一例を挙げれば以下の通りである。本発明の好ましい実施の態様において、寒天は、例えば、テングサ由来やオゴノリ由来の漂白処理が行われたものから製造することができる。
【0050】
本発明において、寒天は、溶媒(例えば、湯)への溶解温度を60~100℃とする易溶性寒天を用いることができる。このように、溶媒への溶解温度が特定された寒天を、「易溶性寒天」ということがある。
【0051】
上述の易溶性寒天の溶解温度は、例えば製パン時の内部温度上昇の観点では、中でも70から80℃が好ましく、食感を重視する場合は80℃程度のものが特に好ましい。具体的にはタイショーテクノス(株)製の、商品名Speed Agar 80や伊那食品工業(株)製の、INA AGAR UP-175を好適に用いることができる。
【0052】
上述の易溶性寒天は、一例として、寒天100質量部に対して、水100~300質量部の加水量で寒天を加水し、加水した前記寒天を押出機で発泡させないように熱処理し、前記寒天を溶解し、固形化し、前記固形化した寒天を粉砕乾燥機で粉砕、乾燥する工程を含んで製造することができるが、このように得られた寒天も、本発明において使用することができる。
【0053】
上述の易溶性寒天は、水に沈みやすく、ポットのお湯(73℃付近)にも容易に溶解し、寒天を含む対象物が良好にゲル化する寒天乾燥物とすることができる。この易溶性寒天は、一例として、乾燥粉末寒天を加水後、押出成形機で発泡させないように熱処理する工程と、粉砕乾燥機で微粉末化する工程を連続的に行い、粉砕品の粒度を100μm以下、かさ比重を0.5g/cm以上に管理することで、製造してもよい。
【0054】
一般的な寒天は、造粒処理されているか、造粒処理されていない場合にあっても、高次構造を組む段階で、溶解した寒天中に共存する水分子との水素結合により極めて強固な架橋構造を形成し、他に例を見ない安定な分子形態に変化(会合ヘリックス化)して極めて特異的なゲル構造を構築している関係上、同じメッシュパスを用いて、粒度調整しても、サイズのばらつきが小さい特性を有する。また、一般的な寒天は、ポットの湯で溶かす場合に、操作中に時間を要したり、ポットの加温、保温機能の差によって、湯の温度にばらつきが生じて溶け残ることがある。
【0055】
上述の易溶性寒天は、上述の一般的な寒天よりサイズばらつきが大きく、より細かい粒子も多数存在して、処理前の紅藻類から抽出された寒天と比較して、寒天表面の全表面積は大きい点を挙げることができる。なお、本発明において用いる易溶性寒天は、ざらつかないように、粒度を次に述べるように規定してもよい。
【0056】
上述の易溶性寒天の乾燥物での粉末の粒度は、38μmパス~670μmパスの間、又は200μmパス以下であってもよい。このような粒度範囲にすれば、一定時間内に沈むように調整でき、加熱中に沈降しても焦げ付く前に溶解可能である。また、好ましい態様において、ポットの湯の温度により溶け残ってもざらつきをより確実に感じにくくするという観点から、前記寒天乾燥物の粉末の粒度は、100μmパス以下としてもよい。
【0057】
本発明に適用可能な易溶性寒天の製造方法として、例えば次のような方法があり、これによって得られた寒天も、本発明において、使用することができる。
(1)寒天粉末(例えば、(株)タイショーテクノス TS寒天ISP-9)に所定量の水を加えて湿潤混和した後、二軸同方向回転の押出機に供給し、発泡させないように熱処理する。熱処理条件は170℃、スクリュー回転数は200rpmとする。
(2)熱処理した寒天はカッターなどにより切断することなく、空隙を含まず弾力性を有する球状の寒天を得られる。
(3)出来上がった球状の寒天は、押出機から吐出後、直ちに乾燥粉砕機で乾燥粉砕を行う。乾燥粉砕条件は乾燥温度80℃とする。乾燥粉砕した寒天は振動篩機で篩別し、180μm以下となるように調製する。
【0058】
本発明の組成物の好ましい実施態様において、前記組成物(米加水分解物、玄米加水分解物、及び寒天を含有する組成物)の全量に対して、製パン性の観点から、前記寒天の乾燥状態での重量比率は7~10%である。上述のように玄米加水分解物に含まれるセルロース(不溶性食物繊維)が構造材になることができる一方、パン生地内の発酵で生成される二酸化炭素を寒天、好ましくは易溶性寒天がゴム風船のように“包含”し、玄米分解物中のセルロースが、その風船の“保持(つっかえ棒)”に寄与することができる。
【0059】
次に、本発明の生地組成物の一例について説明すれば、以下の通りである。本発明の生地組成物は、上述した本発明の組成物と、穀物と、膨張剤とを、含むことを特徴とする。本発明の組成物については、上述の説明を参照することができる。
【0060】
本発明において、穀物についても特に限定されない。例えば、本発明の好ましい実施態様に係る生地組成物及び生地に用いることが可能な穀物は、特定の雑穀・穀物に限定されるものではない。また、当該穀物として、多種多様な雑穀・穀類の中から一種類用いてもよく、複数種類組み合わせたものでもよい。
【0061】
なお、穀物として、穀物粉も用いることができ、当該穀物粉は、胴搗き製粉、ロール製粉、石臼製粉、気流粉砕製粉、湿式気流粉砕製粉、ピンミル製粉のいずれかの方法によって製造することができる。例えば、穀物粉として、アマランサス粉、キヌア粉、ガルバンゾ豆粉、テフ粉、オーツ粉、スイートソルガム粉、ロール製粉米粉、ミレット粉などを挙げることができる。なお、穀物粉の平均粒度としては特に限定されず、例えば、製パン性の観点から、30~200μm、好ましくは、30~180μmとすることができる。平均粒度の測定は、上述の米粉の場合と同様である。
【0062】
また、本発明において、膨張剤としては、ベーキングパウダー、酵母、ドライイースト等、市販品を含むことができ、これらを使用することが可能である。さらに、小麦アレルギー対応の観点から、バインダー、培養時に小麦を原料として使用しない、生酵母を使用してもよい。
【0063】
本発明の好ましい実施態様に係るパン生地・菓子のベース生地組成物は、上記の組成物と、雑穀・穀物粉と、膨張剤(及び/又は酵母)のほか、糖類を含んでもよい。また、当該生地組成物は、さらに、通常の小麦粉パンと同様に、食塩、砂糖、脱脂粉乳、油脂、卵、大豆レシチンなどを含有してもよい。これらについては、特に制限されるものではなく、パン・菓子に対する消費者の要望に応じて適宜設定可能であり、市販品のものを任意に適用可能でもある。例えば、アレルギー対応、ベジタリアン対応その他の観点から、必要に応じて脱脂粉乳、特定の膨張剤、卵を使用しなくてもよい。
【0064】
本発明の生地組成物の好ましい実施態様において、前記穀物は、グルテンを含まないことを特徴とする。これは、上述のように、本発明においては、精白米加水分解物と寒天を配合することにより、炭酸ガスを、多種多様な雑穀・穀物を用いるパン・菓子内に包蔵させ、容積拡大を行うことが可能であり、特に米粉ベースの組成物においても、グルテンを別途添加する必要がないためである。
【0065】
本発明の生地組成物において、上述の米加水分解物、玄米加水分解物及び寒天の添加量は、穀物150重量部に対して、パンにおける「すだち」形成と食感維持の観点から、9~20重量部が好ましく、9~15重量部が特に好ましい。なお、すだちとはパン内の気泡分散を示す言葉である。
【0066】
また、本発明の生地は、本発明の生地組成物に加水し、混捏することにより得られることを特徴とする。本発明の生地組成物については、上述の説明を参照することができる。本発明の好ましい実施態様に係る生地の一例としてのパン生地は、上述した生地組成物に加水し、混捏することにより得ることができる。加水時に水の替わりに市販の炭酸水を使用することで、より膨らみのある米粉パンを作ることも可能である。
【0067】
水分率が11~12%の雑穀・穀物粉等を用いた場合、前記加水する場合の加水量(水等の量)は、米粉100重量部に対して、製パン性の観点から、例えば、110~300重量部、より好ましくは、150~275重量部、さらに好ましくは、250~275重量部である。なお生地に牛乳や卵等の液体成分を混合する場合は、前記加水量にこれらの液体成分中の水分も加えることができる。該混捏はミキサー、ハンドミキサーその他の任意の装置を用いて行うことができる。該混捏は、製パン性の観点から、高速で2分程度混合、生地がなめらかな状態になるまで行ってもよい。
【0068】
また、本発明のパンは、本発明の生地がパン生地であり、前記パン生地を発酵させた後に焼成したことを特徴とする。発酵、焼成については、特に限定されない。例えば、前記混捏した生地を50℃の湯で10~20分間発酵させ、所定形状に成型した後に、ベーカリーオーブン、オーブン機能つき電子レンジなど任意の装置を用い、230~250℃の温度条件で30~50分程度焼成して、パンとすることができる。このようにして得られたパンは、食パン、コッペパン、フランスパン等の発酵により得られるパンなど多種多様に及ぶが、本発明の組成物により得られるものであればこれらに限定されるものではない。
【0069】
また、本発明の焼き菓子は、本発明の生地が焼き菓子用生地であり、前記焼き菓子用生地を発酵させた後に加熱製造したことを特徴とする。混捏した生地をパンと同様に発酵させた後、蒸したり、焼いたりして菓子とすることができる。このようにして得られた菓子は、本発明の組成物により得られるものであれば、特に限定されない。
【0070】
また、本発明のパン又は焼き菓子用生地の製造方法は、穀物粉と、水と、膨張剤と、糖類とを混捏する工程を含むパン又は焼き菓子用生地の製造方法であって、前記穀物粉に加えて、米加水分解物、玄米加水分解物、及び寒天とを配合する工程を含むことを特徴とする。本発明において、穀物(粉)、膨張剤については、上述の本発明の生地組成物における説明をそのまま適用することができる。本発明において、穀物粉と、水と、膨張剤と、糖類とを混捏する工程については、常法により特に限定されない。また、米加水分解物、玄米加水分解物、及び寒天については、上述した本発明の組成物等の説明をそのまま適用することができる。
【0071】
本発明のパン又は焼き菓子用生地の製造方法の好ましい実施態様において、前記米加水分解物、前記玄米加水分解物、及び寒天とを配合した配合物の配合量は、前記生地の粉末成分(より具体的には、穀物粉、膨張剤(及び/又は酵母)、糖類)の全量に対して、製パン性の観点から、5~30重量%であることを特徴とする。本発明の製造方法の好ましい実施態様において、前記穀物粉は、グルテンを含まないことを特徴とする。これは、上述のように、本発明においては、精白米加水分解物と寒天を配合することにより、炭酸ガスを、多種多様な雑穀・穀物を用いるパン・菓子内に包蔵させ、容積拡大を行うことが可能であり、特に米粉ベースの組成物においても、グルテンを別途添加する必要がないためである。
【0072】
なお、上述の精白米加水分解物及び玄米加水分解物の組み合わせ比率は、食感バランス(官能)に応じて、変更可能である。食感をよりソフトに仕上げたい場合は、精白米加水分解物の比率を上げて、玄米加水分解物の比率を下げてもよい。食感をよりハードに仕上げたい場合は、精白米加水分解物の比率を下げて、玄米加水分解物の比率を上げてもよい。
【0073】
一方で、玄米加水分解物に含まれるセルロース(不溶性食物繊維)が構造材になり、生地の発酵で生成される二酸化炭素を、易溶性寒天が風船のように包含し、セルロースが風船の保持に寄与する。この構造材の効果には、加水分解物全体量において玄米加水分解物は最低限必要な割合がある。一例では、玄米加水分解物のこの割合は、約40%とすることができる。
【実施例
【0074】
ここで、本発明の実施例を説明するが、本発明は、下記の実施例に限定して解釈されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であることは言うまでもない。
【0075】
実施例1
まず、本発明の組成物として、米加水分解物、玄米加水分解物、及び寒天を含有する組成物を作成した。米として、精白米を使用した。具体的には、米加水分解物(たかい食品(株)のJU-800A)を7.3重量%、玄米加水分解物(たかい食品(株)のGU-800A)を43.6重量%、寒天((株)タイショーテクノスのTS寒天ISP-9、タイショーテクノス(株)のSpeed Agar 80又は伊那食品工業(株)のINA AGAR UP-175)を48.8重量%を用いた。また、組成物として、たかい食品株式会社のKGS-541を使用できる。
【0076】
実施例2
こうして得られた本発明の組成物について、以下の実施例において、食品としての使用を試みた。まず、実際に、本発明の組成物を用いて、本発明の生地組成物を作成した。生地組成物としては、本発明の組成物のほかに、上白糖、トレハロース、塩、イースト、ショートニング、温水(50℃)を用いた。生地組成物の組成、配合割合は以下の通りである。
【0077】
本発明の組成物(KGS-541)及び雑穀・穀物の合計:150g
上白糖:15g
トレハロース:15g
塩:1.2g
イースト:2.4g
ショートニング:12g
温水(50℃):130.5g
【0078】
上記生地組成物を用いて、まず生地を準備した。すなわち、ミキシングに商品名K5SS(関東混合機工業(株)社製)を使用し、高速で2分撹拌後、50℃で20分発酵させ、生地を製造した。その後、該生地を型に流し込み、商品名MRO-JV300(日立ホームアプライアンス社製)のオーブン機能を使用し、230℃で40分焼成し、パンを製造した。
【0079】
以下、試験対象の雑穀・穀物として、穀物粉、具体的には、アマランサス、キヌア、ガルバンゾ豆(ひよこ豆)、テフ、オーツ、ソルガム、ロール製粉米粉、ミレット等を用いて、試験対象の雑穀・穀物の粉と組成物との混合物を100%としたときの両者の重量割合を変更させた例(実施例1から8)の結果について説明する。
【0080】
実施例3
穀物粉として、アマランサス粉を用いた場合の本発明の生地組成物、及び当該生地組成物を用いたパンの評価を行った。図1に示す結果からは、アマランサス粉(平均粒径113μm)については、組成物の重量割合が5%のパンよりは、10%のパンのほうがより膨らみが認められるが、20%のパンになると膨らみの一方、気泡跡の疎らさ又は粗い「すだち」が目立つことが判明した。
【0081】
実施例4
次に、穀物粉として、キヌア粉を用いた場合の本発明の生地組成物、及び当該生地組成物を用いたパンの評価を行った。図2に示すキヌア粉(平均粒径83μm)については、組成物が入ることで膨らみが良好であった。そして、組成物の重量割合が10%のものより、20%のものは、「すだち」がより均一であることが判明した。
【0082】
実施例4
次に、穀物粉として、ガルバンゾ豆粉を用いた場合の本発明の生地組成物、及び当該生地組成物を用いたパンの評価を行った。図3に示すガルバンゾ豆粉(平均粒径30μm)については、組成物の重量割合が10%のパンよりも、20%のパンのほうが、膨らみがより良好で、「すだち」も良好であることが判明した。
【0083】
実施例5
次に、穀物粉として、テフ粉を用いた場合の本発明の生地組成物、及び当該生地組成物を用いたパンの評価を行った。図4に示すテフ粉(平均粒径108μm)については、組成物の重量割合が10%のパン及び20%のパンの「すだち」は十分均一であったが、20%のパンのほうが、膨らみが良好であることが判明した。
【0084】
実施例6
次に、穀物粉として、オーツ粉を用いた場合の本発明の生地組成物、及び当該生地組成物を用いたパンの評価を行った。図5に示すオーツ粉(平均粒径68μm)については、組成物の重量割合が10%のパンのほうが、20%のパンよりも、膨らみが良好であることが判明した。
【0085】
実施例7
次に、穀物粉として、スイートソルガム粉を用いた場合の本発明の生地組成物、及び当該生地組成物を用いたパンの評価を行った。図6に示すスイートソルガム粉(平均粒径102μm)では、組成物の重量割合が30%のパンの膨らみは、10%のパン及び20%のパンよりも良好であって、概ね均等な膨らみを達成した。
【0086】
実施例8
次に、穀物粉として、ロール製粉米粉を用いた場合の本発明の生地組成物、及び当該生地組成物を用いたパンの評価を行った。図7に示すロール製粉米粉(平均粒径173μm)については、組成物の重量割合が10%のパンと20%のパンとは、両方良好な膨らみや「すだち」を達成した(適当に記載しております。ご確認願います。)。
【0087】
実施例9
次に、穀物粉として、ミレット粉を用いた場合の本発明の生地組成物、及び当該生地組成物を用いたパンの評価を行った。図8に示すミレット粉(平均粒径99μm)については、組成物の重量割合が20%のパンの膨らみは、10%のパン及び15%のパンよりも、概ね均等な膨らみを達成した(適当に記載しております。ご確認願います。)。
【0088】
これらの結果から、本発明により得られた米粉パンは、いずれも水分量低下など劣化などが少なく、冷蔵または冷凍保存することも容易であることが判明した。
【0089】
図9は、ホワイトソルガム粉に、一般的な寒天(図中で「Nornal Agar Agar」と表示。)を含有する組成物を添加して焼成したものと、易溶性寒天を含有する組成物の例としてKGS-541を添加して焼成したものとを、比較して示す。一般的な寒天利用のものは、易溶性寒天利用のものよりも膨らみが乏しく、従ってより硬めの食感を示すといえる。
【0090】
図10は、ミレー粉についての、一般的寒天利用のものと、易溶性寒天利用のものとを、比較して示す。一般的寒天利用のものは、易溶性寒天利用のものよりもすだちが不均等であり、したがってこの不均等なすだちは、食感のばらつきにつながるといえる。
【0091】
図11は、米粉についての、一般的寒天利用のものと、易溶性寒天利用のものとを、比較して示す。一般的寒天利用のものは、すだちについては、易溶性寒天利用のものと同程度のように見える。しかし、全体的な膨らみについては、易溶性寒天利用のものよりも乏しく、従ってより硬めの食感を示すといえる。
【0092】
以上のように、本発明の米加水分解物、玄米加水分解物及び寒天を含有する組成物を用いることで、米粉パン製造の従来常識を覆し、良好な膨らみや「すだち」のパン・菓子の製造が可能となることが判明した。すなわち、本発明は、雑穀・穀物等の従来の製造上の条件に縛られず、グルテン等を用いずにも、消費者の幅広いニーズに沿ったパン・菓子の製造が可能であることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0093】
近年、米粉等の米の有効利用が重要な課題となっており、特に、米粉は、米、パン等の主食成分にとって代わることが可能であることから、本技術は、広範な分野において応用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11