(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】仕上げ加工用治具及び仕上げ加工用治具のスタンド
(51)【国際特許分類】
G01N 1/28 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
G01N1/28 G
(21)【出願番号】P 2022187509
(22)【出願日】2022-11-24
【審査請求日】2022-12-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウェブサイトの掲載日:令和4年2月1日 ウェブサイトのアドレス:https://www.nogami-gk.co.jp/products/ 配布日:令和4年11月8日~10日 配布場所:第63回電池討論会 福岡県福岡市博多区石城町2-1 福岡国際会議場 配布日:令和4年11月16日~18日 配布場所:〔関西〕二次電池展 大阪府大阪市住之江区南港北1-5-102 インテックス大阪
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】394020815
【氏名又は名称】株式会社野上技研
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】野上 良太
(72)【発明者】
【氏名】福田 司
(72)【発明者】
【氏名】川村 翔太郎
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-240522(JP,A)
【文献】特開2005-227113(JP,A)
【文献】特開2021-181895(JP,A)
【文献】特開2010-284736(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0081015(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0025789(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00 - 1/44
B26D 1/04 - 1/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業面に設けられた直線状のガイド溝に沿ってスライドしながら、前記作業面上に突出した板状試料の突出部分を切削して該板状試料の仕上げ加工を行う刃物ユニットと、前記板状試料をクランプ位置に固定するクランプ機構と、前記突出部分により作られる切削加工代を設定する切削加工代設定機構とを備えている仕上げ加工用治具であって、
前記作業面には、前記ガイド溝と平行をなす刃物移動経路面が設けられ、
前記刃物ユニットは、前記刃物移動経路面に摺接する刃物を有し、
前記クランプ機構は、固定側口金と、該固定側口金に向けて前記刃物ユニットのスライド方向と直交方向に移動可能、かつ、スプリングの弾性力を得て前記板状試料を厚み方向に一定の力で押圧可能な可動側口金とを有し、
前記切削加工代設定機構は、前記板状試料を前記作業面上に突出させて前記突出部分を得るための昇降ステージを有し、
前記刃物移動経路面には、前記板状試料の固定状態で、前記固定側口金及び前記可動側口金の両口金上面が含まれていることを特徴とする仕上げ加工用治具。
【請求項2】
前記固定側口金及び前記可動側口金のそれぞれには、口金上面と前記板状試料を押圧する口金側面とが直角をなして連続する直角部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の仕上げ加工用治具。
【請求項3】
請求項1又は2記載の仕上げ加工用治具のスタンドであって、
前記仕上げ加工用治具を載置するベース部と、該ベース部に設けられる支持アームと、該支持アームに取り付けられるマイクロスコープとを備え、
前記支持アームは、前記マイクロスコープを前記作業面の直上領域に配置した起立状態と、前記直上領域の外側に配置した倒伏状態とに起倒可能に構成されていることを特徴とする仕上げ加工用治具のスタンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕上げ加工用治具及び仕上げ加工用治具のスタンドに関し、詳しくは、所定の大きさにカットして作成した薄片状の試料の断面を観察面として、該観察面の観察に適した断面に仕上げ加工する際に用いられる仕上げ加工用治具及び仕上げ加工用治具のスタンドに関する。
【背景技術】
【0002】
種々の対象物の材料検査において、試料の断面観察は試料性状を把握する方法として一般的に用いられている方法である。こうした観察で用いられる試料断面を作成する大まかな手順は、一例として、観察したい部位の近傍を切り出して行われる(一次加工)。そして、切断面に対して機械研磨あるいはイオンミリングなどの二次加工を行い、観察用の試料台に取り付けて観察が行われている。各種二次加工のうち、イオンミリングは、試料断面にイオンビームを照射するなどして研磨するもので、固い試料及び柔らかい試料のいずれにおいても鏡面状態の断面が得られることから、断面観察の前処理として広く普及している(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、試料断面を観察するための前処理(二次加工)は、精度が求められる加工と断面観察とを繰り返す煩雑な工程を必要とし、その上、一次加工の品質に起因した作業性への影響も大きいものである。したがって、一次加工で発生した試料断面の破壊(割れ、崩れ、層間剥離など)を効率良く取り除き、高品質な断面を安定して得ることが可能な二次加工手段が求められている。
【0005】
そこで本発明は、試料の断面を仕上げ加工し、観察に適した断面を形成する仕上げ加工用治具及び仕上げ加工用治具のスタンドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の仕上げ加工用治具は、作業面に設けられた直線状のガイド溝に沿ってスライドしながら、前記作業面上に突出した板状試料の突出部分を切削して該板状試料の仕上げ加工を行う刃物ユニットと、前記板状試料をクランプ位置に固定するクランプ機構と、前記突出部分により作られる切削加工代を設定する加工代設定機構とを備えている仕上げ加工用治具であって、前記作業面には、前記ガイド溝と平行をなす刃物移動経路面が設けられ、前記刃物ユニットは、前記刃物移動経路面に摺接する刃物を有し、前記クランプ機構は、固定側口金と、該固定側口金に向けて前記刃物ユニットのスライド方向と直交方向に移動可能、かつ、スプリングの弾性力を得て前記板状試料を厚み方向に一定の力で押圧可能な可動側口金とを有し、前記加工代設定機構は、前記板状試料を前記作業面上に突出させて前記突出部分を得るための昇降ステージを有し、前記刃物移動経路面には、前記板状試料の固定状態で、前記固定側口金及び前記可動側口金の両口金上面が含まれていることを特徴としている。
【0007】
また、前記固定側口金及び前記可動側口金のそれぞれには、口金上面と前記板状試料を押圧する口金側面とが直角をなして連続する直角部が形成されていると好適である。
【0008】
さらに、本発明の仕上げ加工用治具のスタンドは、上述の仕上げ加工用治具のスタンドであって、前記仕上げ加工用治具を載置するベース部と、該ベース部に設けられる支持アームと、該支持アームに取り付けられるマイクロスコープとを備え、前記支持アームは、前記マイクロスコープを前記作業面の直上領域に配置した起立状態と、前記直上領域の外側に配置した倒伏状態とに起倒可能に構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の仕上げ加工用治具によれば、加工代設定機構にて板状試料を作業面から突出させ、クランプ機構にて板状試料を厚み方向にクランプして、クランプ位置に固定し、刃物ユニットを板状試料の厚み方向と直交する方向にスライドさせることにより、刃物で板状試料の切削加工代として作られた突出部分を長手方向に(断面に沿って)切削する。そして、刃物は、刃物移動経路面を隙間0(ゼロ)の状態で摺動し、固定側口金及び可動側口金の両口金は、刃物が入る断面の際(きわ)、つまり、試料断面と刃物移動経路面との境目を正確にクランプする。これにより、板状試料の断面に与える力を極小にして断面の変形をなくすことが可能となり、観察に適した良好な断面を得ることができる。
【0010】
その上、クランプ機構は、スプリングの弾性力を得て一定の力(定圧)で管理されたクランプ圧で板状試料をクランプすることから、過度の押し付けによる板状試料の破壊を防止し、観察に適した良好な断面を安定して得ることができる。
【0011】
また、固定側口金及び可動側口金が互いの直角部を含む口金側面同士の間で板状試料をクランプするので、口金側面の上端部を板状試料の板面に密着させることが可能となり、板状試料の断面の際(きわ)を確実にクランプすることができる。
【0012】
さらに、仕上げ加工用治具をスタンドと組み合わせて使用するので、スタンドの支持アームに備えたマイクロスコープで板状試料の断面を確認しながら仕上げ加工を行うことが可能となり、断面の状態を容易に把握することができる。とりわけ、スタンドは、起倒可能な支持アームを備えていることから、仕上げ加工用治具のセットも容易なものとなり、断面観察における作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一形態例を示す仕上げ加工用治具をマイクロスコープスタンドに縦向きにセットし、マイクロスコープの支持腕を倒伏させた状態を示す斜視図である。
【
図2】仕上げ加工用治具をマイクロスコープスタンドに横向きにセットした状態を示す斜視図である。
【
図11】加工代設定機構で板状試料の加工代を設定する工程の説明図である。
【
図12】クランプ機構で板状試料をクランプする工程の説明図である。
【
図13】板状試料をクランプした状態の仕上げ加工用治具の平面図である。
【
図14】刃物部材の角度変更した状態を示す要部平面図である。
【
図15】仕上げ加工用治具をマイクロスコープスタンドに縦向きにセットし、マイクロスコープの支持腕を起立させた状態を示す正面図である。
【
図16】仕上げ加工用治具をマイクロスコープスタンドに縦向きにセットし、マイクロスコープの支持腕を起立させた状態を示す側面図である。
【
図17】仕上げ加工用治具をマイクロスコープスタンドに縦向きにセットし、マイクロスコープの支持腕を起立させた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
仕上げ加工用治具11は、作業台を兼ねたマイクロスコープスタンド31(本発明のスタンド)に取り付けて使用されるものであって、仕上げ加工用治具11とマイクロスコープスタンド31との組み合わせ(一式)で、板状試料の仕上げ加工工程から観察工程までを円滑に進めることができるものである。
【0015】
仕上げ加工用治具11は、例えば、電池部品や電子部品等の構造や充・放電状態等を観察するために、それらを所定の大きさにカットして作成した薄片状の板状試料S1の断面を観察面として、該観察面の観察に適した断面に仕上げ加工する際に用いられる。なお、観察には、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)等の高倍率で分解能の高い各種機器、ラマン分光法(Raman Spectroscopy)、電子後方散乱回折法(EBSD:Electron Backscatter Diffraction)等を用いることができる。そして、
図1に示されるように、マイクロスコープスタンド31に仕上げ加工用治具11を縦向きにセットした状態で、板状試料S1のクランプ工程が行われ、
図2に示されるように、マイクロスコープスタンド31に仕上げ加工用治具11を横向きにセットした状態で、板状試料S1の切削加工工程が行われる。
【0016】
仕上げ加工用治具11は、
図3などに示すように、作業面11aを有する直方体状の金属ブロック製のもので、前記作業面11aと、短辺側の側面11b,11cと、長辺側の側面11d,11eと、底面11fとを有している。作業面11aには、ガイド溝12に沿ってスライドしながら、作業面11a上に突出した板状試料S1の突出部分を切削して板状試料S1の仕上げ加工を行う刃物ユニット13と、板状試料S1をクランプ位置に固定するクランプ機構14と、板状試料S1の突出部分により作られる切削加工代を設定する加工代設定機構15とが設けられている。
【0017】
なお、以下の説明で述べる「上」「下」は、仕上げ加工用治具11を、作業面11aを上方に向けて水平状態とする横向きにセットした際の「上」「下」に対応させている。
【0018】
ガイド溝12は、
図4に示すように、短辺側の一方の側面11bから他方の側面11cに亘って直線状に形成され、
図8に示すように、作業面11aに開口する上部開口12aから溝底部12bに向けて漸次溝幅寸法を広げた断面台形状に形成されている。
【0019】
図4や
図8に示されるように、刃物ユニット13は、ガイド溝12に沿って移動する刃物ホルダー16と、該刃物ホルダー16に取り付けられる刃物部材17とを有している。
【0020】
刃物部材17は、刃物17aと、刃物17aを支持する刃物支持部材17bとを有している。刃物17aは、板状試料S1に対しての圧力を可能な限り細い面積(線)に集中させる道具であり、
図7にも示すように、底辺部17cに刃を備えた断面直角三角形状に形成され、鋭利な刃先Pをスライド方向前方となる側面11c側に向けて、刃物支持部材17bを介して刃物ホルダー16に取り付けられる。刃物17aの材質は、焼入鋼、ステンレス鋼、超硬合金、セラミック、硬質樹脂等が考えられるが、硬度、対摩耗性が十分であれば材質は任意であり、刃物17aの表面に既知のコーティング被膜を設けて構成することもできる。なお、刃物17aの形状は、先端部に向かって細く形成されるものであるが、刃先角度(刃の先端を形成する角度)等の具体的な形状については特に限定されない。
【0021】
刃物支持部材17bは、一端に刃物17aが取り付けられるとともに、他端側に摘み片17dが設けられ、長さ方向中央部にはスライド孔17eが形成されている(
図4)。また、刃物支持部材17bに刃物17aを取り付けた状態で、刃物支持部材17bの底面と刃物17aの底辺部17cとは面一となっている。
【0022】
刃物ホルダー16は、ガイド溝12に挿入され、ガイド溝12に沿ってスライドするスライダー16aと、該スライダー16aの上部に取り付けられる本体部16bとを有し、スライダー16aと本体部16bとの間に前記刃物支持部材17bが配置される。
【0023】
スライダー16aは、ガイド溝12の形状に対応した四角錐台状に形成され(
図8)、ガイド溝12の両側面12c,12cに傾斜面16c,16cが面当接可能に配置されるとともに、その上面16dは、作業面11aと面一となるように形成されている。また、スライダー16aの端部には、スライダー固定ねじ16eが設けられ、該スライダー固定ねじ16eを締めることにより、スライダー16aが僅かに上昇し、傾斜面16cとガイド溝12の側面11cとが上下方向に密着し、刃物ホルダー16の移動が規制される。
【0024】
本体部16bは、直方体のケース状に形成され、天井部の中央にカラー挿通孔16fが形成されるとともに、該カラー挿通孔16fを挟んで、スライド方向両側部に円弧状の一対のボルト挿通孔16g,16gがそれぞれ形成されている。さらに、本体部16bのガイド溝12と平行な一対の側面には、刃物支持部材17bをガイド溝12と直交方向に移動可能に保持する保持孔16h,16hがそれぞれ形成されている。また、本体部16bの天井部の一側には、刃物部材17を覆う板状の安全カバー16iが取り付けられている。
【0025】
カラー挿通孔16fには中空円筒状のカラー16jが挿通され、該カラー16jに刃物固定ノブ16kが回動可能、かつ、上下方向に移動可能に挿通される。さらに、一対のボルト挿通孔16g,16gには、取付ボルト16m,16mがそれぞれ挿通される。また、スライダー16aには、刃物固定ノブ16kの下端部に形成された雄ねじ部を螺合させる第1雌ねじ孔(図示せず)と、取付ボルト16m,16mを螺合させる第2雌ねじ孔(図示せず)がそれぞれ形成されている。
【0026】
さらに、刃物ホルダー16をガイド溝12の最も側面11b側に配置させた状態で、刃物17aが配置される作業面11aには、刃物17aの取付角度を目視できる角度目盛18が設けられている(
図14)。
【0027】
このように形成された刃物ホルダー16の組立は、刃物支持部材17bのスライド孔17e内に、第1雌ねじ孔を配置した状態で、スライダー16aの上面に、刃物支持部材17bを、ガイド溝12と直交方向に向けるとともに刃物17aを側面11d側に向けて配置し、次いで、スライダー16aに本体部16bを取り付け、一対の保持孔16h,16hから刃物支持部材17bの両端部を突出させる。
【0028】
カラー16jに挿通させた刃物固定ノブ16kの雄ねじ部を第1雌ねじ孔に螺合させた後、摘み片17dを操作して、刃物支持部材17bをガイド溝12と直交方向に移動させて、刃物17aを所定の位置に配置した後、刃物固定ノブ16kさらにねじ込むことで、刃物固定ノブ16kがカラー16jを下方に押圧する。これに伴って、カラー16jが刃物支持部材17bをスライダー16aの上面16dに押し付けて、刃物支持部材17bを所定位置に固定させる。また、これにより、刃物17aの底辺部17cと作業面11aとは隙間0(ゼロ)の状態となり、刃物ホルダー16をガイド溝12に沿ってスライドさせた際に、底辺部17cは隙間0の状態で、作業面11aに設けられたガイド溝12と平行をなす刃物移動経路面R1を摺動する(
図4の2本の点線間の領域)。さらに、一対の取付ボルト16m,16mを一対のボルト挿通孔16g,16gにそれぞれ挿通し、各取付ボルト16m,16mを第2雌ねじ孔にそれぞれ螺合させ、スライダー16aの上部に本体部16bを取り付ける。
【0029】
図4の2本の点線間の領域に示すように、刃物移動経路面R1は、作業面11a上を刃物17aが摺動する摺動面である。刃渡りに相当する幅Wで、所定の長さを有している。
【0030】
クランプ機構14は、
図10などに示すように、ガイド溝12の側面11d側に、下方に向けてガイド溝12と平行に配置される固定側口金19と、該固定側口金19に向けてガイド溝12と直交方向(刃物ユニット13のスライド方向と直交方向)に移動する可動側口金20とを備えている。
【0031】
固定側口金19は、例えばセラミックス等の絶縁体で形成され、
図1や
図11に示されるように、マイクロスコープスタンド31に仕上げ加工用治具11を縦向きにセットした状態で、板状試料S1のクランプ工程を行う際に、板状試料S1を載置させる載置面19aを有している。また、仕上げ加工用治具11を横向きにセットした際に上方となる上面19bは、作業面11aと面一に形成されている。さらに、
図3や
図11,
図12に示されるように、固定側口金19には、載置面19aと上面19bとが直角をなして連続する直角部C1が形成されている。
【0032】
図10に示されるように、クランプ機構14は、側面11dから固定側口金19に向けて、ガイド溝12と直交方向に形成される口金収容孔14aを備え、該口金収容孔14aに可動側口金20がガイド溝12と直交方向に移動可能に収容され、可動側口金20には、該可動側口金20を移動操作させるハンドル21が連結されている。
【0033】
可動側口金20は、固定側口金19に向けて開口した断面コ字状の外側口金体20aと、外側口金体20aの内側に収容される内側口金体20bとで構成され、例えばセラミックス等の絶縁体でそれぞれ形成されている。また、内側口金体20bは、
図9及び
図10に示されるように、口金収容孔14a内からカバー部材23に亘ってガイド溝12と直交方向に延出するガイド部材14bに沿って、外側口金体20aの内側に移動可能に収容される。
【0034】
外側口金体20aは、開口側を固定側口金19側に、底部側を側面11d側に向けて口金収容孔14a内に収容されている。底部には、後述するハンドル21に設けたジョイント部21cを挿入させるジョイント部挿入孔20cと、内側口金体20bに設けた中心軸部材20kの一端部を螺合させる中心軸部材装着孔20dとが、連通した状態で同軸に形成されている。また、ジョイント部挿入孔20cは、固定側口金19側に大径孔部を、反固定側口金19側に小径孔部を有している。また、外側口金体20aの上面20pは、作業面11aと面一に形成される。
【0035】
内側口金体20bは、外側口金体20aの底部側に配置されるスプリング収容部20eと、該スプリング収容部20eにねじ締結され、外側口金体20aの開口から僅かに突出して設けられる板状試料クランプ部20fとを備えている(
図10)。スプリング収容部20eには、スプリング22の一端側を収容する2つの有底の第1スプリング収容孔20g,20gが、ガイド溝12と直交方向に形成されている。また、外側口金体20aには、スプリング22の他端側を収容する2つの第2スプリング収容孔20h,20hが第1スプリング収容孔20g,20gと同軸に形成され、各第2スプリング収容孔20hの外側開口部は、外側口金体20aに螺合させたスクリュープラグ20iによって閉塞されている。さらに、スプリング収容部20eは、中心部に中心軸部材挿通孔20jが貫通形成され、該中心軸部材挿通孔20jに前記中心軸部材20kが挿通され、端部が外側口金体20aの中心軸部材装着孔20dに螺合している。
【0036】
スプリング22は、圧縮前の状態(自然状態)で、その一端部が第1スプリング収容孔20gの底部に、他端部がスクリュープラグ20iにそれぞれ当接している。
【0037】
中心軸部材挿通孔20jは、固定側口金19側に大径孔部を有しており、中心軸部材20kは、軸部の先端に設けられた大径頭部を大径孔部に配置させている。また、板状試料クランプ部20fの上面20qは、作業面11aと面一に形成されている。さらに、
図3や
図11,
図12に示されるように、板状試料クランプ部20fには、上面20qと先端面20mとが直角をなして連続する直角部C2が形成されている。
【0038】
図10に示されるように、ハンドル21は、雄ねじ部を備えた軸部材21aと、該軸部材21aの基端部に設けられ軸部材21aを回転させる操作部21bとを備え、軸部材21aの先端部には、ジョイント部21cが形成されている。ジョイント部21cは、固定側口金19側に大径部を、反固定側口金19側に小径部を有し、大径部の先端面を球面状に形成している。ジョイント部21cは、大径部を前記したジョイント部挿入孔20cの大径孔部に、小径部をジョイント部挿入孔20cの小径孔部に挿通させる。また、操作部21bは、
図1乃至
図3に示されるように、ボルト21dによって軸部材21aの軸方向に固定され、スクリュープラグ21eによって回転方向に固定されている。
【0039】
軸部材21aの基端側と操作部21bとは、仕上げ加工用治具11の側面11dよりも外側に突出して配置され、側面11dには、側面11dから突出した軸部材21aを覆うカバー部材23が取り付けられている。また、該カバー部材23には、雌ねじ孔23aが設けられ、該雄ねじ孔23aに軸部材21aの雄ねじ部が螺合している(
図10)。
【0040】
このように形成されたクランプ機構14は、初期状態では、ハンドル21は、操作部21bと軸部材21aとが、カバー部材23から外方に突出しており、ジョイント部21cは、ジョイント部挿入孔20cの固定側口金19側の端面と、中心軸部材20kの端部とに当接している。また、各スプリング22は、第1スプリング収容孔20g及び第2スプリング収容孔20h内で自然状態に保持され、内側口金体20bの板状試料クランプ部20fは、外側口金体20aよりも僅かに固定側口金19側に突出した状態となっている(
図4)。
【0041】
可動側口金20を作動させる際には、操作部21bを回動操作して、ハンドル21を固定側口金19に向けて移動させる。これに伴い、ハンドル21のジョイント部21cが、ジョイント部挿入孔20cの固定側口金19側の端面と、中心軸部材20kの端部とを押圧し、外側口金体20aと内側口金体20bとを固定側口金19に向けて移動させる。
【0042】
外側口金体20aよりも僅かに固定側口金19側に突出した状態の板状試料クランプ部20fの先端面20mが、固定側口金19に載置した板状試料S1に当接した後、内側口金体20bは、スプリング22を圧縮させながら、外側口金体20aとともに、さらに固定側口金19に向けて移動する。外側口金体20aの先端面20nと固定側口金19の載置面19aとの距離L1=0となり(先端面20nと載置面19aとが当接した状態)、操作部21bの回動操作を終了した時点で、スプリング22は圧縮量に応じた弾性力を発揮し、板状試料クランプ部20fが一定の力で固定側口金19との間で板状試料S1をクランプする。このとき、固定側口金19及び可動側口金20の両口金は、前記直角部C1,C2を含む口金側面同士の間で板状試料S1をクランプし、口金側面の上端部を板状試料S1の板面に密着させ、刃物17aが入る断面の際(きわ)、つまり、試料断面と刃物移動経路面R1との境目を正確にクランプする。
【0043】
このように、板状試料S1をクランプした状態で、固定側口金19の上面19bと、外側口金体20aの上面20p及び板状試料クランプ部20fの上面20qとは、刃物移動経路面R1に含まれている(
図4)。
【0044】
加工代設定機構15は、固定側口金19の奥側中央部に設けられ、固定側口金19に載置した板状試料S1を作業面11a方向に押し出す昇降ステージ15aと、該昇降ステージ15aを上下方向に移動させるマイクロメータ15bとを備え、設定された板状試料S1の切削加工代に応じて、板状試料S1を作業面11aから上方に突出させる。
【0045】
マイクロメータ15bは周知の構造を有し、マイクロメータ15bを回転させることにより、昇降ステージ15aが0.01mm単位で昇降し、1周回転させると、昇降ステージ15aが0.25mm上昇するように形成されている。また、マイクロメータ15bの外周壁には、0.01mm単位の目盛り(図示せず)が設けられている。
【0046】
さらに、クランプ機構14よりも側面11c側の作業面11aの下部には、上部に開口部を有する箱形のカス回収ボックス24が、側面11dから外方に引き出し可能に設けられている。また、カス回収ボックス24の開口部の上方に位置する作業面11aには、ガイド溝12と直交方向のカス落下用スリット24aが形成され、板状試料S1を仕上げ加工する際に発生する切り屑等の加工カスは、カス落下用スリット24aを介してカス回収ボックス24に回収される。
【0047】
図1及び
図2に示されるように、マイクロスコープスタンド31は、仕上げ加工用治具11を載置させるベース部31aと、ベース部に設けられる支持アーム33と、該支持アーム33に取り付けられる前記マイクロスコープ32とを備えている。
【0048】
ベース部31aは、略長方形状に形成され、ベース部31aの短辺側の一側中央に、前記支持アーム33が、ヒンジ部材34を介して、起倒可能に取り付けられている。
【0049】
支持アーム33は、基端部がヒンジ部材34に取り付けられる円筒状の第1支持アーム33aと、該第1支持アーム33aに挿入され、起立状態でベース部31aの前方に向けて突出する第2支持アーム33bとで形成され、第2支持アーム33bの先端部にマイクロスコープ32が取り付けられる。また、第2支持アーム33bには、第1支持アーム33aへの固定位置を調整し、マイクロスコープ32の高さ位置を調整する第1送りハンドル33cと、第2支持アーム33bの作業台前後方向の突出量を調整し、マイクロスコープ32の作業台前後方向の位置を調整する第2送りハンドル33dとを備えている。
【0050】
ベース部31aには、仕上げ加工用治具11を位置決めするサポートプレート35及びストレッチ36が設けられるとともに、板状試料S1を固定側口金19の載置面19aにセットさせるテーブル37が着脱可能に設けられている。
【0051】
サポートプレート35は、ヒンジ部材34の前方に取り付けられた四角形状の板材で形成され、仕上げ加工用治具11を、側面11dを上方に向け、側面11eをベース部31aに載置させ、作業面11aを鉛直方向に向けた縦向きにして、ベース部31aにセットする際に、底面11fを当接させる。ストレッチ36は、ベース部31aの短辺側の他側角部に取り付けられたL字状の板材で形成され、仕上げ加工用治具11を横向きにセットした際に、仕上げ加工用治具11の側面11cと側面11eとがストレッチ36に当接して位置決めされる。
【0052】
テーブル37は、仕上げ加工用治具11をベース部31aに縦向きにセットした際に、上面37aが固定側口金19の載置面19aと面一になる略直方体状に形成される。また、上面37aには、板状試料S1の寸法を計る目盛り37bが設けられている。
【0053】
テーブル37は、下面に突部(図示せず)が設けられており、仕上げ加工用治具11をベース部31aに縦向きにセットし、ベース部31aの所定位置に設けた装着孔(図示せず)に突部を挿入させると、テーブル37の胴部の一側面37cが作業面11aに当接するとともに、載置面19aと上面37aとが密着する。
【0054】
さらに、テーブル37は、不使用時に保管する際には、ベース部31aのヒンジ部材34の側部に設けた装着孔(図示せず)に突部を挿入させて、ヒンジ部材34の側部に配置させておく。
【0055】
マイクロスコープ32は、
図2に示されるように、仕上げ加工用治具11をベース部31aに横向きにセットし、支持アーム33を起立状態とした時に、作業面11aの直上領域に配置され、さらに、第1送りハンドル33cや第2送りハンドル33dを操作して、固定側口金19の上方に配置させて、仕上げ加工した板状試料S1の断面を撮影する。また、撮影した映像は、無線通信によって外部ディスプレイで確認できるようにしている。
【0056】
次に、上述の仕上げ加工用治具11とマイクロスコープスタンド31とを用いて板状試料S1を切削して仕上げ加工をする手順について説明する。
【0057】
なお、本形態例で仕上げ加工される板状試料S1は電池部品に用いられる薄板を長方形状にカットしたもので、横寸法が27mm、縦寸法が10mm、板厚が2mmとなっている。固定側口金19は、奥行きの寸法が10mmとなっている。
【0058】
また、以下の説明で述べる「前」「後」「左」「右」「上」「下」は、ベース部31aにセットする仕上げ加工用治具11の向きに拘わらず、ベース部31aの短辺側の一側を後方、短辺側の他側を前方とした際の「前」「後」「左」「右」「上」「下」に対応させている。
【0059】
まず、
図1に示されるように、マイクロスコープスタンド31の支持アーム33をベース部31aの後方に倒した倒伏状態とし、仕上げ加工用治具11をベース部31aに縦向きにセットし、サポートプレート35に立てかける。テーブル37を作業面11aの前方に装着し、テーブル37の一側面37cを作業面11aに当接させるとともに、上面37aと固定側口金19の載置面19aとを密着させる。これにより、仕上げ加工用治具11は、サポートプレート35とテーブル37とに挟まれて位置決めされる。
【0060】
このとき、刃物ユニット13は、ガイド溝12の側面11b側に配置させ、スライダー固定ねじ16eを締め込み、移動を規制しておく。さらに、刃物部材17も、刃物固定ノブ16kの締め込みにより移動を規制しておく。
【0061】
そして、
図11に示すように、ハンドル21の操作部21bを回して、可動側口金20を上昇させる。次いで、テーブル37の上面37aに板状試料S1を載置するとともに、載置面19a側に滑らせ、板状試料S1の横方向を左右方向、縦方向を前後方向に向けた状態で、板状試料S1を昇降ステージ15aに当接させた状態とする。
【0062】
このとき、板状試料S1の縦寸法が10mmで、固定側口金19の奥行きの寸法が10mmとなっていることから、板状試料S1の作業面11aからの突出量は0となっている。なお、板状試料S1のサイズが不明である場合は、板状試料S1を載置面19aにセットする前に、テーブル37の目盛り37bを目安に板状試料の寸法を把握しておくと、仕上げ加工後の板状試料寸法を計算しながら、板状試料S1を仕上げ加工することができる。
【0063】
板状試料S1をセットした後、マイクロメータ15bを回転させて昇降ステージ15aを、0.01mm単位で前方に移動させ、板状試料S1の初回の切削加工代を0.01mm単位で設定する。加工可能サイズは、最小2.0mm~最大10.0mmであるが、切削加工代が大きすぎると板状試料内部までの加工によるダメージ(ひび割れ・層間剥離等)を受けるおそれがあり、対象材料や元々の板状試料ダメージの具合によって、最適な切削加工代は異なってくるものの、初回は、概ね0.2mm以下で加工するのがよい。
【0064】
板状試料S1の切削加工代を設定した後、
図12に示すように、ハンドル21の操作部21bを回して、可動側口金20を下降させる。
図13に示されるように、外側口金体20aの先端面20nと固定側口金19の載置面19aとが当接すると、前述のように、板状試料クランプ部20fと固定側口金19との間で一定の力で板状試料S1をクランプする。
【0065】
次に、仕上げ加工用治具11を左右いずれかにスライドさせて、仕上げ加工用治具11をベース部31aから取り外す。テーブル37は、ヒンジ部材34の側部に保管する。
【0066】
図2に示されるように、仕上げ加工用治具11をベース部31aに横向きにセットし、側面11cと側面11eとをストレッチ36に当接させて位置決めする。
【0067】
そして、支持アーム33を回動させて起立状態とし、マイクロスコープ32を作業面11aの直上領域に配置するとともに、第1送りハンドル33cと第2送りハンドル33dとを操作して、固定側口金19の上方に配置させる。
【0068】
スライダー固定ねじ16eを緩め、刃物ホルダー16がガイド溝12に沿って移動可能な状態とするとともに、刃物固定ノブ16kを操作して、刃物17aの底辺部17cと作業面11aとが隙間0の状態となっているかを確認する。確認後、刃物ユニット13を前方にスライドさせる。これにより、刃物17aが刃物移動経路面R1を摺動し、板状試料S1の切削加工代として作られた突出部分を長手方向に(断面に沿って)切削する。
【0069】
切削加工時に発生した加工カスは、カス落下用スリット24aからカス回収ボックス24へ落下し、作業面11aを綺麗な状態に保つ。さらに、刃物17a、特に、刃面となる底辺部17cに付着した加工カスを清掃する。
【0070】
次に、刃物固定ノブ16kを緩め、刃物支持部材17bを左側にスライドさせ、刃物ホルダー16をスライドさせても刃物17aが板状試料S1に接触しない位置(刃物移動経路面R1から外れた位置)に配置し、刃物固定ノブ16kを締めて固定する。この状態で刃物ホルダー16を後方にスライドさせて、初期位置まで移動させる。
【0071】
左側にスライドさせた刃物支持部材17bを初期位置に戻して刃物固定ノブ16kを締めて固定する。板状試料S1の加工断面は、マイクロスコープ32によって撮影され、撮影した映像によって、目的の加工断面が得られたか否かが確認される。この時点で、目的の加工断面が得られていれば、仕上げ加工は終了となる。
【0072】
一方、目的の加工断面が得られていない場合は、再度加工が繰り返される。再度加工を開始する際は、まず、板状試料S1をアンクランプする。このとき、可動側口金20をアンクランプしすぎると、板状試料S1が倒れて固定側口金19の奥側に入り込むおそれがあることから、マイクロスコープ32で、板状試料S1の状態を確認しながら操作部21bを回動させると良い。
【0073】
マイクロメータ15bを操作して、板状試料S1の2回目の切削加工代を作業面11aから上方に突出させる。次いで、操作部21bを回動させて板状試料S1をクランプし、刃物ホルダー16を前方にスライドさせて、板状試料S1の切削加工代を加工する。この手順を繰り返して、目的の加工断面が得られるまで、加工を繰り返す。また、仕上げ加工を繰り返す際には、マイクロメータ15bの操作により、板状試料S1の削り量(切削加工代)を徐々に少なくしていくとよい。
【0074】
また、刃物17aが摩耗した際には、刃物部材17の交換を行う。刃物部材17を交換する際は、まず、刃物固定ノブ16kを緩めて取り外し、次いで、カラー16jを取り外す。取付ボルト16m,16mを取外し、本体部16bをスライダー16aから取り外す。この時、刃物17aの刃先を痛めないように、片手で刃物17aを抑えながら本体部16bを取り外すと良い。交換する刃物部材17をスライダー16aの上面から取り除く。
【0075】
新品の刃物部材17のスライド孔17e内に、第1雌ねじ孔を配置した状態で、スライダー16aの上面に配置する。次いで、刃物17aの刃先を痛めないように注意しながら、本体部16bをスライダー16aに取り付ける。カラー16jを元の位置に配置し、刃物固定ノブ16kをカラー16jに挿通して締め込むとともに、取付ボルト16m,16mを締結する。
【0076】
また、刃物17aの取付角度を変更する際は、刃物固定ノブ16kと取付ボルト16m,16mを緩める。
図14(b)に示されるように、スライダー16aに対して本体部16bを傾けるとともに、角度目盛18を目安に、刃物部材17をガイド溝12と直交する直交線OLに対して傾けて配置し、刃物固定ノブ16kと取付ボルト16m,16mを締め込むことにより、刃物17aを所定の取付角度に変更して固定させることができる。
【0077】
さらに、板状試料S1をクランプするクランプ圧を変更させたい時には、まず、操作部21bを回動させて可動側口金20を最大限に開いた状態とする。操作部21bから、ボルト21dを取り外すとともにスクリュープラグ21eを緩め、操作部21bを軸部材21aから取り外す。次いで、各第2スプリング収容孔20hの外側開口部を閉塞しているスクリュープラグ20iを取り外す。スプリング22を取外し、スプリング力の異なる新たなスプリングと交換する。新しいスプリングを装着後、スクリュープラグ20iで第2スプリング収容孔20hの外側開口部を閉塞する。軸部材21aに操作部21bを嵌め、ボルト21dとスクリュープラグ21eとで固定する。弾性力の低いスプリングと交換すれば、クランプ圧を小さくでき、弾性力の高いスプリングと交換すれば、クランプ力を大きくすることができる。
【0078】
また、仕上げ加工用治具11及びマイクロスコープスタンド31を不使用時に収納する際には、
図16乃至
図18に示すように、仕上げ加工用治具11をベース部31aに縦向きにセットし、サポートプレート35に立てかけるとともに、テーブル37を作業面11aの前方に装着する。マイクロスコープスタンド31の支持アーム33を回動させて起立状態とし、マイクロスコープ32をテーブル37の前方に配置させる。これにより、仕上げ加工用治具11及びマイクロスコープスタンド31をコンパクトに収納させることができる。
【0079】
上述のように、本発明の仕上げ加工用治具11によれば、加工代設定機構15にて板状試料S1を作業面から突出させ、クランプ機構14にて板状試料S1を厚み方向にクランプして、クランプ位置に固定し、刃物ユニット13を板状試料S1の厚み方向と直交する方向にスライドさせることにより、刃物17aで板状試料S1の切削加工代として作られた突出部分を長手方向に(断面に沿って)切削する。そして、刃物17aは、刃物移動経路面R1を隙間0(ゼロ)の状態で摺動し、固定側口金19と可動側口金20とは、刃物17aが入る断面の際(きわ)、つまり、試料断面と刃物移動経路面R1との境目を正確にクランプする。これにより、板状試料S1の断面に与える力を極小にして断面の変形をなくすことが可能となり、観察に適した良好な断面を得ることができる。
【0080】
その上、クランプ機構14は、スプリング22,22の弾性力を得て一定の力(定圧)で管理されたクランプ圧で板状試料S1をクランプすることから、過度の押し付けによる板状試料S1の破壊を防止し、観察に適した良好な断面を安定して得ることができる。
【0081】
また、固定側口金19及び可動側口金20が互いの直角部C1,C2を含む口金側面同士の間で板状試料S1をクランプするので、口金側面の上端部を板状試料S1の板面に密着させることが可能となり、固定側口金19及び可動側口金20の両口金は、板状試料S1の断面の際(きわ)を確実にクランプすることができる。
【0082】
さらに、仕上げ加工用治具11を、マイクロスコープ32を備えたマイクロスコープスタンド31と組み合わせて使用するので、マイクロスコープ32で板状試料S1の断面を確認しながら仕上げ加工を行うことが可能となり、断面の状態を容易に把握することができる。とりわけ、マイクロスコープスタンド31は、起倒可能な支持アーム33を備えていることから、仕上げ加工用治具11のセットも容易なものとなり、断面観察における作業性の向上を図ることができる。
【0083】
また、本形態例では、刃物17aや固定側口金19及び可動側口金20をセラミック等の絶縁体で形成したことにより、仕上げ加工を繰り返えしても、板状試料S1の充・放電状態等の観察や試験に悪影響を与えるおそれがない。
【0084】
さらに、仕上げ加工用治具11は、構造がシンプルで小型に形成することができることから、グローブボックス内で板状試料S1を仕上げ加工することも可能となる。
【0085】
なお、本発明は、上述の形態例に限るものではなく、仕上げ加工用治具は、電池、電子部品の他にも、例えば、集積回路、高分子材料、有機材料等に幅広く適用することができる。また、主要部品(刃物等)の構成、使用態様は上述の通りであるが、その他に、治具構成部品の材質や形状、大きさ等、さらには、マイクロスコープ及びスタンドの仕様等についても任意である。加えて、板状試料の大きさや形状については観察目的等に応じて適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0086】
11…仕上げ加工用治具、11a…作業面、11b,11c,11d,11e…側面、11f…底面、12…ガイド溝、12a…上部開口、12b…溝底部、12c…側面、13…刃物ユニット、14…クランプ機構、14a…口金収容孔、14b…ガイド部材、15…加工代設定機構、15a…昇降ステージ、15b…マイクロメータ、16…刃物ホルダー、16a…スライダー、16b…本体部、16c…傾斜面、16d…上面、16e…スライダー固定ねじ、16f…カラー挿通孔、16g…ボルト挿通孔、16h…保持孔、16i…安全カバー、16j…カラー、16k…刃物固定ノブ、16m…取付ボルト、17…刃物部材、17a…刃物、17b…刃物取付部材、17c…底辺部、17d…摘まみ片、17e…スライド孔、18…角度目盛、19…固定側口金、19a…載置面、19b…上面、20…可動側口金、20a…外側口金体、20b…内側口金体、20c…ジョイント部挿入孔、20d…中心軸部材装着孔、20e…スプリング収容部、20f…板状試料クランプ部、20g…第1スプリング収容孔、20h…第2スプリング収容孔、20i…スクリュープラグ、20j…中心軸部材挿通孔、20k…中心軸部材、20m,20n…先端面、20p,20q…上面、21…ハンドル、21a…軸部材、21b…操作部、21c…ジョイント部、21d…ボルト、21e…スクリュープラグ、22…スプリング、23…カバー部材、23a…雌ねじ孔、24…カス回収ボックス、24a…ガス落下用スリット、31…マイクロスコープスタンド、31a…ベース部、32…マイクロスコープ、33…支持アーム、33a…第1支持アーム、33b…第2支持アーム、33c…第1送りハンドル、31d…第2送りハンドル、34…ヒンジ部材、35…サポートプレート、36…ストレッチ、37…テーブル、37a…上面、37b…目盛り、37c…一側面、S1…板状試料、R1…刃物移動経路面、C1,C2…直角部
【要約】
【課題】板状試料の断面を仕上げ加工し、観察に適した断面を形成する仕上げ加工用治具及び仕上げ加工用治具のスタンドを提供する。
【解決手段】仕上げ加工用治具11は、ガイド溝12に沿ってスライドしながら、作業面11a上に突出した板状試料の突出部分を切削して板状試料の仕上げ加工を行う刃物ユニット13と、板状試料をクランプ位置に固定するクランプ機構14と、前記突出部分により作られる切削加工代を設定する加工代設定機構15とを備える。作業面11aには刃物移動経路面R1が設けられ、刃物ユニット13は、刃物移動経路面R1に摺接する刃物17aを有する。クランプ機構14は、固定側口金19と、固定側口金に向けて移動可能、かつ、スプリング22の弾性力を得て板状試料を厚み方向に一定の力で押圧可能な可動側口金20とを有する。刃物移動経路面R1には、板状試料の固定状態で、両口金の上面19b,20qが含まれる。
【選択図】
図4