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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】X線診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
A61B6/00 320Z
A61B6/00 360B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018074890
(22)【出願日】2018-04-09
(65)【公開番号】P2019180787
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 正典
(72)【発明者】
【氏名】奈良部 優介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 吉幸
(72)【発明者】
【氏名】井川 勝家
(72)【発明者】
【氏名】松崎 武夫
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-215275(JP,A)
【文献】特開2012-075782(JP,A)
【文献】特開2008-307130(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0013005(US,A1)
【文献】特開2009-189556(JP,A)
【文献】特開2004-073578(JP,A)
【文献】特開2007-159913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を発生させるX線管と、
前記X線の照射範囲を制限する絞り機構と、
前記X線管と対向して配置され、前記X線を検出するX線検出器と、
第一表示領域及び第二表示領域を有する表示部と、
操作者からの操作を受け付ける第一入力部および第二入力部と、
前記第一入力部への操作に応じて、第一照射範囲に前記X線が照射されるように前記絞り機構および前記X線管の制御を行い、前記第二入力部への操作に応じて、第二照射範囲に前記X線が照射されるように前記絞り機構及び前記X線管の制御を行う照射制御部と、
前記X線検出器による前記X線の検出に基づいて、X線画像を順次生成する画像生成部と、
前記X線の照射に応じて順次生成される前記X線画像を、前記X線の照射と並行して前記第一表示領域に表示するように前記表示部を制御する表示制御部と、
を備え、
前記第一照射範囲及び前記第二照射範囲は、互いに同一の面積と、互いに異なる中心位置とを有しており、
前記表示制御部は、前記第一照射範囲への照射が停止された後に前記第二照射範囲への照射が行われると、前記第二照射範囲への照射に応じて順次生成されるX線画像を当該照射と並行して前記第一表示領域に表示するとともに、前記第一照射範囲への照射が停止される直前に前記第一照射範囲への照射によって生成されたX線画像に基づく静止画像を前記第二表示領域に表示するように前記表示部を制御する、
前記表示制御部は、前記第一入力部又は前記第二入力部の操作に応じて前記第一表示領域と前記第二表示領域との大きさの比を変更する場合に、それぞれアスペクト比を保ったまま前記第一表示領域及び前記第二表示領域のうちの一方を拡大して他方を縮小し、前記第一表示領域と前記第二表示領域とを重ねず、且つ前記第一表示領域及び前記第二表示領域全体を前記表示部上に表示させる、
X線診断装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記第二照射範囲への照射が停止された後に前記第一照射範囲への照射が行われると、前記第一照射範囲への照射に応じて生成されるX線画像を順次前記第一表示領域に表示するとともに、前記第二照射範囲への照射が停止される直前に前記第二照射範囲への照射によって生成されたX線画像に基づく静止画像を前記第二表示領域に表示するように前記表示部を制御する、請求項1に記載のX線診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置は、手技中に、被検体の患部近傍を拡大した表示と、患部周辺の広い部分に係る表示とを切り替えて使用されることがある。このような使用の態様において、患部近傍を拡大した表示を選択しているときには、被検体の被曝線量の低減のため、当該表示に係る患部近傍のみにX線を照射することが求められる。
【0003】
しかしながら、患部近傍のみにX線を照射する場合、患部周辺の広い範囲に亘る画像を得ることができないため、手技者自身又はその手技者以外の者の、患部近傍を拡大表示しているとき患部周辺の広い部分に亘る画像をも参照したいという要望には応えることができない。また、手技者が患部周辺の広い部分に亘る画像を表示しているとき、その手技者自身又はその手技者以外の者が患部近傍の拡大画像を参照したい場合もある。
【0004】
さらに、照射範囲を頻繁に切り替えながら手技を行いたいという要望もあり、操作は簡易であることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-075782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、簡易な操作で広狭二種類の範囲に係る画像を並列表示できるX線診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するため、実施形態のX線診断装置は、X線を発生させるX線管と、X線の照射範囲を制限する絞り機構と、X線管と対向して配置され、X線を検出するX線検出器と、第一表示領域及び第二表示領域を有する表示部と、操作者からの操作を受け付ける第一入力部および第二入力部と、第一入力部への操作に応じて、第一照射範囲にX線が照射されるように絞り機構およびX線管の制御を行い、第二入力部への操作に応じて、第二照射範囲にX線が照射されるように絞り機構及びX線管の制御を行う照射制御部と、X線検出器によるX線の検出に基づいて、X線画像を順次生成する画像生成部と、X線の照射に応じて順次生成されるX線画像を、X線の照射と並行して第一表示領域に表示するように表示部を制御する表示制御部と、を備える。また、表示制御部は、第一照射範囲への照射が行われた後に第二照射範囲への照射が行われると、第二照射範囲への照射に応じて順次生成されるX線画像を当該照射と並行して第一表示領域に表示するとともに、先に行われた第一照射範囲への照射によって生成されたX線画像に基づく静止画像を第二表示領域に表示するように表示部を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第一の実施形態のX線診断装置のうち、Cアーム装置、寝台、表示装置及び吊持機構を示す外観斜視図
図2】第一の実施形態のX線管、コリメータ及びX線検出器を示す模式図
図3】第一の実施形態のX線検出器の模式的斜視図
図4】第一の実施形態のX線検出器の、図3のA-A面による模式的縦断面図
図5】第一の実施形態のフットスイッチ装置の外観斜視図
図6】第一の実施形態の制御系を示す機能ブロック図
図7】第一の実施形態の透視モードにおける制御を示すフローチャート
図8】第一の実施形態における第一モニタ及び第二モニタの表示の切り替えを示す図
図9】第二の実施形態におけるモニタの表示を表す図
図10】第二の実施形態の制御系を示す機能ブロック図
図11】第三の実施形態のCアーム台車装置の外観側面図
図12】第三の実施形態の制御系を示す機能ブロック図
図13】第三の実施形態のモニタ台車装置の外観正面図
図14】第三の実施形態の操作パネルの平面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、複数の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0010】
<第一の実施形態>
第一の実施形態のX線診断装置は、主に血管内治療や外科的手術の手技に用いられるものである。まず、図1から図8を参照しながら、本実施形態によるX線診断装置の各部の構造について説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態のX線診断装置は、Cアーム102、X線発生装置200、X線検出装置300及び支持アーム106を有するCアーム装置101を備える。Cアーム102はC字形状に構成された支持装置であり、その一端にはX線発生装置200が設けられ、他端にはX線検出装置300がX線発生装置200と対向するように設けられている。Cアーム102は、支持機構106を介して、検査室の天井に設けられた吊持機構117に取り付けられている。吊持機構117は、Cアーム装置101を前後左右に駆動することができ、また、鉛直軸まわりにCアーム装置101を回動させることができる。支持機構106は、Cアーム102を、その弧に沿う方向Dに駆動することができる。
【0012】
図2に示すように、X線発生装置200は、その内部にX線管201及びコリメータ202を備える。図示はしないが、X線管201は、電子線を発するフィラメントと、この電子線を受け取ってX線を発するターゲットとを備える。コリメータ202は矩形の開口203を有している。コリメータ202は、駆動回路205(図6参照)からの駆動電圧が印加されることにより動作し、開口203の形状及び大きさが変化するようになっている。上記ターゲットから発せられたX線は、コリメータ202によって絞られ、開口203の形状に応じた形状及び大きさとなって、X線検出器301の方向へ放射される。すなわち、X線検出器301上における照射領域306は、開口203と相似な矩形となる。
【0013】
X線検出装置300は、X線検出器301及びX線画像作成回路302(図6参照)を備える。X線検出器301は、X線発生装置200から放射されたX線を検出し、電気信号としてX線画像作成回路302に出力するものであり、図3及び図4に示すように、フォトダイオード層303及びフォトダイオード層305の間にシンチレータ層304が挟まれた構造をしている。シンチレータ層304は、例えばタリウムをドープしたヨウ化セシウムからなり、入射したX線を吸収してシンチレーション光を発する。フォトダイオード層303及びフォトダイオード層305は、図示は省略するが、多数のフォトダイオードが二次元配列されたものであり、シンチレータ層304から発せられたシンチレーション光を電気信号に変換する。ここで、フォトダイオード層303は、TFTアレイ基板によるものであり、一方、フォトダイオード層305は、CMOS型のゲート構造となっている。フォトダイオード層305においては、フォトダイオード層303よりも高密度にフォトダイオードが配列されている。
【0014】
フォトダイオード層305は、撮像面内においてフォトダイオード層303の中央部に位置し、フォトダイオード層305は、フォトダイオード層303に比べて面積が小さくなっている。換言すると、フォトダイオード層305の外周は、撮像面内においてフォトダイオード層303の外周よりも内側にある。
【0015】
X線発生装置200から放射されたX線は、被検体Pを通過し、X線検出器へと入射する。ここで、まずフォトダイオード層303に入射するが、フォトダイオード層303の検出波長外となっているので、フォトダイオード303を通過する。その後、シンチレータ層304に入射したX線は、上述の通り、シンチレーション光に変換され、このシンチレーション光が、フォトダイオード層303又はフォトダイオード層305によって検出される。
【0016】
上述したように、フォトダイオード層305は、フォトダイオード層303よりも高密度にフォトダイオードが形成されたものであるので、フォトダイオード層305によれば、フォトダイオード層303を用いてX線の検出を行った場合よりも高解像度の像(空間分解能が高い像)を得ることができる。しかし、一方で、フォトダイオード層303に比べて、フォトダイオード1つあたりの入射光子数が減少し、SN比が悪くなってしまうため、より高強度のX線を被検体に照射する必要が生じる。なお、本願において、X線の「強度」とは、単位時間に光の進行方向に垂直な単位面積を通過する光子の数を表すものとする。
【0017】
なお、本実施形態によるX線検出器301は、フォトダイオード層303とフォトダイオード層305とがX線の照射方向に関して重なった構造を有しているが、フォトダイオード層303とフォトダイオード層305とが同一面内にあるように形成することもできる。この場合、フォトダイオード層305が形成された領域には、フォトダイオード層303が無いため、フォトダイオード層305による検出範囲よりも広い範囲について撮像を行う場合においては、フォトダイオード層303とフォトダイオード層305の両方が用いられる。このとき、フォトダイオード層305を構成するフォトダイオードのうち幾つかの出力を束ねることによって、SN比を確保することができる。これにより、被検体の被曝を低減することができる。
【0018】
図1に示すように、本実施形態によるX線診断装置は、表示装置400を備える。表示装置400は、第一モニタ401及び第二モニタ402の二つのモニタを備え、それぞれ相異なる静止画像又は動画像を表示することができる。勿論、第一モニタ401及び第二モニタ402に同一の静止画像又は動画像を表示することもできる。第一モニタ401の表示面は、特許請求の範囲の記載における第一表示領域として機能し、第二モニタ402の表示面は、特許請求の範囲の記載における第二表示領域として機能する。また、本実施形態においては、第一モニタ401及び第二モニタ402を有する表示装置400が、特許請求の範囲の記載における表示部として機能するが、第一モニタ401及び第二モニタ402が離隔した位置に設けられていても良い。この場合、離隔した位置にある第一モニタ401と第二モニタ402との組み合わせによって、特許請求の範囲の記載における表示部としての機能が実現される。
【0019】
また、本実施形態によるX線診断装置は、寝台103を備える。寝台103は、その天板104上に被検体Pを載置するものであり、高さ方向、縦方向、横方向の3軸方向に天板104を動かすことができ、手技撮像に好適な位置へ自在に被検体Pを動かすことができる。撮像時には、被検体Pの患部がX線発生装置200とX線検出装置300との間に配されるように、天板104及びCアーム102を動かす。これにより、被検体Pの患部周辺の像を得ることができる。
【0020】
寝台103には、図1に示すように、操作パネル416が設けられており、この操作パネル416は、位置決め操作部416a及び視野操作部416b(図6参照)を有する。位置決め操作部416aは、吊持機構117、支持機構106及び寝台103を操作するためのものであり、制御装置500が、位置決め操作部416aへの入力に基づいて、吊持機構117、支持機構106及び寝台103を駆動制御する。視野操作部416bは、照射範囲の設定に供するものであり、制御装置500は、視野操作部416bへの入力に基づいて、コリメータ202の制御信号を駆動回路205に送信する。
【0021】
本実施形態のX線診断装置は、図5に示すフットスイッチ装置404を備える。フットスイッチ装置404は、手技者の足元に配置されるものであり、手技者によって足で踏まれて操作される。フットスイッチ装置404は、狭範囲透視スイッチ404a、広範囲透視スイッチ404b、サブスイッチ404c及びサブスイッチ404dを備える。詳しくは後述するが、狭範囲透視スイッチ404aを踏んで操作すると、コリメータ202の開口203を狭めた状態、すなわち照射範囲を小さくした状態で、密なフォトダイオード層305を用いて透視が行われる。一方、広範囲透視スイッチ404bを踏んで操作すると、コリメータ202の開口203を拡げた状態、すなわち照射範囲を大きくした状態で、粗なフォトダイオード層303を用いて透視が行われる。サブスイッチ404a及びサブスイッチ404bは、操作卓118から予め設定を行うことにより、手技者が使いやすいように種々の機能を割り当てることができる。
【0022】
図6を参照しながら、本実施形態における制御系について説明する。本実施形態のX線診断装置は、上述のX線発生装置200、X線検出装置300、表示装置400等のほか、操作卓118、制御回路500及び記憶回路501を備える。これら各部は、バス502に接続されており、このバス502を介して他の各部と送受信を行うことができる。なお、本実施形態の制御系では、一本のバス502を介して各部を接続しているが、この他、例えば、網目状に各部を接続したり、集線装置を設けてこれに各部を接続したりする等、様々なトポロジーで各部を接続し得る。
【0023】
操作卓118は、Cアーム装置101、表示装置400等が配される検査室とは別室である操作室に配されるものであり、撮影条件の設定操作、画像処理操作、検査室内の装置の操作、ファイルの管理に関する操作等に供するものである。操作卓118は、制御回路507、記憶回路508、システムモニタ413、第三モニタ414、第四モニタ415、入力装置412等を備える。
【0024】
制御回路507は、システムモニタ413、第三モニタ414及び第四モニタ415に表示する画像を作成する表示画像作成機能507aを有する。
【0025】
また、制御回路507は、照射範囲を小さくした状態で密なフォトダイオード層305を用いて撮影する場合の撮影条件を設定する狭範囲撮影条件設定機能507bと、照射範囲を大きくした状態で粗なフォトダイオード層303を用いて撮影する場合の撮影条件を設定する広範囲撮影条件設定機能507cとを有する。狭範囲撮影条件設定機能507bにより設定された撮影条件に関するデータは、記憶回路501の狭範囲撮影条件記録領域501cに格納される。一方、広範囲撮影条件設定機能507cにより設定された撮影条件に関するデータは、記憶回路501の広範囲撮影条件記録領域501dに格納される。
【0026】
システムモニタ413は、撮影条件、保存されたファイルの情報、被検体の情報等を表示する。第三モニタ414及び第四モニタ415の表示については後述する。
入力装置412は、図示はしないが、キーボード、マウス等により構成される。入力装置412によってシステムモニタ413上に表示されるGUIを操作することにより、撮影条件の変更、ファイルの読み出し・保存、被検体情報の登録・変更等を行うことができる。
【0027】
操作卓118は、入力装置412への入力に基づいて、制御回路507の狭範囲撮影条件設定機能507bによって、開口203を狭めた状態、すなわち照射範囲を小さくした状態でX線を照射する時の撮影条件を設定する狭範囲撮影条件設定部として機能する。また、操作卓118は、入力装置412への入力に基づいて、制御回路507の広範囲撮影条件設定機能507cによって、開口203を拡げた状態、すなわち照射範囲を大きくした状態でX線を照射する時の撮影条件を設定する広範囲撮影条件設定部として機能する。
【0028】
記憶回路508は、システムモニタ413、第三モニタ414及び第四モニタ415の表示設定に関する情報等を記憶するメモリである。
【0029】
制御回路500は、本実施形態によるX線診断装置の制御系において種々の制御を司るプロセッサであり、特に、上述の最終画像保持機能500cのほか、操作パネル403やフットスイッチ404からの入力に基づいてX線発生装置を制御する照射制御機能500bや、X線検出装置300や記憶回路501から受け取った画像データに基づいて第一モニタ401又は第二モニタ402に表示する画像を作成する表示画像作成機能500aを有する。
【0030】
記憶回路501は、X線検出装置300によって撮像された画像のデータ、撮影条件の設定に関するデータ、表示装置400の表示設定に関するデータ等を記憶するメモリである。
【0031】
制御回路500は、操作卓118の制御回路507からの入力信号に基づいて、各撮影条件におけるコリメータ202の開口203の形状及び大きさ、X線管201の管電流及び管電圧等のパラメータを算出し、そのパラメータに関するデータを記憶回路501の狭範囲撮影条件記憶領域501c又は広範囲撮影条件記憶領域501dに格納する。また、制御回路500は、フットスイッチ404からの入力信号に基づいて、上記撮影条件に関する種々のパラメータに関するデータを記憶回路501の狭範囲撮影条件記憶領域501c又は広範囲撮影条件記憶領域501dから読み出し、その読み出したデータに基づいて、コリメータ202の駆動回路205に制御信号を出力するとともに、X線発生装置200の高電圧発生回路204へ制御信号を出力する。
【0032】
上述したように、X線は、X線検出装置300に入射すると、X線検出器301により検出されて電気信号に変換される。X線画像作成回路302は、この電気信号を処理し、画像データとして出力する。
【0033】
X線画像作成回路302から出力された画像データは、制御回路500によって、記憶回路501内の狭範囲画像記憶領域501a又は広範囲画像記憶領域501bに格納されるとともに、制御回路500の表示画像作成機能500aによって画像処理されて第一モニタ401上にリアルタイム表示(図面において「RT表示」と表す。)される。ここで、当該画像データが狭範囲画像に係る場合には、当該画像データは記憶回路500のうち狭範囲画像記憶領域501aに記憶され、一方、当該画像データが広範囲画像に係る場合には、当該画像データは記憶回路500のうち広範囲画像記憶領域501bに記憶される。
【0034】
なお、本願において「リアルタイム表示」とは、厳密に、撮像された瞬間に表示されることを意味するものではなく、手技者が、自ら行っている手技の進行を確認できる程度の即時性をもって動画表示されるものであれば良い。
【0035】
また、狭範囲画像記憶領域501a、広範囲画像記憶領域501b、狭範囲撮影条件記憶領域501c及び広範囲撮影条件記憶領域501dは、記憶回路501中において、同一の記憶装置上にあっても良いし、異なる記憶装置上にあっても良い。また、同一の記憶装置上にある場合、これらの記憶領域は、パーティションで区切られていても良いし、同一パーティション上における一時的な領域であっても良い。さらに、ガベージコレクション等の動作に伴って記憶回路500上において移動する領域であっても良い。また、これらの領域のうち一部又は全部が、別の装置上の記憶回路、例えば、操作卓118の記憶回路508上にあっても良い。
【0036】
制御回路500は、最終画像保持(Last Image Hold:LIH)機能500cを有する。最終画像保持機能とは、X線の照射が停止された場合に、照射停止直前に撮影された静止画像を表示し続ける機能である。X線の照射中には、X線画像作成回路302から撮像データが出力され、この撮像データに基づく画像が第一モニタ401上にリアルタイム表示されるが、X線の照射が停止されると、X線画像作成回路302から撮像データが出力されなくなる。このとき、制御回路500は、記憶回路501上の狭範囲画像記憶領域501a又は広範囲画像記憶領域501bから、直近の撮像データを読み出し、当該直近の撮像データに基づく画像を第一モニタ401上に表示する。これにより、第一モニタ401上の表示をX線照射停止前の状態に保持することができる。
【0037】
以下において、照射範囲を小さくした状態で撮影した画像を「狭範囲画像」と称し、狭範囲画像に対応する照射範囲に比して照射範囲を大きくした状態で撮影した画像を「広範囲画像」と称する。また、照射範囲を小さくした状態で撮影した画像のうち直近のものを「狭範囲撮影による最終画像」と称し、狭範囲画像に対応する照射範囲に比して照射範囲を大きくした状態で撮影した画像のうち直近のものを「広範囲撮影による最終画像」と称する。
【0038】
次に、透視撮影を行う際の制御フローについて説明する。透視撮影を開始する前に、狭範囲画像を撮影する際の撮影条件及び広範囲画像を撮影する際の撮影条件を、操作卓118によって設定する。これら両撮影条件が設定されると、透視撮影を行う操作を受け付ける透視モードを開始する。この透視モードにおいては、図7のフローチャートに示されるS1~S22からなる制御が行われる。
【0039】
透視モードが開始されると(S1)、まず、終了操作が行われているかどうかの判定が行われる(S2)。終了操作が行われていない場合(S2でNo)、第一モニタ401が狭範囲撮影による最終画像保持の状態にあるか否かを判定する(S3)。
【0040】
第一モニタ401が狭範囲撮影による最終画像を保持した状態にある場合(S3でYes)、フットスイッチ404の狭範囲透視スイッチ404aがオンであるかどうかを判定する(S4)。狭範囲透視スイッチ404aがオンである場合(S4でYes)、X線を照射しながら第一モニタ401に狭範囲画像をリアルタイム表示し(S5)、狭範囲透視スイッチ404aがオンである限り狭範囲画像のリアルタイム表示を継続する(S6でYes)。このとき、上述したように、X線画像作成回路302から出力されるデータは、次々と狭範囲画像記憶領域501aに上書きされて記憶される。そして、狭範囲透視スイッチ404aがオフとなると(S6でNo)、リアルタイム表示は停止するが、上述した最終画像保持機能500cにより、狭範囲撮影による最終画像を第一モニタ401に表示しつづけ(S7)、S2の判定へと戻る。
【0041】
S4の判定において、狭範囲透視スイッチ404aがオンでないと判定された場合(S4でNo)、広範囲透視スイッチ404bがオンであるかどうかの判定を行う(S8)。広範囲透視スイッチ404bがオンである場合(S8でYes)、狭範囲画像記憶領域501aに記憶されている狭範囲撮影による最終画像、すなわち、第一モニタ401に表示されていた画像を、第二モニタ402に表示し(S9)、第一モニタ401上に広範囲画像をリアルタイム表示する(S10)。このとき、上述したように、X線画像作成回路302から出力されるデータは、次々と広範囲画像記憶領域501bに上書きされて記憶される。そして、広範囲透視スイッチ404bがオンである限り広範囲画像のリアルタイム表示を継続する(S11でYes)。広範囲透視スイッチ404bがオフとなると(S11でNo)、上述した最終画像保持機能500cにより、広範囲撮影による最終画像を第一モニタ401に表示し続け(S12)、S2の判定へと戻る。
【0042】
S8の判定において、広範囲透視スイッチ404bがオンでないと判定された場合(S8でNo)、第一モニタ401及び第二モニタ402の表示を変更せずに終了判定S2へと戻る。
【0043】
S3の判定において、第一モニタ401が狭範囲撮影による最終画像保持の状態にない場合(S3でNo)、広範囲透視スイッチ404bがオンであるかどうかを判定する(S13)。広範囲透視スイッチ404bがオンである場合(S13でYes)には、上述したS5からS7において狭範囲画像と広範囲画像とを入れ替えた制御が行われる(S14からS16)。すなわち、広範囲透視スイッチ404bがオンである間、広範囲画像を第一モニタ401にリアルタイム表示し(S14、S15でYes)、広範囲透視スイッチ404bがオフとなると(S15でNo)、第一モニタ401上に広範囲撮影による最終画像を保持し(S16)、S2の判定に戻る。
【0044】
広範囲透視スイッチ404bがオンでない場合(S13でNo)には、上述したS8からS12において狭範囲画像と広範囲画像とを入れ替えた制御が行われる(S17からS21)。すなわち、狭範囲透視スイッチ404aがオンの場合(S17でYes)、第二モニタ402上に広範囲撮影による最終画像を保持し(S18)、狭範囲透視スイッチ404aがオンの間、第一モニタ401上に狭範囲画像をリアルタイム表示し(S19、S20でYes)、そして、狭範囲透視スイッチ404aがオフとなると(S20でNo)、第一モニタ401上に狭範囲撮影による最終画像を保持し(S21)、S2の判定へ戻る。一方、狭範囲透視スイッチ404aがオンでない場合(S17でNo)には、第一モニタ401及び第二モニタ402の表示を変更せずにS2の判定へ戻る。なお、S18において、第一モニタ401上に広範囲画像が表示されていない場合、すなわち、広範囲画像記憶領域501bに広範囲撮影による最終画像が記憶されていない場合には、第二モニタ402には、画像が表示されない。
【0045】
S2の判定において、終了操作が行われたと判定された場合(S2でYes)、透視モードを終了する(S22)。
【0046】
ここで、上記フローにおいて、第一モニタ401上に狭範囲撮影による最終画像が保持され、かつ、第二モニタ402上に広範囲撮影による最終画像が保持されている状態から、手技者が広範囲透視スイッチ404bを踏み、その次に狭範囲透視スイッチ404aを踏んだ場合における、第一モニタ401及び第二モニタ402の表示の具体的な変化を、図7及び図8を参照しながら説明する。
【0047】
第一モニタ401上に狭範囲撮影による最終画像が保持されている場合、広範囲透視スイッチ404bが踏まれるまでは、『S2でNo』、『S3でYes』、『S4でNo』、『S8でNo』という処理が繰り返されている。この状態において広範囲透視スイッチ404bが踏まれると、上述したように、S8からS2に戻らずにS9へと進む(S8でYes)。そして、上述したように、第二モニタ402上に狭範囲撮影による最終画像を保持し(S9)、第一モニタ401上に広範囲画像のリアルタイム表示を開始する(S10)。
【0048】
このとき、第一モニタ401及び第二モニタ402の表示は、図8中の(α)から(β)のように変化する。広範囲透視スイッチ404bが踏まれる前は、(α)に示すように、第一モニタ401には狭範囲撮影による最終画像が表示され、第二モニタ402には広範囲撮影による最終画像が表示されている。そして、広範囲透視スイッチ404bが踏まれると、(β)に示すように、第一モニタ401には広範囲画像がリアルタイム表示され、第二モニタ402には、それまで第一モニタ401に表示されていた狭範囲撮影による最終画像が表示される。
【0049】
手技者が広範囲画像スイッチ404bを踏むのをやめると、S11からS12へと進み(S11でNo)、第一モニタ401上に広範囲撮影による最終画像が保持される(S12)。
【0050】
このとき、第一モニタ401及び第二モニタ402の表示は、図8中の(β)から(γ)のように変化する。すなわち、第二モニタ402には、引き続き狭範囲撮影による最終画像が表示され、第一モニタ401には、広範囲画像のリアルタイム表示に替えて、広範囲撮影による最終画像が表示される。このとき、第一モニタ401及び第二モニタ402は、どちらも最終画像保持の状態にあるが、第一モニタ401に保持されている広範囲撮影による最終画像は、第二モニタ402に保持されている狭範囲撮影による最終画像よりも後に撮影されたものとなっている。
【0051】
手技者が広範囲画像スイッチ404bを踏むのをやめた後は、第一モニタ401には、狭範囲画像ではなく広範囲画像が保持されているので(S3でNo)、狭範囲透視スイッチ404aが踏まれるまでの間、『S2でNo』、『S3でNo』、『S13でNo』、『S17でNo』という処理が繰り返される。狭範囲透視スイッチ404aが踏まれると、上述したように、S17からS2に戻らずにS18へと進む(S17でYes)。そして、上述したように、第二モニタ402上に広範囲撮影による最終画像を保持し(S18)、第一モニタ401上に狭範囲画像のリアルタイム表示を開始する(S19)。
【0052】
このとき、第一モニタ401及び第二モニタ402の表示は、図8中の(γ)から(δ)のように変化する。すなわち、上述したように、狭範囲透視スイッチ404aが踏まれる前は、(γ)に示すように、第一モニタ401には広範囲撮影による最終画像が表示され、第二モニタ402には狭範囲撮影による最終画像が表示されている。そして、広範囲透視スイッチ404bが踏まれると、(δ)に示すように、第一モニタ401には狭範囲画像がリアルタイム表示され、第二モニタ402には、それまで第一モニタ401に表示されていた広範囲撮影による最終画像が表示される。
【0053】
手技者が狭範囲画像スイッチ404aを踏むのをやめると、S20からS21へと進み(S20でNo)、第一モニタ401上に広範囲撮影による最終画像が保持される(S21)。
【0054】
このとき、第一モニタ401及び第二モニタ402の表示は、図8中の(δ)から(ε)のように変化する。すなわち、第二モニタ402には、引き続き広範囲撮影による最終画像が保持され、第一モニタ401には、狭範囲画像のリアルタイム表示に替えて、狭範囲撮影による最終画像が保持される。このとき、第一モニタ401及び第二モニタ402は、どちらも最終画像保持の状態にあるが、第一モニタ401に保持されている狭範囲撮影による最終画像は、第二モニタ402に保持されている狭範囲撮影による最終画像よりも後に撮影されたものとなっている。
【0055】
フットスイッチ装置404は、通常、手技者によって操作される。そして、検査室内において、手技者以外の者は、表示装置400の表示等を見て手技の進行度合いを認識する。ここで、例えば、第一モニタ401を狭範囲画像専用の表示領域、第二モニタ402を広範囲画像専用の表示領域とすると、手技者以外の者は、第一モニタ401、第二モニタ402のどちらの表示が新しいものなのかを一見して判別できない。一方、図7に示す制御によると、X線の照射中であってもX線停止中であっても、第一モニタ401には、第二モニタ402よりも新しい画像が表示される。これにより、検査室内の手技者以外の者が、一見して手技の進行度合いを認識することができる。
【0056】
第三モニタ414及び第四モニタ415は、X線の照射範囲の切り替えによらず、それぞれ狭範囲撮影及び広範囲撮影における直近の画像を表示する。すなわち、狭範囲にX線を照射しているときは、第三モニタ414は狭範囲画像のリアルタイム表示を行い、かつ、第四モニタ415は広範囲撮影による最終画像を保持する。広範囲にX線を照射しているときは、第三モニタ414は狭範囲撮影による最終画像を保持し、かつ、第四モニタ415は広範囲画像のリアルタイム表示を行う。そして、X線の照射を停止しているときは、第三モニタ414は狭範囲撮影による最終画像を保持し、かつ、第四モニタ415は広範囲撮影による最終画像を保持する。そして、第三モニタ414及び第四モニタ415上には、その表示画像が最終画像である場合には撮影時刻又は手技開始からの時間が表示され、その表示画像がリアルタイム動画像である場合にはその旨が表示される。
【0057】
本実施形態のX線診断装置によれば、X線の照射範囲を切り替える場合において、その切り替え前の照射範囲において撮影された最終画像を、その切り替え後にも表示することにより、被検体の被曝線量を低減しつつ、比較的新しい広狭2種類の照射範囲による画像を提示することができる。
【0058】
特に、上述の利点は、本実施形態のようにX線検出装置が高精細、低精細2種類のフォトダイオードを有する場合に顕著である。すなわち、本実施形態におけるX線検出装置300は、検出範囲が広く低精細のフォトダイオード層303と、フォトダイオード層303による検出範囲の一部を検出範囲とする高精細のフォトダイオード層305とを有している。フォトダイオード層305を用いて撮影を行う場合には、十分なSN比を得るためにはX線強度を高くする必要があるところ、被検体の被曝を低減の観点から、フォトダイオード層305による検出範囲に照射範囲を絞って撮影を行うことが、より一層求められる。しかし、このように照射範囲を絞って撮影する場合においては、もはやフォトダイオード層303による広範囲に亘る像を得ることはできない。本実施形態のX線診断装置によれば、フォトダイオード層305による狭い検出範囲に照射範囲を絞りこむ操作を行うと、照射範囲を絞り込む前のフォトダイオード層303による最終画像を第二モニタ402上に自動的に保持する。これにより、照射範囲を絞って撮影している場合であっても、比較的新しい広い範囲に亘る像を常に確認することができ、低被曝を実現しながらも手技の円滑に進行することができる。
【0059】
また、本実施形態によるX線診断装置によれば、照射範囲を切り替えてX線を照射するときに、第一モニタ401の表示に係る照射領域と第二モニタ402の表示に係る照射領域とを入れ替えるので、第一モニタ401に表示される画像は、第二モニタ402に表示される画像よりも常に新しいものとなる。これにより、手技者が第一モニタ401上から視線を動かさずに手技を行えるとともに、手技者以外の者が一見して手技の進行度合いを認識することができる。
【0060】
<第二の実施形態>
第二の実施形態のX線診断装置について、主に図9及び図10を参照しながら、第一の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0061】
本実施形態における表示装置400は、第一の実施形態と異なり、一つのモニタ405しか有さない。その代わりに、図9(α)に示すように、モニタ405上には第一ウィンドウ405a及び第二ウィンドウ405bが表示される。第一ウィンドウ405aは、第一の実施形態における第一モニタ401の表示面と同様に、第一表示領域として機能するものであり、第二ウィンドウ405bは、第二の実施形態における第二モニタ402の表示面と同様に、第二表示領域として機能するものである。
【0062】
本実施形態によるX線診断装置は、図10に示す制御系を備える。第一の実施形態においては、制御回路500は、X線画像作成回路302から取得した、又は記憶回路501から読み出した1枚の画像に係る画像データに対して1枚の表示画像を作成し、第一モニタ401又は第二モニタ402に表示する。一方、本実施形態においては、制御回路500は、X線画像作成回路302から取得した、又は記憶回路501から読み出した、1枚の狭範囲画像と1枚の広範囲画像との2枚の画像に係る画像データから、これら2枚の画像のうち、一方を第一ウィンドウ405aに、他方を第二ウィンドウ405bに表示する最終画像を1枚作成し、この最終画像をモニタ405に表示する。
【0063】
第一ウィンドウ405a及び第二ウィンドウ405bに表示する画像の決定方法は、第一の実施形態における決定方法(図7参照)において、第一モニタ401及び第二モニタ402を、それぞれ第一ウィンドウ405a及び第二ウィンドウ405bに置き換えたものである。
【0064】
第一ウィンドウ405a及び第二ウィンドウ405bは、例えば図9(α)のように、横に並べて表示される。第二ウィンドウ405bは、第一ウィンドウ405aよりも小さく表示され、第二ウィンドウ405bの下には、撮影条件等の情報を表示するテキストウィンドウ405cが表示される。
【0065】
第一ウィンドウ405aと第二ウィンドウ405bとの大きさの比を、操作卓118からの操作により変更することができる。この操作は、例えば、第二ウィンドウの405bの枠の部分をドラッグする操作である。
【0066】
第一ウィンドウ405aと第二ウィンドウ405bとの大きさの比を変更する操作を行うと、モニタ405の表示領域の横方向の幅を基準として各ウィンドウの大きさが調整される。例えば、図9(α)に示す初期状態から第二ウィンドウ405bを拡大する操作を行うと、図9(β)に示すように、第二ウィンドウ405bがそのアスペクト比を保ったまま拡大されるとともに、第一ウィンドウ405aと第二ウィンドウ405bとを合わせた横幅を基準として、第一ウィンドウ405aがそのアスペクト比を保ったまま縮小される。これにより、それぞれの画像について初期状態のアスペクト比を保ち、第一ウィンドウ405aと第二ウィンドウ405bとが重ならず、かつ、第一ウィンドウ405a及び第二ウィンドウ405b全体がモニタ405上に表示されるという条件下において、第一ウィンドウ405の大きさを最大化することができる。
【0067】
また、このとき、第一ウィンドウ405aの下の領域にもテキストウィンドウ405cが表示される。これにより、第二ウィンドウ405bを拡大してもテキストウィンドウ405cが小さくならないので、テキストウィンドウ405c中の文字表示を省略したりフォントを小さくしたりしなくて済む。
【0068】
上記の表示形態のほか、例えば、第一ウィンドウ405aと第二ウィンドウ405bとの重なりを許容するような設定や、第一ウィンドウ405aと第二ウィンドウ405bとの大きさを同一とするような設定も可能である。
【0069】
本実施形態のX線診断装置によれば、第一の実施形態と同様に、被検体の被曝線量を低減しつつ、比較的新しい広狭2種類の照射範囲による画像を提示することができ、手技者が第一モニタ401上から視線を動かさずに手技を行えるとともに、手技者以外の者が一見して手技の進行度合いを認識することができる。
【0070】
また、第一表示領域として機能する第一ウィンドウ405aと第二表示領域として機能する第二ウィンドウ405bとを同一のモニタに表示することにより、画像表示のレイアウトに自由度を生むことができる。
【0071】
さらに、第一ウィンドウ405a及び第二ウィンドウ405bの大きさを変更できるようにすることにより、手技中に、その時々に適した表示の大きさを選択することができる。
【0072】
また、第一ウィンドウ405a及び第二ウィンドウ405bのうちの一方を拡大する場合において、第一ウィンドウ405a及び第二ウィンドウ405bの並ぶ方向、すなわち本実施形態においては横方向に関する、第一ウィンドウ405aと第二ウィンドウ405bとを合わせた幅を基準として、他方のウィンドウの大きさを決定することにより、モニタ405の表示面を有効に利用することができる。
【0073】
<第三の実施形態>
第三の実施形態のX線診断装置について、主に図11から図13を参照しながら、第一の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0074】
本実施形態のX線診断装置は、図11に示すCアーム台車装置105を備える。Cアーム装置105は、箱体107、支持アーム106、Cアーム102、X線発生装置200、X線検出装置300、台板108及び操作パネル403を備える。
【0075】
箱体107は、その内部に制御回路503、記憶回路501等を備える(図12参照)。制御回路503は、第一の実施形態における制御回路500と同様に、フットスイッチ404等からの入力に基づいてX線発生装置を制御する照射制御機能503aを有するが、一方、X線検出装置300や記憶回路501から受け取った画像データに基づいて第一モニタ401や第二モニタ402に表示する画像を作成する表示画像作成機能は有しない。
【0076】
支持アーム106は、一端側に設けられた接続部106aが箱体107に接続され、他端側に設けられた接続部106bがCアーム102に接続されている。箱体107側の接続部106aは、鉛直方向の軸体であり、支持アーム106はこの軸の周りに回動可能となっている。また、接続部106bは、鉛直方向に伸縮可能となっており、支持アーム106の高さも変更可能となっている。接続部106bは、Cアーム102を、その弧に沿う方向Dに駆動可能に支持している。
【0077】
Cアーム102は、第一の実施形態と同様に、その両端にX線発生装置200及びX線検出装置300を備える。
【0078】
台板108は、Cアーム台車装置105の底部をなす。台板108は、Cアーム台車装置105の前側(図11において左側)の位置にキャスター109aを有し、後ろ側(図11において左側)の位置にキャスター109bを備えており、図11においてキャスター109a及び109bに隠れる位置(図11において紙面奥側)には、それぞれ図示しないキャスターが設けられている。これにより、箱体107の後方に設けられた把手110を押すことによってCアーム台車装置105を移動することができる。また、キャスター109a及びその奥側のキャスターは鉛直軸周りに回転することができ、これによって、Cアーム台車装置105の進行方向を自由に転換することができる。
【0079】
操作パネル403は、Cアーム台車装置105の上部後方に設けられており、照射範囲の設定やX線の強度の変更等の操作を受け付ける。操作パネル403については、後に詳述する。
【0080】
本実施形態のX線診断装置は、図13に示すモニタ台車装置112を備える。モニタ台車装置112は、箱体113、表示装置400、入力装置409及び記憶回路505を備える。
【0081】
箱体113は、その内部に制御回路504及び記憶回路505を有する(図12参照)。制御回路504は、X線検出装置300や記憶回路501から受け取った画像データに基づいて第一モニタ401又は第二モニタ402に表示する画像を作成する表示画像作成機能504aと、最終画像保持機能504bとを有する。すなわち、第一の実施形態において制御回路500が有する機能のうち、照射制御機能については、Cアーム台車装置105側の制御回路503によって実現され、表示画像作成機能及び最終画像保持機能については、モニタ台車装置112側の制御回路504によって実現される。制御回路504は、第一の実施形態における制御装置500と同様に、図7のフローチャートに従って、表示装置400の第二モニタ401及び第二モニタ402の表示を制御する。
【0082】
表示装置400は、支柱116を介して箱体113の上部に設けられており、第一の実施形態と同様に、第一モニタ401及び第二モニタ402を備える。支柱116は、鉛直方向に伸縮するとともに、鉛直軸周りに回動可能となっており、表示装置400を見易い位置及び向きに配置できるようになっている。
【0083】
入力装置409は、キーボード409a及びマウス409bを有し、使用者は、入力装置409を通じて表示装置400における表示設定の変更や、画像の保存等の操作を行うことができる。表示設定の変更としては、例えば、第一モニタ401と第二モニタ402との機能を入れ替える設定が可能である。すなわち、第二モニタ402を最新の画像の表示に用いて、第一モニタ401を照射範囲の切り替えに伴って表示される最終画像の表示に用いても良い。これにより、検査室内における人員や装置の配置に応じて、適切な表示を選択することができる。なお、第一モニタ401と第二モニタ402との機能を入れ替える設定は、操作パネル403からの操作によっても行うことができる。
【0084】
また、画像の保存を行う際には、第二モニタ402の最終画像保持を解いて、第二モニタ402上に画像選択画面を表示すると良い。これにより、第一モニタには最新画像を表示し続けるので、補助者が画像の保存操作をしている間でも手技を続行することができる。
記憶回路505は、表示装置400の表示設定のデータ等を記憶する記憶装置であり、例えば、上述した第一モニタ401と第二モニタ402との機能を入れ替える設定や、撮影画像と並べて表示するパラメータの設定を記憶する。なお、記憶回路505に、狭範囲画像記憶領域501a、広範囲画像記憶領域501bその他の記憶領域を、記憶回路501にかえて持たせても良い。
【0085】
図14に示すように、操作パネル403は、タッチパネル406及び操作ボタン407a~407pを備える。タッチパネル406は、二枚の電極膜と液晶ディスプレイが組み合わされた所謂投影型静電容量方式のタッチパネルである。タッチパネル406は、透視モードにおいては、画像表示ウィンドウ408、パラメータ表示ウィンドウ410及び操作ウィンドウ411を表示する。画像表示ウィンドウ408上には、第一モニタ401と同様に、常に最新の画像が表示される。
【0086】
操作ボタン407a~407pのうち、操作ボタン407c及び407dは、表示装置400に表示された画像をそれぞれ時計回り及び反時計回りに回転させる操作を受け付ける。操作ボタン407cが押されると、第一モニタ401に表示された画像と第二モニタ402に表示された画像とが、時計回りに回転するが、このとき、タッチパネル406の画像表示ウィンドウ408上の画像は回転しない。一方、操作ボタン407dが押されると、第一モニタ401に表示された画像と第二モニタ402に表示された画像とが、反時計回りに回転するが、このときも、タッチパネル406の画像表示ウィンドウ408上の画像は回転しない。すなわち、第一モニタ401と画像表示ウィンドウ408とは、同一のX線画像データに基づいた画像を表示するが、第一モニタ401には、回転処理を施した画像を表示するが、画像表示ウィンドウ408には、回転処理を施していない画像を表示する。これにより、操作パネル403を操作する補助者が手技中に亘ってどの範囲にどの程度X線を照射したかを直感的に把握し易くなり、被曝線量の管理が容易になる。
【0087】
タッチパネル406の画像表示ウィンドウ408への画像表示制御について、図12を参照しながら説明する。画像表示ウィンドウ408の表示画像は、第一モニタ401に表示される画像と同一のデータを基にするものである。制御回路506は、制御回路504が第一モニタ401への表示のためにX線画像作成回路302又は記憶回路501から画像データを取得するのと同様にして、第一モニタ401に表示される画像と同一のデータを取得する。そして、制御回路506は、制御回路504とは別個に、当該データに基づいて画像表示ウィンドウ408に表示する画像を作成する。すなわち、操作パネル403の制御回路506は、モニタ台車装置112の制御回路504の表示画像作成機能504aとは別に、表示画像作成機能506aを有する。
【0088】
X線の照射を停止しているとき、モニタ台車装置112の制御回路503は、第一の実施形態と同様のフロー(図7参照)によって、第一モニタ401及び第二モニタ402に画像を表示する。このとき、タッチパネル406の制御回路506は、第一モニタ401の表示に用いられている画像データと同一のものを、X線画像作成回路302から取得し、又は記憶回路501から読み出し、当該画像データに基づいてタッチパネル406用の表示画像を作成し、この表示画像を画像表示ウィンドウ408に表示する。
【0089】
操作ボタン407c又は407dが押された際の表示装置400の表示に関する制御について説明する。上述したように、モニタ台車装置112の制御回路504は、X線画像作成回路302や記憶回路501から得た画像データに基づいて表示装置400用の表示画像を作成し、第一モニタ401や第二モニタ402に表示する。このとき、操作ボタン407cが押されると、モニタ台車装置112の制御回路504は、当該画像データに時計回りの回転変換処理を施し、これにより新しく得られた画像データに基づいて表示画像を作成して第一モニタ401や第二モニタ402に表示する。一方、操作ボタン407dが押されると、モニタ台車装置112の制御回路504は、X線画像作成回路302や記憶回路501から得た画像データに反時計回りの回転変換処理を施し、これにより新しく得られた画像データに基づいて表示画像を作成して第一モニタ401や第二モニタ402に表示する。
【0090】
本実施形態のX線診断装置によれば、第一の実施形態と同様に、被検体の被曝線量を低減しつつ、比較的新しい広狭2種類の照射範囲による画像を提示することができ、手技者が第一モニタ401上から視線を動かさずに手技を行えるとともに、手技者以外の者が一見して手技の進行度合いを認識することができる。
また、手技者が見る表示装置400の画像を回転させる際に、補助者が使用する操作パネル403の画像は回転させないことにより、補助者による線量の管理を容易にすることができる。
【0091】
<その他の実施形態>
第一から第三の実施形態においては、空間分解能が異なる複数の検出部を有するX線検出器を用いる場合について説明したが、単一の分解能の検出部を有するX線検出器を用いることができる。この場合、広範囲撮影の際は、狭範囲撮影の際よりもビニング数を大きくするとよい。これにより、表示部における画像の拡大率に応じたX線条件設定が可能となり、被検体の被曝を低減することができる。
【0092】
第一から第三の実施形態においては、X線画像作成回路302から出力された画像データは、次々と記憶回路501上に上書き保存されるが、上書きして保存せず、一定数の画像データを貯蓄するようにしても良い。例えば、広狭それぞれの照射範囲につき、直近の画像数枚分ずつ貯蓄するようにしても良い。
【0093】
また、第一から第三の実施形態において、狭範囲透視スイッチ404a又は広範囲透視スイッチ404bが踏まれているときは、X線画像作成回路302から出力される画像データを記憶回路501上に保存せず、狭範囲透視スイッチ404a又は広範囲透視スイッチ404bから足が離されたときにだけ、X線画像作成回路302から出力される画像データを記憶回路501上に保存しても良い。
【0094】
さらに、第一から第三の実施形態において、照射範囲の切り替えに伴って、第一表示領域(第一モニタ401又は第一ウィンドウ405a)の最終画像の表示が、第二表示領域(第二モニタ402又は第二ウィンドウ405b)に移動する場合、第二表示領域に表示される最終画像は、第一表示領域に表示されていたものと同一でなくても良い。すなわち、第一表示領域に表示されていた画像と、数フレームから数十フレーム分タイミングが異なる画像を用いたり、異なる画像処理を施したりしても良い。
【0095】
また、第一から第三の実施形態においては、「狭範囲撮影による最終画像」として、照射範囲を小さくして撮影した画像のうち直近のものを採用したが、当該直近のものと同一視しうる画像であれば、当該直近のものよりも前に撮影された画像を採用しても良い。例えば、直近の画像よりも数フレームから数十フレーム前の画像を用いたとしても良い。同様に、「広範囲撮影による最終画像」として、照射範囲を大きくして撮影した画像のうち直近のものの代わりに、当該直近のものよりも前に撮影された画像を採用しても良い。
【0096】
さらに、第一から第三の実施形態において、各制御回路の有する機能は、他のどの制御回路に持たせても良い。例えば、第一の実施形態において、狭範囲撮影条件設定機能507bや広範囲撮影設定機能507cを制御回路500に持たせることができる。また、第一から第三の実施形態においては制御回路を示していない装置が制御回路を有していてもよく、その制御回路が、第一から第三の実施形態において示した各制御回路の有する機能を有してもよい。
【0097】
また、第一から第三の実施形態において、各記憶回路の有する記憶領域は、他のどの記憶回路に持たせても良い。また、第一から第三の実施形態においては記憶回路を示していない装置が記憶回路を有していてもよく、その制御回路が、第一から第三において示した各記憶回路の有する記憶領域を有してもよい。
【0098】
さらに、第一から第三の実施形態において切り替えられる2種類の照射範囲を同一の面積とし、それぞれの照射範囲の中心位置を異ならせることもできる。
【0099】
また、第三の実施形態においては、入力装置409への入力により、第一モニタ401と第二モニタ402との機能を入れ替える設定が可能であるが、当該構成は、第一の実施形態及び第二の実施形態にも適用することができる。すなわち、第一の実施形態にあっては、入力装置412への入力により、第一モニタ401と第二モニタ402との機能を入れ替える設定をすることができ、第二の実施形態にあっては、入力装置412への入力により、第一ウィンドウ405aと第二ウィンドウ405bとの位置を入れ替える設定をすることができる。
【0100】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(central processing unit)、GPU (Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。
【0101】
上記説明において用いた「記憶装置」という文言は、例えば、DRAM、SRAM、MRAM等による主記憶装置のほか、フラッシュメモリやHDD(Hard Disk Drive)等による補助記憶装置を含む。また、本願の実施形態における記憶回路は、複数の記憶装置からなってもよく、その場合、個々の記憶装置が物理的に一箇所に集約されていなくても良い。さらに、この場合において、個々の記憶装置が別のハードウェア上に配され、これらが有線又は無線で接続されていても良い。
【0102】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、X線の照射範囲を切り替える場合において、その切り替え前の照射範囲において撮影された最終画像を、その切り替え後にも表示することにより、被検体の被曝線量を低減しつつ、比較的新しい広狭2種類の照射範囲による画像を提示することができる。
【0103】
本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0104】
図面中、201はX線管、301はX線検出器、400は表示装置、401は第一モニタ、402は第二モニタ、404はフットスイッチ装置、404aは狭範囲透視スイッチ、404bは広範囲透視スイッチ、501は制御回路、507は制御回路を示す。
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