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特許7237460磁気共鳴イメージング装置およびマルチスライス撮像方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置およびマルチスライス撮像方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20230306BHJP
   G01N 24/08 20060101ALI20230306BHJP
   G01N 24/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
A61B5/055 311
A61B5/055 332
A61B5/055 382
G01N24/08 510Y
G01N24/00 610Y
A61B5/055 ZDM
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018092507
(22)【出願日】2018-05-11
(65)【公開番号】P2019195588
(43)【公開日】2019-11-14
【審査請求日】2021-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】新田 修平
(72)【発明者】
【氏名】市之瀬 伸保
(72)【発明者】
【氏名】高井 博司
(72)【発明者】
【氏名】今村 那芳
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0261586(US,A1)
【文献】特開2015-083120(JP,A)
【文献】特開平09-253067(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0234953(US,A1)
【文献】特開2012-139343(JP,A)
【文献】特開2009-240669(JP,A)
【文献】特開平07-327960(JP,A)
【文献】特開2006-000265(JP,A)
【文献】特開2008-289862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/00 -24/14
G01R 33/20 -33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静磁場シミングに用いられる第1磁気共鳴信号を第1収集範囲において収集するシミング撮像と、前記第1収集範囲と少なくとも一部が重なる第2収集範囲における複数のスライス各々に対応する領域非選択のプリパルスを伴って前記複数のスライス各々に対して第2磁気共鳴信号を収集するマルチスライス撮像とを実行する撮像制御部と、
前記第1磁気共鳴信号に基づいて、前記複数のスライスにそれぞれ対応する複数の静磁場分布を生成する静磁場分布生成部と、
前記静磁場分布に基づいて、前記複数のスライス各々に対応するRFパルスの第1中心周波数と、前記プリパルスの第2中心周波数とを決定する静磁場シミング部と、
前記第1中心周波数が降順となるように、または前記第2中心周波数が降順となるように、前記マルチスライス撮像において前記第2磁気共鳴信号が収集されるスライスの収集順序を決定する収集順序決定部と、
を具備し、
前記撮像制御部は、前記収集順序と前記第1中心周波数と前記第2中心周波数とに従って、前記マルチスライス撮像を実行する、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記RFパルスは、前記複数のスライス各々において、前記第1中心周波数を含みかつ水の磁化を励起させる第1帯域を有し、
前記プリパルスは、前記第2中心周波数を含みかつ脂肪組織からの前記第2磁気共鳴信号の生成を抑制する第2帯域を有し、
前記収集順序決定部は、
前記第2磁気共鳴信号が収集される収集スライスに関する前記プリパルスの前記第2帯域と、前記収集スライスにおける前記第2磁気共鳴信号の収集後に前記収集スライスとは異なるスライスに印加される前記RFパルスの第1帯域とが重ならないように、前記収集順序を決定する、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記収集順序決定部は、前記第2収集範囲において隣接する2つのスライスを連続して撮像しないように、前記収集順序を決定する、
請求項1または2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
静磁場シミングに用いられる第1磁気共鳴信号を第1収集範囲において収集するシミング撮像と、前記第1収集範囲と少なくとも一部が重なる第2収集範囲における複数のスライス各々に対応する領域非選択のプリパルスを伴って前記複数のスライス各々に対して第2磁気共鳴信号を収集するマルチスライス撮像とを実行する撮像制御部と、
前記第1磁気共鳴信号に基づいて、前記複数のスライスにそれぞれ対応する複数の静磁場分布を生成する静磁場分布生成部と、
前記静磁場分布に基づいて、前記複数のスライス各々に対応するRFパルスの第1中心周波数と、前記プリパルスの第2中心周波数とを決定する静磁場シミング部と、
前記第1中心周波数と前記第2中心周波数とのうち少なくとも一方に応じて、前記マルチスライス撮像において前記第2磁気共鳴信号が収集されるスライスの収集順序を決定する収集順序決定部と、
を具備し、
前記撮像制御部は、前記収集順序と前記第1中心周波数と前記第2中心周波数とに従って、前記マルチスライス撮像を実行し、
前記収集順序決定部は、
前記静磁場シミング部による静磁場シミングの実行後における複数の静磁場分布の相似の程度を計算し、
前記マルチスライス撮像において連続して撮像される2つのスライスに関する前記相似の程度が近くなるように、前記収集順序を決定する、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
静磁場シミングに用いられる第1磁気共鳴信号を第1収集範囲において収集するシミング撮像と、前記第1収集範囲と少なくとも一部が重なる第2収集範囲における複数のスライス各々に対応する領域非選択のプリパルスを伴って前記複数のスライス各々に対して第2磁気共鳴信号を収集するマルチスライス撮像とを実行する撮像制御部と、
前記第1磁気共鳴信号に基づいて、前記複数のスライスにそれぞれ対応する複数の静磁場分布を生成する静磁場分布生成部と、
前記静磁場分布に基づいて、前記複数のスライス各々に対応するRFパルスの第1中心周波数と、前記プリパルスの第2中心周波数とを決定する静磁場シミング部と、
前記第1中心周波数と前記第2中心周波数とのうち少なくとも一方に応じて、前記マルチスライス撮像において前記第2磁気共鳴信号が収集されるスライスの収集順序を決定する収集順序決定部と、
を具備し、
前記撮像制御部は、前記収集順序と前記第1中心周波数と前記第2中心周波数とに従って、前記マルチスライス撮像を実行し、
前記静磁場シミング部は、
前記静磁場分布に基づいて、前記複数のスライス各々における静磁場を一様にさせる傾斜磁場強度に対応する第1電流値を決定し、
前記第2中心周波数に基づいて、前記複数のスライスに直交する方向に関する傾斜磁場のオフセットに対応する第2電流値を決定し、
前記収集順序決定部は、
前記オフセットを用いて前記マルチスライス撮像において連続して撮像される2つのスライスに関する前記第2中心周波数が近くなるように、前記収集順序を決定する、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
静磁場シミングに用いられる第1磁気共鳴信号を第1収集範囲において収集するシミング撮像と、前記第1収集範囲と少なくとも一部が重なる第2収集範囲における複数のスライス各々に対応する領域非選択のプリパルスを伴って前記複数のスライス各々に対して第2磁気共鳴信号を収集するマルチスライス撮像とを実行する撮像制御部と、
前記第1磁気共鳴信号に基づいて、前記複数のスライスにそれぞれ対応する複数の静磁場分布を生成する静磁場分布生成部と、
前記静磁場分布に基づいて、前記複数のスライス各々に対応するRFパルスの第1中心周波数と、前記プリパルスの第2中心周波数とを決定する静磁場シミング部と、
前記第1中心周波数と前記第2中心周波数とのうち少なくとも一方に応じて、前記マルチスライス撮像において前記第2磁気共鳴信号が収集されるスライスの収集順序を決定する収集順序決定部と、
前記収集順序を、前記複数のスライス各々に対応する前記第1中心周波数と前記第2中心周波数とともに表示する表示部と、
を具備し、
前記撮像制御部は、前記収集順序と前記第1中心周波数と前記第2中心周波数とに従って、前記マルチスライス撮像を実行し、
前記収集順序決定部は、前記表示された収集順序に対する操作者の指示に従って、前記収集順序を変更し、
前記撮像制御部は、前記変更された収集順序と前記第1中心周波数と前記第2中心周波数とに従って、前記マルチスライス撮像を実行する、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記収集順序を、撮像部位と関連付けて記憶する記憶部をさらに具備する、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記収集順序を表示する表示部と、
前記表示された収集順序の変更操作を入力する入力部と、をさらに具備し、
前記収集順序決定部は、前記変更操作に応じて変更された収集順序を更新し、前記撮像部位と関連付けて前記更新された収集順序を前記記憶部に記憶させ、
前記撮像制御部は、前記更新された収集順序に従って前記マルチスライス撮像を実行する、
請求項7に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
静磁場シミングに用いられる第1磁気共鳴信号を第1収集範囲において収集するシミング撮像と、前記第1収集範囲と少なくとも一部が重なる第2収集範囲における複数のスライス各々に対応する領域非選択のプリパルスを伴って前記複数のスライス各々に対して第2磁気共鳴信号を収集するマルチスライス撮像とを実行するマルチスライス撮像方法において、
前記第1磁気共鳴信号に基づいて、前記複数のスライスにそれぞれ対応する複数の静磁場分布を生成し、
前記静磁場分布に基づいて、前記複数のスライス各々に対応するRFパルスの第1中心周波数を決定し、
前記静磁場分布に基づいて、前記プリパルスの第2中心周波数を決定し、
前記第1中心周波数が降順となるように、または前記第2中心周波数が降順となるように、前記マルチスライス撮像において前記第2磁気共鳴信号が収集されるスライスの収集順序を決定し、
前記収集順序と前記第1中心周波数と前記第2中心周波数とに従って、前記マルチスライス撮像を実行すること、
を具備するマルチスライス撮像方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置およびマルチスライス撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、静磁場分布に基づいて静磁場に対するシミング(以下、静磁場シミングと呼ぶ)を実行する磁気共鳴イメージング(以下、MRI(Magnetic Resonance Imaging)と呼ぶ)装置の技術が知られている。例えば、MRI装置は、脂肪抑制のためのプリパルスを伴うマルチスライス撮像での静磁場シミングにより、スライスごとにプリパルスの中心周波数とRFパルスの中心周波数とを最適化する。しかしながら、マルチスライス撮像において、MR信号が収集されるスライスの収集順序によっては、前段のMR信号の収集時に関するプリパルスが、後段に収集されるMR信号に影響を及ぼすことがある。プリパルスによる影響は、画質を低下させることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-327960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、プリパルスを伴うマルチスライス撮像において、画質を低下させることなく、マルチスライス撮像を実行することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置によれば、撮像制御部と、静磁場分布生成部と、静磁場シミング部と、収集順序決定部とを備える。撮像制御部は、静磁場シミングに用いられる第1磁気共鳴信号を第1収集範囲において収集するシミング撮像と、前記第1収集範囲と少なくとも一部が重なる第2収集範囲における複数のスライス各々に対応する領域非選択のプリパルスを伴って前記複数のスライス各々に対して第2磁気共鳴信号を収集するマルチスライス撮像とを実行する。静磁場分布生成部は、前記第1磁気共鳴信号に基づいて、前記複数のスライスにそれぞれ対応する複数の静磁場分布を生成する。静磁場シミング部は、前記静磁場分布に基づいて、前記複数のスライス各々に対応するRFパルスの第1中心周波数と、前記プリパルスの第2中心周波数とを決定する。収集順序決定部は、前記第1中心周波数と前記第2中心周波数とのうち少なくとも一方に応じて、前記マルチスライス撮像において前記第2磁気共鳴信号が収集されるスライスの収集順序を決定する。前記撮像制御部は、前記収集順序と前記第1中心周波数と前記第2中心周波数とに従って、前記マルチスライス撮像を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本実施形態におけるMRI装置の構成を示す図である。
図2図2は、本実施形態における収集順序決定処理に係る処理手順の一例を示す図である。
図3図3は、本実施形態に係り、第2収集範囲が頭部である場合において、スライスの収集順序の決定に関する概念を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置と呼ぶ)の実施形態について詳細に説明する。以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0008】
図1を参考にして、本実施形態におけるMRI装置100の全体構成について説明する。図1は、本実施形態におけるMRI装置100の構成を示す図である。図1に示すように、MRI装置100は、静磁場磁石101と、傾斜磁場コイル103と、傾斜磁場電源105と、寝台107と、寝台制御回路109と、送信回路(送信部)113と、送信コイル115と、受信コイル117と、受信回路(受信部)119と、撮像制御回路(撮像制御部)121と、バス123と、インタフェース(入力部)125と、ディスプレイ(表示部)127と、記憶装置(記憶部)129と、処理回路(処理部)131とを備える。なお、被検体Pは、MRI装置100に含まれない。
【0009】
静磁場磁石101は、中空の略円筒状に形成された磁石である。静磁場磁石101は、内部の空間に略一様な静磁場(B)を発生する。静磁場磁石101としては、例えば、超伝導磁石等が使用される。
【0010】
傾斜磁場コイル103は、中空の略円筒状に形成されたコイルである。傾斜磁場コイル103は、静磁場磁石101の内側に配置される。傾斜磁場コイル103は、互いに直交するX、Y、Zの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成される。Z軸方向は、静磁場の方向と同方向であるとする。また、Y軸方向は、鉛直方向とし、X軸方向は、Z軸及びY軸に垂直な方向とする。傾斜磁場コイル103における3つのコイルは、傾斜磁場電源105から個別に電流供給を受けて、X、Y、Zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生させる。
【0011】
傾斜磁場コイル103によって発生されるX、Y、Z各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場、位相エンコード用傾斜磁場および周波数エンコード用傾斜磁場(リードアウト傾斜磁場ともいう)を形成する。スライス選択用傾斜磁場は、任意に撮像断面を決めるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場は、空間的位置に応じて磁気共鳴信号(以下、MR(Magnetic Resonance)信号と呼ぶ)の位相を変化させるために利用される。周波数エンコード用傾斜磁場は、空間的位置に応じてMR信号の周波数を変化させるために利用される。また、傾斜磁場コイル103によって発生されるX、Y、Z各軸の傾斜磁場は、グラジエントエコー法において、X-Y平面上のスピンの位相を再収束させるために、傾斜磁場の方向を2回反転させた再収束パルスとして用いられる。加えて、傾斜磁場コイル103によって発生されるX、Y、Z各軸の傾斜磁場は、後述する静磁場の1次シミングのオフセットとして用いられる。
【0012】
傾斜磁場電源105は、撮像制御回路121の制御により、傾斜磁場コイル103に電流を供給する電源装置である。
【0013】
寝台107は、被検体Pが載置される天板1071を備えた装置である。寝台107は、寝台制御回路109による制御のもと、被検体Pが載置された天板1071を、ボア111内へ挿入する。寝台107は、例えば、長手方向が静磁場磁石101の中心軸と平行になるように、検査室内に設置される。
【0014】
寝台制御回路109は、寝台107を制御する回路である。寝台制御回路109は、インタフェース125を介した操作者の指示により寝台107を駆動することで、天板1071を長手方向および上下方向、場合によっては左右方向へ移動させる。
【0015】
送信回路113は、撮像制御回路121の制御により、ラーモア周波数で変調された高周波パルスを送信コイル115に供給する。
【0016】
送信コイル115は、傾斜磁場コイル103の内側に配置されたRFコイルである。送信コイル115は、送信回路113からの出力に応じて、高周波磁場に相当するRF(Radio Frequency)パルスを発生する。送信コイル115は、例えば、複数のコイルエレメントを有する全身用コイル(以下、WB(Whole Body)コイルと呼ぶ)である。WBコイルは、送受信コイルとして使用されてもよい。また、送信コイル115は、1つのコイルにより形成されるWBコイルであってもよい。
【0017】
受信コイル117は、傾斜磁場コイル103の内側に配置されたRFコイルである。受信コイル117は、高周波磁場によって被検体Pから放射されるMR信号を受信する。受信コイル117は、受信されたMR信号を受信回路119へ出力する。受信コイル117は、例えば、1以上、典型的には複数のコイルエレメントを有するコイルアレイである。なお、図1において送信コイル115と受信コイル117とは別個のRFコイルとして記載されているが、送信コイル115と受信コイル117とは、一体化された送受信コイルとして実施されてもよい。送受信コイルは、被検体Pの撮像部位に対応し、例えば、頭部コイルのような局所的な送受信RFコイルである。
【0018】
受信回路119は、撮像制御回路121の制御により、受信コイル117から出力されたMR信号に基づいて、デジタルのMR信号(以下、MRデータと呼ぶ)を生成する。具体的には、受信回路119は、受信コイル117から出力されたMR信号に対して各種信号処理を施した後、各種信号処理が施されたデータに対してアナログ/デジタル(A/D(Analog to Digital))変換を実行する。受信回路119は、A/D変換されたデータを標本化(サンプリング)する。これにより、受信回路119は、MRデータを生成する。受信回路119は、生成されたMRデータを、撮像制御回路121に出力する。
【0019】
撮像制御回路121は、処理回路131から出力された撮像プロトコルに従って、傾斜磁場電源105、送信回路113及び受信回路119等を制御し、被検体Pに対する撮像を行う。撮像プロトコルは、検査に応じた各種パルスシーケンスを有する。撮像プロトコルには、傾斜磁場電源105により傾斜磁場コイル103に供給される電流の大きさ、傾斜磁場電源105により電流が傾斜磁場コイル103に供給されるタイミング、送信回路113により送信コイル115に供給される高周波パルスの大きさや時間幅、送信回路113により送信コイル115に高周波パルスが供給されるタイミング、受信コイル117によりMR信号が受信されるタイミング等が定義されている。
【0020】
バス123は、インタフェース125と、ディスプレイ127と、記憶装置129と、処理回路131との間でデータを伝送させる伝送路である。バス123には、ネットワーク等を介して、各種生体信号計測器、外部記憶装置、各種モダリティなどが適宜接続されてもよい。
【0021】
インタフェース125は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける回路を有する。インタフェース125は、操作者の指示により、後述するシミング撮像に関するMR信号(以下、第1MR信号と呼ぶ)の収集範囲(以下、第1収集範囲と呼ぶ)を入力する。インタフェース125は、操作者の指示により、後述するマルチスライス撮像に関するMR信号(以下、第2MR信号と呼ぶ)の収集範囲(以下、第2収集範囲と呼ぶ)を、位置決め画像(Locator)に対して入力する。第2収集範囲は、第1収集範囲と少なくとも一部が重なるものとする。なお、第1収集範囲は、第2収集範囲と同一の撮像領域であってもよい。
【0022】
インタフェース125は、例えば、マウス等のポインティングデバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスに関する回路を有する。なお、インタフェース125が有する回路は、マウス、キーボードなどの物理的な操作部品に関する回路に限定されない。例えば、インタフェース125は、本MRI装置100とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、受け取った電気信号を種々の回路へ出力するような電気信号の処理回路を有していてもよい。
【0023】
ディスプレイ127は、処理回路131におけるシステム制御機能1311による制御のもとで、画像生成機能1313により生成された各種MR画像、撮像および画像処理に関する各種情報などを表示する。ディスプレイ127は、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイ、モニタ等の表示デバイスである。
【0024】
記憶装置129は、画像生成機能1313を介してk空間に充填されたMRデータ、画像生成機能1313により生成された画像データ、各種撮像プロトコル、撮像プロトコルを規定する複数の撮像パラメータを含む撮像条件等を記憶する。記憶装置129は、処理回路131で実行される各種機能に対応するプログラムを記憶する。記憶装置129は、スライスごとの静磁場シミングにより0次シミング値と1次シミング値とを算出するプログラム(以下、算出プログラムと呼ぶ)を記憶する。0次シミング値とは、マルチスライス撮像に関する複数のスライス各々において、水の共鳴周波数に相当する。1次シミング値とは、マルチスライス撮像に関する複数のスライス各々において、静磁場の不均一性のX成分、Y成分、Z成分を補正するために、3つの傾斜磁場コイルに傾斜磁場電源105からそれぞれ供給される電流値に相当する。
【0025】
記憶装置129は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive)、ソリッドステートドライブ(Solid State Drive)、光ディスク等である。また、記憶装置129は、CD-ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であってもよい。
【0026】
処理回路131は、ハードウェア資源として図示していないプロセッサ、ROM(Read-Only Memory)やRAM等のメモリ等を有し、本MRI装置100を制御する。処理回路131は、システム制御機能1311、画像生成機能1313、静磁場分布生成機能1315、静磁場シミング機能1317、収集順序決定機能1319を有する。システム制御機能1311、画像生成機能1313、静磁場分布生成機能1315、静磁場シミング機能1317、収集順序決定機能1319にて行われる各種機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶装置129に記憶されている。処理回路131は、これら各種機能に対応するプログラムを記憶装置129から読み出し、読み出したプログラムを実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読みだした状態の処理回路131は、図1の処理回路131内に示された複数の機能等を有する。
【0027】
なお、図1においては単一の処理回路131にてこれら各種機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路131を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。換言すると、上述のそれぞれの機能がプログラムとして構成され、1つの処理回路が各プログラムを実行する場合であってもよいし、特定の機能が専用の独立したプログラム実行回路に実装される場合であってもよい。なお、処理回路131が有するシステム制御機能1311、画像生成機能1313、静磁場分布生成機能1315、静磁場シミング機能1317、収集順序決定機能1319は、それぞれシステム制御部、画像生成部、静磁場分布生成部、静磁場シミング部、収集順序決定部の一例である。
【0028】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。
【0029】
プロセッサは、記憶装置129に記憶されたプログラムを読み出し実行することで各種機能を実現する。なお、記憶装置129にプログラムを記憶する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、寝台制御回路109、送信回路113、受信回路119、撮像制御回路121等も同様に、上記プロセッサなどの電子回路により構成される。
【0030】
処理回路131は、システム制御機能1311により、MRI装置100を制御する。具体的には、処理回路131は、記憶装置129に記憶されたシステム制御プログラムを読み出してメモリ上に展開し、展開されたシステム制御プログラムに従って本MRI装置100の各回路を制御する。例えば、処理回路131は、インタフェース125を介して操作者から入力された撮像条件に基づいて、撮像プロトコルを記憶装置129から読み出す。なお、処理回路131は、撮像条件に基づいて、撮像プロトコルを生成してもよい。処理回路131は、撮像プロトコルを撮像制御回路121に送信し、被検体Pに対する撮像を制御する。
【0031】
処理回路131は、画像生成機能1313により、リードアウト傾斜磁場の強度に従って、k空間のリードアウト方向に沿ってMRデータを充填する。処理回路131は、k空間に充填されたMRデータに対してフーリエ変換を行うことにより、MR画像を生成する。処理回路131は、MR画像を、ディスプレイ127や記憶装置129に出力する。
【0032】
以上が本実施形態に係るMRI装置100の全体構成についての説明である。以下、本実施形態における静磁場分布生成機能1315、静磁場シミング機能1317、収集順序決定機能1319について、収集順序決定処理の説明において詳述する。
【0033】
(収集順序決定処理)
収集順序決定処理は、静磁場シミングにより決定されたスライスごとのRFパルスの中心周波数(以下、第1中心周波数と呼ぶ)とプリパルスの中心周波数(以下、第2中心周波数と呼ぶ)とに基づいて、マルチスライス撮像におけるスライスの収集順序を決定する処理である。第1中心周波数は、例えば、複数のスライス各々における水の共鳴周波数である。また、第2中心周波数は、例えば、複数のスライス各々における脂肪の共鳴周波数である。静磁場シミングは、第1収集範囲に対するシミング撮像により収集された第1MR信号により生成された静磁場分布を用いて、第2収集範囲における静磁場の不均一性を、マルチスライス撮像に関する複数のスライスごとに補正する処理である。静磁場の不均一性は、静磁場中に配置された被検体Pに起因する。このため、シミング撮像は、ボア111内に被検体Pが挿入された状態で実行される。
【0034】
シミング撮像は、例えば、2つの異なるエコー時間間隔を用いたダブルエコー法を用いたマルチスライス撮像により実行される。このとき、撮像制御回路121は、水と脂肪とにおける共鳴周波数のずれ(3.5ppm)が静磁場分布の生成の元になる位相差画像に反映されないように、2つのエコー時間間隔を設定する。なお、シミング撮像は、ダブルエコー法を用いたマルチスライス撮像に限定されず、例えば、3つの異なるエコー時間間隔を用いたトリプルエコー法を用いたマルチスライス撮像など他の撮像法により実行されてもよい。以下、説明を具体的にするために、シミング撮像は、マルチスライスによるダブルエコー法で実行されるものとして説明する。静磁場シミングの後に実行されるマルチスライス撮像は、第2収集範囲における複数のスライス各々に対応する領域非選択のプリパルスを伴って複数のスライス各々に対して第2MR信号を収集する撮像である。
【0035】
図2は、収集順序決定処理に係る処理手順の一例を示す図である。以下、図2を用いて、収集順序決定処理について説明する。
(ステップSa1)
撮像制御回路121は、第2収集範囲に対するマルチスライス撮像の実行に先立つシミング撮像の実行により、第1MR信号を収集する。具体的には、撮像制御回路121は、ダブルエコー法に従って、傾斜磁場電源105、送信回路113、受信回路119を制御する。撮像制御回路121は、シミング撮像により、受信コイル117及び受信回路119を介して、3次元的な第1MR信号を収集する。すなわち、撮像制御回路121は、2つのエコー時間間隔に対応する第1MR信号を収集する。なお、シミング撮像におけるRFパルスの中心周波数は、シミング撮像前および位置決め画像に関するMR信号の収集前に実行される共鳴周波数分布計測により、決定される。
【0036】
(ステップSa2)
静磁場分布生成機能1315を実現する処理回路131は、第1MR信号に基づいて、マルチスライス撮像に関する複数のスライスにそれぞれ対応する複数の静磁場分布を生成する。具体的には、処理回路131は、第1収集範囲における複数のスライス各々における第1MR信号に基づいて、2つのエコー時間間隔にそれぞれ対応する2つの複素数画像を生成する。処理回路131は、2つの複素数画像のうち一方の複素数画像に対して複素共役演算を実施し、複素共役演算が実施された複素数画像と複素共役演算が実施されていない他方の複素数画像との積を計算する。処理回路131は、計算された積の位相を用いて位相差画像を生成する。
【0037】
処理回路131は、静磁場分布生成機能1315により、2つの複素数画像のうち少なくとも一つを用いて、強度画像を生成する。処理回路131は、強度画像に基づいて、位相差画像における背景領域を抽出する。処理回路131は、抽出された背景領域を用いて、位相差画像に対して背景を除去する。処理回路131は、背景が除去された位相差画像に対して、位相の連続性を考慮した位相アンラップ処理を実行する。処理回路131は、位相アンラップ処理が実行された位相差画像における複数のピクセル各々の位相差の値に対して2つのエコー時間間隔の差に相当するエコー間隔と磁気回転比とを用いた線形変換を行うことで、周波数情報としての2次元的な静磁場分布を生成する。処理回路131は、複数の2次元的な静磁場分布を結合することで、3次元的な静磁場分布を生成する。
【0038】
処理回路131は、第1収集範囲において、第2収集範囲における撮像位置、すなわち複数のスライスを特定する。処理回路131は、3次元的な静磁場分布と特定された撮像位置とに基づいて、複数のスライスにそれぞれ対応する複数の静磁場分布を生成する。第2収集範囲における複数のスライスにそれぞれ対応する複数の静磁場分布の生成は、3次元的な静磁場分布を用いた複数のスライスへのリフォーマット、例えば断面変換処理に相当する。なお、複数のスライスに対応する複数の静磁場分布は、記憶装置129に、撮像部位、性別、年齢等に応じてデフォルトとして記憶されていてもよい。このとき、ステップSa1の処理およびステップSa2の処理は不要となる。
【0039】
(ステップSa3)
静磁場シミング機能1317を実現する処理回路131は、静磁場分布の不均一性の0次成分と1次成分とを考慮して、マルチスライス撮像における複数のスライス各々に対応する0次シミング値および1次シミング値を、スライスに対応する静磁場分布を用いた最小二乗法により算出する。具体的には、処理回路131は、記憶装置129から算出プログラムを読み出し、自身のメモリに展開する。以下、本実施形態に関する静磁場シミングについて説明する。
【0040】
静磁場シミングに関する基本式の一例を以下の式(1)に示す。
【数1】
式(1)におけるx、y、zは、空間中の3次元位置である。具体的には、xは、水平方向(X軸)における静磁場の中心(以下、磁場中心と呼ぶ)を原点とした位置を表す。yは、鉛直方向(Y軸)における磁場中心を原点とした位置を表す。zは、軸長方向(Z軸)における磁場中心を原点とした位置を表す。x、y、zの単位は[m]とする。式(1)におけるaは、0次シミング値である。aは、RFパルスの中心周波数にマイナスを付与した値を表す。aの単位は[ppm]とする。式(1)におけるa、a、aは、1次シミング値である。具体的には、a、a、aは、X、Y、Z軸のそれぞれについて単位長さあたりの共鳴周波数の変化量を表す。単位長さあたりの共鳴周波数の変化量は、傾斜磁場の傾き、すなわち傾斜磁場コイル103へ印加される電流値に相当する。a、a、aの単位は[ppm/m]とする。式(1)におけるb(x、y、z)は位置(x、y、z)における静磁場シミング前の共鳴周波数である。換言すれば、b(x、y、z)は、ステップSa2において生成された3次元的な静磁場分布を共鳴周波数に変換したもの、すなわち静磁場の不均一性を共鳴周波数の分布として表したものに相当する。b(x、y、z)の単位は[ppm]とする。b’(x、y、z)は位置(x、y、z)におけるシミング後の共鳴周波数とRFパルスの中心周波数との差分値である。b’(x、y、z)の単位は[ppm]とする。
【0041】
式(1)の左辺、すなわちシミングの後の共鳴周波数とRFパルスの中心周波数との差分値は、小さければ小さいほど理想的な静磁場シミングの条件となる。ステップSa2において生成された3次元的な静磁場分布を示す画像について、非背景領域に対応する前景領域における複数の画素(以下、前景画素と呼ぶ)全ての位置の集合(以下、位置集合Sと呼ぶ)を考えると、位置集合Sは、例えば、以下の式(2)で表される。
【数2】
式(2)において、iは、前景画素の通し番号を表す。Nは、前景画素の総数を表す。
【0042】
この時、式(1)は、3次元な静磁場分布の画像における全前景画素に亘ってN本分立てることができる。全前景画素に亘るN本の式をまとめると、以下の式(3)で表すことができる。
【数3】
【0043】
式(3)において、ベクトルb’、行列X、ベクトルa、ベクトルbを、
【数4】
として定義すると、式(3)は、以下の式(4)のように表される。
【数5】
【0044】
上述のように、式(1)の左辺、すなわち式(3)または式(4)の左辺のベクトルの各要素は、小さいほど理想的な静磁場シミングとなる。そこで、静磁場の均一性をベクトルb’の大きさとして定義し、0次シミング値と1シミング値とをまとめたベクトルaに関するコスト関数Eを式(5)として定義する。
【数6】
式(5)における行列Ωは、ベクトルb’の各要素の重要度や相関によって正規化するための行列である。例えば、行列Ωを単位行列とすると、コスト関数は単純なベクトル要素の二乗和となる。また、行列Ωをベクトルb’に関する共分散行列とすれば、コスト関数は、マハラノビス距離の二乗となる。式(5)のコスト関数を最小化する0次シミング値と1次シミング値との組み合わせであるベクトルaは、最小二乗法により以下の式(6)として求めることができる。
【数7】
【0045】
以下、スライスごとの静磁場シミングについて説明する。スライスごとの静磁場シミングを実行するマルチスライス収集に関する第2収集範囲について、第2収集範囲のスライスごとの複数の前景画素の位置集合Sを考えると、位置集合Sは、例えば、以下の式(7)で表される。
【数8】
式(7)において、jは、第2収集範囲におけるスライスの通し番号を表す。また、式(7)におけるMは、第2収集範囲におけるスライス数を表す。式(7)におけるiは、前景画素の通し番号を表す。Nは、スライスjにおける前景画素の総数を表す。
【0046】
スライスごとの静磁場シミングにおいて、式(1)は、第2収集範囲における各スライスjに対して前景画素N本分立てることができる。スライスjにおいて、ベクトルb’、行列X、ベクトルa、ベクトルbを、
【数9】
として定義する。ベクトルbは、ステップSa2において生成された複数の静磁場分布のうち、スライスjに対応する静磁場分布における全前景画素に相当する。スライスjにおいて、全前景画素に亘るN本の式をまとめると、以下の式(8)で表すことができる。
【数10】
処理回路131は、静磁場シミング機能1317により、式(8)について、式(5)と同様にコスト関数を定義する。処理回路131は、式(8)に関するコスト関数を最小化する最小二乗法により、0次シミング値と1次シミング値との組み合わせであるベクトルaを、第2収集範囲のスライスごとに計算する。すなわち、処理回路131は、第2収集範囲におけるスライスjごとに、M通りのベクトルaを算出する。
【0047】
静磁場シミング機能1317を実現する処理回路131は、スライスごとに算出された0次シミング値および1次シミング値を、0次シミング値および1次シミング値の算出に関するスライスと対応付けて、記憶装置129に記憶させる。なお、処理回路131は、静磁場シミング後のスライスごとの静磁場分布(以下、シミング後分布と呼ぶ)を、スライスと対応付けて、記憶装置129に記憶させてもよい。シミング後分布は、算出プログラムにより算出された0次シミング値および1次シミング値と、ステップSa2における処理により生成された静磁場分布とを式(8)に代入することにより、処理回路131によりスライスごとに計算される。例えば、スライスjに対応するシミング後分布は、ベクトルb’に対応する。
【0048】
(ステップSa4)
静磁場シミング機能1317を実現する処理回路131は、静磁場シミングによる算出結果に基づいて、マルチスライス撮像における複数のスライスにそれぞれ対応する複数のRFパルス各々の第1中心周波数と、複数のスライスにそれぞれ対応する複数のプリパルス各々の第2中心周波数とを決定する。
【0049】
具体的には、静磁場シミング機能1317を実現する処理回路131は、スライスごとに算出された0次シミング値の符号を反転する、すなわち0次シミング値にマイナスを乗ずることにより、第1中心周波数を決定する。処理回路131は、複数のスライス各々に対して決定された第1中心周波数から3.5ppm離れた周波数を、第2中心周波数として決定する。すなわち、処理回路131は、静磁場分布に基づいて、複数のスライス各々に対応するRFパルスの第1中心周波数と、プリパルスの第2中心周波数とを決定する。このとき、処理回路131は、決定された第1中心周波数と第2中心周波数とを、複数のスライスにそれぞれ対応する複数のシミング後分布とともにディスプレイ127に表示させてもよい。処理回路131は、複数のスライス各々において決定された第1中心周波数と第2中心周波数とをスライスに対応付けて記憶装置129に記憶させる。ステップSa1乃至Sa4の処理により、マルチスライス撮像における複数のスライス各々に対する静磁場シミング、すなわちスライス毎静磁場シミングは完了する。
【0050】
(ステップSa5)
収集順序決定機能1319を実現する処理回路131は、第1中心周波数と第2中心周波数とのうち少なくとも一方に応じて、マルチスライス撮像において第2MR信号が収集されるスライスの収集順序を決定する。例えば、処理回路131は、複数のスライスにそれぞれ対応する複数の第1中心周波数のうち最大の周波数から降順に、スライスの収集順序を決定する。なお、処理回路131は、複数の第1中心周波数を用いる代わりに、複数のスライスにそれぞれ対応する複数の第2中心周波数のうち最大の周波数から降順に、スライスの収集順序を決定してもよい。
【0051】
以下、一例として、マルチスライス撮像において用いられる複数のRFパルス各々は、複数のスライス各々において、第1中心周波数を含みかつ水の磁化を励起させる周波数帯域(以下、第1帯域と呼ぶ)を有するものとする。また、マルチスライス撮像において用いられる複数のプリパルス各々は、第2中心周波数を含みかつ脂肪組織からの第2MR信号の生成を抑制する周波数帯域(以下、第2帯域と呼ぶ)を有する脂肪抑制パルスであるものとする。第1中心周波数と第2中心周波数とを用いて収集順序を決定する場合、収集順序決定機能1319を実現する処理回路131は、第2MR信号が収集される収集スライスに関するプリパルスの第2帯域と、この収集スライスにおける第2MR信号の収集後にこの収集スライスとは異なるスライスに印加されるRFパルスの第1帯域とが重ならないように、収集順序を決定する。
【0052】
図3は、第2収集範囲BRが頭部である場合において、スライスの収集順序の決定に関する概念を説明するための図である。図3におけるSedge1およびSedge2は、第2収集範囲BRにおいて両端部に対応する2つのスライス(以下、上端スライス、下端スライスと呼ぶ)を示している。また、図3におけるScenは、第2収集範囲BRにおいて中央部分に対応するスライス(以下、中心スライスと呼ぶ)を示している。図3に示すSMFDは、複数のスライスにそれぞれ対応する複数のシミング後分布を示す図である。図3に示す複数のシミング後分布SMFD各々において、水の共鳴周波数(第1中心周波数f)と脂肪の共鳴周波数(第2中心周波数f)とは説明の便宜上分離されている。なお、シミング撮像として、例えば、トリプルエコー法を用いた場合、図3に示す複数のシミング後分布SMFDが得られる。
【0053】
具体的には、収集順序決定機能1319を実現する処理回路131は、図3に示すように、中心スライスScenから上端スライスSedge1に向かう矢印Arr1に沿って、かつ中心スライスScenから下端スライスSedge2に向かう矢印Arr2に沿って、第1中心周波数fを降順にまたは第2中心周波数fを降順に、スライスの収集順序を決定する。
【0054】
より詳細には、収集順序決定機能1319を実現する処理回路131は、マルチスライス撮像において前段の第2MR信号の収集に関する収集スライスに関する第2帯域BW2と、この前段の収集スライスにおける第2MR信号の収集後に続いて第2MR信号が収集されるスライスとは異なるスライスに印加されるRFパルスの第1帯域BW1とが重ならないように、収集順序を決定する。処理回路131は、決定された収集順序を記憶装置129に記憶させる。
【0055】
なお、複数のスライスにそれぞれ対応する複数の第1中心周波数fと複数の第2中心周波数fとが、複数のスライスにそれぞれ対応する複数のシミング後分布とともにディスプレイ127に表示されている場合、収集順序決定機能1319を実現する処理回路131は、インタフェース125を介した操作者の指示に従って、収集順序を決定してもよい。
【0056】
また、ステップSa5により決定された収集順序は、複数のシミング後分布、複数の第1中心周波数fおよび複数の第2中心周波数fとともに、ディスプレイ127に表示されてもよい。また、同一被検体Pの撮像部位に対してマルチスライス撮像が後日実行される場合、収集順序決定機能1319を実現する処理回路131は、記憶装置129から収集順序を読み出し、ディスプレイ127に表示してもよい。これらの場合、処理回路131は、収集順序に対する操作者の指示に従って収集順序を新たな収集順序に変更してもよい。このとき、処理回路131は、記憶装置129に記憶された収集順序を変更された収集順序に更新し、記憶装置129に記憶させる。また、処理回路131は、決定された収集順序を、被検体Pに関する患者情報、被検体Pに関する撮像条件、または撮像条件に関するプリセット(例えば、撮像部位ごとの撮像条件を本スキャン前に予め設定されたデータ)などと関連付けて記憶装置129に記憶してもよい
【0057】
ステップSa5の処理の後、撮像制御回路121は、第1中心周波数fと第2中心周波数fと決定された収集順序とに従って、1次シミング値に対応する電流値を用いてマルチスライス撮像を実行する。なお、1次シミング値を算出する静磁場シミングを実行しない場合、撮像制御回路121は、第1中心周波数fと第2中心周波数fと決定された収集順序とに従って、1次シミング値に対応する電流値を用いずにマルチスライス撮像を実行してもよい。インタフェース125を介して収集順序の変更操作が入力された場合、撮像制御回路121は、第1中心周波数fと第2中心周波数fと変更された収集順序とに従って、マルチスライス撮像を実行する。
【0058】
以上に述べた構成によれば、以下に示す効果を得ることができる。
本実施形態におけるMRI装置100によれば、シミング撮像により収集された第1MR信号に基づいて、マルチスライス撮像における複数のスライスにそれぞれ対応する複数の静磁場分布を生成し、生成された静磁場分布に基づいて複数の第1中心周波数fと複数の第2中心周波数fを決定し、複数の第1中心周波数fと複数の第2中心周波数fとのうち少なくとも一方に応じて、マルチスライス撮像において第2MR信号が収集されるスライスの収集順序を決定し、決定された収集順序と第1中心周波数fと第2中心周波数fとに従って、マルチスライス撮像を実行することができる。例えば、本MRI装置100によれば、第2MR信号が収集される収集スライスに関して第2収集範囲に印加されるプリパルスの第2帯域BW2と、収集スライスにおける第2MR信号の収集後に収集スライスとは異なるスライスに印加されるRFパルスの第1帯域BW1とが重ならないように、収集順序を決定することができる。
【0059】
また、本MRI装置100によれば、ディスプレイ127に、決定された収集順序を、第1中心周波数fと第2中心周波数fとともに表示し、表示された収集順序に対する操作者の指示に従って収集順序を新たな収集順序に変更し、第1中心周波数fと第2中心周波数fと変更された収集順序とに従って、マルチスライス撮像を実行することができる。これにより、本MRI装置100によれば、同一被検体に対するマルチスライス撮像において、同一の撮像順序でマルチスライス撮像を実行することができる。また、本MRI装置100によれば、操作者の所望に応じて、収集順序を適宜調整、変更することができる。
【0060】
以上のことから、本実施形態におけるMRI装置100によれば、マルチスライス撮像の前段の第2MR信号の収集時に関するプリパルスが、マルチスライス撮像の後段に収集される第2MR信号に影響を及ぼすことを回避することができる。これにより、本MRI装置100により実行される収集順序決定処理を伴うマルチスライス撮像方法によれば、マルチスライス撮像において生成されるMR画像の画質を向上させることができる。
【0061】
(第1応用例)
本応用例は、マルチスライス撮像におけるRFパルスによるスライス間の干渉(クロストーク)を避けて、スライスの収集順序を決定することにある。スライス間の干渉は、収集スライスに隣接する他のスライスに、収集スライスにおけるRFパルスの第1帯域BW1がはみ出すことにより発生する。このため、収集順序決定機能1319を実現する処理回路131は、ステップSa5の処理において、本実施形態に係る収集順序の決定方式に加えて、マルチスライス撮像において隣接する2つのスライス(以下、隣接スライスと呼ぶ)を連続して撮像しないように、収集順序を決定する。すなわち、本応用例では、ステップSa5の処理にインタリーブ収集の技術的思想を拘束条件として用いて、スライスの収集順序を決定する。
【0062】
以上に述べた構成によれば、本実施形態における効果に加えて、以下に示す効果をさらに得ることができる。
本実施形態におけるMRI装置100によれば、マルチスライス撮像において隣接スライスを連続して撮像しないように、スライスの収集順序を決定することができる。これにより、本MRI装置100によれば、RFパルスによるスライス間の干渉を解消することができ、マルチスライス撮像において生成されるMR画像の画質をさらに向上させることができる。
【0063】
(第2応用例)
本応用例は、静磁場シミング機能1317による静磁場シミングの実行後における複数の静磁場分布、すなわち複数のシミング後分布が近い複数のスライスの収集順序が近くなるように、スライスの収集順序を決定することにある。収集順序決定機能1319を実現する処理回路131は、ステップSa5の処理において、本実施形態に係る収集順序の決定方式に加えて、複数のスライスにそれぞれ対応する複数のシミング後分布の相似の程度(以下、相似度と呼ぶ)に応じて、収集順序を決定する。すなわち、本応用例では、相似度が近い複数のスライスを連続して撮像することをステップSa5の処理における拘束条件として用いて、スライスの収集順序を決定する。
【0064】
具体的には、収集順序決定機能1319を実現する処理回路131は、ステップSa5の処理において、複数のスライスにおける複数のシミング後分布の相似度を計算する。処理回路131は、複数のシミング後分布に対して例えば相互相関処理を適用することで、相似度を計算する。次いで、処理回路131は、本実施形態に係る収集順序の決定方式に加えて、マルチスライス撮像において連続して撮像される2つのスライスに関する相似度が近くなるように、収集順序を決定する。なお、本応用例は、第1応用例と組み合わせて実行されてもよい。
【0065】
以上に述べた構成によれば、本実施形態における効果に加えて、以下に示す効果をさらに得ることができる。
本実施形態におけるMRI装置100によれば、複数のスライスにおける複数のシミング後分布の相似の程度を計算し、マルチスライス撮像において連続して撮像される2つのスライスに関する相似の程度が近くなるように収集順序を決定することができる。すなわち、本MRI装置100によれば、シミング後分布が近い複数のスライスに対して近い収集順序を付与することができる。これにより、本MRI装置100によれば、マルチスライス撮像における第2MR信号の収集ごとに第2収集範囲に印加されるプリパルスにより、収集スライスにおける脂肪抑制の効果を向上させることができる。換言すれば、本MRI装置100は、収集順序決定処理により決定された収集順序を用いてマルチスライス撮像の実行において、水信号の発生をできるだけ抑制せず、かつ脂肪信号の発生をできるだけ抑制させることができる。以上のことから、本MRI装置100によれば、マルチスライス撮像において生成されるMR画像の画質をさらに向上させることができる。
【0066】
(第3応用例)
本応用例は、第2中心周波数fに基づいて、第2収集範囲における複数のスライスに直交する方向に関する傾斜磁場のオフセットを決定し、決定されたオフセットを用いてマルチスライス撮像において連続して撮像される2つのスライスに関する第2中心周波数fが近くなるように、収集順序を決定することにある。以下、本応用例において、1次シミング値に対応する電流値を第1電流値と呼ぶ。すなわち、静磁場シミング機能1317を実現する処理回路131は、ステップSa3の処理において、複数の静磁場分布に基づいて、第2収集範囲における複数のスライス各々に対応する静磁場を一様にさせる傾斜磁場強度に対応する第1電流値を、1次シミング値として決定する。
【0067】
静磁場シミング機能1317を実現する処理回路131は、ステップSa5の処理において、第2中心周波数fを用いて、第2収集範囲における複数のスライスに直交する方向に関する傾斜磁場のオフセットに対応する第2電流値を決定する。複数のスライスがZ軸方向に垂直である場合、傾斜磁場のオフセットは、Z軸に関する傾斜磁場の強度となる。このとき、複数のスライス各々に関するシミング後分布は、スライス全体に傾斜磁場のオフセットが印加されるため変化しない。一方、複数のスライス各々における第1中心周波数fおよび第2中心周波数fは、それぞれ傾斜磁場のオフセットに応じて、図3に示すシミング後分布の周波数方向fに沿って移動される。
【0068】
収集順序決定機能1319を実現する処理回路131は、本実施形態に係る収集順序の決定方式に加えて、オフセットを用いてマルチスライス撮像において連続して撮像される2つのスライスに関する第2中心周波数fが近くなるように、収集順序を決定する。処理回路131は、例えば、図3に示す複数の第2中心周波数fが近い順に、収集順序を決定する。すなわち、本応用例では、ステップSa5の処理に、傾斜磁場のオフセットにより移動された複数の第2中心周波数fの近さを拘束条件として用いて、スライスの収集順序を決定する。
【0069】
ステップSa5の処理の後、撮像制御回路121は、第1中心周波数fと第2中心周波数fと決定された収集順序とに従って、第1電流値と第2電流値とを用いてマルチスライス撮像を実行する。なお、本応用例は、第1応用例と第2応用例とのうち少なくとも一方と組み合わせて実行されてもよい。
【0070】
以上に述べた構成によれば、本実施形態における効果に加えて、以下に示す効果をさらに得ることができる。
本実施形態におけるMRI装置100によれば、静磁場分布に基づいて、第2収集範囲における複数のスライス各々において静磁場分布を一様にさせる傾斜磁場強度に対応する第1電流値を決定し(1次のシミング)、第2中心周波数fに基づいて複数のスライスに直交する方向に関する傾斜磁場のオフセットに対応する第2電流値を決定し、決定されたオフセットを用いてマルチスライス撮像において連続して撮像される2つのスライスに関する第2中心周波数fが近くなるように、収集順序を決定することができる。これにより、本MRI装置100によれば、傾斜磁場のオフセットにおいて第2中心周波数fが近いスライスに対して近い収集順序を付与することができ、マルチスライス撮像における第2MR信号の収集ごとに第2収集範囲に印加されるプリパルスにより、収集スライスにおける脂肪抑制の効果を向上させることができる。以上のことから、本MRI装置100によれば、マルチスライス撮像において生成されるMR画像の画質をさらに向上させることができる。
【0071】
(第4応用例)
本応用例は、第1の実施形態に第1乃至第3応用例を組み合わせることにある。すなわち、収集順序決定機能1319を実現する処理回路131は、ステップSa5の処理において、第1の実施形態および第1乃至第3応用例に関する技術的思想に対して最適化処理を実行することにより、収集順序を決定する。例えば、処理回路131は、第1中心周波数fを降順にすることまたは第2中心周波数fを降順にすることに関して第1評価関数を設定する。処理回路131は、RFパルスによるスライス間の干渉に関して第2評価関数を設定する。処理回路131は、静磁場分布の相似の程度に関して第3評価関数を設定する。処理回路131は、傾斜磁場のオフセットによる第2中心周波数fの近さに応じた第4評価関数を設定する。処理回路131は、第1乃至第4評価関数を重みづけ加算することにより、統合的な評価関数(以下、統合関数と呼ぶ)を設定する。なお、第1乃至第4評価関数または統合関数は、予め記憶装置129に記憶されてもよい。処理回路131は、統合関数に対して最適化処理を実行することにより、収集順序を決定する。最適化処理は、例えば、評価関数の最小化または最大化により実現される。
【0072】
なお、最適化処理は、上記説明に限定されず、各種最適化処理が適用可能である。例えば、収集順序決定機能1319を実現する処理回路131は、第1中心周波数fを降順にすることまたは第2中心周波数fを降順にすること、および隣接スライスを連続して収集しないこと等を拘束条件として、第3評価関数と第4評価関数とを重みづけ加算した統合関数に対して最適化処理を実行してもよい。
【0073】
第1乃至第4評価関数にそれぞれ対応する複数の重みは、マルチスライス撮像における撮像目的に応じて、適宜調整(チューニング)可能である。収集順序決定機能1319を実現する処理回路131は、撮像条件に応じて複数の重みを決定する。また、ディスプレイ127は、例えば、統合関数に関する複数の重みを表示してもよい。このとき、インタフェース125を介した操作者の指示により撮像目的、撮像部位等の撮像条件が入力されると、収集順序決定機能1319を実現する処理回路131は、撮像条件に応じて複数の重みを決定する。また、処理回路131は、インタフェース125を介した操作者の入力により、複数の重み各々を変更してもよい。
【0074】
本応用例における効果は、本実施形態の効果と第1乃至第3応用例の効果とを組み合わせたものであるため、説明は省略する。
【0075】
(変形例)
本変形例は、マルチスライス撮像におけるスライスの収集順序が、撮像部位と関連付けて予め記憶装置129に記憶されていることにある。本応用例においては、図1における静磁場分布生成機能1315、静磁場シミング機能1317は、不要となる。
【0076】
記憶装置129は、マルチスライス撮像におけるスライスの収集順序を、撮像部位と関連付けて記憶する。収集順序と撮像部位との関連付けは、例えばルックアップテーブル(look up table)により実現される。なお、記憶装置129は、撮像部位に加えて、性別、年齢、体重、身長等の患者情報をさらに関連付けて、収集順序を記憶してもよい。また、記憶装置129は、撮像条件に関するプリセットと関連付けて、収集順序を記憶してもよい。
【0077】
システム制御機能1311を実現する処理回路131は、インタフェース125を介して被検体Pの撮像部位が入力されると、入力された撮像部位に応じて、収集順序を記憶装置129から読み出す。なお、処理回路131は、ネットワークを介してRIS(Radiology Information System)等から検査情報を受け取ると、検査情報における撮像部位に応じて、収集順序を記憶装置129から読み出してもよい。また、処理回路131は、マルチスライス撮像に関するプリセットの読み出しに応じて、収集順序を記憶装置129から読み出してもよい。
【0078】
ディスプレイ127は、読み出された収集順序を表示する。なお、ディスプレイ127は、プリセットまたは撮像部位とともに収集順序を表示してもよい。
【0079】
インタフェース125は、操作者に指示に従って、表示された収集順序の変更操作を入力する。
【0080】
収集順序決定機能1319を実現する処理回路131は、読み出された収集順序を、変更操作に応じて変更された収集順序に更新する。処理回路131は、更新された収集順序を、撮像部位と関連付けて記憶装置129に記憶させる。なお、処理回路131は、更新された収集順序を、プリセットと関連付けて記憶装置129に記憶させてもよい。
【0081】
撮像制御回路121は、読み出された収集順序に従ってマルチスライス撮像を実行する。収集順序が更新された場合、撮像制御回路121は、更新された収集順序に従ってマルチスライス撮像を実行する。
【0082】
以上に述べた構成によれば、以下に示す効果を得ることができる。
本実施形態におけるMRI装置100によれば、スライス非選択のプリパルスを伴って複数のスライス各々に対して磁気共鳴信号(第2MR信号)を収集するマルチスライス撮像において第2MR信号が収集されるスライスの収集順序を、撮像部位と関連付けて記憶し、収集順序に従ってマルチスライス撮像を実行することができる。また、本MRI装置100によれば、収集順序をディスプレイ127に表示し、表示された収集順序の変更操作を入力し、変更操作に応じて変更された収集順序を更新し、撮像部位と関連付けて更新された収集順序を記憶装置129に記憶させ、更新された収集順序に従ってマルチスライス撮像を実行することができる。
【0083】
以上のことから、本実施形態におけるMRI装置100によれば、マルチスライス撮像の前段の第2MR信号の収集時に関するプリパルスが、マルチスライス撮像の後段に収集される第2MR信号に影響を及ぼすことを回避することができる。これにより、本MRI装置100によれば、マルチスライス撮像において生成されたMR画像の画質を向上させることができる。加えて、本変形例では、静磁場シミングなしに収集順序を決定できるため、収集順序の決定に関するスループットを向上させることができ、検査時間を短縮することができる。
【0084】
本実施形態および各種応用例の上記変形例の他の応用例として、本MRI装置100の技術的思想をクラウド等で実現する場合には、インタネット上のサーバーは、例えば図1の構成図における記憶装置129および処理回路131を有するものとなる。このとき、静磁場分布生成機能1315、静磁場シミング機能1317、収集順序決定機能1319等は、当該機能を実行するプログラム(医用処理プログラム)をサーバーの処理回路131にインストールし、これらをメモリ上で展開することによって実現される。
【0085】
以上に説明した実施形態、第1乃至第4の応用例、変形例等によれば、プリパルスを伴うマルチスライス撮像において、画質を低下させることなく、マルチスライス撮像を実行することができる。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0087】
100…MRI装置
101…静磁場磁石
103…傾斜磁場コイル
105…傾斜磁場電源
107…寝台
109…寝台制御回路
111…ボア
113…送信回路
115…送信コイル
117…受信コイル
119…受信回路
121…撮像制御回路
123…バス
125…インタフェース
127…ディスプレイ
129…記憶装置
131…処理回路
1071…天板
1311…システム制御機能
1313…画像生成機能
1315…静磁場分布生成機能
1317…静磁場シミング機能
1319…収集順序決定機能
BW1…第1帯域
BW2…第2帯域
…第1中心周波数
…第2中心周波数
Scen…中心スライス
Sedge1…上端スライス
Sedge2…下端スライス
図1
図2
図3