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特許7237463アクリル系ポリマー含有ピッカリングエマルション
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  • 特許-アクリル系ポリマー含有ピッカリングエマルション 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】アクリル系ポリマー含有ピッカリングエマルション
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20230306BHJP
   A61K 8/04 20060101ALI20230306BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20230306BHJP
   B01J 13/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/04
A61Q17/04
B01J13/00 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018099545
(22)【出願日】2018-05-24
(65)【公開番号】P2019202962
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-05-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2018年5月23日オルビス・ザ・ショップ 池袋マルイ店 他、全国の店舗販売による公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2018年5月23日ネット販売による公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2018年5月23日インターネットを通じて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2018年5月16日ネット上でのプレスリリースによる公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中谷 明弘
【審査官】小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/006119(WO,A1)
【文献】特開2000-95634(JP,A)
【文献】特開2011-140449(JP,A)
【文献】特表2002-522364(JP,A)
【文献】特表2016-540783(JP,A)
【文献】特開2008-163018(JP,A)
【文献】特開2011-12031(JP,A)
【文献】特開2008-291026(JP,A)
【文献】特開2000-273016(JP,A)
【文献】特開2018-70600(JP,A)
【文献】特開2000-95639(JP,A)
【文献】特開2008-291027(JP,A)
【文献】国際公開第2013/094298(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体が乳化界面に吸着しており、アクリル系ポリマーを含み、
前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比が1.5~であることを特徴とする、ピッカリングエマルション。
【請求項2】
前記アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構造を含む、請求項1に記載のピッカリングエマルション。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数が1~20である、請求項2に記載のピッカリングエマルション。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるエステル残基は置換基を有しない、請求項2又は3に記載のピッカリングエマルション。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数が1~20であり、エステル残基が置換基を有しない、請求項2に記載のピッカリングエマルション。
【請求項6】
前記アクリル系ポリマーが、(メタ)アクリル酸アルキルから誘導される構成単位を含むコポリマーであることを特徴とする、請求項1~5の何れか一項に記載のピッカリングエマルション。
【請求項7】
前記アクリル系ポリマーが、アクリレーツコポリマーであることを特徴とする、請求項1~6の何れか一項に記載のピッカリングエマルション。
【請求項8】
油相成分として極性油を含むことを特徴とする、請求項1~の何れか一項に記載のピッカリングエマルション。
【請求項9】
前記極性油としてIOB値0.1以上の高極性油を含むことを特徴とする、請求項に記載のピッカリングエマルション。
【請求項10】
ピッカリングエマルションに含まれる油相に占める極性油の割合が、60質量%以上であることを特徴とする、請求項8又は9に記載のピッカリングエマルション。
【請求項11】
前記極性油として紫外線吸収剤を含むことを特徴とする、請求項8~10の何れか一項に記載のピッカリングエマルション。
【請求項12】
ピッカリングエマルションに含まれる油相に占める紫外線吸収剤の割合が、30質量%以上であることを特徴とする、請求項11に記載のピッカリングエマルション。
【請求項13】
平均乳化粒子径がμm以下であることを特徴とする、請求項1~12の何れか一項に記載のピッカリングエマルション。
【請求項14】
前記粉体以外の界面活性剤の含有量が0.1質量%以下であることを特徴とする、請求項1~13の何れか一項に記載のピッカリングエマルション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はピッカリングエマルションに関する。
【背景技術】
【0002】
両親媒性の固体粒子を界面に吸着させることで乳化した剤形は、ピッカリングエマルションとして従来知られており、化粧料においても、その活用が提案されている。例えば、前記固体粒子として、二酸化チタン、酸化亜鉛等が提案され、これらの表面を疎水化処理した固体粒子をピッカリングエマルションの調製に使用することが提案されている(特許文献1)。また、部分的疎水化シリカを用いた水中油乳化型エマルションも提案され、べたつきのなさやみずみずしさ、高温乳化安定性において良好であるとされている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2001-518111号公報
【文献】特開2013-129626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ピッカリングエマルションでは、乳化できる油剤の種類や、量に制限があり、制限を超えると乳化状態が悪化するという課題があった。
本発明の解決しようとする課題は、ピッカリングエマルションの乳化安定性を向上させる技術を提供することにある。特に油相成分として極性油剤を含有する形態にも応用可能なピッカリングエマルションの乳化安定性向上技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者の鋭意研究努力により、アクリル酸ポリマーの添加によって、乳化界面に吸着する粉体の分散状態が改善された、乳化粒子径の細かい安定性に優れたピッカリングエマルションが調製できることが見出された。かかる知見に基づき、本発明を完成させた。
【0006】
上記課題を解決する本発明は、粉体が乳化界面に吸着しており、アクリル系ポリマーを含むことを特徴とする、ピッカリングエマルションである。
本発明の乳化組成物は乳化安定性に優れる。
【0007】
本発明の好ましい形態では、前記アクリル系ポリマーが、(メタ)アクリル酸アルキルから誘導される構成単位を含むコポリマーである。
【0008】
本発明の好ましい形態では、前記アクリル系ポリマーが、アクリレーツコポリマーである。
【0009】
本発明の好ましい形態では、油相成分として極性油を含む。
従来、油相成分として極性油を含む場合、安定なピッカリングエマルションを調製することが困難であった。本発明の適用により、油相成分として極性油を含む形態のピッカリングエマルションの安定性を向上させることができる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記極性油としてIOB値0.1以上の高極性油を含む。
従来、このような高極性油を含む形態のピッカリングエマルションは安定性に劣るものであった。本発明によれば、このような高極油を含む形態であっても安定したピッカリングエマルションを提供することができる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、ピッカリングエマルションに含まれる油剤に占める極性油の割合が60質量%以上である。
従来技術では、油剤に占める極性油の割合が60質量%以上のピッカリングエマルションは、安定的に調製することが困難であった。本発明によれば、このような極性油を高含有で含む形態であっても、乳化安定性に優れたピッカリングエマルションを提供することができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記極性油として紫外線吸収剤を含む。
本発明によれば、紫外線吸収剤を含む形態のピッカリングエマルションの乳化安定性を向上させることができる。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態では、ピッカリングエマルションに含まれる油剤に占める紫外線吸収剤の割合が、30質量%以上である。
本発明によれば、このような紫外線吸収剤高含有のピッカリングエマルションを提供することができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、平均乳化粒子径が15μm以下である。
このような形態のピッカリングエマルションは乳化安定性に優れる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記粉体以外の界面活性剤の含有量が0.1質量%以下である。
界面活性剤フリーの形態としても、本発明のピッカリングエマルションは優れた乳化安定性を示す。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、乳化安定性に優れたピッカリングエマルションを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1と比較例2のピッカリングエマルションの顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<1>アクリル系ポリマー
本発明のピッカリングエマルションは、アクリル系ポリマーを必須の構成要素として含む。アクリル系ポリマーには、(メタ)アクリル酸並びにそのアミド及びエステルから選択される(メタ)アクリル系モノマーを構成モノマーとする、ポリマー又はコポリマーが含まれる。
本発明においては、ランダム共重合体、交互共重合体又はブロック共重合体であるアクリル系コポリマーを用いることが好ましい。
【0019】
(メタ)アクリル酸のエステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを好適に例示することができる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数は特に限定されず、好ましくは1~20、より好ましくは1~10、さらに好ましくは1~4を例示することができる。
【0020】
(メタ)アクリル酸のアミド又はエステルを構成モノマーとする場合には、そのアミド残基又はエステル残基は、置換基を有していてもよい。
置換基としては、糖残基、アミノ酸残基、ホスホリルコリンなどの生体構成物質に由来する置換基であってもよい。
【0021】
このようなモノマーは、公知の方法によって調整することができる。例えば糖残基であれば、糖とクロロエタノールなどの多価アルコールのハロゲン化物を酸化銀などの触媒存在下、アルカリにより縮合せしめヒドロキシエチル基をアノマーに導入し、このヒドロキシ基とアクリル酸乃至はメタクリル酸とをエステル化し所望のモノマーに導くことができる。
【0022】
アミノ酸残基であれば、アクリル酸又はメタクリル酸を塩化チオニルなどにより酸クロリドへ導き、アミノ酸とアルカリ存在下縮合せしめ、酸アミド結合を構築することによりアミド型の所望のモノマーを得ることができる。
【0023】
ホスホリルコリンなどのようなリン脂質類似構造は、ホスホリルコリンとクロロエタノールをアルカリ存在下縮合せしめ、ヒドロキシエチルホスホリルコリンとなす。これとアクリル酸クロリド又はメタクリル酸クロリドとアルカリ存在下縮合させることにより、所望のモノマーを得ることができる。
【0024】
このような(メタ)アクリル系モノマーとしては、具体的に(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルへキシル、(メタ)アクリル酸n-へキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸シクロへキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸へプタデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸オレイル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、直鎖状、分岐鎖状又は脂環式の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;アクリロニトリル;アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミド、N-オクチルアクリルアミド、N-t-オクチルアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド;2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド;アミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチルメタクリレート、メチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)メタアクリルアミド;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸グリシジル等の、環式化合物とメタ)アクリル酸のエステル類;(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステル類;スルホン酸基含有(メタ)アクリルエステル;(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート等のメタアクリロイルオキシアルキルリン酸モノエステル;(メタ)アクリル酸グリセリル、2-メタアクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、β-カルボキシエチルアクリレート、アクリロイルオキシエチルサクシネート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸;1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレン(n=2~50)グリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレン(n=2~50)グリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミド、ビスフェノールF EO変性(n=2~50)ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA EO変性(n=2~50)ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールS EO変性(n=2~50)ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリカプロラクトネートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールヘキサントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラカプロラクトネートテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールエタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールブタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和二重結合を2個以上有する(メタ)アクリレート等が例示される。
【0025】
アクリル系ポリマーとしては、(メタ)アクリル系モノマーと(メタ)アクリル系モノマー以外の構成モノマーを共重合させたコポリマーを使用してもよい。
このような構成モノマーとしては、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸;スチレン等の芳香族ビニル化合物;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸;マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等の不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル;スルホン酸基含有単量体としては、例えばビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸等のアルケンスルホン酸;α-メチルスチレンスルホン酸等の芳香族ビニル基含有スルホン酸;(メタ)アリルアミン等の1~3級アミノ基含有不飽和化合物;N,N-ジメチルアミノスチレン等のアミノ基含有芳香族ビニル系化合物;ジビニルベンゼン、ジイソプロフェニルベンゼン、トリビニルベンゼン等のエチレン性不飽和二重結合を2個以上有する化合物;エチレン性不飽和二重結合を2個以上有するウレタンオリゴマー;エチレン性不飽和二重結合を2個以上有するシリコーン化合物;酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルピロリドン等が例示される。
【0026】
アクリル系ポリマーとしては、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリル酸(C1-C4)アルキレート、メタアクリル酸(C1-C4)アルキレートからなる群から選ばれる二種以上の構成モノマーの共重合体であることが好ましい。
具体的には、INCI名(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,第14版,第1巻,CTFA,2012年,p.60~61)で「ACRYLATES COPOLYMER(アクリレーツコポリマー)」と表記される化合物が挙げられる。
【0027】
アクリル系ポリマーは、上述の構成モノマーを重合して得ることができる。
重合は、アゾビスブチロニトリル等の重合開始剤の存在下、常法に従って行えばよい。
【0028】
アクリル系ポリマーの含有量は、ピッカリングエマルションの乳化粒子径の低減ないし乳化安定性の向上効果の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.15質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上である。
【0029】
また、ピッカリングエマルション全体に対するアクリル系ポリマーの含有量の上限は、特に限定されないが、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下を目安とすることができる。
【0030】
<2>粉体
本発明のピッカリングエマルションにおいては、粉体が乳化界面に吸着している。この粉体としては、通常、ピッカリングエマルションに用いられる乳化能力を有する粉体であれば特段の制限なく用いることができる。
【0031】
粉体としては、有機粉体や無機粉体の何れをも用いることができる。特に本発明においては金属酸化物粉体を用いることが好ましい。
ここでいう金属酸化物には、ケイ素などの半金属の酸化物も含まれる。
金属酸化物粉体としては、シリカ、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化ジルコニウム及び酸化セリウムなどを例示することができる。
【0032】
金属酸化物粉体としてシリカ粉体を用いる場合には、例えば、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成される、いわゆる乾式シリカ粉末、及び水ガラス等から製造される、いわゆる湿式シリカ粉末の何れを用いてもよい。
乾式シリカ粉末としては、例えばAerosilシリーズ(日本アエロジル株式会社)、CAB-O-SILシリーズ(キャボットコーポレーション)、HDKシリーズ(旭化成ワッカーシリコーン株式会社)、湿式シリカ粉末としては、例えばNipsilシリーズ(東ソー・シリカ株式会社)、HI-SILシリーズ(PPG)等の市販品の市販品を用いることができる。
【0033】
その他の金属酸化物粉体についても、多くの市販品が存在するので、市販品をそのまま用いることもできる。このような市販品としては、具体的には、微粒子二酸化チタンとして、「MTY-110M3S」(テイカ株式会社製)、「MTY-02」(テイカ株式会社製)、「MT-100TV」(テイカ株式会社製)、「MT-500HSA」(テイカ株式会社製)、「MT-100T」(テイカ株式会社製)、「MT-01」(テイカ株式会社製)、「MT-10EX」(テイカ株式会社製)、「MT-05」(テイカ株式会社製)、「MT-100Z」(テイカ株式会社製)、「MT-150EX」(テイカ株式会社製)、「MT-100AQ」(テイカ株式会社製)、「MT-100WP」(テイカ株式会社製)、「MT-100SA」(テイカ株式会社製)、「MT-500B」(テイカ株式会社製)、「MT-500SA」(テイカ株式会社製、「MT-600B」(テイカ株式会社製)、「MT-500SAS」(テイカ株式会社製)、)「タイペークCR-50」(石原産業株式会社製)、「タイペークTTO-M-1」(石原産業株式会社製)「タイペークTTO-V4」(石原産業株式会社製)、「ST-455」(チタン工業株式会社製)、「STT-65C-S」(チタン工業株式会社製)、「STT-30EHS」(チタン工業株式会社製)、「バイエルチタンR-KB-1」(バイエル社製)等が挙げられる。
【0034】
また、微粒子酸化亜鉛として、「MZ-300」(テイカ株式会社製)、「MZY-303S」(テイカ株式会社製)、「MZ-306X」(テイカ株式会社製)、「MZ-500」(テイカ株式会社製)、「MZY-505S」(テイカ株式会社製)、「MZ-506X」(テイカ株式会社製)、「MZ-510HPSX」(テイカ株式会社製)、「WSX-MZ-700」(テイカ株式会社製)、「SANT-UFZO-450」(三好化成株式会社製)、「SANT-UFZO-500」(三好化成株式会社製)、「FZO-50」(石原産業株式会社製)、「マックスライトZS-032」(昭和電工株式会社製)、「マックスライトZS-032D」(昭和電工株式会社製)等が挙げられる。
【0035】
金属酸化物粉体の表面は疎水化処理されていることが好ましい。疎水化金属酸化物粉体は、金属酸化物粉体と疎水化処理剤を反応させ、該粉体の表面に存在する水酸基に疎水基を共有結合によって付加したり、また、金属酸化物粉体の表面に疎水化処理剤を物理的に付着させることで被覆したりすることによって調製することができる。
【0036】
疎水化処理は、有機ケイ素化合物、シリコーン、炭化水素油、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、高級アルコール、ポリオキシアルキレン化合物等の疎水化処理剤で金属酸化物粉体を処理する方法が挙げられる。
特に好ましくは、有機ケイ素化合物又はシリコーンを疎水化処理剤として金属酸化物粉体を処理する。
【0037】
有機ケイ素化合物としては、ヘキサメチルジシラザン、モノメチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、トリメチルエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、パルミチルシラン等が挙げられる。これらは一種或いは二種以上の混合物で用いられる。
【0038】
本発明の好ましい実施の形態では、トリメチルシランによって金属酸化物粉体を処理し、表面にトリメチルシリル基が付加された疎水化金属酸化物粉体を用い、特に好ましくはトリメチルシランによってシリカ粉体を処理し、表面にトリメチルシリル基が付加された部分的疎水化シリカを用いる。
【0039】
疎水化処理剤としてシリコーンを用いる場合には、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、α-メチルスチレン変性シリコーン、クロルフェニルシリコーン、フッ素変性シリコーンなどが例示できる。
【0040】
金属酸化物粉体の平均一次粒子径は特に限定されない。例えば1~1000nmを目安とすることができ、好ましくは3~100nm、より好ましくは5~30nmである。
【0041】
また、金属酸化物粉体の平均二次粒子径も特に限定されない。好ましくは1μm以下を目安とすることができ、好ましくは500nm以下、さらに好ましくは200nm以下、さらに好ましくは50nm以下である。
【0042】
ここで、平均一次粒子径及び平均二次粒子径は、走査型電子顕微鏡像上で2500個以上の粒子の最大径を測定し、その個数平均を算出することにより求めることができる。
なお、平均二次粒子径は外用組成物の調製の際に加える応力によって調整することができる。
【0043】
粉体の含有量の下限は、特に限定されないが、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上を目安とすることができる。
また、粉体の含有量の上限は、特に限定されないが、好ましくは10質以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下を目安とすることができる。
【0044】
<3>油相成分
【0045】
本発明のピッカリングエマルションにおける油相に含まれる油剤は、特に限定されず、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油、シリコーン油等を含有することができる。
【0046】
液体油脂としては、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、メドウフォーム油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン等が挙げられる。
【0047】
固体油脂としては、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0048】
ロウ類としては、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等が挙げられる。
【0049】
炭化水素油としては、流動パラフィン、オゾケライト、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
【0050】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン(ベヘニン)酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、トール酸等が挙げられる。
【0051】
高級アルコールとしては、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、バチルアルコール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等が挙げられる。
【0052】
エステル油としては、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、ステアリン酸スクロース、オレイン酸スクロース、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ペンタンエリスリトール、トリ-2-エチルヘキシル酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、パルミチン酸セチル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル等が挙げられる。
【0053】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン等の鎖状ポリシロキサンや、ペンタシロキサン、デカメチルポリシロキサン、ドデカメチルポリシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンポリシロキサンなどの環状ポリシロキサン等が挙げられる。
【0054】
中でも、シリコーン油、エステル油、液体油脂、固体油脂及びロウ類が好ましく用いられ、特にジフェニルポリシロキサン、エチルヘキサン酸セチル等が好ましく用いられる。油剤は1種または2種以上を用いることができる。
【0055】
本発明のピッカリングエマルションは乳化安定性に優れることから、油剤として極性油剤を用いることができる。
極性油剤としては、ツバキ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、アボカド油、サザンカ油、ヒマシ油、ホホバ油、ヒマワリ油、ナタネ油、ゴマ油、大豆油等の植物油;2-エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、パルミチン酸オクチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソプロピル、イソパルミチン酸オクチル、セバシン酸イソプロピル等のモノエステル油;セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、フタル酸ジイソプロピル等のジエステル油;トリ2-エチルへキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン等のトリエステル油などを特に好ましく例示することができる。
【0056】
また、IOB値が0.1以上、より好ましくは0.2以上の高極性油剤を用いる形態とすることが好ましい。このような高極性油剤を用いた場合、従来の方法では安定なピッカリングエマルションを調製することが難しかった。本発明によれば高極性油剤を用いた場合であっても乳化安定性に優れたピッカリングエマルションを調製することができる。
【0057】
また、紫外線吸収剤は一般的に極性が高く、これを用いて安定なピッカリングエマルションを調製することが難しかった。本発明によれば紫外線吸収剤を用いた場合であっても乳化安定性に優れたピッカリングエマルションを調製することができる。
【0058】
紫外線吸収剤としては、化粧料などの皮膚外用剤の分野で使用されているものであれば特段の限定なく用いることができ、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸モノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシパラアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジエトキシパラアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルパラアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルパラアミノ安息香酸ブチルエステル、N,N-ジメチルパラアミノ安息香酸エチルエステル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル等の安息香酸誘導体;ホモメンチル-N-アセチルアントラニレート等のアントラニル酸誘導体;サリチル酸及びそのナトリウム塩、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレート等のサリチル酸誘導体;オクチルシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、2-エチルヘキシルp-メトキシシンナメート(メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、パラメトキシケイ皮酸オクチル)、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート(シノキサート)、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリラート(オクトクリレン)、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメート、フェルラ酸及びその誘導体等のケイ皮酸誘導体;2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン(オキシベンゾン-3)、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4’-メチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-フェニルベンゾフェノン、2-エチルヘキシル-4’-フェニル-ベンゾフェノン-2-カルボキシレート、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシ-3-カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;3-(4’-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー;2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール;2,2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール;2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール;2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニルベンゾトリアゾール;ジベンザラジン;ジアニソイルメタン;5-(3,3-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン;4-t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン等のジベンゾイルメタン誘導体;オクチルトリアゾン;ウロカニン酸及びウロカニン酸エチル等のウロカニン酸誘導体;2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、1-(3,4-ジメトキシフェニル)-4,4-ジメチル-1,3-ペンタンジオン、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル等のヒダントイン誘導体;フェニルベンズイミダソゾールスルホン酸、テレフタリリデンジカンフルスルホン酸、ドロメトリゾールトリシロキサン、アントラニル酸メチル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ルチン及びその誘導体、オリザノール及びその誘導体;ジメチコジエチルベンザルマロネート(ポリシリコーン-15)などのシリコーン系紫外線吸収剤が好ましいものとして挙げられる。
【0059】
本発明のピッカリングエマルションは、紫外線吸収剤としてUVA吸収剤、特にベンゾフェノン誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体、およびヒダントイン誘導体から選ばれるUVA吸収剤を含む形態において特に有用である。
これは、前記UVA吸収剤は、油剤への溶解性が低く、特に低温において析出等の問題が存するためである。本発明によれば、UVA吸収剤を安定に含有せしめることができる。
【0060】
また、本発明のピッカリングエマルションにおいて、紫外線吸収剤としてUVA吸収剤とUVB吸収剤を組み合わせることも、紫外線吸収能の観点から好ましい。ここで、特にUVB吸収剤として、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルを用いることが、系の安定性と使用感の向上の観点から特に好ましい。
【0061】
ピッカリングエマルション全体に占める油剤の割合は特に限定されないが、水中油型のピッカリングエマルションとする場合には、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上とすることができる。
また、水中油型の形態とする場合には、全体に占める油剤の割合は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下とすることができる。
【0062】
水中油型の形態とする場合、ピッカリングエマルション全体に占める極性油の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上とすることができる。
【0063】
水中油型の形態とする場合、ピッカリングエマルション全体に占める紫外線吸収剤の含有量は、紫外線吸収機能の観点から、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上とすることができる。
【0064】
また、油相全体に占める極性油の含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
【0065】
油相全体に占める紫外線吸収剤の含有量の下限は、紫外線吸収機能の向上の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。
【0066】
油相全体に占める紫外線吸収剤の含有量の上限は、特に限定されず、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0067】
<4>ピッカリングエマルション
本発明のピッカリングエマルションは、油中水型としてもよいし、水中油型としてもよい。好ましくは水中油型とする。
【0068】
水中油型とする場合には、水相と油相の質量比は特に限定されないが、好ましくは4:6~9:1、より好ましくは5:5~8:2、さらに好ましくは5.5:4.5~7:3、さらに好ましくは6:4~6.5:3.5を目安とすることができる。
【0069】
また、本発明においては粉体と油相の質量比は、好ましくは1:120~3:10、より好ましくは1:60~1:5、さらに好ましくは1:30~1:10である。
【0070】
また、本発明においてはアクリル系ポリマーと粉体の質量比は、好ましくは1:0.5~1:100、より好ましくは1:1~1:50、さらに好ましくは1:1.5~1:20、さらに好ましくは1:2~1:15、さらに好ましくは1:3~1:10、さらに好ましくは1:3~1:8である。
アクリル系ポリマーと粉体の質量比を前記範囲とすることによってピッカリングエマルションの乳化安定性を向上させることができる。
【0071】
本発明のピッカリングエマルションにおける水相は、通常化粧料に用いられる成分を特に制限なく含むことができるが、例えば、以下の成分を含有することが好ましい。
ポリオールとしては、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2-ペンタンジオール、2,4-ヘキシレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール等が挙げられ、中でも、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ソルビトールが好ましく挙げられる。これらの含有量は、ピッカリングエマルション全体の好ましくは0.5~20質量%、より好ましくは3~10質量% である。また、これらの含有量は、水相の好ましくは3~15質量%、さらに好ましくは5~10質量%である。
また、増粘剤を含有することも好ましい。増粘剤としては、キサンタンガム、ジェランガム、グアガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラン、ケラト硫酸、ローカストビーンガム,サクシノグルカン、カロニン酸、キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、アクリル酸ナトリウムグラフトデンプン、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース、ベントナイト等が挙げられ、よりこのましくはキサンタンガム、グアガム等の水溶性多糖類、寒天、アクリル酸ナトリウムグラフトデンプン、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース。さらに好ましくは、キサンタンガム、グアガム等の水溶性多糖類、寒天が好ましく挙げられる。これらの含有量は、ピッカリングエマルション全体の好ましくは0.05~5質量%、より好ましくは0.1~1質量%である。また、これらの含有量は、水相の好ましくは0.1~3質量%、さらに好ましくは0.3~1質量%である。
【0072】
また、本発明のピッカリングエマルションにおける水の含有量は、全体に対し好ましくは30~80質量%、より好ましくは40~70質量%、特に好ましくは45~65質量%である。
また、水の含有量は、水相に対し好ましくは70~90質量%、より好ましくは75~85質量%である。
【0073】
本発明のピッカリングエマルションにおける平均乳化粒子径は、乳化安定性の観点から、好ましくは20μm未満、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下、さらに好ましくは8μm以下、さらに好ましくは6μm以下、さらに好ましくは5μm以下、さらに好ましくは4μm以下である。
なお、平均乳化粒子径は、光学顕微鏡で20℃下観察し、無作為に選出した乳化粒子10個の最大径の個数平均を算出することにより求めることができる。
【0074】
本発明において、平均乳化粒子径は、40℃で2週間以上、好ましくは1か月静置したときの値が、絶対値としては前記範囲であることが好ましい。
また、相対値としては調製直後の平均乳化粒子径の値に対して、40℃で2週間以上、好ましくは1か月静置したときの平均乳化粒子径の値が、好ましくは2倍以下、より好ましくは1.2倍以下であることが好ましい。
【0075】
また、本発明のピッカリングエマルションにおいては、上記成分以外に通常化粧料で使用される任意成分を発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。かかる任意成分としては、例えば、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類、イミダゾリン系両性界面活性剤(2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE-ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE-グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2-オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2-デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類、表面処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、表面処理されていても良い、酸化コバルト、群青、紺青、酸化亜鉛の無機顔料類、表面処理されていても良い、酸化鉄二酸化チタン焼結体等の複合顔料、表面処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類、レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩,ビタミンB6トリパルミテート,ビタミンB6ジオクタノエート,ビタミンB2又はその誘導体,ビタミンB12,ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類、α-トコフェロール,β-トコフェロール,γ-トコフェロール,ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類などが好ましく例示できる。
【0076】
本発明のピッカリングエマルションには界面活性剤を含有せしめてもよいがその含有量は極力少なくすることが好ましい。界面活性剤の含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0質量%である。
【0077】
本発明のピッカリングエマルションは、室温下、水相に粉体を分散し、そこへ油相を投入し乳化することにより製造することができる。
【0078】
本発明のピッカリングエマルションは、皮膚外用剤に好適である。また、中でも、紫外線吸収剤の機能を生かし、サンスクリーン皮膚外用剤とすることが好ましい。
中でも、化粧料に用いることが好ましく、化粧下地、ファンデーション等とすることが好ましい。
【実施例
【0079】
表1に示す成分中、水相成分の混合物にシリル化シリカを分散し、そこへ油剤を撹拌しながら投入し、乳化することで、実施例及び比較例のピッカリングエマルションを製造した。
なお、試験例1で使用したシリル化シリカは、シリカ微粒子(AEROSIL社製、平均一次粒子径12nm(測定方法は前述のとおり))とモノ、ジ、及びトリメチルシリル疎水化処理剤を混合することにより得られたものを使用した。
【0080】
【表1】
【0081】
(乳化安定性)
実施例及び比較例のピッカリングエマルションを40℃で1か月放置した。放置前後の平均乳化粒子径を計測し、経時による平均乳化粒子径の増加率を計算し、以下の基準に従い乳化安定性を評価した。結果を表1に示す。
○・・・100%~120%
△・・・120%~200%
×・・・200%~
【0082】
(平均乳化粒子径)
実施例及び比較例のピッカリングエマルションを光学顕微鏡で観察し、上述の方法により平均乳化粒子径を測定した。結果を表1に示す。また、実施例1と比較例1のピッカリングエマルションの顕微鏡像を図1に示す。
【0083】
(紫外線カット力)
実施例及び比較例のピッカリングエマルションを、サージカルテープ(Transporeスリーエムヘルスケア株式会社製)に、2mg/cmの載り量で6.4cm×6.4cmの広さで塗布し、Labsphere社製UV-2000S SPFアナライザーを用いて10回測定して得られた平均防御スペクトルからSPF値を求めた。SPF50以上であったものを◎、SPF30以上50未満であったものを〇、SPF15以上30未満であったものを△、SPF15未満のものを×、として評価結果を表1に示す。
【0084】
表1及び図1に示すように、アクリレーツコポリマーを含む実施例1のピッカリングエマルションは、これを含まない比較例1のピッカリングエマルションと比較して顕著に平均乳化粒子径が小さく、乳化安定性に優れていた。
【0085】
また、表1に示した実施例1~3の結果より、アクリレーツコポリマーの含有量依存的に平均乳化粒子径が小さくなり、かつ、乳化安定性が向上することがわかる。
【0086】
これらの結果は、ピッカリングエマルションにアクリル系ポリマーを加えることによって乳化安定性を顕著に向上させることができることを示している。
この効果は、アクリル系ポリマーによって乳化界面に吸着する粉体の分散性が向上したことに起因するものと考えられる。
【0087】
また、表1に示すように、実施例4~6は実施例1とは油相の組成が異なるが、いずれも非常に優れた乳化安定性を備えている。
従来技術では安定したピッカリングエマルションを得ることができる油相の種類や組成が限定されていた(要すれば比較例1)。しかし、表1に示した結果は、本発明の適用によりその自由度を大幅に向上させることができることを示している。
【0088】
また、実施例1~3のピッカリングエマルションは、油相の約半分を紫外線吸収剤が占めるが、優れた乳化安定性を示している。
従来技術では紫外線吸収剤を多量に含むピッカリングエマルションの調製は困難であった(要すれば比較例1)。しかし、表1に示した結果は、アクリル系ポリマーの添加によって、紫外線吸収剤を多量に含むピッカリングエマルションの乳化安定性を顕著に向上させることができることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明はサンスクリーン皮膚外用剤に好適である。
図1