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特許7237466ハイブリッドヘッドランプシステム、及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】ハイブリッドヘッドランプシステム、及び方法
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/16 20180101AFI20230306BHJP
   F21S 41/155 20180101ALI20230306BHJP
   F21S 41/663 20180101ALI20230306BHJP
   F21S 41/151 20180101ALI20230306BHJP
   F21Y 115/15 20160101ALN20230306BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20230306BHJP
   F21Y 115/20 20160101ALN20230306BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20230306BHJP
   F21W 102/155 20180101ALN20230306BHJP
   F21W 102/13 20180101ALN20230306BHJP
【FI】
F21S41/16
F21S41/155
F21S41/663
F21S41/151
F21Y115:15
F21Y115:30
F21Y115:20
F21Y115:10
F21W102:155
F21W102:13
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018102384
(22)【出願日】2018-05-29
(65)【公開番号】P2018206769
(43)【公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-02-26
(31)【優先権主張番号】15/608,357
(32)【優先日】2017-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516326748
【氏名又は名称】ヴァレオ、ノース、アメリカ、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VALEO NORTH AMERICA, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(72)【発明者】
【氏名】ブラント、ポッター
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、オリジック
【審査官】坂口 達紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-243727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/16,41/141
41/663
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロービーム配光を生成するように構成されたロービームアセンブリと、ハイビーム配光を生成するように構成されたハイビームアセンブリと、を備えるヘッドランプアセンブリであって、
前記ロービームアセンブリは、
第1配光を発光するように光学的に構成される第1レーザー固体光源と、第2配光を発光するように光学的に構成される第2レーザー固体光源とを有する第1ロービーム固体光源モジュールと、
前記第1及び第2配光のうちの少なくとも一方に少なくとも部分的に重なる第3配光を発光するように光学的に構成される固体光源を有する第2ロービーム固体光源モジュールと、を備え、
前記第1配光は、前記第2配光と異なり、
前記第1配光は、最大強度ホットスポット領域を有し、
前記第2配光は、前記第1配光の前記最大強度ホットスポット領域よりも大きい面積の集結強度ホットスポット領域と、前記第1配光に比較して大きく分散した分布とを有する、
ヘッドランプアセンブリ。
【請求項2】
前記第2ロービーム固体光源モジュールは、複数の固体光源モジュールを有する、
請求項1に記載のヘッドランプアセンブリ。
【請求項3】
第1配光を発光するように光学的に構成される第1レーザー固体光源と、第2配光を発光するように光学的に構成される第2レーザー固体光源とを有する第1固体光源モジュールと、
前記第1及び第2配光のうちの少なくとも一方に少なくとも部分的に重なる第3配光を発光するように光学的に構成される第2固体光源モジュールと、
を備えるヘッドランプアセンブリにおいて、
前記第1配光は、前記第2配光と異なり、
前記第1配光は、最大強度ホットスポット領域を有し、
前記第2配光は、前記第1配光の前記最大強度ホットスポット領域よりも大きい面積の集結強度ホットスポット領域と、前記第1配光に比較して大きく分散した分布とを有し、 前記ヘッドランプアセンブリは、ロービーム配光を生成するように構成される、
ヘッドランプアセンブリ。
【請求項4】
前記第2固体光源モジュールは、複数の固体光源モジュールを有する、
請求項3に記載のヘッドランプアセンブリ。
【請求項5】
ハイビーム配光を生成するように構成されたハイビームアセンブリを更に備える、
請求項3に記載のヘッドランプアセンブリ。
【請求項6】
第1配光を、第1固体光源モジュールの第1レーザー固体光源を介して発光するステップと、
第2配光を、前記第1固体光源モジュールの第2レーザー固体光源を介して発光するステップであって、前記第1配光は、前記第2配光と異なるステップと、
第3配光を、第2固体光源モジュールを介して発光するステップであって、前記第3配光は、前記第1及び第2配光のうちの少なくとも一方に少なくとも部分的に重なるステップと、
を備え、
前記第1配光は、前記第2配光と異なり、
前記第1配光は、最大強度ホットスポット領域を有し、
前記第2配光は、前記第1配光の前記最大強度ホットスポット領域よりも大きい面積の集結強度ホットスポット領域と、前記第1配光に比較して大きく分散した分布とを有する、
ハイブリッド配光を生成する方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
自動車両は、内部及び外部照明用の多くの照明装置を有している。例えば、車両外部の照明装置は、停止ランプ機能、テールランプ機能、ヘッドランプ機能、日中走行照明機能、動的曲げ照明機能、及びフォグランプ機能を果たす。多くの研究により、夜間の視認性が高速道路での安全に重要であることがわかっている。
【0002】
車両及び歩行者の安全を改善する取組みにおいて、大多数の政府が、自動車両の照明性能に関する要件を規定する安全法令を公布している。これは、車道の適切な照明を保証するとともに、自動車両の視認性を向上させることでその存在が知覚され、且つその信号が昼の光でも、暗闇でも、視認性の悪い条件でも把握されることに役立っている。
【0003】
車両製造業者にとって、世界中の、特に彼らが関連するマーケット市場の種々の標準の技術的要件を満たす車両照明装置を設計することが常識である。近年、車両の照明は、購買者に対する審美的魅力に関しても重要となっている。したがって、車両製造業者は、照明装置が装着される車両のスタイリングを考慮しつつ、車両照明装置を設計する努力をしている。更に、車両製造業者は、車両の照明性能及びスタイリングを向上させるように、(必要とされる照明機能に加えて)任意的な照明効果を提供することができる。
【0004】
必要なコスト、技術、及び規制要件を満たしつつも審美的に魅力のある車両照明装置を提供することは技術的に厳しいものであろう。例えば、現在製造されている車やトラックのヘッドランプは、典型的に、多大な電力を使用するとともに、例えばリフレクタ、レンズ、カットオフ装置等の種々の更なる部品を必要とする。審美的照明効果は、更に多くの部品を必要として複雑さをもたらす。このような車両照明装置は、車両のスタイリングに容易に適合しないことが多い。
【0005】
近年、多くの車両製造業者が、発光ダイオード(LED)を有するランプを使用し始めた。LED源ランプは、所望の照明性能を果たしつつ、電力を削減し、良好な審美的特性を提供することに寄与する。
【0006】
単数又は複数のレーザーダイオード光源を有するヘッドランプも使用されている。レーザーダイオード光源は、前方道路に及びホットスポット領域において有益な高輝度源を提供する。しかしながら、レーザーダイオード光源を有するヘッドランプは、LED光源を有するヘッドランプに比較してよりコストがかかる。
【0007】
本明細書における「背景技術」に関する記載は、本開示の文脈を一般的に呈示することを目的とする。背景技術欄に記載の範囲での本件発明者の研究、並びに出願時に他の場合なら従来技術として認定され得ない説明の態様は、本開示に対する従来技術として明示的にも暗黙的にも認められない。
【発明の概要】
【0008】
本明細書に記載される実施形態は、以下の態様を含む。
【0009】
(1)ヘッドランプアセンブリは、ロービーム配光を生成するように構成されたロービームアセンブリを有する。前記ロービームアセンブリは、第1配光を発光するように光学的に構成される第1レーザー固体光源と、第2配光を発光するように光学的に構成される第2レーザー固体光源とを有する第1ロービーム固体光源モジュールと、前記第1及び第2配光のうちの少なくとも一方に少なくとも部分的に重なる第3配光を発光するように光学的に構成される固体光源を有する第2ロービーム固体光源モジュールと、を備える。また、前記ヘッドランプアセンブリは、ハイビーム配光を生成するように構成されたハイビームアセンブリを有する。
【0010】
(2)前記第1配光は、前記第2配光と異なる、(1)のヘッドランプアセンブリ。
【0011】
(3)前記第1配光は、最大強度ホットスポット領域を有する、(1)又は(2)のいずれかのヘッドランプアセンブリ。
【0012】
(4)前記第2配光は、集結強度ホットスポット領域と、前記第1配光に比較して大きく分散した分布とを有する、(1)乃至(3)のいずれか1つのヘッドランプアセンブリ。
【0013】
(5)前記第2ロービーム固体光源モジュールは、複数の発光ダイオード(LED)部品を有する、(1)乃至(4)のいずれか1つのヘッドランプアセンブリ。
【0014】
(6)前記第2ロービーム固体光源モジュールは、複数の固体光源モジュールを有する、(1)乃至(5)のいずれか1つのヘッドランプアセンブリ。
【0015】
(7)前記第1配光は、前記第2配光に等しい、(1)乃至(6)のいずれか1つのヘッドランプアセンブリ。
【0016】
(8)前記第1ロービーム固体光源モジュールと前記第2ロービーム固体光源モジュールのそれぞれは、半導体発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)、ポリマー発光ダイオード(PLED)、モノリシック発光ダイオード(MLED)のうちの少なくとも1つを有する、(1)乃至(7)のいずれか1つのヘッドランプアセンブリ。
【0017】
(9)ヘッドランプアセンブリは、第1固体光源モジュールと、第2固体光源モジュールとを有する。前記第1固体光源モジュールは、第1配光を発光するように光学的に構成される第1レーザー固体光源と、第2配光を発光するように光学的に構成される第2レーザー固体光源とを有する。前記第2固体光源モジュールは、前記第1及び第2配光のうちの少なくとも一方に少なくとも部分的に重なる第3配光を発光するように光学的に構成される。前記ヘッドランプアセンブリは、ロービーム配光を生成するように構成される。
【0018】
(10)前記第1配光は、前記第2配光と異なる、(9)のヘッドランプアセンブリ。
【0019】
(11)前記第1配光は、最大強度ホットスポット領域を有する、(9)又は(10)のヘッドランプアセンブリ。
【0020】
(12)前記第2配光は、集結強度ホットスポット領域と、前記第1配光に比較して大きく分散した分布とを有する、(9)乃至(11)のいずれか1つのヘッドランプアセンブリ。
【0021】
(13)前記第2固体光源モジュールは、複数のLED部品を有する、(9)乃至(12)のいずれか1つのヘッドランプアセンブリ。
【0022】
(14)前記固体光源モジュールは、複数の固体光源モジュールを有する、(9)乃至(13)のいずれか1つのヘッドランプアセンブリ。
【0023】
(15)前記第1配光は、前記第2配光に等しい、(9)乃至(14)のいずれか1つのヘッドランプアセンブリ。
【0024】
(16)ハイビーム配光を生成するように構成されたハイビームアセンブリを更に備える、(9)乃至(15)のいずれか1つのヘッドランプアセンブリ。
【0025】
(17)前記第1固体光源モジュールと前記第2固体光源モジュールのそれぞれは、半導体発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)、ポリマー発光ダイオード(PLED)、モノリシック発光ダイオード(MLED)のうちの少なくとも1つを有する、(9)乃至(16)のいずれか1つのヘッドランプアセンブリ。
【0026】
(18)ハイブリッド配光を生成する方法は、第1配光を、第1固体光源モジュールの第1レーザー固体光源を介して発光するステップと、第2配光を、前記第1固体光源モジュールの第2レーザー固体光源を介して発光するステップであって、前記第1配光は、前記第2配光と異なるステップと、第3配光を、第2固体光源モジュールを介して発光するステップであって、前記第3配光は、前記第1及び第2配光のうちの少なくとも一方に少なくとも部分的に重なるステップと、を有する。
【0027】
(19)前記第1配光は、最大強度ホットスポット領域を有する、(18)のハイブリッド配光を生成する方法。
【0028】
(20)前記第2配光は、集結強度ホットスポット領域と、前記第1配光に比較して大きく分散した分布を有する(18)又は(19)いずれか1つののハイブリッド配光を生成する方法。
【0029】
(20)(18)乃至(20)のいずれか1つにより作製された製品。
【0030】
上記段落は一般的な紹介として記載されたものであり、以下の請求項の範囲を限定することを意図していない。記載された実施形態は、更なる利点とともに、添付図面を参照してなされる以下の詳細な説明を参照することにより最も良く理解されるであろう。
【0031】
本発明のより完全的な理解、及び付随する利点が、添付図面を参照しつつ以下の詳細な説明を読むことで容易に把握されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】一実施形態による例示的な自動車両の前部を示す図。
図2】例示的な車道、自動車両、及び一実施形態による配光パターンの概略図。
図3】一実施形態による例示的な配光を示す図。
図4】一実施形態による例示的な配光を示す図。
図5A】一実施形態による例示的なハイブリッドヘッドランプを示す図。
図5B】一実施形態によるレーザー固体光源モジュールと固体光源モジュールとを示す図。
図5C】一実施形態によるレーザー固体光源モジュールと2つの個体光源モジュールとを示す図。
図6A】レーザー固体光源モジュールの部品を、一実施形態による2つのレーザー固体光源とともに示す図。
図6B】一実施形態によるモジュールとしてケースに入れられた2つのレーザー固体光源を示す図。
図7A】一実施形態によるレーザー固体光源の例示的な配光を示す図。
図7B】一実施形態によるレーザー固体光源の例示的な配光を示す図。
図7C】一実施形態による2つのレーザー固体光源の組み合わせた配光を示す図。
図8】一実施形態による固体光源部品のフラットビームパターンの例示的な配光を示す図。
図9】一実施形態によるハイブリッド固体光源モジュールとレーザー固体光源モジュールとを組み合わせた例示的な配光を示す図。
図10】一実施形態による例示的なハイブリッドロービームアレイのレイアウトを示す図。
図11】一実施形態による例示的なロービームヘッドランプアセンブリの機能ブロック図。
図12】一実施形態による例示的な固体光源モジュールの機能ブロック図。
図13】一実施形態によるハイブリッド配光を生成する方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下の説明は、本開示の特定の例及び実施形態を示すことで、本開示をより明瞭にすることを意図している。これらの実施形態は、包括的なものであるより例示的なものであることを意図している。本開示の全範囲は、本明細書に開示された特定の実施形態に制限されるものではなく、請求項により規定されるものである。
【0034】
明瞭性を期して、本明細書に記載の実施例の全ての特徴が図示され詳細に説明されるわけではない。このような実施例の開発において、適用及びビジネスに関連する制約等の開発者の特定の目標を達成するために多くの実施例固有の決定がなされること、そしてこのような特定の目標は実施例毎に、及び開発者毎に異なり得ることを理解されたい。
【0035】
本明細書に記載の実施形態は、ハイブリッドヘッドランプ用のシステム及び方法を提供する。具体的には、ハイブリッドヘッドランプは、固体光源とレーザー固体光源との両方を有する。本明細書での使用において、固体光源とは、電流の通過に反応して、又は強い電界に反応して材料が発光するエレクトロルミネセンス現象を利用するタイプの光源を指す。光源の例には、半導体発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)、ポリマー発光ダイオード(PLED)、モノリシック発光ダイオード(MLED)が含まれるがこれらに限られない。ハイビームアセンブリは、ロービーム配光を補完するビーム配光を生成し、これによりハイビーム配光が得られる。
【0036】
一例において、固体光源は最小のコストで広範囲に亘る機能を提供し、レーザー固体光源は前方道路に高輝性を提供する。固体光源及びレーザー固体光源のビームパターンは、これらの異なる光源のビームパターンにおける差異を調和させるように選択される。追加のレーザー固体光源、及び/又は固体光源が、異なる光源ビームパターンを混合する、又は移行するように使用され得る。
【0037】
図1は、例示的な自動車両100の前部を示す。自動車両100は、2つのヘッドランプアセンブリ105aと105bとを有する。ヘッドランプアセンブリ105a及び105bは、ロービームヘッドランプ110a及び110b(下側又はすれ違いビームとも称される)と、ハイビームヘッドランプ115a及び115b(主又はドライビングビームとも称される)とを有する。典型的には、ロービームヘッドランプ110a及び110bは、他の車両が道路において自動車両100の直前に存在している場合、及び/又は他の車両が対向方向から自動車両100に接近してくる場合に使用される。
【0038】
図2は、例示的な車道200、自動車両205、及び自動車両205のロービームヘッドランプの配光パターン210の概略図である。自動車両205のロービームヘッドランプの配光パターン210は、選択的に、接近してくる自動車両215の運転者がまぶしく感じること(ヘッドライトからの目を眩ませる作用)を少なくするように、車道200のセンターライン220を横切る光の量を最小とするように設計され得る。また、自動車両205のロービームヘッドランプの範囲は、自動車両205の直前で同じ方向に走行する自動車両225の運転者のバックミラーにおけるまぶしさを少なくするように制限され得る。
【0039】
図3は、ヘッドランプの前面(発光面)から離間するとともにこれに平行なスクリーンで観察される又は測定されるロービームヘッドランプの例示的な配光300を示す。水平軸H及び鉛直軸Vが、図3の配光300に重ね合わせて示されている。水平軸H及び鉛直軸Vは、ヘッドランプ及びスクリーンの中心で交差する水平面及び鉛直面を特定する。図3に示す水平軸H及び鉛直軸Vは、5°間隔で距離を置いた目盛を有している。
【0040】
自動車両を利用する大多数の州、国、又は地域は、車道を合法的に使用するために車両が守るべき種々の要件や基準を有している。例えば、連邦自動車安全基準(FMVSS)の108番は、合衆国内で操作される車両のヘッドランプについての(角度に基づく)種々の最大及び最低光度値を指定している。これらの要件の他に、合衆国の道路交通安全保健協会(IIHS)は、ヘッドランプ性能に関する独自の一連のテスト及び格付け(ヘッドライトテスト及び格付けプロトコル)を有している。IIHSのテスト及び格付けは、実際の道路上での使用における照明性能を向上させるように製造業者を奨励することを目的としている。IIHSの評価によれば、車両のヘッドランプにより提供される道路上の照明は大きくばらついている。また、IIHSは、大半のヘッドランプを不良カテゴリー(例えば、不十分な照明、過度のまぶしさ等)に格付けしている。
【0041】
図3のポイント305は、ロービームヘッドランプが接近してくる自動車両の運転者の目を眩ませないことを保証する、FMVSSの108番基準により規定された要所測定点である。ポイント305は、鉛直軸Vの3.5°左方に、且つ水平軸Xの0.86°下方に位置している。FMVSSの108番の要件に合致するためには、ヘッドランプのロービームは、ポイント305において特定の閾値(例えば、12,000cd)未満の光度を有する必要がある。また、FMVSSの108番は、配光300における他のポイントでの最低光度を規定している。
【0042】
図4は、図3に示したものと同様のロービームヘッドランプの例示的な配光400を示す。ノッチ415を有する矩形エリア410が、IIHSのヘッドライトテスト及び格付けプロトコルに基づいて実施されるテストにおいてより高い格付けを得るために更に照明され得るターゲットゾーンである。いくつかの実施形態において、ノッチ415は、鉛直軸Vの3.5°左方に、且つ水平軸Xの0.86°下方に位置するポイント305(図3)の周囲の発光を減少させる。ノッチ415により、ヘッドランプアセンブリ105a及び105bは、より良好なIIHS格付けを獲得しつつも、HMVSSの108番の要件を満たすことが可能となる。いくつかの実施形態において、ノッチ415は、鉛直軸Vの左方に実質的に配置され得る。他の実施形態において、ノッチ415は、鉛直軸Vを中心として対称的に位置決めされ得る。ノッチの配置は、一般に、特定の安全性要件や安全性要件に矛盾しないユーザの嗜好に依存する。
【0043】
図5Aは、本明細書に記載の実施形態による例示的なハイブリッドヘッドランプ500を示す。図5Aは、レーザー固体光源モジュール510及び固体光源モジュール520を示す。レーザー固体光源モジュール510において、LDが第1レーザーダイオード光源を示し、LDが第2レーザーダイオード光源を示す。
【0044】
本件発明者等は、レーザー固体光源モジュール510を固体光源モジュール520から分離することが望ましいことを認識した。なぜならば、これら2つのモジュールの熱的、電子的及び安全性に関する事項が異なるからである。更に、レーザー固体光源モジュール510を固体光源モジュール520から分離することにより、関連する公差を有する2つのモジュールの別箇の照準及びアラインメントが容易になる。図5A図5B及び図5Cは、レーザー固体光源モジュール510の固体光源モジュール520からの独立した鉛直方向調整を示す。また、レーザー固体光源モジュール510は、典型的に、レーザー安全センサを必要とするとともに、追加的な温度条件を有する。
【0045】
図5Bは、レーザー固体光源モジュール510と、複数の固体光源部品を有する固体光源モジュール520とを示す。図5Bは、6個のLED部品、すなわちLED乃至LEDを示す。しかしながら、本明細書に記載の実施形態について、6個より少ないLED部品、又は6個より多いLED部品が想定される。
【0046】
図5Cは、レーザー固体光源モジュール510と、3つのLED部品LED乃至LEDを有する第1固体光源モジュール521と、3つのLED部品LED乃至LEDを有する第2固体光源モジュール522とを示す。しかしながら、本明細書に記載の実施形態について、2個より多い固体光源モジュールが想定される。また、本明細書に記載の実施形態について、各個体光源モジュール内で3個より少ない、又は3個より多いLED部品が想定される。
【0047】
図6Aは、レーザー固体光源モジュール510の部品を、2つのレーザーダイオード源LD及びLDとともに示す。各レーザーダイオード源は、フォルダ630及び結像レンズ640とともに、楕円形リフレクタ610及び620をそれぞれ有する。結像レンズ640において、光源光が屈折されて結像レンズ640を介して再び透過する。熱可塑性又は金属材料から構成される例示的な楕円形リフレクタ610及び620は、およそ0.80の反射率(R)を有する。リフレクタ移行表面は、光を吸収するように設計される。例示的なリフレクタ移行表面は、3‐6mmの焦点距離範囲を有する。例示的なフォルダ630は、およそ0.85の反射率の材料を有する。例示的な結像レンズ640は、例えば、ポリメチル・メタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、シリコーン、ガラス、又は熱可塑性材料から構成される。図6Bは、固体光源モジュール510としてケースに入れた2つのレーザーダイオード源を示す。
【0048】
図7Aは、第1レーザーダイオード源LDの例示的な配光を示す。LDは、前方道路に距離を置いて適切な光を提供するホットスポット領域を提供する。ホットスポット領域は、最大強度(カンデラ)を有する領域として定義され得る。ホットスポット領域は、(最大強度の鉛直方向位置に対して)小さい開口高さを有する。そこで、ホットスポット領域は集結する、及び/又は水平線付近でより大きい最大強度を有する、より高い最大強度が達成され得るが、それが鉛直方向においておよそ2.0度に位置していれば、前方道路又は水平線付近に、匹敵する投光が存在しない場合がある。カットオフポイント付近の高い最大強度が、前方道路の投光に最適である。図7Aにおいて、最大強度が、水平軸に沿って0.2度、且つ鉛直軸に沿って-0.4度の位置にある。図示された最大強度は、134.79の全光束を有する34,524.20カンデラである。
【0049】
図7Bは、第2レーザーダイオード源LDの例示的な配光を示す。LDの配光は、フラットな固体光源モジュールに調和するようにLDより分散している。図7Bにおいて、最大強度が、水平軸に沿って0.2度、且つ鉛直軸に沿って-0.6度の位置にある。図示された最大強度は、137.57の全光束を有する6856.43カンデラである。
【0050】
LDのホットスポットから特定の固体光源モジュールの強度分布への所望の混合移行を提供するように、異なる強度分布を有する任意の個数のLDが使用され得る。代替的実施形態において、第2レーザーダイオード源LDを、分布パターンや集結ホットスポットエリアに起因して、高輝度固体光源部品に代え得る。これは、レーザー固体光源モジュールよりも低いコストですむとともに固体光源に対する色の適合が良いが、強度移行がより目立ち得る。
【0051】
レーザー固体光源と固体光源との組み合わせが、所望の効果を達成するように利用され得る。しかしながら、光源の輝度の減少等の何らかの不利益が現実化することもある。これは、最大強度を減少させ得るとともに、IIHS格付けにおける性能を損ない得る。同じ性能を得るためには、光学システムを大型化しなければならないかもしれない。
【0052】
図7Cは、第1レーザーダイオード源LDと第2レーザーダイオード源LDとを組み合わせた例示的な配光を示す。図7Cにおいて、最大強度が、水平軸に沿って0.1度、且つ鉛直軸に沿って-0.5度の位置にある。図示された最大強度は、275の全光束を有する39,700カンデラである。レーザーダイオード源の組合せは、より良好な公差を提供するとともに、大多数のヘッドランプ基準及びテストポイントに十分に合致する。一実施形態において、LDとLDの光学構造は同じである。
【0053】
図8は、固体光源部品のフラットビームパターンの例示的な配光を示す。図8において、最大強度が、水平軸に沿って-10.6度、且つ鉛直軸に沿って-0.8度の位置にある。図示された最大強度は、1008.76の全光束を有する11,734.27カンデラである。
【0054】
図9は、固体光源モジュールとレーザー固体光源モジュールとのハイブリッドの例示的な組み合わされた配光を示す。レーザー固体光源モジュールは、第1レーザーダイオード源LDと、第2レーザーダイオード源LDとを有する。図9において、最大強度が、水平軸に沿って0.1度、且つ鉛直軸に沿って-0.6度の位置にある。図示された最大強度は、1266.23の全光束を有する47,205.77カンデラである。フラット固体光源モジュールとレーザー固体光源モジュールとの組み合わせは、高性能の均一な光ビームを生成する。ハイブリッドロービームヘッドランプにより、最適な前方道路性能を有する薄い概観のヘッドランプアセンブリが、全面的なレーザー固体光源アセンブリより低いコストで提供される。
【0055】
図10は、例示的なハイブリッドロービームアレイアセンブリの拡大図である。図10は、1乃至7の数字を付された7個の固体光源モジュールを示す。しかしながら、本明細書に記載の実施形態について、7個より多い、又は7個より少ない固体光源モジュールが想定される。8で示すモジュールは、レーザー固体光源モジュールを示す。また、図10は、単独の連続レンズ及びフォルダを示す。しかしながら、本明細書に記載の実施形態について、別箇のリフレクタセグメントも想定される。
【0056】
例示のみを目的とした呈示される実施形態において、各セグメント(個々のモジュールリフレクタ610及び620、フォルダ630、及び結像レンズ640である関連部分を付加したもの)の寸法は、およそ、高さ15mm、幅18mm、奥行25mmである。各個体光源モジュールがおよそ300ルーメンを生成する場合、ルーメンのアレイは、7×300=およそ2100ルーメンを生成する。楕円形リフレクタ610及び620は、熱可塑性又は金属材料から構成され得るとともに、1.5‐4mmの焦点距離範囲と0.90‐0.95の反射率(R)範囲を有し得る。フォルダ530の材料は、およそ0.8‐0.95の反射率を有する。結像レンズ640は、PMMA、PC、シリコーン、ガラス、又は熱可塑性材料から構成され得る。しかしながら、本明細書に記載の実施形態について、セグメントの他の材料や寸法が想定される。
【0057】
図11は、ロービームヘッドランプアセンブリ1100の機能ブロック図である。ロービームヘッドランプアセンブリ1100は、ロービーム制御回路1105と、レーザー固体光源モジュール1110と、固体光源モジュール1115とを有する。単数又は複数の光学モジュール1120が、固体光源モジュール1115の他に、追加の固体光源モジュールを有する。入力信号1125が、ロービーム制御回路1105に接続される。入力信号1125は、レーザー固体光源1110、固体光源モジュール1115、及び光学固体光源モジュール11120のうちの1つ以上に電力供給を開始する又は閉鎖するスイッチであり得る。本明細書に記載の実施形態について、明暗入力信号等の他のタイプの入力信号1125が想定される。
【0058】
図11は、ロービーム制御回路1105がロービームヘッドランプアセンブリ1100内に含まれるように示しているが、ロービーム制御回路705が、ロービームヘッドランプアセンブリ1100から離間して配置され得ることに留意されたい。更に、単独のロービーム制御回路1105が、左右両方のロービームヘッドランプアセンブリに採用され得る。これにより、レーザー固体光源モジュール1110、固体光源モジュール1115、及び光学固体光源モジュール1120が同期した態様で駆動される。
【0059】
図12は、レーザーエミッタ1205と、蛍光プレート1210と、ミラー1215と、レンズ1220とを有する例示的なレーザー固体光源モジュール1200の機能ブロック図である。レーザーエミッタ1205は、いくつかの実施例において、(例えば、360乃至480mnの範囲の波長の)青色可視スペクトルで発光するレーザー固体光源を有し得る。レーザーエミッタ1205は、いくつかの実施形態において、ヒートシンク1207に装着され得る。
【0060】
レーザーエミッタ1205からの光は、蛍光プレート1210に向かう。蛍光プレート1210は、YAG、LuAG、窒化物、オキシ窒化物等の蛍光物質を含むがこれらに限定されない。蛍光プレート1210は、レーザーエミッタ1205からの光を白色光に変換する。蛍光プレート1210に代えて、レーザーエミッタ1205を、類似の材料からなる蛍光層で被覆してもよい。
【0061】
レーザーエミッタ1205からの光は、ミラー1215により反射される。ミラー1215は、いくつかの実施形態において、レーザーエミッタ1205からの光ビームの形状を拡大する、又は調整するように構成されたアクチュエータ及び/又はバイブレータを有する。ミラー1215から反射された光は、レンズ1220を通過する。蛍光プレート1210又はミラー1215の不具合を検出してレーザー固体光源モジュール1200の安全性を確保するように、レーザー固体光源モジュール1200において、他の部品が採用され得る。
【0062】
図13は、ハイブリッド配光を生成する例示的な方法1300のフローチャートである。ステップ1310において、第1配光が、第1固体光源モジュールの第1レーザー固体光源を介して発光される。一実施形態において、第1配光は、最大強度ホットスポット領域を有する。
【0063】
第2ステップ1320において、第2配光が、第1固体光源モジュールの第2レーザー固体光源を介して発光される。第1配光は、第2配光と異なる。一実施例において、第2配光は、集結強度ホットスポット領域と、第1配光に比較して大きく分散した分布とを有する。
【0064】
ステップ1330において、第3配光が、第2固体光源モジュールを介して発光される。第3配光は、第1及び第2配光のうちの少なくとも一方に、少なくとも部分的に重なる。
【0065】
本明細書に記載の実施形態は、多くの利点を提供する。ハイブリッドロービームアセンブリに関して本明細書に記載された実施形態は、高い輝度と小さい開口高さのランプアセンブリを提供する。レーザー固体光源モジュールの優れた品質が、より廉価な固体光源モジュールと組み合わされる。
【0066】
いくつかの実施形態が本明細書に記載されたが、これらの実施形態は例示のみを目的として呈示されたものであって、本開示の範囲を制限することを意図するものではない。本開示における教示を用いて、当業者は、本開示の精神を逸脱することなく、記載された実施形態の構造において省略、置換、及び/又は変更をなすことで種々の態様において本開示を修正し変更し得る。更に、本開示の解釈において、全ての用語が、文脈に即して可能な限り最も広く解釈されるべきである。添付の請求項とそれらの同等物が、かかる構造又は変更を、本開示の範囲及び精神に該当するものとしてカバーすることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12
図13