(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】無線通信システムおよび無線通信方法
(51)【国際特許分類】
H04W 52/02 20090101AFI20230306BHJP
H04W 64/00 20090101ALI20230306BHJP
H04W 68/04 20090101ALI20230306BHJP
H04W 84/08 20090101ALI20230306BHJP
【FI】
H04W52/02
H04W64/00 173
H04W64/00 150
H04W68/04
H04W84/08
(21)【出願番号】P 2018143301
(22)【出願日】2018-07-31
【審査請求日】2021-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】林 直樹
【審査官】齋藤 浩兵
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-250176(JP,A)
【文献】特開2007-274273(JP,A)
【文献】国際公開第2014/049911(WO,A1)
【文献】特開2016-220164(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0110028(US,A1)
【文献】特開2009-038590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局と、前記移動局へ信号を送出する複数の基地局と、前記基地局に接続された回線制御装置と、前記回線制御装置に接続された指令設備と、を
備えた無線通信システムであって、
前記指令設備は、前記移動局から位置情報を受信し、前記位置情報に基づいて前記移動局の移動方向を求め、前記移動局の前記移動方向および前記基地局の位置情報に基づいて、前記移動局の移動先の基地局を判定し、前記移動先の基地局を前記回線制御装置に通知し、
前記回線制御装置は、
前記移動先の基地局
と前記移動局が傘下にある基地局とに送信権を付与し、
前記基地局は、送信権が付与された場合、信号を前記移動局へ送出する無線通信システム。
【請求項2】
請求項1の無線通信システムにおいて、
前記回線制御装置は、前記送信権を付与して所定の時間が経過した場合、前記送信権を解除する無線通信システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2の無線通信システムにおいて、
前記指令設備は、前記移動局の位置情報に基づいて、前記移動局の移動速度を求め、当該移動速度が所定の閾値より大きい場合、移動先の基地局に送信権を付与する無線通信システム。
【請求項4】
基地局から移動局へ信号を送出する無線通信方法であって、
移動局の位置情報に基づいて、前記移動局の移動方向を求めるステップと、前記移動局の前記移動方向および前記基地局の位置情報に基づいて、前記移動局の移動先の基地局を判定するステップと、
前記移動先の基地局と
前記移動局が傘下にある基地局
とに送信権を付与するステップと、送信権を付与された基地局から信号を送出するステップと、を含む無線通信方法。
【請求項5】
請求項4の無線通信方法において、
前記送信権を付与して所定の時間が経過した場合、前記送信権を解除するステップを含む無線通信方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5の無線通信方法において、
前記移動局の位置情報に基づいて、前記移動局の移動速度を求めるステップと、当該移動速度が所定の閾値より大きい場合、移動先の基地局に送信権を付与するステップと、を含む無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線通信システムおよび無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動局が無線周波数の異なる複数の基地局と通信を行う無線通信システムでは、周波数の切替え時(ハンドオフ)に通話の途切れが発生する。通話の途切れを削減するため、基地局間で同期し、各基地局が同一のタイミングで同一の周波数の信号を送出する無線通信システムがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基地局間同期機能を具備し、複数基地局から同一タイミングで同一周波数信号を送出する無線通信システムでは、全ての基地局が信号を送出するため、一つの基地局のみが送出する無線通信システムと比較して、消費電力が大きい。
本発明の課題は、消費電力の低減が可能な無線通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
すなわち、予め設定された各基地局のエリアと移動局から取得した位置情報に基づいて、信号の送出が必要な基地局を判定し、当該基地局のみに送信権を与える。その結果、全ての基地局では無く、送信権を付与された基地局のみから、信号を送出する。
【発明の効果】
【0006】
上記無線通信システムによれば、消費電力の削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施例の無線通信システムの概略構成の例を示す図である。
【
図2】
図1の無線通信システムの動作シーケンスの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施形態の無線通信システムは基地局間同期機能を具備し、複数基地局から同一タイミングで同一周波数信号を送出する。無線通信システムは「予め設定された各基地局のエリア」と「移動局から取得した位置情報」とに基づいて、送出が必要な基地局のみに送信権を与える。各基地局のエリア情報と移動局の位置情報に基づいて、信号送出が必要な基地局を判断することで、不要な基地局からは信号を送出せず、その分の消費電力を削減することができる。
【0009】
より具体的には、無線通信システムは移動局から位置情報を受信することで、移動局の位置と移動方向(時間軸上の緯度経度)を求め、移動局の位置・移動方向と基地局の位置情報(予め設定された各基地局のエリア)とに基づいて、(A)移動局が現時点で傘下にある基地局、(B)移動局が次(一定時間後)に傘下となる基地局、(C)現時点にも一定時間後にも傘下とならない基地局を判定し、基地局(A)及び(B)に送信権を付与する。なお、移動局が移動しないと判断した場合は、基地局(B)に送信権を付与しなくてもよい。
【実施例】
【0010】
以下、実施例について
図1、2を用いて説明する。
図1は実施例の無線通信システムの概略構成の例を示す図である。
【0011】
実施例の無線通信システム1は、指令設備10、回線制御装置20、基地局30、移動局40等の装置や設備を有している。無線通信システム1は基地局間同期機能を具備し、複数の基地局から同一タイミングで同一周波数信号を送出する。
【0012】
指令設備10は、指令センターに設置され、回線制御装置20に接続されて、無線通信システム1を操作するための装置であり、音声の入出力、データ(画像、移動局の位置を示す情報等の非音声情報)等の入力、処理、表示等を行う。指令設備10には、各基地局30がカバーしているエリア(サービスエリア)が、予め設定されている。指令設備10は、移動局40から得た位置情報と各基地局30がカバーしているエリアとから、移動局40と通話するために送信が必要な基地局30を決定し、送信が必要な基地局30を回線制御装置20に通知する。
【0013】
回線制御装置20には、上述したように、指令設備10が接続されている。また、回線制御装置20には、その管理下にある複数の基地局30が接続されている。本実施例では、回線制御装置20に、移動局40との無線通信を行う五つの基地局30(#1)~(#5)が接続されており、これら基地局30の制御を行う。基地局30の数は五つに限定されるものではなく、無線通信システムの空間的大きさと基地局間距離に基づいて設定される。
【0014】
回線制御装置20は、基地局30を介し移動局40の位置情報を定期的に収集し、収集した情報を指令設備10へ受け渡し、指令設備10の決定に応じ、基地局30の送信許可・非許可を指示する。例えば、送信許可のフラグを立たせた情報を基地局30へ送信することで、基地局30に送信権を付与する。また、送信許可のフラグを外した情報を基地局30へ送信することで、基地局30に付与された送信権を解除する。送信権は、送信権が付与された時刻や基地局が信号を送信した時刻から所定の時間が経過した場合、解除されてもよい。なお、回線制御装置20は、CPU(Central Processing Unit)を備えた制御部(不図示)と、基地局インタフェース部(不図示)と、を有している。また、基地局30は、CPUを備えた制御部(不図示)と、無線部(不図示)と、無線アンテナ31と、を有している。
【0015】
基地局30は、自局のサービスエリア(
図1の破線)内に存在する移動局40と無線通信する。このとき、回線制御装置20から送信された送信権に基づいて、信号を送信するか否かを判断する。つまり、送信権を付与された基地局30のみ信号を送信する。
【0016】
移動局40は、車載や携帯により移動自在な無線通信端末であり、その所在位置をサービスエリアに含む基地局30と無線通信を行う。移動局40は、GPSアンテナ(不図示)と、GPSモジュール(不図示)と、CPUを備えた制御部(不図示)と、無線部(不図示)と、無線アンテナ41と、を有している。移動局40は、GPSモジュールから位置情報を取得し、基地局30を介した回線制御装置20からの要求に応じ、自局の位置情報を定期的に基地局30へ送信する。移動局40は、電源ON時にも位置情報を送信する。
【0017】
指令設備10は、移動局40の位置情報と、各基地局30がカバーしているエリアに基づいて、送信権を付与する基地局30を判断する。
図1では、移動局40は、基地局30(#1)、30(#2)のエリアに存在している。このとき、指令設備10は、全基地局ではなく、現在移動局がエリアに存在している基地局30(#1)、30(#2)のみからの信号送出が必要と判断することができる。また、移動局40の位置情報を定期的に収集している場合、その微分から移動局40の移動方向と移動速度を算出し、場合によっては移動先の基地局(
図1の例では基地局30(#3))も送出が必要と判断することも可能である。つまり、移動局40の位置が基地局30(#3)の位置に近づいている場合、基地局(#3)を移動先の基地局と判断する。なお、高速道路のような移動局40が一定方向にしか進まない状況での無線通信システムは、基地局30が高速道路に沿って配置されているため、次に移動局40が傘下に入る基地局30が確定している。よって、回線制御装置20が送信権を付与する基地局30は、移動局40が傘下にいる基地局30と移動局40の移動先の基地局30とし、距離は近くても移動方向に無い基地局30には送信権を付与しない。また、例えば渋滞時などで移動局40の移動速度が小さい(所定の閾値より小さい)場合は、移動先の基地局30に送信権を付与しなくてもよい。すなわち、移動局40の移動速度40が、所定の閾値より大きい場合、移動先の基地局30に送信権を付与する。これらにより、本システムは、移動局40の移動先の基地局30を予測し、移動局40が傘下にいる基地局30及び予測した基地局30のみ送信権を付与する。これにより、距離が近い基地局30だけ送信権を付与する方法よりも、システムの消費電力を更に抑えることができる。なお、回線制御装置20が、送信権を付与する基地局を判定してもよい。
【0018】
次に、無線通信システム1の動作の流れについて
図2を用いて説明する。
図2は
図1の無線通信システムの動作シーケンスを示す図である。
【0019】
先ず、ユーザから指令設備10に対し、各基地局30がカバーするエリアを情報として持たせ予め認識させる(ステップS1)。また、システム運用時は、移動局40は自局の位置情報をGPSより取得し、定期的に基地局30を介し回線制御装置20および指令設備10に位置情報および移動局40のID情報を送信する(ステップS2)。
【0020】
実際にユーザから移動局40との通話操作(ステップS3)が入った場合には、指令設備10が「予め設定された各基地局のエリア」と「移動局の位置情報」とに基づいて、信号送出が必要な基地局30を判断し、指令設備10がその判断を回線制御装置20に通知する(ステップS4)。
【0021】
次に、回線制御装置20は送信が必要な基地局30のみに送信権を付与したうえで送信動作を指示する(ステップS5)。ここでは送信が必要な基地局30を「A基地局」、不要な基地局30を「B基地局」としている。A基地局は送信動作に入り、結果として移動局40との通話を実現する(ステップS6)。一方、B基地局は送信動作をとらない。これにより、全ての基地局からではなく、必要な基地局のみから信号を送出し、送信が不要な基地局30(この例でのB基地局)の分だけ、消費電力を低減することができる。なお、送信が不要な基地局30は受信待ちの状態にある。
【0022】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態および実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0023】
1・・・無線通信システム
10・・・指令設備
20・・・回線制御装置
30・・・基地局
40・・・移動局