(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】時計カレンダーシステムの駆動装置
(51)【国際特許分類】
G04B 19/253 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
G04B19/253 G
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018206233
(22)【出願日】2018-11-01
【審査請求日】2021-10-05
(32)【優先日】2017-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599091346
【氏名又は名称】ロレックス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フルーリー, クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ルダズ, デニス
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】スイス国特許出願公開第711851(CH,A3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 19/24 - 19/253
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動装置(100)であって、前記駆動装置は、被駆動要素(4)を駆動するための駆動モバイル(10)を含み、前記駆動モバイルは、軸(A1)周りに回転可能に搭載されることが意図され、
サポート(11)と、
前記被駆動要素を駆動するための第1側面(f11)と、
前記駆動モバイルを後退させる作用を受けるように配置された第2側面(f12’)と、
前記被駆動要素(4)を制動するための第3側面(f12)と
を含み、
前記モバイルは、前記第2側面を前記サポートへ接続するスライドリンク(111、121;11、120;110、120’)を含む、駆動装置。
【請求項2】
前記駆動装置は、時計カレンダーシステム(200)用の駆動装置である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記被駆動要素(4)は、カレンダー要素である、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記第2側面(f12’)は、前記軸(A1)に対して直角放射状または実質的に直角放射状に延長する、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記第2側面は前記第1側面に連結される、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記モバイルは、前記第2側面を静止位置へ向かって戻す弾性戻し要素(12c)を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記弾性戻し要素(12c)は、ばねを含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記ばねは、開放環の形状のばね及びまたは第1端部に前記第2側面を有し第2端部に前記サポートへの連結を有するばねである、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記スライドリンクは、前記第2側面を有する要素上に生成されるピン(120’)と、前記サポート上に生成されるスロット(110)を含む、または前記スライドリンクは、前記第2側面を有する要素上に生成されるスロット(120)と、前記サポート上に生成されるピン(11)とを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記スライドリンクは、前記第2側面を有する要素(12a)上に生成される第1面(121)と、前記サポート上に生成される第2面(111)とを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記第1側面は平面または実質的に平面または湾曲した第1表面を示す、及びまたは前記第2側面は平面または実質的に平面または湾曲した第2表面を示す、請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記第1側面は、前記軸(A1)に対して半径方向にまたは実質的に半径方向に延長する、請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記第2側面は、前記モバイルの後退側面である、請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記第1側面は、前記サポートに対して前記軸周りに角度的に固定または実質的に固定される、及びまたは前記第3側面は、前記サポートに対して前記軸(A1)周りに角度的に固定または実質的に固定される、請求項1から13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記サポートは、カレンダーカム(2)に固定される、請求項1から14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の駆動装置と、被駆動要素とを含む、時計カレンダーシステム(200)。
【請求項17】
前記被駆動要素は、カレンダーインジケーターモバイルである、請求項16に記載の時計カレンダーシステム(200)。
【請求項18】
前記被駆動要素は、月の日にちを表示するディスクである、請求項16に記載の時計カレンダーシステム(200)。
【請求項19】
請求項1から15のいずれか一項に記載の装置、及びまたは請求項16から18のいずれか一項に記載のシステムを含む、時計ムーブメント(300)。
【請求項20】
請求項1から15のいずれか一項に記載の装置及びまたは請求項16から18のいずれか一項に記載のシステム及びまたは請求項19に記載のムーブメントを含む、時計(400)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とりわけ時計カレンダーシステム用の、駆動装置に関する。本発明はまた、当該装置を含む、時計カレンダーシステムに関する。本発明は更に、当該システムまたは当該装置を含む、時計に関する。
【0002】
特に、駆動装置は、決められた期間をディスプレイするための装置の駆動を可能にする。本発明はまた、瞬時ジャンプカレンダーシステム用の駆動モバイルに関する。
【背景技術】
【0003】
従来技術から駆動機構が既知である。駆動機構には、一般的に、適切な装置によってあらかじめ蓄積されたエネルギーの瞬間的な復帰の影響により、カレンダーインジケーターのディスプレイ部材の歯列を駆動するよう設計された駆動部材が設けられる。
【0004】
駆動部材は、例えば特許文献1の
図11に示すような、堅固な爪の形状を取ることもある。しかしながら、このような爪は、当該爪がカレンダーディスクの歯列内に位置されると、カレンダーの補助修正機構を妨害するリスクがある。このため、時計の調節中にカレンダーが破損するリスクがある。
【0005】
駆動部材は、例えば特許文献2に示すような、弾性爪の形状を取ってもよい。当該爪は、一方ではカレンダーディスクを瞬時に駆動し、他方では日付ジャンプがなされた後カレンダーディスクを停止させるように、成形される。この目的は、二重日付ジャンプのリスクを排除することである。このため、当該爪はカレンダーディスクの歯列の歯に対してぶつかる止め具としても作用する。とりわけ年間または万年カレンダーの場合においてカレンダー駆動モバイルが蓄積したエネルギーは、日付ジャンプがなされた後のカレンダーディスクの影響により弾性駆動爪が後退するリスクを有する可能性がある。
【0006】
特許文献3は、弾性駆動部材が設けられた駆動モバイルを開示する。弾性駆動部材は、カレンダー歯車に組み込まれたばねの形状を取り、その一端は駆動爪の形状を取る。ばねは、カレンダーディスク上の歯の影響により、爪が停止表面に当接するまで徐々に張力が与えられ、これにより日付ジャンプが起こる。当該モバイルは、ばねに徐々に張力を与え、つまり日付ジャンプ前にカレンダーディスクにわずかな角度的オフセットが存在することから、完全に瞬時の日付ジャンプを可能としない。更に、日付ジャンプが行われた後、カレンダーディスクの影響により爪が後退する危険性がある。このため、二重日付ジャンプの危険性が残る。この構成において、ばねの一体部分として形成された爪と停止表面との間の接触は、カム駆動モバイルへ代替的なカレンダー駆動モバイルを提供することを目的として、点接触である。
【0007】
特許文献4は、特許文献3の駆動モバイルと類似の駆動モバイルに関する。特許文献4には、歯車に組み込まれたばねの一体部分として形成された駆動爪が開示される。爪の一側面は、日付ジャンプを引き起こすため、止め具に対して点接触することができる。当該文献は、更に具体的には、爪がカレンダー星車の歯列内に位置するときに、カレンダーの迅速な調節を可能とするために、爪の寸法を最適化することに関する。
【0008】
特許文献5は、ピボットと、戻しばねと、駆動爪が設けられ、三者が3つの異なる高さにある、旋回駆動部材が設けられたカム駆動モバイルを開示する。当該モバイルは、カレンダーディスクの駆動と停止の機能を果たし、同時に常時カレンダーの迅速な調節を、時計回りと反時計回り方向の両方で可能にするが、駆動部材の各種機能を割り当てるために著しく大きい空間を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】欧州特許出願公開第2015146号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3173878号明細書
【文献】仏国特許出願公開第1467726号明細書
【文献】スイス国特許出願公開第711851号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2428855号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、前述の欠点を克服し、従来から既知の装置を改善可能な、カレンダーシステムの駆動装置を提供することである。具体的には、本発明は、カレンダーシステム用の小型の駆動装置及びまたは引例から既知のシステムと比較して信頼性や頑健性が改善された装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる駆動装置は、請求項1に規定される。
【0012】
装置の各種実施形態は、請求項2から15に規定される。
【0013】
本発明にかかるカレンダーシステムは、請求項16から18に規定される。
【0014】
本発明にかかる時計ムーブメントは、請求項19に定義される。
【0015】
本発明にかかる時計は、請求項20に定義される。
【0016】
添付の図面は、例として、本発明にかかる時計の2つの実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、時計の第1実施形態の概略図である。
【
図2】
図2は、時計の第1実施形態の概略図である。
【
図3】
図3は、駆動装置の第1実施形態の断面図である。
【
図4】
図4は、駆動装置の第1実施形態の動作を示す図である。
【
図5】
図5は、駆動装置の第1実施形態の動作を示す図である。
【
図6】
図6は、駆動装置の第1実施形態の動作を示す図である。
【
図7】
図7は、駆動装置の第1実施形態の動作を示す図である。
【
図8】
図8は、駆動装置の第1実施形態の動作を示す図である。
【
図9】
図9は、駆動装置の第1実施形態の動作を示す図である。
【
図10】
図10は、時計の第2実施形態の第1代替形態の概略図である。
【
図11】
図11は、時計の第2実施形態の第2代替形態の概略図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態の第2代替形態の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
時計400の第1実施形態を、
図1から9を参照して以下に説明する。時計は、例えば小型時計であり、特に腕時計である。時計は、時計ムーブメント300を含む。時計ムーブメントは、機械式ムーブメントまたは電子式ムーブメントであってもよい。ムーブメントは、時計カレンダーシステム200を含む。カレンダーシステムは、とりわけ曜日に関する情報及びまたは月の日にちに関する情報及びまたは月に関する情報及びまたは年に関する情報及びまたはうるう年に関する情報及びまたは月の位相に関する情報といった、少なくとも1つのカレンダー情報を表示することを可能にする。このため、カレンダーシステムは、複数の情報タイプの中から表示されるべき情報を表示したディスク、とりわけカレンダーディスクといった、被駆動要素4を含む。
【0019】
カレンダーシステムは、駆動装置100を含む。
【0020】
駆動装置は、被駆動要素4、とりわけカレンダーディスク4を駆動するための駆動モバイル10を含む。駆動モバイルは、軸A1周りに回転可能に搭載されることが意図される。モバイルは、
- サポート11と、
- 被駆動要素を駆動するための第1側面f11と、
- 駆動モバイルを後退させる作用を受けるように配置される第2側面f12’、とりわけ軸A1に対して直角放射状または実質的に直角放射状に延長する第2後退側面f12’とを含み、モバイルは第2側面をサポートに接続するスライドリンク111、121を含む。
【0021】
有利には、スライドリンクは、軸A1に対して半径方向に、または実質的に半径方向に向けられる。
【0022】
被駆動要素は、駆動装置の一部を構成しない。
【0023】
第1側面は、平面のまたは実質的に平面のまたは曲面の第1表面で作成されてもよい。第2側面は、平面のまたは実質的に平面のまたは曲面の第2表面で作成されてもよい。
【0024】
第1側面は、軸A1に対して半径方向に、または実質的に半径方向に延長してもよい。有利には、第1側面はまた、軸A1に平行にまたは実質的に平行に延長する。好みにより、第1側面は、サポートに対して、軸A1周りに角度的に固定または実質的に固定される。
【0025】
第2側面は、モバイル-後退作用を受けるように、とりわけモバイルを後退させる機械的作用を受けるように配置され、当該作用はモバイル10が被駆動要素と干渉する位置にあるときに被駆動要素により生じる。
【0026】
好みにより、第2側面は、軸A1に対して直角放射状または実質的に直角放射状に延長する。第2側面は、軸A1に対して直角放射状の方向から30°より小さい角度を作るように、延長してもよい。有利には第2側面はまた、軸A1に平行にまたは実質的に平行に延長する。
【0027】
このため、装置は、第1駆動側面f11を含む剛性第1部材11、とりわけサポートと、第2側面f12’を含む弾性第2部材12とを含み、両者は互いに協働するよう設計される。好みにより、第2部材12はまた、被駆動要素を停止させるよう設計される、第3停止側面f12を含む。有利には、当該実施形態は、駆動第1部材により、とりわけ駆動第1部材の第1側面f11により、カレンダーディスクの確実な駆動を可能にし、弾性第2部材により、とりわけ弾性第2部材12の第2側面f12’により、何時でもカレンダーの修正を可能にする。更に、当該実施形態は、弾性第2部材12により、とりわけ弾性部材12の第3、停止、側面f12により、カレンダーディスクを確実に停止することを可能にする。有利には、駆動装置の当該構造は、小型であり実施が簡単であるという利点を有する。
【0028】
当該第1実施形態において、駆動モバイル10の剛性第1部材11と弾性第2部材12は、同一の平面に、または同じ高さP1に位置される。
【0029】
この第1及び第2部材11、12は、両者とも、図示しないムーブメントのフレームの案内手段に対して、軸A1周りに旋回される駆動部材1の一部を形成する。駆動部材は、駆動装置の一部を形成する。
【0030】
ここで駆動部材1は、その少なくとも一部分が第1及び第2部材11、12を受けるよう設計される、管状ボスの形状を取る。剛性第1部材11は、部材1と一体に形成されてもよい。この場合、軸A1に沿って部材1から突起する素材の突出の形状、すなわち軸A1の長手方向に延長する突起の形状を取る。当該突起はまた、とりわけ、軸A1に対して半径方向または実質的に半径方向に延長する。
【0031】
弾性第2部材12は、部材1に連結される。弾性第2部材12は、ばねなどの弾性戻し要素であり、その第1端部は頭部12aを有し、第2端部は部材1に、とりわけリベットを用いて、組み込まれまたは固着される、足部12bを有する。このため、第1端部は、第2側面を示す。第2端部そのものは、サポートへの連結を示す。頭部12aと足部12bとは、湾曲ばね12cを形成する弾性部により接続される。頭部12aは、好ましくは剛性部材11と接触する。好みにより、部材11及び12は、頭部12aが軸A1に対して半径方向または実質的に半径方向に、(許容誤差程度はあるとして)運動の自由度が1度しかないように形成される。湾曲ばね12cは、
図1、2及び5から9に図示するように、第2部材12と第2側面f12’とを静止位置に向けて戻す弾性戻し要素12cを構成する。ばね12cは、例えば、開放環の形状を有する。
【0032】
例えば、第2側面をサポートに接続するスライドリンクは、第2側面を有する要素、とりわけ頭部12aに作成される第1面121及びサポート11に作成される第2面111を含む。面111と121は好ましくは平面状である、及びまたは面111と121は好ましくは軸A1に対して半径方向にまたは実質的に半径方向に延長する。有利には、面111と121はまた、軸A1に対して平行にまたは実質的に平行に延長する。好みにより、弾性戻し要素、とりわけばね12cは、面111及び121を互いに戻すような方法で、成形され及びまたは配置される。
【0033】
第1実施形態において、第2側面は、弾性戻し要素の作用に対抗して、スライドリンクに従って、第1側面に対して動くことができる。
【0034】
駆動部材1は、当該部材が少なくとも1角度ステップ分、月の日にちを表示するディスク4の歯列を瞬時に駆動可能なように、エネルギー蓄積器3と協働するカム2に、とりわけカレンダーカムに、固定される。ここで、当該歯列は、ジャンパー5のくちばし51経由で角度的に割り出される。好みにより、サポート11は、カレンダーカム2に固定される。
【0035】
ここで、エネルギー蓄積器は、ばねとして作用するレバー部分3aの影響によりカム2の側面に対して押圧されたローラー31が設けられたレバー3からなり、日付変更中に、ジャンパー5が生成するトルクを克服可能にする。
【0036】
モバイル10は、日付ジャンプが真夜中に1日1回のみ実施されるよう、部材1周りに軸A1周りに自由に旋回し、基本ムーブメントに、とりわけ図示しない筒車に接続される歯車6を含む。駆動部材1と歯車6との間の接続は、一方向接続装置7を介しており、その作用原理は、特許文献5に記載される。
【0037】
当該装置7は、爪部材71とばね72とを含み、両者は部材1に打ち込まれる板73上で旋回される。部材71の一端に対して重みをかけるばね72は、部材71の反対端部を板73の壁73aに対して維持する傾向にある。当該部材71は、歯車6のディスクから突出するスタッド6aを伴う障害により協働する歯車6により一方向駆動で駆動される。
【0038】
当該装置7は、時計の輪列の(図示しない)筒車または筒歯車と噛み合う、24時間歯車6を含む。24時間歯車6と筒車とのギア比は、24時間歯車6が24時間で1回転するというものである。当該歯車は、時計のフレームに固定されたピボット上を旋回する能力を持って搭載された筒状ボス1の第1セグメント周りを自由に旋回する。
【0039】
壁73aを含む円形窪みが、板73に形成される。爪部材71は、窪み内に、ピボットを用いて旋回搭載される。爪部材71の一端に対して重みをかけるばね72は、爪部材71の反対端部を円形窪みの側壁に対して維持する傾向にある。爪部材71は、24時間歯車6と部材1に固定された板73との間の一方向駆動部材として作用する。
【0040】
筒状ボス1はまた、第1セグメントの直径より小さい直径の第2セグメントを含み、第1セグメント上に24時間歯車6が旋回し、第2セグメントは24時間歯車6の下に延長する。瞬時ジャンプカム2は、筒状ボス1の第2セグメント上に打ち込まれ、筒状ボス1の第2セグメント上に打ち込まれた板73経由で、第1及び第2セグメント間に形成された支持表面に対して重みをかけることができる。
【0041】
瞬時ジャンプカム2は、レバー3が有するローラー31と噛合し、レバー3はばね3aによりカム2に対して押圧される。カム2は、少なくとも1つの張力表面、1つの瞬時ジャンプ表面、及び1つの停止表面、とりわけ凹停止表面を含む。2つの張力表面と瞬時ジャンプ表面間の交点が、ばね3aに押されたレバー3がローラー31を当該交点から停止表面へ敏速に超えさせる正確な瞬間を決定する。
【0042】
図1から4は、上述の特徴を詳細に図示する。理解しやすくするため、瞬時日付ジャンプの順序と、日付を素早く調整するフェーズとを示す
図5から9は、歯車6も一方向接続装置7も図示しない。
【0043】
一日中、歯車6はカム2を装置7経由で駆動し、部材1の瞬時ジャンプに必要なエネルギーを、とりわけ部材1の所定の角度範囲にわたる回転に必要なエネルギーを蓄積し、ローラー31とカム2のプロファイル経由でばねの弾性部分3aに張力をかける。(
図4と
図5に図示する)日付の変更直前において、ローラー31は、カム2のプロファイルの実質的に頂点に位置する。(
図6に図示する)日付の変更は、ばね部3aが、レバー3とそのローラー31を介してカム2と部材1へ急な回転運動を与えることで、蓄積されたエネルギーを放出するほんの一瞬で起こる。この要素1、2と歯車6との間の相対運動は、一方向接続装置7が提供する自由度により可能となる。
【0044】
好みにより、剛性第1部材11は、
図6に示すように、有利にはカレンダー駆動爪を構成し、ディスク4の歯4aと直接接触するよう設計された側面f11を含む。このため、第1部材の剛性により、駆動部材1はディスクの駆動中、不必要な変形を経験することなく、このためディスク4に対して、軸A1に対して直角放射のまたは実質的に直角放射であって、その向きが歯4aを基準として一定または実質的に一定である力Fを伝達する。この一連の動作中、弾性部材12は、ディスクになんら影響も及ぼさない。
【0045】
(
図7に図示するように)日付ジャンプが起こると、ディスク4は歯4aと並んで存在する歯4bを介して部材1により制動される。歯4bは、第2弾性部材12の頭部12aの第3停止側面f12に対して当接し、また第2弾性部材12は、軸A1に対して直角放射のまたは実質的に直角放射の反力F’の影響により、剛性第1部材11に対して当接するまたは当接可能である。この一連の動作中、弾性第2部材12のばね12cは、なんら影響を及ぼさない。このため、部材1は、要素11及び12aがディスク4の歯列の中の2つの歯4a、4bの間に位置するディスク制動中、不必要な変形を経験しない。
【0046】
このため、第3側面f12は、被駆動要素4を制動または停止させる制動側面または停止側面である。好みにより、当該第3側面は、軸A1に対して半径方向にまたは実質的に半径方向に延長する。有利には、第3側面はまた、軸A1に平行にまたは実質的に平行に延長する。第3側面は好ましくは、サポートに対して、軸A1周りに角度的に固定されまたは実質的に固定される。
【0047】
図7の構成において、第1部材11と第2部材12、とりわけ頭部12aは、ローラー31をカム2プロファイルで定義される窪みに保持する、レバー3のばね部分3aにより事前に規定され確立される力の影響により、その位置で保持される。
【0048】
(
図5に図示する)日付ジャンプ前に、部材11、12aは、ディスク4の歯列の圏外にある。このため、時計回りまたは反時計回り方向であろうとも、例えば要求に応じて起動可能な補助修正機構の一部を形成する修正星車8を用いることで、ディスク4の歯列の作動により、日付の迅速な修正が可能となる。
【0049】
日付ジャンプ後、部材11、12aは、ローラー31をカム2プロファイルで定義される窪みに保持するレバー3のばね部分3aにより事前に規定され確立される力の影響により、歯列内に保持される。それにもかかわらず、要素1及び2を歯車6から離すことを可能にする一方向修正装置7のおかげで、
図8に図示する時計回り方向の日付の迅速な修正が可能である。
【0050】
ここで、第1部材11は、
図9に示すように、日付ジャンプが発生するとディスク4の歯列の圏外になるという態様で成形される及びまたは配置されるという特徴を有する。このため、ばね12cを弾性変形する、側面f12’を押し戻す歯4aの影響による頭部12aの後退のおかげで、
図9に図示する反時計回り方向の日付の迅速修正が完全に可能になる。頭部12aの側面f12’への歯4aの作用の力F”は、この場合、軸A1に対して半径方向または実質的に半径方向である。頭部12a及び頭部が構成する側面f12’は、
図1、2及び5から9に示す残りの部分から離れている。当該構成において、頭部12aは、側面f12’のみが歯4aの圏内にあるという態様で成形される及びまたは配置されるという特徴を有する。修正が達成されると、
図1、2及び5から9に図示するように、湾曲したばね12cが、第2部材12及び第2側面f12’を静止位置に向かい弾性的に戻す。
【0051】
このため、第2側面は、好ましくはモバイルの、具体的には第2部材の頭部12aを後退させる、後退側面である。
【0052】
第1実施形態において、第1側面はサポートに対して固定される。
【0053】
図10から12を参照して、以下に第2実施形態を説明する。当該第2実施形態は、第2側面が第1側面に固定される、すなわち第1及び第2側面が互いに固定される点で第1形態と異なる及びまたはスライドリンクが体現される方法で第1実施形態から異なる。
【0054】
図10に示す第2実施形態の第1代替形態において、スライドリンクは、第2側面を有する要素上に設けられる、とりわけ第2部材12の頭部12aに設けられるスロット120と、サポート上に製造される、とりわけサポート内に組み込まれるピン11と、を含む。スロットとピンは、両者が互いに協働してスライドリンクを形成するように配置され成形される。好みにより、スライドリンクは、その並進または実質的に並進運動の軸が、軸A1に対して半径方向または実質的に半径方向となるよう配置される。動作において、スロットは、ピン周りにわずかに旋回することもある。しかしながら、当該旋回は完全に無視することができ、これは当該結合がスライドリンクと見做されることを意味する。必要があれば、ピンは旋回を制限するため、非円形、とりわけ平行六面体の形状に置き換えることができる。
【0055】
このため、当該第1代替形態において、弾性第2部材の頭部12aは、カレンダー駆動爪を構成してもよい。ピン11は、部材1の一体部分として形成されるポスト11で代替可能である。カレンダーが動作中、スロット120の壁は、ピンまたはポストと当接するよう設計される。
【0056】
スロットは、単一壁の切抜きとして限定されてもよい。
【0057】
図11及び12に図示する第2実施形態の第2代替形態において、スライドリンクは、第2側面を有する要素上に形成されるピン120’、とりわけ第2部材12の頭部12aに組み込まれるピンと、サポート上に製造されるスロット110とを含む。スロットとピンは、両者が互いに協働し、スライドリンクを形成するように配置され成形される。好みにより、スライドリンクは、その並進または実質的に並進運動の軸が、軸A1に対して半径方向または実質的に半径方向となるよう配置される。動作において、スロットは、ピン周りにわずかに旋回することもある。しかしながら当該旋回は完全に無視することができ、これは当該結合がスライドリンクと見做されることを意味する。必要があれば、ピンは旋回を制限するため、非円形、とりわけ平行六面体の形状に置き換えることができる。
【0058】
当該第2代替形態において、剛性第1部材11と弾性第2部材12は、2つの離れた平面または高さに配置される。これは、当該代替形態において、駆動爪とスライドリンクは、軸A1に垂直で、異なる2つの平面上に形成されるためである。当該第2代替形態にかかるモバイル10の動作の原理は、第1代替形態のそれと同様である。
【0059】
当該代替形態において、弾性第2部材は、第1代替形態の弾性第2部材の形状と同様の形状を表してもよい。頭部12aの一体部分として形成されたポスト120’またはピン120’は、部材11内に製造された切抜き110内で移動するよう、平面P2内で延長してもよい。切抜きは、好ましくは2つの別個の壁を有するスロットの形状を有し、これはカレンダーの動作の段階にかかわらず、端止めとして作用することを目的とする。もちろん、当該切抜きは、1つの壁のみを有するよう制限されてもよい。
【0060】
どの実施形態においても、駆動部材1はまた、31日よりも少ない日を有する月の末に、図示しない補助歯列を作動させることを意図する追加の駆動爪13を含んでもよい。好みにより、当該爪13は、部材11または12aを含む駆動爪の高さまたは平面とは異なる高さまたは平面に配置される。
【0061】
以上、駆動装置の実施形態をカレンダー要素の駆動へ適用した例について説明してきた。しかしながら、本発明にかかる駆動装置は、時間情報を、特に時に関する情報及びまたは分に関する情報をディスプレイまたは表示することを可能にするあらゆる種類の要素を駆動するために用いられてもよい。好みにより、時間情報のディスプレイまたは表示は、ジャンプ型のもの、特に瞬時ジャンプ型のものである。
【0062】
従来技術から既知のものとは異なり、本発明にかかる解決策によると、弾性第2部材は、多かれ少なかれ瞬時である日付ジャンプを作動するためではなく、カレンダー調整段階中に駆動モバイルをカレンダー歯列から後退させるためにカレンダーディスクにより徐々に張力を受けることが意図される点で、とりわけ区別可能である。本発明にかかる解決策では、ジャンプの瞬間性自体は、好ましくはサポート11に接続される、とりわけ一体として接続される、カム2により保証される。更に、弾性第2部材は、第1端部においてサポートに組み込まれ第2端部においてサポートに対してスライドリンクに搭載される点で、区別可能である。最後に、駆動爪は、その堅固性により、カレンダーディスクを可能な限り連続する方法で駆動可能にする。これは、瞬時ジャンプ中のカレンダーディスクのがたつきを防止することを可能にする。
【0063】
実施形態がどれであれ、スライドリンクは、修正方向がどうであれ、動作可能である。
【0064】
実施形態がどれであれ、第2側面f12’は、駆動モバイルを後退させる作用を受けるように独占的に配置される、すなわち第2側面と被駆動要素は、好ましくは被駆動要素が第2側面に独占的に及びまたは直接的に作用するように配置される。第1側面f11は、被駆動要素を駆動する作用を受けるように独占的に配置される、すなわち第1側面と被駆動要素は、好ましくは第1側面が、当該要素を駆動するために非駆動要素に独占的に及びまたは直接的に作用するように配置される。このため、第1側面と第2側面の機能は異なる。換言すれば、第1側面は、駆動モバイルを後退させるために用いられず、第2側面は、被駆動要素を駆動するために用いられない。
【0065】
実施形態がどれであれ、第1及び第2側面は異なる。
【0066】
本明細書において、「スライドリンク」は、「直動関節」または好ましくは1自由度しか許可しない機械的継ぎ手またはリンクを意味し、この自由度は、スライドリンクの軸に関して並進である。
【0067】
本明細書において、「駆動モバイルを後退させる」は、好ましくは駆動モバイルの要素または一部を後退させる、とりわけ駆動モバイルの頭部12aを後退させることを意味する。
【符号の説明】
【0068】
4 被駆動要素
10 駆動モバイル
11 サポート
100 駆動装置
111,121 スライドリンク
200 時計カレンダーシステム
A1 軸
f11 第1側面
f12’ 第2側面