(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
F02D 35/00 20060101AFI20230306BHJP
F01N 13/00 20100101ALI20230306BHJP
F01N 13/08 20100101ALI20230306BHJP
F01N 13/18 20100101ALI20230306BHJP
B62M 7/02 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
F02D35/00 368D
F02D35/00 368C
F01N13/00 A
F01N13/08 G
F01N13/18
B62M7/02 F
(21)【出願番号】P 2018207569
(22)【出願日】2018-11-02
【審査請求日】2021-06-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】秋田 浩平
(72)【発明者】
【氏名】植本 匠
【審査官】菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-167797(JP,A)
【文献】特開2006-097605(JP,A)
【文献】特開2015-068292(JP,A)
【文献】特開2017-214854(JP,A)
【文献】特開2009-220589(JP,A)
【文献】特開2006-207403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 35/00
F01N 13/00
B62M 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気ポートに接続された排気管と、
排気ガス中の成分を検出するための排気ガスセンサと、
前記排気ガスセンサのガード体と
を備え、
前記排気ガスセンサに設けられた被係合部が、前記排気管に備えられた係合部に螺合されることで、前記排気ガスセンサが前記排気管に固定され、
前記ガード体は、前記排気ガスセンサと前記係合部との間に挟み込まれることで、前記排気管に対して固定され、
前記ガード体は、前記排気ガスセンサに沿って延びる保護部を備え、
前記保護部は、前記排気ガスセンサの前方を覆うが後方を露出させ、かつ基端から先端に向かって幅が減少して
おり、前記保護部の前記先端は、前記排気ガスセンサから離れる向きに湾曲している、鞍乗型車両。
【請求項2】
前記排気ガスセンサと前記ガード体は、前記排気管の車体幅方向の内側部分に固定され、前記排気管から前記車体幅方向の内方に突出し、前記車体幅方向の外方から見て前記排気管に隠れている、請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項3】
前記排気ガスセンサは、平面視において、先端側が基端側よりも後方に位置するように前記車
体幅方向に対して傾斜している、請求項2に記載の鞍乗型車両。
【請求項4】
前記排気管は、一端が前記排気ポートに接続された第1部分と、前記第1部分の他端に一端が接続されて上下方向に延びる第2部分とを備え、
前記排気ガスセンサと前記ガード体は、前記第2部分に固定されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の鞍乗型車両。
【請求項5】
前記排気管の前記第2部分は、一対のダウンフレームの一方に隣接して配置され、
前記排気ガスセンサから延びるハーネスは、前記一方のダウンフレームに沿って配索されている、請求項4に記載の鞍乗型車両。
【請求項6】
前記排気ガスセンサの前記被係合部とは反対側の端部からハーネスが延び、
前記ガード体は、
前記排気ガスセンサと前記係合部との間に挟み込まれる被支持部と
を備え、
前記保護部の前記基端は前記被支持部に接続されている、請求項1から5のいずれかに記載の鞍乗型車両。
【請求項7】
前記ガード体は、前記ガード体の前記排気ガスセンサに対する前記被係合部の中心軸回りの回転を止めるための回り止め部を備える、請求項
6に記載の鞍乗型車両。
【請求項8】
前記排気管は、
車体幅方向に並べて配置された複数の排気管を含み、
前記各排気管に、それぞれ前記排気ガスセンサと前記ガード体が固定されている、請求項1から
7のいずれか1項に記載の鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の鞍乗型車両の一例である自動二輪車は、排気ガス中の酸素濃度を検出するために排気管に取り付けられた排気ガスセンサと、排気ガスセンサのガード体を備える。このガード体は、排気管に対して溶接によって固定されている。
【0003】
特許文献1に開示されたものを含む従来の鞍乗型車両は、排気ガスセンサとそのガードの排気管に対する取付構造の簡素化について、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、鞍乗型車両において、排気ガスセンサとそのガード体の排気管に対する取付構造を簡素化することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、エンジンの排気ポートに接続された排気管と、排気ガス中の成分を検出するための排気ガスセンサと、前記排気ガスセンサのガード体とを備え、前記排気ガスセンサに設けられた被係合部が、前記排気管に備えられた係合部に螺合されることで、前記排気ガスセンサが前記排気管に固定され、前記ガード体は、前記排気ガスセンサと前記係合部との間に挟み込まれることで、前記排気管に対して固定され、前記ガード体は、前記排気ガスセンサに沿って延びる保護部を備え、前記保護部は、前記排気ガスセンサの前方を覆うが後方を露出させ、かつ基端から先端に向かって幅が減少している、鞍乗型車両を提供する。
【0007】
本発明によれば、排気ガスセンサのガード体は、排気ガスセンサと、排気管に備えられた係合部との間に挟み込まれることで、排気管に対して固定される。これによって、ガード体を固定するためだけに、ブラケットのような構造を排気管、フレーム等に設ける必要がなく、構造を簡素化できる。
【0008】
本発明において、上記構成に加え、次のような構成を備えることができる。
【0009】
(a)前記排気ガスセンサと前記ガード体は、前記排気管の車体幅方向の内側部分に固定され、前記排気管から前記車体幅方向の内方に突出し、前記車体幅方向の外方から見て前記排気管に隠れている。
【0010】
(b)前記排気ガスセンサは、平面視において、先端側が基端側よりも後方に位置するように前記車幅方向に対して傾斜している。
【0011】
(c)前記排気管は、一端が前記排気ポートに接続された第1部分と、前記第1部分の他端に一端が接続されて上下方向に延びる第2部分とを備え、前記排気ガスセンサと前記ガード体は、前記第2部分に固定されている。
【0012】
(d)前記排気管の前記第2部分は、一対のダウンフレームの一方に隣接して配置され、前記排気ガスセンサから延びるハーネスは、前記一方のダウンフレームに沿って配索されている。
【0013】
(e) 前記排気ガスセンサの前記被係合部とは反対側の端部からハーネスが延び、前記ガード体は、前記排気ガスセンサと前記係合部との間に挟み込まれる被支持部とを備え、前記保護部の前記基端は前記被支持部に接続されている。
【0014】
(f)前記ガード体の前記保護部の前記先端は、前記排気ガスセンサから離れる向きに湾曲している。
【0015】
(g)前記ガード体は、前記ガード体の前記排気ガスセンサに対する前記被係合部の中心軸回りの回転を止めるための回り止め部を備える。
【0016】
(h)前記排気管は、前記車両幅方向に並べて配置された複数の排気管を含み、前記各排気管に、それぞれ前記ガスセンサと前記ガード体が固定されている。
【0017】
前記構成(a)によれば、排気ガスセンサとガード体の位置と姿勢をこのように設定することで、排気管によって、排気ガスセンサとガード体が障害物に接触することを防ぐことができる。
【0018】
前記構成(b)によれば、排気ガスセンサの姿勢が車体幅方向に対して後傾しているので、排気ガスセンサ及びガイド体の前面投影面積が減少する。その結果、巻き上げられた泥や砂のような異物が排気ガスセンサに衝突する確率を低下させることができる。つまり、かかる姿勢の設定により、排気ガスセンサを保護できる。
【0019】
前記構成(c)によれば、上下方向に延びる排気管の第2部分に排気ガスセンサを固定することで、排気管内に液だまりが生じた場合でも、排気ガスセンサの浸水を抑制できる。
【0020】
前記構成(d)によれば、ハーネスはダウンフレームに沿って配索されているので、ユーザが鞍乗型車両を見たときに排気ガスセンサから延びるハーネスが見えにくい。その結果、鞍乗型車両の外観が向上する。
【0021】
前記構成(e)によれば、ガード体の保護部の先端は基端と比較して幅が狭くなっている。そのため、ハーネスの排気ガスセンサに接続された部分に対して、ガード体の保護部の先端が引っ掛かりにくく、ハーネスが保護される。
【0022】
前記構成(f)によれば、保護部の先端が排気ガスセンサから離れる向き、つまり外向きに湾曲していることにより、ハーネスの排気ガスセンサに接続された部分が、走行風や車体姿勢によって変形した場合でも、保護部の先端に干渉するのを防ぐことができる。
【0023】
前記構成(g)によれば、回り止め部によってガード体の回転が止められるため、排ガスセンサを適切に保護できる姿勢にガード体を維持できる。
【0024】
本発明の他の態様は、エンジンの排気ポートに接続された排気管と、排気ガス中の成分を検出するための排気ガスセンサと、を備え、前記排気ガスセンサは、前記排気管の車体幅方向の内側部分に固定され、前記排気管から前記車体幅方向の内側に突出し、前記車体幅方向の外方から見て前記排気管に隠れている、鞍乗型車両を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の鞍乗型車両によれば、排気ガスセンサとそのガード体の排気管に対する取付構造を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】排気装置とフレームを左前方から見た斜視図。
【
図3】排気装置とフレームを右後方から見た斜視図。
【
図6】排気ガスセンサの排気管への取付構造の断面図。
【
図7】排気ガスセンサの排気管への取付構造の斜視図。
【
図8】排気ガスセンサの排気管への取付構造の分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両として、自動二輪車を説明する。なお、説明の都合上、自動二輪車の進行方向を自動二輪車及び各部品の「前方」とし、自動二輪車に搭乗する乗員が前方を見たときの車幅方向における左右を、自動二輪車及び各部品の「左右」として、説明する。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態に係る自動二輪車1を示す。自動二輪車1は、カウルを備えていないネイキッドタイプである。ネイキッドタイプとは、エンジンの周囲が車体外方に露出しているものである。具体的には、エンジンの車幅方向側面が、車幅方向外方に露出しており、排気管も車幅方向外方に露出する。そなわち、側面視において、エンジン側面及び排気管が視認可能となるように構成される。
【0030】
図2から
図5を併せて参照すると、自動二輪車1の車体フレーム10は、ヘッドパイプ11と、ヘッドパイプ11から後方に延びるメインフレーム12と、ヘッドパイプ11から分岐して下方後方に延びる左右一対のダウンフレーム13とを備えている。ダウンフレーム13は、上端がヘッドパイプ11に接続され、かつ上下に延びる縦パイプ部14と、縦パイプ部14の下端から後方に延びる下側パイプ部15を備える。
【0031】
図1を参照すると、自動二輪車1は、前輪2と後輪3との間に、左右2つの気筒21を有するエンジン20を備えている。自動二輪車1は、走行風によってエンジン20の周囲の空気が入れ替えられることで、エンジン3の周囲温度の上昇を防ぐようになっている。エンジン20は、シリンダヘッド及びシリンダブロックに放熱用のフィンが形成される空冷エンジンである。エンジン20は、車体フレーム10に支持されている。具体的には、エンジン20は、メインフレーム12の下方に配置され、メインフレーム12及びダウンフレーム13に支持されている。
図2から
図5では、エンジン20の図示を省略している。
【0032】
図2から
図5を参照すると、自動二輪車1の排気装置30は、排気管系31、排気マフラー32、排気ガスセンサ33、及び排気ガスセンサ33のガード体34を備える。本実施形態では、排気ガスセンサ33は酸素センサであって、排気ガス中に含まれる酸素濃度を検出する。具体的には、本実施形態の排気ガスセンサにおいては、燃焼前に吸気に含まれる燃料が理想空燃比よりも多い(リッチ)状態と、燃焼前に吸気に含まれる燃料が理想空燃比よりも少ない(リーン)状態とで、出力が二段階に変化するように閾値が設定される。
【0033】
排気管系31は、2つの気筒21にそれぞれ対応する、左右2本の排気管35を有する。排気管35はダウンフレーム13よりも車幅方向外側に広がって配置される。排気管35は、一端が気筒21の排気ポート22に接続され、車幅方向外側に向かいつつ前方に延びる上側管部(第1部分)36を備える。また、排気管35は、上側管部36の他端に上端が接続され、上下方向に延びる縦管部(第2部分)37を備える。縦管部37は、ダウンフレーム13の縦パイプ部14に対して車体幅方向外側に隣接して位置している。排気管35は、縦管部37の下端に一端が接続され、車幅方向やや内側に向かいつつ後方に延びる下側管部38を備える。下側管部38の他端に、排気マフラー32が接続されている。2本の排気管35は、下側管部38の部分で、連通管39によって互いに接続されている。
【0034】
2本の排気管35に、排気ガスセンサ33と、そのガード体34がそれぞれ固定されている。以下、一方の排気管35に対する排気ガスセンサ33Lとガード体34の取付構造を説明する。他方の排気管35に対する排気ガスセンサ33と、そのガード体34の取付構造は、一方側の取付構造と、左右対称である点を除いて同一であり、説明を省略する。
【0035】
図2から
図5を参照すると、排気ガスセンサ33とガード体34は、排気管35の縦管部37に固定されている。排気ガスセンサ33とガード体34はダウンフレーム13よりも車幅方向外側に配置されている。排気ガスセンサ33とガード体34が固定されている位置と、これらの姿勢の詳細は、後述する。
【0036】
図6から
図8を参照すると、排気管35の縦管部37は、概ね円管状であるが、管壁37aを部分的に平坦化した平坦部37bが設けられている。
図6を参照すると、縦管部37の管壁37a断面形状は、270度以上の円弧状部を備え、この円弧状部の周方向両端部が平坦部37bによって連結されている。平坦部37bには管壁37aを貫通する貫通穴37cが設けられている。また、平坦部37bの外側には円板状の台座部37dが設けられている。本実施形態では、台座部37dは平坦部37bに溶接されている。台座部37dには、貫通穴37cと連通する雌ねじ37eが厚み方向に貫通するように設けられている。雌ねじ37eの中心軸CLの方向は、貫通穴37cの軸線と同軸である。また、台座部37dには、後述する雄ねじ33d及び雌ねじ37eの中心軸CL回りのガード体34の回転角度位置を、同じく後述するガード体34の回り止め部34hと協働して維持するための構造が設けられている。本実施形態では、当該構造として、台座部37dに、頂面37fと周面37gの除去した切欠部37hが設けられている。切欠部37hを設けたことにより、台座部37dの外周形状は雌ねじ37eの中心軸CLに対して非円形である。
【0037】
排気ガスセンサ33は、全体として概ね直管状状であり、ハウジング33aの一方の端部に雄ねじ部33bを有し、ハウジング33aの雄ねじ部33bとは反対側の端部に外装部33cを有している。外装部33cからハーネス41が延びている。雄ねじ部33bは雄ねじ33dと、ねじ込みのためのナット状部33eとを備える。雄ねじ33dの先端にはセンシング部33fが備えられている。センシング部33fには、例えば排気ガス中の酸素濃度を検出するための素子(図示せず)が収容されており、この素子はハーネス41と接続されている。
【0038】
本実施形態におけるガード体34は、金属板からなり、略L字形状に形成されている。ガード体34は、平坦な板状の被支持部34aを有する。被支持部34aに厚み方向に関する貫通穴34bが形成されている。また、ガード体34は、被支持部34aに対して概ね直角に屈曲して連なる保護部34cを備える。保護部34cは、基端34dが被支持部34aに接続され、被支持部34aから
図6から
図8において上向きに、具体的には、貫通穴34bの軸線方向に沿って、排気管35の縦管部37から離れる方向に延びている。保護部34cによって飛翔物等から排気ガスセンサ33が保護される。ガード体34は、被支持部34aから
図6から
図8において下向きに、具体的には、貫通穴34bの軸線方向に沿って、排気管35の縦管部37から近付く方向に突出する回り止め部34hを備える。回り止め部34hは貫通穴34bに対して保護部34cとは反対側に設けられている。
【0039】
図6を参照すると、雄ねじ33dが雌ねじ37eに螺合することで、排気ガスセンサ33が排気管35に対して固定されている。排気ガスセンサ33のセンシング部33fは貫通穴37cを介して管壁37aから排気管35内に突出している。
【0040】
ガード体34は、被支持部34aが排気ガスセンサ33の雄ねじ部33b、より具体的にはナット状部33eと、台座部37dの頂面37fとの間に挟み込まれることで、排気管35に対して挟持固定されている。台座部37dの頂面37dと、ガード体34の被支持部34aとの間には、弾性部材、具体的には環状のパッキン42が介在している。雌ねじ部37の切欠部37hは、排気ガスセンサ33のナット状部よりも径方向外側に位置している。
【0041】
排気ガスセンサ33のガード体34は、溶接ではなく、排気ガスセンサ33と、排気管35に設けられた台座部37dとの間に挟み込まれることで、排気管35に対して機械的に固定される。そのため、ガード体を溶接によって固定する場合には不可避である溶接ビードをなくすことができる。溶接ビードがないことで、鞍乗型車両の外観が向上する。また、ガード体を固定するためだけにブラケットのような構造を排気管、フレーム等に設ける必要がなく、構造を簡素化できる。
【0042】
ガード体34の保護部34cは、排気ガスセンサ33の側方を覆って、排気ガスセンサ33に沿って延びている。保護部34cは外側面34fが凸となるように湾曲している。保護部34cの内側面34gと排気ガスセンサ33との間には隙間が設けられている。
【0043】
ガード体34の保護部34cの幅は、被支持部34aに接続された基端34dから、その反対側である先端34eに向けて減少しており、保護部34cの先端34eは基端34dと比較して幅が狭くなっている。そのため、ハーネス41の排気ガスセンサ33の外装部33cから突出する部分に対して、保護部34cの先端が引っ掛かりにくく、ハーネス41が保護される。
【0044】
ガード体34の保護部34cの先端34eは、排気ガスセンサ33から離れる向き、つまり外向きに湾曲している。ハーネス41の排気ガスセンサ33に接続された部分が、走行風や車体姿勢によって変形した場合でも、ガード体34の保護部34cの先端34eに干渉するのを防ぐことができる。また、保護部34cの先端34eはハーネス41の排気ガスセンサ33に接続された部分を覆う位置まで延長されているので、飛散物によって損傷しやすいハーネス41の排気ガスセンサ33に接続された部分を効果的に保護できる。
【0045】
ガード体34の回り止め部34hは、台座部37dの切欠部37hに係合している。そのため、ガード体34は雄ねじ33d及び雌ねじ37eの中心軸CL回りに回転せず、中心軸CLのガード体34の回転角度位置は、ガード体34の保護部34が排気ガスセンサ33より車両の進行方向前方に位置するように維持される。
【0046】
ガード体34の保護部34cは排気ガスセンサ33より車両の進行方向前方に位置している。つまり、保護部34cは、排気ガスセンサ33の前方領域を覆う一方、排気ガスセンサ33の後方領域が露出するように貫通穴34bの軸線回りに周方向に部分的に切り欠かれている。そのため、走行風による排気ガスセンサ33周囲の空気の入れ替えを促進することができ、排気ガスセンサ33の温度上昇を抑制できる。
【0047】
保護部34cは、排気ガスセンサ33の下方領域が露出するように貫通穴34bの軸線回りに周方向に部分的に切り欠かれている。そのため、雨水や泥水等の飛翔物が保護部34cで堆積することを防ぐことができ、排気ガスセンサ33の固着、液体付着による劣化を抑制できる。
【0048】
回り止め部34hが設けられていることで、飛翔物が保護部34に衝突したとしても、保護部34cが貫通穴34bの軸線回りの角変位を防ぐことができ、ガード体34により排気ガスセンサ33の保護効果を維持させることができる。
【0049】
図2から
図5を参照すると、排気ガスセンサ33とガード体34は、縦管部37の車体幅方向の内側部分に固定されている。また、排気ガスセンサ33とガード体34は、排気管35の縦管部37から車体幅方向の内方に突出している。排気ガスセンサ33とガード体34の位置と姿勢をこのように設定することで、排気ガスセンサ33とガード体34は車体幅方向の外方から見て排気管35の縦管部37に隠れている(
図1参照)。そのため、排気管35によって、排気ガスセンサ33とガード体34が障害物に接触することを防ぐことができる。また、排気ガスセンサ33が見えないことで、排気管35の縦管部37の見た目がすっきりとし、自動二輪車1の外観が向上する。本実施形態のように排気管35が側面視に露出するネイキッド型の車両においては、車両側面視において、排気ガスセンサ33を目立たなくして、排気管35を目立たせることができ、美観の向上効果を高めることができる。本実施形態では、車体幅方向の外方から見て、排気ガスセンサ33とガード体34の全体が排気管35の縦管部37に隠れているが、これらの一部が縦管部37に隠れてもよい。
【0050】
図4を参照すると、車幅方向の一方の排気ガスセンサ33の少なくとも一部が、その排気ガスセンサ33の車幅方向外側に配置されている一方の排気管35の縦管部37で隠れる。また、車幅方向の一方の排気ガスセンサ33の少なくとも一部が他方の排気管35の縦管部37にも隠れる。このように一つの排気ガスセンサ33は車幅方向両側から排気管35で隠される。また、排気ガスセンサ33の少なくとも一部が、その排気ガスセンサ33の上方に配置されている排気管35の上側管部36に隠れる。このように排気ガスセンサ33が隠されることで、外観が向上する。
【0051】
図4に最も明瞭に示すように、排気ガスセンサ33は、平面視において、先端側が基端側よりも後方に位置するように車体幅方向に対して傾斜している。ガード体34の平面視における姿勢も同様である。つまり、排気ガスセンサ33とガード体34の姿勢は車体幅方向に対して後傾している。この後傾により、排気ガスセンサ33とガード体34の前面投影面積(
図5参照)が減少する。その結果、巻き上げられた泥や砂のような異物が排気ガスセンサ33に衝突する確率を低下させることができる。つまり、かかる姿勢の設定により、排気ガスセンサ33を保護できる。また、排気ガスセンサ33とガード体34の姿勢が車体幅方向に対して後傾しているので、車両正面視において、排気ガスセンサ33とガード体34が排気管35の縦管部37に隠れて見えにくい。その結果、排気管35の縦管部37の見た目がさらにすっきりとし、自動二輪車1の外観が向上する。本実施形態のように、ラジエータが設けられていない空冷エンジンが搭載されている車両においては、車両正面視において、排気ガスセンサ33を目立たなくして、排気管35を目立たせることができ、美観の向上効果を高めることができる。さらに、排気ガスセンサ33が後方傾斜するように配置されるように配置されることで、ダウンフレーム13と排気ガスセンサ33との車幅方向間隔を広げることができ、車体フレーム10と排気ガスセンサ33の干渉を防ぎやすくなる。
【0052】
貫通穴37cの軸線が車幅方向内側に進むにつれて後方に向かう傾斜を有するように、台座部37dが排気管35に溶接されている。言い換えると、排気管35の平坦部37bが、前端から後方に進むにつれて車幅方向外側に向かうように傾斜している。これによって、排気ガスセンサ33を車幅方向内側に進むに連れて、後方に傾斜するように配置させることができる。
【0053】
排気ガスセンサ33は、下側管部38よりも上方に位置する縦管部37に配置される。これによって地面から飛び跳ねた飛散物が、排気ガスセンサ33に衝突することを防ぐことができる。
【0054】
前述のように排気ガスセンサ33とガード体34は、排気管35の縦管部37に固定されており、縦管部37は上下方向に延びている。排気管35内に液だまりが生じた場合でも、縦管部37には液が止まることがないので、排気ガスセンサ33の浸水を抑制できる。
【0055】
排気ガスセンサ33とガード体34が固定された排気管35の縦管部37は、ダウンフレーム13の下側パイプ部15に隣接して配置されている。
図3に最も明瞭に示すように、排気ガスセンサ33から延びるハーネス41は、ダウンフレーム13の縦パイプ部14の後側面に沿って配索され、ダウンフレーム13の縦パイプ部14の間に配置された制御ユニット43に接続されている。縦パイプ部14の後側面に沿って配索されていることで、特に、自動二輪車1を前面から見たときに、排気ガスセンサ33から延びるハーネス41が見えにくく、自動二輪車1の外観が向上する。
【0056】
排気ガスセンサ33は、雄ねじ33dと雌ねじ37eの螺合により排気管35に着脱可能に取り付けられ、ガード体34は排気ガスセンサ33の雄ねじ部33bと排気管35に固定された雌ねじ部37bとの間に挟み込まれることで排気管35に固定されている。従って、排気ガスセンサ33は、排気管35に対して着脱可能である。そのため、ガード体34が障害物との衝突によって変形や変色した場合、ガード体34が排気管35に溶接されている場合と比較して、ガード体34を容易に交換できる。
【0057】
本発明は、前記実施形態に限定されず、以下に列挙するように種々の変形が可能である。
【0058】
例えば、排気ガスセンサ33は、排気管35の取付位置は、縦管部37以外の箇所であってもよい。例えば、複数の排気管が集合管で集合した後であって排気マフラーに接続される前の箇所に、排気ガスセンサを取り付けてもよい。
【0059】
排気ガスセンサは、酸素濃度の連続的な変化に応じた出力を得るリニア型のセンサであってもよい。また、排気ガスセンサは、酸素濃度ではなく、NOxガス濃度、PM、PNを検出したり、排ガスの温度を検出するものであってもよい。
【0060】
ガード体の保護部は排気ガスセンサの全周、つまり上下領域と前後領域を覆うような筒状であってもよい。
【0061】
本発明は、ハーフカウル、ビキニカウルを含むエンジンカウルを備える自動二輪車にも適用でき、同様の効果が得られる。また、本発明は、実施形態のものとは異なるフレーム構造の車両にも適用できる。エンジンの気筒数は1気筒でもよい、3気筒以上の気筒を備えるエンジンであっても、本発明を適用できる。さらに、水冷エンジンを備える自動二輪車にも本発明を適用できる。
【0062】
排気ガスセンサを着脱可能に排気管に固定する構造は、実施形態とは異なるものを採用してもよい。例えば、排気ガスセンサにプレートが固定され、このプレートが排気管側の台座部と締結されてもよい。
【0063】
ガード体を回り止めするための構造は実施形態のものに限定されない。例えば、台座部とガード体の一方に突起部が形成され、他方に突起部が嵌合する凹部が形成されてもよい。この突起部が凹部に嵌合することによって、ガード体が台座部に対して角変位することが阻止される。
【0064】
ガード体を回り止めするための構造は、以下のようなものであればよい。ガード体は、貫通穴の軸線の周方向の一方側に向く第1対向面を備え、台座部はガード体が同軸に配置された状態で、第1対向面に対して周方向の他方側から向かい合う第1被対向面を備える。また、ガード体は、貫通穴の軸線の周方向の他方側に向く第2対向面を備え、台座部はガード体が同軸に配置された状態で、第2対向面に対して周方向の一方側から向かい合う第2被対向面を備える。ガード体が貫通穴の軸線の周歩行の一方に角変位しようとした場合には、第1対向面が第1被対向面に当接し、ガード体の移動が阻止される。一方、ガード体が貫通穴の軸線の周歩行の他方に角変位しようとした場合には、第2対向面が第2被対向面に当接し、ガード体の移動が阻止される。
【0065】
各対向面及び各被対向面は,凹凸のいずれかによって形成されてもよい。また、各対向面及び各被対向面は、ガード体又は台座部の外周部に形成され得るほか、外周部よりも内側に形成されてもよい。前述の実施形態では、ガード体34の各対向面を有する突起状の回り止め部34hを折り曲げることで形成でき、ガード体34の成形加工、例えば絞り加工ともに形成することができ、各対向面を容易に形成できる。
【符号の説明】
【0066】
1 自動二輪車(鞍乗型車両)
10 車体フレーム
20 エンジン
21R,22L 気筒
30 排気装置
33R,33L 排気ガスセンサ
33a ハウジング
33b 雄ねじ部
33c 外装部
33d 雄ねじ
33e ナット状部
33f センシング部
34 ガード体
34a 被支持部
34b 貫通穴
34c 保護部
35R,35L 排気管
36R,36L 上側管部(第1部分)
37R,37L 縦管部(第2部分)
37c 貫通穴
37d 台座部
37h 切欠部
37e 雌ねじ
41 ハーネス
42 パッキン