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特許7237541マップ生成装置、および、マップ生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】マップ生成装置、および、マップ生成方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 11/60 20060101AFI20230306BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20230306BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
G06T11/60 300
G01C15/00 105Z
G01B11/24 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018218077
(22)【出願日】2018-11-21
(65)【公開番号】P2020086751
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 義人
(72)【発明者】
【氏名】関 洋
(72)【発明者】
【氏名】照沼 博之
(72)【発明者】
【氏名】坂本 雄志
【審査官】板垣 有紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-115915(JP,A)
【文献】特開2016-217941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 11/00 - 19/20
G01C 15/00
G01B 11/24
G06F 30/00 - 30/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間内に配置される設備の位置および設備の形状を定義した設計データと、空間内に実在する設備を計測した結果の点群データとがそれぞれ記憶部に記憶されており、
前記記憶部から読み込んだ前記点群データから、前記設計データでの設備に対応付けられる前記点群データを探索する設備形状探索部と、
前記設備形状探索部によって対応付けられなかった残りの前記点群データを、外れ点群として抽出する設備形状外れ点群評価部と、
抽出された前記外れ点群から形成される部分点群形状を、前記設計データに存在しない設備として分類する分類評価部と、
前記設計データに存在する設備と、存在しない設備として分類された前記部分点群形状の設備とを併せたマップを表示装置に表示させる表示制御部と
前記設計データの設備を示す設計設備形状と、対応付けられる前記点群データから形成される前記部分点群形状とを比較することで、形状ずれ量および位置ずれ量をそれぞれ求める形状・位置評価部とを有しており、
前記分類評価部は、前記形状ずれ量および前記位置ずれ量がそれぞれ所定閾値よりも大きい前記部分点群形状を、前記設計データに存在しない設備として分類することを特徴とする
マップ生成装置。
【請求項2】
前記分類評価部は、前記形状ずれ量が所定閾値よりも小さいが、前記位置ずれ量が所定閾値よりも大きい前記部分点群形状を、前記設計データに存在するが位置が変更された設備として分類し、
前記表示制御部は、位置が変更された設備も併せたマップを前記表示装置に表示させることを特徴とする
請求項1に記載のマップ生成装置。
【請求項3】
前記形状・位置評価部は、前記点群データに対してクラスタリング分割を行うことで一つ以上の分割点群を生成し、その生成した分割点群から形成される前記部分点群形状と前記設計設備形状との形状比較を行うことで、前記形状ずれ量を求めることを特徴とする
請求項1に記載のマップ生成装置。
【請求項4】
前記形状・位置評価部は、前記部分点群形状から前記設計設備形状に対するICP(Iterative Closest Points)変換を行ったときの点群の移動量をもとに、前記位置ずれ量を求めることを特徴とする
請求項3に記載のマップ生成装置。
【請求項5】
前記設備形状外れ点群評価部は、前記設計設備形状との位置あわせを実行した後の距離分布に対して、平均から大きく外れた位置にある点群を前記外れ点群とすることを特徴とする
請求項1に記載のマップ生成装置。
【請求項6】
マップ生成装置は、記憶部と、設備形状探索部と、設備形状外れ点群評価部と、分類評価部と、表示制御部と、形状・位置評価部とを有しており、
前記記憶部には、空間内に配置される設備の位置および設備の形状を定義した設計データと、空間内に実在する設備を計測した結果の点群データとがそれぞれ記憶されており、
前記設備形状探索部は、前記記憶部から読み込んだ前記点群データから、前記設計データでの設備に対応付けられる前記点群データを探索し、
前記設備形状外れ点群評価部は、前記設備形状探索部によって対応付けられなかった残りの前記点群データを、外れ点群として抽出し、
前記分類評価部は、抽出された前記外れ点群から形成される部分点群形状を、前記設計データに存在しない設備として分類し、
前記表示制御部は、前記設計データに存在する設備と、存在しない設備として分類された前記部分点群形状の設備とを併せたマップを表示装置に表示させ
前記形状・位置評価部は、前記設計データの設備を示す設計設備形状と、対応付けられる前記点群データから形成される前記部分点群形状とを比較することで、形状ずれ量および位置ずれ量をそれぞれ求め、
前記分類評価部は、前記形状ずれ量および前記位置ずれ量がそれぞれ所定閾値よりも大きい前記部分点群形状を、前記設計データに存在しない設備として分類することを特徴とする
マップ生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マップ生成装置、および、マップ生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザスキャンにより建造物を現物計測し、三次元位置データの集合である点群データによりこの建造物の表面形状を認識する技術が知られている。さらにこの技術は、レーザスキャナを配置する基準点を複数とり、それぞれ取得した点群データを合成し、プラント、作業現場、街並、文化財建造物等といった大規模で複雑な形態を三次元情報化することに応用される。
【0003】
たとえば特許文献1に記載の3次元データ評価装置は、3次元計測器により3次元詳細データの測定点の密度に比べて粗い密度で測定した疎点群データを記憶する疎点群データ記憶部と、3次元詳細データと疎点群データとを同一の座標系に位置合わせする位置合わせ部と、位置合わせの結果に基づいて3次元詳細データと疎点群データとの相違量を算出する相違量算出部と、相違量の算出結果に基づいて3次元詳細データからの変更部位を特定する変更部位特定部とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-217941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プラント建物の設計データと、その設計データに従って施工された実際のプラント建物を計測した点群データとで、違いが生じる可能性がある。この違いは、例えば、以下の理由による。
・プラント建物の施工時には、配管やダクト、機器等の据え付けにおいて、現物合わせ等の修正工程が行われる。
・施工当初には両データが一致していたとしても、後の改修などにより変更が生じる可能性もある。
・プラントメーカー以外の所掌の異なる配管や、電線管などが存在する可能性もある。
【0006】
このような違いは、プラントの保守や、その後の撤去、新設などにおける撤去、搬入、据え付け計画において問題となるため、現物の位置情報を三次元的に計測し、その計測結果を設計データに反映させたいという要望がある。
なお、特許文献1では、設計データに存在する場所にある設備の形状が設計データに登録されている形状と異なる場合(変更部位)、その旨を知らせるしくみは備えられていた。しかし、設計データに存在しない場所にある設備は、対象外であった。
【0007】
そこで、本発明は、設計データに存在しない場所にある設備のマップの生成を支援することを、主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明のマップ生成装置は、以下の特徴を有する。
本発明は、空間内に配置される設備の位置および設備の形状を定義した設計データと、空間内に実在する設備を計測した結果の点群データとがそれぞれ記憶部に記憶されており、
前記記憶部から読み込んだ前記点群データから、前記設計データでの設備に対応付けられる前記点群データを探索する設備形状探索部と、
前記設備形状探索部によって対応付けられなかった残りの前記点群データを、外れ点群として抽出する設備形状外れ点群評価部と、
抽出された前記外れ点群から形成される部分点群形状を、前記設計データに存在しない設備として分類する分類評価部と、
前記設計データに存在する設備と、存在しない設備として分類された前記部分点群形状の設備とを併せたマップを表示装置に表示させる表示制御部と
前記設計データの設備を示す設計設備形状と、対応付けられる前記点群データから形成される前記部分点群形状とを比較することで、形状ずれ量および位置ずれ量をそれぞれ求める形状・位置評価部とを有しており、
前記分類評価部は、前記形状ずれ量および前記位置ずれ量がそれぞれ所定閾値よりも大きい前記部分点群形状を、前記設計データに存在しない設備として分類することを特徴とする。
その他の手段は、後記する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、設計データに存在しない場所にある設備のマップの生成を支援することができる。
なお、本発明に関連する更なる特徴、作用、効果は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、本発明の態様は、要素及び多様な要素の組み合わせ及び以降の詳細な記述と添付される特許請求の範囲の様態により達成され実現される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に関するアズビルト支援マップ生成装置の概略図である。
図2】本発明の一実施形態に関する設計設備形状の一例を示す立体図である。
図3】本発明の一実施形態に関する分類Aの一例を示す立体図である。
図4】本発明の一実施形態に関する分類Bの一例を示す平面図である。
図5】本発明の一実施形態に関する分類Cの一例を示す平面図である。
図6】本発明の一実施形態に関する分類Dの一例を示す平面図である。
図7】本発明の一実施形態に関する表示制御部による設計設備形状の表示例を示すプラントの平面図である。
図8】本発明の一実施形態に関する表示制御部による設計設備形状と部分点群形状とを重ねた表示例を示すプラントの平面図である。
図9】本発明の一実施形態に関する設備形状探索部が点群データから各設計設備形状を探索する処理を示すフローチャートである。
図10】本発明の一実施形態に関する形状・位置評価部における処理を示すフローチャートである。
図11】本発明の一実施形態に関する距離分布のヒストグラムに対して、ガウス関数をフィッティングした例である。
図12】本発明の一実施形態に関する設備形状外れ点群評価部における処理を示すフローチャートである。
図13】本発明の一実施形態に関する分類評価部の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本発明の原理に則った具体的な実施形態と実装例を示しているが、これらは本発明の理解のためのものであり、決して本発明を限定的に解釈するために用いられるものではない。
【0012】
本実施形態では、当業者が本発明を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装、形態も可能で、本発明の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成、構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0013】
図1に、本発明に係るアズビルト支援マップ生成装置1の概略図を示す。
アズビルト支援マップ生成装置1(マップ生成装置)は、CPU(Central Processing Unit)と、メモリと、ハードディスクなどの記憶手段(記憶部)と、ネットワークインタフェースとを有するコンピュータとして構成される。
このコンピュータは、CPUが、メモリ上に読み込んだプログラム(アプリケーションや、その略のアプリとも呼ばれる)を実行することにより、各処理部により構成される制御部(制御手段)を動作させる。
【0014】
アズビルト支援マップ生成装置1は、制御部として、設計データ入力部11aと、三次元計測部12aと、設備形状探索部13と、形状・位置評価部14と、設備形状外れ点群評価部15と、分類評価部16と、表示制御部18とを有する。
アズビルト支援マップ生成装置1は、制御部が使用するデータである、設計データ11bと、点群データ12bと、分類マップデータ17とを記憶する記憶部を有する。
以下、図1の各構成要素の詳細を説明する前に、アズビルト支援マップ生成装置1が扱う2種類の形状データ(設計設備形状、部分点群形状)と、それらの比較結果から定義される4つの分類A~Dについて、図2図6を参照して説明する。
【0015】
図2は、設計設備形状の一例を示す立体図である。プラントの配管部品101,102は設計設備形状の一例であり、それぞれ、設計データ11bから抽出される。この抽出処理は、例えば、円柱、トーラスで表現されたものを三角形メッシュに変換する処理で実現される。
一方、部分点群形状は、点群データ12bから抽出される形状データであり、例えば、点群の各点を線分で接続することで生成される。
そして、アズビルト支援マップ生成装置1が設計設備形状と部分点群形状とを比較するときには、形状比較と位置比較とを別々に行う。形状比較とは、双方の形状そのものが類似しているか否か(つまり、形状ずれ量が小さいか否か)を比較する処理である。位置比較とは、双方の空間上に配置された位置が近傍であるか否か(つまり、位置ずれ量が小さいか否か)を比較する処理である。
【0016】
よって、形状比較および位置比較それぞれの比較結果の組み合わせにより、以下の4通りの分類が定義される。
[分類A]=形状ずれ量が小さく位置ずれ量も小さい場合。つまり、設計データ11bの設計設備形状と同(類似)形状の部分点群形状が、設計データ11bの設備があると示す位置に存在する場合。
[分類B]=形状ずれ量が大きく位置ずれ量が小さい場合。つまり、設計データ11bの設計設備形状と異(非類似)形状の部分点群形状が、設計データ11bの設備があると示す位置に存在する場合。
[分類C]=形状ずれ量が小さく位置ずれ量が大きい場合。つまり、設計データ11bの設計設備形状と同(類似)形状の部分点群形状が、設計データ11bの設備があると示す位置から外れた別位置に存在する場合。
[分類D]=形状ずれ量が大きく位置ずれ量も大きい場合。つまり、設計データ11bの設計設備形状と異(非類似)形状の部分点群形状が、設計データ11bの設備があると示す位置から外れた別位置に存在する場合。
【0017】
図3は、[分類A]の一例を示す立体図である。設計設備形状である配管111の位置に沿って点群が存在しているため、設計設備形状と部分点群形状とは、形状ずれ量が小さく位置ずれ量も小さい。
【0018】
図4は、[分類B]の一例を示す平面図である。実線の設計設備形状D1は、その重心位置P1に配置されており、破線の部分点群形状D2は、その重心位置P2に配置されている。
形状比較では、設計設備形状D1に対して部分点群形状D2は、下部が大きく突き出しているため形状ずれ量は大きい。位置比較では、重心位置P1,P2間の距離が短いため、位置ずれ量は小さい。よって、設計設備形状D1と部分点群形状D2との関係は、[分類B]である。
【0019】
図5は、[分類C]の一例を示す平面図である。実線の設計設備形状D1は、その重心位置P1に配置されており、破線の部分点群形状D3は、その重心位置P3に配置されている。
形状比較では、設計設備形状D1と部分点群形状D2との形状が類似するため、形状ずれ量は小さい。位置比較では、重心位置P1,P2間の距離が長いため、位置ずれ量は大きい。よって、設計設備形状D1と部分点群形状D2との関係は、[分類C]である。
【0020】
図6は、[分類D]の一例を示す平面図である。破線の部分点群形状D4は、周囲に存在するどの実線の設計設備形状D1,D5,D6,D7とも形状ずれ量が大きく、かつ、位置ずれ量も大きい。
【0021】
図1に戻り、設計データ入力部11aは、設計データ11bを入力するための処理部である。設計データ11bは、例えば、プラント建屋形状、プラント内の配管、機器などの設計設備形状を含む。
三次元計測部12aは、点群データ12bを取得するための処理部であり、例えば、レーザ測距による3次元空間スキャナなどである。
点群データ12bの座標系と、設計データ11bの座標系とは、互いの位置合わせにより一致させたものとする。
なお、前記したように、アズビルト支援マップ生成装置1は、双方の座標系に含まれる形状データは形状ずれも位置ずれも許容して扱う。一方、ここでの座標系の位置合わせとは、プラントの建屋形状などの大まかな(全体的な)位置合わせである。プラントでは、例えば建屋形状については高い精度で双方の形状データが一致していると考えられるため、主に建屋形状によって位置合わせを行うことにより、双方の座標系の位置合わせが可能である。
【0022】
設備形状探索部13は、設計データ11bに含まれる設計設備形状を点群データ12b中から探索し、その探索結果である部分点群形状を抽出する。形状・位置評価部14は、設計設備形状と部分点群形状とで、形状ずれ量および位置ずれ量を評価する。
設備形状外れ点群評価部15は、いずれの設計設備形状にも含まれない部分点群形状の点群データを評価する。
分類評価部16は、各設計設備形状について、形状ずれ量および位置ずれ量に基づいて各部分点群形状との間の分類評価([分類A]~[分類D]のいずれかに分類)を行い、その結果を分類マップデータ17とする。
分類マップデータ17は、設計設備形状毎、分類毎に分割された部分点群形状の集合である。表示制御部18は、分類マップデータ17を表示装置2に表示させることで、作業者に分類マップデータ17を提示する。
【0023】
図7は、表示制御部18による設計設備形状の表示例を示すプラントの平面図である。プラントには、建物や配管、機器などの設計設備形状が配置されている。しかし、図7の設計設備形状が含まれる設計データ11bは、プラントの建設当時の古いデータであり、現在はプラントに対して様々な増築が行われているとする。
【0024】
図8は、表示制御部18による設計設備形状と部分点群形状とを重ねた表示例を示すプラントの平面図である。図8では、図7の設計設備形状に対して、太線で示す部分点群形状がプラント内の各所に増築された設備として追加されている。この追加された部分点群形状は、[分類D]として分類マップデータ17に含まれる。
作業者は、太線の部分点群形状を参照することで、どのような箇所に設計データ11bに存在しない物体が存在するかを把握することができる。よって、作業者は、図7の古い設計データ11bを、図8の新しい設計データ11bに更新することができる。
【0025】
以上、図1図8を参照して、アズビルト支援マップ生成装置1の概要を説明した。以下では、フローチャートを用いて各処理部の処理を詳細に説明する。
【0026】
図9は、設備形状探索部13が点群データから各設計設備形状を探索する処理を示すフローチャートである。
S201(設計設備形状の集合{m[i]}の読み込み処理)として、設備形状探索部13は、記憶部から読み込んだ設計設備形状を集合{m[i]}とする。m[i]は、例えば三角形メッシュで示されていたり、直方体、球、円柱、トーラスなどの基本図形を用いたり、基本図形の一部または基本図形の組み合わせにより示されたりする。
S202(点群データの集合{c[j]}の読み込み処理)として、設備形状探索部13は、記憶部から読み込んだ点群データ12bを集合{c[j]}とする。
S203として、設備形状探索部13は、点群の各点c[j]と、最も近い設計設備形状m[j][k]との距離d[j]を算出する。たとえば、点c[j]と、全てのm[j]との距離を求め、その中で最も小さい値を採用する。
S204~S206として、設備形状探索部13は、各設計設備形状m[i]について、ループを実行する。
S205として、設備形状探索部13は、ループで選択中のm[i]との距離が最短である点群{c[i][L]}を求める。このときの最短距離の分布集合を{d[i][L]}とする。
【0027】
なお、前記の説明では、設備形状探索部13は、S204で設計設備形状(m[i])を選んだ後に、その設計設備形状と距離が最短である部分点群形状(点群{c[i][L]})をS205で求めることとした。一方、設備形状探索部13は、先に部分点群形状を選んだ後に、その部分点群形状と距離が最短である設計設備形状を求めることとしてもよい。
【0028】
図10は、形状・位置評価部14における処理を示すフローチャートである。
S301~S302として、形状・位置評価部14は、各設計設備形状m[i]について、ループを実行する。
S311として、形状・位置評価部14は、集合{c[i][L]}の分布集合{d[i][L]}を、k個の重複ならびに抜けのない部分集合{D[1],…,D[k]}にクラスタリング分割する。このクラスタリング分割処理には、例えば、k-means法などが適用可能である。各D[k]に対応する点群を分割点群C[k]とする。
【0029】
S312~S313として、形状・位置評価部14は、各分割点群C[k]について、ループを実行する。
S321として、形状・位置評価部14は、分割点群C[k]から設計設備形状m[i]に対するICP(Iterative Closest Points)変換を行った分割点群を、C_tr[k]=T[k]・C[k]とする。
ICP変換とは、本来形状が一致する2つの点群に対し、互いの対応点を更新して、最近点間の距離が最も小さくなる対応点の組み合わせを求めるアルゴリズムである。結果として、一方の点群からもう一方の点群へ位置あわせを行う変換マトリクスが得られる。
【0030】
ここでは、形状・位置評価部14は、設計設備形状m[i]に対してその表面上に適宜点群を生成し、当該点群と、分割点群C[k]に対してICP変換を行う。これによって得られた移動後の分割点群を、C_tr[k]=T[k]・C[k]とする。ただし、T[k]は、ICP変換で得られた変換マトリクスである。また、このときの点群の移動量をs[k]=|T[k]・c[k][L]-c[k][L]|とする。ただし、c[k][L]∈C[k]である。
【0031】
S322として、形状・位置評価部14は、C_tr[k]とm[i]との距離分布D_tr[k]を求める。
S323として、形状・位置評価部14は、距離分布D_tr[k]のヒストグラムに対し、数式1に示すガウス関数をフィッティングする。
【0032】
【数1】
【0033】
ここでα、μ、σはフィッティングパラメータであり、α=1のとき、平均値μ、標準偏差σである正規分布の確率密度関数となる。すなわち、距離分布D_tr[k]が適切な標準偏差の範囲で正規分布に従うのであれば、分割点群C_tr[k]は設計設備形状m[i]の形状を示す。
【0034】
図11は、距離分布D_tr[k]のヒストグラムに対して、ガウス関数をフィッティングした例である。
グラフ401の横軸は距離xを示し、縦軸はヒストグラムの度数yを示す。
符号402は、距離分布D_tr[k]のヒストグラムを示す十字型のマーカである。
実線403は、フィッティングしたガウス関数を示している。
なお、負の距離は、設計設備形状の裏側にあることを示している。ガウス関数のような非線形関数をフィッティングするには、Levenberg-Marquardt法などのアルゴリズムが利用可能である。フィッティングによって得られた平均値をμ_tr[k]、標準偏差をσ_tr[k]とする。
【0035】
図10に戻り、S314として、形状・位置評価部14は、閾値以下のσ_tr[k_min]を与えるk_min[i]を取得する。つまり、形状・位置評価部14は、すべてのC[k]に対する繰り返し処理終了後に、最小のσ_tr[k]となるkを求める。このときのkの値をk_min[i]とする。
【0036】
図12は、設備形状外れ点群評価部15における処理を示すフローチャートである。
S501~S505として、設備形状外れ点群評価部15は、各設計設備形状m[i]について、ループを実行する。
S502として、設備形状外れ点群評価部15は、設計設備形状m[i]が存在する位置にある点群C_cad[i]を抽出する。具体的には、設備形状外れ点群評価部15は、数式2に示すように、k_min[i]に対応する分割点群C[k_min[i]]の各点cに対するICP変換後m[i]との距離d_tr[c]と平均μ_tr[k_min[i]]との差の絶対値が3・σ_tr[k_min[i]]以下となる点群をC_cad[i]として保存する。
C_cad[i]={c∈C[k_min[i]] | |d_tr[c]-μ_tr[k_min[i]]|≦3・σ_tr[k_min[i]]} …(数式2)
【0037】
S502の処理によれば、最も設計設備形状に形状が近い部分点群形状でも、正規分布に近い位置に存在する点群を抽出している。ここでは、閾値を3・σ_tr[k_min[i]]として説明したが、当該設備の設計公差や、点群データの取得精度などを鑑み、適切な値に変更することが可能である。
【0038】
S503として、設備形状外れ点群評価部15は、設計設備形状m[i]が存在しない位置にある点群C_nocad[i]を外れ点群として抽出する。具体的には、設備形状外れ点群評価部15は、数式3に示すように、k_min[i]以外のすべての部分点群形状C[k]と、C[k_min[i]]に含まれる点のうちS502で除外された点群とをC_nocad[i]として登録する。
C_nocad[i]={k≠k_min[i]|C[k]}∩{c∈C[k_min[i]] | |d_tr[c]-μ_tr[k_min[i]]|>3・σ_tr[k_min[i]]} …(数式3)
S504として、設備形状外れ点群評価部15は、σ[i]=σ_tr[k_min[i]]とする。
【0039】
図13は、分類評価部16の処理を示すフローチャートである。
S601~S602として、分類評価部16は、各点群C_cad[i]について、ループを実行する。
このループ内で、分類評価部16は、形状比較において、あらかじめ定めた標準偏差の閾値σ_thを、形状ずれ量の判定用の閾値とする。つまり、σ[k_min[i]]≦σ_thなら形状ずれ量が小さいとし、σ[k_min[i]]>σ_thなら形状ずれ量が大きいとする。
また、分類評価部16は、位置比較において、あらかじめ定めたICP変換による移動量の閾値s_thを、位置ずれ量の判定用の閾値とする。つまり、s[k_min[i]]≦s_thなら位置ずれ量が小さいとし、s[k_min[i]]>s_thなら位置ずれ量が大きいとする。
【0040】
分類評価部16は、形状ずれ量が小さく位置ずれ量も小さいと判定した場合(S611,Yes)、C_cad[i]に含まれる点群を[分類A]として分類する(S621)。[分類A]の点群は、設計設備形状の存在する位置に、正規分布に従って存在している。
【0041】
分類評価部16は、形状ずれ量が大きく位置ずれ量は小さいと判定した場合(S612,Yes)、C_cad[i]に含まれる点群を[分類B]として分類する(S622)。[分類B]の点群は、設計設備形状の存在する位置に存在しているが、正規分布に照らし合わせたときに標準偏差が閾値を越えたものである。
【0042】
分類評価部16は、形状ずれ量が小さく位置ずれ量は大きいと判定した場合(S613,Yes)、C_cad[i]に含まれる点群を[分類C]として分類する(S623)。[分類C]の点群は、設計設備形状に沿った距離分布で存在しているが、ICP変換による移動量が閾値を越えている。
【0043】
分類評価部16は、形状ずれ量が大きく位置ずれ量も大きいと判定した場合(S614,Yes)、C_cad[i]に含まれる点群を[分類D]として分類する(S624)。[分類D]の点群は、設計設備形状の存在しない位置に存在する。
また、S603~S604として、分類評価部16は、各点群C_nocad[i]について、ループを実行し、そのループ内でC_nocad[i]を[分類D]として分類する(S615)。
【0044】
以上説明した本実施形態のアズビルト支援マップ生成装置1は、レーザスキャナなどによる3次元の点群データ12bと、3次元の設計データ11bとの比較を行い、設計データ11bの修正や追加などを行う作業を支援する。この支援とは、例えば、図8に示すように、CAD(Computer Aided Design)部品(設計設備形状)の存在しない場所にある設備(部分点群形状の[分類C,D])をマップに追加することである。
【0045】
これにより、CAD部品の存在しない場所にある設備のマップの生成を支援することにより、設計データに反映するべき個所を効率よく確認することができ、設計データをどのように修正するべきかと合わせて知ることが可能となる。つまり、設計データ11bに反映するべき個所(点群データ12bの部分点群形状)を効率よく確認することができ、設計データ11bをどのように修正するべきかと併せて作業者に知らせることが可能となる。
【0046】
例えば、以下のように、分類に応じた設計データ11bの修正作業を支援することができる。
・[分類A]の部分点群形状については、既に設計データ11bに反映済みであることを作業者に確認させることで、修正作業が不要であることを把握させる。
・[分類B]の部分点群形状については、既に設計データ11bに異なる形状として存在しているので、設計データ11b内の形状の変更を作業者に検討させるのに役立つ。
・[分類C]の部分点群形状については、既に設計データ11b内に同じ形状として存在しているものの、その位置が変更されたことを作業者に確認させるのに役立つ。設計データ11b上に存在していても、施工状態により大きく位置が異なっている場合でも、[分類C]として適切に分類される。
・[分類D]の部分点群形状については、設計データ11b内には存在しない新たな設備であるので、その新たな設備を設計データ11b内に追加させるのに役立つ。設計にない配管や電線管等、CAD部品の存在しない場所にある点群データ12bについては、[分類D]として適切に分類されるので、付近に別のCAD部品が存在する場合でも、別のCAD部品の一部として取り扱われてしまうことを抑制できる。
【0047】
本技術分野の通常の知識を有する者には、本発明のその他の実装がここに開示された本発明の明細書及び実施形態の考察から明らかになる。記述された実施形態の多様な態様及び/又はコンポーネントは、アズビルト支援マップ生成装置1に於いて、単独又は如何なる組み合わせでも使用することが出来る。明細書と具体例は典型的なものに過ぎず、本発明の範囲と精神は特許請求の範囲で示される。
【0048】
なお、本発明は前記した実施例に限定されるものではなく、さまざまな変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。
また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段などは、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計するなどによりハードウェアで実現してもよい。
また、前記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【0049】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイルなどの情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの記録装置、または、IC(Integrated Circuit)カード、SDカード、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
さらに、各装置を繋ぐ通信手段は、無線LANに限定せず、有線LANやその他の通信手段に変更してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 アズビルト支援マップ生成装置
2 表示装置
11a 設計データ入力部
11b 設計データ
12a 三次元計測部
12b 点群データ
13 設備形状探索部
14 形状・位置評価部
15 設備形状外れ点群評価部
16 分類評価部
17 分類マップデータ
18 表示制御部
図1
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