(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】画像形成装置および用紙種類判別方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/59 20060101AFI20230306BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20230306BHJP
B65H 7/02 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
G01N21/59 M
G03G15/00 303
B65H7/02
(21)【出願番号】P 2018218266
(22)【出願日】2018-11-21
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】有村 龍人
(72)【発明者】
【氏名】松田 京子
(72)【発明者】
【氏名】和泉 真
(72)【発明者】
【氏名】直井 宏夫
(72)【発明者】
【氏名】徳山 満
【審査官】谷垣 圭二
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-146724(JP,A)
【文献】特開2006-062144(JP,A)
【文献】特開2012-046285(JP,A)
【文献】特開2005-280274(JP,A)
【文献】特開2013-107269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
B41J 29/00-B41J 29/70
G01N 21/00-G01N 21/958
B65H 7/02
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの手動操作により印刷用紙を挿入される手差しトレイと、
前記手差しトレイに挿入された前記印刷用紙の光学特性を測定する第1の光学センサと、
前記第1の光学センサによる前記印刷用紙の前記光学特性の測定位置を、前記手差しトレイに対して移動させる可動機構と、
前記印刷用紙が前記手差しトレイに挿入された状態において、前記可動機構が前記第1の光学センサを移動させることにより、前記第1の光学センサによる前記印刷用紙の前記光学特性の前記測定位置が変化することに伴い、前記印刷用紙における異なる複数の位置において前記第1の光学センサが測定した光学特性を示すデータを取得する取得部と、
前記複数の位置における前記光学特性の平均および変動に基づいて前記印刷用紙の種類を判別する用紙種類判別部と、を備え
、
前記手差しトレイに挿入された前記印刷用紙の光学特性を測定する、前記手差しトレイの前記印刷用紙が挿入される側とは逆側の端部に固定された第2の光学センサをさらに備え、
前記取得部は、前記印刷用紙における、前記第1の光学センサによる測定位置とは別の複数の位置において前記第2の光学センサが測定した光学特性を示すデータをさらに取得し、
前記用紙種類判別部は、前記第1の光学センサが測定した前記複数の位置における光学特性、および前記第2の光学センサが測定した前記別の複数の位置における前記光学特性に基づいて前記印刷用紙の種類を判別する画像形成装置。
【請求項2】
前記手差しトレイに対して移動し、前記印刷用紙を所定の位置に案内するガイドをさらに備え、
前記可動機構は前記ガイドと一体として構成されている請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1の光学センサによる前記光学特性の測定位置を検出する位置センサをさらに備え、
前記用紙種類判別部は、前記位置センサから取得した位置データが示す複数の測定位置の相対位置関係が、所定の条件を満たしているか否か判定する請求項1
または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
ユーザの手動操作により印刷用紙を挿入される手差しトレイと、
前記手差しトレイに挿入された前記印刷用紙の光学特性を測定する第1の光学センサと、
前記第1の光学センサによる前記印刷用紙の前記光学特性の測定位置を、前記手差しトレイに対して移動させる可動機構と、を備える画像形成装置における前記印刷用紙の種類を判別する用紙種類判別方法であって、
前記印刷用紙が前記手差しトレイに挿入された状態において、前記可動機構が前記第1の光学センサを移動させることにより、前記第1の光学センサによる前記印刷用紙の前記光学特性の前記測定位置が変化することに伴い、前記印刷用紙における異なる複数の位置において前記第1の光学センサが測定した光学特性を示すデータを取得する取得ステップと、
前記複数の位置における前記光学特性の平均および変動に基づいて前記印刷用紙の種類を判別する用紙種類判別ステップと、を含
み、
前記画像形成装置は、前記手差しトレイに挿入された前記印刷用紙の光学特性を測定する、前記手差しトレイの前記印刷用紙が挿入される側とは逆側の端部に固定された第2の光学センサをさらに備え、
前記取得ステップにおいて、前記印刷用紙における、前記第1の光学センサによる測定位置とは別の複数の位置において前記第2の光学センサが測定した光学特性を示すデータをさらに取得し、
前記用紙種類判別ステップにおいて、前記第1の光学センサが測定した前記複数の位置における光学特性、および前記第2の光学センサが測定した前記別の複数の位置における前記光学特性に基づいて前記印刷用紙の種類を判別する用紙種類判別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成装置および用紙種類判別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、印刷用紙の種別を判別することができる画像形成装置が開示されている。当該画像形成装置は、印刷用紙を透過した光量である透過光量、印刷用紙で正反射された光量である反射光量、および印刷用紙に拡散された光量である拡散反射光量の特性差を利用して、印刷用紙の種別を判別する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-128434号公報(2017年7月27日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている画像形成装置において、透過光量、反射光量及び拡散反射光量を検知するメディアセンサは、画像形成装置内を搬送中の印刷用紙を検知する。したがって、印刷用紙の種類が判別された時点で、当該印刷用紙は画像形成装置に通紙されているため、当該画像形成装置により圧力および熱が加えられている。このため、印刷用紙の種別に誤判別が生じた場合に、当該印刷用紙を画像形成装置から取り出しても、画像形成装置内を一度通紙されることで当該印刷用紙の性質に変化が生じ、その後の当該印刷用紙への印刷品質に悪影響が生じる虞がある。
【0005】
本開示の一態様は、印刷用紙を通紙する前に当該印刷用紙の種類を判別可能な画像形成装置などを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る画像形成装置は、ユーザの手動動作により印刷用紙を挿入される手差しトレイと、前記手差しトレイに挿入された前記印刷用紙の光学特性を測定する第1の光学センサと、前記印刷用紙における異なる複数の位置において前記第1の光学センサが測定した光学特性を示すデータを取得する取得部と、前記複数の位置における前記光学特性の平均および変動に基づいて前記印刷用紙の種類を判別する用紙種類判別部と、を備える。
【0007】
また、本開示の一態様に係る用紙種類判別方法は、ユーザの手動動作により印刷用紙を挿入される手差しトレイと、前記手差しトレイに挿入された前記印刷用紙の光学特性を測定する第1の光学センサと、を備える画像形成装置における前記印刷用紙の種類を判別する用紙種類判別方法であって、前記印刷用紙における異なる複数の位置において前記第1の光学センサが測定した光学特性を示すデータを取得する取得ステップと、前記複数の位置における前記光学特性の平均および変動に基づいて前記印刷用紙の種類を判別する用紙種類判別ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様に係る画像形成装置および用紙種類判別方法によれば、印刷用紙を通紙する前に当該印刷用紙の種類を判別できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1に係る画像形成装置の要部の構成を示すブロック図である。
【
図2】(a)および(b)は、実施形態1に係る画像形成装置の概要を示す図である。
【
図3】(a)は、
図2の(a)におけるA-A線断面図であり、(b)は、(a)における第1光学センサおよびガイドを拡大した図である。
【
図4】実施形態1に係る画像形成装置における、画像形成処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】(a)は、実施形態1の実施例1に係る判別方法における、第1光学センサ10の透過光量の例を示すグラフであり、(b)は、(a)に示した透過光量の平均、標準偏差、および平均に対する標準偏差の比率を示す表である。
【
図6】(a)および(b)は、実施形態1の実施例2に係る判別方法について説明するための図である。
【
図7】実施形態1の実施例2に係る判別方法における、第1光学センサおよび第2光学センサの透過光量の例を示すグラフである。
【
図8】(a)~(c)は、実施形態1の実施例3に係る判別方法について説明するための図である。
【
図9】実施形態1の実施例3に係る判別方法において第1光学センサおよび第2光学センサが検出する透過光量の例を示すグラフである。
【
図10】(a)~(c)は、実施形態1の実施例4に係る判別方法について説明するための図である。
【
図11】実施形態1の実施例4に係る判別方法において第1光学センサおよび第2光学センサが検出する透過光量の例を示すグラフである。
【
図12】(a)および(b)は、実施形態2に係る画像形成装置の概略を示す図である。
【
図13】(a)および(b)は、実施形態2の変形例に係る画像形成装置の概略を示す図である。
【
図14】(a)および(b)は、実施形態3に係る画像形成装置の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
以下、本開示の一実施形態について、詳細に説明する。
【0011】
図2の(a)および(b)は、本実施形態に係る画像形成装置1の概要を示す図である。画像形成装置1は、印刷用紙Pの種類に応じた画像形成条件で、印刷用紙Pに画像を形成する。画像形成条件としては、印刷用紙Pに加える圧力および熱が挙げられる。
図2の(a)および(b)に示すように、画像形成装置1は、本体110、手差しトレイ120、ガイド121および122、第1光学センサ10、ならびに第2光学センサ20を備える。
【0012】
本体110は、画像形成装置1の本体である。本体110は、印刷用紙Pに画像を形成するための画像形成機構(不図示)などを内部に収容している。
【0013】
手差しトレイ120は、ユーザの手動操作により印刷用紙Pが挿入されるトレイである。手差しトレイ120は、少なくとも上面が外部に開放されており、カセットを引き出すなどの操作を行わずにユーザが直接アクセスし、用紙を補充できるトレイである。ユーザは、カセットなどの引き出し操作を介さずに手差しトレイ120に用紙を補充できる。印刷用紙Pは、手差しトレイ120に挿入された段階では画像形成装置1内に通紙されておらず、圧力および熱を加えられていない状態である。なお、画像形成装置1は、手差しトレイ120以外の用紙トレイをさらに備えていてもよい。
【0014】
ガイド121および122は、手差しトレイ120に対して移動し、印刷用紙Pを所定の位置に案内する部材である。ガイド121および122は、手差しトレイ120に立設される、互いに対向する平行な平面を有する部材である。本実施形態において、ガイド121および122は、後述するガイド駆動部33により、ガイド121および122の、互いに対向する面同士の中間に位置する中心線Cに対して、常に互いに対称であるように移動する。
【0015】
本実施形態では、ガイド121および122の間隔は、初期状態では
図2の(a)に示すように、印刷用紙Pの幅よりも広くなっている。印刷用紙Pが手差しトレイ120に挿入されると、ガイド駆動部33は、ガイド121および122を、中心線Cへ向かって移動させる。これにより、ガイド121および122は、印刷用紙Pの幅方向における中心線が中心線Cと一致する位置へ印刷用紙Pを案内する。なお、ガイド121および122は、それぞれが印刷用紙Pに接触したことを検出するための接触センサを備えていてもよい。
【0016】
第1光学センサ10は、手差しトレイ120に挿入された印刷用紙Pの光学特性を測定する。本実施形態では、第1光学センサ10は、印刷用紙Pを透過する光の光量(透過光量)を測定する。なお、第1光学センサ10は、印刷用紙Pによる正反射光、または拡散反射光を測定するセンサであってもよい。
【0017】
画像形成装置1は、第1光学センサ10による印刷用紙Pの光学特性の測定位置を、手差しトレイ120に対して移動させる可動機構を備える。本実施形態では、第1光学センサ10は、ガイド121に設けられている。すなわち、第1光学センサ10を移動させる可動機構は、ガイド121と一体として構成されている。
【0018】
第1光学センサ10を移動させる可動機構を画像形成装置1が備えることで、印刷用紙Pが手差しトレイに挿入されて静止した状態において、印刷用紙P上における、第1光学センサ10による透過光量の測定位置を変化させることができる。また、可動機構をガイド121と一体とすることで、可動機構を別途設ける場合と比較して、部品点数を削減し、構造を簡略化できる。
【0019】
図3の(a)は、
図2の(a)におけるA-A線断面図である。
図3の(b)は、
図3の(a)における第1光学センサ10およびガイド121を拡大した図である。第1光学センサ10は、発光部11と受光部12とを備える。発光部11は、所定の波長の光を発する発光素子である。受光部12は、発光部が発する波長の光を受光する受光素子である。第1光学センサ10は、発光部11と受光部12との間に印刷用紙Pを配した状態で、発光部11が発した光を受光部12が受光する強度を測定することで、印刷用紙Pの透過光量を測定する。
【0020】
図3の(b)に示すように、第1光学センサ10は、ガイド121から距離dだけ離隔した位置を測定位置とするように構成されている。このため、第1光学センサ10は、印刷用紙Pとの位置関係に応じて、印刷用紙Pの端部から距離dだけ内側までの領域について測定することができる。距離dは、3mm以上かつ30mm以下であることが好ましく、5mm以上かつ15mm以下であることがより好ましい。具体的な距離dは、例えば5mmであってよい。
【0021】
第2光学センサ20は、手差しトレイ120に挿入された印刷用紙Pの光学特性を測定する。本実施形態では、第2光学センサ20は、印刷用紙Pの透過光量を測定する。第2光学センサ20は、第1光学センサ10と同様の構成を有する。なお、第2光学センサ20も第1光学センサ10と同様、印刷用紙Pによる正反射光、または拡散反射光を測定するセンサであってもよい。
【0022】
第2光学センサ20は、手差しトレイ120に対して固定されている。第2光学センサ20は、手差しトレイ120の、印刷用紙Pが挿入される側とは逆側の端部に配される。このため、印刷用紙Pが手差しトレイ120の最奥まで挿入された状態でのみ、第2光学センサ20による透過光量の測定位置に印刷用紙Pが配されることとなる。
【0023】
第2光学センサ20による測定結果は、測定位置に印刷用紙Pが配されているか否かによって大きく異なる。具体的には、第2光学センサ20の測定位置に印刷用紙Pが配されていない場合、第2光学センサ20の発光部からの光は、印刷用紙Pを透過せずに第2光学センサ20の受光部へ入射する。このため、測定位置に印刷用紙Pが配されている場合と比較して、受光部が検出する光の量が極端に大きくなる。したがって、第2光学センサ20は、印刷用紙Pが手差しトレイ120の最奥まで挿入されたことを制御部30が検知するための用紙検知センサとしても用いられる。画像形成装置1においては、第2光学センサ20を用紙検知センサとして用いることで、別途用紙検知センサを用いる必要がなくなり、部品点数を削減できる。
【0024】
なお、第1光学センサ10および第2光学センサ20による測定対象について、測定位置に印刷用紙Pが配されていない場合には、透過光量という表現は正確ではない。ただし、説明の簡略化のため、以下の説明では、第1光学センサ10および第2光学センサ20による測定対象について、測定位置に印刷用紙Pが配されているか否かに関わらず、透過光量と表現する。
【0025】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置1の要部の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、画像形成装置1は、
図2に表れていた構成に加えて、制御部30、位置センサ40、表示部80および記憶部90を備える。
【0026】
位置センサ40は、第1光学センサ10による透過光量の測定位置を検出するセンサである。本実施形態では位置センサ40は、手差しトレイ120に対するガイド121の位置を検出する。上述したとおり、本実施形態では第1光学センサ10は、ガイド121に設けられている。また、手差しトレイ120に対する第1光学センサ10による測定位置は、手差しトレイ120に対する第1光学センサ10の位置によって一意に定まる。したがって、位置センサ40は、手差しトレイ120に対するガイド121の位置を検出することで、手差しトレイ120に対する第1光学センサ10による測定位置を検出することができる。
【0027】
制御部30は、画像形成装置1の動作を制御する。制御部30は、取得部31、判別部32(用紙種類判別部)およびガイド駆動部33を備える。
【0028】
取得部31は、印刷用紙Pにおける異なる複数の位置において第1光学センサ10が測定した印刷用紙Pの透過光量を示すデータを取得する。具体的には、取得部31は、第1光学センサ10が測定した印刷用紙Pの透過光量を示すデータ、および、第1光学センサ10が印刷用紙Pの透過光量を測定した時点における当該第1光学センサ10の位置を示す位置データを併せて取得する。例えば、第1光学センサ10は、所定の時間間隔で印刷用紙Pの透過光量を測定し、位置センサ40も同じ時間間隔で第1光学センサ10の位置を検出する。または、第1光学センサ10は、所定の時間間隔で印刷用紙Pの透過光量を測定し、位置センサ40はごく短い時間間隔で連続的に第1光学センサ10の位置を示す位置データを取得部31に出力してもよい。
【0029】
また、取得部31は、第1光学センサ10が印刷用紙Pの透過光量を測定した時点における、第2光学センサ20が測定した印刷用紙Pの透過光量を示すデータを併せて取得する。第1光学センサ10が印刷用紙Pの透過光量を測定するタイミングと、第2光学センサ20が印刷用紙Pの透過光量を測定するタイミングとは同期されている。
【0030】
なお、以下の説明では、第1光学センサ10から取得したデータが示す印刷用紙Pの透過光量および第2光学センサ20から取得したデータが示す印刷用紙Pの透過光量について、それぞれ単に第1光学センサ10の透過光量および第2光学センサ20の透過光量と記すことがある。
【0031】
判別部32は、第1光学センサ10が測定した光学特性の平均およびバラツキ(変動)に基づいて、印刷用紙Pの種類を判別する。上述したとおり、第1光学センサ10は、手差しトレイ120に挿入された印刷用紙Pの透過光量を測定する。このため、判別部32は、印刷用紙Pが画像形成装置1に通紙されるよりも前に印刷用紙Pの種類を判別できる。
【0032】
また、印刷用紙Pは、普通紙のような紙系と、OHP(Over Head Projector)シートなどの樹脂系とに大別される。印刷用紙Pが紙系である場合、印刷に必要な熱量および圧力などは、概ね坪量に比例する。しかし、印刷用紙Pが、例えばエンボス紙などの、表面に凹凸が存在する種類である場合には、坪量に対応する熱量および圧力よりも大きな熱量および圧力が必要となる。判別部32は、透過光量の平均およびバラツキを用いることで、印刷用紙Pがエンボス紙であるか否かについても判別できる。
【0033】
また、判別部32は、さらに第2光学センサ20が測定した、第1光学センサ10が光学特性を測定した位置とは別の複数の位置における光学特性の平均およびバラツキ(変動)に基づいて印刷用紙Pの種類を判別する。これにより、判別部32は、例えば後述する実施例2などのように、第1光学センサ10が印刷用紙Pに対して移動しない場合であっても、印刷用紙Pの種類を判別できる。
【0034】
また、判別部32は、取得部31が位置センサ40から取得した位置データが示す、複数の測定位置の相対位置関係が、所定の条件を満たしているか否かを判定する。所定の条件とは、判別部32が印刷用紙Pの種類を適切に判別するために満たす必要がある、第1光学センサによる透過光量の測定位置の相対位置関係についての条件である。具体的には、所定の条件は、例えば第1光学センサ10の測定位置同士の個々の間隔、および当該間隔の合計である。これにより、判別部32が印刷用紙Pの種類を誤判別する虞が低減される。
【0035】
ガイド駆動部33は、ガイド121および122を移動させる。ガイド121および122の移動により、第1光学センサ10および第2光学センサ20のうち、一方または両方と、印刷用紙Pとの相対的な位置関係が変化する。これにより、取得部31は、印刷用紙Pにおける異なる複数の位置において第1光学センサ10が測定した透過光量を示すデータを取得することができる。
【0036】
また、制御部30は、本体110に収容されている画像形成機構を制御し、印刷用紙Pに画像を形成する。ただし、印刷用紙Pの種類の判別に関連しない処理を実行する機能ブロックについては
図1には示されていない。
【0037】
また、ガイド121および122が上述した接触センサを備えている場合、制御部30は、印刷用紙Pの幅を測定してもよい。具体的には、制御部30は、ガイド121および122の両方が印刷用紙Pに接触した場合におけるガイド121と122との間隔を、印刷用紙Pの幅とする。
【0038】
表示部80は、制御部30により制御され、画像の形成に関連して画像形成装置1のユーザに提示すべき情報を提示する表示装置である。例えば制御部30は、印刷用紙Pの種類のリストである用紙タイプリストを表示部80に表示する。また、制御部30は、用紙タイプリストに含まれる用紙の種類のうち、判別部32が判別した印刷用紙Pの種類を強調して表示部80に表示してもよい。
【0039】
また、画像形成装置1は、ユーザによる入力を受け付ける入力装置(不図示)を備えていてもよい。入力装置は、例えば表示部80と重畳されたタッチパネルであってもよく、ボタンなどであってもよい。この場合、画像形成装置1は、表示部80に表示した印刷用紙Pの種類のリストに含まれる種類のうち、ユーザにより選択された種類に対応する画像形成条件で印刷用紙Pに画像を形成してもよい。
【0040】
記憶部90は、制御部30による制御に必要な情報を記憶する記憶装置である。例えば記憶部90は、判別部32による印刷用紙Pの種類の判別のための基準を記憶する。また、例えば記憶部90は、取得部31が取得した、第1光学センサ10および第2光学センサ20の透過光量を示すデータを記憶する。
【0041】
なお、画像形成装置1は、表示部80、入力装置、および記憶部90のうち、いずれかまたは全てを備えていなくてもよい。この場合、画像形成装置1は、表示部80、入力装置、および記憶部90のうち、画像形成装置1が備えていない構成要素と同等の機能を有する外部装置と通信可能に接続されていてもよい。
【0042】
図4は、画像形成装置1における、画像形成処理の一例を示すフローチャートである。画像形成装置1における画像形成処理においては、まず、制御部30が、第2光学センサ20から取得したデータを用いて印刷用紙Pを検知する(S1)。制御部30が印刷用紙Pを検知しない場合(S1でNO)には、制御部30はステップS2以降の処理を実行しない。
【0043】
制御部30が印刷用紙Pを検知した場合(S1でYES)、制御部30は、印刷用紙Pの種類を判別するための用紙種類判別方法を実行する。まず、ガイド駆動部33は、中心線Cへ向かってガイド121および122を移動させる(S2)。次に、取得部31は、印刷用紙Pの透過光量を示すデータを第1光学センサ10および第2光学センサ20から取得する(S3、取得ステップ)。なお、取得部31は、第1光学センサ10からのデータ取得時の、手差しトレイ120に対するガイド121の位置を示すデータについても、併せて位置センサ40から取得する。
【0044】
判別部32は、印刷用紙Pの種類の判別に十分なデータを取得したか否か判定する(S4)。具体的には、判別部32は、第1光学センサ10が透過光量を測定した位置同士の個々の間隔が1mm以下で、かつ当該間隔の合計が5mm以上であるか否かを判定する。印刷用紙Pの種類の判別に必要なデータを取得していない場合(S4でNO)、制御部30は、印刷用紙Pの種類の判別に十分なデータを取得するまでステップS2およびS3を繰り返す。
【0045】
印刷用紙Pの種類の判別に十分なデータを取得している場合(S4でYES)、判別部32は、当該データが示す透過光量の平均および標準偏差を算出する(S5)。続いて、判別部32は、透過光量の標準偏差が平均の3%以上であるか否か判定する(S6、用紙種類判別ステップ)。
【0046】
透過光量の標準偏差が平均の3%以上である場合(S6でYES)、制御部30は、表示部80に、エンボス紙を強調した用紙タイプリストを表示する(S7)。一方、透過光量の標準偏差が平均の3%以上でない場合(S6でNO)、判別部32は、透過光量に基づいて印刷用紙Pの種類を判別する。そして、制御部30は、当該種類を強調した用紙タイプリストを表示部80に表示する(S8)。なお、ステップS7またはS8において、判別部32は印刷用紙Pの種類の判別結果を1つに絞り込む必要はなく、複数種類の候補を判別結果として示してもよい。
【0047】
その後、制御部30は、ユーザから印刷用紙Pの種類の選択を、入力装置を介して受け付けたか否か判定する(S9)。ユーザからの選択を受け付けた場合(S9でYES)、制御部30は、選択された用紙の種類に対応した条件で、印刷用紙Pに画像を形成する(S10)。
【0048】
一方、ユーザからの選択を受け付けていない場合(S9でNO)、制御部30は、ステップS2から再度処理を繰り返す。これにより、取得部31はより多くのデータを取得し、判別部32は当該データに基づいて印刷用紙Pの種類をより高精度に判別できる。
【0049】
ただし、ステップS9の時点でガイド121と122との間隔が印刷用紙Pの幅に等しくなっている場合、さらにステップS2を実行すると上記間隔が印刷用紙Pの幅よりも狭くなり、印刷用紙Pを損傷させる虞がある。この場合には、制御部30は、ステップS9でNOであってもそれ以上処理を実行せず、ユーザによる用紙の種類の選択を待機する。
【0050】
なお、ステップS4において、判別部32は、透過光量を測定した位置同士の個々の間隔が1mmとは異なる所定の間隔以下であるか否かを判定してもよい。上記の間隔は、例えば0.1mm以上かつ2mm以下の任意の値であってもよい。また、判別部32は、上記間隔の合計が、5mmとは異なる所定の距離以上であるか否か判定してもよい。上記の距離は、例えば3mm以上かつ30mm以下の任意の値であってよい。
【0051】
また、ステップS6において、判別部32は、透過光量の標準偏差の平均に対する比率が、3%とは異なる所定の比率であるか否かを判定してもよい。ここでいう所定の比率は、例えば2%以上かつ7.5%以下の任意の比率であってよい。
【0052】
また、ステップS8において、制御部30は、判別部32が判別した用紙の種類以外についても併せて表示部80に表示し、ユーザによる選択を受け付けてもよい。このとき、制御部30は、判別部32が印刷用紙Pの種類(またはその候補)として判別した種類以外については表示を薄くするなどして、判別部32が判別した用紙の種類が目立つように表示してもよい。この場合、判別部32が用紙の種類を誤判別した場合であっても、ユーザにより選択された用紙の種類に応じた画像形成条件で画像を形成することで、適切な条件で画像を形成することができる。
【0053】
以上の処理により、画像形成装置1によれば、印刷用紙Pが画像形成装置1内に通紙されるよりも前に、印刷用紙Pが手差しトレイ120に挿入された段階で、印刷用紙Pの種類(エンボス紙であるか否か、および紙の重さ)を適切に判別できる。したがって、印刷用紙Pの種類を判別する過程で当該印刷用紙Pに与える影響を低減し、当該種類に応じた適切な条件で画像を形成することができる。
【0054】
なお、画像形成装置1は、必ずしも位置センサ40を備える必要はない。画像形成装置1が位置センサ40を備えない場合、判別部32は、例えば(i)第1光学センサ10の初期位置、ならびに(ii)ガイド駆動部33によるガイド121の移動速度、移動方向および移動時間、に基づいて、第1光学センサ10の位置を算出してもよい。
【0055】
また、画像形成装置1は、必ずしもガイド駆動部33を備える必要はなく、例えばユーザがガイド121および122を手動で移動させてもよい。この場合、例えば取得部31は、位置センサ40から取得するデータが示す、手差しトレイ120に対するガイド121の位置が所定の距離だけ変化する毎に、第1光学センサ10および第2光学センサ20から透過光量を示すデータを取得してもよい。
【0056】
また、画像形成装置1は、必ずしもガイド121および122の両方が移動可能である必要はなく、ガイド121のみが移動可能であってもよい。
【0057】
また、画像形成装置1において、印刷用紙Pがエンボス紙であると判別部32が判別した場合、制御部30は、透過光量の変動の周期を算出し、当該周期に基づいて画像形成条件を決定してもよい。
【0058】
(実施例1)
画像形成装置1による印刷用紙Pの種類の判別方法の一実施例について、以下に説明する。本実施例では、既に
図2の(a)に示したように、印刷用紙Pは、印刷用紙Pの中心線がガイド121および122の中心線Cと一致するように挿入される。この場合、
図2の(b)に示したように、ガイド121および122の移動が完了するまで、手差しトレイ120に対する印刷用紙Pの位置は一定である。
【0059】
このため、本実施例では、第2光学センサ20は、手差しトレイ120に対するガイド121の位置によらず、印刷用紙P上の同一の位置を測定する。したがって、第2光学センサ20が測定する透過光量は、手差しトレイ120に対するガイド121の位置によらず略一定である。
【0060】
図5の(a)は、本実施例に係る判別方法における、第1光学センサ10の透過光量の例を示すグラフである。
図5の(a)においては、横軸が手差しトレイ120に対するガイド121の位置を示し、縦軸が透過光量を示す。また、
図5の(a)においては、印刷用紙Pの端部の位置を0mmとしている。なお、第2光学センサ20が測定する透過光量は常に略同一であるため図示しない。
【0061】
本実施例において、第1光学センサ10の発光部11は、オーシャンオプティクス社製のハロゲン光源HL-2000が発する光を、コリメートレンズを通過させることによりスポット径4mmの白色平行光として照射するように構成されている。受光部12は、波長650nmの透過光を受光するように構成されている。
【0062】
図5の(a)においては、坪量が70g/m
3である普通紙のサンプルの測定結果が破線で示されている。また、坪量が116.3g/m
3であるエンボス紙のサンプルの測定結果が実線で示されている。
【0063】
エンボス紙は製造過程において普通紙よりも高い圧力で処理されるため、普通紙よりも空隙が少なくなる。その結果、光が透過する過程における散乱が減少することで、エンボス紙の透過光量は、普通紙と比較して大きくなりやすい。すなわち、エンボス紙の透過光量は、坪量に単純には反比例しなくなる。
【0064】
図5の(a)に示す例では、いずれの測定点においても、エンボス紙の方が普通紙よりも透過光量が多かった。しかしながら、実際には上述したとおり、エンボス紙のサンプルの方が、普通紙のサンプルよりも坪量が大きい。このため、エンボス紙について、1箇所における透過光量のみで用紙の種類を判別すると、エンボス紙を普通紙よりも薄く軽い種類の紙であると誤って判別し、当該判別結果に基づいて誤った条件で画像が形成されることになる。
【0065】
図5の(b)は、
図5の(a)に示した透過光量の平均、標準偏差、および平均に対する標準偏差の比率を示す表である。判別部32は、普通紙とエンボス紙とを精度よく判別するために、透過光量のバラツキとして標準偏差を用いる。透過光量の平均に対する標準偏差の比率(以下、単に「標準偏差」と称する)は、
図5の(b)に示すように、普通紙では1.5%であったのに対し、エンボス紙では7.8%であった。このように、普通紙とエンボス紙とでは、標準偏差に大きな差がある。
【0066】
したがって、判別部32は、標準偏差を用いることで、普通紙とエンボス紙とを精度よく判別できる。例えば判別部32は、
図4に示した通り、透過光量の標準偏差が3%以上であればエンボス紙であると判定し、3%未満であれば普通紙であると判定してもよい。
【0067】
(実施例2)
画像形成装置1による印刷用紙Pの種類の判別方法の、別の実施例について、以下に説明する。
【0068】
図6の(a)および(b)は、本実施例に係る判別方法について説明するための図である。本実施例においては、
図6の(a)に示すように、印刷用紙Pがガイド121に接するように配される。このため、
図6の(b)に示すようにガイド121および122の移動が完了するまで、ガイド121の移動に伴って印刷用紙Pも移動する。したがって、第1光学センサ10による印刷用紙P上の測定位置は、ガイド121の位置によらず一定である。
【0069】
図7は、本実施例に係る判別方法における、第1光学センサ10および第2光学センサ20の透過光量の例を示すグラフである。
図7において、横軸は手差しトレイ120に対するガイド121の位置を示し、縦軸は透過光量を示す。また、
図7においては、第1光学センサ10による測定結果が破線で示され、第2光学センサ20による測定結果が実線で示されている。
【0070】
本実施例に係る判別方法においては、上述したとおり、第1光学センサ10による印刷用紙P上の測定位置は、ガイド121の位置によらず一定である。このため、第1光学センサ10の透過光量は、第1光学センサ10の位置によらず略一定である。
【0071】
一方、第2光学センサ20による印刷用紙Pの測定位置は、ガイド121の移動に伴って変化する。このため、第2光学センサ20の透過光量も、ガイド121の位置の変化に伴って変動する。したがって、判別部32は、印刷用紙Pがガイド121に接するように挿入された場合であっても、第2光学センサ20の透過光量に基づいて、実施例1と同様にして用紙の種類を判別できる。
【0072】
なお、本実施例では、
図6に示すように、画像形成装置1は、第2光学センサ20とは別に、手差しトレイ120に印刷用紙Pが手差しトレイ120の最奥まで挿入されたことを制御部30が検知するための用紙検知センサ124を備えている。ただし、本実施例においても、制御部30は、第2光学センサ20の透過光量によって印刷用紙Pが手差しトレイ120の最奥まで挿入されたことを検知してもよい。
【0073】
(実施例3)
画像形成装置1による印刷用紙Pの種類の判別方法の、別の実施例について、以下に説明する。
【0074】
図8の(a)~(c)は、本実施例に係る判別方法について説明するための図である。本実施例においては、印刷用紙Pは、
図8の(a)に示すように、ガイド121および122に接しない位置に挿入される。ガイド121および122の移動の過程で、
図8の(b)に示すように、ガイド121が印刷用紙Pに接触する。その後、ガイド121および122はさらに移動し、
図8の(c)に示すように、ガイド121と122との間隔が印刷用紙Pの間隔と等しくなった時点で移動が完了する。
【0075】
本実施例においては、
図8の(a)に示す初期状態から、
図8の(b)に示す、ガイド121が印刷用紙Pに接触する状態までは、印刷用紙Pの位置は一定である。このとき、第1光学センサ10による印刷用紙Pの測定位置は、ガイド121の移動に伴って変化する。一方、第2光学センサ20による印刷用紙Pの測定位置は変化しない。
【0076】
図8の(b)に示す、ガイド121が印刷用紙Pに接触する状態から、
図8の(c)に示す、ガイド121と122との間の間隔が印刷用紙Pの幅に等しくなる状態までは、印刷用紙Pはガイド121の移動に伴って移動する。
【0077】
図9は、本実施例に係る判別方法において第1光学センサ10および第2光学センサ20が検出する透過光量の例を示すグラフである。
図9において、横軸は手差しトレイ120に対するガイド121の位置を示し、縦軸は透過光量を示す。また、
図9においては、第1光学センサ10が検出する透過光量が破線で示され、第2光学センサ20が検出する透過光量が実線で示されている。
【0078】
図9においては、
図8の(b)に示す、ガイド121が印刷用紙Pに接触するガイド121の位置が、αとして示されている。ガイド121の位置がαに到達する以前には、第1光学センサ10が測定する透過光量は変動し、第2光学センサ20が測定する透過光量は略一定である。一方、ガイド121の位置がαに到達して以降は、第1光学センサ10が測定する透過光量は略一定であり、第2光学センサ20が測定する透過光量は変動する。判別部32は、ガイド121の位置がαに到達するまでは第1光学センサ10のデータを参照し、ガイド121の位置がαに到達して以降は第2光学センサ20のデータを参照することで、実施例1および2と同様にして印刷用紙Pの種類を判別できる。
【0079】
判別部32は、αについて、第1光学センサ10の透過光量が略一定になる位置としてよい。また、ガイド121が、印刷用紙Pに接触したことを検知する接触センサを備えている場合には、判別部32は、接触センサが印刷用紙Pの接触を検知した位置をαとすることができる。
【0080】
(実施例4)
画像形成装置1による印刷用紙Pの種類の判別方法の一例について、以下に説明する。
【0081】
図10の(a)~(c)は、本実施例に係る判別方法について説明するための図である。本実施例においては、印刷用紙Pは、
図10の(a)に示すように、ガイド122に接する位置に配される。このとき、第1光学センサ10の測定位置には、印刷用紙Pが配されない。ガイド121および122の移動の過程で、
図10の(b)に示すように、第1光学センサ10の測定位置に、印刷用紙Pの端部が配される。その後、ガイド121および122はさらに移動し、
図10の(c)に示すように、ガイド121と122との間隔が印刷用紙Pの間隔と等しくなった時点で移動が完了する。
【0082】
図11は、本実施例に係る判別方法において第1光学センサ10および第2光学センサ20が検出する透過光量の例を示すグラフである。
図11において、横軸は手差しトレイ120に対するガイド121の位置を示し、縦軸は透過光量を示す。また、
図11においては、第1光学センサ10が検出する透過光量が破線で示され、第2光学センサ20が検出する透過光量が実線で示されている。
【0083】
図11においては、
図10の(b)に示す、第1光学センサ10の測定位置に印刷用紙Pの端部が配されるガイド121の位置が、βとして示されている。ガイド121の位置がβに到達するまでは、第1光学センサ10の透過光量は、略一定の高い値をとる。一方、ガイド121の位置がβに到達した後は、第1光学センサ10の透過光量は、印刷用紙P上における測定位置に応じて変動する。
【0084】
一方、第2光学センサ20の透過光量は、実施例2の、印刷用紙Pがガイド121に接するように挿入された場合と同様に変動する。
【0085】
本実施例では、ガイド121および印刷用紙Pは互いに逆方向に移動するため、第1光学センサ10による測定位置の印刷用紙P上における変化量は、ガイド121の位置の変化量の2倍となる。このため、制御部30が透過光量の変動の周期を算出し、当該周期に基づいて画像形成条件を決定する場合には、第1光学センサ10および第2光学センサ20の透過光量について、それぞれ変動の周期を算出する。さらに制御部30は、算出した周期を比較し、長い方の周期を実際の印刷用紙Pにおける透過光量の変動の周期として画像形成条件を決定してもよい。
【0086】
〔実施形態2〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0087】
図12の(a)および(b)は、本実施形態に係る画像形成装置の概略を示す図である。本実施形態に係る画像形成装置は、
図12の(a)および(b)に示すように、第2光学センサ20を備えず、第1光学センサ10のみを備える。第1光学センサ10は、画像形成装置1と同様、ガイド121に設けられている。
【0088】
本実施形態に係る画像形成装置では、手差しトレイ120に印刷用紙Pを挿入する前に、予めガイド121と122との間隔を印刷用紙Pの幅に合わせておく。
図12の(a)においては、印刷用紙Pは手差しトレイ120へ挿入される途中の状態である。
図12の(b)においては、印刷用紙Pは手差しトレイ120へ挿入された状態である。このように、
図12の(a)および(b)に示す例においては、印刷用紙Pが手差しトレイ120へ挿入される過程において、第1光学センサ10による印刷用紙Pにおける測定位置が変化する。
【0089】
本実施形態の画像形成装置において、取得部31は、印刷用紙Pが手差しトレイ120へ挿入される過程において、印刷用紙Pにおける異なる複数の位置において第1光学センサ10が測定した透過光量を示すデータを取得する。判別部32は、取得部31が取得したデータが示す透過光量のバラツキに基づいて印刷用紙Pの種類を判別する。
【0090】
本実施形態に係る画像形成装置によれば、印刷用紙Pの種類の判別のために第1光学センサ10を移動させる必要がない。したがって、印刷用紙Pの種類を簡易に判別することができる。
【0091】
なお、本実施形態に係る画像形成装置は、印刷用紙P上における第1光学センサ10の測定位置を検出するための位置センサを備える。これにより、判別部32は、実施形態1で説明したステップS4において、印刷用紙Pの種類を判別するために必要なデータを取得したか否かを判定することができる。
【0092】
(変形例)
図13の(a)および(b)は、本実施形態の変形例に係る画像形成装置の概略を示す図である。
図13の(a)および(b)に示す例では、第1光学センサ10は、ガイド121ではなく、手差しトレイ120の最奥から所定の距離だけ離隔した位置に固定されている。所定の距離は、例えば
図3に示したdであってよい。
図13の(a)および(b)に示す例においても、
図12の(a)および(b)に示した例と同様に、印刷用紙Pの種類を簡易に判別できる。
【0093】
〔実施形態3〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。
【0094】
図14の(a)および(b)は、本実施形態に係る画像形成装置を示す図である。本実施形態に係る画像形成装置は、
図14の(a)および(b)に示すように、第1光学センサ10を移動させるための、ガイド121とは別の可動機構125を備える。
【0095】
本実施形態に係る画像形成装置においては、
図14の(a)に示すように、予めガイド121および122を、間隔が印刷用紙Pの幅に等しくなる位置に移動させておく。この状態で、
図14の(b)に示すように、第1光学センサ10が、ガイド121の側からガイド122の側へ向かう方向に移動するように、制御部30が可動機構125を制御する。さらに、取得部31が、第1光学センサ10から、印刷用紙Pの透過光量を示すデータを取得する。このような画像形成装置も、実施形態1に係る画像形成装置1と同様の効果を奏する。
【0096】
〔ソフトウェアによる実現例〕
画像形成装置1の制御ブロック(特に取得部31および判別部32)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0097】
後者の場合、画像形成装置1は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば少なくとも1つのプロセッサ(制御装置)を備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な少なくとも1つの記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本開示の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本開示の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0098】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0099】
1 画像形成装置
10 第1光学センサ
20 第2光学センサ
31 取得部
32 判別部(用紙種類判別部)
40 位置センサ
120 手差しトレイ
121 ガイド(可動機構)
125 可動機構