(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/49 20060101AFI20230306BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20230306BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20230306BHJP
A61Q 5/10 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/46
A61Q5/06
A61Q5/10
(21)【出願番号】P 2018238672
(22)【出願日】2018-12-20
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118131
【氏名又は名称】佐々木 渉
(74)【代理人】
【識別番号】100171022
【氏名又は名称】平澤 玉乃
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 謙介
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-108284(JP,A)
【文献】特開平04-295414(JP,A)
【文献】特開2014-024766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/49
A61K 8/46
A61Q 5/06
A61Q 5/10
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び成分(B)を含有する染毛剤。
(A)下記一般式(1)で表される化合物又はその塩
【化1】
[式中、破線はπ結合の存在または不存在を示す。2つのR
1は、それぞれ独立に水酸基又はアセトキシ基を示し、R
2は水素原子、又は-COOR(Rは水素原子、メチル基又はエチル基)を示し、R
3は水素原子、アセチル基、メチル又はエチル基を示す。]
(B)
チアミン又はその塩、チオキソロン、及びヒドロキシチオフェノールからなる群から選ばれる1種以上
【請求項2】
前記成分(A)の含有量が0.05質量%以上5質量%以下である請求項1に記載の染毛剤。
【請求項3】
前記成分(B)の含有量が0.01質量%以上5質量%以下である請求項1又は2に記載の染毛剤。
【請求項4】
pHが8.0以上11.0以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の染毛剤。
【請求項5】
さらに、成分(C)としてアルカリ剤を含有する請求項1~4のいずれか1項に記載の染毛剤。
【請求項6】
さらに、成分(D)としてカチオン性界面活性剤を含有する請求項1~5のいずれか1項に記載の染毛剤。
【請求項7】
前記成分(A)が5,6-ジヒドロキシインドール及び5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸を含む請求項1~6のいずれか1項に記載の染毛剤。
【請求項8】
5,6-ジヒドロキシインドールと5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸とのモル比が50:50~99.9:0.1である請求項7に記載の染毛剤。
【請求項9】
前記染毛剤中の前記成分(A)に対する前記成分(B)の質量比[(B)/(A)]が8~20である請求項1~
8のいずれか1項に記載の染毛剤。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の染毛剤を毛髪に適用する工程を有する、毛髪の染色方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のメラニン前駆体を含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、白髪染め用の染毛剤組成物として、メラニン前駆体である、5,6-ジヒドロキシインドール、5,6-ジヒドロキシインドリン又はこれらの誘導体を使用した空気酸化型染毛剤組成物が知られている(例えば特許文献1,2)。これらメラニン前駆体は空気酸化型であり、酸化剤を必要としないため染毛剤に使用した際には毛髪の傷みが少なく、また染毛剤用染料としての簡便性も高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-326810号公報
【文献】特開2009-137877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1、2に開示されている従来の空気酸化型染毛剤組成物は、数回の染毛処理を行うことで充分な染毛性を付与できるものであり、染毛性をさらに向上することが望まれている。
本発明は、所定のメラニン前駆体を含有し、1回の染毛処理でも充分な染毛性が得られる組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、所定のメラニン前駆体と所定の化合物とを併用した組成物により前記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は下記[1]及び[2]に関する。
[1]次の成分(A)及び成分(B)を含有する組成物。
(A)下記一般式(1)で表される化合物又はその塩
【化1】
[式中、破線はπ結合の存在または不存在を示す。2つのR
1は、それぞれ独立に水酸基又はアセトキシ基を示し、R
2は水素原子、又は-COOR(Rは水素原子、メチル基又はエチル基)を示し、R
3は水素原子、アセチル基、メチル又はエチル基を示す。]
(B)チオール基を少なくとも1つ有し、該チオール基に隣接して、該チオール基中の硫黄原子に由来して生成するチイルラジカルを安定化させる構造を有するチオール化合物、又はその前駆体
[2]上記[1]の組成物を毛髪に適用する工程を有する、毛髪の染色方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の組成物を毛髪に適用すると、1回の染毛処理でも充分な染毛性が得られる。本発明の組成物は、例えば染毛剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[組成物]
本発明の組成物は、次の成分(A)及び成分(B)を含有するものである。
(A)下記一般式(1)で表される化合物又はその塩
【化2】
[式中、破線はπ結合の存在または不存在を示す。2つのR
1は、それぞれ独立に水酸基又はアセトキシ基を示し、R
2は水素原子、又は-COOR(Rは水素原子、メチル基又はエチル基)を示し、R
3は水素原子、アセチル基、メチル又はエチル基を示す。]
(B)チオール基を少なくとも1つ有し、該チオール基に隣接して、該チオール基中の硫黄原子に由来して生成するチイルラジカルを安定化させる構造を有するチオール化合物、又はその前駆体
本発明の組成物は上記成分(A)及び成分(B)を共に含有することにより、1回の染毛処理でも充分な染毛効果を得ることができる。
【0008】
本発明の方法により上記効果が得られる理由は以下のように考えられる。
本発明で用いる成分(A)は、毛髪内に浸透し、空気酸化により重合してメラニン色素を生成することで白髪を黒髪に染めることができるメラニン前駆体である。
成分(A)を含有する組成物の染毛効果を高めるには、(1)成分(A)が毛髪内に浸透する前に毛髪外で重合するのを抑制すること、(2)成分(A)の毛髪内への浸透を促進すること、及び(3)成分(A)が毛髪内に浸透した後の重合を促進すること、が挙げられる。従来、上記(1)の効果を付与するためにアスコルビン酸誘導体等の酸化防止剤を配合することは知られているが、単に酸化防止剤を配合するだけでは上記(3)の効果と相反するために、1回の染毛処理で充分な染毛性を得るには至っていなかった。
【0009】
本発明者が鋭意検討を行った結果、成分(B)は上記(1)~(3)のうち、特に(1)及び(3)の効果が高いことを見出した。成分(B)は、成分(A)が毛髪内に浸透する前の段階では成分(A)に対する酸化防止能を発現して成分(A)の重合を抑制する。一方で、成分(A)が毛髪内に浸透した後の段階では、成分(B)であるチオール化合物、又はチオール化合物の前駆体から生じたチオール化合物中のチオール基の酸化的結合によって生じたジスルフィドが成分(A)の空気酸化を促進するため、毛髪内では成分(A)の重合が効率的に進行してメラニン色素に変換されていると考えられる。
より詳細には、チオール化合物は還元力を有しており、成分(A)が毛髪内に浸透する前の段階では、成分(A)中のカテコール基(成分(A)のR1が水酸基である場合)又は成分(A)の加水分解により生じるカテコール基(成分(A)のR1がアセトキシ基である場合、アセトキシ基が加水分解されて生じるカテコール基)が空気酸化されて生じるセミキノンラジカルを還元することでその酸化を防止できる(上記(1))。
一方でチオール化合物から生じるジスルフィドは、その対称性から分子全体の極性が低く、より疎水的であるものと考えられる。そのことからジスルフィドはチオール化合物と比べると、毛髪内に浸透しやすいものと考えられる。また当該ジスルフィドがホモリティックに開裂することで生じるチイルラジカルは、前述したカテコール基の空気酸化を促進する(上記(3))。成分(B)は、チオール化合物中のチオール基、又はチオール化合物の前駆体から生じるチオール化合物中のチオール基に隣接して該チイルラジカルを安定化させる構造を有しているため、上記(3)で生成するチイルラジカルは再結合しにくく安定であり、カテコール基のラジカル的な酸化反応に寄与できる。そのため成分(B)は、毛髪内では前述したカテコール基の空気酸化を促進する効果が高く、成分(A)の重合を効率よく進行させることができる。
以上の作用機構により、本発明の組成物において成分(B)を用いることで、毛髪外ではメラニン前駆体である成分(A)の重合を抑制し、毛髪内では成分(A)の重合を促進することが可能となり、成分(A)による染毛性が大幅に向上するものと考えられる。
【0010】
本発明の組成物は成分(A)及び成分(B)を含むものであれば特に制限はないが、シャンプー等の毛髪洗浄剤、リンス、コンディショニング剤、トリートメント剤(洗い流さないタイプを含む)、スタイリング剤、染毛剤、育毛剤等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは染毛剤である。
組成物の剤型には特に制限はなく、例えば液体状、泡状、ペースト状、クリーム状、固形状、粉末状等、任意の剤型とすることが可能である。毛髪への塗布性の観点からは、液体状、ペースト状又はクリーム状とすることが好ましい。
【0011】
<成分(A)>
本発明の組成物は、下記一般式(1)で表される化合物又はその塩である成分(A)を含有する。成分(A)は空気酸化により重合してメラニン重合物(メラニン色素)に変換されるメラニン前駆体であり、毛髪の染色剤として作用する。
【化3】
[式中、破線はπ結合の存在または不存在を示す。2つのR
1は、それぞれ独立に水酸基又はアセトキシ基を示し、R
2は水素原子、又は-COOR(Rは水素原子、メチル基又はエチル基)を示し、R
3は水素原子、アセチル基、メチル又はエチル基を示す。]
成分(A)のメラニン前駆体は、一般式(1)で表される化合物であるインドール誘導体又はインドリン誘導体、又はこれらの塩であり、本発明においてはその1種又は2種以上の組み合わせを用いることができる。成分(A)は、本発明の効果を得る観点からインドール誘導体(すなわち、一般式(1)中の破線部分にπ結合が存在する)であることがより好ましい。
染毛性及び入手性の観点から、一般式(1)において、R
1は好ましくは水酸基であり、R
2は好ましくは水素原子又は-COOR(Rは水素原子、メチル基又はエチル基)、より好ましくは水素原子又は-COOHである。R
3は好ましくは水素原子である。
【0012】
前記一般式(1)で表される化合物としては、5,6-ジヒドロキシインドール、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸メチル、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸エチル、N-メチル-5,6-ジヒドロキシインドール、N-メチル-5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸、N-エチル-5,6-ジヒドロキシインドール、N-エチル-5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸、N-アセチル-5,6-ジヒドロキシインドール、N-アセチル-5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸、5-アセトキシ-6-ヒドロキシインドール、5-アセトキシ-6-ヒドロキシインドール-2-カルボン酸、
5,6-ジヒドロキシインドリン、5,6-ジヒドロキシインドリン-2-カルボン酸、5,6-ジヒドロキシインドリン-2-カルボン酸メチル、5,6-ジヒドロキシインドリン-2-カルボン酸エチル、N-メチル-5,6-ジヒドロキシインドリン、N-メチル-5,6-ジヒドロキシインドリン-2-カルボン酸、N-エチル-5,6-ジヒドロキシインドリン、N-エチル-5,6-ジヒドロキシインドリン-2-カルボン酸、N-アセチル-5,6-ジヒドロキシインドリン、N-アセチル-5,6-ジヒドロキシインドリン-2-カルボン酸、5-アセトキシ-6-ヒドロキシインドリン、5-アセトキシ-6-ヒドロキシインドリン-2-カルボン酸、等が挙げられる。
【0013】
前記一般式(1)で表される化合物の塩としては、該化合物の塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩等が挙げられる。これらの中では、入手性の観点から臭化水素酸塩が好ましい。
また一般式(1)においてR2が-COOHである場合、一般式(1)で表される化合物の塩としては、そのカルボン酸塩(R2が-COO-(Xn+)1/n(nは1以上の整数、Xn+は、K+、Na+、Li+等のアルカリ金属イオン、Ca2+、Mg2+等のアルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオンなどの陽イオン)である)が挙げられる。アルカリ金属イオンとしては、一般式(1)で表される化合物の塩の水に対する溶解性の観点から、好ましくはK+、Na+、又はLi+、より好ましくはK+又はNa+、さらに好ましくはK+である。また、アルカリ土類金属イオンとしては、同様の観点から、好ましくはCa2+又はMg2+、より好ましくはCa2+である。
【0014】
染毛性の観点から、成分(A)としては5,6-ジヒドロキシインドール、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸、5,6-ジヒドロキシインドリン、5,6-ジヒドロキシインドリン-2-カルボン酸、及びこれらの塩からなる群から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、5,6-ジヒドロキシインドール、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸、及び5,6-ジヒドロキシインドリン又はその臭化水素酸塩からなる群から選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、5,6-ジヒドロキシインドール及び5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸からなる群から選ばれる1種又は2種がさらに好ましく、5,6-ジヒドロキシインドール及び5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸を含むことがよりさらに好ましい。
成分(A)が5,6-ジヒドロキシインドール及び5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸を含む場合は、そのモル比は50:50~99.9:0.1の範囲とすることが好ましく、60:40~99.8:0.2の範囲とすることがより好ましく、70:30~99:1の範囲とすることがさらに好ましく、80:20~95:5の範囲とすることがよりさらに好ましい。
5,6-ジヒドロキシインドールと5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸とのモル比は、逆相HPLCにより定量することができる。
【0015】
組成物中の成分(A)の含有量は、染毛性の観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、安全性、経済性の観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、よりさらに好ましくは1質量%以下である。組成物中の成分(A)の含有量の具体的範囲は、好ましくは0.05~5質量%、より好ましくは0.1~3質量%、さらに好ましくは0.2~2質量%、よりさらに好ましくは0.2~1質量%である。
【0016】
<成分(B)>
本発明の組成物は、成分(B)として、チオール基を少なくとも1つ有し、該チオール基に隣接して、該チオール基中の硫黄原子に由来して生成するチイルラジカルを安定化させる構造を有するチオール化合物、又はその前駆体を含有する。成分(B)を用いることで、前述した作用機構により成分(A)による染毛性を向上させる効果を奏する。
【0017】
本発明においてチオール化合物の前駆体とは、加水分解等により分子中に遊離チオール基を少なくとも1つ生成し、前記チオール化合物を形成し得る化合物をいう。
また「チオール基中の硫黄原子に由来して生成するチイルラジカル」とは、成分(B)であるチオール化合物のチオール基、又はチオール化合物の前駆体から生じたチオール基から直接生成するチイルラジカル、及び、これらチオール基の酸化的結合によって生じたジスルフィドがホモリティックに開裂することで生成するチイルラジカルのいずれも含む。
【0018】
成分(B)であるチオール化合物は、チオール基に隣接して、該チオール基中の硫黄原子に由来して生成するチイルラジカルを安定化させる構造を有する。該チイルラジカルを安定化させる構造としては、チイルラジカルを共鳴安定化し得る構造が好ましく、例えば、チオール基に隣接して、炭素-炭素二重結合、芳香環等の、π結合を有する化合物が挙げられる。
より好ましくは、当該チオール化合物として、下記一般式(2)で表されるチオール化合物が挙げられる。
【化4】
[式中、R
4、R
5、及びR
5は、それぞれ独立に水素原子、水酸基、又は炭素数1以上24以下の有機基を示す。R
4とR
5、又はR
4とR
6は、互いに結合して環構造を形成していてもよい。]
上記一般式(2)において、R
4、R
5、及びR
5における炭素数1以上24以下の有機基は、窒素原子、酸素原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
またR
4とR
6が互いに結合して環構造を形成しているチオール化合物の好ましい例としては、下記一般式(3)で示されるチオール化合物が挙げられる。
【化5】
[式中、R
7は、水酸基、又は炭素数1以上24以下の有機基を示す。pは0以上5以下の数である。pが2以上である場合、複数のR
7は同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環構造を形成していてもよい。]
上記一般式(3)において、R
7における炭素数1以上24以下の有機基は、窒素原子、酸素原子等のヘテロ原子を含んでいてもよく、好ましくは炭素数1以上12以下、より好ましくは炭素数1以上4以下である。pは好ましくは0以上2以下、より好ましくは0又は1である。
【0019】
前記一般式(2)で表されるチオール化合物、又はその前駆体としては、例えば、チアミン又はその塩、チオキソロン、及び4-ヒドロキシチオフェノール等のヒドロキシチオフェノールが挙げられる。
【0020】
チアミン又はその塩は前記一般式(2)で表されるチオール化合物の前駆体である。チアミン塩としては、チアミンと無機酸又は有機酸との塩が挙げられ、チアミンと無機酸との塩が好ましい。チアミン塩の具体例としては、チアミン塩酸塩、チアミン硫酸塩、チアミン硝酸塩等が挙げられ、チアミン塩酸塩及びチアミン硝酸塩からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
チオキソロンは前記一般式(3)で表されるチオール化合物の前駆体に相当し、4-ヒドロキシチオフェノール等のヒドロキシチオフェノールは前記一般式(3)で表されるチオール化合物に相当する。
【0021】
成分(B)は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。染毛性の観点から、成分(B)としてはチアミン又はその塩、チオキソロン、及びヒドロキシチオフェノールからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、チアミン塩、チオキソロン、及びヒドロキシチオフェノールからなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、チアミン塩及びヒドロキシチオフェノールからなる群から選ばれる1種以上がさらに好ましく、チアミン塩酸塩、チアミン硝酸塩、及び4-ヒドロキシチオフェノールからなる群から選ばれる1種以上がよりさらに好ましい。
【0022】
組成物中の成分(B)の含有量は、染毛性の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。組成物中の成分(B)の含有量の具体的範囲は、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.1~8質量%、さらに好ましくは1~5質量%である。
【0023】
また、組成物中の成分(A)に対する成分(B)の含有量比は、染毛性の観点から、質量比[(B)/(A)]として、好ましくは0.1以上、より好ましくは1以上、さらに好ましくは2以上、よりさらに好ましくは4以上であり、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは20以下、さらに経済性の観点から、よりさらに好ましくは15以下である。組成物中の成分(A)に対する成分(B)の質量比[(B)/(A)]の具体的範囲は、好ましくは0.1~100、より好ましくは1~50、さらに好ましくは2~20、よりさらに好ましくは4~20、よりさらに好ましくは4~15である。
【0024】
<成分(C):アルカリ剤>
本発明の組成物は、さらに、成分(C)としてアルカリ剤を含有することが好ましい。アルカリ剤は毛髪を膨潤させてキューティクルを開き、成分(A)等を毛髪の内部まで浸透させると共に、成分(A)の毛髪内での重合反応を促進し、染毛性を向上させる作用を有する。成分(C)としては、通常の染毛剤に使用されるアルカリ剤であれば特に制限なく用いることができる。
成分(C)としては、例えば、アンモニア;モノ-、ジ-又はトリメタノールアミン、モノ-、ジ-又はトリエタノールアミン等のアルカノールアミン;メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、N-メチルエチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等のアルキルアミン;ベンジルアミン等のアラルキルアミン;アルギニン、リジン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機アルカリ化合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。アルカノールアミン、アルキルアミン、又はアラルキルアミンの炭素数は、水溶性の観点から、好ましくは10以下、より好ましくは8以下である。
成分(A)を毛髪の内部まで浸透させる観点からは、成分(C)はアンモニア及びアルカノールアミンからなる1種又は2種以上を含むことが好ましく、モノアルカノールアミンを含むことがより好ましく、モノエタノールアミンを含むことがさらに好ましい。
【0025】
組成物中の成分(C)の含有量は、成分(A)等を毛髪の内部まで浸透させると共に、成分(A)の毛髪内での重合反応を促進し、染毛性を向上させる観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上であり、刺激性を抑制する観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは12質量%以下、よりさらに好ましくは10質量%以下である。組成物中の成分(C)の含有量の具体的範囲は、好ましくは0.01~20質量%、より好ましくは0.1~15質量%、さらに好ましくは2~12質量%、よりさらに好ましくは2~10質量%である。
【0026】
<成分(D):カチオン性界面活性剤>
本発明の組成物は、染毛性をより向上させる観点から、さらに、成分(D)としてカチオン性界面活性剤を含有することが好ましい。成分(D)を用いることで成分(A)の毛髪内への浸透性が向上し、染毛性がさらに向上すると考えられる。
カチオン性界面活性剤としては、炭素数8以上22以下の炭化水素基を少なくとも1つ有する、第1級~第3級アミン化合物又はその塩、4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。
4級アンモニウム塩及びピリジニウム塩の対イオンとしては、ハロゲンイオン、炭素数1~2のアルキル硫酸イオンが好ましく、塩化物イオン、臭化物イオン又はメトサルフェートイオンがより好ましい。アミン塩はアミン化合物を無機酸又は有機酸で中和して得られるものである。
【0027】
成分(D)の総炭素数は、染毛性をより向上させる観点から、好ましくは48以下、より好ましくは36以下、さらに好ましくは30以下、よりさらに好ましくは25以下、よりさらに好ましくは20以下、よりさらに好ましくは18以下である。また界面活性剤としての機能を発現する観点からは、成分(D)の総炭素数は、好ましくは11以上、より好ましくは13以上である。成分(D)の総炭素数の具体的範囲は、好ましくは11~48、より好ましくは11~36、さらに好ましくは11~30、よりさらに好ましくは11~25、よりさらに好ましくは11~20、よりさらに好ましくは13~20、よりさらに好ましくは13~18である。
【0028】
染毛性向上の観点からは、成分(D)は、炭素数8以上22以下の炭化水素基を少なくとも1つ有する4級アンモニウム塩であることが好ましく、炭素数8以上22以下の炭化水素基を少なくとも1つ有し、総炭素数が36以下の4級アンモニウム塩であることがより好ましい。当該4級アンモニウム塩としては、染毛性向上の観点から、下記一般式(2)で表されるモノ又はジ長鎖アルキル4級アンモニウム塩が好ましい。
【化6】
〔式中、R
11は直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8以上22以下のアルキル基、R
15CONH(CH
2)
m-、R
15-O-(CH
2)
m-又はR
15COO(CH
2)
m-(R
15は直鎖又は分岐鎖の炭素数8以上22以下のアルキル基を示し、mは1以上4以下の数を示す。)で表される基を示し、R
12は直鎖若しくは分岐鎖の炭素数1以上22以下のアルキル基、又は前記R
15CONH(CH
2)
m-、R
15-O-(CH
2)
m-若しくはR
15COO(CH
2)
m-で表される基を示し、R
13及びR
14はそれぞれ独立に炭素数1以上4以下のアルキル基を示し、Y
-は塩化物イオン、臭化物イオン又はメトサルフェートイオンを示す。〕
【0029】
前記一般式(2)において、R11は直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8以上22以下のアルキル基、R12は直鎖若しくは分岐鎖の炭素数1以上22以下のアルキル基、R13及びR14はそれぞれ独立に炭素数1以上4以下のアルキル基であり、Y-は塩化物イオンであることが好ましい。
【0030】
R11及びR15における、直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基の炭素数は8以上22以下であり、好ましくは8以上18以下、より好ましくは8以上16以下、さらに好ましくは10以上14以下、よりさらに好ましくは12以上14以下である。
R12における直鎖若しくは分岐鎖の炭素数1以上22以下のアルキル基の炭素数は、モノ長鎖アルキル4級アンモニウム塩の場合、好ましくは1以上4以下、より好ましくは1以上3以下であり、ジ長鎖アルキル4級アンモニウム塩の場合、好ましくは8以上22以下、より好ましくは8以上18以下、さらに好ましくは8以上16以下、よりさらに好ましくは10以上14以下、よりさらに好ましくは12以上14以下である。
R13及びR14はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基であり、好ましくはメチル基である。
【0031】
前記一般式(2)で表されるモノ長鎖アルキル4級アンモニウム塩としては、例えば、オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド(ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド)、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド等のモノアルキルトリメチルアンモニウムクロリドが挙げられる。
前記一般式(2)で表されるジ長鎖アルキル4級アンモニウム塩としては、例えば、ジアルキル(C12~18)ジメチルアンモニウムクロリド(花王株式会社製「コータミンD-2345P」)等が挙げられる。
【0032】
前記一般式(2)で表されるモノ又はジ長鎖アルキル4級アンモニウム塩以外のカチオン性界面活性剤としては、オクチルベンジルジメチルアンモニウムクロリド等の塩化ベンザルコニウム;塩化セチルピリジニウム等のアルキルピリジニウム塩;ジエタノールアミンモノアルキルエステル、トリエタノールアミンモノアルキルエステル、トリエタノールアミンジアルキルエステル又はこれらの塩;等が挙げられる。
【0033】
上記の中でも、染毛性向上の観点から、成分(D)としては前記一般式(2)で表される化合物のうちモノ長鎖アルキル4級アンモニウム塩が好ましく、モノアルキルトリメチルアンモニウムクロリドがより好ましく、オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド(ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド)、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド、及びヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリドからなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、及びテトラデシルトリメチルアンモニウムクロリドからなる群から選ばれる1種以上がさらに好ましく、前記観点及び入手容易性の観点から、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド及びテトラデシルトリメチルアンモニウムクロリドからなる群から選ばれる1種以上がよりさらに好ましい。
【0034】
本発明の組成物が成分(D)を含有する場合、その含有量は、染毛性を向上させる観点から、成分(A)に対して好ましくは0.25当量以上、より好ましくは0.3当量以上、さらに好ましくは0.5当量以上であり、また、毛髪の感触低下抑制の観点から、成分(A)に対して好ましくは2当量未満、より好ましくは1.5当量以下、さらに好ましくは1.2当量以下、よりさらに好ましくは1当量以下である。本発明の組成物中の成分(D)の含有量の具体的範囲は、成分(A)に対して、好ましくは0.25当量以上2当量未満、より好ましくは0.3~1.5当量、さらに好ましくは0.5~1.2当量、よりさらに好ましくは0.5~1当量である。
【0035】
〔pH調整剤〕
本発明の組成物は、成分(A)の重合に最適なpH範囲に調整することにより成分(A)の毛髪内での重合反応を促進する観点で、必要に応じpH調整剤を含有することができる。本発明の組成物が成分(C)であるアルカリ剤を含有する場合は、pH調整剤としてはプロトン化剤が好ましい。プロトン化剤は一塩基酸及び多塩基酸のいずれでもよく、有機酸(炭素数1以上8以下、但しアスコルビン酸を除く)及び無機酸のいずれでもよい。当該プロトン化剤としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸、クエン酸からなる群から選ばれる1種又は2種以上が挙げられ、リン酸及びクエン酸からなる群から選ばれる1種又は2種がより好ましい。
【0036】
pH調整剤を用いる場合、その含有量は、組成物のpHを所望の範囲に調整できる量であれば特に制限はないが、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上である。また、処方安定性の観点からは、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下、さらに好ましくは3.5質量%以下である。
【0037】
〔水性媒体〕
本発明の組成物は、通常、水性媒体を含有する。水性媒体としては、水;エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;1,3-ブチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等の炭素数6以下の低分子ジオール及びトリオールが挙げられ、水及び低級アルコールからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、少なくとも水を含有することが好ましい。
組成物中の水性媒体の含有量は、組成物の剤型により適宜選択することができるが、通常、1~99.5質量%の範囲である。組成物中の水性媒体の含有量は、組成物中のすべての有効成分の残部であってよい。
【0038】
〔その他の成分〕
本発明の組成物は、前記成分の他、毛髪化粧料又は染毛剤に通常使用される成分を、本発明の目的を損なわない範囲で適宜含有してもよい。当該成分としては、例えば、成分(A)以外の染色剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ポリマー、油剤、抗フケ剤、殺菌剤、抗炎症剤、防腐剤、キレート剤、保湿剤、パール剤、セラミド類、香料、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0039】
本発明の組成物の製造方法は特に限定されない。例えば、成分(A)、成分(B)、及び必要に応じて用いられるその他の成分を実施例に記載の方法で配合し、公知の攪拌装置等を用いて混合することにより製造できる。混合後、必要に応じてpH調整を行ってもよい。
【0040】
<pH>
本発明の組成物のpHは、成分(A)を毛髪の内部まで浸透させると共に、成分(A)の毛髪内での重合反応を促進し、染毛性を向上させる観点から、好ましくは8.0以上、より好ましくは8.5以上、さらに好ましくは9.0以上、よりさらに好ましくは9.5以上である。メラニン前駆体である成分(A)は塩基性条件で空気中の酸素と反応して重合しやすいためである。当該pHは、染毛性向上、及び毛髪へのダメージ抑制の観点から、好ましくは11.0以下、より好ましくは10.5以下である。本発明の組成物のpHの具体的範囲は、好ましくは8.0~11.0、より好ましくは8.5~11.0、さらに好ましくは9.0~11.0、よりさらに好ましくは9.5~10.5である。
上記pHは25℃における測定値であり、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
【0041】
[毛髪の染色方法]
本発明はさらに、本発明の組成物を毛髪に適用する工程を有する、毛髪の染色方法を提供する。当該組成物を毛髪に適用する工程においては、例えば、本発明の組成物を乾燥状態又は湿潤状態の毛髪に塗布し、毛髪内に組成物中の成分(A)を浸透させるために好ましくは1~30分、より好ましくは3~20分放置した後、水で洗い流す。
毛髪に塗布する組成物の量は、毛髪の質量に対する浴比(組成物の質量/毛髪の質量)で、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.25以上であり、また、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.25以下である。処理の対象となる毛髪は、頭髪の少なくとも一部であればよい。
上記工程における温度は特に制限されないが、好ましくは40℃以下、より好ましくは35℃以下の温度下で行う。
【0042】
本発明の毛髪の染色方法によれば、1回の染毛処理でも充分な染毛性が得られる。例えば白髪を染める場合、下記式により算出される染毛処理前後の毛髪の式差(ΔE値)が、好ましくは25以上、より好ましくは30以上、さらに好ましくは35以上である。
【数1】
L
0*、a
0*、b
0*:染毛処理前の測色値
L
1*、a
1*、b
1*:1回染毛処理後の測色値
L
0*、a
0*、b
0*、及びL
1*、a
1*、b
1*は、分光測色計を用いてC光源にてそれぞれ6点測定した値の平均値であり、具体的には実施例に記載の方法で測定できる。
【0043】
上述の実施形態に関し、本発明は以下を開示する。
<1>
次の成分(A)及び成分(B)を含有する組成物。
(A)下記一般式(1)で表される化合物又はその塩
【化7】
[式中、破線はπ結合の存在または不存在を示す。2つのR
1は、それぞれ独立に水酸基又はアセトキシ基を示し、R
2は水素原子、又は-COOR(Rは水素原子、メチル基又はエチル基)を示し、R
3は水素原子、アセチル基、メチル又はエチル基を示す。]
(B)チオール基を少なくとも1つ有し、該チオール基に隣接して、該チオール基中の硫黄原子に由来して生成するチイルラジカルを安定化させる構造を有するチオール化合物、又はその前駆体
<2>
前記成分(A)の含有量が0.05~5質量%である<1>に記載の組成物。
<3>
前記成分(A)の含有量が0.2~1質量%である<1>又は<2>記載の組成物。
<4>
前記成分(B)の含有量が0.01~5質量%である<1>~<3>のいずれか1に記載の組成物。
<5>
前記成分(B)の含有量が1~5質量%である<1>~<4>のいずれか1に記載の組成物。
<6>
成分(A)に対する成分(B)の含有量比が、質量比[(B)/(A)]として0.1~100である<1>~<5>のいずれか1に記載の組成物。
<7>
成分(A)に対する成分(B)の含有量比が、質量比[(B)/(A)]として4~20である<1>~<6>のいずれか1に記載の組成物。
<8>
前記成分(A)が5,6-ジヒドロキシインドール、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸、及び5,6-ジヒドロキシインドリン又はその臭化水素酸塩からなる群から選ばれる1種又は2種以上である<1>~<7>のいずれか1に記載の組成物。
<9>
前記成分(A)が5,6-ジヒドロキシインドール及び5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸を含む<1>~<8>のいずれか1に記載の組成物。
<10>
5,6-ジヒドロキシインドールと5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸とのモル比が50:50~99.9:0.1である<9>に記載の組成物。
【0044】
<11>
前記チオール化合物が、下記一般式(2)で表されるチオール化合物である、<1>~<10>のいずれか1に記載の組成物。
【化8】
[式中、R
4、R
5、及びR
5は、それぞれ独立に水素原子、水酸基、又は炭素数1以上24以下の有機基を示す。R
4とR
5、又はR
4とR
6は、互いに結合して環構造を形成していてもよい。]
<12>
前記一般式(2)で表されるチオール化合物、又はその前駆体がチアミン又はその塩、チオキソロン、及びヒドロキシチオフェノールからなる群から選ばれる1種以上である、<11>に記載の組成物。
<13>
成分(B)がチアミン塩酸塩、チアミン硝酸塩、及び4-ヒドロキシチオフェノールからなる群から選ばれる1種以上である、<1>~<12>のいずれか1に記載の組成物。
<14>
さらに、成分(C)としてアルカリ剤を含有する<1>~<13>のいずれか1に記載の組成物。
<15>
前記成分(C)がモノエタノールアミンを含む<14>記載の組成物。
<16>
前記成分(C)の含有量が2~10質量%である<14>又は<15>に記載の組成物。
<17>
さらに、成分(D)としてカチオン性界面活性剤を含有する<1>~<16>のいずれか1に記載の組成物。
<18>
前記成分(D)が炭素数8以上22以下の炭化水素基を少なくとも1つ有し、総炭素数が36以下の4級アンモニウム塩である<17>に記載の組成物。
<19>
前記成分(D)がドデシルトリメチルアンモニウムクロリド及びテトラデシルトリメチルアンモニウムクロリドからなる群から選ばれる1種以上である<17>又は<18>に記載の組成物。
<20>
前記成分(D)の含有量が成分(A)に対して0.5~1.2当量である<17>~<19>のいずれか1に記載の組成物。
【0045】
<21>
次の成分(A)及び成分(B)を含有し、成分(A)に対する成分(B)の含有量比が、質量比[(B)/(A)]として0.1~100である<1>又は<2>に記載の組成物。
(A)5,6-ジヒドロキシインドール、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸、及び5,6-ジヒドロキシインドリン又はその臭化水素酸塩からなる群から選ばれる1種又は2種以上
(B)チオール基を少なくとも1つ有し、該チオール基に隣接して、該チオール基中の硫黄原子に由来して生成するチイルラジカルを安定化させる構造を有するチオール化合物、又はその前駆体
<22>
次の成分(A)及び成分(B)を含有する<1>又は<2>に記載の組成物。
(A)5,6-ジヒドロキシインドール、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸、及び5,6-ジヒドロキシインドリン又はその臭化水素酸塩からなる群から選ばれる1種又は2種以上:0.05~5質量%
(B)チオール基を少なくとも1つ有し、該チオール基に隣接して、該チオール基中の硫黄原子に由来して生成するチイルラジカルを安定化させる構造を有するチオール化合物、又はその前駆体:0.01~5質量%
<23>
次の成分(A)及び成分(B)を含有し、成分(A)に対する成分(B)の含有量比が、質量比[(B)/(A)]として4~20である<1>又は<2>に記載の組成物。
(A)5,6-ジヒドロキシインドール、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸、及び5,6-ジヒドロキシインドリン又はその臭化水素酸塩からなる群から選ばれる1種又は2種以上:0.05~5質量%
(B)チオール基を少なくとも1つ有し、該チオール基に隣接して、該チオール基中の硫黄原子に由来して生成するチイルラジカルを安定化させる構造を有するチオール化合物、又はその前駆体:0.01~5質量%
<24>
前記成分(B)が下記一般式(2)で表されるチオール化合物、又はその前駆体である<21>~<23>のいずれか1に記載の組成物。
【化9】
[式中、R
4、R
5、及びR
5は、それぞれ独立に水素原子、水酸基、又は炭素数1以上24以下の有機基を示す。R
4とR
5、又はR
4とR
6は、互いに結合して環構造を形成していてもよい。]
<25>
前記成分(B)がチアミン又はその塩、チオキソロン、及びヒドロキシチオフェノールからなる群から選ばれる1種以上である<21>~<23>のいずれか1に記載の組成物。
<26>
前記成分(B)がチアミン塩酸塩、チアミン硝酸塩、及び4-ヒドロキシチオフェノールからなる群から選ばれる1種以上である<21>~<23>のいずれか1に記載の組成物。
<27>
次の成分(A)及び成分(B):
(A)5,6-ジヒドロキシインドール及び5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸:0.2~1質量%
(B)チアミン又はその塩、チオキソロン、及びヒドロキシチオフェノールからなる群から選ばれる1種以上:1~5質量%
を含有し、5,6-ジヒドロキシインドールと5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸とのモル比が50:50~99.9:0.1である<1>又は<2>に記載の組成物。
<28>
次の成分(A)~(C)を含有する<1>又は<2>に記載の組成物。
(A)5,6-ジヒドロキシインドール及び5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸:0.2~1質量%
(B)チアミン又はその塩、チオキソロン、及びヒドロキシチオフェノールからなる群から選ばれる1種以上:1~5質量%
(C)モノエタノールアミン:2~10質量%
<29>
次の成分(A)~(D):
(A)5,6-ジヒドロキシインドール及び5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸:0.2~1質量%
(B)チアミン又はその塩、チオキソロン、及びヒドロキシチオフェノールからなる群から選ばれる1種以上:1~5質量%
(C)モノエタノールアミン:2~10質量%
(D)カチオン性界面活性剤
を含有し、成分(D)の含有量が成分(A)に対して0.5~1.2当量である<1>又は<2>に記載の組成物。
<30>
前記成分(D)がドデシルトリメチルアンモニウムクロリド及びテトラデシルトリメチルアンモニウムクロリドからなる群から選ばれる1種以上である<29>記載の組成物。
【0046】
<31>
pHが8.0~11.0である<1>~<30>のいずれか1に記載の組成物。
<32>
染毛剤である<1>~<31>のいずれか1に記載の組成物。
<33>
<1>~<32>のいずれか1に記載の組成物を毛髪に適用する工程を有する、毛髪の染色方法。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されない。なお本実施例において、各種測定及び評価は以下の方法により行った。
【0048】
〔pH測定〕
pHメーター(株式会社堀場製作所製「D-71S」)を用いて、染毛剤の25℃におけるpHを測定した。
【0049】
〔染毛性評価〕
乾燥した中国人白髪トレス1g(株式会社ビューラックスより入手、長さ:10cm、商品名:人毛白髪(100%)、商品番号:BM-W-A)に対して浴比1:1となるように各例で得られた染毛剤を塗布し、30℃で15分放置した。流水で30秒間すすいだ後、下記組成のプレーンシャンプーで15秒間洗浄し、15秒間流水ですすいだ。この洗浄及びすすぎを合計で2回繰り返した。次いで下記組成のプレーンコンディショナーで15秒間コンディショナー処理を行い、15秒間流水ですすぎ、冷風で乾燥させ、1回染毛処理後のトレスを得た。コニカミノルタジャパン株式会社製分光測色計「CR-300」を用い、C光源にて、染毛処理前後のトレス1本についてL*、a*、b*値をそれぞれ6点測定し、その平均値を測色値とした。以下の数式からΔE値を算出し、1回染毛処理後の染毛性を評価した。ΔE値が大きいほど染毛性に優れることを意味する。また上記評価方法により求められるΔE値が25以上であれば、1回の染毛処理で充分な染毛性が得られているものとする。
【数2】
L
0*、a
0*、b
0*:染毛処理前のトレスの測色値
L
1*、a
1*、b
1*:1回染毛処理後のトレスの測色値
【0050】
〔プレーンシャンプーの組成〕
成分 (質 量%)
ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸Na 11.3(*1)
ヤシ油脂肪酸N-メチルエタノールアミド(*2) 3.0
クエン酸 0.2
メチルパラベン 0.3
精製水 残 量
計 100.0
*1:エマールE-27C(花王株式会社製、有効成分27質量%)として42.0質量%
*2:アミノーンC-11S(花王株式会社製)
【0051】
〔プレーンコンディショナーの組成〕
成分 (質 量%)
ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド 2.7(*1)
ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド 0.76(*2)
セタノール 2.0
プロピレングリコール 5.0
精製水 残 量
計 100.0
*1:コータミンD86P(花王株式会社製、有効成分75質量%)として3.6質量%
*2:コータミン86W(花王株式会社製、有効成分28質量%)として2.7質量%
【0052】
実施例1~8(染毛剤の製造及び評価)
成分(B)、成分(C)(モノエタノールアミン)、及び脱イオン水を表1に示す組成に従って配合して溶液を調製し、この溶液に窒素雰囲気下で窒素を1時間吹き込んだ。次いで、成分(A)、及び、実施例5,6においては成分(D)を表1に示す組成に従い配合して染毛剤を得た。なお表1に記載の配合量(質量%)は、エタノール及びリン酸を除き、いずれも有効成分量である。
得られた染毛剤について、前記方法で染毛性評価を実施した。結果を表1に示す。また、成分(B)を添加しなかった比較例とのΔE差として、実施例1~3、5~8については比較例1とのΔE差、実施例4については比較例3とのΔE差を表1に示した。
【0053】
比較例1、3
成分(C)(モノエタノールアミン)、及び脱イオン水を表1に示す組成に従って配合して溶液を調製し、この溶液に窒素雰囲気下で窒素を1時間吹き込んだ。次いで、成分(A)を表1に示す組成に従い配合して染毛剤原液を得た後、さらにリン酸を添加してpHを10に調整し、染毛剤を得た。
得られた染毛剤について、前記方法で染毛性評価を実施した。結果を表1に示す。
【0054】
比較例2
成分(B)に代えて、成分(B’)として表1に示す量のアスコルビン酸ナトリウムを用い、モノエタノールアミン及びリン酸の配合量を表1に示す量としたこと以外は、実施例1と同様にして染毛剤を調製し、前記方法で染毛性評価を実施した。結果を表1に示す。
【0055】
【0056】
*1:特許第5570161号公報に記載された方法により製造した溶液(5,6-ジヒドロキシインドール:1質量%、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸:0.14質量%[5,6-ジヒドロキシインドールと5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸とのモル比は90:10]、エタノール:20質量%、水:残部)を、表1に記載の有効成分量となるよう配合した。
*2:AK-scientific社製「5,6-ジヒドロキシインドリン臭化水素酸塩」
*3:富士フイルム和光純薬株式会社製「チアミン塩酸塩」
*4:東京化成工業株式会社製「チアミン硝酸塩」
*5:東京化成工業株式会社製「チオキソロン」
*6:富士フイルム和光純薬株式会社製「4-ヒドロキシチオフェノール」
*7:富士フイルム和光純薬株式会社製「アスコルビン酸ナトリウム」
*8:富士フイルム和光純薬株式会社製「エタノールアミン」
*9:東京化成工業株式会社製「ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド」
*10:東京化成工業株式会社製「テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド」
*11:富士フイルム和光純薬株式会社製「95容量%エタノール」
*12:富士フイルム和光純薬株式会社製「リン酸(85%)」
【0057】
表1より、実施例1~8の染毛剤によればいずれも優れた染毛性が得られることがわかる。一方、成分(B)を含有しない比較例1,3の染毛剤、及び、成分(B)に代えてアスコルビン酸ナトリウムを含有する比較例2の染毛剤は、実施例1~8の染毛剤よりも染毛性に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の組成物を毛髪に適用すると、1回の染毛処理でも充分な染毛性が得られる。本発明の組成物は、例えば染毛剤として有用である。