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  • 特許-工作機械の自動工具交換装置 図1
  • 特許-工作機械の自動工具交換装置 図2
  • 特許-工作機械の自動工具交換装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】工作機械の自動工具交換装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/157 20060101AFI20230306BHJP
   B23Q 3/155 20060101ALI20230306BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
B23Q3/157 F
B23Q3/155 D
B23Q17/00 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018243281
(22)【出願日】2018-12-26
(65)【公開番号】P2020104194
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】石川 正憲
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-003933(JP,U)
【文献】実開昭50-144374(JP,U)
【文献】特開平05-154732(JP,A)
【文献】特開平07-148631(JP,A)
【文献】実開平06-000632(JP,U)
【文献】実開平05-049232(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/155 - 3/157
B23Q 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具に関するデータを記録したIDチップを備えた工具ホルダと、
前記工具ホルダを収容可能な複数の工具ポットを備え、前記工具ポットを循環移動させて前記工具ホルダを所定の工具交換位置へ位置決め可能な工具マガジンと、
前記IDチップに記録される前記データを読み取り可能なID読み取り装置と、
前記工具マガジンの前記工具交換位置に位置決めされた前記工具ホルダと、主軸に取り付けた前記工具ホルダとを交換可能な工具交換アームと、
を含んでなる工作機械の自動工具交換装置であって、
前記工具マガジンは、前記工具ポットを直線状に配列する直線部分と、前記直線部分と連続し、前記工具ポットを円弧状に配列する円弧部分とを含み、
前記ID読み取り装置は、前記工具マガジンにおける前記円弧部分の外側で、前記円弧部分において当該円弧方向で隣接する前記工具ポットの間にリーダを出没可能に配置され、前記工具ポットの間に前記リーダを進入させた状態で、前記円弧部分内の前記工具ポットに収容される前記工具ホルダから前記データを読み取り可能であることを特徴とする工作機械の自動工具交換装置。
【請求項2】
前記ID読み取り装置は、前記円弧部分の外側から前記リーダを備えたアームを前記工具ポットの間に進入させて、前記工具ホルダから前記データを読み取り可能とする進入位置と、前記アームを前記工具ポットの間から退避させる退避位置との間で旋回可能に設けてなることを特徴とする請求項1に記載の工作機械の自動工具交換装置。
【請求項3】
前記工具ホルダには、前記主軸への回転方向位置決め用のキー溝が形成されており、前記IDチップは、前記キー溝の底部に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の工作機械の自動工具交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マシニングセンタ等の工作機械に設けられる自動工具交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械で使用する工具には寿命があり、寿命に達した状態で使用を続けると破損するおそれがある。これを防止するために、工具ホルダにIDチップを埋め込み、そのIDチップに工具のサイズや使用時間等の固有のデータを保存することで、工具の寿命を管理して寿命到達前に交換可能としている。この工具に関するデータは、ATC(自動工具交換装置)の工具マガジンに備えられて、工具マガジンに投入される工具ホルダに対して接離移動可能なアンテナ(リーダ)を備えた読み取り装置によって読み取り可能となっている(特許文献1参照)。
一方、工具ホルダには規格があり、特にドイツ規格協会(Deutsches Institut fur Normung)が制定するDIN規格では、他の工具ホルダと比較すると、IDチップを埋め込む場所が異なっており、特許文献1にも記載されるように、主軸のドライブキーが嵌合するキー溝の位置(底部)に埋め込まれる。また、工具ホルダのキー溝は、ATCでも利用され、工具交換アームにおける工具ホルダの把持部には、特許文献2に開示されるように、キー溝に嵌合するキーが設けられる。このキーは工具マガジンに設けられた工具ポットにも設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-154732号公報
【文献】特開2000-94253号公報
【文献】特開2002-126961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献3に開示されるように、工具マガジンが、工具ホルダを保持する複数の工具ポットを長円形や矩形等の無端状軌道に沿って循環移動させる構造である場合、工具交換アームの把持部に工具ホルダを把持させるために、工具ホルダは、キー溝が工具ポットの循環移動方向に向いた姿勢となっている。この場合、キー溝が工具マガジンの外側に向かないため、工具ホルダからデータの読み取りができなくなる。工具マガジンと別に読み取り装置を備えた中間ステーションを設けて、工具ホルダを中間ステーションへ一旦移動させて読み取りを行うことも考えられるが、余分な構成要素やスペースが増えてコストアップに繋がってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、コストアップを招くことなく循環移動式の工具マガジンでの工具に関するデータの読み取りが可能な工作機械の自動工具交換装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、工具に関するデータを記録したIDチップを備えた工具ホルダと、前記工具ホルダを収容可能な複数の工具ポットを備え、前記工具ポットを循環移動させて前記工具ホルダを所定の工具交換位置へ位置決め可能な工具マガジンと、前記IDチップに記録される前記データを読み取り可能なID読み取り装置と、前記工具マガジンの前記工具交換位置に位置決めされた前記工具ホルダと、主軸に取り付けた前記工具ホルダとを交換可能な工具交換アームと、を含んでなる工作機械の自動工具交換装置であって、
前記工具マガジンは、前記工具ポットを直線状に配列する直線部分と、前記直線部分と連続し、前記工具ポットを円弧状に配列する円弧部分とを含み、前記ID読み取り装置は、前記工具マガジンにおける前記円弧部分の外側で、前記円弧部分において当該円弧方向で隣接する前記工具ポットの間にリーダを出没可能に配置され、前記工具ポットの間に前記リーダを進入させた状態で、前記円弧部分内の前記工具ポットに収容される前記工具ホルダから前記データを読み取り可能であることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、前記ID読み取り装置は、前記円弧部分の外側から前記リーダを備えたアームを前記工具ポットの間に進入させて、前記工具ホルダから前記データを読み取り可能とする進入位置と、前記アームを前記工具ポットの間から退避させる退避位置との間で旋回可能に設けてなることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の構成において、前記工具ホルダには、前記主軸への回転方向位置決め用のキー溝が形成されており、前記IDチップは、前記キー溝の底部に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ID読み取り装置を、工具マガジンにおける円弧部分の外側で、円弧部分において当該円弧方向で隣接する工具ポットの間にリーダを出没可能に配置し、円弧部分内の工具ポットに収容される工具ホルダからデータを読み取り可能としているので、工具マガジンに設定した読み取り位置で支障なく工具ホルダのデータを読み取ることができる。よって、工具マガジンと別に読み取り装置を備えた中間ステーション等を設ける必要がなくなり、コストアップを招くことなく循環移動式の工具マガジンでの工具に関するデータの読み取りが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】工作機械の自動工具交換装置の概略図である。
図2】工具ホルダの説明図である。
図3】ID読み取り装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、マシニングセンタ等の工作機械に設けられる自動工具交換装置を示す。この自動工具交換装置1は、ベッド上に立設されて図示しない主軸を備えたコラム2の側方に、工具マガジン3と図示しない工具交換アームとを備えている。
まず、工具マガジン3に収容される工具は、図2に示す工具ホルダ10に保持される。この工具ホルダ10は、工作機械の主軸の嵌合穴に嵌合可能で、反対側に工具Tが挿着されるテーパ部11と、テーパ部11の大径側の端部に形成されるフランジ部12とを有し、フランジ部12の外周には、溝13が周設されている。また、溝13の途中で軸心を中心とする点対称位置には、主軸に設けたキーが嵌合する一対のキー溝14,14が形成され、一方のキー溝14の底部には、ホルダ番号や工具Tの名称、工具Tの外径及び長さ、最適回転数や使用時間等の工具に関するデータを記録させたIDチップ15が埋め込まれている。
【0010】
一方、工具マガジン3は、四隅に配置される駆動スプロケット5と半円状のガイドホイール6,6・・とによって矩形状に張設されるチェーン4と、チェーン4の外側へ等間隔で連結され、工具ホルダ10を保持可能な複数の工具ポット7,7・・とを有する。ここでは工具ポット7が直線状に配列される直線部分E1と、工具ポット7が円弧状に配列される円弧部分E2とが交互に形成されている。駆動スプロケット5の駆動によってチェーン4が駆動スプロケット5及びガイドホイール6の回りで回転すると、各工具ポット7は、チェーン4に沿って循環移動することになる。
また、図3に示すように、各工具ポット7における循環移動方向の片側には、工具ホルダ10のIDチップ15が埋め込まれていないキー溝14に嵌合するキー8が設けられており、工具ポット7に保持される工具ホルダ10は、キー溝14が工具ポット7の循環方向に向いた姿勢で保持されるようになっている。ここでは工具ポット7が上下方向に並ぶ直線部分E1のうち、Aの位置が工具ポット7への工具ホルダ10の工具投入位置となっており、駆動スプロケット5の駆動によりチェーン4が回転することで、工具ホルダ10を差し込み保持する工具ポット7が工具投入位置Aに位置決めされる。
【0011】
なお、工具交換アームは、主軸と工具マガジン3との間で旋回可能に設けられる。工具交換アームの両端には、工具ホルダ10のフランジ部12に設けた溝13に嵌合して工具ホルダ10を把持する把持部が設けられて、工具ホルダ10を把持可能となっている。この工具交換アームが軸方向に前後移動及び旋回動作することで、工具マガジン3の工具交換位置に位置決めされた工具ホルダ10と主軸に取り付けた工具ホルダ10とを交換可能となっている。工具交換アームの把持部にもキー溝14に嵌合するキーが設けられる。
【0012】
そして、工具マガジン3において、工具投入位置Aの下方の円弧部分E2のうち、Bの位置がデータの読み取り位置となっている。この読み取り位置Bでは、円弧方向で隣接する工具ポット7,7間の間隔が直線部分E1での間隔よりも外側へ向けて広がり、IDチップ15が埋め込まれたキー溝14が、円弧部分E2の接線方向に沿って外側へ向く姿勢となっている。ここでは読み取り位置Bの外側にID読み取り装置20が設けられている。
ID読み取り装置20は、IDチップ15のデータを読み取るリーダ22を先端に備えたアーム21を、図示しない駆動装置(モータやエアシリンダ等のアクチュエータ)によって旋回可能としたもので、ここでは読み取り位置Bに位置決めされた工具ホルダ10に対して、アーム21を、リーダ22がキー溝14内に進入してIDチップ15に近接する実線で示す進入位置と、リーダ22を工具ホルダ10の循環軌跡から外側へ退避させる二点鎖線で示す退避位置との間で旋回可能としている。
【0013】
以上の如く構成された自動工具交換装置1においては、工具マガジン3の工具投入位置Aに位置決めされた工具ポット7に工具ホルダ10が差し込まれると、駆動スプロケット5の駆動によりチェーン4を回転させて、投入された工具ホルダ10を読み取り位置Bに移動させる。ここで、ID読み取り装置20では、アーム21を工具ホルダ10,10間の進入位置に旋回させて、リーダ22によってIDチップ15からデータを読み取る。その後、アーム21を退避位置へ旋回させて、次に投入された工具ホルダ10を読み取り位置Bに位置決めしてアーム21を進入位置に旋回させ、同様にIDチップ15からデータを読み取る。この繰り返しによって工具マガジン3に投入される全ての工具ホルダ10のデータが読み取り可能となる。
【0014】
このように、上記形態の自動工具交換装置1によれば、ID読み取り装置20は、工具マガジン3の円弧部分E2において当該円弧方向で隣接する工具ポット7,7の間にリーダ22を出没可能に配置され、円弧部分E2内の工具ポット7に収容される工具ホルダ10からデータを読み取り可能となっているので、工具マガジン3に設定した読み取り位置Bで支障なく工具ホルダ10のデータを読み取ることができる。よって、工具マガジン3と別に読み取り装置を備えた中間ステーション等を設ける必要がなくなり、コストアップを招くことなく循環移動式の工具マガジン3での工具に関するデータの読み取りが可能となる。
【0015】
特にここでは、ID読み取り装置20を、リーダ22を備えたアーム21を工具ポット7,7の間に進入させて、工具ホルダ10からデータを読み取り可能とする進入位置と、アーム21を工具ポット7,7の間から退避させる退避位置との間で旋回可能に設けた構成としているので、ID読み取り装置20を省スペースで工具マガジン3に設置可能となる。
また、IDチップ15は、工具ホルダ10において、主軸への回転方向位置決め用のキー溝14の底部に設けられているので、DIN規格対応の工具ホルダ10でも支障なくデータの読み取りが可能となる。
【0016】
なお、工具マガジンの全体形状は、上記形態のような横長矩形状に限らず、縦長矩形状や正方形状であっても、円弧部分があればID読み取り装置による読み取りは可能である。よって、長円形や円形であってもよい。
また、ID読み取り装置の構造も、アームを旋回させて工具ホルダ間に出没させるもの以外に、アクチュエータ等でアームを直線移動させて工具ホルダ間に出し入れさせるもの等も採用できる。
さらに、IDチップはキー溝の底部に限らず、フランジ部に設けた溝の外側等にIDチップがある工具ホルダでも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0017】
1・・自動工具交換装置、2・・コラム、3・・工具マガジン、4・・チェーン、7・・工具ポット、10・・工具ホルダ、14・・キー溝、15・・IDチップ、20・・ID読み取り装置、21・・アーム、22・・リーダ、A・・工具投入位置、B・・読み取り位置、E1・・直線部分、E2・・円弧部分。
図1
図2
図3