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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】ポリオールの調製方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 64/34 20060101AFI20230306BHJP
   C08G 64/02 20060101ALI20230306BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20230306BHJP
   C07D 257/02 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
C08G64/34
C08G64/02
C08G18/44
C07D257/02
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2018510853
(86)(22)【出願日】2016-08-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-09-13
(86)【国際出願番号】 GB2016052676
(87)【国際公開番号】W WO2017037441
(87)【国際公開日】2017-03-09
【審査請求日】2019-07-30
(31)【優先権主張番号】1515350.5
(32)【優先日】2015-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518060273
【氏名又は名称】エコニック テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ケンバー,ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】カビール,ラキブル
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ,シャーロット
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-526572(JP,A)
【文献】特表2017-524064(JP,A)
【文献】特表2014-508836(JP,A)
【文献】特開昭62-115024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 64/34
C08G 64/02
C08G 18/44
C07D 257/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重金属シアン化物(DMC)触媒、式(I)の触媒、および出発化合物の存在下で二酸化炭素およびエポキシドを反応させることを有する、ポリカーボネートエーテルポリオールの調製方法であって、
前記式(I)の触媒が下記構造を有し:
【化1】

ただし、MおよびMは、独立して、Zn(II)、Cr(II)、Co(II)、Cu(II)、Mn(II)、Mg(II)、Ni(II)、Fe(II)、Ti(II)、V(II)、Cr(III)-X、Co(III)-X、Mn(III)-X、Ni(III)-X、Fe(III)-X、Ca(II)、Ge(II)、Al(III)-X、Ti(III)-X、V(III)-X、Ge(IV)-(X)またはTi(IV)-(X)から選択され;
およびRは、独立して、水素、ハライド、ニトロ基、ニトリル基、イミン、アミン、エーテル基、シリル基、シリルエーテル基、スルホキシド基、スルホニル基、スルフィネート基もしくはアセチリド基または置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、脂環式基もしくはヘテロ脂環式基から選択され;
は、独立して、置換基を有してもよいアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレンまたはシクロアルキレンから選択され;
は、独立して、H、または置換基を有してもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリールまたはアルキルアリールから選択され;
はCであり、EはO、SもしくはNHであり;
、E、EおよびEは、NRから選択され、
【化2】

Xは、独立して、OC(O)R、OSO、OSOR、OSO(R、S(O)R、OR、ホスフィネート、ハライド、ニトレート、ヒドロキシル、カーボネート、アミノ、アミドまたは置換基を有してもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリールもしくはヘテロアリールから選択され;
は、独立して、水素、または置換基を有してもよい脂肪族、ハロ脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、アルキルアリールもしくはヘテロアリールから選択され;さらに
Gは、存在しないまたは独立して、ルイス塩基である中性もしくはアニオン性ドナーリガンドから選択され;さらに
前記出発化合物は、下記構造を有する化合物であり:
【化3】

Zは、2以上の-Rz基が結合できる基であり
aは、少なくとも2の整数であり;さらに
各Rは、-OH、-NHR’、-SH、-C(O)OH、PR’(O)(OH)、-P(O)(OR’)(OH)または-PR’(O)OHであってもよく、この際、R’は、H、または置換基を有してもよいアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルもしくはヘテロシクロアルキルである
方法。
【請求項2】
前記反応は、1bar~60bar 二酸化炭素の圧力で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
および/またはMは、Mg(II)、Zn(II)、またはNi(II)から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
およびMは、Mg(II)、Zn(II)、またはNi(II)から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
Xは、独立して、OC(O)R、OSO、OS(O)R、OSO(R、S(O)R、OR、ハライド、ニトレート、ヒドロキシル、カーボネート、アミノ、ニトロ、アミド、アルキル、ヘテロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールから選択され、および/またはRは、置換基を有してもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、もしくはアルキルアリールであってもよい、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
式(I)の触媒が対称大環状リガンドを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
式(I)の触媒が非対称大環状リガンドを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
、E、EおよびEの少なくとも1つの存在がE、E、EおよびEの残りの存在と異なる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒が下記式を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【化4】

【化5】

【化6】
【請求項10】
前記触媒が下記式を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【化7】
【請求項11】
前記反応が、50℃~110℃の範囲の温度で行われる、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
の各存在が-OHであってもよい、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記出発化合物が、1,2-エタンジオール(エチレングリコール)、1-2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,2-ブタンジオール、1-3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-ジフェノール、1,3-ジフェノール、1,4-ジフェノール、ネオペンチルグリコール、カテコール、シクロヘキセンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、PPG
425、PPG 725、PPG 1000等の、1500g/mol以下のMnを有するポリプロピレングリコール(PPG)もしくはポリエチレングリコール(PEG)等のジオール、グリセロール、ベンゼントリオール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、トリス(メチルアルコール)プロパン、トリス(メチルアルコール)エタン、トリス(メチルアルコール)ニトロプロパン、トリメチロールプロパン、ポリプロピレンオキサイドトリオールおよびポリエステルトリオール等のトリオール、カリックス[4]アレーン、2,2-ビス(メチルアルコール)-1,3-プロパンジオール、エリトリトール、ペンタエリトリトールもしくは4つの-OH基を有するポリアルキレングリコール(PEGもしくはPPG)等のテトラオール、ソルビトールもしくは5つ以上の-OH基を有するポリアルキレングリコール(PEGもしくはPPG)等のポリオール、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の二酸、または乳酸、グリコール酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、4-ヒドロキシ酪酸、5-ヒドロキシペンタン酸等の混合官能基を有する他の化合物由来である、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記DMC触媒は、有機錯化剤の存在下で金属塩の水溶液を金属シアン化物塩の水溶液で処理することによって調製される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記金属塩は、式:M’(X’)を有し、この際、M’は、Zn(II)、Fe(II)、Ni(II)、Mn(II)、Co(II)、Sn(II)、Pb(II)、Fe(III)、Mo(IV)、Mo(VI)、Al(III)、V(V)、V(VI)、Sr(II)、W(IV)、W(VI)、Cu(II)、およびCr(III)から選択され、
X’は、ハライド、ヒドロキシド、スルフェート、カーボネート、シアナイド、オキサレート、チオシアネート、イソシアネート、イソチオシアネート、カルボキシレートおよびニトレートから選択されるアニオンであり、
pは1以上の整数であり、pを乗じたアニオンのチャージがM’の価数を満たし;
前記金属シアン化物塩が、式:(Y)M”(CN)(A)を有し、この際、M”がFe(II)、Fe(III)、Co(II)、Co(III)、Cr(II)、Cr(III)、Mn(II)、Mn(III)、Ir(III)、Ni(II)、Rh(III)、Ru(II)、V(IV)、およびV(V)から選択され、
Yは、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオン(K等)であり、
Aは、ハライド、ヒドロキシド、スルフェート、シアナイド、オキサレート、チオシアネート、イソシアネート、イソチオシアネート、カルボキシレートおよびニトレートから選択されるアニオンであり;
qおよびbは、1以上の整数であり;
cは、0または1以上の整数であってもよく;
q、bおよびcをそれぞれ乗じたアニオンY、CNおよびAのチャージの合計(例えば、Y×q+CN×b+A×c)はM”の価数を満たし;さらに
前記錯化剤は、エーテル、ケトン、エステル、アミド、アルコール、尿素またはこれらの組み合わせである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
a.請求項1~15のいずれか1項で規定される式(I)の触媒、
b.請求項1~15のいずれか1項で規定されるDMC触媒、および
c.請求項1~15のいずれか1項で規定される出発化合物
を有する、二酸化炭素およびエポキシドの共重合のための重合系。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか1項に記載の方法によって調製されるポリカーボネートエーテルポリオール。
【請求項18】
請求項17で規定されるポリカーボネートエーテルポリオールから調製されるポリウレタンまたは他のポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、式(I)の触媒、二重金属シアン化物(double metal cyanide)(DMC)触媒及び出発化合物(starter compound)の存在下でエポキシド及び二酸化炭素を反応させることによる、ポリカーボネートエーテルポリオール(polycarbonate ether polyol)の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
ポリウレタンは、ジ-またはポリイソシアネートをポリオールと反応させることによって調製される。ポリウレタンは、断熱パネル、高性能接着剤、高弾性発泡シート剤(high-resilience foam seating)、密封剤やガスケット、車輪やタイヤ、合成繊維などを含む、数多くの様々な製品や用途に使用される。
【0003】
ポリウレタンを作製するのに使用されるポリオールは、複数の反応サイト(例えば、複数のヒドロキシル基)を有するポリマーである。最も一般的に使用されるポリオールは、ポリエーテルまたはポリエステル系である。
【0004】
工業的にポリエーテルポリオールを作製する一つの方法として、出発化合物の存在下で二重金属シアン化物(DMC)触媒を用いてエポキシドを反応させることによるものがある。
【0005】
ポリオールの性質や特性が得られるポリウレタンの性質や特性に大きな影響を与える。ポリオール中のカーボネート結合が得られるポリウレタンの特性を向上する、例えば、カーボネート結合の存在により得られるポリウレタンのUV安定性、加水分解安定性、耐薬品性および/または機械的強度を向上するため、ポリエーテルポリオールの骨格にポリカーボネート結合を含ませることが望ましい。カーボネート結合の存在はまた、得られるポリオールの粘度を上げ、これは用途によっては使用を制限してしまう。したがって、広範な用途に特性を合わせるためにポリオール中のカーボネート結合に対するエーテル結合の割合を制御できることが重要である。また、得られるポリオールの有用性や加工しやすさに影響を与え得るため、ポリオールの分子量や多分散性を制御できることも重要である。
【0006】
ポリエーテルの調製に使用されるDMC触媒は、The General Tyre and Rubber Companyによる米国特許第3427256号に最初に開示された。その後、出発化合物の存在下でこの反応を行うことによってポリエーテルポリオールが得られることが見出された。
【0007】
DMC触媒はまた、ポリマー骨格中にカーボネート結合を有するポリエーテルポリオール(以下、ポリカーボネートエーテルポリオール(polycarbonate ether polyol)と称する)を調製できる。これらのタイプのポリマーを調製するためには、一般的に高圧の二酸化炭素で反応を行う。DMC触媒では、二酸化炭素を適切に導入するために、反応を40bar以上の圧力で行う必要があることが、通常、知られている。ポリオールを調製するための工業的な装置が一般的に10bar以下の圧力に制限されるため、これは望ましくない。例えば、米国特許出願公開第2013/0072602号の実施例では、50barのCOでの出発化合物及び添加剤の存在下でのプロピレンオキシドの重合が記載される。得られたポリカーボネートエーテルポリオールは、17.8及び24.1wt% COを取り込んでいる。同様の結果が米国特許出願公開第2013/0190462号でも見受けられる。
【0008】
WO 2015/022290号では、実施例で、15~25bar COでDMC触媒及び出発化合物の存在下でプロピレンオキシドの重合を行ったところ、得られたポリオールは10.0~15.4wt% COを取り込んだことが示される。
【0009】
したがって、工業的なポリエーテルポリオール装置で使用される圧力下でポリカーボネートエーテルポリオールを調製できることが望ましい。また、低圧力下で二酸化炭素を適切に取り込む(例えば、≧20wt% 二酸化炭素、これは、使用される出発物質の性質によって、ポリマー骨格に~0.5のカーボネート結合の割合を必要とする)ことが望ましい。
【0010】
WO 2010/028362号には、連鎖移動剤および1個の金属原子を錯化する(complex)永久的なリガンドセットを有する触媒の存在下で二酸化炭素及びエポキシドを共重合することによるポリカーボネートポリオールの製造方法が開示される。実施例で調製されるポリオールは、ポリマー骨格において≧0.95のカーボネート結合割合を有する。これらの系は、ポリマー骨格にエーテル結合をほとんどまたはまったくもたないポリカーボネートを調製するように設計される。さらに、各実施例は、300psig(約20bar)二酸化炭素の高圧で行われる。
【0011】
WO 2013/034750号では、式(I)の触媒を用いたポリカーボネートポリオールの調製方法が開示される。
【0012】
【化1】
【0013】
実施例で調製されるポリオールは、ポリマー骨格において≧95%のカーボネート結合、通常≧99%のカーボネート結合を有する。
【0014】
WO 2012/121508号は、最終的には樹脂及び軟質プラスチックとして使用される、ポリカーボネートエーテルの調製方法に関する。この公報は、ポリオールの調製に関するものではない。WO 2012/121508号に開示される方法は、DMC触媒及び下記式を有する金属サレン触媒の存在下でエポキシド及び二酸化炭素を共重合することを必要とする。
【0015】
【化2】
【0016】
実施例は、それぞれ、16bar CO以上で行われる。得られるポリカーボネートエーテルは、様々な量のエーテル及びカーボネート結合を含む。しかしながら、上記ポリマーは、高分子量を有し、高多分散指数を有し(即ち、PDIが3.8以上)、末端がヒドロキシル基ではない。したがって、これらのポリマーはポリウレタンの製造に使用できない。
【0017】
Gao et al, Journal of Polymer Science Part A: Polymer Chemistry, 2012, 50, 5177-5184には、DMC触媒及びジカルボン酸出発物質を用いた低分子量のポリカーボネートエーテルポリオールの調製方法が記載される。カーボネート結合の割合の高いポリオールを調製できるには明らかに不可欠であるジカルボン酸出発物質を使用する際には、温度を下げ(50℃)、圧力を上げる(40bar)ことによって、得られるポリオールでのカーボネート結合の割合を0.75まで増加できる。これらの条件は、経済的工業的用途には好ましくない。Gao et alは、ポリカーボネートエーテルポリオールを調製するための2元触媒系は好ましくないことを示唆している。
【0018】
従来報告されている触媒系では、展開されてきた最も広い温度及び圧力範囲であっても、0.75~0.9のカーボネート結合の割合を有するポリオールを調製することはできないことが報告された。
【発明の概要】
【0019】
発明の要約
本発明は、式(I)の触媒、二重金属シアン化物(DMC)触媒(double metal cyanide (DMC) catalyst)および出発化合物(starter compound)の存在下でエポキシドおよび二酸化炭素を反応させることによるポリカーボネートエーテルポリオールの調製方法に関する。
【0020】
前記式(I)の触媒は、下記のように示される。
【0021】
【化3】
【0022】
ただし:
およびMは、独立して、Zn(II)、Cr(II)、Co(II)、Cu(II)、Mn(II)、Mg(II)、Ni(II)、Fe(II)、Ti(II)、V(II)、Cr(III)-X、Co(III)-X、Mn(III)-X、Ni(III)-X、Fe(III)-X、Ca(II)、Ge(II)、Al(III)-X、Ti(III)-X、V(III)-X、Ge(IV)-(X)またはTi(IV)-(X)から選択され;
およびRは、独立して、水素、ハライド(halide)、ニトロ基、ニトリル基、イミン、アミン、エーテル基、シリル基、シリルエーテル基、スルホキシド基、スルホニル基、スルフィネート基(sulfinate group)もしくはアセチリド基(acetylide group)または置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、脂環式基もしくはヘテロ脂環式基から選択され;
は、独立して、置換基を有してもよいアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレンまたはシクロアルキレンから選択され、この際、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレンおよび ヘテロアルキニレンは、アリール、ヘテロアリール、脂環式またはヘテロ脂環式によって中断されて(interrupted by)もよく;
は、独立して、H、または置換基を有してもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリールまたはアルキルアリールから選択され;
はCであり、EはO、SもしくはNHでありまたはEはNでありおよびEはOであり;
、E、EおよびEは、N、NR、OおよびSから選択され、
【0023】
【化4】
【0024】
Xは、独立して、OC(O)R、OSO、OSOR、OSO(R、S(O)R、OR、ホスフィネート(phosphinate)、ハライド(halide)、ニトレート(nitrate)、ヒドロキシル、カーボネート(carbonate)、アミノ、アミドまたは置換基を有してもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリールもしくはヘテロアリールから選択され;
は、独立して、水素、または置換基を有してもよい脂肪族、ハロ脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、アルキルアリールもしくはヘテロアリールから選択され;さらに
Gは、存在しないまたは独立して、ルイス塩基である中性もしくはアニオン性ドナーリガンドから選択される。
【0025】
前記DMC触媒は、少なくとも2個の金属中心およびシアナイドリガンド(cianide ligand)を有する。前記DMC触媒は、有機錯化剤、水および/または金属塩を(例えば、非化学量論量で)さらに含んでもよい。
【0026】
例えば、前記DMC触媒は、下記を有していてもよい。
【0027】
【化5】
【0028】
ただし、M’は、Zn(II)、Fe(II)、Ni(II)、Mn(II)、Co(II)、Sn(II)、Pb(II)、Fe(III)、Mo(IV)、Mo(VI)、Al(III)、V(V)、V(VI)、Sr(II)、W(IV)、W(VI)、Cu(II)、およびCr(III)から選択され、
M”がFe(II)、Fe(III)、Co(II)、Co(III)、Cr(II)、Cr(III)、Mn(II)、Mn(III)、Ir(III)、Ni(II)、Rh(III)、Ru(II)、V(IV)、およびV(V)から選択され;さらに
d、e、fおよびgは整数であり、DMC触媒が電気的に中性であるように選択される。
【0029】
前記出発化合物は、下記式(III)を有してもよい。
【0030】
【化6】
【0031】
Zは、2以上の-R基が結合できるいずれかの基でありえる。ゆえに、Zは、
置換基を有してもよいアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、ヘテロシクロアルキレン、ヘテロシクロアルケニレン、アリーレン、ヘテロアリーレンから選択されても、またはZは、これらの基の組み合わせであってもよく、例えば、Zは、アルキルアリーレン基、ヘテロアルキルアリーレン基、ヘテロアルキルヘテロアリーレン基またはアルキルヘテロアリーレン基であってもよい。
【0032】
aは、少なくとも2の整数であり、各Rは、-OH、-NHR’、-SH、-C(O)OH、-P(O)(OR’)(OH)、-PR’(O)(OH)または-PR’(O)OHであってもよく、さらに、R’は、H、または置換基を有してもよいアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルもしくはヘテロシクロアルキルであってもよい。
【0033】
本方法は、約1bar~約60bar、約1bar~約30bar、約1bar~約20bar、約1bar~約15bar、または約1bar~約10bar 二酸化炭素の圧力で行うことができる。また、前記反応は、約5bar以下の圧力で行うことができると考えられるであろう。
【0034】
本方法は、約0℃~約250℃、例えば、約40℃~約140℃、例えば、約50℃~約110℃、例えば、約60℃~約100℃、例えば、約70℃~約100℃の温度で行うことができる。
【0035】
本発明はまた、以下:
a.本明細書で規定される式(I)の触媒、
b.本明細書で規定されるDMC触媒、および
c.本明細書で規定される出発化合物
を有する、二酸化炭素およびエポキシドの共重合のための重合系を提供する。
【0036】
本発明は、n個のエーテル結合及びm個のカーボネート結合を有し、この際、n及びmは整数であり、m/(n+m)は0超1未満である、ポリカーボネートエーテルポリオールを調製することが可能である。
【0037】
本発明の方法によって調製されるポリオールは、さらなる反応、例えば、本発明の方法によって調製されるポリオールを含むポリオール組成物をジ-またはポリイソシアネートを含む組成物と反応することによって、例えば、ポリウレタンを調製することに使用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図面の簡単な説明
図1図1は、式(I)の触媒及びDMC触媒の組み合わせによって製造される多分散性が狭いポリオールを示す、表1のRun3に関するGPCトレースである。
図2図2は、DMC触媒単独を用いて製造される多分散性の高いポリオールを示す、表1のRun2に関するGPCトレースである。
図3図3は、出発物質として1,6-ヘキサンジオールを用いる、表2のRun3に関するGPCトレースである。
図4図4は、出発物質としてPPG-725を用いる、表2のRun2に関するGPCトレースである。
図5図5は、出発物質としてPPG-1000を用いる、表2のRun1に関するGPCトレースである。
図6図6は、様々なCO含有量を有する、実施例2で調製される(おおよそ)Mwが2000のポリオールの75℃での粘度を示す。
図7図7は、様々なCO含有量を有する、実施例2で調製される(おおよそ)Mwが2000のポリオールの25℃での粘度を示す。
図8図8は、33wt% COを含む、実施例2aで調製されるポリオールのH NMRスペクトルである。
図9図9は、26.6wt% CO及び0.67のRPECを含む、実施例2bで調製されるポリオールのH NMRスペクトルである。
図10図10は、実施例2a~e及びベンチマークB2に関するオーバーレイ熱重量分析(overlaid Thermogravimetrics Analysis)トレースを示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
定義
本発明を目的として、脂肪族基は、直鎖または分岐鎖であってもよく、完全に飽和していても、または1以上の不飽和単位を有していてもよい炭化水素部分である(ただし、芳香族ではない)。「不飽和」ということばは、1以上の二重および/または三重結合を有する部分を意味する。したがって、「脂肪族」ということばは、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基、およびこれらの組み合わせを包含するものである。脂肪族基は、好ましくは、C1-20脂肪族基、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20炭素原子を有する脂肪族基である。好ましくは、脂肪族基は、C1-15脂肪族であり、より好ましくはC1-12脂肪族であり、より好ましくはC1-10脂肪族であり、さらにより好ましくはC1-6脂肪族基等のC1-8脂肪族である。
【0040】
アルキル基は、好ましくは、「C1-20アルキル基」、即ち、1~20炭素を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基である。したがって、アルキル基は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20炭素原子を有する。好ましくは、アルキル基は、C1-15アルキルであり、好ましくはC1-12アルキルであり、より好ましくはC1-10アルキルであり、さらにより好ましくはC1-8アルキルであり、さらにより好ましくはC1-6アルキル基である。具体的には、「C1-20アルキル基」の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソ-プロピル基、n-ブチル基、イソ-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-エイコシル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、n-ヘキシル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1-エチルブチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基などがある。
【0041】
アルケニル基およびアルキニル基は、それぞれ、好ましくは、「C2-20アルケニル」および「C2-20アルキニル」、より好ましくは「C2-15アルケニル」および「C2-15アルキニル」、さらにより好ましくは「C2-12アルケニル」および「C2-12アルキニル」、さらにより好ましくは「C2-10アルケニル」および「C2-10アルキニル」、さらにより好ましくは「C2-8アルケニル」および「C2-8アルキニル」、最も好ましくは「C2-6アルケニル」および「C2-6アルキニル」基である。
【0042】
ヘテロ脂肪族基(ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル及びヘテロアルキニルを含む)は、さらに1以上のヘテロ原子を有する、上記したような脂肪族基である。したがって、ヘテロ脂肪族基は、好ましくは、2~21原子、好ましくは2~16原子、より好ましくは2~13原子、より好ましくは2~11原子、より好ましくは2~9原子、さらにより好ましくは2~7原子を含み、この際、少なくとも1原子は炭素原子である。特に好ましいヘテロ原子は、O、S、N、PおよびSiから選択される。ヘテロ脂肪族基が2以上のヘテロ原子を有する場合には、これらのヘテロ原子は同じであってもまたは異なるものであってもよい。
【0043】
脂環式基は、3~20炭素原子を有する飽和または部分不飽和の環状脂肪族の単環または多環(融合、架橋及びスピロ-融合を含む)環系、即ち、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20炭素原子を有する脂環式基である。好ましくは、脂環式基は、3~15、より好ましくは3~12、さらにより好ましくは3~10、さらにより好ましくは3~8炭素原子、さらにより好ましくは3~6炭素原子を有する。「脂環式」ということばは、シクロアルキル基、シクロアルケニル基及びシクロアルキニル基を包含する。脂環式基は、-CH-シクロヘキシル等の、1以上のアルキル置換基が連結しているまたは連結していない脂環式環を包含してもよいと解されるであろう。具体的には、C3-20シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル及びシクロオクチルがある。
【0044】
ヘテロ脂環式基は、炭素原子に加えて、好ましくはO、S、N、P及びSiから選択される、1以上の環ヘテロ原子を有する、上記したような脂環式基である。ヘテロ脂環式基は、好ましくは、1~4ヘテロ原子を含み、この際、ヘテロ原子は同じであってもまたは異なるものであってもよい。ヘテロ脂環式基は、好ましくは、5~20原子、より好ましくは5~14原子、さらにより好ましくは5~12原子を有する。
【0045】
アリール基は、5~20炭素原子を有する単環または多環の環系である。アリール基は、好ましくは、「C6-12アリール基」であり、6、7、8、9、10、11または12炭素原子によって構成されるアリール基であり、単環の環基等の縮合環、または2重環の環基などを包含する。具体的には、「C6-10アリール基」の例としては、フェニル基、ビフェニル基、インデニル基、ナフチル基またはアズレニル基などがある。インダンやテトラヒドロナフタレン等の縮合環もまたアリール基に包含されるものと解されるべきである。
【0046】
ヘテロアリール基は、炭素原子に加えて、好ましくはO、S、N、P及びSiから選択される1~4個の環ヘテロ原子を有するアリール基である。ヘテロアリール基は、好ましくは、5~20、より好ましくは5~14環原子を有する。具体的には、ヘテロアリール基の例としては、ピリジン、イミダゾール、メチルイミダゾール及びジメチルアミノピリジンがある。
【0047】
脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基及びヘテロアリール基の例としては、以下に制限されないが、シクロヘキシル、フェニル、アクリジン、ベンズイミダゾール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾオチアゾール、カルバゾール、シンノリン、ダイオキシン、ジオキサン、ジオキソラン、ジチアン、ジチアジン、ジチアゾール、ジチオラン、フラン、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、インドール、インドリン、インドリジン、インダゾール、イソインドール、イソキノリン、イソオキサゾール、イソチアゾール、モルホリン、ナフチリジン、オキサゾール、オキサジアゾール、オキサチアゾール、オキサチアゾリジン、オキサジン、オキサジアジン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、フタラジン、ピペラジン、ピペリジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、ピロリン、キノリン、キノキサリン、キナゾリン、キノリジン、テトラヒドロフラン、テトラジン、テトラゾール、チオフェン、チアジアジン、チアジアゾール、チアトリアゾール、チアジン、チアゾール、チオモルホリン、チアナフタレン、チオピラン、チアジン、トリアゾール、及びトリチアンがある。
【0048】
「ハライド(halide)」または「ハロゲン」ということばは、区別しないで使用され、本明細書で使用される場合には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などを意味し、好ましくはフッ素原子、臭素原子または塩素原子、より好ましくはフッ素原子を意味する。
【0049】
ハロアルキル基は、好ましくは、「C1-20ハロアルキル基」、より好ましくは「C1-15ハロアルキル基」、より好ましくは「C1-12ハロアルキル基」、より好ましくは「C1-10ハロアルキル基」、さらにより好ましくは「C1-8ハロアルキル基」、さらにより好ましくは「C1-6ハロアルキル基」であり、少なくとも1個のハロゲン原子、好ましくは1、2または3個のハロゲン原子で置換された、それぞれ、上記したようなC1-20アルキル基、C1-15アルキル基、C1-12アルキル基、C1-10アルキル基、C1-8アルキル基、またはC1-6アルキル基である。具体的には、「C1-20 ハロアルキル基」の例としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基などがある。
【0050】
アルコキシ基は、好ましくは、「C1-20アルコキシ基」、より好ましくは「C1-15アルコキシ基」、より好ましくは「C1-12アルコキシ基」、より好ましくは「C1-10アルコキシ基」、さらにより好ましくは「C1-8アルコキシ基」、さらにより好ましくは「C1-6アルコキシ基」であり、前記したC1-20アルキル基、C1-15アルキル基、C1-12アルキル基、C1-10アルキル基、C1-8アルキル基、またはC1-6アルキル基にそれぞれ結合したオキシ基である。具体的には、「C1-20アルコキシ基」の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、iso-ペンチルオキシ基、sec-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、iso-ヘキシルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、n-トリデシルオキシ基、n-テトラデシルオキシ基、n-ペンタデシルオキシ基、n-ヘキサデシルオキシ基、n-ヘプタデシルオキシ基、n-オクタデシルオキシ基、n-ノナデシルオキシ基、n-エイコシルオキシ基、1,1-ジメチルプロポキシ基、1,2-ジメチルプロポキシ基、2,2-ジメチルプロポキシ基、2-メチルブトキシ基、1-エチル-2-メチルプロポキシ基、1,1,2-トリメチルプロポキシ基、1,1-ジメチルブトキシ基、1,2-ジメチルブトキシ基、2,2-ジメチルブトキシ基、2,3-ジメチルブトキシ基、1,3-ジメチルブトキシ基、2-エチルブトキシ基、2-メチルペンチルオキシ基、3-メチルペンチルオキシ基などがある。
【0051】
アリールオキシ基は、好ましくは、「C5-20アリールオキシ基」、より好ましくは「C6-12アリールオキシ基」、さらにより好ましくは「C6-10アリールオキシ基」であり、前記したC5-20アリール基、C6-12アリール基、またはC6-10アリール基にそれぞれ結合したオキシ基である。
【0052】
アルキルチオ基は、好ましくは「C1-20アルキルチオ基」、より好ましくは「C1-15アルキルチオ基」、より好ましくは「C1-12アルキルチオ基」、より好ましくは「C1-10アルキルチオ基」、さらにより好ましくは「C1-8アルキルチオ」、さらにより好ましくは「C1-6アルキルチオ基」であり、前記したC1-20アルキル基、C1-15アルキル基、C1-12アルキル基、C1-10アルキル基、C1-8アルキル基、またはC1-6アルキル基にそれぞれ結合したチオ(-S-)基である。
【0053】
アリールチオ基は、好ましくは、「C5-20アリールチオ基」、より好ましくは「C6-12アリールチオ」、さらにより好ましくは「C6-10アリールチオ基」であり、前記したC5-20アリール基、C6-12アリール基、またはC6-10アリール基にそれぞれ結合したチオ基(-S-)である。
【0054】
アルキルアリール基は、好ましくは、「C6-12アリールC1-20アルキル基」、より好ましくは「C6-12アリールC1-16アルキル基」、さらにより好ましくは「C6-12アリールC1-6アルキル基」であり、上記にて規定したようなアルキル基のいずれかの位置で結合した上記にて規定したようなアリール基である。アルキルアリール基の分子への結合点はアルキル部分を介してもよく、好ましくは、アルキルアリール基は、-CH-Phまたは-CHCH-Phである。アルキルアリール基はまた、「アラルキル」とも称される。
【0055】
シリル基は、好ましくは、-Si(Rの基であり、この際、各Rは、独立して、上記にて規定したような脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基またはヘテロアリール基であってもよい。特定の実施形態では、各Rは、独立して、非置換の脂肪族、脂環式またはアリールである。好ましくは、各Rは、メチル、エチルまたはプロピルから選択されるアルキル基である。
【0056】
シリルエーテル基は、好ましくは、OSi(Rの基であり、この際、各Rは、独立して、上記にて規定したような脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基またはヘテロアリール基であってもよい。特定の実施形態では、各Rは、独立して、非置換の脂肪族、脂環式またはアリールであってもよい。好ましくは、各Rは、置換基を有してもよいフェニル基または置換基を有してもよいメチル、エチル、プロピルまたはブチル(n-ブチルもしくはtert-ブチル(tBu)など)から選択されるアルキル基である。シリルエーテル基の具体例としては、OSi(Me)、OSi(Et)、OSi(Ph)、OSi(Me)(tBu)、OSi(tBu)およびOSi(Ph)(tBu)がある。
【0057】
ニトリル基(シアノ基とも称する)は、CNの基である。
【0058】
イミン基は、-CRNRの基、好ましくは-CHNRの基であり、この際、Rは、上記にて規定したような脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基またはヘテロアリール基である。特定の実施形態では、Rは、非置換の脂肪族、脂環式またはアリールである。好ましくは、Rは、メチル、エチルまたはプロピルから選択されるアルキル基である。
【0059】
アセチリド基(acetylide group)は、下記:
【0060】
【化7】
【0061】
の三重結合を含み、好ましくは、この際、Rは、水素、上記にて規定したような脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基またはヘテロアリール基であってもよい。本発明を目的として、Rがアルキルである際には、三重結合は、アルキル鎖のいずれの位置に存在してもよい。特定の実施形態では、Rは、非置換の脂肪族、脂環式またはアリールである。好ましくは、Rは、メチル、エチル、プロピルまたはフェニルである。
【0062】
アミノ基は、好ましくは-NH、-NHR10または-N(R10であり、この際、R10は、上記にて規定したような脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、シリル基、アリール基またはヘテロアリール基であってもよい。アミノ基がN(R10である際、各R10基は、同じであってまたは異なるものであってもよいと解されるであろう。特定の実施形態では、各R10は、独立して、非置換の脂肪族、脂環式、シリルまたはアリールである。好ましくは、R10は、メチル、エチル、プロピル、SiMeまたはフェニルである。
【0063】
アミド基は、好ましくは、-NR11C(O)-または-C(O)-NR11-であり、この際、R11は、水素、上記にて規定したような脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基またはヘテロアリール基であってもよい。特定の実施形態では、R11は、非置換の脂肪族、脂環式またはアリールである。好ましくは、R11は、水素、メチル、エチル、プロピルまたはフェニルである。アミド基は、水素、脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基またはヘテロアリール基で終わってもよい。
【0064】
エステル基は、好ましくは、-OC(O)R12-または-C(O)OR12-であり、この際、R12は、上記にて規定したような脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基またはヘテロアリール基であってもよい。特定の実施形態では、R12は、非置換の脂肪族、脂環式またはアリールである。好ましくは、R12は、メチル、エチル、プロピルまたはフェニルである。エステル基は、脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基またはヘテロアリール基で終わってもよい。R12が水素である際には、-OC(O)R12-または-C(O)OR12-で規定される基はカルボン酸基であると解されるであろう。
【0065】
スルホキシド基(sulfoxide)は、好ましくは、-S(O)R13であり、スルホニル基(sulfonyl group)は、好ましくは、-S(O)13であり、この際、R13は、上記にて規定したような脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基またはヘテロアリール基であってもよい。特定の実施形態では、R13は、非置換の脂肪族、脂環式またはアリールである。好ましくは、R13は、メチル、エチル、プロピルまたはフェニルである。
【0066】
カルボキシレート基は、好ましくは、-OC(O)R14であり、この際、R14は、水素、上記にて規定したような脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基またはヘテロアリール基であってもよい。特定の実施形態では、R14は、非置換の脂肪族、脂環式またはアリールである。好ましくは、R14は、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル(例えば、n-ブチル、イソブチルまたはtert-ブチル)、フェニル、ペンタフルオロフェニル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、トリフルオロメチルまたはアダマンチルである。
【0067】
アセトアミド基(acetamide)は、好ましくは、MeC(O)N(R15であり、この際、R15は、水素、上記にて規定したような脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基またはヘテロアリール基であってもよい。特定の実施形態では、R15は、非置換の脂肪族、脂環式またはアリールである。好ましくは、R15は、水素、メチル、エチル、プロピルまたはフェニルである。
【0068】
ホスフィネート(phosphinate)基は、好ましくは、-OP(O)(R16または-P(O)(OR16)(R16)の基であり、この際、各R16は、独立して、水素、または上記にて規定したような脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基もしくはヘテロアリール基から選択される。特定の実施形態では、R16は、脂肪族、脂環式、アリールまたはC1-6アルコキシで置換されてもよい、脂肪族、脂環式またはアリールである。好ましくは、R16は、置換基を有してもよいアリールまたはC1-20アルキル、より好ましくはC1-6アルコキシ(好ましくは、メトキシ)で置換されてもよいフェニルまたは非置換のC1-20アルキル(ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、ステアリル等)である。ホスホネート基(phosphonate group)は、好ましくは、-P(O)(OR16の基であり、この際、R16は上記と同様の定義である。-P(O)(OR16でいずれかのまたは双方のR16が水素である際は、-P(O)(OR16で規定される基はリン酸基であると解されるであろう。
【0069】
スルフィネート基(sulfinate group)は、好ましくは、-S(O)OR17または-OS(O)R17であり、この際、R17は、水素、上記にて規定したような脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、ハロ脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基またはヘテロアリール基であってもよい。特定の実施形態では、R17は、非置換の脂肪族、脂環式またはアリールである。好ましくは、R17は、水素、メチル、エチル、プロピルまたはフェニルである。R17が水素である際には、-S(O)OR17で規定される基はスルホン酸基であると解されるであろう。
【0070】
カーボネート(carbonate)基は、好ましくは、-OC(O)OR18であり、この際、R18は、水素、上記にて規定したような脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基またはヘテロアリール基であってもよい。特定の実施形態では、R18は、置換基を有してもよい脂肪族、脂環式またはアリールである。好ましくは、R18は、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル(例えば、n-ブチル、イソブチルまたはtert-ブチル)、フェニル、ペンタフルオロフェニル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、トリフルオロメチル、シクロヘキシル、ベンジルまたはアダマンチルである。R17が水素である際には、-OC(O)OR18で規定される基は炭酸基であると解されるであろう。
【0071】
-アルキルC(O)OR19基または-アルキルC(O)R19基において、R19は、水素、上記にて規定したような脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基またはヘテロアリール基であってもよい。特定の実施形態では、R19は、非置換の脂肪族、脂環式またはアリールである。好ましくは、R19は、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル(例えば、n-ブチル、イソブチルもしくはtert-ブチル)、フェニル、ペンタフルオロフェニル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、トリフルオロメチルまたはアダマンチルである。
【0072】
上記基のいずれかがルイス塩基G中に存在する場合には、一以上の別のR基が、必要に応じて、価数をあわせるために、存在してもよいと解されるであろう。例えば、アミノ基の場合には、別のR基が存在して、RNHR10を生じてもよく、この際、Rは水素、上記にて規定したような置換基を有してもよい脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基またはヘテロアリール基である。好ましくは、Rは水素または脂肪族、脂環式もしくはアリールである。
【0073】
上記定義にて記載した脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアリール基、シリル基、シリルエーテル基、エステル基、スルホキシド基、スルホニル基、カルボキシレート基、カーボネート(carbonate)基、イミン基、アセチリド(acetylide)基、アミノ基、ホスフィネート(phosphinate)基、スルホネート(sulfonate)基またはアミド基のいずれかがハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、カルボキシレート、カーボネート、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールオキシ、アルキルアリール、アミノ、アミド、イミン、ニトリル、シリル、シリルエーテル、エステル、スルホキシド、スルホニル、アセチリド、ホスフィネート、スルホネートまたは置換基を有してもよい(例えば、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、カーボネート、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アミノ、イミン、ニトリル、シリル、スルホキシド、スルホニル、ホスフィネート、スルホニルまたはアセチリドによって置換されてもよい)脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基もしくはヘテロアリール基によって置換されてもよい。
【0074】
式(I)において、基XおよびGが単一のMまたはM金属中心と結合しているように示されていたとしても、一以上のXおよびGの基がMまたはM金属中心間の架橋を形成してもよいと、解されるであろう。
【0075】
本発明の目的として、エポキシド基質は制限されない。したがって、エポキシドということばは、エポキシド部分を有する化合物に関するものである。本発明で使用されてもよいエポキシドの例としては、以下に制限されないが、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、置換基を有するシクロヘキセンオキシド(リモネンオキシド、C1016Oまたは2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、C1122Oなど)、アルキレンオキシド(エチレンオキシドや置換基を有するエチレンオキシドなど)、非置換のまたは置換基を有するオキシラン(オキシラン、エピクロルヒドリン、2-(2-メトキシエトキシ)メチルオキシラン(MEMO)、2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)メチルオキシラン(ME2MO)、2-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)メチルオキシラン(ME3MO)、1,2-エポキシブタン、グリシジルエーテル、ビニル-シクロヘキセンオキシド、3-フェニル-1,2-エポキシプロパン、1,2-及び2,3-エポキシブタン、イソブチレンオキシド、シクロペンテンオキシド、2,3-エポキシ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、インデンオキシド、ならびに官能基を有する(functionalized)3,5-ジオキサエポキシド(dioxaepoxide)がある。官能基を有する3,5-ジオキサエポキシドの例としては、下記がある。
【0076】
【化8】
【0077】
エポキシド部分は、グリシジルエーテル、グリシジルエステルまたはグリシジルカーボネートであってもよい。グリシジルエーテル、グリシジルエステル グリシジルカーボネートの例としては、下記がある。
【0078】
【化9】
【0079】
エポキシド基質は1個を超えるエポキシド部分を含んでもよい、すなわち、bis-エポキシド、tris-エポキシド、またはmulti-エポキシド含有部分であってもよい。1個を超えるエポキシド部分を含む化合物の例としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテルや3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートがある。1個を超えるエポキシド部分を含む1以上の化合物の存在下で行われる反応により得られるポリマーで架橋が起こってもよいと理解されるであろう。
【0080】
エポキシドが「グリーン(green)」または再生可能な源から得られることを、当業者は理解するであろう。エポキシドは、標準的な酸化化学を用いて得られる、脂肪酸および/またはテルペン由来のものなどの、(ポリ)不飽和((poly)unsaturated)化合物から得られてもよい。
【0081】
エポキシド部分は、-OH部分、または保護された-OH部分を有してもよい。-OH部分は適当な保護基で保護されてもよい。適当な保護基としては、メチルまたは他のアルキル基、ベンジル、アリル、tert-ブチル、テトラヒドロピラニル(THP)、メトキシメチル(MOM)、アセチル(C(O)アルキル)、ベンゾイル(C(O)Ph)、ジメトキシトリチル(DMT)、メトキシエトキシメチル(MEM)、p-メトキシベンジル(PMB)、トリチル、シリル(トリメチルシリル(TMS)、t-ブチルジメチルシリル(TBDMS)、t-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、トリ-イソ-プロピルシリルオキシメチル(TOM)、及びトリイソプロピルシリル(TIPS)など)、(4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル(MMT)、テトラヒドロフラニル(THF)、ならびにテトラヒドロピラニル(THP)がある。
【0082】
エポキシドは、好ましくは少なくとも98%、より好ましくは99%超の純度を有する。
【0083】
「エポキシド(an epoxide)」ということばは、1以上のエポキシドを包含するものと解されるであろう。換言すると、「エポキシド(an epoxide)」ということばは、単一のエポキシド、または2以上の異なるエポキシドの混合物を意味する。例えば、エポキシド基質は、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの混合物、シクロヘキセンオキシド及びプロピレンオキシドの混合物、エチレンオキシド及びシクロヘキセンオキシドの混合物、またはエチレンオキシド、プロピレンオキシド及びシクロヘキセンオキシドの混合物であってもよい。
【0084】
詳細な説明
本発明は、式(I)の触媒、二重金属シアン化物(DMC)触媒、及び出発化合物の存在下でエポキシを二酸化炭素と反応する方法を提供する。
【0085】
式(I)の触媒
式(I)の触媒は、下記構造を有する。
【0086】
【化10】
【0087】
ただし、MおよびMは、独立して、Zn(II)、Cr(II)、Co(II)、Cu(II)、Mn(II)、Mg(II)、Ni(II)、Fe(II)、Ti(II)、V(II)、Cr(III)-X、Co(III)-X、Mn(III)-X、 Ni(III)-X、Fe(III)-X、Ca(II)、Ge(II)、Al(III)-X、Ti(III)-X、V(III)-X、Ge(IV)-(X)またはTi(IV)-(X)から選択され;
およびRは、独立して、水素、ハライド、ニトロ基、ニトリル基、イミン、アミン、エーテル基、シリル基、シリルエーテル基、スルホキシド基、スルホニル基、スルフィネート基もしくはアセチリド基または置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、脂環式基もしくはヘテロ脂環式基から選択され;
は、独立して、置換基を有してもよいアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレンまたはシクロアルキレンから選択され、この際、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレンおよびヘテロアルキニレンは、アリール、ヘテロアリール、脂環式またはヘテロ脂環式によって中断されてもよく(may optionally be interrupted by);
は、独立して、H、または置換を有してもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリールもしくはアルキルアリールから選択され;
がCでありかつEがO、SもしくはNHでありまたはEがNでありかつEがOであり;
、E、EおよびEは、N、NR、OおよびSから選択され、
【0088】
【化11】
【0089】
Xは、OC(O)R、OSO、OSOR、OSO(R、S(O)R、OR、ホスフィネート、ハライド、ニトレート、ヒドロキシル、カーボネート、アミノ、アミドまたは置換を有してもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリールもしくはヘテロアリールから選択され;
は、独立して、水素、または置換基を有してもよい脂肪族、ハロ脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、アルキルアリールまたはヘテロアリールから選択され;さらに
Gは、存在しないまたは独立して、ルイス塩基である中性もしくはアニオン性ドナーリガンドから選択される。
【0090】
基R及びRの存在(occurrence)はそれぞれは同じであってもまたは異なるものであってもよく、さらにR及びRは同じであってもまたは異なるものであってもよい。
【0091】
好ましくは、RおよびRは、独立して、水素、ハライド、アミノ、ニトロ、スルホキシド、スルホニル、スルフィネート、および置換基を有してもよいアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、シリル、シリルエーテル、アルコキシ、アリールオキシまたはアルキルチオから選択される。好ましくは、Rの存在(occurrence)はそれぞれは同じである。好ましくは、Rの存在(occurrence)はそれぞれは同じであり、水素である。
【0092】
の双方の存在は同じであってもよく、水素、ハライド、アミノ、ニトロ、スルホキシド、スルホニル、スルフィネート、シリル、シリルエーテルおよび置換基を有してもよいアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシまたはアルキルチオから選択されてもよい。例えば、Rの双方の存在は同じであってもよく、水素、ハライド、スルホキシド、および置換基を有してもよいアルキル、ヘテロアリール、シリル、アルキルチオまたはアルコキシから選択されてもよい。Rに関するオプション(双方とも同じであってもよい)としては、水素、メチル、t-ブチル、メトキシ、エトキシ、アルキルチオ、トリメチルシリルまたはトリエチルシリル等のトリアルキルシリル、臭化物、メタンスルホニル、またはピペリジニルがあり、例えば、Rの双方の存在は同じであってもよく、メチル、t-ブチルまたはトリアルキルシリルから選択されてもよい。
【0093】
好ましくは、Rの各存在は水素であり、各Rは、独立して、水素、ハライド、アミノ、ニトロ、スルホキシド、スルホニル、スルフィネート、および置換基を有してもよいアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、シリル、シリルエーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオから選択され、水素、C1-6アルキル(例えば、ハロアルキル)、アルコキシ、アリール、ハライド、ニトロ、スルホニル、シリル及びアルキルチオ、例えば、Bu、iPr、Me、OMe、H、ニトロ、SOMe、SiEt、SiMe、SMe、ハロゲンまたはフェニルなどがある。
【0094】
の各存在は同じであってもよく、Rの各存在は同じであってもよく、さらにRはRとは異なってもよいと理解されるであろう。
【0095】
基Rは、アリール基、ヘテロアリール基、脂環式基またはヘテロ脂環式基で中断されてもよい2置換の2価のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基もしくはヘテロアルキニル基であってもよい、または式(I)の触媒内で2個の窒素中心間で架橋基として作用する2置換のアリール基もしくはシクロアルキル基であってもよいと解されるであろう。ゆえに、Rがジメチルプロピレニル等のアルキレン基である場合には、R基は-CH-C(CH-CH-の構造を有する。したがって、上記したアルキル基、アリール基、シクロアルキル基等の定義はまたRについて列挙した2価のアルキレン基、アリーレン基、シクロアルキレン基などにそれぞれ関連し、必要であれば置換されてもよい。R3に関する具体的なオプションとしては、エチレニル、2,2-フルオロプロピレニル、2,2-ジメチルプロピレニル、プロピレニル、ブチレニル、フェニレニル、シクロヘキシレニルまたはビフェニレニルがある。R3がシクロヘキシレニルである際には、R3はラセミ、RR-またはSS-形態であってもよい。
【0096】
は、独立して、置換基を有するまたは非置換のアルキレンおよび置換基を有するまたは非置換のアリーレン、好ましくはプロピレニルや2,2-ジメチルプロピレニル等の置換基を有するまたは非置換のプロピレニル、ならびに置換基を有するまたは非置換のフェニレニルまたはビフェニレニルから選択されてもよい。好ましくは、Rの双方の存在は同じである。さらにより好ましくは、Rは、2,2-ジ(アルキル)プロピレニル、特に2,2-ジ(メチル)プロピレニル等の置換基を有するプロピレニルである。
【0097】
は、独立して、置換基を有するまたは非置換のアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレンもしくはヘテロアルキニレン、アリーレンまたはシクロアルキレンから選択されてもよい。好ましくは、Rは、置換基を有するまたは非置換のアルキレン、シクロアルキレン、アルケニレン、ヘテロアルキレンおよびアリーレンから選択される。より好ましくは、Rは、2,2-ジメチルプロピレニル、-CHCHCH-、-CHCH(CH)CH-、-CHC(CHCH-、フェニレン、-CHCH-、-CHCHCHCH-、-CHCHN(CH)CHCH-、1,4-シクロヘキサンジイルまたは-CHCHCH(C)-から選択される。さらにより好ましくは、Rは、2,2-ジメチルプロピレニル、-CHCHCH2-、-CHCH(CH)CH-、-CHC(CHCH-、-CHCHCH(C)-、-CHCHCHCH-から選択される。さらにより好ましくは、Rは、2,2-ジメチルプロピレニル、-CHC(CHCH-、CHCH(CH)CH及び-CHC(CCH-から選択される。
【0098】
最も好ましくは、Rは、2,2-ジ(アルキル)プロピレニル等の置換基を有するプロピレニルであり、より好ましくは、2,2-ジメチルプロピレニルである。
【0099】
上述したように、E、E、EおよびEは、それぞれ独立して、N、NR、OおよびSから選択される。
【0100】
【化12】
【0101】
好ましくは、各Rは、独立して、水素、および置換基を有してもよい脂肪族またはアリールから選択される。より好ましくは、各Rは、独立して、水素、および置換基を有してもよいアルキルまたはアリールから選択される。さらにより好ましくは、各Rは同じであり、水素、および置換基を有してもよいアルキルまたはアリールから選択される。具体的なR基としては、水素、メチル、エチル、フェニル及びトリフルオロメチルがあり、好ましくは水素、メチルまたはトリフルオロメチルである。さらにより好ましくは各Rは水素である。
【0102】
好ましくは、Eの双方の存在はCであり、かつEの双方の存在は同じであり、O、SまたはNHから選択される。さらにより好ましくは、Eの双方の存在はCでありかつEの双方の存在はOである。
【0103】
式(I)の触媒の大環状リガンドは対称であっても、または非対称であってもよいと、当業者は理解するであろう。
【0104】
大環状リガンドが対称である場合には、E、E、EおよびEの各存在は同じであると解されるであろう。例えば、E、E、E及びEの各存在はNRであってもよい(かつ各Rは同じであってもよい)。E、E、E及びEは同じであり、NHであってもよいと理解されるであろう。換言すると、式(I)の触媒は下記構造を有してもよい。
【0105】
【化13】
【0106】
大環状リガンドが対称である場合には、(R、R、RおよびRは必ずしも相互に同じである必要はないが)Rの各存在は同じであってもよく、Rの各存在は同じであってもよく、Rの各存在は同じであってもよく、Rの各存在は同じであってもよく、Eの各存在は同じであってもよく、さらにEの各存在は同じであってもよく、さらにE、E、EおよびEは同じであると解されるであろう。
【0107】
例えば、R、及びRの各存在は水素であってもよく、E、E、E及びEの各存在はNRであり、さらに各Rは水素またはアルキルであり、Rの各存在は置換基を有するまたは非置換のアルキレン、シクロアルキレン、アルケニレン、ヘテロアルキレン及びアリーレンであってもよく、Rの各存在は水素、ハロゲン、スルホキシドまたは置換基を有するもしくは非置換のアルキル、ヘテロアリール、シリル、アルキルチオまたはアルコキシから選択されてもよく、Eの双方の存在はCであってもよく、およびEの双方の存在はOであってもよい。
【0108】
式(I)の触媒のリガンドが非対称である場合には、基R、R、R、R、R、EまたはEの少なくとも1つの存在が同じ基の残りの存在と異なっていてもよい、またはE、E、E及びEの少なくとも1つの存在がE、E、E及びEの残りの存在と異なってもよいと解されるであろう。例えば、Rの各存在が異なってもよい、またはRの各存在が異なってもよい。
【0109】
また、E及びEが同じであってもよく、E及びEが同じであってもよいが、E及びEはE及びEとは異なると解されるであろう。また、E及びEは同じであってもよく、E及びEは同じであってもよいが、E及びEはE及びEとは異なると解されるであろう。または、E、E、E及びEの一つの存在がE、E、E及びEの残りの存在とは異なる(さらに、残りの3つの存在が同じである)。
【0110】
例えば、E、E及びEはRがHである-NRであってよく、さらにRはRがアルキルであるNRであってよい。さらに、E及びEはRがHであるNRであってもよく、さらにE及びEはRがアルキルであるNRであってもよく、またはE及びEはRがHであるNRであってもよく、さらにE及びEはRがアルキルであるNRであってもよい。ゆえに、好ましくは、各E、E、E及びEはNRであり、この際、Rの少なくとも1つの存在はRの残りの存在とは異なると解されるであろう。
【0111】
(対称および非対称の)式(I)の触媒に関し、各Xは、独立して、OC(O)R、OSO、OS(O)R、OSO(R、S(O)R、OR、ホスフィネート、ハライド、ニトロ、ヒドロキシル、カーボネート、アミノ、ニトレート、アミドおよび置換基を有してもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族(例えば、シリル)、脂環式、ヘテロ脂環式、アリールまたはヘテロアリールから選択される。好ましくは、各Xは、独立して、OC(O)R、OSO、OS(O)R、OSO(R、S(O)R、OR、ハライド、ニトレート、ヒドロキシル、カーボネート、アミノ、ニトロ、アミド、アルキル(例えば、分岐鎖アルキル)、ヘテロアルキル、(例えば、シリル)、アリールまたはヘテロアリールから選択される。さらにより好ましくは、各Xは、独立して、OC(O)R、OR、ハライド、カーボネート、アミノ、ニトロ、アルキル、アリール、ヘテロアリール、ホスフィネートまたはOSOから選択される。Xが脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリールまたはヘテロアリールである際の好ましい任意の置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、シアノ、アミノ、または置換基を有するもしくは非置換の脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリールまたはヘテロアリールがある。各Xは、同じであってもまたは異なるものであってもよく、好ましくは、各Xは同じである。また、Xは2つの金属中心間の架橋を形成してもよいと解されるであろう。
【0112】
は、独立して、水素、または置換基を有してもよい脂肪族、ハロ脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、アルキルアリール、もしくはヘテロアリールである。好ましくは、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、またはアルキルアリールである。Rの好ましい任意の置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、アミノ、アルコキシ、アルキルチオ、または置換基を有するもしくは非置換の脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリールまたはヘテロアリール(例えば、置換基を有してもよいアルキル、アリール、またはヘテロアリール)がある。
【0113】
Xの具体的なオプションとしては、OAc、OC(O)CF、ハロゲン、OSO(CH、Et、Me、OMe、OiPr、OtBu、Cl、Br、I、F、N(iPr)またはN(SiMe、OPh、OBn、サリチレート(salicylate)、ジオクチル ホスフィネートなどがある。
【0114】
好ましくは、各Xは同じであり、OC(O)R、OR、ハライド、カーボネート、アミノ、ニトロ、アルキル、アリール、ヘテロアリール、ホスフィネートまたはOSOから選択され、Rはアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはアルキルアリールである。より好ましくは、各Xは同じであり、OC(O)R、OR、ハライド、アルキル、アリール、ヘテロアリール、ホスフィネートまたはOSOである。さらにより好ましくは、各Xは同じであり、OC(O)Rである。さらにより好ましくは、各Xは同じであり、OAc、OCCF、またはOC(CHCyから選択される。最も好ましくは、各Xは同じであり、OAcである。
【0115】
好ましくは、各Rは同じであり、置換基を有してもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはアルキルアリールから選択される。より好ましくは、各Rは同じであり、置換基を有してもよいアルキル、アルケニル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはアルキルアリールである。さらにより好ましくは、各Rは同じであり、置換基を有してもよいアルキル、アルケニル、ヘテロアルキル;またはシクロアルキルである。より好ましくは、Rは置換基を有してもよいアルキル、ヘテロアルキルまたはシクロアルキルである。最も好ましくは、Rは置換基を有してもよいアルキルである。
【0116】
Xに関する好ましい定義及びRに関する好ましい定義は組み合わされてもよいと解されるであろう。例えば、各Xは独立してOC(O)R、OSO、OS(O)R、OSO(R、S(O)R、OR、ハライド、ニトレート、ヒドロキシル、カーボネート、アミノ、ニトロ、アミド、アルキル(例えば、分岐鎖アルキル)、ヘテロアルキル、(例えば、シリル)、アリールまたはヘテロアリールであってもよい、例えば、それぞれが独立して、OC(O)R、OR、ハライド、カーボネート、アミノ、ニトロ、アルキル、アリール、ヘテロアリール、ホスフィネートまたはOSOであってもよく、Rが置換基を有してもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、またはアルキルアリールであってもよい。
【0117】
上述したように、MおよびMは、独立して、Zn(II)、Cr(III)-X、Cr(II)、Co(III)-X、Co(II)、Cu(II)、Mn(III)-X、Mn(II)、Mg(II)、Ni(II)、Ni(III)-X、Fe(II)、Fe(III)-X、Ca(II)、Ge(II)、Ti(II)、Al(III)-X、Ti(III)-X、V(II)、V(III)-X、Ge(IV)-(X)またはTi(IV)-(X)のいずれかから選択される。
【0118】
好ましくは、MおよびMの少なくとも一方は、Zn(II)、Cr(III)-X、Co(II)、Mn(II)、Mg(II)、Ni(II)、Fe(II)、およびFe(III)-Xから選択され、より好ましくは、MおよびMの少なくとも一方は、Mg(II)、Zn(II)、およびNi(II)から選択され、例えば、MおよびMの少なくとも一方は、Ni(II)である。
【0119】
およびMは同じであってもまたは異なるものであってもよいと解されるであろう。例えば、Mおよび/またはMは、Zn(II)、Cr(III)-X、Co(II)、Mn(II)、Mg(II)、Ni(II)、Fe(II)、およびFe(III)-Xから選択されてもよく、より好ましくは、Mおよび/またはMは、Mg(II)、Zn(II)及びNi(II)から選択され、例えば、Mおよび/またはMはNi(II)である。
【0120】
及びMの具体的な組み合わせとしては、Mg(II)及びMg(II)、Zn(II)及びZn(II)、Ni(II)及びNi(II)、Mg(II)及びZn(II)、Mg(II)及びNi(II)、Zn(II)及びCo(II)、Co(II)及びCo(III)、Fe(III)及びFe(III)、Zn(II)及びFe(II)、またはZn(II)及びNi(II)がある。
【0121】
またはMの一方がCr(III)、Co(III)、Mn(III)、Ni(III)、Fe(III)、Al(III)、Ti(III)またはV(III)である際には、式(I)の触媒は金属中心に配位する(co-ordinated to)別のX基(Xは上記と同じ定義である)を含むと解されるであろう。また、MまたはMの一方がGe(IV)またはTi(IV)である場合には、式(I)の触媒は金属中心に配位する(co-ordinated to)別の2個のX基(Xは上記と同じ定義である)を含むと解されるであろう。特定の実施形態では、MまたはMの一方がGe(IV)-(X)またはTi(IV)-(X)である場合には、双方のGは存在しなくてもよい。
【0122】
Gが存在しない場合には、孤立電子対を提供できる基である(即ち、ルイス塩基)。特定の実施形態では、Gは窒素含有ルイス塩基である。各Gは、中性であってもまたは負に帯電していてもよい。Gが負に帯電している場合には、1以上の正のカウンターイオンが錯体のチャージのバランスをとるために必要であろう。適当な正のカウンターイオンとしては、1価金属イオンの基(Na、K、etc)、2価金属イオンの基(Mg2+、Ca2+等)、イミダゾリウムイオン、正に帯電した置換基を有してもよいヘテロアリール基、ヘテロ脂肪族基またはヘテロ脂環式基、アンモニウムイオン(即ち、N(R12 )、イミニウムイオン(即ち、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムイオン等の、(R12C=N(R12 )またはホスホニウムイオン(P(R12 )(この際、各R12は、独立して、水素または置換基を有してもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリールまたはヘテロアリールから選択される)がある。具体的なカウンターイオンとしては、[H-B](この際、Bは、トリエチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ-7-ン及び7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デセ-5-ンから選択される)がある。
【0123】
Gは、好ましくは、独立して、置換基を有してもよいヘテロ脂肪族基、置換基を有してもよいヘテロ脂環式基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、ハライド、ヒドロキシド、ヒドライド、カルボキシレート及び水から選択される。より好ましくは、Gは、独立して、水、アルコール(例えば、メタノール)、置換基を有するまたは非置換のヘテロアリール(イミダゾール、メチルイミダゾール(例えば、N-メチルイミダゾール)、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、ピロール、ピラゾール等)、エーテル(ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、環状エーテル等)、チオエーテル、カルベン、ホスフィン、ホスフィンオキシド、置換基を有するまたは非置換のヘテロ脂環式(モルホリン、ピペリジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン等)、アミン、アルキルアミントリメチルアミン、トリエチルアミン等)、アセトニトリル、エステル(酢酸エチル等)、アセトアミド(ジメチルアセトアミド等)、スルホキシド(ジメチルスルホキシド等)、カルボキシレート、ヒドロキシド、ヒドライド、ハライド、ニトレート、スルホネートなどから選択される。実施形態によっては、Gの一方または双方が、独立して、置換基を有してもよいヘテロアリール、置換基を有してもよいヘテロ脂肪族、置換基を有してもよいヘテロ脂環式、ハライド、ヒドロキシド、ヒドライド、エーテル、チオエーテル、カルベン、ホスフィン、ホスフィンオキシド、アミン、アルキルアミン、アセトニトリル、エステル、アセトアミド、スルホキシド、カルボキシレート、ニトレートまたはスルホネートから選択される。特定の実施形態では、Gは、ハライド;ヒドロキシド;ヒドライド;水;アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロまたはニトリルで置換されてもよいヘテロアリール基、ヘテロ脂環式基またはカルボキシレート基であってもよい。好ましい実施形態では、Gは、独立して、ハライド;水;アルキル(例えば、メチル、エチル等)、アルケニル、アルキニル、アルコキシ(好ましくは、メトキシ)、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロまたはニトリルで置換されてもよいヘテロアリールである。実施形態によっては、Gの一方または双方が負に帯電している(例えば、ハライド)。さらなる実施形態では、Gの一方または双方が置換基を有してもよいヘテロアリールである。具体的なG基としては、塩化物、臭化物、ピリジン、メチルイミダゾール(例えば、N-メチルイミダゾール)およびジメチルアミノピリジン(例えば、4-メチルアミノピリジン)がある。
【0124】
G基が存在する際には、G基は式(I)に示される単一のM金属中心と結合していてもよい、またはG基は、以下の式(IIa)に示されるように、双方の金属中心と結合して、2個の金属中心間に架橋を形成してもよいと解されるであろう。
【0125】
【化14】
【0126】
ただし、R、R、R、R、R、M、M、G、X、EおよびEは、式(I)および式(II)の定義と同様である。
【0127】
固体状態では、第一の態様の触媒は、水、またはアルコール(例えば、メタノールまたはエタノール)等の溶媒分子と結合してもよいことを、当業者は理解するであろう。溶媒分子は、第一の態様の触媒の分子に対して1:1未満の割合(即ち、0.2:1、0.25:1、0.5:1)で、第一の態様の触媒の分子に対して1:1の割合で、または第一の態様の触媒の分子に対して、1:1を超える割合で、存在してもよいと解されるであろう。
【0128】
固体状態では、第一の態様の触媒は凝集体を形成してもよいことを、当業者は理解するであろう。例えば、第一の態様の触媒は、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、またはより高次の凝集体であってもよい。
【0129】
具体的な式(I)の触媒としては下記がある。
【0130】
【化15】
【0131】
【化16】
【0132】
【化17】
【0133】
ただし、M、M、GおよびXは式(I)と同様の定義であり、G基の一方または双方が存在しなくてもよいと解されるであろう。
【0134】
例えば、M及びMの少なくとも一方は、Zn(II)、Cr(III)-X、Co(II)、Mn(II)、Mg(II)、Ni(II)、Fe(II)、及びFe(III)-Xから選択されてもよく、例えば、M及びMの少なくとも一方は、Mg(II)、Zn(II)及びNi(II)から選択されてもよく、例えば、M及びMの少なくとも一方はNi(II)であってもよい。
【0135】
上述したように、M及びMは、同じであってもまたは異なるものであってもよい。例えば、Mおよび/またはMは、Zn(II)、Cr(III)-X、Co(II)、Mn(II)、Mg(II)、Ni(II)、Fe(II)、及びFe(III)-Xから選択されてもよく、好ましくは、Mおよび/またはMは、Mg(II)、Zn(II)及びNi(II)から選択され、例えば、Mおよび/またはMはNi(II)である。M及びMの具体的な組み合わせとしては、Mg(II)/Mg(II)、Zn(II)/Zn(II)、Ni(II)/Ni(II)、Mg(II)/Zn(II)、Mg(II)/Ni(II)、Zn(II)/Ni(II)がある。
【0136】
例えば、各Xは、独立して、OC(O)R、OSO、OS(O)R、OSO(R、S(O)R、OR、ハライド、ニトレート、ヒドロキシル、カーボネート、アミノ、ニトロ、アミド、アルキル(例えば、分岐鎖アルキル)、ヘテロアルキル(例えば、シリル)、アリールまたはヘテロアリールであってもよく、例えば、それぞれは、独立して、OC(O)R、OR、ハライド、カーボネート、アミノ、ニトロ、アルキル、アリール、ヘテロアリール、ホスフィネートまたはOSOであってもよい。例えば、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、またはアルキルアリールであってもよい。
【0137】
例えば、いずれかのGが存在する場合には、Gは、独立して、ハライド;水;アルキル(例えば、メチル、エチル等)、アルケニル、アルキニル、アルコキシ(好ましくは、メトキシ)、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロまたはニトリルで置換されてもよいヘテロアリールから選択され、例えば、Gの一方または双方(存在する場合には)は、塩化物、臭化物、ピリジン、メチルイミダゾール(例えば、N-メチルイミダゾール)及びジメチルアミノピリジン(例えば、4-メチルアミノ基ピリジン)であってもよい。
【0138】
上記定義は組み合わせてもよいと、当業者は理解するであろう。例えば、上記触媒では、MおよびMは、同じであってもまたは異なるものであってもよく、Zn(II)、Cr(III)-X、Co(II)、Mn(II)、Mg(II)、Ni(II)、Fe(II)、及びFe(III)-Xから選択されてもよい;各Xは、独立して、OC(O)R、OSO、OS(O)R、OSO(R、S(O)R、OR、ハライド、ニトレート、ヒドロキシル、カーボネート、アミノ、ニトロ、アミド、アルキル(例えば、分岐鎖アルキル)、ヘテロアルキル(例えば、シリル)、アリールまたはヘテロアリールであってもよく、例えば、それぞれが、独立して、OC(O)R、OR、ハライド、カーボネート、アミノ、ニトロ、アルキル、アリール、ヘテロアリール、ホスフィネートまたはOSOであってもよい;Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、またはアルキルアリールであってもよい;Gは、存在しなくてもよいまたは存在する場合には、独立して、ハライド;水;アルキル(例えば、メチル、エチル等)、アルケニル、アルキニル、アルコキシ(好ましくは、メトキシ)、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロまたはニトリルで置換されてもよいヘテロアリールから選択されてもよい。
【0139】
ゆえに、上記式(I)の具体的な触媒は、以下に制限されないが、下記触媒を包含すると、当業者は理解するであろう。
【0140】
【化18】
【0141】
【化19】
【0142】
【化20】
【0143】
上記錯体のいずれにおいて、「L」によって規定される1つのリガンドが異なる「L」によって規定される他のリガンドに置換されてもよいことを、当業者は理解するであろう。例えば、Lに言及する際の錯体では、このリガンドはL~L22によって規定されるリガンドに置換されてもよい。
【0144】
二重金属シアン化物(DMC)触媒
DMC触媒は、少なくとも2個の金属中心及びシアナイドリガンドを有する複雑な化合物である。DMC触媒は、(例えば、非化学量論量で)有機錯化剤、水および/または金属塩をさらに含んでもよい。
【0145】
本発明の方法で使用できるDMC触媒の例としては、米国特許第3427256号、米国特許第5536883号、米国特許第6291388号、米国特許第6486361号、米国特許第6608231号、US7008900号、米国特許第5482908号、米国特許第5780584号、米国特許第5158922号、米国特許第5693584号、米国特許第7811958号、米国特許第6835687号、米国特許第6699961号、米国特許第6716788号、米国特許第6977236号、米国特許第7968754号、米国特許第7034103号、米国特許第4826953号、米国特許第4500704号、米国特許第7977501号、EP-A-1568414号、EP-A-1529566v、及びWO 2015/022290号に記載されるものがあり、これらの全内容は参考で引用される。
【0146】
本発明で使用できるDMC触媒は、有機錯化剤の存在下で金属塩の溶液(水溶液等)を金属シアン化物塩の溶液(水溶液等)で処理することによって製造されてもよい。適当な金属塩としては、式:M’(X’)の化合物があり、この際、M’は、Zn(II)、Fe(II)、Ni(II)、Mn(II)、Co(II)、Sn(II)、Pb(II)、Fe(III)、Mo(IV)、Mo(VI)、Al(III)、V(V)、V(VI)、Sr(II)、W(IV)、W(VI)、Cu(II)、及びCr(III)から選択され、およびM’は、好ましくは、Zn(II)、Fe(II)、Co(II) 及びNi(II)から選択され、さらにより好ましくは、M’はZn(II)である。X’は、ハライド、ヒドロキシド、スルフェート、カーボネート、シアナイド、オキサレート、チオシアネート、イソシアネート、イソチオシアネート、カルボキシレート及びニトレートから選択されるアニオンであり、好ましくは、X’はハライドである。pは、1以上の整数であり、pを乗じたアニオンのチャージがM’の価数を満たす。適当な金属塩の例としては、塩化亜鉛、臭化亜鉛、酢酸亜鉛、亜鉛アセトニルアセトネート(zinc acetonylacetonate)、安息香酸亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸鉄(II)、臭化鉄(II)、塩化コバルト(II)、チオシアン酸コバルト(II)、ギ酸ニッケル(II)、硝酸ニッケル(II)、およびこれらの混合物がある。
【0147】
適当な金属シアン化物塩としては、式:(Y)q[M”(CN)(A)]の化合物があり、この際、M”は、Fe(II)、Fe(III)、Co(II)、Co(III)、Cr(II)、Cr(III)、Mn(II)、Mn(III)、Ir(III)、Ni(II)、Rh(III)、Ru(II)、V(IV)、及びV(V)から選択され、好ましくは、M”は、Co(II)、Co(III)、Fe(II)、Fe(III)、Cr(III)、Ir(III)及びNi(II)から選択され、より好ましくは、M”は、Co(II)及びCo(III)から選択される。Yは、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオン(K等)であり、Aは、ハライド、ヒドロキシド、スルフェート、シアナイドオキサレート、チオシアネート、イソシアネート、イソチオシアネート、カルボキシレート及びニトレートから選択されるアニオンである。q及びbは、1以上の整数であり、好ましくは、bは4または6である。cは、0または1以上の整数であってもよい。q、bおよびcをそれぞれ乗じたイオンY、CNおよびAのチャージの合計(例えば、Y×q+CN×b+A×c)はM”の価数を満たす。適当な金属シアン化物塩の例としては、ヘキサシアノコバルト(III)酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、ヘキサシアノコバルト(III)酸カルシウム、ヘキサシアノコバルト(III)酸リチウム、およびこれらの混合物がある。
【0148】
適当な錯化剤としては、ジメトキシエタン、tert-ブチルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジグリム、トリグリム、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール等の、エーテル、ケトン、エステル、アミド、アルコール、尿素などがある。
【0149】
1つの一般的な調製では、塩化亜鉛の水溶液(過剰量)を、ヘキサシアノコバルト酸カリウムの水溶液と混合し、さらに有機錯化剤(ジメトキシエタン等)を得られるスラリーに添加する。触媒を濾過および錯化剤の水溶液(例えば、ジメトキシエタン水溶液)で洗った後、活性触媒が得られる。
【0150】
例えば、DMC触媒は下記を有してもよい。
【0151】
【化21】
【0152】
ただし、M’及びM”は上記と同様の定義であり、d、e、f及びgは整数であり、DMC触媒が電気的に中性であるように選択される。好ましくは、dは3である。好ましくは、eは1である。好ましくは、fは6である。好ましくは、gは2である。好ましくは、M’は、Zn(II)、Fe(II)、Co(II)及びNi(II)から選択され、より好ましくは、M’はZn(II)である。好ましくは、M”は、Co(III)、Fe(III)、Cr(III)及びIr(III)から選択され、より好ましくは、M”はCo(III)である。
【0153】
これらの好ましい態様を組み合わせてもよいと解されるであろう。例えば、dが3であり、eが1であり、fが6であり、かつgが2であり、M’がZn(II)であり、かつM”がCo(III)である。
【0154】
上記式の適当なDMC触媒としては、ヘキサシアノコバルト(III)酸亜鉛、ヘキサシアノ鉄(III)酸亜鉛、ヘキサシアノ鉄(II)酸ニッケル、及びヘキサシアノコバルト(III)酸コバルトがある。
【0155】
DMC触媒の分野では多くの開発がなされており、DMC触媒が、上記式に加えて、触媒の活性を促進する添加剤をさらに含んでもよいことを、当業者は理解するであろう。ゆえに、上記式はDMC触媒の「コア」を形成するものの、DMC触媒は、化学量論量のまたは非化学量論量の1以上の別の成分(有機錯化剤、金属塩、および/または水等)をさらに含んでもよい。
【0156】
例えば、DMC触媒は、下記式を有していてもよい。
【0157】
【化22】
【0158】
ただし、M’、M”、d、e、fおよびgは、上記と同様の定義である。
【0159】
M”’は、M’および/またはM”であってもよい。X”は、ハライド、ヒドロキシド、スルフェート、カーボネート、シアナイド、オキサレート、チオシアネート、イソシアネート、イソチオシアネート、カルボキシレート及びニトレートから選択されるアニオンであり、好ましくは、X’はハライドである。iは1以上の整数であり、iを乗じたアニオンX”のチャージがM”’の価数を満たす。
【0160】
は錯化剤であり、上記したのと同様の定義であってもよい。例えば、Rは、ジメトキシエタン、tert-ブチルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジグリム、トリグリム、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール等の、エーテル、ケトン、エステル、アミド、アルコール(例えば、C1-6アルコール)、尿素などであってもよく、例えば、Rはtert-ブチルアルコールであってもよい。
【0161】
水、錯化剤および/または金属塩がDMC触媒中に存在しない場合には、h、jおよび/またはkはそれぞれ0であることは理解されるであろう。水、錯化剤および/または金属塩が存在する場合には、h、jおよび/またはkは、正の数であり、例えば、0~20であってもよい。例えば、hは、0.1~4であってもよい。jは、0.1~6であってもよい。kは、0~20、例えば、0.1~5等の、0.1~10であってもよい。
【0162】
上述したように、DMC触媒は複雑な構造物であり、ゆえに、別の成分を含む上記式は制限されないものである。代わりに、この定義は本発明で使用できるDMC触媒を限定するものではない(not exhaustive of)ことを、当業者は理解するであろう。
【0163】
具体的なDMC触媒は、式:Zn[Co(CN)・hZnCl・0.5HO・2[(CHCOH]を有する。
【0164】
出発化合物(starter compound)
本発明の方法に使用されてもよい出発化合物は、ヒドロキシル基(-OH)、チオール(-SH)、少なくとも1個のN-結合を有するアミン(-NHR’)、少なくとも1個のP-OH結合を有する基(例えば、-PR’(O)OH、PR’(O)(OH)または-P(O)(OR’)(OH))、またはカルボン酸基(-C(O)OH)から選択される少なくとも2個の基を有する。
【0165】
ゆえに、本発明の方法に使用できる出発化合物は、下記式(III)を有していてもよい。
【0166】
【化23】
【0167】
Zは、2以上の-R基が結合してなる基でありえる。ゆえに、Zは、置換基を有してもよいアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、ヘテロシクロアルキレン、ヘテロシクロアルケニレン、アリーレン、ヘテロアリーレンから選択されてもよい、またはZは、これらの基の組み合わせであってもよく、例えば、Zは、アルキルアリーレン基、ヘテロアルキルアリーレン基、ヘテロアルキルヘテロアリーレン基またはアルキルヘテロアリーレン基であってもよい。好ましくは、Zは、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンである。
【0168】
aは、少なくとも2の整数であり、好ましくは、aは2~8の整数であり、好ましくは、aは2~6の整数であると解されるであろう。
【0169】
各Rは、-OH、-NHR’、-SH、-C(O)OH、-P(O)(OR’)(OH)、-PR’(O)(OH)または-PR’(O)OHであってもよく、好ましくは、Rは、-OH、-NHR’または-C(O)OHから選択され、より好ましくは、各Rは、-OH、-C(O)OHまたはこれらの組み合わせ(例えば、各Rは-OH)である。
【0170】
R’は、H、または置換基を有してもよいアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルもしくはヘテロシクロアルキルであってもよく、好ましくは、R’はHまたは置換基を有してもよいアルキルである。
【0171】
上記態様を組み合わせてもよいと、解されるであろう。例えば、aは2~8であってもよく、各Rは-OH、-C(O)OHまたはこれらの組み合わせであってもよく、さらにZはアルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンから選択されてもよい。
【0172】
具体的な出発化合物としては、1,2-エタンジオール(エチレングリコール)、1-2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,2-ブタンジオール、1-3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-ジフェノール、1,3-ジフェノール、1,4-ジフェノール、ネオペンチルグリコール、カテコール、シクロヘキセンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、PPG425、PPG725、PPG1000等の約1500g/mol以下のMnを有するポリプロピレングリコール(PPG)もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの、ジオール、グリセロール、ベンゼントリオール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、トリス(メチルアルコール)プロパン、トリス(メチルアルコール)エタン、トリス(メチルアルコール)ニトロプロパン、トリメチロールプロパン、ポリプロピレンオキサイドトリオール及びポリエステルトリオールなどの、トリオール、カリックス[4]アレーン、2,2-ビス(メチルアルコール)-1,3-プロパンジオール、エリトリトール、ペンタエリトリトールもしくは4個の-OH基を有するポリアルキレングリコール(PEGもしくはPPG)などの、テトラオール、ソルビトールもしくは5個以上の-OH基を有するポリアルキレングリコール(PEGもしくはPPG)などの、ポリオール、またはエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジフェニルジエタノールアミンを含む混合官能基を有する化合物がある。
【0173】
例えば、出発化合物は、1,2-エタンジオール(エチレングリコール)、1-2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,2-ブタンジオール、1-3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-ジフェノール、1,3-ジフェノール、1,4-ジフェノール、ネオペンチルグリコール、カテコール、シクロヘキセンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ポリ(カプロラクトン)ジオール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、PPG425、PPG725、PPG1000等の約1500g/mol以下のMnを有するポリプロピレングリコール(PPG)またはポリエチレングリコール(PEG)などのジオールであってもよい。出発化合物は1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,12-ドデカンジオール、ポリ(カプロラクトン)ジオール、PPG425、PPG725、またはPPG1000であってもよいと解されるであろう。
【0174】
さらに、具体的な出発化合物としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の二酸または乳酸、グリコール酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、4-ヒドロキシ酪酸、5-ヒドロキシペンタン酸等の混合官能基を有する他の化合物がある。
【0175】
反応条件
本発明の方法は、約1bar~約60bar 二酸化炭素、例えば、約1bar~約30bar 二酸化炭素、例えば、約1~約15bar 二酸化炭素等の、約1~約20barの圧力で行ってもよい。
【0176】
本発明の方法は、工業で使用される現行のポリエーテルポリオール装置の制限内である圧力(例えば、10bar以下)でポリカーボネートエーテルポリオールを調製することができる。したがって、本発明の方法は、約1bar~約10barの圧力で行うことができ、例えば、反応を、約5bar以下の二酸化炭素の圧力で行うことができる。さらに、これらの条件下で、本発明の方法は、様々な量のカーボネート結合を有するポリカーボネートエーテルポリオールを製造することが可能であり、高含有量のカーボネート結合を有するポリオールを製造してもよい。
【0177】
本発明の方法は溶媒の存在下で行ってもよいが、反応は溶媒の不存在下で行ってもよいと解されるであろう。溶媒が存在する際には、溶媒は、トルエン、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジオキサン、ジクロロベンゼン、塩化メチレン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、アセトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸n-ブチル、テトラヒドロフラン(THF)などであってもよい。
【0178】
本方法に使用されるエポキシドは、エポキシド部分を含むものであればいずれでもよい。具体的なエポキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド及びシクロヘキセンオキシドがある。
【0179】
エポキシドは、二酸化炭素との反応前に(例えば、水素化カルシウムによるなどの、蒸留によって)精製されてもよい。例えば、エポキシドを蒸留した後、触媒を含む反応混合物に添加してもよい。
【0180】
本方法は、約0℃~約250℃、例えば、約40℃~約140℃、例えば、約50℃~約110℃、約60℃~約100℃など、例えば、約70℃~約100℃の温度で行われてもよい。本方法の期間は、約168時間以下、約1分~約24時間等、例えば、約5分~約12時間、例えば、約1~約6時間であってもよい。
【0181】
本発明の方法は、低触媒ローディング量(catalytic loading)で行われてもよい。例えば、式(I)の触媒の触媒ローディング量は、約1:1,000~300,000の[式(I)の触媒]:[エポキシド]、約1:1,000~100,000の[式(I)の触媒]:[エポキシド]など、例えば、約1:10000~50,000の[式(I)の触媒]:[エポキシド]の範囲、例えば、約1:10,000の[式(I)の触媒]:[エポキシド]の範囲であってもよい。上記割合はモル比である。
【0182】
DMC触媒に対する式(I)の触媒の割合は、約300:1~約0.1:1の範囲、例えば、約120:1~約0.25:1、約40:1~約0.5:1など、例えば、約30:1~約0.75:1、約20:1~約1:1など、例えば、約10:1~約2:1、例えば、約5:1~約3:1であってもよい。上記割合は質量比である。
【0183】
出発化合物は、式(I)の触媒に対して、約200:1~約1:1、例えば、約175:1~約5:1、約150:1~約10:1など、例えば、約125:1~約20:1、例えば、約50:1~約20:1の量で存在してもよい。上記割合はモル比である。
【0184】
出発化合物を(例えば、分子篩で)予め乾燥して、湿気を除去してもよい。上記反応条件を組み合わせてもよいと理解されるであろう。例えば、反応を、20bar以下(例えば、10bar以下)でかつ約50℃~約130℃、例えば、約50℃~約110℃、約60℃~約100℃など、例えば、約70℃~約100℃の温度で行ってもよい。
【0185】
本方法は、バッチ反応、半連続反応、または連続反応であってもよい。
【0186】
ポリオール
発明の方法は、例えば、ポリウレタンを調製するのに使用できる、ポリカーボネートエーテルポリオールを調製することが可能である。
【0187】
本発明の方法は、エーテル結合及びカーボネート結合の量を制御できるポリカーボネートエーテルポリオールを製造することが可能である。ゆえに、本発明は、n個のエーテル結合及びm個のカーボネート結合を有し、この際、n及びmは整数であり、m/(n+m)は0を超え1未満であるポリカーボネートエーテルポリオールを提供する。
【0188】
例えば、本発明の方法は、広範なm/(n+m)値を有するポリカーボネートエーテルポリオールを調製することが可能である。m/(n+m)は、約0.05、約0.10、約0.15、約0.20、約0.25、約0.25、約0.30、約0.35、約0.40、約0.45、約0.50、約0.55、約0.60、約0.65、約0.70、約0.75、約0.80、約0.85、約0.90、約0.95、または上記特定の値から導き出されるいずれかの範囲内であってもよいと、理解されるであろう。例えば、m/(n+m)は、約0.05~約0.95、約0.10~約0.90、約0.15~約0.85、約0.20~約0.80、または約0.25~約0.75などであってもよい。
【0189】
ゆえに、本発明の方法により、カーボネート結合の割合の高いポリカーボネートエーテルポリオールを調製することが可能であり、例えば、m/(n+m)は、約0.50超、約0.55を超え約0.95未満など、例えば、約0.65~約0.90、例えば、約0.75~約0.90であってもよい。本発明の方法は、緩やかな条件、例えば、約20bar以下、10bar以下等の圧力下で、m/(n+m)の割合の高いポリオールを調製することが可能である。
【0190】
例えば、本発明の方法によって製造されるポリカーボネートエーテルポリオールは、下記式(IV)を有してもいてもよい。
【0191】
【化24】
【0192】
ZおよびZ’が何であるかは出発化合物の性質に依存し、さらにRe1およびRe2が何であるかはポリカーボネートエーテルポリオールを調製するのに使用されるエポキシドの性質に依存すると解されるであろう。mおよびnは、ポリカーボネートエーテルポリオール内のカーボネート結合及びエーテル結合の量を規定する。
【0193】
式(IV)のポリマーにおいて、骨格において隣接するエポキシドモノマー単位は、head-to-tail結合、head-to-head結合またはtail-to-tail結合であってもよいことは、当業者は理解するであろう。
【0194】
また、式(IV)はカーボネート結合及びエーテル結合が「a」で規定される各部分での2つの異なる「ブロック」中に存在することは必要としないが、かわりにカーボネート及びエーテル繰り返し単位がポリマー骨格に沿って統計的に分布していてもよい、またはカーボネート結合及びエーテル結合が2つの異なるブロックに存在しないように配置されてもよいと解されるであろう。
【0195】
ゆえに、本発明の方法によって調製されるポリカーボネートエーテルポリオール(例えば、式(IV)のポリマー)は、ランダムコポリマー、統計コポリマー(statistical copolymer)、交互コポリマー、または周期コポリマー(periodic copolymer)と称されるものであってもよい。
【0196】
ポリマー中に導入される二酸化炭素のwt%はポリマー骨格内のカーボネート結合の量を決定するのに正確に使用することはできないと、当業者は理解するであろう。例えば、同じ二酸化炭素wt%を取り込んだ2つのポリマーの、エーテル結合に対するカーボネート結合の割合が非常に異なる。これは、二酸化炭素の「取り込み(incorporation)wt%」が出発化合物の長さや性質を考慮していないためである。例えば、1つのポリマー(Mn 2000g/mol)を100g/molのモル質量を有する出発化合物を用いて調製し、他のポリマー(Mn 2000g/mol)を500g/molのモル質量を有する出発化合物を用いて調製すると、得られるポリマーは双方とも、同じm/nの割合を有するが、全ポリマー分子量(Mn)での出発化合物の質量の割合が異なるため、ポリマー内の二酸化炭素wt%は異なるであろう。例えば、m/(m+n)が0.5である場合には、上記の2つのポリオールは、それぞれ、26.1wt%及び20.6wt%の二酸化炭素含有量を有するであろう。
【0197】
上述したように、本発明の方法は、プロピレンオキシドを使用する場合には、約43wt%以下の二酸化炭素の取り込みに相当する、広範なエーテル結合に対するカーボネート結合の割合を有する(例えば、m/(n+m)が0を超えて1未満でありえる)ポリオールを調製することが可能である。従来報告されてきたDMC触媒が通常エーテル結合に対するカーボネート結合の割合が0.75以下であるポリオールを調製することができるのみであり、これらの量が一般的に30bar以上、より一般的には40bar以上という高圧の二酸化炭素でしか達成することができないため、これは驚くべきことである。
【0198】
さらに、ポリカーボネートポリオールを調製するのに使用される触媒により、一般的に、約0.95以上(一般的に、約0.98以上)のエーテル結合に対するカーボネート結合の割合を達成できるため、高いwt%の二酸化炭素を導入することができる。しかしながら、これらの触媒は、0.95未満のエーテル結合に対するカーボネート結合の割合を有するポリオールを調製することができない。二酸化炭素wt%は出発化合物の質量を変更することによって調節することができる:得られるポリオールはポリカーボネートのブロックを有する。エポキシド及び二酸化炭素から製造されるポリカーボネートはポリエーテルに比べて熱に安定でなく、ブロックコポリマーはランダムまたは統計コポリマーとは非常に異なる性質を有してしまうため、多くの用途でこれは望ましくない。
【0199】
他のすべての事柄が同じであれば、ポリエーテルは、エポキシド及び二酸化炭素から製造されるポリカーボネートより分解温度が高い。したがって、エーテル結合及びカーボネート結合が統計的にまたはランダムに分布するポリオールは、ポリカーボネートポリオール、またはカーボネート結合のブロックを有するポリオールより分解温度が高い。熱分解温度は、熱重量分析(thermal gravimetric analysis)(TGA)を用いて測定できる。
【0200】
上述したように、本発明の方法により、ランダムコポリマー、統計コポリマー(statistical copolymer)、交互コポリマー、または周期コポリマー(periodic copolymer)が調製される。ゆえに、カーボネート結合が1つのブロックに存在しないため、ポリカーボネートポリオールに比べて、熱分解等の特性が向上したポリマーが提供される。好ましくは、本発明の方法によって調製されるポリマーはランダムコポリマーまたは統計コポリマーである。
【0201】
本発明の方法によって調製されるポリカーボネートエーテルポリオールは、式(IV)を有してもよい、この際、n及びmは1以上の整数であり、すべてのm及びnの合計は4~200であり、さらにm/(m+n)は0を超えて1.00未満の範囲である。上述したように、m/(n+m)は、約0.05、約0.10、約0.15、約0.20、約0.25、約0.25、約0.30、約0.35、約0.40、約0.45、約0.50、約0.55、約0.60、約0.65、約0.70、約0.75、約0.80、約0.85、約0.90、約0.95、またはこれらの特定の値から導き出されるいずれかの範囲内であってもよい。例えば、m/(n+m)は、約0.05~約0.95、約0.10~約0.90、約0.15~約0.85、約0.20~約0.80、または約0.25~約0.75などであってもよい。
【0202】
また、ポリオールが少なくとも1つのカーボネート結合及び少なくとも1つのエーテル結合を有さなければならないことは、当業者が理解するであろう。したがって、ポリオールにおけるエーテル結合とカーボネート結合との合計(n+m)はa以上であると、理解されるであろう。n+mの合計は、a以上でなければならない。
【0203】
各Re1は、独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、または置換基を有してもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアルキルもしくはヘテロアルケニルから選択されてもよい。好ましくは、Re1は、Hまたは置換基を有してもよいアルキルから選択されてもよい。
【0204】
各Re2は、独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、または置換基を有してもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアルキルもしくはヘテロアルケニルから選択されてもよい。好ましくは、Re2は、Hまたは置換基を有してもよいアルキから選択されてもよい。
【0205】
また、Re1及びRe2は共に、炭素原子及び水素原子、ならびに必要であれば1以上のヘテロ原子(例えば、O、NまたはS)を含む飽和の、一部不飽和のまたは不飽和の環を形成してもよいと、解されるであろう。例えば、Re1およびRe2は共に、5員環または6員環を形成してもよい。
【0206】
上述したように、Re1およびRe2の性質は反応に使用されるエポキシドに依存する。エポキシドがシクロヘキセンオキシド(CHO)である場合には、Re1及びRe2は共に6員環のアルキル環(例えば、シクロヘキシル環)を形成するであろう。エポキシドがエチレンオキシドである場合には、Re1及びRe2は双方ともHであろう。エポキシドがプロピレンオキシドである場合には、Re1はHでありかつRe2はメチルであろう(または、エポキシドをポリマーの骨格に添加するやり方によっては、Re1がメチルでありかつRe2がHであろう)。エポキシドがブチレンオキシドである場合には、Re1がHでありかつRe2がエチルであろう(またはその逆もまた同様である)。エポキシドがスチレンオキシドである場合には、Re1が水素でありかつRe2がフェニルであってもよい(またはその逆もまた同様である)。
【0207】
また、エポキシドの混合物を使用する際には、Re1および/またはRe2の各存在は同一でなくてもよく、例えば、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの混合物を使用する際には、Re1が独立して水素またはメチルであり、かつRe2が独立して水素またはメチルであってもよいと解されるであろう。
【0208】
ゆえに、Re1およびRe2は、独立して、水素、アルキルまたはアリールから選択され、かつRe1およびRe2は共にシクロヘキシル環を形成してもよく、好ましくは、Re1およびRe2は独立して、水素、メチル、エチルまたはフェニルから選択されてもよく、またはRe1およびRe2は共にシクロヘキシル環を形成してもよい。
【0209】
結合を不安定な水素原子を置換する以外は、Z’はRに相当する。したがって、各Z’が何であるかは出発化合物のRの定義に依存する。ゆえに、各Z’は-O-、-NR’-、-S-、-C(O)O-、-P(O)(OR’)O-、-PR’(O)(O-)または-PR’(O)O-(この際、R’はH、または置換基を有してもよいアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルもしくはヘテロシクロアルキルであってもよく、好ましくは、R’はHまたは置換基を有してもよいアルキルである)であってもよく、好ましくは、Z’は-C(O)O-、-NR’-または-O-であってもよく、より好ましくは各Z’は-O-、-C(O)O-またはこれらの組み合わせであってもよく、より好ましくは、Z’は-O-であってもよいと解されるであろう。
【0210】
また、Zは出発化合物の性質に依存する。ゆえに、Zは、置換基を有してもよいアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、ヘテロシクロアルキレン、ヘテロシクロアルケニレン、アリーレン、ヘテロアリーレンから選択されてもよい、またはZは、これらの基の組み合わせてであってもよく、例えば、Zは、アルキルアリーレン基、ヘテロアルキルアリーレン基、ヘテロアルキルヘテロアリーレン基またはアルキルヘテロアリーレン基であってもよい。好ましくは、Zは、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンであり、例えば、アルキレンまたはヘテロアルキレンである。上記基のそれぞれは必要であれば、例えば、アルキルによって置換されてもよいと解されるであろう。
【0211】
また、変数aは出発化合物の性質に依存する。式(IV)中のaの値は式(III)中のaと同じであると、当業者は考えるであろう。したがって、式(IV)では、aは少なくとも2の整数であり、好ましくは、aは2~8の範囲であり、好ましくは、aは2~6の範囲である。
【0212】
また、aの値は本発明の方法によって調製されるポリオールの形状に影響を与えると、当業者は考えるであろう。例えば、aが2である場合には、式(IV)のポリオールは下記構造を有してもよい。
【0213】
【化25】
【0214】
ここで、Z、Z’、m、n、Re1およびRe2は、式(IV)で上記したのと同様である。
【0215】
例えば、aが3である場合には、式(IV)のポリオールは下記式を有してもよい。
【0216】
【化26】
【0217】
ここで、Z、Z’、m、n、Re1およびRe2は、式(IV)で上記したのと同様である。
【0218】
上記態様のそれぞれは組み合わせてもよいと、当業者は理解するであろう。例えば、Re1およびRe2は、独立して、水素、アルキルもしくはアリールから選択されてもよく、またはRe1およびRe2は一緒にシクロヘキシル環を形成してもよく、各Z’は-O-、-C(O)O-もしくはこれらの組み合わせであってもよく(好ましくは、各Z’は-O-であってもよく)、さらにZは置換基を有してもよいアルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、もしくはヘテロアリーレン、例えば、アルキレンもしくはヘテロアルキレンであってもよく、さらにaは2~8であってもよい。
【0219】
本発明の方法によって製造されるポリオールは、好ましくは、低分子量のポリオールである。ポリカーボネートエーテルポリオールの調製に使用されるエポキシドの性質は得られる製品の分子量に影響を与えると解されるであろう。ゆえに、n+mの上限は、本明細書では本発明の「低分子量」ポリマーを規定するのに使用される。
【0220】
本発明の方法は、分子量分布の狭いポリカーボネートエーテルポリオールを好適に調製できる。換言すると、ポリカーボネートエーテルポリオールは低い多分散指数(PDI)を有してもよい。ポリマーのPDIは、ポリマーの重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除することによって決定されるため、ポリマー製品の鎖長の分布を示す。双方のポリマーが同じPDIを有しても、ポリマー鎖長の変動率(%)は、鎖長の長いポリマーに比して鎖長の短いポリマーの方が大きくなるため、ポリマーの分子量が小さくなるほどPDIが重要になると解されるであろう。
【0221】
好ましくは、本発明の方法によって製造されるポリマーは、約1以上約2未満、好ましくは、約1以上約1.75未満、より好ましくは、約1以上約1.5未満、さらにより好ましくは、約1以上約1.3未満のPDIを有する。
【0222】
本発明の方法によって製造されるポリマーのMおよびM、ならびにゆえにPDIは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定されてもよい。例えば、GPCは、2本のAgilent PLgel μ-m mixed-Eカラムを直列に備えたAgilent 1260 Infinity機械を用いて測定されてもよい。サンプルは、狭いポリスチレン標準物質(例えば、Mnが405~49,450g/molであるAgilent Technologiesにより供給されるポリスチレン低イージバイアル(low easivial))に対して1mL/分の流速でTHF中で室温(293K)で測定されてもよい。必要であれば、サンプルを、Agilent Technologiesにより供給されるポリエチレングリコールイージバイアル(easivial))等のポリ(エチレングリコール)標準物質に対して測定されてもよい。
【0223】
好ましくは、本発明の方法によって製造されるポリマーは、約500~約10,000Da、好ましくは約700~約5,000Da、好ましくは約800~約2,000Daの範囲の分子量を有してもよい。
【0224】
本発明はまた、
d.本明細書で規定される式(I)の触媒、
e.本明細書で規定されるDMC触媒、および
f.本明細書で規定される出発化合物
を有する、二酸化炭素およびエポキシドの共重合のための重合系を提供する。
【0225】
また、本発明の方法によって製造されるポリオールは、例えば、本発明の方法によって調製されるポリオールを含むポリオール組成物をジ-またはポリイソシアネートを含む組成物と反応させることにより、例えば、ポリウレタンを調製する、さらなる反応に使用されてもよいと、解されるであろう。
【0226】
式(I)の触媒に加えて、または式(I)の触媒に代えて、エポキシド及び二酸化炭素の反応によりポリカーボネートを調製することが知られている他の触媒を使用することが可能であることを、当業者は理解するであろう。例えば、WO 2010/028362号に規定される触媒がこの目的で考慮される。
【0227】
式(IIb)の触媒が本明細書で開示される。
【0228】
【化27】
【0229】
ただし、R、R、R、R、G、X、EおよびEは、式(I)または式(II)の定義と同様である。
【0230】
【化28】
【0231】
式(I)及び式(II)について記載されるような好ましい規定のそれぞれが式(IIb)に同様に適用されてもよいと解されるであろう。
【0232】
式(IIb)の化合物は下記構造を有するものと、理解されるであろう。
【0233】
【化29】
【0234】
ただし、X及びGは、式(I)または式(II)の定義と同様である。
【0235】
式(IIb)の触媒は本発明の方法に使用されてもよいと、解されるであろう。
【0236】
式(IIb)の触媒はまた、必要であれば、連鎖移動剤の存在下での、(i)二酸化炭素及びエポキシド、(ii)エポキシド及び無水物、および/または(iii)ラクチドおよび/またはラクトンの反応方法に使用されてもよい。エポキシドは本明細書に記載されるのと同様のものであってもよく、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはシクロヘキセンオキシドであってもよい。
【実施例
【0237】
実施例
方法
H NMR分析
ポリエーテルカーボネートポリオールのポリエーテ及びポリカーボネートの内容の評価は、数多くの様々な方法で報告されている。ポリエーテルカーボネートポリオール中のカーボネートモル含有量およびCO wt%を計算するために、US 2014/0323670号に記載される方法を本明細書では使用した。上記方法は下記のようにして行われる。
【0238】
サンプルを重水素化クロロホルム中に溶解し、Brukerスペクトロメーターで測定した。(1,6-ヘキサンジオールを出発化合物として使用する場合には)演算に使用されるH-NMRスペクトルでの関連する共鳴(relevant resonance)は、下記のとおりであった。
【0239】
【表1】
【0240】
共鳴A、C~Fは、US 2014/0323670号に記載される方法において低い割合のカーボネート結合を含むポリエーテルカーボネートで既に規定されている。高カーボネート含有量のポリエーテルカーボネートで有意な量で存在するのみである、別の共鳴(B、1.18-1.25ppm)が同定された。共鳴Bは、カーボネート単位とヒドロキシル末端基との間の末端プロピレンCH基によって割り当てられている。したがって、共鳴Bは、US 2014/0323670号に記載されるのと同様にして、全カーボネート単位(C)に加えられる。
【0241】
【数1】
【0242】
ただし、44はカーボネート単位中のCOの質量であり、58はポリエーテル単位の質量であり、102はポリカーボネート単位の質量であり、および118はヘキサンジオール出発化合物の質量である(ヘキサンジオール共鳴が4プロトンに相当し、他の共鳴がすべて3に相当するので、0.75の倍数を加える)。これは、全ポリオールに存在する全CO率である。他の出発化合物を使用する場合には、関連するNMRシグナル、相対的な積分(relative integration)および分子量が計算に使用されると考えられる。
【0243】
さらに、共鳴Cは、2つの異なる共鳴に分類できる。1.26-1.32ppm(C)はカーボネート結合とエーテル結合(ポリエーテルカーボネート、PEC結合)との間のポリマー単位中のプロピレン CHに相当し、その一方、1.32-1.38ppm(C)の共鳴は2つのカーボネート結合(ポリカーボネート、PC結合)間のポリマー単位中のプロピレン CHに由来する。PEC、PC及びPE結合の割合は、ポリマーの構造の指標となる。完全にブロックされた構造はほとんどPEC結合を持たない(ブロック界面でのもののみ)一方で、よりランダムな構造では、ポリエーテル単位及びポリカーボネート単位が双方ともポリマー骨格中で相互に隣接するPEC結合の割合がかなり高いであろう。これらの2つの単位の割合が構造の指標となる。
【0244】
【数2】
【0245】
ゲル浸透クロマトグラフィー
GPC測定は、Agilent PLgel Mixed-Eカラムを備えたAgilent 1260 Infinity機械を用いてTHF中で狭い多分散性ポリ(エチレングリコール)またはポリスチレン標準物質に対して行った。
【0246】
粘度
ポリオールサンプルの粘度は、10~400s-1の剪断速度(sheer rate)でLamy RM200 Rheometerを用いてASTMスタンダード D4878-15に従って測定した。
【0247】
OH値
OH値は、Mettler Toledo T50M手動滴定装置を用いてASTM D4274-11に従ってNaOHに対する滴定によって測定した。
【0248】
実施例1
DMC触媒の合成
本実施例で使用されるDMC触媒は、Journal of Polymer Science; Part A: Polymer Chemistry, 2002, 40, 1142に報告される方法に従って調製した。簡潔にいうと、1.0gのKCo(CN)を13gの蒸留水及び2gのtert-ブチルアルコールの混合溶媒に溶解した。6gのZnClを13gの水及び4gのtert-ブチルアルコールの混合溶媒に溶解した後、この混合物を撹拌しながら20分間かけてKCo(CN)溶液にゆっくり添加した。次に、この混合物をさらに40分間撹拌した後、遠心分離を行い、白色の沈殿物を得た。この沈殿物を16gの水及び16gのtert-ブチルアルコールの混合溶媒に分散し、20分間撹拌した後、沈殿物を遠心によって分離した。この洗浄工程を3回繰り返した。次に、白色の沈殿物を50gのtert-ブチルアルコールに分散した後、20分間撹拌した後、遠心分離を行い、白色の沈殿物を得た。次に、このtert-ブチルアルコールによる洗浄をもう1回繰り返した。次に、溶媒を、60℃で8時間、減圧下で除去した。得られた化合物は、式:Zn[Co(CN)・hZnCl・0.5HO・2[(CHCOH]を有していると理解される。
【0249】
[LNi(OAc)]、触媒1の合成
リガンドHを、Kember et al, Angew. Chem. Int. Ed., 2009, 48, 931-933に従来記載される方法によって合成した。
【0250】
【化30】
【0251】
(2mmol)をMeOH(50mL)に溶解した後、Ni(OAc)・4HO(0.498g、4mmol)を少しずつ15分かけて添加し、溶液を一晩撹拌した。溶媒を真空下で除去し、過剰な水/AcOHをトルエンと共沸することによって除去した(3×40mL)。
【0252】
【化31】
【0253】
重合反応
XmgのDMC触媒、必要であれば165mgの[LNi(OAc)]、及び3gのPPG-425(ポリプロピレングリコール)出発化合物を100mlのオーブン乾燥リアクターに入れた。この反応容器を密閉し、リアクターコントローラーにセットした。触媒及び出発化合物を、1~2時間-1.0barの真空下で110℃~120℃で乾燥した。この後、リアクターを室温まで冷却し、プロピレンオキシド(PO)(15ml)を、1bar COガス下でシリンジでこの容器に注入し、反応混合物を80℃に加熱した。その温度になった時点で、所望のCO圧力を加え、所望の時間反応し続けた。終了後、リアクターを10℃未満にまで冷却し、圧力を非常にゆっくり解放した。すぐに、NMR及びGPCを測定した。未精製反応混合物をCHClで希釈し、HCl/MeOHに注いだ。
【0254】
結果
【0255】
【表2】
【0256】
表1の結果から、DMC触媒および式(I)の触媒の組み合わせにより、依然として高いCO含有量を含むものの、低いCO圧力下で鎖長が短いポリオールを調製できることが示される。DMC触媒及び[LNi(OAc)]の双方を5~10barの圧力下で組み合わせることによって、単にDMC触媒単独を使用することによる場合に比して有意により多いCOを導入することができることが明らかにわかる。また、低多分散性(<1.2)が好ましく得られるため、ポリウレタン製品の性能を向上するであろう。
【0257】
出発化合物の範囲(20モル当量vs[LNi(OAc)])以外は、上記と同様の方法を用いて反応を行った。
【0258】
【表3】
【0259】
表2の結果から、様々な出発化合物が低CO圧力下で様々な分子量を有する多分散性の低いポリオールを製造するのに良好に使用できることが示される。
【0260】
実施例2
[L23Ni(OAc)]-触媒2-の合成
触媒[L23Ni(OAc)]-2を、メチル化大環状リガンドを使用する以外は触媒1と同様にして調製した。
【0261】
【化32】
【0262】
実施例2a:
すべての重合を、使用する前に1時間オーブンで140℃で乾燥した100mL Parr反応容器中で行った。実施例1で調製したのと同様のDMC触媒(15mg)及び1,6-ヘキサンジオール(2.28g、19.32mmol)を、容器の温度を80℃未満にしながら、反応容器内に入れた。このリアクターを組み立て、120℃で30分間真空下においた。この容器を室温まで冷却した。触媒2(270mg、0.321mmol)を、約30~40分間真空下でSchlenk管中で乾燥した後、プロピレンオキシド(45ml、643.08mmol)を添加した。この触媒溶液を、大気圧でCO下でシリンジでParr反応容器に移した。容器を60℃に加熱しながら、反応物を大気圧CO下で撹拌した。温度が反応温度に達したら、反応容器に5bar COをチャージした。16時間後、リアクターを5~6℃に冷却し、通気し(vent)、さらに生成物をリアクターから取り除いた。未精製産物をH NMR及びGPCによって分析した。p-トルエンスルホン酸、12%酢酸(5mol/mol c.f.触媒2)を用いて、未精製産物を安定化した。
【0263】
プロピレンオキシド変換率が78%で環状カーボネートに対して89%の選択率で、ポリオールが形成された。粘度/OH数の測定を目的として、環状プロピレンカーボネート副生成物を、3時間、100℃で真空蒸留することによって、Kugelrohrで除去した。
【0264】
実施例2b:
64時間(週末にかけて)55℃の反応温度で、128mgの触媒2を使用する以外は、実施例2aと同様にして、実施例2bを行った。
【0265】
プロピレンオキシド変換率が91%で環状カーボネートに対して89%の選択率で、得られたポリオールが形成された。
【0266】
実施例2c:
64時間(週末にかけて)60℃の反応温度を使用する以外は、実施例2aと同様にして、実施例2cを行った。
【0267】
プロピレンオキシド変換率が99.5%で環状カーボネートに対して84%の選択率で、ポリオールが形成された。
【0268】
実施例2d:
16時間80℃の反応温度を使用する以外は、実施例2aと同様にして、実施例2dを行った。
【0269】
プロピレンオキシド変換率が99.5%超で環状カーボネートに対して92.1%の選択率で、得られたポリオールが形成された。
【0270】
実施例2e:
16時間85℃の反応温度を使用する以外は、実施例2aと同様にして、実施例2eを行った。
【0271】
プロピレンオキシド変換率が95%で環状カーボネートに対して92%の選択率で、得られたポリオールが形成された。
【0272】
【表4】
【0273】
表3の結果から、本発明の触媒系がたった5bar COの圧力で中程度(10wt%)から高い(33wt%)CO取り込み率を有する一連のポリオールを製造するのに使用できることが示される。ポリオールを、良好なポリオール選択率で高収率で作製でき、いずれかの触媒を選択することにより好ましい方法および製品パラメーターで性能を調整できる。
【0274】
さらに、表3ならびに図6及び7から、顕著なCO含有量効果がポリオール粘度についてあることが示される。分子量が若干変動することを考慮すると、ポリオール粘度及びCO含有量の間には明らかな相関がみられる。CO含有量は、高圧操作を必要とすることなく所望の用途の必要条件を満たすように本発明の方法を用いて調整できる。また、本発明の方法は、特許請求の範囲の発明を用いて必要ではないポリエーテルを製造するのみであるCOの不存在下で重合前(または活性化)段階として高いCO含有量を有する鎖長が比較的短いポリオール(<2000g/mol)を作製するように調整できる。
【0275】
図6及び7は、それぞれ、75℃および25℃での実施例2a~2eで製造されたポリマーの粘度を示し、使用されるベンチマークは、B1 PPG-2000(米国特許第3054755号の75℃での粘度、Sigma Aldrichの25℃での粘度)およびB2-高CO取り込みを優先する条件下でポリ(プロピレングリコール)-425出発化合物を用いて触媒2を用いて製造したポリオール(ポリオールは、本質的に、Rが0.80でRPECが0.16であるポリカーボネート-ポリエーテル-ポリカーボネートトリブロックである)であった。すべてのポリマーは約2000のMwを有する。
【0276】
全ての場合において、非常に有意な割合のカーボネート結合の存在がエーテル結合に隣接することが、PEC/PCの割合であるRPECからわかり、これから非常にランダムな構造を有しかつ明確に定義されたブロック構造ではないポリマーが形成されることが示される。比較として、2a及びB2は、同様のR値(0.71vs.0.80)を有しているがRPEC値が非常に異なる(0.35および0.16)ことから、2aのランダム構造が有意に増加していることが示される。図8及び9は、実施例2a及び2bのH NMRスペクトルを示し、これからPEC結合及びPC結合の量の変化が示される。
【0277】
図10は、異なる構造のポリオールが熱安定性に対して有することを示す。B2は、200℃付近で有意な分解を示し、250℃で明らかな第2の分解があり、これはポリエーテルブロック部分に対応すると理解される。比較して、実施例2aのポリオールは、同様の開始を示すが、分解がよりゆっくりで、さらに規定される2段階の分解がかなりより少ないことから、ポリオール構造内でエーテル単位及びカーボネート単位がランダムに混在していることが示される。実施例2b~eで製造されるポリオールは、かなり高い分解温度および1段階の分解を示すことから、ポリオールがランダムな構造であり、ポリカーボネートのかなりのブロックを含まないことが示される(高いRPEC値によって示されるように)。
【0278】
実施例3
様々な出発化合物を使用する以外は実施例2と同様にして、幾つかの実験を行った。
【0279】
実施例3a:
1,4-シクロヘキサンジメタノール(2.77g、19.3mmol)を出発化合物として使用し、反応を75℃で10bar CO圧力で行ったこと以外は、実施例2aと同様にして、実施例3aを行った。
【0280】
プロピレンオキシド変換率が94.5%で環状カーボネートに対して74%の選択率で、得られたポリオールが形成された。
【0281】
実施例3b:
1,12-ドデカンジオール(3.88g、19.3mmol)を出発化合物として使用したこと以外は、実施例3aと同様にして、実施例3bを行った。
【0282】
プロピレンオキシド変換率が98.2%で環状カーボネートに対して78.8%の選択率で、得られたポリオールが形成された。
【0283】
実施例3c:
ポリ(カプロラクトン)ジオール(Mn 530、10.1g、19.3mmol)を出発化合物として使用したこと以外は、実施例3aと同様にして、実施例3cを行った。
【0284】
プロピレンオキシド変換率が98.6%で環状カーボネートに対して81.4%の選択率で、得られたポリオールが形成された。
【0285】
実施例3d:
ポリ(プロピレングリコール)(Mn 425、8.17g、19.3mmol)を出発化合物として使用したこと以外は、実施例3aと同様にして、実施例3dを行った。
【0286】
プロピレンオキシド変換率が95.0%で環状カーボネートに対して78.8%の選択率で、得られたポリオールが形成された。
【0287】
【表5】
【0288】
表4の結果から、本発明は一定範囲の出発化合物の存在下で行うことができ、これにより低圧で様々な分子量を有しかなりの量のCOを取り込むポリオールを製造することができることが示される。
【0289】
実施例4
実施例4a
75℃及び10 barで6時間、1.08gの1,6-ヘキサンジオールを使用する以外は、実施例2aに従って、実施例4aを行った。
【0290】
実施例4b
触媒2を不存在にする以外は、実施例4aに従って、実施例4bを行った。
【0291】
実施例4c
DMC触媒を不存在にする以外は、実施例4aに従って、実施例4cを行った。
【0292】
【表6】
【0293】
表5から、本発明により、同じ条件下でそれ自身でいずれかの触媒では達成されない製品および性能が提供され、変換率、分子量が増加し、Rのバランスをとれることが示される。DMC単独ではこれらの条件下ではまあまあのカーボネート含有量が得られるが、モノマーがポリマーにほとんど変換せず、または分子量の伸展(molecular weight development)がほとんどない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10