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特許7237592イソソルビドジエステル含有ポリカーボネート組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】イソソルビドジエステル含有ポリカーボネート組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20230306BHJP
   C08K 5/1535 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
C08L69/00
C08K5/1535
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018554018
(86)(22)【出願日】2017-04-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-25
(86)【国際出願番号】 EP2017058920
(87)【国際公開番号】W WO2017178583
(87)【国際公開日】2017-10-19
【審査請求日】2020-04-10
(31)【優先権主張番号】16165413.2
(32)【優先日】2016-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート、ベルナー、ホイアー
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ、ベーアマン
(72)【発明者】
【氏名】アンケ、ボウマンス
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-126955(JP,A)
【文献】特開2014-043540(JP,A)
【文献】国際公開第2014/167108(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 69/00
C08K 3/00-13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)20.0重量%~99.95重量%の芳香族ポリカーボネート、および
B)0.05重量%~20.0重量%のイソソルビドジエステル
を含んでなる組成物であって、
ただし、該成分A)の芳香族ポリカーボネートが、少なくとも下記式(1)のモノマー単位を含有している1つ以上のコポリカーボネートである場合、該組成物が、0.05~7.5重量%の成分B)を含んでなる、組成物:
【化1】
[式中、
は、水素またはC~Cアルキルであり、
は、C~Cアルキルであり、かつ
nは、0、1、2または3である]。
【請求項2】
前記組成物が、成分B)として、4~30個の炭素原子の鎖長を有する、1つ以上の飽和または不飽和のモノカルボン酸から生じる1つ以上のイソソルビドジエステルを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、成分B)として、下記一般式(I)の1つ以上のイソソルビドジエステルを含む、請求項1または2に記載の組成物:
【化2】
[式中、
およびRは、それぞれ独立して、式C2n+1の飽和、分岐鎖状または非分岐鎖状の脂肪族基、あるいは式C2n-mの一価不飽和または多価不飽和、分岐鎖状または非分岐鎖状の脂肪族基であり、ここで、nは3~29の数であり、mは1、3、5、7、9、または11であり、波線はこの箇所の立体構造が異なるいずれの立体異性体も一般式(I)に含まれることを表わす]。
【請求項4】
前記イソソルビドジエステルが、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、チムノドン酸、およびセルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種のカルボン酸から生じる、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記イソソルビドジエステルの量が0.05~15.00重量%である組成物であって、
ただし、前記成分A)の芳香族ポリカーボネートが、少なくとも下記式(1)のモノマー単位を含有している1つ以上のコポリカーボネートである場合、該組成物が、0.05~7.5重量%の成分B)を含んでなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物:
【化3】
[式中、
は、水素またはC~Cアルキルであり、
は、C~Cアルキルであり、かつ
nは、0、1、2または3である]。
【請求項6】
前記芳香族ポリカーボネートの量が少なくとも50重量%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
以下の成分:
A)82.0重量%~99.95重量%の芳香族ポリカーボネート、
B)0.05重量%~15.0重量%のイソソルビドジエステル、
C)0.0重量%~1.0重量%の熱安定剤、および
D)0.0重量%~2.0重量%の、酸化防止剤、離型剤、難燃剤、紫外線吸収剤、IR吸収剤、静電気防止剤、蛍光増白剤、可溶性有機顔料の群からの着色剤、およびレーザーマーキング剤からなる群から選択される追加の添加剤
からなる、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物であって、
ただし、該成分A)の芳香族ポリカーボネートが、少なくとも下記式(1)のモノマー単位を含有している1つ以上のコポリカーボネートである場合、該組成物が、0.05~7.5重量%の成分B)を含んでなる、組成物:
【化4】
[式中、
は、水素またはC~Cアルキルであり、
は、C~Cアルキルであり、かつ
nは、0、1、2または3である]。
【請求項8】
前記組成物が熱安定剤をさらに含んでなる、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
4mmの厚さにおいてISO 13468に従い決定した、400nm~800nmの範囲において少なくとも84%の透過性、および4mmの層の厚さにおいてASTM D1003に従い決定した<5%のヘイズを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、成分Aとして、下記式(1):
【化5】
[式中、
は、水素またはC~Cアルキルであり、
は、C~Cアルキルであり、かつ
nは、0、1、2または3である]
のモノマー単位を含む1つ以上のコポリカーボネートを、場合により下記一般式(2):
【化6】
[式中、
は、Hまたは直鎖状もしくは分岐鎖状C~C10アルキルであり、かつ Rは、直鎖状または分岐鎖状C~C10アルキルである]の1つ以上のモノマー単位を含有している、追加の芳香族のホモ-またはコポリカーボネートと組み合わせて含み、
この場合に、さらに存在していてもよい追加の芳香族のホモ-またはコポリカーボネートは、式(1)のモノマー単位を一切含まない、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記コポリカーボネート中の式(1)のモノマー単位の割合が、0.1~88mol%(前記コポリカーボネート中に存在するジフェノールモノマー単位の合計に基づき)である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記式(1)のモノマー単位を含有しているコポリカーボネートが、さらに下記式(3)のモノマー単位を含有している、請求項10または11に記載の組成物:
【化7】
[式中、
およびRは、独立して、H、C~C18アルキル、C~C18アルコキシ、ハロゲン、または各場合に置換されていてもよいアリールまたはアラルキルであり、かつ Yは、単結合、-SO-、-CO-、-O-、-S-、C~Cアルキレン、C~Cアルキリデン、またはヘテロ原子を含む芳香環にさらに縮合していてもよいC~C12アリーレンである]。
【請求項13】
前記組成物が、成分Aとして、式(1)のモノマー単位を含むコポリカーボネートと、ビスフェノールAホモポリカーボネートとのブレンドを含んでなる、請求項9~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物を含んでなる射出成形体、又は押出物。
【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、ポリカーボネートおよびイソソルビドのカルボン酸エステルを含む組成物、ブレンドまたは成形体を製造するための組成物の使用、およびそれから得られる成形品に関する。組成物は改善されたレオロジー性および光学性を有し、射出成形において改善された離型特性および加工特性を有する。
【0002】
例えば、ウルトラブック、スマートホンまたはスマートブックの薄壁(ハウジング)部品の場合には特に、構成部品の壁厚の均一さを達成することを可能にするために、低溶融粘度が必要とされる。良好な流動性が必要なさらなる適用分野は、自動車部門(例えばヘッドライトカバー、サンバイザー、光ファイバーシステム)、電気およびエレクトロニクス部門(照明部品、ハウジング部品、カバー、スマートメーター用途)である。
【0003】
ビスフェノールAジホスフェート(BDP)は、流動性の改善のため、所望効果を達成するために最大10重量%超の量で従来的に使用されている。しかしながら、これは著しく耐熱性を低減させる。この結果は、例えば、JP201178889およびWO2015135958に記載されている。
【0004】
DE102010002856には、積層窓ガラスの可塑剤としてのイソソルビトールエステルの使用が記載されている。
【0005】
US20120178858にはイソソルビトールを含有している可塑化されたデンプンが開示されている。
【0006】
しかしながら、少量のイソソルビドジエステルのポリカーボネートのレオロジー性および光学性に対する効果についての示唆はない。
【0007】
先行技術は、当業者にどのようにポリカーボネート組成物の流動性と同時に光学性が事実上同一の耐熱性で改善されるかの示唆を一切与えていない。
【0008】
従って、事実上同一の耐熱性と併せて、改善された光学性および同時に改善された流動性を有する芳香族ポリカーボネート組成物を含む組成物を見出すことが取り組まれた課題であった。
【0009】
驚くべきことに、特定の量のイソソルビドジエステルが存在する場合は常に、ポリカーボネート組成物は改善された流動性およびより良好な光学性を有することが見出された。耐熱性(ビカット温度)は事実上変化しない。同時に、動的および静的摩擦の係数は縮小され、これは射出成形中のより良好な離型特性および処理特性を意味する。
【0010】
イソソルビドジエステルを添加するポリカーボネート組成物は、イソソルビドジエステルを除いて同一の成分を含む当量の組成物と比較して、改善されたレオロジー性、すなわちDIN EN ISO 1133(300℃の試験温度、1.2kgの質量にて)で決定されたより高いメルトボリュームフローレート(MVR)、ISO 11443で決定された改善された溶融粘度、およびASTM E 313で決定された、より低い黄色指数(YI)および/またはより高い光学透過性により測定可能な改善された光学性とともに、良好な溶解安定性を示す。組成物はさらに、ISO 7391/180Aに従い決定される切り欠き(Notched)衝撃耐性によって測定可能な良好な機械的特性を特色とする。
【0011】
従って、本発明は、A)20.0重量%~99.95重量%の芳香族ポリカーボネート、およびB)0.05重量%~20.0重量%のイソソルビドジエステルを含んでなる組成物であって、ただし、成分A)の芳香族ポリカーボネートが、少なくとも下記式(1):
【化1】
[式中、
は、水素またはC~Cアルキルであり、
は、C~Cアルキルであり、かつ
nは、0、1、2または3である]
のモノマー単位を含有している1つ以上のコポリカーボネートである場合、組成物は、0.05~7.5重量%の成分B)を含んでなる、組成物を提供する。
【0012】
組成物は好ましくは、
A)20.0重量%~99.95重量%の芳香族ポリカーボネート、
B)0.05重量%~20.0重量%のイソソルビドジエステル、
C)0.0重量%~1.0重量%の熱安定剤、および
D)0.0重量%~3.0重量%の追加の添加剤
を含み、
ただし、成分A)の芳香族ポリカーボネートが、少なくとも下記式(1):
【化2】
[式中、
は、水素またはC~Cアルキルであり、
は、C~Cアルキルであり、かつ
nは、0、1、2または3である]
のモノマー単位を含有している1つ以上のコポリカーボネートである場合、組成物は、0.05~7.5重量%の成分B)を含む。
【0013】
より好ましくは、この種の組成物は、
A)82.0重量%~99.95重量%の芳香族ポリカーボネート、
B)0.05重量%~15.0重量%のイソソルビドジエステル、
C)0.0重量%~1.0重量%の熱安定剤、および
D)0.0重量%~2.0重量%の、酸化防止剤、離型剤、難燃剤、紫外線吸収剤、IR吸収剤、静電気防止剤(antistat)、蛍光増白剤(optical brightener)、可溶性有機顔料の群からの着色剤、およびレーザーマーキング用の添加剤の群からの追加の添加剤
からなり、
ただし、成分A)の芳香族ポリカーボネートが、少なくとも下記式(1):
【化3】
[式中、
は、水素またはC~Cアルキルであり、
は、C~Cアルキルであり、かつ
nは、0、1、2または3である]
のモノマー単位を含有している1つ以上のコポリカーボネートである場合、該組成物は、0.05~7.5重量%の成分B)を含んでなる。
【0014】
本発明の文脈では、「芳香族ポリカーボネート」という用語はホモポリカーボネートおよびコポリカーボネートの両方を意味すると理解される。これらのポリカーボネートは既知の様式で直鎖状でもよいし、分岐鎖状でもよい。本発明によれば、ポリカーボネートの混合物を使用してもよい。
【0015】
本発明の組成物は好ましくは透明である。
【0016】
透明なポリカーボネート組成物中にイソソルビドジエステルを使用することで光学性を改善することができる。イソソルビドジエステルの添加は厚さ4mmでISO 13468によって決定される透過性を増加させ、ASTM E 313(厚さ4mmのテストプラーク上で、視野(observer):10°;イルミナント:D65)によって決定される黄色指数Y.I.を同時に低下させる。
【0017】
本発明の文脈では、「透明」とは、厚さ4mmにおいてISO 13468に従い決定した、400nm~800nmの範囲において少なくとも84%の透過性、および4mmの層の厚さにおいてASTM D1003に従い決定した<5%のヘイズを有する組成物を意味する。
【0018】
本発明の文脈においてC~Cアルキルは、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチルであり、またC~Cアルキルは、例えばn-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、ネオペンチル、1-エチルプロピル、シクロヘキシル、シクロペンチル、n-ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、1-エチル-2-メチルプロピルまたは1-エチル-2-メチルプロピルであり、またC~C10アルキルは、例えばn-ヘプチルおよびn-オクチル、ピナシル、アダマンチル、異性体のメンチル、n-ノニル、n-デシルであり、またC~C34アルキルは、例えばn-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ヘキサデシルまたはn-オクタデシルである。対応するアルキル基、例えば、アラルキル/アルキルアリール、アルキルフェニルまたはアルキルカルボニル基にも同一のことが当てはまる。対応するヒドロキシアルキルまたはアラルキル/アルキルアリール基中のアルキレン基は、例えば前記のアルキル基に対応するアルキレン基である。
【0019】
アリールは、6~34個の骨格炭素原子を有する炭環式の芳香族基である。アラルキル基としても知られているアリールアラルキル基の芳香族部分、およびより複雑な基のアリール構成要素、例えばアリールカルボニル基にも同じことが当てはまる。
【0020】
~C34アリールの例としては、フェニル、o、p-、m-トリル、ナフチル、フェナントレニル、アントラセニルおよびフルオレニルである。
【0021】
アリールアルキルおよびアラルキルは、それぞれ独立して、上記で定義した通りの、直鎖状、環式、分岐鎖状、または非分岐鎖状のアルキル基であり、これらは上記で定義した通りのアリール基によって一置換、多置換または過置換(persubstituted)されたものである。
【0022】
本発明の文脈では、明示的に反対の記載がない限り、成分A、B、CおよびDに対する記載された重量%の値は各々、組成物の総重量に基づいたものである。組成物は、成分A、B、CおよびDに加えて、追加の成分を含有していてもよい。好ましい実施態様では、組成物はそれ以上の追加の成を含まなず、成分A)~D)は合計すると100重量%となる(即ち、組成物は成分A、B、CおよびDからなる)。
【0023】
本発明の組成物は、成形体を製造するために使用することが好ましい。組成物は好ましくは2~120cm/(10分)、より好ましくは3~90cm/(10分)の、ISO 1133(試験温度300℃、質量1.2kg)により決定された、メルトボリュームフローレート(MVR)を有する。
【0024】
本発明の組成物の個々の成分は、より詳しくは以下に説明される。
【0025】
成分A
本発明の組成物は、成分Aとして、20.0重量%~99.0重量%の芳香族ポリカーボネートを含む。組成物中の芳香族ポリカーボネートの量は好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、一層より好ましくは少なくとも75重量%であり、単一のポリカーボネートまたは2つ以上のポリカーボネートの混合物が存在していてもよい。
【0026】
流動性を改善するためにジグリセロールエステルが加えられる組成物中に存在するポリカーボネートは、ジフェノール、カルボン酸誘導体、場合により連鎖停止剤および分岐剤から既知の方法で製造される。
【0027】
ポリカーボネートの製造に関係する詳細は、ほぼ過去40年に亘り、多くの特許文献に示されている。ここでは、Schnell, 「Chemistry and Physics of Polycarbonates」、 Polymer Reviews、第9巻、Interscience Publishers、New York、London、Sydney 1964、D. Freitag、U. Grigo、P.R. Mueller、H. Nouvertne、BAYER AG、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering、第11巻、第二版の「Polycarbonates」、1988、648-718頁、そして最後にU. Grigo、K. KirchnerおよびP.R. Mueller Becker/Braun、Becker/Braun, Kunststoff-Handbuch [Plastics Handbook] の「Polycarbonate」[Polycarbonates]、第3/1巻、Polycarbonate, Polyacetale, Polyester, Celluloseester [Polycarbonates, Polyacetals, Polyesters, Cellulose Esters]、Carl Hanser Verlag Munich、Vienna 1992、117-299頁を参照してもよい。
【0028】
芳香族ポリカーボネートは、例えば、界面法により、場合により連鎖停止剤を使用し、かつ場合により三官能性以上の分岐剤を使用して、ジフェノールのハロゲン化カルボニル、好ましくはホスゲンと、および/または芳香族ジハロゲン化ジカルボニル、好ましくはベンゼンジハロゲン化ジカルボニルとの反応によって製造される。例えば、ジフェノールの炭酸ジフェニルとの反応による溶融重合法による製造も同様に可能である。
【0029】
ポリカーボネートの製造に好適なジフェノールの例としてはヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシジフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、α,α’-ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、イサチンまたはフェノールフタレインの誘導体から生じるフタルイミド、ならびに、それらの環アルキル化された化合物、環アリール化された化合物、および環ハロゲン化された化合物が挙げられる。
【0030】
好ましいジフェノールは4,4’-ジヒドロキシジフェニル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ジメチルビスフェノールA)、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,1-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、および1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、またビスフェノール(I)~(III)である:
【化4】
[式中、
R’は各場合にC~Cアルキル、アラルキルまたはアリール、好ましくはメチルまたはフェニル、最も好ましくはメチルである]。
【0031】
特に好ましいジフェノールは、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンおよびジメチルビスフェノールA、また式(I)、(II)、および(III) のジフェノールである。
【0032】
これらおよび他の好適なジフェノールは、例えば、US-A 3 028 635、US-A 2 999 825、US-A 3 148 172、US-A 2 991 273、US-A 3 271 367、US-A 4 982 014およびUS-A 2 999 846、DE-A 1 570 703、DE-A 2063 050、DE-A 2 036 052、DE-A 2 211 956およびDE-A 3 832 396、FR-A 1 561 518、研究論文「H. Schnell, Chemistry and Physics of Polycarbonates, Interscience Publishers, New York 1964」、またJP-A 62039/1986、JP-A 62040/1986およびJP-A 105550/1986に記載されている。
【0033】
ホモポリカーボネートの場合には、たった1種のジフェノールが使用され、コポリカーボネートの場合には、2種以上のジフェノールが使用される。
【0034】
好適な炭酸誘導体は例えばホスゲンおよび炭酸ジフェニルである。
【0035】
ポリカーボネートの製造で使用してもよい好適な連鎖停止剤はモノフェノールである。好適なモノフェノールは、例えばフェノール自体、クレゾールなどのアルキルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、クミルフェノールおよびそれらの混合物である。
【0036】
好ましい連鎖停止剤としては、直鎖状または分岐鎖状のC~C30アルキル基によって一置換されたかまたは多置換された、好ましくは置換されていないか、またはtert-ブチルによって置換されたフェノールである。特に好ましい連鎖停止剤はフェノール、クミルフェノールおよび/またはp-tert-ブチルフェノールである。
【0037】
使用される連鎖停止剤の量は、各場合に使用されたジフェノールのモルに基づき、好ましくは0.1~5mol%である。連鎖停止剤は、炭酸誘導体との反応前、反応中、または反応後に加えることができる。
【0038】
好適な分岐剤はポリカーボネート化学において既知の三官能性以上の化合物であり、特に、3つ以上のフェノール系OH基を有するものである。
【0039】
好適な分岐剤は、例えば、1,3,5-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼンである、1,1,1-トリ(4-ヒドロキシフェニル)エタン、トリ(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、2,6-ビス(2-ヒドロキシ-5’-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)プロパン、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)メタン、テトラ(4-(4-ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノキシ)メタンおよび1,4-ビス(4’,4’’-ジヒドロキシトリフェニル)メチル)ベンゼンおよび3,3-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロインドールである。
【0040】
使用してもよい分岐剤の量は、各場合に使用されたジフェノールのモルに基づき、好ましくは0.05mol%~2.00mol%である。
【0041】
分岐剤は、ジフェノールおよび水性アルカリ相中の連鎖停止剤と一緒に最初に装填することもでき、またはホスゲン化の前に有機溶媒中に溶かして加えることもできる。エステル交換反応プロセスの場合には、分岐剤はジフェノールと一緒に使用する。
【0042】
特に好ましいポリカーボネートは、ビスフェノールAに基づくホモポリカーボネート、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンに基づくホモポリカーボネート、および2つのモノマーとしてのビスフェノールAと1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンに基づくコポリカーボネート、さらに、好ましくは共モノマーとしてのビスフェノールAとともに、式(I)、(II)および(III):
【化5】
[式中、
R’は各場合にC~Cアルキル、アラルキルまたはアリール、好ましくはメチルまたはフェニル、最も好ましくはメチルである]
のジフェノールから生じるホモ-またはコポリカーボネートである。
【0043】
添加剤の取り込みを達成するために、成分Aは好ましくは粉末、ペレットまたは粉末とペレットの混合物の状態で使用される。
【0044】
使用されるポリカーボネートは、異なるポリカーボネートの混合物、例えばポリカーボネートA1およびA2の混合物でもよい。
【0045】
芳香族ポリカーボネートA1の量は、ポリカーボネートの合計量に基づき、25.0~85.0重量%、好ましくは28.0~84.0重量%、特に好ましくは30.0~83.0重量%であり、この芳香族ポリカーボネートは、ISO 1133(試験温度300℃、質量1.2kg)に従い決定された、好ましくは7~15cm/10分のメルトボリュームフローレートMVR、より好ましくは8~12cm/10分のメルトボリュームフローレートMVR、特に好ましくは8~11cm/10分のメルトボリュームフローレートMVRを有し、ビスフェノールAに基づくものである。
【0046】
全体のポリカーボネートの量に対する、紛体の芳香族ポリカーボネートA2の量は、3.0~12.0重量%、好ましくは4.0~11.0重量%、より好ましくは3.0~10.0重量%であり、この芳香族ポリカーボネートは、ISO 1133(試験温度300℃、質量1.2kg)に従い決定された、好ましくは3~8cm/10分のメルトボリュームフローレートMVR、より好ましくは6~10cm/10分のメルトボリュームフローレートMVRを有し、好ましくはビスフェノールAに基づくものである。
【0047】
好ましい実施態様では、組成物は、成分Aとして式(1):
【化6】
[式中、
は、水素またはC~Cアルキル、好ましくは水素であり、
は、C~Cアルキル、好ましくはメチルであり、
nは、0、1、2または3、好ましくは3である]
のモノマー単位を含む1つ以上のコポリカーボネートを、場合により一般式(2):
【化7】
[式中、
は、H、直鎖状または分岐鎖状C~C10アルキル、好ましくは直鎖状または分岐鎖状C~Cアルキル、特に好ましくは直鎖状または分岐鎖状C~Cアルキル、非常に特に好ましくはHまたはCアルキル(メチル)であり、かつ
は、直鎖状または分岐鎖状C~C10アルキル、好ましくは直鎖状または分岐鎖状C~Cアルキル、特に好ましくは直鎖状または分岐鎖状C~Cアルキル、非常に特に好ましくはCアルキル(メチル)である]
の1つ以上のモノマー単位を含有している、追加の芳香族ホモ-またはコポリカーボネートと組み合わせて含み、
この場合によりさらに存在する追加の芳香族ホモ-またはコポリカーボネートは、式(1)のモノマー単位を一切含まないものである。この実施態様では、本発明の組成物は成分B)を、0.05~7.5重量%、好ましくは0.05~6重量%、より好ましくは0.05~5重量%、最も好ましくは0.05~1重量%しか含まない。
【0048】
一般式(1)のモノマー単位は、一般式(1’):
【化8】
[式中、
は、水素またはC~Cアルキル、好ましくは水素であり、
は、C~Cアルキル、好ましくはメチルであり、かつ
nは、0、1、2または3、好ましくは3である]
の1つ以上の対応するジフェノールによって導入される。
【0049】
式(1’)のジフェノールおよびホモポリカーボネート中への使用は、例えばDE 3918406に開示されている。
【0050】
特に好ましいのは、式(1a):
【化9】
を有する1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)である。
【0051】
式(1)の1つ以上のモノマー単位に加えて、コポリカーボネートは、式(3):
【化10】
[式中、
およびRは、独立して、H、C~C18アルキル、C~C18アルコキシ、ClまたはBrなどのハロゲン、またはそれぞれ置換されていてもよいアリールまたはアラルキルであり、好ましくはHであり、あるいは
~C12アルキル、より好ましくはHまたはC~Cアルキル、最も好ましくはHまたはメチルであり、
Yは単結合、-SO-、-CO-、-O-、-S-、C~CアルキレンまたはC~Cアルキリデン、ヘテロ原子を含む芳香環にさらに融合していてもよいC~C12アリーレンである]
の1つ以上のモノマー単位を含んでいてもよい。
【0052】
一般式(3)のモノマー単位は、一般式(3a):
【化11】
[式中、
、RおよびYは、それぞれ、式(3)について既に定義したとおりである]
の1つ以上の対応するジフェノールによって導入される。
【0053】
非常に特に好ましい式(3a)のジフェノールは、一般式(3b)のジフェノールである:
【化12】
[式中、
は、H、直鎖状または分岐鎖状C~C10アルキル、好ましくは直鎖状または分岐鎖状C~Cアルキル、より好ましくは直鎖状または分岐鎖状C~Cアルキル、最も好ましくはHまたはC-アルキル(メチル)であり、かつ
は直鎖状または分岐鎖状C~C10アルキル、好ましくは直鎖状または分岐鎖状C~Cアルキル、より好ましくは直鎖状または分岐鎖状C~Cアルキル、最も好ましくはCアルキル(メチル)である]。
【0054】
ここで、特にジフェノール(3c)が非常に好ましい。
【化13】
【0055】
一般式(3a)のジフェノールは、単独で使用してもよいし、または互いに混合して使用してもよい。ジフェノールは文献から知られているか、または文献の方法から製造可能である(例えば、H. J. Buyschら、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、VCH、New York 1991、第5版、第19巻、348頁を参照のこと)。
【0056】
コポリカーボネート中の式(1)のモノマー単位の合計比率は、好ましくは0.1~88mol%、より好ましくは1~86mol%、一層より好ましくは5~84mol%であり、特に10~82mol%である(使用されたすべてのジフェノールのモルの合計に基づく、式(1’)のジフェノールのモルの合計)。
【0057】
コポリカーボネートは、ブロックおよびランダムのコポリカーボネートの状態で存在していてもよい。ランダムコポリカーボネートが特に好ましい。コポリカーボネート中のジフェノキシドモノマー単位の度数の比は、使用されたジフェノールの分子比から計算される。
【0058】
一般式(2)のモノマー単位は一般式(2a):
【化14】
[式中、
は、H、直鎖状または分岐鎖状C~C10アルキル、好ましくは直鎖状または分岐鎖状C~Cアルキル、より好ましくは直鎖状または分岐鎖状C~Cアルキル、最も好ましくはHまたはCアルキル(メチル)であり、かつ、
は直鎖状または分岐鎖状C~C10アルキル、好ましくは直鎖状または分岐鎖状C~Cアルキル、より好ましくは直鎖状または分岐鎖状C~Cアルキル、最も好ましくはCアルキル(メチル)である]
のジフェノールによって導入される。
【0059】
ここで、ビスフェノールAが非常に好ましい。
【0060】
一般式(2)の1つ以上のモノマー単位に加えて、存在していてもよいホモ-またはコポリカーボネートは、コポリカーボネートについて既に記載したように、式(3)の1つ以上のモノマー単位を含有していてもよい。
【0061】
本発明の組成物が式(1)のモノマー単位を含有しているコポリカーボネートを含んでいる場合、組成物中の式(1)のモノマー単位を含有しているコポリカーボネートの合計量は、好ましくは少なくとも3.0重量%、より好ましくは少なくとも5.0重量%である。
【0062】
好ましい実施態様では、本発明の組成物は、成分Aとして、式(1)のモノマー単位を含むコポリカーボネートと、ビスフェノールAに基づくホモポリカーボネートとのブレンドを含んでいる。
【0063】
本発明の組成物が式(1)のモノマー単位を含有しているコポリカーボネートを含んでいる場合、成分A中の式(1)のモノマー単位の合計比率は、成分Aの1つ以上のポリカーボネート中の式(1)および(3)のすべてのモノマー単位のモルの合計に基づき、好ましくは0.1~88mol%、より好ましくは1~86mol%、一層より好ましくは5~84mol%、特に10~82mol%である。
【0064】
好ましい実施態様では、本発明の組成物は、組成物中に式(1)のモノマー単位を含有しているコポリカーボネートの量が、少なくとも20重量%であるという点で特徴づけられている。
【0065】
成分B
本発明の組成物は、成分Bとして、少なくとも1つのイソソルビドジエステルを含む。エステルはジグリセリンの異なる異性体に基づいていてもよい。種々のカルボン酸に基づくエステルが好適である。純粋化合物の代わりに混合物を使用することも可能である。
【0066】
本発明に従って使用されるイソソルビドジエステルの基礎を形成するイソソルビドの一般式は、以下の通りである。
【化15】
【0067】
より好ましくは、本発明に従って使用されるイソソルビドジエステルは、D-イソソルビドに基づくものであり、これは以下の式を有する。
【化16】
【0068】
本発明の組成物中に存在するイソソルビドジエステルは、好ましくは4~30個の炭素原子の鎖長を有する、飽和または一価不飽和もしくは多価不飽和のモノカルボン酸から生じる。
【0069】
好適なモノカルボン酸は、例えば、カプリル酸(C15COOH、オクタン酸)、カプリン酸(C19COOH、デカン酸)、ラウリン酸(C1123COOH、ドデカン酸)、ミリスチン酸(C1327COOH、テトラデカン酸)、パルミチン酸(C1531COOH、ヘキサデカン酸)、マルガリン酸(C1633COOH、ヘプタデカン酸)、ステアリン酸(C1735COOH、オクタデカン酸)、アラキジン酸(C1939COOH、エイコサン酸)、ベヘン酸(C2143COOH、ドコサン酸)、リグノセリン酸(C2347COOH、テトラコサン酸)、パルミトレイン酸(C1529COOH、(9Z)-ヘキサデカ-9-エン酸)、ペトロセリン酸(C1733COOH、(6Z)-オクタデカ-6-エン酸)、(9Z)-オクタデカ-9-エン酸)、エライジン酸(C1733COOH、(9E)-オクタデカ-9-エン酸)、リノール酸(C1731COOH、(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン酸)、アルファ-およびガンマ-リノレン酸(C1729COOH、(9Z,12Z,15Z)-オクタデカ-9,12,15-トリエン酸および(6Z,9Z,12Z)-オクタデカ-6,9,12-トリエン酸)、アラキドン酸(C1931COOH、(5Z,8Z,11Z,14Z)-エイコサ-5,8,11,14-テトラエン酸)、チムノドン酸(C1929COOH、(5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-エイコサ-5,8,11,14,17-ペンタエン酸)およびセルボン酸(C2131COOH、(4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z)-ドコサ-4,7,10,13,16,19-ヘキサエン酸)である。
【0070】
特に好ましいのは、4~18個の炭素原子、より好ましくは6~16個の炭素原子を、最も好ましくは8~14個の炭素原子の鎖長を有している飽和した脂肪族モノカルボン酸である。
【0071】
イソソルビドジエステルは1種のモノカルボン酸または2種の異なるモノカルボン酸から生じてもよい。イソソルビドジエステルは、個々に、または混合物で存在してもよい。
【0072】
本発明に従い組成物中に存在するイソソルビドジエステルは好ましくは一般式(IV):
【化17】
を有し、イソソルビド、好ましくはDイソソルビドと、式R-COOHおよびR-COOHの一価不飽和または多価不飽和のモノカルボン酸とから生じ、ここで、RおよびRは同一でも異なっていてもよい。
【0073】
およびRはそれぞれ好ましくは、式C2n+1の、飽和、分岐鎖状、または非分岐鎖状の脂肪族基、あるいは式C2n-mの一価不飽和または多価不飽和、分岐鎖状、または非分岐鎖状の脂肪族基であり、ここで、nは3~29の数であり、mは1、3、5、7、9または11である。式C2n-mの脂肪族基は一価不飽和(m=1)、二不飽和(m=3)、三不飽和(m=5)、四不飽和(m=7)、五不飽和(n=9)または六不飽和(m=11)であってもよい。
【0074】
より好ましくは、nは、3~17、一層より好ましくは5~15、特に7~13の数である。
【0075】
式C2n+1の非分岐鎖状アルキル基は、例えば、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ヘキサデシルまたはn-オクタデシルである。
【0076】
好適なイソソルビドジエステルは、例えばイソソルビドとカプリル酸またはデカン酸またはそれらの混合物とのエステル化によって得られるもの、およびそれらの混合物である。これらは、例えば商品名Polysorb ID37またはPolysorb ID46としてRoquetteから入手可能である。
【0077】
ポリカーボネート組成物は好ましくは0.05~15.0重量%、より好ましくは0.1~10重量%のイソソルビドジエステルを含有している。本発明の一つの実施態様では、本発明の組成物は0.05~8.0重量%、好ましくは0.1~6.0重量%のイソソルビドジエステルを含有している。
【0078】
成分C
好ましく好適な熱安定剤は、トリフェニルホスフィン、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(Irgafos(商標)168)、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジイルビスホスホナイト、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオネート(Irganox(商標)1076)、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト(Doverphos(商標)S-9228)である、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト(ADK STAB PEP-36)である。当該熱安定剤は単独でまたは混合物(例えばIrganox(商標)B900(1:3の比でのIrgafos(商標)168とIrganox(商標)1076の混合物)またはIrganox(商標)B900/Irganox(商標)1076とのDoverphos(商標)S-9228 PC)で使用される。熱安定剤は、好ましくは0.003~0.2重量%の量で使用される。
【0079】
成分D
さらに存在していてもよいものとしては、最大2.0重量%、好ましくは0.01~2.0重量%の他の従来の添加剤(「追加の添加剤」)である。追加の添加剤の群には熱安定剤は含まれず、その理由としてはこれらが既に成分Cとして記載されているためである。
【0080】
ポリカーボネートに慣習的に加えられるような添加剤は、ポリカーボネートに慣習的な量の、特にEP-A 0 839 623、WO-A 96/15102、EP-A 0 500 496または「Plastics Additives Handbook」Hans Zweifel、第五版 2000、Hanser Verlag、Munichに記載されている、酸化防止剤、離型剤、難燃剤、紫外線吸収剤、IR吸収剤、静電気防止剤、蛍光増白剤、光散乱剤、有機顔料などの着色剤および/またはレーザーマーキングのための添加剤である。これらの添加剤は、単独で、または混合物で加えてもよい。
【0081】
好ましい添加剤は、400nm未満の最小透過率および400nm超の最大透過率を有する特定の紫外線安定剤である。本発明の組成物中での使用に特に好適な紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール、トリアジン、ベンゾフェノンおよび/またはアリール化されたシアノアクリレートである。
【0082】
特に好適な紫外線吸収剤は、2-(3’,5’-ビス(1,1-ジメチルベンジル)-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(Tinuvin(商標)234、BASF、Ludwigshafen)、2-(2’-ヒドロキシ-5’-(tert-オクチル)フェニル)ベンゾトリアゾール(Tinuvin(商標)329、BASF、Ludwigshafen)、ビス(3-(2H-ベンゾトリアゾリル)-2-ヒドロキシ-5-tert-オクチル)メタン(Tinuvin(商標)360、BASF、Ludwigshafen)、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(ヘキシロキシ)フェノール(Tinuvin(商標)1577、BASF、Ludwigshafen)などのヒドロキシベンゾトリアゾール、ならびに2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン(Chimassorb(商標)22、BASF、Ludwigshafen)および2-ヒドロキシ-4-(オクチロキシ)ベンゾフェノン(Chimassorb(商標)81、BASF、Ludwigshafen)などのベンゾフェノン、2,2-ビス[[(2-シアノ-1-オキソ-3,3-ジフェニル-2-プロペニル)オキシ]メチル]-1,3-プロパンジイルエステル(9CI)(Uvinul(商標)3030、BASF、Ludwigshafen)、2-[2-ヒドロキシ-4-(2-エチルヘキシル)オキシ]フェニル-4,6-ジ(4-フェニル)フェニル-1,3,5-トリアジン(Tinuvin(商標)1600、BASF、Ludwigshafen)、2,2’-(1,4-フェニレンジメチリデン)ビスマロン酸テトラエチル(Hostavin(商標)B-Cap、Clariant AG)またはN-(2-エトキシフェニル)-N’-(2-エチルフェニル)エタンジアミド(Tinuvin(商標)312、CAS No.23949-66-8、BASF、Ludwigshafen)である。
【0083】
特に好ましい特定の紫外線安定剤は、Tinuvin(商標)360、Tinuvin(商標)329および/またはTinuvin(商標)312であり、非常に特に好ましいのはTinuvin(商標)329およびTinuvin(商標)360である。
【0084】
またこれらの紫外線吸収剤の混合物を使用することも可能である。
【0085】
組成物が組成物全体に基づいて、最大0.8重量%、好ましくは0.05重量%~0.5重量%、より好ましくは0.1重量%~0.4重量%~の量の紫外線吸収剤を含む場合が好ましい。
【0086】
本発明の組成物は、エステル交換反応安定剤としてホスフェートまたはスルホネートエステルを含んでいてもよい。リン酸トリイソオクチルがエステル交換反応安定剤として存在する場合が好ましい。
【0087】
組成物は、例えば、GMSの離型剤を含まなくてもよい。イソソルビドジエステル自体が離型剤としての役割を果たす。
【0088】
組成物が少なくとも1種の熱安定剤(成分C)、場合により追加の添加剤(成分D)、エステル交換反応安定剤、特にリン酸トリイソオクチル(TOF)または紫外線吸収剤を含む場合が特に好ましい。
【0089】
成分A~Dを含む本発明の組成物は、個々の構成要素を組み合わせて、混合し、均質化することによる通常の取り込み方法によって製造され、この均質化は特にせん断力を適用することによるメルト中で実施されることが特に好ましい。組み合わせと混合は、粉末プレミックスを使用して、溶解均質化に先立って場合により達成される。
【0090】
成分B~Dと、ペレットのプレミックスまたはペレットと粉末のプレミックスを使用することも可能である。
【0091】
さらに、使用可能なものは、好適な溶媒中の混合している成分の溶液から形成されたプレミックスであり、その場合には、均質化は溶液中で達成されてもよく、溶媒はその後に除去される。
【0092】
特に、本発明の組成物の成分B~Dは、よく知られている方法によって、またはマスターバッチとして、ポリカーボネートに組み込むことが可能である。
【0093】
成分B~Dを単独または混合物として組み込むためにマスターバッチを使用することが好ましい。
【0094】
これに関して、本発明の組成物は、スクリュー押出機(例えばZSKニ軸押出機)、捏和機またはブラベンダーミルもしくはバンベリーミルなどの慣習的な装置中で組み合わせて、混合し、均質化し、続いて押し出すことができる。押出成形物は押出し後に冷却して粉砕することができる。個々の成分を前もって混合し、次に、単独で残りの出発物質を加えても、および/または同様に混合することも可能である。
【0095】
メルト中のプレミックスの組み合わせおよび混合は射出成形機の可塑化ユニット中で達成してもよい。この場合、メルトは後の工程で直接成形品に変換される。
【0096】
本発明の組成物は、標準的な機械中、例えば押出機または射出成形機中で従来的なやり方で加工して任意の成形品、例えばフィルム、シートまたはボトルを得ることができる。
【0097】
成形品の製造は、好ましくは射出成形、押出し、または鋳造プロセスでの溶液から達成される。
【0098】
本発明の組成物は多層システムを製造するのに好適である。これはプラスチック材料で作られた成形品の上に1つ以上の層でポリカーボネート組成物を適用することを含む。適用は同時に、または成形品の成形品直後に、例えばインサートフィルム成形、共押出しまたは多成分の射出成形によって実施してもよい。しかしながら、適用は、例えばフィルムでの積層により予め成形された本体に行ってもよいし、既存の成形品を密封してオーバーモルドすることによって行ってもよいし、または溶液からコーティングによって行ってもよい。
【0099】
本発明の組成物は、自動車部門における部品、例えばベゼル、ヘッドライトカバーまたは、フレーム、レンズ、およびコリメーターまたは導光管用、ならびに電気および電子(EE)およびIT部門におけるフレーム部品を製造するため、特に厳格な流動性の条件(薄層用途)を課す用途に好適である。そのような用途には、例えば、ウルトラブック用の例えばスクリーンまたはハウジング、あるいはLEDディスプレイ技術、例えばOLEDディスプレイまたはLCDディスプレイ、またはe-インク装置のためのフレームが含まれる。さらなる用途は、スマートホン、タブレット、ウルトラブック、ノートブックまたはノート型パソコンなどの移動通信端末だけでなく、サテナビ、スマートウオッチ、または心拍計のハウジング部品、同様に薄壁設計での電気的用途、例えば、家庭内および工業用のネットワークシステムおよびスマートメーターハウジング部品である。
【0100】
本発明の組成物から作製された成形品および押出成形物、同様に本発明の組成物を含む成形体、押出成形物、および多層システムは、本出願の主題の一部を同様に形成する。
【0101】
本発明の組成物の特別な特徴として、イソソルビドジエステルを含有しているためにそれらは格別なレオロジー性および光学性を示し、かつ動的および静的摩擦の減少した係数を示す。本発明の組成物のさらなる利点は、任意の追加の離型剤、例えばPETS(テトラステアリン酸ペンタエリトリトール)と一緒に調剤することが可能であるということである。これらの添加剤はしばしば熱的特性を低下させる。したがって、本発明の組成物は一切テトラステアリン酸ペンタエリトリトールを含まないことが好ましい。したがって本発明は、芳香族ポリカーボネート(成分A)、場合により熱安定剤(成分C)および場合により追加の添加剤(成分D)を含む組成物の光学透過性を改善するためならびに/あるいは動的または静的な摩擦係数を低下させるための、1種以上の上記イソソルビドジエステルの使用を提供する。
【0102】
本発明の組成物のための上記の実施態様は、適用な可能な場合に、本発明の使用にも当てはまる。
【0103】
以下の例は、本発明を限定することなく、本発明を例示することを意図している。
【実施例
【0104】
1.原料と試験方法の説明
以下の例に記載されたポリカーボネート組成物は、化合により10kg/hのスループットでBerstorff ZE 25押出機で製造された。溶融温度は275℃であった。
【0105】
成分A-1:側面の押出機による添加により製造された、12.5cm/10分のメルトボリュームフローレートMVR(ISO 1133に従い、300℃の試験温度および1.2kgの負荷にて)を有する、成分C(熱安定剤)として、トリフェニルホスフィンを含む、ビスフェノールAに基づく直鎖状ポリカーボネート。
成分A-2:側面の押出機による添加により製造された、9.5cm/10分のメルトボリュームフローレートMVR(ISO 1133に従い、300℃の試験温度および1.2kgの負荷にて)を有する、成分C(熱安定剤)として、トリフェニルホスフィンを含む、ビスフェノールAに基づく直鎖状ポリカーボネート。
成分A-3:6cm/10分のメルトボリュームフローレートMVR(ISO 1133に従い、300℃の試験温度および1.2kgの負荷にて)を有する、ビスフェノールAに基づく直鎖状ポリカーボネート粉末。
成分A-4:側面の押出機による添加により製造された、32cm/10分のメルトボリュームフローレートMVR(ISO 1133に従い、300℃の試験温度および1.2kgの負荷にて)を有する、成分C(熱安定剤)としてトリフェニルホスフィン、成分D-2(紫外線安定剤)としてTinuvin 329、および成分D-3(離型剤)としてモノステアリン酸グリセロールを含む、ビスフェノールAに基づく直鎖状ポリカーボネート。
成分A-5:19cm/10分のメルトボリュームフローレートMVR(ISO 1133に従い、300℃の試験温度および1.2kgの負荷にて)を有する、ビスフェノールAに基づく直鎖状ポリカーボネート粉末。
成分A-6:Covestro AGからの、18cm/10分のMVR(330℃/2.16kg)および182℃の軟化温度(VST/B 120)を有する、成分C(熱安定剤)としてトリフェニルホスフィンを含む、ビスフェノールAおよびビスフェノールTMCに基づくコポリカーボネート。
成分A-7:2cm/10分のメルトボリュームフローレートMVR(ISO 1133に従い、300℃の試験温度および1.2kgの負荷にて)を有する、ビスフェノールAに基づく分岐鎖状ポリカーボネート。
成分B-1:Roquette FreresからのPolysorb ID37イソソルビドジエステル。
成分B-2:Roquette FreresからのPolysorb ID46イソソルビドジエステル。
成分C:BASFからのトリフェニルホスフィン
成分D-1:Lanxess AGからのリン酸トリイソオクチル(TOF)
成分D-2:BASFからのTinuvin 329
成分D-3:Emery Oleochemicals,Loxstedtからのモノステアリン酸グリセロール
シャルピー切り欠き衝撃耐性は、測定すると80mm×10mm×3mmである、片面に射出した試験片上に、ISO 7391/180Aにより、室温にて測定した。
ビカット軟化温度VST/B50は、Coesfeld Materialtestからの機器、Coesfeld Eco 2920を使用して、測定すると80mm×10mm×3mmである試験片上に、50Nのラム負荷(ram loading)、50℃/または120℃/hの加熱速度で、ISO 306に従った加熱ひずみ耐性の基準として決定した。
メルトボリュームフローレート(MVR)は、Zwick Roell からの機器、Zwick 4106を使用して、ISO 1133(300℃の試験温度、1.2kgまたは2.16kgの質量にて)に従い決定した。さらに、MVRは20分の予熱時間後に測定した。これは高い熱応力下での溶解安定性の指標である。
黄色指数(Y.I.)は4mmのシート厚の試験片プラーク上でASTM E 313(視野:10°/イルミナント:D65)に従い決定した。
スペクトルのVIS範囲(400nm~800nm)内の透過率は、4mmまたは12mmのシート厚の試験片プラーク上でISO 13468により決定した。
ヘイズは、4mmまたは12mmのシート厚の試験片プラーク上でASTM D1003により決定した。
試験片プラークは以下の表中で報告された溶融温度で射出成形によって製造された。
溶液粘度eta relはウッベローデ粘度計を用いてISO1628により決定した。
せん断粘度(溶融粘度)は機器、Gottfert Visco-Robo 45.00を用いてISO 11443の通りに決定した。
【0106】
2.組成物
【表1】
【0107】
表1は、本発明の実施例2~6が比較例1と比べて高いMVR値、低い溶融粘度および同時に改善された光学性を有することを示す。
【0108】
【表2】
【0109】
表2は、本発明の実施例8~11が比較例7と比べて高いMVR値、低い溶融粘度および同時に改善された光学性を有することを示す。
【0110】
【表3】
【0111】
表3は、本発明の実施例13~17が比較例12と比べて高いMVR値、低い溶融粘度および同時に改善された光学性を有することを示す。同時に、実施例13~17は、比較例12と比べて低下した静的および動的の摩擦係数を有する。
【0112】
【表4】
【0113】
表4は、本発明の実施例19~22が比較例18と比べて高いMVR値、低い溶融粘度および同時に改善された光学性を有することを示す。同時に、実施例19~22は、比較例18と比べて低下した静的および動的の摩擦係数を有する。
【0114】
【表5】
【0115】
表5は、本発明の実施例24~26が比較例23と比べて高いMVR値、低い溶融粘度および同時に改善された光学性を有することを示す。
【0116】
【表6】
【0117】
結果は、実施例28~30の本発明のコポリカーボネート組成物が非常に良好な溶融安定性(MVRまたはIMVR)を有することを示す。
【0118】
イソソルビドジエステルの添加は、比較例27と比べて流動性を明確に改善する。これは種々の温度および全体のせん断範囲(溶融粘度)に当てはまる。
【0119】
同時に、光学性が改善され、これは比較例27と比べて高い光学透過率に現れる。
【0120】
【表7】
【0121】
表7における結果は、5重量%のイソソルビドジエステルで光学透過率を増加させることが可能であるが、より多い量では透過率に対しての悪影響があることを示す。多い量のイソソルビドジエステルでは加熱ひずみ耐性が著しく減少することがさらに見受けられる。
【0122】
【表8】
【0123】
表8中の結果は、実施例35~37の本発明のコポリカーボネート組成物が非常に良好な溶融安定性(MVRまたはIMVR)を有することを示す。
【0124】
光学性は明確に改善され、これは比較例34と比べて光学透過率が高く、黄色指数YIが低いことに現れている。
【0125】
イソソルビドジエステルの添加は、比較例34と比べて流動性を明確に改善する。これは押出しに特に重要である種々の温度および全体のせん断範囲(溶融粘度)に当てはまる。