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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】シャントセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/00 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
G01R15/00 500
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019002302
(22)【出願日】2019-01-10
(65)【公開番号】P2020112399
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000175722
【氏名又は名称】サンコール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】村上 建二
(72)【発明者】
【氏名】麦島 昭夫
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-021816(JP,A)
【文献】特開2017-011087(JP,A)
【文献】特開2013-124859(JP,A)
【文献】特開2000-131350(JP,A)
【文献】特開2017-211294(JP,A)
【文献】特開2017-015588(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1374381(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/00-17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗体と、
前記抵抗体を挟んで当該抵抗体に一体的に形成された一対の母材と、
前記母材上に固定される測定端子と、
前記測定端子が挿入され、前記母材と対向する位置に配置固定される基板と、を有し、
前記測定端子は、
軸部と、
前記測定端子が前記母材上に固定される際、当該母材上から突出されるように前記軸部の周方向外側に向かって突出する鍔部と、を有し、
前記一対の母材には、それぞれ、前記基板と対向する面に一体的に形成されている凸部と、該凸部が形成されている位置と背向する位置に形成されている凹部と、が所定の加工により形成され、
前記鍔部と、前記凸部とは、同一の厚みで形成され、
前記基板は、前記測定端子の軸部のみが挿入されて、該基板の下面が、前記鍔部及び前記凸部に載置され、この状態で、該基板の上面側に位置している前記測定端子の軸部の側周面を溶接することによって、前記母材と対向する位置に配置固定されてなるシャントセンサ。
【請求項2】
抵抗体と、
前記抵抗体を挟んで当該抵抗体に一体的に形成された一対の母材と、
前記母材上に固定される測定端子と、
固定用端子と、
前記測定端子及び前記固定用端子が挿入され、前記母材と対向する位置に配置固定される基板と、を有し、
前記測定端子は、
第1軸部と、
前記測定端子が前記母材上に固定される際、当該母材上から突出されるように前記第1軸部の周方向外側に向かって突出する第1鍔部と、を有し、
前記固定用端子は、
第2軸部と
前記第2軸部の周方向外側に向かって突出する第2鍔部と、を有し、
前記一対の母材には、それぞれ、前記基板と対向する面に一体的に形成されている凸部と、該凸部が形成されている位置と背向する位置に形成されている凹部と、が所定の加工により形成され、
前記第1鍔部の厚みは、前記凸部の厚みに前記第2鍔部の厚みを加えた厚みと、同一の厚みとなるように形成され、
前記基板は、前記測定端子の第1軸部及び前記固定用端子の第2軸部が挿入され、この際、前記凸部上に前記第2鍔部が載置されると共に、該基板の下面が、前記第1鍔部及び前記第2鍔部に載置され、この状態で、該基板の上面側に位置している前記測定端子の第1軸部の側周面及び前記固定用端子の第2軸部の側周面を溶接することによって、前記母材と対向する位置に配置固定されてなるシャントセンサ。
【請求項3】
抵抗体と、
前記抵抗体を挟んで当該抵抗体に一体的に形成された一対の母材と、
前記母材上に固定される測定端子と、
前記測定端子が挿入され、前記母材と対向する位置に配置固定される基板と、を有し、
前記測定端子は、軸部のみを有し、
前記一対の母材には、それぞれ、前記基板と対向する面に一体的に形成されている凸部と、該凸部が形成されている位置と背向する位置に形成されている凹部と、が所定の加工により形成され、
前記基板は、前記測定端子の軸部が挿入されて、該基板の下面が、前記凸部に載置され、この状態で、該基板の上面側に位置している前記測定端子の軸部の側周面を溶接することによって、前記母材と対向する位置に配置固定されてなるシャントセンサ。
【請求項4】
前記基板に固定されている固定用端子の一つは、当該基板上に形成されているグランドパターンに接続されてなる請求項に記載のシャントセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャント抵抗器に電流検出回路が搭載された基板が固定されたシャントセンサに関し、特に、電気自動車(EV車)、ハイブリット車(HV車)、プラグインハイブリット車(PHV車)等で使用される高電圧用途のバッテリーからモータ回路へ大電流が流れる電流経路の電流値を計測する際に用いられるシャントセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシャントセンサとして、特許文献1に記載のようなシャントセンサが知られている。このシャントセンサは、抵抗体と一対の電極を備えたシャント抵抗器の電極に、電流検出回路を搭載した基板が配置され、ネジ止め固定されているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-145813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなシャントセンサは、一番発熱する抵抗体とその周辺部分に基板が配置されているにも係らず、ネジ止め固定されていることから、放熱対策が不十分であるという問題があった。特に、大電流が流れる用途に用いられる際、放熱対策がより問題となっていた。
【0005】
さらに、ネジ止め固定するにあたっては、数千個/月~数万個/月の取付け作業をする際、作業工数が非常に煩雑である上、部品点数が増大するといった問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、放熱対策を向上させることができると共に、部品点数を削減することができるシャントセンサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の目的は、以下の手段によって達成される。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0008】
請求項1の発明によれば、抵抗体(20)と、
前記抵抗体(20)を挟んで当該抵抗体(20)に一体的に形成された一対の母材(21)と、
前記母材(21)上に固定される測定端子(22)と、
前記測定端子(22)が挿入され、前記母材(21)と対向する位置に配置固定される基板(3)と、を有し、
前記測定端子(22)は、
軸部(22a)と、
前記測定端子(22)が前記母材(21)上に固定される際、当該母材(21)上から突出されるように前記軸部(22a)の周方向外側に向かって突出する鍔部(22b)と、を有し、
前記一対の母材(21)には、それぞれ、前記基板(3)と対向する面に一体的に形成されている凸部(21b)と、該凸部(21b)が形成されている位置と背向する位置に形成されている凹部(21c)と、が所定の加工(例えば、ダボ加工等)により形成され、
前記鍔部(22b)と、前記凸部(21b)とは、同一の厚みで形成され、
前記基板(3)は、前記測定端子(22)の軸部(22a)のみが挿入されて、該基板(3)の下面が、前記鍔部(22b)及び前記凸部(21b)に載置され、この状態で、該基板(3)の上面側に位置している前記測定端子(22)の軸部(22a)の側周面を溶接(32)することによって、前記母材(21)と対向する位置に配置固定されてなることを特徴としている。
【0009】
求項2の発明によれば、抵抗体(20)と、
前記抵抗体(20)を挟んで当該抵抗体(20)に一体的に形成された一対の母材(21)と、
前記母材(21)上に固定される測定端子(22)と、
固定用端子(4A)と、
前記測定端子(22)及び前記固定用端子(4A)が挿入され、前記母材(21)と対向する位置に配置固定される基板(3A)と、を有し、
前記測定端子(22)は、
第1軸部(22a)と、
前記測定端子(22)が前記母材(21)上に固定される際、当該母材(21)上から突出されるように前記第1軸部(22a)の周方向外側に向かって突出する第1鍔部(22b)と、を有し、
前記固定用端子(4A)は、
第2軸部(4aA)と
前記第2軸部(4aA)の周方向外側に向かって突出する第2鍔部(4bA)と、を有し、
前記一対の母材(21)には、それぞれ、前記基板(3A)と対向する面に一体的に形成されている凸部(21bA)と、該凸部(21bA)が形成されている位置と背向する位置に形成されている凹部(21c)と、が所定の加工(例えば、ダボ加工等)により形成され、
前記第1鍔部(22b)の厚みは、前記凸部(21bA)の厚みに前記第2鍔部(4bA)の厚みを加えた厚みと、同一の厚みとなるように形成され、
前記基板(3A)は、前記測定端子(22)の第1軸部(22a)及び前記固定用端子(4A)の第2軸部(4aA)が挿入され、この際、前記凸部(21bA)上に前記第2鍔部(4bA)が載置されると共に、該基板(3A)の下面が、前記第1鍔部(22b)及び前記第2鍔部(4bA)に載置され、この状態で、該基板(3A)の上面側に位置している前記測定端子(22)の第1軸部(22a)の側周面及び前記固定用端子(4A)の第2軸部(4aA)の側周面を溶接(32,4dA)することによって、前記母材(21)と対向する位置に配置固定されてなることを特徴としている。
【0010】
求項3の発明によれば、抵抗体(20)と、
前記抵抗体(20)を挟んで当該抵抗体(20)に一体的に形成された一対の母材(21)と、
前記母材(21)上に固定される測定端子(22B)と、
前記測定端子(22B)が挿入され、前記母材(21)と対向する位置に配置固定される基板(3B)と、を有し、
前記測定端子(22B)は、軸部(22a)のみを有し、
前記一対の母材(21)には、それぞれ、前記基板(3B)と対向する面に一体的に形成されている凸部(21b)と、該凸部(21b)が形成されている位置と背向する位置に形成されている凹部(21c)と、が所定の加工(例えば、ダボ加工等)により形成され、
前記基板(3B)は、前記測定端子(22B)の軸部(22a)が挿入されて、該基板(3B)の下面が、前記凸部(21b)に載置され、この状態で、該基板(3B)の上面側に位置している前記測定端子(22B)の軸部(22a)の側周面を溶接(32B)することによって、前記母材(21)と対向する位置に配置固定されてなることを特徴としている。
【0011】
求項4の発明によれば、上記請求項に記載のシャントセンサにおいて、前記基板(3A)に固定されている固定用端子(4A)の一つは、当該基板(3A)上に形成されているグランドパターンに接続されてなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0013】
請求項1に係る発明によれば、母材(21)と対向する位置に基板(3)が配置される際、同一の厚みで形成されている凸部(21b)及び鍔部(22b)上に基板(3)が載置されることとなるから、母材(21)と基板(3)との間に空隙(S1)が形成されることとなり、もって、この空隙(S1)によって、抵抗体(20)及びその周辺で生じる熱が放熱されることとなる。
【0014】
しかして、本発明によれば、放熱対策を向上させることができる。
【0015】
また、本発明によれば、母材(21)と対向する位置に基板(3)を配置する際、従来のようにネジ止め固定するようなことはせず、溶接(32)のみで固定するようにしているから、部品点数を削減することができる。
【0016】
求項2に係る発明によれば、母材(21)と対向する位置に基板(3A)が配置される際、凸部(21bA)の厚みに第2鍔部(4bA)の厚みを加えた厚みと同一の厚みに形成されている第1鍔部(22b)、及び、凸部(21bA)上に載置されている第2鍔部(4bA)上に基板(3A)が載置されることとなるから、母材(21)と基板(3A)との間に空隙(S1)が形成されることとなり、もって、この空隙(S1)によって、抵抗体(20)及びその周辺で生じる熱が放熱されることとなる。
【0017】
しかして、本発明によれば、放熱対策を向上させることができる。
【0018】
また、本発明によれば、母材(21)と対向する位置に基板(3A)を配置する際、従来のようにネジ止め固定するようなことはせず、溶接(32,4dA)のみで固定するようにしているから、部品点数を削減することができる。
【0019】
請求項3に係る発明によれば、母材(21)と対向する位置に基板(3B)が配置される際、凸部(21b)上に基板(3B)が載置されることとなるから、母材(21)と基板(3B)との間に空隙(S1)が形成されることとなり、もって、この空隙(S1)によって、抵抗体(20)及びその周辺で生じる熱が放熱されることとなる。
また、本発明によれば、母材(21)と対向する位置に基板(3B)を配置する際、従来のようにネジ止め固定するようなことはせず、溶接(32B)のみで固定するようにしているから、部品点数を削減することができる。
【0020】
求項4の発明によれば、基板(3A)に固定されている固定用端子(4A)の一つは、当該基板(3A)上に形成されているグランドパターンに接続されているから、ノイズ対策を行うことができ、もって、高電圧用途のバッテリーからモータ回路へ大電流が流れる電流経路の電流値の計測を高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係るシャントセンサの斜視図である。
図2】同実施形態に係るシャントセンサの一部半断面図である。
図3】他の実施形態に係るシャントセンサの一部半断面図である。
図4】他の実施形態に係るシャントセンサの一部半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るシャントセンサの一実施形態を、図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明において、上下左右の方向を示す場合は、図示正面から見た場合の上下左右をいうものとする。
【0023】
本実施形態に係るシャントセンサは、特に、電気自動車(EV車)、ハイブリット車(HV車)、プラグインハイブリット車(PHV車)等で使用される高電圧用途のバッテリーからモータ回路へ大電流が流れる電流経路の電流値を計測する際に用いられるもので、図1及び図2に示すように、シャントセンサ1は、シャント抵抗器2と、基板3と、で構成されている。
【0024】
シャント抵抗器2は、抵抗体20と、抵抗体20を挟むように抵抗体20と一体的に形成された一対の母材21と、一対の母材21上にそれぞれ溶接により立設固定されている測定端子22とで構成されている。抵抗体20は、図1及び図2に示すように、例えば、厚み約3mm~5mmの厚板状で短尺の矩形状に形成されており、例えば、Cu-Mn系合金、Cu-Ni系合金、Ni-Cr系合金、等で形成されていることが好ましく、50μΩから200μΩ程度の抵抗体である。このように形成される抵抗体20の両側面20a,20bには、図1及び図2に示すように、図示左に位置する母材21が抵抗体20の一方の側面20aに溶接により接合され、図示右に位置する母材21が抵抗体20の他方の側面20bに溶接により接合されている。これにより、一対の母材21が、抵抗体20を挟むように抵抗体20と一体的に形成されることとなる。
【0025】
一方、母材21は、所謂バスパーと呼ばれるもので、銅等の金属からなり、図1及び図2に示すように、例えば、厚み約3mm~5mmの厚板状で、長尺の矩形状に形成されている。そして、この母材21の上面には、抵抗体20の両側面20a,20bの近傍に、図1及び図2に示すように、例えば、直径約1.5mm~2mm、深さ約1mm~1.5mmの円形状の凹孔21aが形成されている。また、この母材21の上面には、図1及び図2に示すように、凹孔21aから、抵抗体20の両側面20a,20bとは反対方向に所定間隔離れた位置に、母材21の長手方向と直交する方向に、厚板矩形状の凸部21bが一体的に形成されている。さらに、この母材21の下面には、図1及び図2に示すように、上記凸部21bが形成されている位置と背向する位置に、凹部21cが形成されている。なお、この凸部21b及ぶ凹部21cは、ダボ加工等により形成されているものである。
【0026】
他方、測定端子22は、電流検出用の基板3を実装可能なもので、銅,錫メッキ等で形成されており、図1及び図2に示すように、棒状の軸部22aと、軸部22aの下方側に位置する周方向より外側に向って突出して設けられている円形状の鍔部22bとで一体的に形成されている。この軸部22aは、電流値を測定する際に用いられる電流測定端子であって、その直径は、例えば、約1mm~1.5mmに形成され、凹孔21aの直径よりも径小に形成されている。これにより、図2に示すように、凹孔21a内に軸部22aが挿入できることとなる。
【0027】
一方、鍔部22bの直径は、例えば、約2.5mm~3mmに形成されており、凹孔21aの直径よりも若干径大に形成されている。これにより、図2に示すように、凹孔21a内には、軸部22aのみが挿入され、鍔部22bは、母材21の上面に載置されることとなる。この状態で、図2に示すように、鍔部22bの側周面を、抵抗溶接等により溶接22cするようにすれば、母材21上に測定端子22が立設固定されることとなる。なお、鍔部22bの厚みは、凸部21bの厚みとほぼ同一となっている。
【0028】
基板3は、図1に示すように、横長矩形状に形成され、樹脂等で形成されている基板本体30を備えている。この基板本体30には、図1及び図2に示すように、電流検出回路を構成する様々なICチップ31が搭載され、図示しない配線パターンによって電気的に接続されている。また、この基板本体30には、図1に示すように、測定端子22の軸部22aが挿入可能な貫通孔30aが穿設されている。この貫通孔30aは、上下方向に円形状に貫通して設けられ、直径約1.5mm~2mmに形成され、軸部22aの直径より若干径大に形成され、鍔部22bの直径より若干径小に形成されている。これにより、図2に示すように、貫通孔30a内に測定端子22の軸部22aのみが挿入され、基板本体30の下面は、測定端子22の鍔部22bに載置され、さらに、基板本体30の下面は、凸部21bに載置されることとなる。そしてこの状態で、図2に示すように、基板本体30の上面側に位置する軸部22aの側周面を、抵抗溶接等により溶接32するようにすれば、母材21と対向する位置に基板3が配置固定されることとなる。
【0029】
かくして、このように、母材21と対向する位置に基板3を配置固定するようにすれば、被検出電流が母材21から抵抗体20を流れることによって生じる電流値が測定端子22から取り出され、電流検出回路を構成する様々なICチップ31によって信号処理され、基板3の出力端子(図示せず)から検出電流として出力されることとなる。これにより、高電圧用途のバッテリーからモータ回路へ大電流が流れる電流経路の電流値を計測することができることとなる。なお、基板本体30には、図示はしないが、電源パターンと、グランドパターンが形成されている。
【0030】
しかして、以上説明した本実施形態によれば、母材21と対向する位置に基板3を配置固定した際、基板本体30の下面が、測定端子22の鍔部22bに載置されると共に、凸部21bに載置されることとなる。これにより、図2に示すように、母材21と基板3との間に空隙S1が形成されることとなり、もって、この空隙S1によって、抵抗体20及びその周辺で生じる熱が放熱されることとなる。
【0031】
しかして、本実施形態によれば、放熱対策を向上させることができる。
【0032】
また、本実施形態によれば、母材21と対向する位置に基板3を配置固定するにあたって、従来のようにネジ止め固定するようなことはせず、抵抗溶接等により溶接32のみで固定するようにしている。これにより、部品点数を削減することができる。
【0033】
なお、本実施形態において示したシャントセンサ1は、あくまで一例であり、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において種々の変形・変更が可能である。例えば、母材21と対向する位置に基板3を配置固定するにあたっては、より強固に固定するため、固定用端子を用いて固定するようにしても良い。この点、図3を参照して具体的に説明する。なお、図1及び図2に示すシャントセンサ1と同一の構成については、同一の符号を付し、詳細な説明は省略することとする。
【0034】
図3に示すシャントセンサ1Aは、シャント抵抗器2Aと、基板3Aと、固定用端子4Aとで構成されている。図3に示すシャント抵抗器2Aと、図1及び図2に示すシャント抵抗器2との相違は、図3に示す母材21の上面に形成されている凸部21bAの厚みが、図1及び図2に示す母材21の上面に形成されている凸部21bの厚みよりも小さい点であり、それ以外は同一である。これにより、凸部21bAの厚みが、鍔部22bの厚みよりも小さくなっている。
【0035】
一方、図3に示す基板3Aと、図1及び図2に示す基板3との相違は、固定用端子4Aが挿入できる固定用端子貫通孔30aAが新たに穿設されている点であり、それ以外は同一である。この固定用端子貫通孔30aAは、基板本体30の両側端面側に設けられており、上下方向に円形状に貫通して設けられている。
【0036】
固定用端子4Aは、図3に示すように、棒状の軸部4aAと、軸部4aAの下端に位置し、周方向より外側に向って突出して設けられている円形状の鍔部4bAとで一体的に形成されている。この軸部4aAは、図3に示すように、基板3Aに穿設されている固定用端子貫通孔30aAに挿入されるもので、直径が、固定用端子貫通孔30aAの直径よりも若干径小に形成されている。
【0037】
一方、鍔部4bAは、母材21の上面に形成されている凸部21bA上に載置されるもので、直径が、固定用端子貫通孔30aAの直径よりも若干径大に形成されている。これにより、図3に示すように、固定用端子貫通孔30aA内には、軸部4aAのみが挿入され、鍔部4bAは、凸部21bA上に載置されると共に、基板本体30の下面が、鍔部4bAに載置されることとなる。この状態で、図3に示すように、鍔部4bAの側周面を、抵抗溶接等により溶接4cAするようにすれば、母材21の上面に形成されている凸部21bA上に固定用端子4Aが立設固定されることとなる。さらに、基板本体30の上面側に位置する軸部4aAの側周面を、抵抗溶接等により溶接4dAするようにすれば、母材21と対向する位置に基板3Aがより強固に固定されることとなる。なお、鍔部4bAの厚みは、基板本体30の下面が鍔部4bAに載置されるように、凸部21bAの厚みと合わせると、鍔部22bの厚みとほぼ同一となっている。
【0038】
しかして、このようにしても、図3に示すように、母材21と基板3Aとの間に空隙S1が形成されることとなり、もって、この空隙S1によって、抵抗体20及びその周辺で生じる熱が放熱されることとなる。
【0039】
しかして、本実施形態においても、放熱対策を向上させることができる。
【0040】
またさらに、従来のようにネジ止め固定するようなことはせず、全て溶接のみで固定するようにしているため、部品点数を削減することができる。
【0041】
ところで、図3に示す固定用端子4Aとして例示している2本のうち、何れか1本は、基板本体30に形成されているグランドパターン(図示せず)に接続されている。これにより、ノイズ対策を行うことができ、もって、高電圧用途のバッテリーからモータ回路へ大電流が流れる電流経路の電流値の計測を高精度に行うことができる。
【0042】
ここで、図3に示す固定用端子4Aとして例示している2本すべてを基板本体30に形成されているグランドパターン(図示せず)に接続せず、何れか1本のみを接続しているのは、以下の理由によるものである。すなわち、図3に示す固定用端子4Aとして例示している2本すべてを、基板本体30に形成されているグランドパターン(図示せず)に接続してしまうと、2本の固定用端子4Aが電気的に接続されることになる。これにより、被検出電流が母材21から抵抗体20を流れることによって生じる電流が基板本体30に形成されているグランドパターン(図示せず)に流れてしまう可能性がある。しかして、このようにグランドパターン(図示せず)に電流が流れてしまうと、この流れてしまった電流も加わって、測定端子22から誤った電流値が取り出されてしまう可能性があり、もって、計測誤差が生じる可能性がある。それゆえ、本実施形態においては、このような計測誤差を生じる可能性を低減させるべく、図3に示す固定用端子4Aとして例示している2本すべてを基板本体30に形成されているグランドパターン(図示せず)に接続せず、何れか1本のみを接続するようにしている。
【0043】
また、図3においては、固定用端子4Aを2本用いる例を示したが、1本でも良く、3本以上用いても良い。さらに、空隙S1を形成するにあたって、図1及び図2に示すシャントセンサ1では、母材21の上面に形成されている凸部21bと、測定端子22の鍔部22bを形成する例を示し、図3に示すシャントセンサ1Aでは、母材21の上面に形成されている凸部21bAと、測定端子22の鍔部22b、固定用端子4Aの鍔部4bAを形成する例を示したが、凸部と鍔部のどちらか一方のみを形成し、空隙S1を形成するようにしても良い。この点、凸部のみを形成した場合の例として、図4を参照して具体的に説明する。なお、図1及び図2に示すシャントセンサ1、図3に示すシャントセンサ1Aと同一の構成については、同一の符号を付し、詳細な説明は省略することとする。
【0044】
図4に示すシャントセンサ1Bは、シャント抵抗器2Bと、基板3Bと、固定用端子4Bとで構成されている。図4に示すシャント抵抗器2Bと、図1及び図2に示すシャント抵抗器2との相違は、母材21の上面に、凹孔21a以外に、固定用端子4Bが挿入される固定用端子凹孔21aBが形成されいる点である。そしてさらに、測定端子22Bは、棒状の軸部22aのみで形成されている点である。
【0045】
一方、図4に示す基板3Bと、図1及び図2に示す基板3との相違は、固定用端子4Bが挿入できる固定用端子貫通孔30aBが新たに穿設されている点であり、それ以外は同一である。この固定用端子貫通孔30aBは、基板本体30の両側端面側に設けられており、上下方向に円形状に貫通して設けられている。
【0046】
さらに、図4に示す固定用端子4Bと、図3に示す固定用端子4Aとの相違は、固定用端子4Aが棒状の軸部4aAのみで形成されている点である。
【0047】
かくして、このように形成される測定端子22Bの軸部22aが、凹孔21a内に挿入され、この軸部22aの側周面が、抵抗溶接等により溶接22cBされることにより、もって、母材21上に測定端子22Bが立設固定されることとなる。また、固定用端子4Bの軸部4aAが、固定用端子凹孔21aB内に挿入され、この軸部4aAの側周面が、抵抗溶接等により溶接4cBされることにより、もって、母材21上に固定用端子4Bが立設固定されることとなる。
【0048】
しかして、この状態で、固定用端子貫通孔30aB内に、固定用端子4Bの軸部4aAを挿入し、貫通孔30a内に測定端子22の軸部22aを挿入すると、基板本体30の下面が、母材21の凸部21bに載置されることとなる。そしてこの状態で、図4に示すように、基板本体30の上面側に位置する軸部22aの側周面を抵抗溶接等により溶接32Bし、さらに、基板本体30の上面側に位置する軸部4aAの側周面を抵抗溶接等により溶接4dBするようにすれば、母材21と対向する位置に基板3Bが配置固定されることとなる。
【0049】
しかして、このようにしても、図4に示すように、母材21と基板3Bとの間に空隙S1が形成されることとなり、もって、この空隙S1によって、抵抗体20及びその周辺で生じる熱が放熱されることとなる。
【0050】
しかして、本実施形態においても、放熱対策を向上させることができる。
【0051】
またさらに、従来のようにネジ止め固定するようなことはせず、全て溶接のみで固定するようにしているため、部品点数を削減することができる。
【0052】
またさらに、複数の固定用端子4B(図示では、3本)を用いて、母材21と対向する位置に基板3Bを配置固定しているため、より強固に配置固定されることとなる。
【0053】
そして、複数の固定用端子4B(図示では、3本)のうち、1本の固定用端子4Bは、基板本体30に形成されているグランドパターン(図示せず)に接続されている。これにより、ノイズ対策を行うことができ、もって、高電圧用途のバッテリーからモータ回路へ大電流が流れる電流経路の電流値の計測を高精度に行うことができる。また、計測誤差を生じる可能性を低減させるべく、複数の固定用端子4B(図示では、3本)のうち、1本の固定用端子4Bのみが基板本体30に形成されているグランドパターン(図示せず)に接続されている。
【0054】
ところで、本実施形態においては、凸部21b、21bAの形状として、厚板矩形状を例示したが、それに限らず、円形状でも良く、基板本体30が載置できればどのような形状でも良い。さらに、母材21の上面に凸部21b、21bAを形成するにあたっては、母材21の幅方向全てに形成せずとも、幅方向中央部分にだけ形成するようにしても良く、どのような位置に形成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本実施形態において例示したシャントセンサ1,1A,1Bは、特に、電気自動車(EV車)、ハイブリット車(HV車)、プラグインハイブリット車(PHV車)等で使用される高電圧用途のバッテリーからモータ回路へ大電流が流れる電流経路の電流値を計測する際に用いるのが有用である。
【符号の説明】
【0056】
1,1A,1B シャントセンサ
2,2A,2B シャント抵抗器
3,3A,3B 基板
4A,4B 固定用端子
20 抵抗体
21 母材
21b 凸部
22,22B 測定端子
22a 軸部
22b 鍔部
32,32B 溶接
S1 空隙
図1
図2
図3
図4