(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】車両用灯具システム、車両用灯具の制御装置および車両用灯具の制御方法
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/14 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
B60Q1/14 A
(21)【出願番号】P 2019011641
(22)【出願日】2019-01-25
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】柴田 佳典
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/003887(WO,A1)
【文献】特開2018-118614(JP,A)
【文献】特開2010-272067(JP,A)
【文献】特開2013-107476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車前方を撮像して画像情報を生成する撮像部と、
第1時間をかけて画像情報を生成する第1動作と前記第1時間とは長さが異なる第2時間をかけて画像情報を生成する第2動作とを組み合わせて実行するよう前記撮像部を制御する撮像制御部と、
前記撮像部から得られる画像情報に基づいて、自車前方に並ぶ複数の個別領域それぞれの輝度を検出する輝度解析部と、
前記輝度解析部の検出結果に基づいて各個別領域に照射する光の照度値を定め、形成すべき配光パターンを決定する照度設定部であって、輝度が所定の高輝度範囲に含まれる前記個別領域には、前記配光パターンの形成により当該個別領域の輝度が下がるように照度値を設定し、輝度が所定の低輝度範囲に含まれる前記個別領域には、前記配光パターンの形成により当該個別領域の輝度が上がるように照度値を設定する照度設定部と、
前記複数の個別領域それぞれに照射する光の照度を独立に調節可能な光源部と、
前記配光パターンを形成するよう前記光源部を制御する光源制御部と、
を備え
、
前記光源制御部は、前記照度設定部が定める照度値に依存しない基準配光パターンを所定のタイミングで形成するよう前記光源部を制御し、
前記第2時間は、前記第1時間よりも長い時間であり、
前記撮像制御部は、前記基準配光パターンの形成下で前記第1動作を実行するよう前記撮像部を制御することを特徴とする車両用灯具システム。
【請求項2】
自車前方を撮像して画像情報を生成する撮像部と、
第1時間をかけて画像情報を生成する第1動作と前記第1時間とは長さが異なる第2時間をかけて画像情報を生成する第2動作とを組み合わせて実行するよう前記撮像部を制御する撮像制御部と、
前記撮像部から得られる画像情報に基づいて、自車前方に並ぶ複数の個別領域それぞれの輝度を検出する輝度解析部と、
前記輝度解析部の検出結果に基づいて各個別領域に照射する光の照度値を定め、形成すべき配光パターンを決定する照度設定部であって、輝度が所定の高輝度範囲に含まれる前記個別領域には、前記配光パターンの形成により当該個別領域の輝度が下がるように照度値を設定し、輝度が所定の低輝度範囲に含まれる前記個別領域には、前記配光パターンの形成により当該個別領域の輝度が上がるように照度値を設定する照度設定部と、
前記複数の個別領域それぞれに照射する光の照度を独立に調節可能な光源部と、
前記配光パターンを形成するよう前記光源部を制御する光源制御部と、
を備え
、
前記光源制御部は、前記照度設定部が定める照度値に依存しない基準配光パターンを所定のタイミングで形成するよう前記光源部を制御し、
前記第2時間は、前記第1時間よりも長い時間であり、
前記撮像制御部は、前記基準配光パターンの形成下で前記第2動作を実行するよう前記撮像部を制御することを特徴とする車両用灯具システム。
【請求項3】
前記撮像制御部は、前記第1動作と前記第2動作とを交互に繰り返すよう前記撮像部を制御する請求項1
または2に記載の車両用灯具システム。
【請求項4】
前記輝度解析部は、複数の個別領域における輝度を2値化し、
前記照度設定部は、相対的に輝度が高い前記個別領域に第1照度値を設定し、相対的に輝度が低い前記個別領域に前記第1照度値よりも明るい第2照度値を設定する請求項1
乃至3のいずれか1項に記載の車両用灯具システム。
【請求項5】
前記撮像部から得られる情報に基づいて、自車前方に存在する所定の物標を検出する物標解析部と、
前記物標解析部により検出された前記所定の物標の変位を前記輝度解析部の検出結果に基づいて検出するトラッキング部と、を備え、
前記照度設定部は、前記トラッキング部の検出結果に基づいて、前記物標の存在位置に応じて定まる特定個別領域に対して特定照度値を定める請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の車両用灯具システム。
【請求項6】
第1時間をかけて画像情報を生成する第1動作と前記第1時間とは長さが異なる第2時間をかけて画像情報を生成する第2動作とを組み合わせて実行するよう、自車前方を撮像して画像情報を生成する撮像部を制御する撮像制御部と、
前記撮像部から得られる画像情報に基づいて、自車前方に並ぶ複数の個別領域それぞれの輝度を検出する輝度解析部と、
前記輝度解析部の検出結果に基づいて各個別領域に照射する光の照度値を定め、形成すべき配光パターンを決定する照度設定部であって、輝度が所定の高輝度範囲に含まれる前記個別領域には、前記配光パターンの形成により当該個別領域の輝度が下がるように照度値を設定し、輝度が所定の低輝度範囲に含まれる前記個別領域には、前記配光パターンの形成により当該個別領域の輝度が上がるように照度値を設定する照度設定部と、
前記配光パターンを形成するよう、各個別領域に照射する光の照度を独立に調節可能な光源部を制御する光源制御部と、
を備え
、
前記光源制御部は、前記照度設定部が定める照度値に依存しない基準配光パターンを所定のタイミングで形成するよう前記光源部を制御し、
前記第2時間は、前記第1時間よりも長い時間であり、
前記撮像制御部は、前記基準配光パターンの形成下で前記第1動作を実行するよう前記撮像部を制御することを特徴とする車両用灯具の制御装置。
【請求項7】
第1時間をかけて画像情報を生成する第1動作と前記第1時間とは長さが異なる第2時間をかけて画像情報を生成する第2動作とを組み合わせて実行するよう、自車前方を撮像して画像情報を生成する撮像部を制御する撮像制御部と、
前記撮像部から得られる画像情報に基づいて、自車前方に並ぶ複数の個別領域それぞれの輝度を検出する輝度解析部と、
前記輝度解析部の検出結果に基づいて各個別領域に照射する光の照度値を定め、形成すべき配光パターンを決定する照度設定部であって、輝度が所定の高輝度範囲に含まれる前記個別領域には、前記配光パターンの形成により当該個別領域の輝度が下がるように照度値を設定し、輝度が所定の低輝度範囲に含まれる前記個別領域には、前記配光パターンの形成により当該個別領域の輝度が上がるように照度値を設定する照度設定部と、
前記配光パターンを形成するよう、各個別領域に照射する光の照度を独立に調節可能な光源部を制御する光源制御部と、
を備え
、
前記光源制御部は、前記照度設定部が定める照度値に依存しない基準配光パターンを所定のタイミングで形成するよう前記光源部を制御し、
前記第2時間は、前記第1時間よりも長い時間であり、
前記撮像制御部は、前記基準配光パターンの形成下で前記第2動作を実行するよう前記撮像部を制御することを特徴とする車両用灯具の制御装置。
【請求項8】
第1時間をかけて画像情報を生成する第1動作と前記第1時間とは長さが異なる第2時間をかけて画像情報を生成する第2動作とを組み合わせて実行するよう、自車前方を撮像して画像情報を生成する撮像部を制御するステップと、
前記撮像部から得られる画像情報に基づいて、自車前方に並ぶ複数の個別領域それぞれの輝度を検出するステップと、
検出した輝度に基づいて各個別領域に照射する光の照度値を定め、形成すべき配光パターンを決定するステップであって、輝度が所定の高輝度範囲に含まれる前記個別領域には、前記配光パターンの形成により当該個別領域の輝度が下がるように照度値を設定し、輝度が所定の低輝度範囲に含まれる前記個別領域には、前記配光パターンの形成により当該個別領域の輝度が上がるように照度値を設定するステップと、
前記配光パターンを形成するよう、各個別領域に照射する光の照度を独立に調節可能な光源部を制御するステップと、
を含
み、
前記光源部を制御するステップは、前記照度値を設定するステップで定める照度値に依存しない基準配光パターンを所定のタイミングで形成するよう前記光源部を制御することを含み、
前記第2時間は、前記第1時間よりも長い時間であり、
前記撮像部を制御するステップは、前記基準配光パターンの形成下で前記第1動作を実行するよう前記撮像部を制御することを含むことを特徴とする車両用灯具の制御方法。
【請求項9】
第1時間をかけて画像情報を生成する第1動作と前記第1時間とは長さが異なる第2時間をかけて画像情報を生成する第2動作とを組み合わせて実行するよう、自車前方を撮像して画像情報を生成する撮像部を制御するステップと、
前記撮像部から得られる画像情報に基づいて、自車前方に並ぶ複数の個別領域それぞれの輝度を検出するステップと、
検出した輝度に基づいて各個別領域に照射する光の照度値を定め、形成すべき配光パターンを決定するステップであって、輝度が所定の高輝度範囲に含まれる前記個別領域には、前記配光パターンの形成により当該個別領域の輝度が下がるように照度値を設定し、輝度が所定の低輝度範囲に含まれる前記個別領域には、前記配光パターンの形成により当該個別領域の輝度が上がるように照度値を設定するステップと、
前記配光パターンを形成するよう、各個別領域に照射する光の照度を独立に調節可能な光源部を制御するステップと、
を含
み、
前記光源部を制御するステップは、前記照度値を設定するステップで定める照度値に依存しない基準配光パターンを所定のタイミングで形成するよう前記光源部を制御することを含み、
前記第2時間は、前記第1時間よりも長い時間であり、
前記撮像部を制御するステップは、前記基準配光パターンの形成下で前記第2動作を実行するよう前記撮像部を制御することを含むことを特徴とする車両用灯具の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具システム、車両用灯具の制御装置および車両用灯具の制御方法に関し、特に自動車などに用いられる車両用灯具システム、車両用灯具の制御装置および車両用灯具の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の周囲の状態に基づいてハイビームの配光パターンを動的、適応的に制御するADB(Adaptive Driving Beam)制御が提案されている。ADB制御は、自車前方に位置する高輝度の光照射を避けるべき対象、つまり減光対象の有無をカメラで検出し、減光対象に対応する領域を減光あるいは消灯するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
減光対象としては、先行車や対向車等の前方車両が挙げられる。前方車両に対応する領域を減光あるいは消灯することで、前方車両の運転者に与えるグレアを低減することができる。また、減光対象としては、道路脇の視線誘導標(デリニエータ)、看板、道路標識等の反射率の高い反射物が挙げられる。このような反射物に対応する領域を減光することで、反射物により反射した光によって自車両の運転者が受けるグレアを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
反射物に対し光が照射されると、カメラの画像情報中で反射物は高輝度体となる。このため、この画像情報に基づいて決定される配光パターンは、反射物に対応する領域の照度を低減した配光パターンとなる。この配光パターンが形成されると、反射物は自発光体ではないため、この配光パターンの形成下で得られた画像情報中では反射物は低輝度体となる。したがって、この画像情報に基づいて決定される配光パターンは、反射物に対応する領域の照度を増大させた配光パターンとなる。つまり、反射物は、自車両に向けて光を照射(反射)する状態と光を照射しない状態とが周期的に切り替わる。この切り替えが高速であれば、自車両の運転者には高輝度時の明るさと低輝度時の明るさとが平均化された明るさで反射物が視認される。
【0006】
近年、車両用灯具の高輝度化が進み、反射物により反射する光の強度が高まる傾向にある。このため、反射物に起因するグレアによって運転者の視認性が低下することへの対策がより強く求められるようになってきている。しかしながら、従来のADB制御では、運転者に視認される反射物の明るさは一定であり、調節することができなかった。したがって、従来のADB制御では、自車両の運転者の視認性を高める上で改善の余地があった。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、運転者の視認性を高める技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は車両用灯具システムである。当該システムは、自車前方を撮像して画像情報を生成する撮像部と、第1時間をかけて画像情報を生成する第1動作と第1時間とは長さが異なる第2時間をかけて画像情報を生成する第2動作とを組み合わせて実行するよう撮像部を制御する撮像制御部と、撮像部から得られる画像情報に基づいて、自車前方に並ぶ複数の個別領域それぞれの輝度を検出する輝度解析部と、輝度解析部の検出結果に基づいて各個別領域に照射する光の照度値を定め、形成すべき配光パターンを決定する照度設定部であって、輝度が所定の高輝度範囲に含まれる個別領域には、配光パターンの形成により当該個別領域の輝度が下がるように照度値を設定し、輝度が所定の低輝度範囲に含まれる個別領域には、配光パターンの形成により当該個別領域の輝度が上がるように照度値を設定する照度設定部と、複数の個別領域それぞれに照射する光の照度を独立に調節可能な光源部と、配光パターンを形成するよう光源部を制御する光源制御部と、を備える。この態様によれば、運転者の視認性を高めることができる。
【0009】
上記態様において、撮像制御部は、第1動作と第2動作とを交互に繰り返すよう撮像部を制御してもよい。また、上記いずれかの態様において、輝度解析部は、複数の個別領域における輝度を2値化し、照度設定部は、相対的に輝度が高い個別領域に第1照度値を設定し、相対的に輝度が低い個別領域に第1照度値よりも明るい第2照度値を設定してもよい。また、上記いずれかの態様において、光源制御部は、照度設定部が定める照度値に依存しない基準配光パターンを所定のタイミングで形成するよう光源部を制御し、第2時間は、第1時間よりも長い時間であり、撮像制御部は、基準配光パターンの形成下で第1動作を実行するよう撮像部を制御してもよい。また、上記いずれかの態様において、光源制御部は、照度設定部が定める照度値に依存しない基準配光パターンを所定のタイミングで形成するよう光源部を制御し、第2時間は、第1時間よりも長い時間であり、撮像制御部は、基準配光パターンの形成下で第2動作を実行するよう撮像部を制御してもよい。また、上記いずれかの態様において、車両用灯具システムは、撮像部から得られる情報に基づいて、自車前方に存在する所定の物標を検出する物標解析部と、物標解析部により検出された所定の物標の変位を輝度解析部の検出結果に基づいて検出するトラッキング部と、を備え、照度設定部は、トラッキング部の検出結果に基づいて、物標の存在位置に応じて定まる特定個別領域に対して特定照度値を定めてもよい。
【0010】
本発明の他の態様は、車両用灯具の制御装置である。当該制御装置は、第1時間をかけて画像情報を生成する第1動作と第1時間とは長さが異なる第2時間をかけて画像情報を生成する第2動作とを組み合わせて実行するよう、自車前方を撮像して画像情報を生成する撮像部を制御する撮像制御部と、撮像部から得られる画像情報に基づいて、自車前方に並ぶ複数の個別領域それぞれの輝度を検出する輝度解析部と、輝度解析部の検出結果に基づいて各個別領域に照射する光の照度値を定め、形成すべき配光パターンを決定する照度設定部であって、輝度が所定の高輝度範囲に含まれる個別領域には、配光パターンの形成により当該個別領域の輝度が下がるように照度値を設定し、輝度が所定の低輝度範囲に含まれる個別領域には、配光パターンの形成により当該個別領域の輝度が上がるように照度値を設定する照度設定部と、配光パターンを形成するよう、各個別領域に照射する光の照度を独立に調節可能な光源部を制御する光源制御部と、を備える。
【0011】
また、本発明の他の態様は、車両用灯具の制御方法である。当該制御方法は、第1時間をかけて画像情報を生成する第1動作と第1時間とは長さが異なる第2時間をかけて画像情報を生成する第2動作とを組み合わせて実行するよう、自車前方を撮像して画像情報を生成する撮像部を制御するステップと、撮像部から得られる画像情報に基づいて、自車前方に並ぶ複数の個別領域それぞれの輝度を検出するステップと、検出した輝度に基づいて各個別領域に照射する光の照度値を定め、形成すべき配光パターンを決定するステップであって、輝度が所定の高輝度範囲に含まれる個別領域には、配光パターンの形成により当該個別領域の輝度が下がるように照度値を設定し、輝度が所定の低輝度範囲に含まれる個別領域には、配光パターンの形成により当該個別領域の輝度が上がるように照度値を設定するステップと、配光パターンを形成するよう、各個別領域に照射する光の照度を独立に調節可能な光源部を制御するステップと、を含む。
【0012】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム等の間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、運転者の視認性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態に係る車両用灯具システムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図2(A)は、光偏向装置の概略構成を示す正面図である。
図2(B)は、
図2(A)に示す光偏向装置のA-A断面図である。
【
図4】
図4(A)は、参考例に係るADB制御における反射物の明るさを説明するための図である。
図4(B)は、実施の形態に係るADB制御における反射物の明るさを説明するための図である。
【
図5】
図5(A)及び
図5(B)は、実施の形態に係る車両用灯具システムにおいて実行されるADB制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限りこの用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0016】
図1は、実施の形態に係る車両用灯具システムの概略構成を示す図である。
図1では、車両用灯具システム1の構成要素の一部を機能ブロックとして描いている。これらの機能ブロックは、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現される。これらの機能ブロックがハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0017】
車両用灯具システム1は、車両前方の左右に配置される一対の前照灯ユニットを有する車両用前照灯装置に適用される。一対の前照灯ユニットは左右対称の構造を有する点以外は実質的に同一の構成であるため、
図1には車両用灯具2として一方の前照灯ユニットの構造を示す。
【0018】
車両用灯具システム1が備える車両用灯具2は、車両前方側に開口部を有するランプボディ4と、ランプボディ4の開口部を覆うように取り付けられた透光カバー6と、を備える。透光カバー6は、透光性を有する樹脂やガラス等で形成される。ランプボディ4と透光カバー6とにより形成される灯室8内には、光源部10と、撮像部12と、制御装置50と、が収容される。
【0019】
光源部10は、自車前方に並ぶ複数の個別領域(
図3参照)のそれぞれに照射する光の照度(強度)を独立に調節可能な装置である。光源部10は、光源22と、反射光学部材24と、光偏向装置26と、投影光学部材28と、を有する。各部は、図示しない支持機構によりランプボディ4に取り付けられる。
【0020】
光源22は、LED(Light emitting diode)、LD(Laser diode)、EL(Electroluminescence)素子等の半導体発光素子や、電球、白熱灯(ハロゲンランプ)、放電灯(ディスチャージランプ)等を用いることができる。
【0021】
反射光学部材24は、光源22から出射した光を光偏向装置26の反射面に導くように構成される。反射光学部材24は、内面が所定の反射面となっている反射鏡で構成される。なお、反射光学部材24は、中実導光体などであってもよい。また、光源22から出射した光を光偏向装置26に直接導くことができる場合は、反射光学部材24を設けなくてもよい。
【0022】
光偏向装置26は、投影光学部材28の光軸上に配置され、光源22から出射された光を選択的に投影光学部材28へ反射するように構成される。光偏向装置26は、例えばDMD(Digital Mirror Device)で構成される。すなわち、光偏向装置26は、複数の微小ミラーをアレイ(マトリックス)状に配列したものである。これらの複数の微小ミラーの反射面の角度をそれぞれ制御することで、光源22から出射された光の反射方向を選択的に変えることができる。つまり、光偏向装置26は、光源22から出射された光の一部を投影光学部材28へ向けて反射し、それ以外の光を、投影光学部材28によって有効に利用されない方向へ向けて反射することができる。ここで、有効に利用されない方向とは、例えば、投影光学部材28には入射するが配光パターンの形成にほとんど寄与しない方向や、図示しない光吸収部材(遮光部材)に向かう方向と捉えることができる。
【0023】
図2(A)は、光偏向装置26の概略構成を示す正面図である。
図2(B)は、
図2(A)に示す光偏向装置のA-A断面図である。光偏向装置26は、複数の微小なミラー素子30がマトリックス状に配列されたマイクロミラーアレイ32と、ミラー素子30の反射面30aの前方側(
図2(B)に示す光偏向装置26の右側)に配置された透明なカバー部材34と、を有する。カバー部材34は、例えば、ガラスやプラスチック等で構成される。
【0024】
ミラー素子30は略正方形であり、水平方向に延びミラー素子30をほぼ等分する回動軸30bを有する。マイクロミラーアレイ32の各ミラー素子30は、光源22から出射された光を所望の配光パターンの一部として利用されるように投影光学部材28へ向けて反射する第1反射位置(
図2(B)において実線で示す位置)と、光源22から出射された光が有効に利用されないように反射する第2反射位置(
図2(B)において点線で示す位置)と、を切り替え可能に構成されている。各ミラー素子30は、回動軸30b周りに回動して、第1反射位置と第2反射位置との間で個別に切り替えられる。各ミラー素子30は、オン時に第1反射位置をとり、オフ時に第2反射位置をとる。
【0025】
図3は、自車前方の様子を模式的に示す図である。上述のように光源部10は、灯具前方に向けて互いに独立に光を照射可能な個別照射部としてのミラー素子30を複数有する。光源部10は、ミラー素子30によって自車前方に並ぶ複数の個別領域Rに光を照射することができる。各個別領域Rは、撮像部12、より具体的には例えば高速カメラ36の1ピクセルまたは複数ピクセルの集合に対応する領域である。本実施の形態では、各個別領域Rと各ミラー素子30とが対応付けられている。
【0026】
図2(A)および
図3では、説明の便宜上、ミラー素子30および個別領域Rを横10×縦8の配列としているが、ミラー素子30および個別領域Rの数は特に限定されない。例えば、マイクロミラーアレイ32の解像度(言い換えればミラー素子30および個別領域Rの数)は1000~30万ピクセルである。また、光源部10が1つの配光パターンの形成に要する時間は、例えば0.1~5msである。すなわち、光源部10は、0.1~5ms毎に配光パターンを変更することができる。
【0027】
図1に示すように、投影光学部材28は、例えば、前方側表面および後方側表面が自由曲面形状を有する自由曲面レンズからなる。投影光学部材28は、その後方焦点を含む後方焦点面上に形成される光源像を、反転像として灯具前方に投影する。投影光学部材28は、その後方焦点が車両用灯具2の光軸上、且つマイクロミラーアレイ32の反射面の近傍に位置するように配置される。なお、投影光学部材28は、リフレクタであってもよい。
【0028】
光源22から出射された光は、反射光学部材24で反射されて、光偏向装置26のマイクロミラーアレイ32に照射される。光偏向装置26は、第1反射位置にある所定のミラー素子30によって投影光学部材28へ向けて光を反射する。この反射された光は、投影光学部材28を通過して灯具前方に進行し、各ミラー素子30に対応する各個別領域Rに照射される。これにより、所定形状の配光パターンが灯具前方に形成される。
【0029】
撮像部12は、自車前方を撮像して画像情報を生成する装置である。撮像部12は、高速カメラ36と、低速カメラ38と、を含む。高速カメラ36は、比較的フレームレートが高く、例えば200fps~10000fps(1フレームあたり0.1~5ms)である。一方、低速カメラ38は、比較的フレームレートが低く、例えば30fps~120fpsである(1フレームあたり約8~33ms)。また、高速カメラ36は、比較的解像度が小さく、例えば30万ピクセル~500万ピクセル未満である。一方、低速カメラ38は、比較的解像度が大きく、例えば500万ピクセル以上である。高速カメラ36および低速カメラ38は、全ての個別領域Rを撮像する。なお、高速カメラ36および低速カメラ38の解像度は、上記数値に限定されず、技術的に整合する範囲で任意の値に設定することができる。
【0030】
制御装置50は、撮像制御部52と、輝度解析部14と、物標解析部16と、灯具制御部18と、光源制御部20と、を有する。各部は、自身を構成する集積回路が、メモリに保持されたプログラムを実行することで動作する。以下、制御装置50が有する各部の基本動作を説明する。
【0031】
撮像制御部52は、撮像部12の動作を制御する。例えば、撮像制御部52は、図示しないタイマーを用いて時間の経過を計測しながら、画像情報の生成を指示する信号(以下では、指示信号という)を撮像部12に送信する。本実施の形態では、撮像制御部52によって高速カメラ36による画像情報の生成が制御される。低速カメラ38は、撮像制御部52からの指示信号の送受信によらず、予め定められた所定のフレームレートで画像情報の生成を繰り返す。また、撮像制御部52は、撮像部12による画像情報の生成と光源制御部20による光源部10の制御とを同期させるための同期信号を光源制御部20に送信する。
【0032】
撮像部12が生成した画像情報は、輝度解析部14および物標解析部16に送られる。輝度解析部14は、撮像部12から得られる画像情報に基づいて、各個別領域Rの輝度を検出する。輝度解析部14は、物標解析部16に比べて精度の低い画像解析を実行し、高速に解析結果を出力する高速低精度解析部である。本実施の形態の輝度解析部14は、高速カメラ36から得られる画像情報に基づいて、各個別領域Rの輝度を検出する。輝度解析部14は、高速カメラ36から画像情報を取得する毎に各個別領域Rの輝度を検出する。輝度解析部14は、例えば0.1~5ms毎に輝度を検出することができる。
【0033】
本実施の形態の輝度解析部14は、複数の個別領域Rにおける輝度を2値化する。輝度解析部14は、予め定められた輝度のしきい値をメモリに保持しており、このしきい値以上の輝度を一律に所定の高輝度値に変換し、しきい値未満の輝度を一律に所定の低輝度値に変換する。この結果、複数の個別領域Rは、相対的に輝度の高い個別領域Rと相対的に輝度の低い個別領域Rとの2つに分けられる。輝度解析部14の検出結果、すなわち各個別領域Rの輝度情報を示す信号は、灯具制御部18に送信される。
【0034】
物標解析部16は、撮像部12から得られる画像情報に基づいて、自車前方に存在する所定の物標を検出する。物標解析部16は、輝度解析部14に比べて精度の高い画像解析を実行し、低速に解析結果を出力する低速高精度解析部である。本実施の形態の物標解析部16は、低速カメラ38から得られる情報に基づいて物標を検出する。物標解析部16は、例えば50ms毎に物標を検出することができる。物標解析部16によって検出される物標は、例えば自発光体であり、具体例としては
図3に示す対向車100や、図示しない先行車等が例示される。以下では、対向車100を物標の一例として説明するが、先行車に対しても同様の処理がなされる。
【0035】
物標解析部16は、アルゴリズム認識やディープラーニング等を含む、公知の方法を用いて物標を検出することができる。例えば、物標解析部16は、対向車100を示す特徴点を予め保持している。そして、物標解析部16は、低速カメラ38の撮像データの中に対向車100を示す特徴点を含むデータが存在する場合、対向車100の位置を認識する。前記「対向車100を示す特徴点」とは、例えば対向車100の前照灯の推定存在領域に現れる所定光度以上の光点102(
図3参照)である。物標解析部16の検出結果、すなわち自車前方の物標情報を示す信号は、灯具制御部18に送信される。
【0036】
灯具制御部18は、輝度解析部14および/または物標解析部16の検出結果を用いて、物標の変位検出、特定個別領域R1の設定、各個別領域Rに照射する光の照度値の設定等を実行する。一例として、灯具制御部18は、トラッキング部40と、照度設定部42と、を含む。トラッキング部40は、物標解析部16により検出された所定の物標の変位を輝度解析部14の検出結果に基づいて検出する。
【0037】
具体的には、トラッキング部40は、二値化処理が施される前の輝度解析部14の検出結果と物標解析部16の検出結果とを統合する。そして、輝度解析部14で検出された各個別領域Rの輝度のうち、物標である対向車100の光点102が位置する個別領域Rの輝度を対向車100と関連付ける。トラッキング部40は、その後に取得する輝度解析部14の検出結果において、対向車100と関連付けた輝度の位置を認識することで、物標である対向車100の変位を検出することができる。トラッキング部40は、例えば50ms毎に特定物標の決定処理を実行する。また、トラッキング部40は、例えば0.1~5ms毎に特定物標の変位検出処理(トラッキング)を実行する。
【0038】
照度設定部42は、輝度解析部14の検出結果と、トラッキング部40の検出結果と、に基づいて各個別領域Rに照射する光の照度値を定め、形成すべき配光パターンを決定する。まず、照度設定部42は、物標の存在位置に応じて特定個別領域R1(
図3参照)を定める。物標が対向車100である場合、照度設定部42は、トラッキング部40の検出結果に含まれる対向車100の位置情報に基づいて特定個別領域R1を定める。
【0039】
特定個別領域R1の設定について、例えば照度設定部42は、対向車100の前照灯に対応する2つの光点102間の水平方向距離aに対して、予め定められた所定比率の鉛直方向距離bを定め、横a×縦bの寸法範囲と重なる個別領域Rを特定個別領域R1とする。特定個別領域R1には、対向車100の運転者と重なる個別領域Rが含まれる。
【0040】
そして、照度設定部42は、特定個別領域R1を含む各個別領域Rに照射する光の照度値を定める。具体的には、照度設定部42は、特定個別領域R1を除く個別領域Rのうち、輝度が所定の高輝度範囲に含まれる個別領域Rには、配光パターンの形成により当該個別領域Rの輝度が下がるように照度値を設定し、輝度が所定の低輝度範囲に含まれる個別領域Rには、配光パターンの形成により当該個別領域Rの輝度が上がるように照度値を設定する。所定の高輝度範囲および所定の低輝度範囲は、自車両の運転者の視認性等を考慮して、実験やシミュレーションの結果に基づいて適宜設定することができる。
【0041】
本実施の形態の照度設定部42は、2値化処理が施された輝度解析部14の検出結果(2値化輝度情報)において、相対的に輝度が高い個別領域Rに第1照度値を設定し、相対的に輝度が低い個別領域Rに第1照度値よりも明るい第2照度値を設定する。例えば、照度値が0~255の256階調である場合、第1照度値は「0」であり、第2照度値は「255」である。
【0042】
なお、照度設定部42は、二値化処理を施していない輝度解析部14の検出結果に基づいて、各個別領域Rの照度値を設定してもよい。この場合、例えば照度設定部42は、特定個別領域R1を除く各個別領域Rについて、予め定めた目標輝度値をメモリに保持している。そして、照度設定部42は、輝度解析部14により検出される輝度が後の配光パターン形成により目標輝度値に近づくように各個別領域Rの照度値を設定する。例えば、各個別領域Rの目標輝度値は同じ値に設定される。なお、照度設定部42は、各個別領域Rの目標輝度値を異ならせてもよい。
【0043】
また、照度設定部42は、特定個別領域R1に対して特定照度値を定める。物標が対向車100である場合、照度設定部42は特定個別領域R1に対して、例えば特定照度値「0」を設定する。つまり、照度設定部42は、特定個別領域R1を遮光する配光パターンを定める。また、照度設定部42は、トラッキング部40の検出結果に基づいて、特定個別領域R1の変位を認識し、特定個別領域R1の位置情報を更新する。そして、特定個別領域R1に対する特定照度値を含む、各個別領域Rの照度値を更新する。トラッキング部40による処理と照度設定部42による処理とは、少なくとも一時において並行して実行される。
【0044】
照度設定部42は、特定個別領域R1に対する特定照度値を含む、各個別領域Rの照度値を示す信号を、光源制御部20に送信する。照度設定部42は、例えば0.1~5ms毎に照度値を設定することができる。
【0045】
光源制御部20は、照度設定部42が定めた照度値に基づいて光源部10を制御する。光源制御部20は、撮像制御部52から同期信号を受信して、光源部10の制御を実行する。光源制御部20は、光源22の点消灯と、各ミラー素子30のオン/オフ切り替えと、を制御する。光源制御部20は、各個別領域Rに照射する光の照度値に基づいて、各ミラー素子30のオンの時間比率(幅や密度)を調節する。これにより、各個別領域Rに照射される光の照度を調節することができる。光源制御部20は、例えば0.1~5ms毎に、光源22および/または光偏向装置26に駆動信号を送信することができる。
【0046】
照度設定部42が定めた照度値に基づいて光源部10から光が照射され、その結果としての実際の各個別領域Rの輝度値が輝度解析部14により検出される。そして、この検出結果に基づいて、照度設定部42が再び照度値を設定する。
【0047】
上述の構成により、車両用灯具システム1は、複数の部分照射領域が集まって構成される配光パターンを形成することができる。複数の部分照射領域のそれぞれは、対応するミラー素子30がオンのときに形成される。車両用灯具システム1は、各ミラー素子30のオン/オフを切り替えることにより、様々な形状の配光パターンを形成することができる。
【0048】
以下、本実施の形態に係る車両用灯具システム1が実行するADB(Adaptive Driving Beam)制御について説明する。車両用灯具システム1は、自車前方の物標の位置に応じて最適な配光パターンを形成するADB制御を実行する。
【0049】
ADB制御において、撮像制御部52は、第1時間をかけて画像情報を生成する第1動作と第1時間とは長さが異なる第2時間をかけて画像情報を生成する第2動作とを組み合わせて実行するよう撮像部12の高速カメラ36を制御する。例えば、第2時間は、第1時間よりも長い時間である。
【0050】
また、本実施の形態の撮像制御部52は、第1動作と第2動作とを交互に繰り返すよう撮像部12の高速カメラ36を制御する。例えば、撮像制御部52は、高速カメラ36での撮像の開始から第1時間が経過した後に1回目の指示信号を送信する。高速カメラ36は、1回目の指示信号を受信すると、これまでの撮像結果に基づいて画像情報を生成する。これにより第1動作が完了する。
【0051】
続いて撮像制御部52は、1回目の指示信号を送信してから第2時間が経過した後に2回目の指示信号を送信する。高速カメラ36は、2回目の指示信号を受信すると、1回目の指示信号の受信から2回目の指示信号の受信までの撮像結果に基づいて画像情報を生成する。これにより、第2動作が完了する。
【0052】
続いて、撮像制御部52は、2回目の指示信号を送信してから第1時間が経過した後に3回目の指示信号を送信する。高速カメラ36は、3回目の指示信号を受信すると、2回目の指示信号の受信から3回目の指示信号の受信までの撮像結果に基づいて画像情報を生成する。これにより、第1動作が完了する。以降、この手順が繰り返されて、高速カメラ36による第1動作と第2動作とが交互に繰り返される。
【0053】
また、光源制御部20は、基準配光パターンを所定のタイミングで形成するよう光源部10を制御する。基準配光パターンは、照度設定部42が定める照度値に依存しない配光パターンであり、全体が実質的に同一の照度である。基準配光パターンは、例えば公知のロービーム用配光パターンやハイビーム用配光パターン等である。そして、撮像制御部52は、基準配光パターンの形成下で第1動作を実行するよう撮像部12の高速カメラ36を制御する。
【0054】
所定のタイミングとは、例えばADB制御を開始して最初に配光パターンを形成するタイミングである。つまり、ADB制御が開始されると、まず光源制御部20が基準配光パターンを形成するよう光源部10を制御する。また、撮像部12による撮像が開始される。そして、撮像制御部52は、最初に第1動作を実行するよう高速カメラ36を制御する。つまり、撮像制御部52は、撮像開始から第1時間の経過後に1回目の指示信号を送信する。高速カメラ36の第1動作によって、第1画像情報が生成される。したがって、第1画像情報は、基準配光パターンが形成された状態における画像情報である。
【0055】
輝度解析部14は、第1画像情報に基づいて各個別領域Rの輝度を検出するとともに、各個別領域Rの輝度を2値化する。第1画像情報において、対向車100の光点102は高輝度体として検出される。また、基準配光パターンの形成下では、反射率の高い反射物にも光が照射される。このため、反射物も高輝度体として検出される。以下では、自車両の前方に存在する道路標識106(
図3参照)を反射物の一例として説明するが、視線誘導標(デリニエータ)や看板等の他の反射物に対しても同様の処理がなされる。
【0056】
物標解析部16は、基準配光パターンの形成下で低速カメラ38により生成された画像情報に含まれる光点102から、所定の物標として対向車100を検出する。トラッキング部40は、輝度解析部14の検出結果と物標解析部16の検出結果とを統合して、光点102に対応する個別領域Rの輝度に基づいて対向車100の変位を検出する。
【0057】
照度設定部42は、輝度解析部14の検出結果とトラッキング部40の検出結果とに基づいて、特定個別領域R1を設定するとともに、特定個別領域R1に対する特定照度値を含む各個別領域Rの照度値を定める。この結果、形成すべき第1配光パターンが決定される。輝度解析部14によって生成された2値化輝度情報において、道路標識106に対応する個別領域Rは所定の高輝度値であり、その他の個別領域R(特定個別領域R1を除く)は所定の低輝度値である。したがって、第1配光パターンにおいて、道路標識106に対応する個別領域Rには第1照度値「0」が定められ、他の個別領域R(特定個別領域R1を除く)には第2照度値「255」が定められる。また、特定個別領域R1には特定照度値「0」が定められる。そして、光源制御部20は、決定された第1配光パターンを形成するよう光源部10を制御する。
【0058】
続いて、撮像制御部52は、第2動作を実行するよう高速カメラ36を制御する。つまり、撮像制御部52は、1回目の指示信号を送信してから第2時間の経過後に2回目の指示信号を送信する。本実施の形態の車両用灯具システム1では、1回目の指示信号の送信と実質的にほぼ同時に第1配光パターンを形成することができる。このため、第2動作は実質的に、道路標識106に対応する個別領域Rの照度値を第1照度値「0」に定めた第1配光パターンの形成下で実行される。
【0059】
道路標識106は自発光体ではないため、第1配光パターンの形成下では道路標識106は光を照射(反射)しない。したがって、高速カメラ36の第2動作で生成される第2画像情報では、道路標識106は低輝度体として検出される。このため、輝度解析部14が第2画像情報に基づいて生成する2値化輝度情報において、道路標識106に対応する個別領域Rは、その他の個別領域R(特定個別領域R1を除く)と同様に所定の低輝度値となる。
【0060】
照度設定部42は、輝度解析部14の検出結果とトラッキング部40の検出結果とに基づいて、特定個別領域R1を設定するとともに、形成すべき第2配光パターンを決定する。第2配光パターンにおいて、特定個別領域R1を除く個別領域R(道路標識106に対応する個別領域Rを含む)には、第2照度値「255」が定められる。また、特定個別領域R1には、特定照度値「0」が定められる。したがって、第2配光パターンの形成下では、道路標識106に光が照射される。そして、この第2配光パターンの形成下で、高速カメラ36による第1動作が実行される。
【0061】
したがって、本実施の形態のADB制御では、第1配光パターンが第2時間形成された後に、第2配光パターンが第1時間形成される。そして、第1配光パターンの形成と第2配光パターンの形成とが交互に繰り返される。つまり、高速カメラ36の画像生成における偶数フレームおよび奇数フレームの一方で第1配光パターンが形成され、他方で第2配光パターンが形成される。
【0062】
図4(A)は、参考例に係るADB制御における反射物の明るさを説明するための図である。
図4(B)は、実施の形態に係るADB制御における反射物の明るさを説明するための図である。
図4(A)および
図4(B)において、上から1段目は、高速カメラ36によって生成された画像情報における反射物の輝度の推移を示す。数字は、輝度を256階調とした場合の輝度値の例である。上から2段目は、照度設定部42によって設定される、反射物に対応する個別領域Rの照度の推移を示す。数字は、照度を256階調とした場合の照度値の例である。また、ここで説明する例では、輝度解析部14が輝度のしきい値「128」を用いて各個別領域Rの輝度を2値化している。
【0063】
また、
図4(A)および
図4(B)において、上から3段目は、光源部10から反射物に対応する個別領域Rに向けて出射される光の量の推移を示す。光量は、光源部10が出射可能な光量の最大値を100%とした場合の割合で表している。一番下の段は、自車両の運転者によって視認される反射物の明るさの推移を示す。反射物の明るさは、光源部10からの出射光量が最大であるときの反射物の明るさを100%とした場合の割合で表している。
【0064】
また、
図4(A)および
図4(B)において、時間aから時間bまでの間および時間cから時間dまでの間に、反射物に光を照射する第2配光パターンが形成される。また、時間bから時間cまでの間および時間dから時間eまでの間に、反射物を遮光する第1配光パターンが形成される。
【0065】
図4(A)に示すように、参考例に係るADB制御では、高速カメラ36が一定のフレームレートで繰り返し画像情報を生成している。したがって、第1配光パターンの形成と第2配光パターンの形成とが同じ時間で交互に繰り返される。このため、反射物への照度値「255」の光照射と遮光とが同じ時間で交互に繰り返される。よって、運転者は、照度値「255」の光が照射されたときの反射物の明るさと遮光時の反射物の明るさとの平均、つまり光源部10の出力が最大であるときの50%の明るさで、反射物を視認することになる。
【0066】
近年、車両用灯具の高輝度化が進み、反射物により反射する光の強度が高まる傾向にある。このため、反射物の明るさを最大時の50%に抑えても、自車両の運転者がグレアを受けるおそれがある。しかしながら、参考例に係るADB制御では、反射物の明るさは50%で固定であり、調整することができない。
【0067】
これに対し、
図4(B)に示すように、本実施の形態に係るADB制御では、高速カメラ36が第1時間をかけて画像情報を生成する第1動作と、第2時間をかけて画像情報を生成する第2動作と、を組み合わせて実行している。これにより、反射物に照度値「255」の光が照射されている時間と、反射物が遮光されている時間と、を互いに異ならせることができる。
図4(B)に示す例では、反射物に光を照射する第2配光パターンの形成時間(例えば1ms)に対し、反射物を遮光する第1配光パターンの形成時間は3倍(例えば3ms)である。このため、光源部10の出力が最大であるときの25%の明るさで、反射物が視認される。また、第1動作を実行する第1時間と第2動作を実行する第2時間との長さを変更することで、視認される反射物の明るさの低減度合いを自由に調整することができる。
【0068】
図5(A)及び
図5(B)は、実施の形態に係る車両用灯具システム1において実行されるADB制御の一例を示すフローチャートである。このフローは、例えば図示しないライトスイッチによってADB制御の実行指示がなされ、且つイグニッションがオンのときに所定のタイミングで繰り返し実行され、ADB制御の実行指示が解除される(あるいは停止指示がなされる)か、イグニッションがオフにされた場合に終了する。また、
図5(A)に示す第1フローと、
図5(B)に示す第2フローとは、並行して実行される。
【0069】
図5(A)に示すように、第1フローでは、まず低速カメラ38によって自車前方が撮像される(S101)。次に、物標解析部16によって、低速カメラ38の画像情報に基づいて自車前方の物標検出処理が実行される(S102)。物標解析部16は、物標が検出された場合には物標の存在を示す情報(以下では、物標情報という)を生成してメモリに保存し、本ルーチンが終了する。
【0070】
図5(B)に示すように、第2フローでは、まず高速カメラ36によって自車前方が撮像される(S201)。次に、撮像制御部52によって、設定時間が経過したか判断される(S202)。設定時間は、前回のルーチンにおいて第1時間であった場合には第2時間であり、前回のルーチンにおいて第2時間であった場合には第1時間である。時間の設定は、撮像制御部52により実施される。設定時間が経過していない場合(S202のN)、撮像制御部52はステップ202の判断を繰り返す。設定時間が経過した場合(S202のY)、撮像制御部52から高速カメラ36に指示信号が送信される(S203)。
【0071】
高速カメラ36は、指示信号を受信すると画像情報を生成する(S204)。そして、輝度解析部14によって、高速カメラ36が生成した画像情報に基づいて各個別領域Rの輝度が検出される(S205)。続いて、トラッキング部40によって、第1フローで自車前方の物標が検出されたか判断される(S206)。トラッキング部40は、物標情報の有無に基づいて、物標の有無を判断することができる。物標が検出されている場合(S206のY)、トラッキング部40によって、特定個別領域R1が設定されているか判断される(S207)。
【0072】
特定個別領域R1が設定されている場合(S207のY)、トラッキング部40によって、物標がトラッキングされて特定個別領域R1の位置(変位)が検出される(S209)。また、照度設定部42によって、トラッキング部40の検出結果に基づいて特定個別領域R1の設定(位置情報)が更新される(S209)。特定個別領域R1が設定されていない場合(S207のN)、照度設定部42によって、物標の存在位置に基づいて特定個別領域R1が設定される(S208)。その後、ステップS209の処理が実行される。
【0073】
続いて、照度設定部42によって、各個別領域Rの照度値が設定される(S210)。照度設定部42は、特定個別領域R1に対しては特定照度値を設定する。そして、光源制御部20によって、照度設定部42が設定した照度値の光を照射するよう光源部10が制御され、これにより自車前方に配光パターンが形成されて(S211)、本ルーチンが終了する。
【0074】
物標が検出されていない場合(S206のN)、照度設定部42によって、各個別領域Rの照度値が設定される(S210)。この場合、設定される照度値の中には、特定照度値は含まれない。その後は、ステップS211の処理が実行されて、本ルーチンが終了する。ステップS209において、トラッキングにより物標の消失が検出された場合には、特定個別領域R1の設定も消失する。したがって、ステップS210で設定される照度値の中には、特定照度値は含まれないこととなる。また、次回のルーチンにおけるステップS206では、ステップS102の処理で物標情報が生成されるまでは、物標が検出されていない(S206のN)と判定される。
【0075】
以上説明したように、本実施の形態に係る車両用灯具システム1は、撮像部12と、撮像制御部52と、輝度解析部14と、照度設定部42と、光源部10と、撮像部12と、を備える。撮像部12は、自車前方を撮像して画像情報を生成する。撮像制御部52は、第1時間をかけて画像情報を生成する第1動作と第1時間とは長さが異なる第2時間をかけて画像情報を生成する第2動作とを組み合わせて実行するよう撮像部12を制御する。輝度解析部14は、撮像部12から得られる画像情報に基づいて、自車前方に並ぶ複数の個別領域Rそれぞれの輝度を検出する。照度設定部42は、輝度解析部14の検出結果に基づいて各個別領域Rに照射する光の照度値を定め、形成すべき配光パターンを決定する。
【0076】
照度設定部42は、輝度が所定の高輝度範囲に含まれる個別領域Rには、配光パターンの形成により当該個別領域Rの輝度が下がるように照度値を設定し、輝度が所定の低輝度範囲に含まれる個別領域Rには、配光パターンの形成により当該個別領域Rの輝度が上がるように照度値を設定する。光源部10は、複数の個別領域Rそれぞれに照射する光の照度を独立に調節可能である。光源制御部20は、照度設定部42が決定する配光パターンを形成するよう光源部10を制御する。
【0077】
また本実施の形態において、光源制御部20は、照度設定部42が定める照度値に依存しない基準配光パターンを所定のタイミングで形成するよう光源部10を制御する。そして、第2時間は、第1時間よりも長い時間に設定されるとともに、撮像制御部52は基準配光パターンの形成下で第1動作を実行するよう撮像部12を制御する。したがって本実施の形態では、相対的に長い第2時間の間、反射物を遮光する第1配光パターンが形成され、相対的に短い第1時間の間、反射物に光を照射する第2配光パターンが形成される。
【0078】
反射物は自発光体でないため、高輝度の個別領域Rに低照度値が設定され低輝度の個別領域Rに高照度値が設定されて決まる配光パターンが形成される場合、反射物には光の照射と遮光とが交互に繰り返される。この切り替えは高速であるため、自車両の運転者には、光照射時の明るさと遮光時の明るさとを平均した明るさで反射物が視認される。
【0079】
そして、本実施の形態では、撮像部12が第1時間をかけて画像情報を生成する第1動作と、第2時間をかけて画像情報を生成する第2動作と、を組み合わせて実行する。したがって、反射物を遮光する第1配光パターンが第1時間より長い第2時間形成され、反射物に光を照射する第2配光パターンが第2時間より短い第1時間形成される。このため、第1配光パターンと第2配光パターンとが同じ形成時間で組み合わされる場合に比べて、反射物の明るさを低減することができる。また、第1時間と第2時間との長さの違いを調整することで、運転者に視認される反射物の明るさの低減度を自由に調整することができる。
【0080】
これにより、自車両の車両用灯具2に搭載される光源部10が高輝度化した場合でも、第1時間に対して第2時間をより長くすることで、反射物の明るさをより低減することができる。よって、本実施の形態によれば、反射物からの光の反射によって運転者が受けるグレアを低減することができ、運転者の視認性を高めることができる。
【0081】
また、本実施の形態の撮像制御部52は、第1動作と第2動作とを交互に繰り返すよう撮像部12を制御する。したがって、本実施の形態では、第1時間の第1配光パターンの形成と第2時間の第2配光パターンの形成とが交互に繰り返される。これにより、制御の複雑化を抑制しながら、反射物の明るさ設定の自由度を高めることができる。
【0082】
また、本実施の形態の輝度解析部14は、複数の個別領域Rにおける輝度を2値化する。そして、照度設定部42は、相対的に輝度が高い個別領域Rに第1照度を設定し、相対的に輝度が低い個別領域Rに第1照度よりも明るい第2照度を設定する。これにより、ADB制御をより簡略化することができ、車両用灯具システム1にかかる負荷を軽減することができる。
【0083】
また、本実施の形態の車両用灯具システム1は、撮像部12から得られる情報に基づいて、自車前方に存在する所定の物標を検出する物標解析部16と、物標解析部16により検出された所定の物標の変位を輝度解析部14の検出結果に基づいて検出するトラッキング部40と、を備える。照度設定部42は、トラッキング部40の検出結果に基づいて、物標の存在位置に応じて定まる特定個別領域R1に対して特定照度値を定める。
【0084】
所定の物標を検出するためには比較的長時間の画像処理を要するため、物標解析部16は解析速度が劣る。このため、物標解析部16の解析結果のみに基づいてADB制御を実行すると、対向車100や先行車等の物標に対する遮光領域を絞り込んで自車運転者の視認性を高めた配光パターンの形成が可能であるが、物標の変位に遮光領域を高精度に追従させることが困難である。一方、簡単な輝度検出を行う輝度解析部14は、画像処理に要する時間が比較的短時間であるため、高速な解析が可能である。しかしながら、物標の検出精度が低いため、物標の存在位置を正確に把握することが困難である。このため、輝度解析部14の解析結果のみに基づいてADB制御を実行すると、配光パターンの遮光領域を広めに設定する必要があり、自車運転者の視認性が犠牲となる。
【0085】
これに対し、本実施の形態の車両用灯具システム1では、低速だが高度な画像解析手段である物標解析部16と、単純だが高速な画像解析手段である輝度解析部14と、を組み合わせて、物標の存在位置を高精度に把握して配光パターンを決定している。このため、車両用灯具2における光の照射精度、言い換えれば配光パターンの形成精度を高めることができる。この結果、対向車100や先行車の運転者に与えるグレアの低減と、自車両の運転者の視認性確保と、をより高い次元で両立することができる。
【0086】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明した。前述した実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。設計変更が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「本実施の形態の」、「本実施の形態では」等の表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。以上の構成要素の任意の組み合わせも、本発明の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0087】
実施の形態では、撮像制御部52が基準配光パターンの形成下で第1動作を実行するよう撮像部12を制御している。これにより、第1動作に続く第2動作の実行中に、反射物を遮光する第1配光パターンが形成され、第2動作に続く第1動作中に、反射物に光を照射する第2配光パターンが形成されることになる。そして、第1動作は第2動作よりも短時間であるため、ADB制御中に反射物に光が照射される合計時間を短くすることができ、運転者が視認する反射物の明るさを低減することができる。
【0088】
一方で、車両用灯具2に搭載される光源の輝度が低い場合等、反射物の明るさを増大させたい場合もあり得る。この場合への対策として、撮像制御部52は、基準配光パターンの形成下で第2動作を実行するよう撮像部12を制御する。これにより、第2動作に続く第1動作の実行中に、反射物を遮光する第1配光パターンが形成され、第1動作に続く第2動作中に、反射物に光を照射する第2配光パターンが形成されることになる。そして、第1動作は第2動作よりも短時間であるため、ADB制御中に反射物に光が照射される合計時間を長くすることができ、運転者が視認する反射物の明るさを増大させることができる。
【0089】
基準配光パターンの形成下で撮像部12が実行する動作を第1動作とするか第2動作とするかは、例えば、車両用灯具システム1が搭載される車両における光源の仕様に合わせて、撮像制御部52の動作プログラムに予め組み込んでおくことができる。また、光源の仕様に合わせて、第1時間および第2時間の長さを予め設定しておくこともできる。
【0090】
また、実施の形態では第1動作と第2動作とが交互に実行されるが、第1動作と第2動作とは交互に実行されなくてもよい。この場合であっても、第1動作と第2動作との組み合わせによって、第1配光パターンと第2配光パターンとが形成されることになるため、反射物の明るさを変化させることができる。また、第1動作と第2動作とだけでなく、これらの動作と時間の異なる第3以上の動作がさらに組み合わされてもよい。
【0091】
実施の形態では、撮像部12および制御装置50が灯室8内に設けられているが、それぞれは適宜、灯室8外に設けられてもよい。なお、撮像部12と光源部10とは画角が一致していることが望ましい。また、撮像制御部52は、撮像部12内に設けられてもよい。また、高速カメラ36が低速カメラ38と同等の解像度を有する場合には、低速カメラ38を省略してもよい。これにより、車両用灯具システム1の小型化を図ることができる。この場合、物標解析部16は、高速カメラ36の画像データを用いて物標を検出する。
【0092】
光源部10は、DMDである光偏向装置26に代えて、光源光で自車前方を走査するスキャン光学系や、各個別領域Rに対応するLEDが配列されたLEDアレイを備えてもよい。また、高速カメラ36および低速カメラ38の画角が光源部10の光照射範囲よりも大きい場合、画像情報を光源部10の光照射範囲に合わせてトリミングしたりスケーリングしたりすることで、撮像範囲と光照射範囲を一致させてもよい。
【0093】
以下の態様も本発明に含めることができる。
【0094】
第1時間をかけて画像情報を生成する第1動作と第1時間とは異なる第2時間をかけて画像情報を生成する第2動作とを組み合わせて実行するよう、自車前方を撮像して画像情報を生成する撮像部(12)を制御する撮像制御部(52)と、
撮像部(12)から得られる画像情報に基づいて、自車前方に並ぶ複数の個別領域(R)それぞれの輝度を検出する輝度解析部(14)と、
輝度解析部(14)の検出結果に基づいて各個別領域(R)に照射する光の照度値を定め、形成すべき配光パターンを決定する照度設定部(42)であって、輝度が所定の高輝度範囲に含まれる個別領域(R)には、配光パターンの形成により当該個別領域(R)の輝度が下がるように照度値を設定し、輝度が所定の低輝度範囲に含まれる個別領域(R)には、配光パターンの形成により当該個別領域(R)の輝度が上がるように照度値を設定する照度設定部(42)と、
配光パターンを形成するよう、各個別領域(R)に照射する光の照度を独立に調節可能な光源部(10)を制御する光源制御部(20)と、
を備える、車両用灯具(2)の制御装置(50)。
【0095】
第1時間をかけて画像情報を生成する第1動作と第1時間とは異なる第2時間をかけて画像情報を生成する第2動作とを組み合わせて実行するよう、自車前方を撮像して画像情報を生成する撮像部(12)を制御するステップと、
撮像部(12)から得られる画像情報に基づいて、自車前方に並ぶ複数の個別領域(R)それぞれの輝度を検出するステップと、
検出した輝度に基づいて各個別領域(R)に照射する光の照度値を定め、形成すべき配光パターンを決定するステップであって、輝度が所定の高輝度範囲に含まれる個別領域(R)には、配光パターンの形成により当該個別領域(R)の輝度が下がるように照度値を設定し、輝度が所定の低輝度範囲に含まれる個別領域(R)には、配光パターンの形成により当該個別領域(R)の輝度が上がるように照度値を設定するステップと、
配光パターンを形成するよう、各個別領域(R)に照射する光の照度を独立に調節可能な光源部(10)を制御するステップと、
を含む、車両用灯具(2)の制御方法。
【符号の説明】
【0096】
1 車両用灯具システム、 2 車両用灯具、 10 光源部、 12 撮像部、 14 輝度解析部、 16 物標解析部、 20 光源制御部、 40 トラッキング部、 42 照度設定部、 50 制御装置、 52 撮像制御部。