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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/68 20060101AFI20230306BHJP
   B60N 2/70 20060101ALI20230306BHJP
   B60N 2/58 20060101ALI20230306BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
B60N2/68
B60N2/70
B60N2/58
A47C7/62 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019017504
(22)【出願日】2019-02-01
(65)【公開番号】P2020124977
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大沼 弘治
(72)【発明者】
【氏名】亀井 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】嶋津 将樹
(72)【発明者】
【氏名】中島 啓
(72)【発明者】
【氏名】長友 広光
(72)【発明者】
【氏名】福田 優樹
(72)【発明者】
【氏名】水越 敏充
(72)【発明者】
【氏名】御園生 大嗣
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-161915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/68
B60N 2/70
B60N 2/58
A47C 7/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションを有する乗物用シートであって、
前記シートクッションに設けられ、左右一対のサイドメンバ、並びに前記サイドメンバの前方及び後方の対応する端部同士をそれぞれ接続する前部クロスメンバ及び後部クロスメンバを有する枠形のフレームと、
前記フレーム内に位置するように前記フレームに支持され、前記フレームと略平行に延びる板状の本体、前記本体の左右の側縁の一部から表側に傾斜して外方に延びる傾斜部、前記本体の前縁から延出して前記前部クロスメンバに係合する前部取付部、及び前記本体の後縁から延出して前記後部クロスメンバに係合する後部取付部を有して、乗員を支持する支持部材と、
前記フレーム及び前記支持部材の表側に配置されたパッドと、
前記パッドを覆う表皮材と、
前記支持部材の前記本体の表側の左右方向の中央かつ前記傾斜部よりも前方に取り付けられた圧力センサとを有し、
前記圧力センサは、前後方向において前記前部取付部の一部に整合しており、
前記支持部材の前記本体は、前記圧力センサの左右両側方に、前記支持部材の左右方向の中央を通って左右方向に直交する面に対して鏡像対称形に設けられた開口と、前記圧力センサ及び前記前部取付部の前記一部の間を連結する連結部とを有し、
前記圧力センサ及び前記開口は、前記本体の前記前縁から離間し
前記本体における前記開口の左右外側の近傍部分は、前記開口よりも低くなった部分に連結するように正面視で屈曲する屈曲部を有することを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記支持部材は、金属製のワイヤーがインサート成形された樹脂によって形成され、
前記連結部は、前記ワイヤーの一部を含むことを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記ワイヤーは、前後方向に延在する縦ワイヤーと、左右方向に延在する横ワイヤーとを含み、
前記縦ワイヤーの少なくとも一部及び前記横ワイヤーの少なくとも一部が、前記連結部を通過することを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記横ワイヤーの前記少なくとも一部は、前記連結部を通過する第1部分と、前記開口の縁に沿って延在する第2部分とを含み、
前記第1部分が前記第2部分に対して前方にずれて配置されるように、前記横ワイヤーの前記少なくとも一部が屈曲していることを特徴とする請求項3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記縦ワイヤーの前記少なくとも一部は、前記横ワイヤーの前記第1部分に交差し、前記圧力センサの下方及び前記前部取付部に延在する部分を含むことを特徴とする請求項4に記載の乗物用シート。
【請求項6】
平面視において、前記圧力センサ及び前記連結部の中心は、前記前部取付部の後縁の左右方向中央、左右の前記傾斜部の前縁の左右方向の内側を結ぶ三角形の内側に位置することを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記圧力センサは、平面視で、前記表皮材の吊り込み位置に対してずれて配置されたことを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに関し、詳細にはフレームの内側に設けられて乗員を支持する支持部材を備えた乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
乗物用シートにおいて、シートクッションフレームの内側に設けられ、乗員を支持する支持部材を板状の樹脂部材によって形成したものが公知である(例えば、特許文献1)。支持部材は、本体の後部の左右の側縁から上方に傾斜して外方に延出する傾斜部を有する。傾斜部が乗員の臀部を斜め側方から支持するため、乗員の臀部への支持力は分散される。また、乗物用シートにおいて、乗員の着座を確認するため、支持部材とパッドとの間に圧力センサを設けたものが公知である(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6309130号明細書
【文献】特開2016-144987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
傾斜部を有する支持部材に圧力センサを設置すると、傾斜部によって乗員の臀部からの圧力は分散されて支持部材に伝わる。そのため、圧力センサに加わる圧力が小さくなり、着座による圧力と、荷物をシートに置いたことによる圧力とを区別できないおそれがあった。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑み、傾斜部を有する板状の支持部材と、支持部材に配置された圧力センサとを有する乗物用シートにおいて、着座の判定の正確性が向上した乗物用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の少なくともいくつかの実施形態は、シートクッション(2)を有する乗物用シート(1)であって、前記シートクッションに設けられ、左右一対のサイドメンバ(14)、並びに前記サイドメンバの前方及び後方の対応する端部同士をそれぞれ接続する前部クロスメンバ(15)及び後部クロスメンバ(16)を有する枠形のフレーム(7)と、前記フレーム内に位置するように前記フレームに支持され、前記フレームと略平行に延びる板状の本体(20)、前記本体の左右の側縁の一部から表側に傾斜して外方に延びる傾斜部(21)、前記本体の前縁から延出して前記前部クロスメンバに係合する前部取付部(22)、及び前記本体の後縁から延出して前記後部クロスメンバに係合する後部取付部(23)を有して、乗員を支持する支持部材(8)と、前記フレーム及び前記支持部材の表側に配置されたパッド(9)と、前記パッドを覆う表皮材(10)と、前記支持部材の前記本体の表側の左右方向の中央かつ前記傾斜部よりも前方に取り付けられた圧力センサ(25)とを有し、前記圧力センサは、前後方向において前記前部取付部の一部に整合しており、前記支持部材の前記本体は、前記圧力センサの左右両側方に、前記支持部材の左右方向の中央を通って左右方向に直交する面に対して鏡像対称形に設けられた開口(27)と、前記圧力センサ及び前記前部取付部の前記一部の間を連結する連結部(59)とを有し、前記圧力センサ及び前記開口は、前記本体の前記前縁から離間し、前記本体における前記開口の左右外側の近傍部分は、前記開口よりも低くなった部分に連結するように正面視で屈曲する屈曲部を有することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、圧力センサが傾斜部に対して前後方向にオフセットして配置されるため、傾斜部による圧力分散の影響を受けず、また、開口は荷重を支持しないため、圧力センサに係る圧力を相対的に高くなり、圧力センサからの信号を受信したECU等の着座判定手段による着座の判定の正確性が向上する。また、取付位置及び開口が支持部材の本体の縦方向の端縁から離間し、圧力センサ及び前部取付部の間に連結部が存在するため、開口による剛性の低下が抑制される。
【0008】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、前記支持部材は、金属製のワイヤー(24)がインサート成形された樹脂によって形成され、前記連結部は、前記ワイヤーの一部(24a,24c)を含むことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、ワイヤーによって、開口を設けることによって低下した連結部及びその周辺の剛性が補われる。
【0010】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、前記ワイヤーは、前後方向に延在する縦ワイヤー(24a,24b)と、左右方向に延在する横ワイヤー(24c,24d,24e)とを含み、前記縦ワイヤーの少なくとも一部(24a)及び前記横ワイヤーの少なくとも一部(24c)が、前記連結部を通過することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、縦ワイヤー及び横ワイヤーによって、連結部が前後方向及び左右方向において補強される。
【0012】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において前記横ワイヤーの前記少なくとも一部は、前記連結部を通過する第1部分(24ca)と、前記開口の縁に沿って延在する第2部分(24cb)とを含み、前記第1部分が前記第2部分に対して前方にずれて配置されるように、前記横ワイヤーの前記少なくとも一部が屈曲していることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、横ワイヤーの第2部分によって、開口の近傍が補強されるとともに、横ワイヤーの屈曲した形状によって連結部が支持部材の左右両側部を更に補強される。
【0014】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、前記縦ワイヤーの前記少なくとも一部は、前記横ワイヤーの前記第1部分に交差し、前記圧力センサの下方及び前記前部取付部に延在する部分を含むことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、縦ワイヤーによって、フレームに支持される支持部材が安定するとともに、連結部が更に補強される。
【0016】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成の何れかにおいて、平面視において、前記圧力センサ及び前記連結部の中心は、前記前部取付部の後縁の左右方向中央、左右の前記傾斜部の前縁の左右方向の内側を結ぶ三角形(60)の内側に位置することを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、圧力センサが乗員の着座を検出しやすい位置に配置されるとともに、連結部が左右にバランスの取れた位置に配置されて圧力センサが安定する。
【0018】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成の何れかにおいて、前記圧力センサは、平面視で、前記表皮材の吊り込み位置に対してずれて配置されたことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、圧力センサが表皮材の吊り込み位置がずれているため、表皮材の吊り込みが圧力センサに与える影響を抑制できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、圧力センサが傾斜部に対して縦方向にオフセットして配置されるため、傾斜部による圧力分散の影響を受けず、また、開口は荷重を支持しないため、圧力センサに係る圧力を相対的に高くなり、圧力センサからの信号を受信したECU等の着座判定手段による着座の判定の正確性が向上するとともに、取付位置及び開口が支持部材の本体の縦方向の端縁から離間し、圧力センサ及び前部取付部の間に連結部が存在するため、開口による剛性の低下が抑制される。
【0021】
本発明の少なくともいくつかの実施形態よれば、ワイヤーによって、開口を設けることによって低下した連結部及びその周辺の剛性が補われる。
【0022】
本発明の少なくともいくつかの実施形態によれば、縦ワイヤー及び横ワイヤーによって、連結部が前後方向及び左右方向において補強される。
【0023】
本発明の少なくともいくつかの実施形態によれば、横ワイヤーの第2部分によって、開口の近傍が補強されるとともに、横ワイヤーの屈曲した形状によって連結部が支持部材の左右両側部を更に補強される。
【0024】
本発明の少なくともいくつかの実施形態によれば、縦ワイヤーによって、フレームに支持される支持部材が安定するとともに、連結部が更に補強される。
【0025】
本発明の少なくともいくつかの実施形態によれば、平面視において、圧力センサ及び連結部の中心が、前部取付部の後縁の左右方向中央、左右の傾斜部の前縁の左右方向の内側を結ぶ三角形の内側に位置することにより、圧力センサが乗員の着座を検出しやすい位置に配置されるとともに、連結部が左右にバランスの取れた位置に配置されて圧力センサが安定する。
【0026】
本発明の少なくともいくつかの実施形態によれば、圧力センサが表皮材の吊り込み位置がずれているため、表皮材の吊り込みが圧力センサに与える影響を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態に係るシートの側面図
図2】実施形態に係るフレーム及び支持部材の斜視図
図3】実施形態に係る傾斜部及びカバー部材周辺の筒状部を通る背面から見た縦断面図(パッドの図示は省略)
図4】実施形態に係る支持部材側部及びサイドフレームの拡大平面図
図5】実施形態に係る支持部材に対する表皮材の係合を示す図(A:平面図、B:横断面図、C:変形例に係る横断面図)
図6】実施形態に係る傾斜部の拡大斜視図(カバー部材の図示は省略)
図7】実施形態に係る傾斜部の周辺の背面図
図8】実施形態に係るフレーム及び支持部材の右後方の斜視図
図9】実施形態に係るシートバックにおけるパッドの背面図
図10】実施形態に係るシートバックのサイドフレームを前方内側から見た斜視図
図11】変形例に係る傾斜部の底面図
図12】実施形態に係る支持部材の前部の平面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、前後、左右及び上下の方向は、車両の前後、左右及び上下の方向に従う。
【0029】
図1に示すように、シート1は、車両の運転席又は助手席として使用され、シートクッション2、シートバック3及びヘッドレスト4を有する。シートクッション2は、車室のフロア5に固定された左右一対のスライドレール6,6に前後にスライド移動可能に支持される。また、シート1は、フレーム7及び支持部材8(図2参照)上に配置されたウレタンフォーム等からなる可撓性のパッド9と、パッド9を覆う表皮材10とを有する。スライドレール6は、フロア5に結合されたロアレール11と、ロアレール11に前後にスライド移動可能に支持されたアッパレール12と、アッパレール12の少なくとも一部を覆うレールカバー13(図3参照)とを有する。
【0030】
図2に示すように、シートクッション2は、枠形のフレーム7と、フレーム7内に位置するように、フレーム7に支持されて、表皮材10及びパッド9(図1参照)を介してシート1の乗員の荷重を弾発的に支持する支持部材8とを有する。
【0031】
フレーム7は、左右一対のサイドメンバ14,14と、左右一対のサイドメンバ14,14の前端部を互いに接続する前部クロスメンバ15と、左右一対のサイドメンバ14,14の後端部を互いに接続する後部クロスメンバ16と、左右一対のサイドメンバ14,14の前端部に連結して左右の中間部が前部クロスメンバ15よりも前方に位置するパンフレーム17とを有する。左右一対のサイドメンバ14,14は、板金からなる前後に長い長尺材であり、上下にフランジが形成されている。サイドメンバ14はベース部材65を介してアッパレール12に支持されている(図3参照)。前部クロスメンバ15及び後部クロスメンバ16は、左右方向に延在する金属製のパイプからなる。パンフレーム17は、板金からなり、概ね座面の前部に沿った表面を有する。図4に示すように、右側のサイドメンバ14には、フロア5に対するシート1の前後方向位置を検出する位置センサ19が取り付けられている。
【0032】
図2に示すように、支持部材8は、フレーム7に対して略平行に延在する板状の本体20と、本体20の後部における左右の側縁から表側に傾斜して外方に延びる傾斜部21と、本体20の前縁から前方に延出して前部クロスメンバ15に係合する前部取付部22と、本体20の後縁から斜め上後方に延出して後部クロスメンバ16に係合する後部取付部23とを有する。本体20は、その後部の前後方向の中間位置を境にして、その前側が、その後側に対して前方に向かうにつれて上方に向かうようにわずかに傾斜している。支持部材8は、金属製のワイヤー24がインサート成形された樹脂によって形成され、乗員の荷重を受けて撓み、乗員を弾発的に支持する。
【0033】
シート1(図1参照)には、乗員が着座しているにもかかわらず、シートベルトを着用していない場合は警報が発せられるシートベルトリマインダ(SBR)システムが採用されており、そのために圧力センサ25が設置される。本体20の前部50における左右方向の中央部の表側には、圧力センサ25が載置されるセンサ載置部26が形成されている。圧力センサ25は、乗員がシート1に着座しているか否かを判断するために、シートクッション2にかかる圧力を検出する。本体20の後部は、傾斜部21によって乗員の荷重が分散されるため、着座時に係る圧力が小さくなる。そこで、傾斜部21による圧力分散の影響を受けないように、圧力センサ25は、傾斜部21に対して前方にオフセットした位置に配置される。従って、圧力センサ25から信号を受信したECU等の着座判定手段(図示せず)による着座の判定の正確性が向上する。圧力センサは、平面視で、表皮材10の吊り込み位置10a(図1参照)に対してずれて配置される。
【0034】
シート1(図1参照)には、シート1の表面に対して空気を吸引又は送風して湿度を調整するエアーベンチレーションシステムが採用されており、本体20におけるセンサ載置部26の左右には、空気の通路となるように上下に貫通した一対の空気用開口27,27が設けられている。各々の空気用開口27は平面視で矩形をなす。一対の空気用開口27,27に挟まれたセンサ載置部26の形成する樹脂部分には、縦方向に沿って通過する、補強のための中央縦ワイヤー24aが埋設されている。
【0035】
また、本体20の後部には、表皮材10の端部に取り付けられた複数のフック28(図5参照)を係止するとともに支持部材8の撓みを調整する貫通孔であって、左右方向の中央に位置する中央係止孔29及び中央係止孔29の左右に位置する一対の側部係止孔30,30が設けられている。中央係止孔29及び一対の側部係止孔30,30は、それぞれ、平面視で矩形をなす。左右方向に並んだ中央係止孔29と一対の側部係止孔30,30とは、前後方向の幅は互いに等しいが、左右方向の長さは、中央係止孔29の方が一対の側部係止孔30,30よりも長くなっている。そのため、支持部材8の中央部の可撓性が高くなり、柔らかい座り心地となる。このように中央係止孔29の長さと一対の側部係止孔30,30との長さを互いに相違させることによって、着座感が向上するように支持部材8の撓みが設定される。また、中央係止孔29内の左右方向の中央を中央縦ワイヤー24aが縦断することにより、中央係止孔29の周辺の強度が補強されている。図5(A)に示すように、中央係止孔29に係止されるフック28は、中央縦ワイヤー24aを受容するスロット31を有し、このため中央係止孔29に対するフック28の係合が強固になる。また、スロット31を有するため、中央係止孔29に係止されるフック28は、側部係止孔30に係止されるフック28に対して、形状が異なるとともに幅が広くなっている。このように係止させるべき係止孔の形状や大きさに応じてフック28の形状や大きさを変えることにより、作業者がフック28を誤った係止孔に組み付けることを防止できる。中央係止孔29及び一対の側部係止孔30,30が後部取付部23と離間しているため、作業性がよい。支持部材8に表皮材10を係止できるため、係止部を形成するための突片等をフレーム7に設ける必要がなく、フレーム7を小型化及び軽量化することができる。
【0036】
図2及び図5に示すように、本体20の表側における中央係止孔29及び一対の側部係止孔30,30の後方の縁部には、裏側に向けて凹んだフック用凹部32が設けられている。フック28は、対応する中央係止孔29又は側部係止孔30を裏側から表側に通過し、フック28の先端がフック用凹部32に受容される。フック28の先端がフック用凹部32に受容されることにより、中央係止孔29及び側部係止孔30に対してフック28を位置決めすることができる。なお、フック用凹部32に代えて、図5(C)に示すように、中央係止孔29の表側の後方の縁部に、表側に突出するフック用縁壁33を設けて、フック28の先端を係止させてもよい(側部係止孔30の表側縁部についても同様)。フック28の先端がフック用縁壁33に係合することにより、中央係止孔29及び側部係止孔30からのフック28の脱落が防止される。また、中央係止孔29及び側部係止孔30は、本体20における左右一対の傾斜部21,21と並ぶ位置、すなわち、剛性が比較的高い位置に設けられているため、中央係止孔29及び側部係止孔30の変形を抑制することができ、中央係止孔29及び側部係止孔30からのフック28の脱落を防止できる。
【0037】
図2図3、及び図6図8に示すように、傾斜部21には、下方(本体20に垂直な方向の裏向き)に向けて突出する筒状部34が形成されている。筒状部34の筒の内空からなる取付孔35は、他部材を支持部材8に取り付けるためのクリップ37を挿通させる。筒状部34の内周面には、筒状部34の剛性を高めるとともにクリップ37の先端を係止するための肩面38が形成されている。例えば、筒状部34は、クリップ37を挿通させる貫通孔を有するとともに平面視で矩形をなす底壁34aと、底壁34aの辺部から上方に向かって立設された側壁34bによって構成される。底壁34aの上面が肩面38を構成する。筒状部34の下端が本体20の裏面と略同一平面上に位置し、取付孔35の延在方向が本体20に対して垂直であるため、傾斜部21に対する裏面側からのクリップ37の取付作業は、本体20に対する取付作業と同等に行うことができる。すなわち、筒状部34へのクリップ37の取付作業性は、クリップ37を傾斜させて取り付ける場合に比べて向上している。また、肩面38を有することにより、クリップ37の先端が傾斜部21の表面から突出せず、クリップ37が着座感に影響すること防止できる。なお、中央係止孔29及び一対の側部係止孔30,30の前後方向の位置は、パッド9に設けられる表皮材10の吊り込み位置10aに対してずれている。また、サイドメンバ14にも表皮材10を固定する場合、その固定位置は傾斜部21に対して前後にずれている。
【0038】
傾斜部21の裏面には、格子状補強部39が設けられている。格子状補強部39は、下方に突出して前後方向に延在する複数の縦リブ40と、下方に突出して傾斜部に沿った横方向に延在する複数の横リブ41とを有する。格子状補強部39によって傾斜部21の剛性が向上するため、傾斜部21の変形を抑制することができ、また、フレーム7に対する支持部材8の位置が一定する。筒状部34は格子状補強部39内に配置され、取付孔35を設けたことによる剛性の低下を補うため、一部の縦リブ40及び/又は横リブ41が筒状部34に連結することが好ましい。筒状部34に連結する横リブ41における、筒状部34よりも左右方向の内側に配置された部分の下縁は、筒状部34の下端と同じ高さ又は筒状部34の下端よりも下方に位置する。横リブ41のこの部分が、筒状部34の上下長さ分全体の剛性を向上させる。また、横リブ41のこの部分が、リブワイヤー24fを内包してもよい。リブワイヤー24fは、筒状部34の下端と同じ高さ又は筒状部34の下端よりも下方に位置することが好ましい。中央係止孔29及び側部係止孔30は、その横方向に縦リブ40及び横リブ41で補強された筒状部34が配置されているため、中央係止孔29及び側部係止孔30の周囲の剛性も向上している。
また、図11に示す変形例のように、傾斜部21の剛性を高めるため、筒状部34を囲うように孔部環状ワイヤー24gを配置してもよい。この場合、ワイヤー24は縦リブ40及び横リブ41に交差するように配置することが好ましい。
【0039】
図4に示すように、支持部材8の左右の側縁には、本体20と後部に設けられた傾斜部21との間に側部切欠き49が形成されている。サイドメンバ14に取り付けられた位置センサ19の前後方向の位置は、側部切欠き49の前後方向の位置内にある。側部切欠き49を設けることによって、支持部材8を小型化及び軽量化できるとともに、位置センサ19の取付状態が確認しやすくなる。側部切欠き49は、支持部材8の左右の側縁における位置センサ19が設けられた側のみに設けてもよい。なお、位置センサ19が左右の一方にのみ設けられることを除くと、フレーム7及び支持部材8は、その左右方向に直交する中央の平面に対して、略鏡像対称形をなす。
【0040】
側部切欠き49の前方には傾斜部21が設けられていないため、支持部材8の前部50においては、本体20の側縁が支持部材8の側縁となる。前部50の前後方向長さは、傾斜部21の前後方向長さよりも短く、前部50の左右方向の外縁は、傾斜部21の左右方向の外縁よりも内方に位置する。このため、前部にかかる荷重が小さくなり、後部にかかる荷重は側方に分散するため、全体として支持部材の強度が向上する。また、本体20の前部50は、側面視で前方が後方に比べて低くなるようなクランク形状50aを有し、側部切欠き49によって低下した剛性を補っている。クランク形状50aは、前方が後方よりも低いため、乗員の脚にかかる負担は小さい。また、クランク形状50aで低くなった部分の裏側に他部材を取り付ける場合、表側から突出するクリップ(図示せず)の先端による影響がクランク形状50aにおける高くなった部分によって緩和され、着座感の低下が抑制される。また、前側が低くなっても後側で乗員の臀部を支持するため、クランク形状50aが臀部の支持に与える影響は小さく、着座感の低下が抑制される。また、本体20における左右一対の空気用開口27,27のそれぞれの左右外側の近傍部分は、本体20の前部50におけるクランク形状50aによって低くなった部分に連結するように正面視で屈曲する屈曲部51を有する。屈曲部51は、空気用開口27の近傍から、本体20の前縁の近傍まで延出している。屈曲部51により、左右一対の空気用開口27,27により低下した剛性を補っている。クランク形状50a、屈曲部51、及び、屈曲部51の前端から左右方向の外方に延びる前壁部50bによって、前部50の左右の両側部の前側に凹部50cが画成される。凹部50cによってその周囲の剛性が向上するため、左右両側部に配置された前部取付部22の前部クロスメンバ15への取り付け安定性が向上する。凹部50cの表面に前後及び左右に延在するリブ50dを設けてもよい。
【0041】
図3及び図4に示すように、支持部材8の左右の側縁の剛性を高めるため、本体20の前部50の側縁には表側に突出するフランジ53が設けられ、傾斜部21の側縁には裏側に突出するフランジ54が設けられている。フランジ53は、少なくとも屈曲部51が延在する前後方向範囲で連続している。剛性向上のため、フランジ53の後端側が、傾斜部21における側部切欠き49が形成された部分まで延出していてもよい。本体20の前部側縁の近傍に設けられた孔55にクリップ(図示せず)を取り付けると、クリップの先端が本体20の表側に突出する。表側に突出するフランジ53は、このクリップの先端の突出による着座感への影響を緩和する。一方、傾斜部21の取付孔35には肩面38が設けられているため、取付孔35に取り付けられたクリップ37の先端は傾斜部の表側に突出しない。そのため、傾斜部のフランジ54は、裏側に突出させて着座感に影響を与えないようにしている。
【0042】
図2に示すように、支持部材8を構成する樹脂に埋設されるワイヤー24には、左右方向(横方向)に延在するものもあり、それぞれ、支持部材におけるその周囲の剛性を高めている。左右1対の空気用開口27,27の前方の概ね本体20の前縁に沿った位置に前部横ワイヤー24cが配置され、左右1対の空気用開口27,27と中央係止孔29及び左右1対の側部係止孔30,30との間に中央横ワイヤー24dが配置され、中央係止孔29及び左右1対の側部係止孔30,30の後方の概ね本体20の後縁に沿った位置に後部横ワイヤー24eが配置される。中央横ワイヤー24dの一部は、中央係止孔29及び左右1対の側部係止孔30,30の前縁に沿って配置される。
【0043】
前部取付部22は、前部クロスメンバ15に上方から係合しており、取り付けやすくなるように互いに分離した3つの前部取付片56を有する。同様に、後部取付部23は、後部クロスメンバ16に上方から係合しており、取り付けやすくなるように互いに分離した3つの後部取付片57を有する。中央縦ワイヤー24a及び側部縦ワイヤー24bの両端部は、それぞれ対応する前部取付片56及び後部取付片57に埋設され、前部取付部22及び後部取付部23を補強している。
【0044】
本体20の前縁における前部取付片56に連結していない部分には、前部切欠き58が設けられている。前部切欠き58の左右方向幅は、本体20の前縁に連結した互いに隣接する2つの前部取付片56,56間の距離よりも小さい。そのため、本体20の前縁及び互いに隣接する2つの前部取付片56,56によって画成される空間の輪郭は、平面視で凸字状になっている。前部切欠き58を設けることにより、本体20の前縁近傍から前部取付片56にかけての部位を大きく撓ませることができ、前部取付片56の前部クロスメンバ15への取り付けが容易になる。また、前部切欠き58の幅が互いに隣接する2つの前部取付片56間の距離よりも小さいことにより、前部切欠き58を設けることによる着座感の低下を抑制している。
【0045】
図2及び図12に示すように、センサ載置部26から中央の前部取付片56の間は、中央縦ワイヤー24a及び前部横ワイヤー24cを埋設する連結部59となっている。中央縦ワイヤー24a及び前部横ワイヤー24cは、連結部59で互いに交差している。空気用開口27や前部切欠き58が設けられたことにより、本体20の前部の左右方向中央付近は、剛性が低下しているが、連結部59によって必要な剛性を確保している。前部取付片56は、本体20から概ね前方に延出するフック状をなし、後部取付片57は、本体20の後縁から斜め上後方に延出するフック状をなす。圧力センサ25及び連結部59の中心の位置は、圧力センサ25を安定させるため、本体20における前部50の左右方向の中央であることが好ましいが、平面視において、前部取付部22の後縁の左右方向中央、左右の傾斜部21の前縁の左右方向の内側を結ぶ三角形60の内側であればよい。
【0046】
中央縦ワイヤー24aは、中央の前部取付部22から、連結部59及びセンサ載置部26を通り、中央の後部取付部23まで延在する。前部横ワイヤー24cは、左右方向の中央において本体20の前縁に沿う第1部分24caと、左右方向の側方において前部切欠き58を避け、かつ空気用開口27の前縁に沿って配置された第2部分24cbを有する。第1部分24caが第2部分24cbよりも前方に位置するため、前部横ワイヤー24cは屈曲している。また、前部横ワイヤー24cの左右の両端部は、前方に延出し、屈曲部51よりも左右方向の外方に、かつフランジ53に沿って延在することにより、支持部材8を大型化することなく本体20の前側の隅を補強している。
【0047】
パッド9(図5参照)は、支持部材8の前部取付片56上にも配置されることが好ましい。この場合、乗員の荷重がパッドを介して前部取付片56にかかるため、上方から前部クロスメンバ15に係合している前部取付片56の係合強度が高まる。
【0048】
図5(B)及び(C)に示すように、パッド9におけるフック28に対向する部分には、上方に凹んだフック受容部66が形成される。フック受容部66によってパッド9とフック28との干渉を避けることができ、中央係止孔29及び側部係止孔30へのフック28の取り付け作業が容易になる。なお、フック28の脱落を抑制するため、パッド9におけるフック28に対向する部分をフック受容部66に代えてフック28に圧接するようにしてもよい。
【0049】
図9は、シートバック3(図1参照)におけるパッド101の背面図であり、図10は、シートバック3のサイドフレーム102を前方内側から見た斜視図である。作業性向上のため、表皮材10(図1参照)を固定するための表皮固定材103の内、表皮材10の上端側に設けられるものは、サイドフレーム102に取り付けられるエアバッグ104よりも上方に固定され、また、他部材の取り付け位置105はエアバッグ104の力布クリップ取付位置106から、上下、左右又は前後に離間していることが好ましい。他部材がサイドフレーム102に配置される場合は、表皮固定材103が外れないように、他部材と表皮固定材103との間にパッド101が配置されることが好ましい。また、他部材は、サイドフレーム102における板状の本体部分に浅い凹凸を設けて剛性を向上させた部分の近傍に取り付けることが好ましい。また、サイドフレーム102に他部材を支持するためのブラケット(図示せず)を設ける場合は、小型化に寄与しつつ他部材のはずれを抑制するため、クロスメンバ(図示せず)を避けて傾斜するように設置することが好ましい。剛性向上のため、表皮固定材103は、サイドフレーム102とロアフレーム(図示せず)とが互いに重なる位置や、溶接される位置に設けられることが好ましい。他部材をサイドフレーム102に固定する場合、剛性向上のため、他部材の取り付け位置105は、エアバッグ104に対向するビード107の近傍、かつモジュールホルダ108を避けた位置とすることが好ましく、正面視で他部材の取り付け位置105からずれていることが好ましい。また、剛性向上のため、エアバッグ104の取付位置はビード107の延長線上とすることが好ましい。更に作業性向上のため、モジュールホルダ108の取付位置は、側面視でサイドフレーム102のフランジ109を避けることが好ましい。
【0050】
パッド101は、表側に配置された主部101aと、主部101aの上部及び左右側部に重なるように裏側に配置されて、主部101aと協働してアッパフレーム(図示せず)及びサイドフレーム102を包む端部101bとを有する。主部101aには、表皮材10(図1参照)を吊り込むための吊り込み孔110が設けられている。端部101bには、上部と左右側部との連結部に、内側から外側に向かう切り込み111が設けられている。主部101aの側部に設けられた貫通孔112は、サイドフレーム102に取り付けられたモジュールホルダ108と同一平面状に設けられる。貫通孔112は、支持部材113を保持するワイヤー114を避けた位置に設けられる。
【0051】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。表皮材の端部は、フックに代えてクリップ等の他の構造の係止部としてもよい。一部のリブを省略して部材の撓みを大きくしてもよい。上記実施形態及び変形実施形態の構成は、シートバックに適用してもよく、車両以外の乗物、例えば飛行機等のシートに適用してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1:シート
2:シートクッション
5:フロア
7:フレーム
8:支持部材
14:サイドメンバ
15:前部クロスメンバ(第1クロスメンバ)
16:後部クロスメンバ(第2クロスメンバ)
20:本体
21:傾斜部
22:前部取付部(第1取付部)
23:後部取付部(第2取付部)
25:圧力センサ
26:センサ取付部
27:空気用開口
50:前部
50c:凹部
51:屈曲部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12