(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】乗物用シート及びこれを有する車両
(51)【国際特許分類】
B60N 2/68 20060101AFI20230306BHJP
B60N 2/70 20060101ALI20230306BHJP
B60N 2/58 20060101ALI20230306BHJP
A47C 7/62 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
B60N2/68
B60N2/70
B60N2/58
A47C7/62 Z
(21)【出願番号】P 2019017510
(22)【出願日】2019-02-01
【審査請求日】2022-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大沼 弘治
(72)【発明者】
【氏名】亀井 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】嶋津 将樹
(72)【発明者】
【氏名】中島 啓
(72)【発明者】
【氏名】長友 広光
(72)【発明者】
【氏名】福田 優樹
(72)【発明者】
【氏名】水越 敏充
(72)【発明者】
【氏名】御園生 大嗣
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-161913(JP,A)
【文献】特許第6356882(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/68
B60N 2/70
B60N 2/58
A47C 7/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションを有する乗物用シートであって、
前記シートクッションに設けられ、左右一対のサイドメンバ、並びに前記サイドメンバの前方及び後方の対応する端部同士をそれぞれ接続する前部クロスメンバ及び後部クロスメンバを有する枠形のフレームと、
金属製のワイヤーがインサート成形された樹脂によって形成され、前記フレーム内に位置するように前記フレームに支持され、前記フレームと略平行に延びる板状の本体、前記本体の
前縁から延出して前記前部クロスメンバに係合する前部取付部、及び前記本体の後縁から延出して前記後部クロスメンバに係合する後部取付部を有して、乗員を支持する支持部材と、
前記フレーム及び前記支持部材の表側に配置されたパッドと、
前記パッドを覆う表皮材と、
平面視で前記ワイヤーの一部に重なるように、前記支持部材の表側に取り付けられた圧力センサとを有し、
前記支持部材の前記本体は、平面視で前記ワイヤーに重ならない位置に、前記圧力センサに電気的に接続されたワイヤーハーネスを保持するクリップを取り付け可能な複数のクリップ取付部を有することを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記ワイヤーは、前後方向に延在する複数の縦ワイヤーを含み、
前記クリップ取付部の少なくとも一部は、複数の前記縦ワイヤー間に位置することを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記縦ワイヤーは、平面視で部分的に前記圧力センサに重なるように左右中央に位置する中央縦ワイヤーと、前記支持部材の側部を通る左右1対の側部縦ワイヤーとを含み、
前記中央縦ワイヤーと各々の前記側部縦ワイヤーとの間に設けられた前記クリップ取付部の少なくとも半数よりも多くは、前記中央縦ワイヤーと各々の前記側部縦ワイヤーの間の中央よりも左右外方に位置することを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記
クリップ取付部は前記支持部材を上下に貫通する孔を含み、
前記支持部材の前記本体を、左右方向幅が最大となる部分の左右方向幅で3等分して、中央領域及び左右2つの側部領域に分けたとき、各々の前記側部領域に含まれる前記クリップ取付部の数は、前記中央領域に含まれる前記クリップ取付部の数よりも多いことを特徴とする請求項3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記ワイヤーは、左右方向に延在する複数の横ワイヤーを含み、
前記クリップ取付部の少なくとも一部は、複数の前記横ワイヤー間に位置することを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記支持部材は、前記本体の後部の左右の側縁から表側に傾斜して外方に延びる傾斜部を有し、
前記クリップ取付部の少なくとも一部は、前記傾斜部よりも前方かつ前記圧力センサよりも後方に配置されたことを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記本体は、前記
前部取付部の上端よりも下方に位置し、
前記クリップ取付部の少なくとも一部は、平面視において、前記前部取付部の後縁の左右方向中央、左右の前記傾斜部の前縁の左右方向の内側を結ぶ三角形の内側に位置することを特徴とする請求項6に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記支持部材の前記本体は、開口を有し、
前記ワイヤーハーネスは、前記支持部材の下方に配索され、平面視で前記開口に重なるように前記クリップに取り付けられたことを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の乗物用シート。
【請求項9】
請求項1~8
の何れか一項に記載の乗物用シートを左右1対有する車両であって、
各々の前記乗物用シートの前記支持部材において、複数の前記クリップ取付部は、平面視で左右中央を前後に延在する中心線に対して左右対称に配置されたことを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに関し、詳細にはフレームの内側に設けられて乗員を支持する支持部材を備えた乗物用シート及びこれを有する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
乗物用シートにおいて、シートクッションフレームの内側に設けられて乗員を支持する支持部材を、金属製のワイヤーがインサート成形された板状の樹脂部材としたものが公知である(例えば、特許文献1)。支持部材は、本体の後部の左右の側縁から上方に傾斜して外方に延出する傾斜部を有する。傾斜部が乗員の臀部を斜め側方から支持するため、乗員の臀部への支持力は分散される。また、乗物用シートにおいて、乗員の着座を確認するため、支持部材とパッドとの間に圧力センサを設けたものが公知である(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6309130号明細書
【文献】特開2016-144987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧力センサは、乗員の荷重による圧力を検知しやすいように配置する必要がある。また、圧力センサに電気的に接続されたワイヤーハーネスをクリップによって支持部材の裏面に固定する場合、乗員の荷重によってクリップが外れやすくなるおそれがあった。
【0005】
本発明は、以上の背景に鑑み、金属製のワイヤーがインサート成形された板板状の支持部材と、支持部材に配置された圧力センサとを有する乗物用シートにおいて、圧力センサが圧力を検知しやすく、かつクリップが外れ難い乗物用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の少なくともいくつかの実施形態は、シートクッション(2)を有する乗物用シート(1)であって、前記シートクッションに設けられ、左右一対のサイドメンバ(14)、並びに前記サイドメンバの前方及び後方の対応する端部同士をそれぞれ接続する前部クロスメンバ(15)及び後部クロスメンバ(16)を有する枠形のフレーム(7)と、金属製のワイヤー(24)がインサート成形された樹脂によって形成され、前記フレーム内に位置するように前記フレームに支持され、前記フレームと略平行に延びる板状の本体(20)、前記本体の前縁から延出して前記前部クロスメンバに係合する前部取付部(22)、及び前記本体の前記後縁から延出して前記後部クロスメンバに係合する後部取付部(23)を有して、乗員を支持する支持部材(8)と、前記フレーム及び前記支持部材の表側に配置されたパッド(9)と、前記パッドを覆う表皮材(10)と、平面視で前記ワイヤーの一部に重なるように、前記支持部材の表側に取り付けられた圧力センサ(25)とを有し、前記支持部材の前記本体は、平面視で前記ワイヤーに重ならない位置に、前記圧力センサに電気的に接続されたワイヤーハーネス(27a)を保持するクリップを取り付け可能な複数のクリップ取付部(35)を有することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、樹脂に比べて剛性の高いワイヤー上に圧力センサが配置されるため、乗員の荷重が加わった時に圧力センサが載置された部分の撓みが比較的小さく、圧力センサに比較的大きな圧力が加わり、圧力センサが圧力を検知し易くなる。また、ワイヤーの近傍は、乗員の荷重を比較的大きな力で支持するところ、平面視でワイヤーに重ならない位置に設けられたクリップ取付部に、圧力センサに電気的に接続されたワイヤーハーネスを把持するクリップが取り付けられるため、クリップが乗員の荷重を受けて外れることが抑制される。
【0008】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、前記ワイヤーは、前後方向に延在する複数の縦ワイヤー(24a,24b)を含み、前記クリップ取付部の少なくとも一部は、複数の前記縦ワイヤー間に位置することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、縦ワイヤー間の空間を有効利用できる。
【0010】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、前記縦ワイヤーは、平面視で部分的に前記圧力センサに重なるように左右中央に位置する中央縦ワイヤー(24a)と、前記支持部材の側部を通る左右1対の側部縦ワイヤー(24b)とを含み、前記中央縦ワイヤーと各々の前記側部縦ワイヤーとの間に設けられた前記クリップ取付部の少なくとも半数よりも多くは、前記中央縦ワイヤーと各々の前記側部縦ワイヤーの間の中央よりも左右外方に位置することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、乗員の荷重の影響が比較的小さな側部縦ワイヤー側に多くのクリップ取付部が配置されるため、乗員の荷重によるクリップへの影響を抑制される。
【0012】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、前記クリップ取付部は前記支持部材を上下に貫通する孔を含み、前記支持部材の前記本体を、左右方向幅が最大となる部分の左右方向幅で3等分して、中央領域(A)及び左右2つの側部領域(B)に分けたとき、各々の前記側部領域に含まれる前記クリップ取付部の数は、前記中央領域に含まれる前記クリップ取付部の数よりも多いことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、クリップ取付部を構成する貫通孔を支持部材に設けることによって支持部材の剛性は低下するが、圧力センサに近い中央領域の剛性の低下を抑制することができる。
【0014】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成の何れかにおいて、前記ワイヤーは、左右方向に延在する複数の横ワイヤー(24c)を含み、前記クリップ取付部の少なくとも一部は、複数の前記横ワイヤー間に位置することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、横ワイヤー間の空間を有効利用できる。
【0016】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、前記支持部材は、前記本体の後部の左右の側縁から表側に傾斜して外方に延びる傾斜部(21)を有し、前記クリップ取付部の少なくとも一部は、前記傾斜部よりも前方かつ前記圧力センサよりも後方に配置されたことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、傾斜部は、本体に比べて上方に位置するため、上記領域にクリップ取付部を配置することにより、乗員による荷重がクリップに加わり難くなる。
【0018】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、前記本体は、前記前部取付部の上端よりも下方に位置し、前記クリップ取付部の少なくとも一部は、平面視において、前記第1取付部の後縁の左右方向中央、左右の前記傾斜部の前縁の左右方向の内側を結ぶ三角形(C)の内側に位置することを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、第1取付部及び傾斜部は、本体に比べて上方に位置するため、これに囲まれた三角形の領域にクリップ取付部を配置することにより、乗員による荷重がクリップに加わり難くなる。
【0020】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成の何れかにおいて、前記支持部材の前記本体は、開口(28)を有し、前記ワイヤーハーネスは、前記支持部材の下方に配索され、平面視で前記開口に重なるように前記クリップに取り付けられたことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、支持部材の裏面側に配索されたワイヤーハーネスの取付状態を開口を介して上方から確認できる。
【0022】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成の何れかを左右1対有する車両であって、各々の前記乗物用シートの前記支持部材において、複数の前記クリップ取付部は、平面視で左右中央を前後に延在する中心線に対して左右対称に配置されたことを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、2つのシートに共通の支持部材を使用したときに、2つのシートにおいて、支持部材にクリップを介して取り付けられるワイヤーハーネス等を左右対称形に配置することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、樹脂に比べて剛性の高いワイヤー上に圧力センサが配置されるため、乗員の荷重が加わった時に圧力センサが載置された部分の撓みが比較的小さく、圧力センサに比較的大きな圧力が加わり、圧力センサが圧力を検知し易くなる。また、ワイヤーの近傍は、乗員の荷重を比較的大きな力で支持するところ、平面視でワイヤーに重ならない位置に設けられたクリップ取付部に、圧力センサに電気的に接続されたワイヤーハーネスを把持するクリップが取り付けられるため、クリップが乗員の荷重を受けて外れることが抑制される。
【0025】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、クリップ取付部の少なくとも一部が複数の縦ワイヤー間に位置するため、縦ワイヤー間の空間を有効利用できる。
【0026】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、中央縦ワイヤーと各々の側部縦ワイヤーとの間に設けられたクリップ取付部の少なくとも半数よりも多くは、前記中央縦ワイヤーと各々の前記側部縦ワイヤーの間の中央よりも左右外方に位置するため、乗員の荷重によるクリップへの影響が抑制される。
【0027】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、貫通孔を含むクリップ取付部の数が、中央領域よりも側部領域に多いことによって、圧力センサに近い中央領域の剛性の低下を抑制することができる。
【0028】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、クリップ取付部の少なくとも一部が複数の横ワイヤー間に位置することによって、横ワイヤー間の空間を有効利用できる。
【0029】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、クリップ取付部の少なくとも一部が傾斜部よりも前方かつ圧力センサよりも後方に配置されたことによって、乗員による荷重がクリップに加わり難くなる。
【0030】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、クリップ取付部の少なくとも一部が平面視において、前部取付部の後縁の左右方向中央、左右の傾斜部の前縁の左右方向の内側を結ぶ三角形の内側に位置することによって、乗員による荷重がクリップに加わり難くなる。
【0031】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、前記ワイヤーハーネスが、支持部材の下方に配索され、かつ平面視で前記開口に重なることによって、支持部材の裏面側に配索されたワイヤーハーネスの取付状態を開口を介して上方から確認できる。
【0032】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、複数のクリップ取付部が平面視で左右中央を前後に延在する中心線に対して左右対称に配置されたことによって、左右1対のシートに共通の支持部材を使用したときに、2つのシートにおいて、支持部材にクリップを介して取り付けられるワイヤーハーネス等を左右対称形に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図2】実施形態に係るフレーム及び支持部材の平面図
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、前後、左右及び上下の方向は、特に説明しない限り車両の前後、左右及び上下の方向に従う。
【0035】
図1に示すように、シート1は、車両の運転席及び/又は助手席として使用され、シートクッション2、シートバック3及びヘッドレスト4を有する。シートクッション2は、車室のフロア5に固定された左右一対のスライドレール6に前後にスライド移動可能に支持される。また、シート1は、フレーム7及び支持部材8(
図2参照)上に配置されたウレタンフォーム等からなる可撓性のパッド9と、パッド9を覆う表皮材10とを有する。スライドレール6は、フロア5に結合されたロアレール11と、ロアレール11に前後にスライド移動可能に支持されたアッパレール12とを有する。
【0036】
シートクッション2は、
図2に示すように、枠形のフレーム7と、フレーム7内に位置するように、フレーム7に支持されて、表皮材10及びパッド9(
図1参照)を介してシート1の乗員の荷重を弾発的に支持する支持部材8とを有する。フレーム7及び支持部材8は、その左右方向に直交する中央の平面に対して、略鏡像対称形(平面視で左右対称形)をなす。
【0037】
フレーム7は、左右一対のサイドメンバ14,14と、左右一対のサイドメンバ14,14の前端部を互いに接続する前部クロスメンバ15と、左右一対のサイドメンバ14,14の後端部を互いに接続する後部クロスメンバ16と、左右一対のサイドメンバ14,14の前端部に連結して左右の中間部が前部クロスメンバ15よりも前方に位置するパンフレーム17とを有する。左右一対のサイドメンバ14,14は、板金からなる前後に長い長尺材であり、上下にフランジが形成されている。前部クロスメンバ15及び後部クロスメンバ16は、左右方向に延在する金属製のパイプからなる。パンフレーム17は、板金からなり、概ね座面の前部に沿った表面を有する。
【0038】
図2及び
図3に示すように、支持部材8は、フレーム7に対して略平行に延在する板状の本体20と、本体20の後部20aにおける左右の側縁から表側に傾斜して外方に延びる傾斜部21と、本体20の前縁から前方に延出して前部クロスメンバ15に係合する前部取付部22と、本体20の後縁から斜め上後方に延出して後部クロスメンバ16に係合する後部取付部23とを有する。本体20及び傾斜部21は、平面視でフレーム7内に位置する。本体20は、その後部20aの前後方向の中間位置を境にして、その前側が、その後側に対して前方に向かうにつれて上方に向かうようにわずかに傾斜している。支持部材8は、金属製のワイヤー24がインサート成形された樹脂によって形成され、乗員の荷重を受けて撓み、乗員を弾発的に支持する。前部取付部22は、前部クロスメンバ15に上方から係合しており、左右方向の中央に位置する第1前部取付片22aと、左右の端部近傍に位置する1対の第2前部取付片22b、22bとを有する。後部取付部23は、後部クロスメンバ16に上方から係合しており、左右方向の中央に位置する第1後部取付片23aと、左右の端部近傍に位置する1対の第2後部取付片23b、23bとを有する。このように、前部取付部22及び後部取付部23は、それぞれ3つに分離しているため、前部クロスメンバ15及び後部クロスメンバ16に取り付けやすくなっている。また、本体20は、前部取付部22の上端及び後部取付部23の上端よりも下方に位置する。ワイヤー24は、左右中央に位置して前後に延在する中央縦ワイヤー24aと、部分的に傾斜部を通って前後に延在する左右1対の側部縦ワイヤー24b,24bと、概ね左右方向に延在する複数の横ワイヤー24cとを含む。
【0039】
シート1(
図1参照)には、乗員が着座しているにもかかわらずシートベルトを着用していない場合に警報が発せられるシートベルトリマインダ(SBR)システムが採用されており、そのために圧力センサ25が設置される。本体20の前部20bにおける左右方向の中央部の表側には、圧力センサ25が載置されるセンサ載置部26が形成されている。中央縦ワイヤー24aはセンサ載置部26を縦断している。圧力センサ25は、乗員がシート1に着座しているか否かを判断するために、シートクッション2にかかる圧力を検出する。本体20の後部20aは、傾斜部21によって乗員の荷重が分散されるため、着座時に係る圧力が小さくなる。そこで、傾斜部21による圧力分散の影響を受けないように、圧力センサ25は、傾斜部21に対して前方にずれた位置に配置される。従って、圧力センサ25からコネクタ27及びワイヤーハーネス27aを介して信号を受信したECU等の着座判定手段(図示せず)による着座の判定の正確性が向上する。また、圧力センサ25が、樹脂よりも剛性の高い中央縦ワイヤー24aに支持されることにより、圧力センサに乗員の荷重による圧力が加わりやすくなる。
【0040】
シート1(
図1参照)には、シート1の表面に対して空気を吸引又は送風して湿度を調整するエアーベンチレーションシステムが採用されており、本体20におけるセンサ載置部26の左右には、空気の通路となるように上下に貫通した一対の空気用開口28,28が設けられている。各々の空気用開口28は平面視で概ね矩形をなし、空気用開口28,28の左右方向内側の側縁が、センサ載置部26の左右両側縁を画定している。一対の空気用開口28,28に挟まれたセンサ載置部26の形成する樹脂部分には、縦方向に沿って通過する、補強のための中央縦ワイヤー24aが埋設されている。
【0041】
また、本体20の後部20aには、表皮材10の端部に取り付けられた複数のフック(図示せず)を係止するとともに支持部材8の撓みを調整する貫通孔であって、左右方向の中央に位置する中央係止孔29及び中央係止孔29の左右に位置する一対の側部係止孔30,30が設けられている。中央係止孔29及び一対の側部係止孔30,30は、それぞれ、平面視で矩形をなす。
【0042】
傾斜部21には、下方(本体20に垂直な方向の裏向き)に向けて突出する筒状部31が形成されており、筒状部31には、下方からクリップ32を取り付けることができる。クリップ32は、下部において他部材を保持し、上部において筒状部31の底壁に設けられた貫通孔に嵌合して筒状部31の底壁の上面に係止されることによって支持部材8に固定される。筒状部31に係合したクリップ32の上端が、筒状部31内に位置して傾斜部21の表面から上方に突出しないため、クリップ32を筒状部31に取り付けても着座感に影響を与えない。筒状部31は、各々の傾斜部21の左右方向内側の端縁(傾斜部21と後部20aとの境界)と左右方向外側の端縁との間に位置し、好ましくは、左右方向内側の端縁から傾斜部21の左右幅の1/3よりも外方、更に好ましくは、左右方向内側の端縁から傾斜部21の左右幅の1/2よりも外方に位置する。傾斜部21には、傾斜部21に加わる乗員の荷重によって、左右方向内側の端縁に近いほど大きなモーメントを負担するが、傾斜部21に配置される筒状部31を比較的左右外方に配置することにより、モーメントの負担が受けづらい部位でクリップ32を取り付けることができる。
【0043】
支持部材8の左右の側縁には、傾斜部21の前方であって本体20の前部20bの後端部に側部切欠き33が形成されている。側部切欠き33を設けることによって、支持部材8を小型化及び軽量化できる。
【0044】
側部切欠き33が設けられ、かつ、前部20bの左右両端縁の中間部が前部取付部22の左右両端縁よりも外方に位置することによって、前部20bには左右両側部に羽部34が形成されている。羽部34は、前部20bの左右方向の中間部に対して傾斜していない。羽部34の一部は、圧力センサ25に対して左右方向に整合している。羽部34によって、前部20bに加わる荷重が分散されるため、圧力センサ25に過大な荷重が加わることが抑制される。前部20bの前後方向長さは、後部20aの前後方向長さよりも短く、羽部34の左右方向の外縁は、傾斜部21の左右方向の外縁よりも内方に位置する。このため、前部20bにかかる荷重が小さくなり、後部20aにかかる荷重は側方に分散するため、全体として支持部材8の強度が向上する。羽部34及びセンサ載置部26の間の剛性の低下を抑制するべく、空気用開口28の前後方向長さは、圧力センサの前後方向長さの1.2倍以下であることが好ましい。
【0045】
前部20bには、クリップ32を取り付けるためのクリップ取付孔35が複数設けられている。クリップ取付孔35は、センサ載置部26に対して左右及び前後にずれた位置に設けられている。また、クリップ取付孔35は、平面視でワイヤー24に重ならない位置に設けられている。ワイヤー24間の空間を有効利用するため、クリップ取付孔35の少なくとも一部は、中央縦ワイヤー24aと側部縦ワイヤー24bとの間に位置し、また、クリップ取付孔35の少なくとも一部は、複数の横ワイヤー24c間に位置する。乗員の荷重によるクリップ32への影響を抑制するため、中央縦ワイヤー24aと側部縦ワイヤー24bとの間に配置されたクリップ取付孔35の半数よりも多くは、中央縦ワイヤー24aと各々の側部縦ワイヤー24bとの間の中央よりも左右外方に位置することが好ましい。クリップ取付孔35から支持部材8の表側に突出したクリップ32の先端によって圧力センサ25に加わる圧力が影響を受けるおそれがあるが、クリップ取付孔35がセンサ載置部26に対して前後及び左右にずれた位置に設けられているため、その影響が抑制される。なお、支持部材8におけるセンサ載置部26の近傍を撓みやすくするため、クリップ取付孔35の一部の配置を、センサ載置部26に対して前後にずらすことに代え、前後にずれない(左右方向に整合する)位置に設けてもよい。センサ載置部26と後部20aとの間のスペースを有効利用するため、クリップ取付孔35の一部は、圧力センサ25の後縁よりも後方に設けられる。また、支持部材8の本体20を、左右方向幅が最大となる部分の左右方向幅で3等分して、中央領域A及び左右2つの側部領域B,Bに分けたとき、各々の側部領域Bに含まれるクリップ取付孔35の数は、中央領域Aに含まれるクリップ取付孔35の数よりも多い。このようにクリップ取付孔35を配置することにより、圧力センサ25に近い中央領域Aの剛性の低下を抑制することができる。また、クリップ取付孔35の少なくとも一部は、平面視において、第1前部取付片22aの後縁の左右方向中央、左右の傾斜部21の前縁の左右方向の内側を結ぶ三角形Cの内側に位置する。第1前部取付片22a及び傾斜部21は、本体20に比べて上方に位置するため、これに囲まれた領域にクリップ取付孔35を配置することにより、乗員による荷重がクリップに加わり難くなる。また、同様の理由から、クリップ取付孔35の少なくとも一部は、傾斜部21よりも前方かつ圧力センサ25よりも後方に配置される。また、クリップ取付孔35の一部は、側部切欠き33に対して左右に整合する位置に設けられている。これにより、圧力センサ25が荷重を受けた際に、傾斜部21よりも前部20b側の領域を撓みやすくすることができる。また、左右方向の空間を有効利用するため、クリップ取付孔35の一部は、互いに前後に並んで配置されることが好ましい。クリップ32の取付可能位置を増加させるため、羽部34にクリップ取付孔35を設けてもよい。なお、クリップ32及びクリップ32に保持される部材は、シートクッション2の昇降を規制するハイトブレーキ(図示せず)に影響を与えないように、平面視でハイトブレーキを避けて配置されることが好ましい。また、クリップ取付孔35の一部は、羽部34及び第2前部取付片22bの近傍に設けられ、その周囲の剛性を弱めることが好ましい。クリップ取付孔35は、傾斜部21よりも前方に位置する前部20bに配置され、本体20の後部20aには設けないことが好ましい。乗員の荷重は、傾斜部21と傾斜部21が左右に隣接する後部20aとに加わりやすいため、比較的荷重を受け難い前部20bにクリップ取付孔35を設けることより、後部20aの強度の低下を抑制できる。
【0046】
少なくとも一部のクリップ32は、圧力センサ25にコネクタ27を介して電気的に接続されたワイヤーハーネス27aを把持し、支持部材8の裏面側からクリップ取付孔35に取り付けられている。ワイヤーハーネス27aは、取付状態を確認できるように、平面視で空気用開口28に重なるように、支持部材8の下方に配索されることが好ましい。また、ワイヤーハーネス27aを把持したクリップ32は、空気用開口28の近傍に設けられたクリップ取付孔35に取り付けられることが好ましい。クリップ取付孔35は、平面視で左右中央を前後に延在する中心線に対して左右対称に配置されることが好ましい。左右対称にクリップ取付孔35を配置することにより、ワイヤーハーネス27a等のクリップ32に把持される部材を、運転席と助手席とで左右逆に配置したい場合でも、共通の支持部材8を運転席と助手席とに使用できる。
【0047】
本体20の前部20bにおける空気用開口28よりも左右外方の部分は、側面視で前方が後方に比べて低くなるようなクランク形状36を有し、側部切欠き33によって低下した剛性を補っている。クランク形状36は、前方が後方よりも低いため、乗員の脚にかかる負担は小さい。また、本体20における左右一対の空気用開口28,28のそれぞれの左右外側の近傍部分は、本体20の前部20bにおけるクランク形状36によって低くなった部分に連結するように正面視で屈曲する屈曲部37を有する。屈曲部37は、空気用開口28の近傍から、本体20の前縁の近傍まで延出している。屈曲部37により、左右一対の空気用開口28,28により低下した剛性を補っている。羽部34の左右方向の外側の縁部には、表側に突出したフランジ38が設けられている。また、前部20bには、屈曲部37の前端から左右方向の外方に延びてフランジ38の前端に至る前壁部39が設けられている。クランク形状36、屈曲部37、フランジ38及び前壁部39によって、前部20bの左右の両側部の前側の表面に凹部40が画成される。また、凹部40によって低くなった部分にクリップ取付孔35を設け、その裏側にクリップ32によって他部材を取り付ける場合、表側に突出するクリップ32の先端による影響が凹部40によって緩和され、着座感の低下や圧力センサ25への影響が抑制される。また、前側が低くなっても後側で乗員の臀部を支持するため、凹部40が臀部の支持に与える影響は小さく、着座感の低下が抑制される凹部40を画成するクランク形状36、屈曲部37、フランジ38及び前壁部39によってその周囲の剛性が向上するため、左右両側部に配置された第2前部取付片22bの前部クロスメンバ15への取り付け安定性が向上する。
【0048】
センサ載置部26から第1前部取付片22aの間は、ワイヤー24を埋設する連結部41が形成されている。第1前部取付片22aの外輪郭は平面視で略矩形であり、その左右方向の幅は、センサ載置部26の左右方向幅よりも広い。このため、支持部材8の前後方向を軸とした揺れが抑制される。好ましくは、センサ載置部26の左側縁は、第1前部取付片22aの左側縁よりも右方に位置し、センサ載置部26の右側縁は、第1前部取付片22aの右側縁よりも左方に位置する。
【0049】
第1前部取付片22aは、前部クロスメンバ15に係合する湾曲部に第1取付片開口42を有する。第1取付片開口42によって、第1前部取付片22aの前部クロスメンバ15への取付強度の低下を抑制しつつ、支持部材8を部分的に撓みやすくできる。第1取付片開口42は、2つの内側開口42aと、内側開口42aに対して左右方向の外方に設けられた2つの外側開口42bとを有する。内側開口42a及び外側開口42bの左右方向長さは互いに略等しく、内側開口42aの前後方向長さは外側開口42bの前後方向長さよりも長い。このような内側開口42aと外側開口42bとの大きさの違いによって、支持部材8の左右方向内側が撓みやすくなり、圧力センサ25に極端な負荷が加わることを抑制できる。また、左右方向の延在範囲において、内側開口42aは外側開口42bよりも前記センサ載置部に重なる範囲が広いため、センサ載置部26が撓みやすくなっている。
【0050】
第2前部取付片22bは、前部クロスメンバ15に係合する湾曲部に、第2取付片開口43と、左右方向の外側の側縁に設けられた切欠き44とを有する。第2取付片開口43及び切欠き44の左右方向長さは互いに略等しく、前後方向長さも互いに略等しい。第2取付片開口43及び切欠き44によって、第2前部取付片22bの前部クロスメンバ15への取付強度の低下を抑制しつつ、支持部材8の左右方向の外側を撓みやすくできる。
【0051】
センサ載置部26には、上方が圧力センサ25によって覆われる載置部開口45と、圧力センサ25に係合する係合爪46と、圧力センサ25の左右両側縁を係止する左右1対の係止リブ47,47とを有する。センサ載置部26が第1前部取付片22aに対して前後方向に整合しているため、圧力センサ25は支持部材8の中で比較的安定した部位に取り付けられるが、更に係合爪46によって係合され、第1前部取付片22aの左右両側縁よりも左右方向の内側に位置する係止リブ47に係止されるため、圧力センサ25は更に安定する。また、係合爪46は、第1前部取付片22aの左右両側縁よりも左右方向の内側に位置し、前後方向において、第1取付片開口42の少なくとも一部に整合している。このため、圧力センサ25に荷重が加わった際に荷重を受ける支持部材の部位を前部クロスメンバ15に対して撓みやすくできる。センサ載置部26及びその近傍を撓みやすくするため、載置部開口45は、クリップ取付孔35の一部と左右方向に整合していることが好ましい。
【0052】
図3に示すように、パンフレーム17にクリップ取付孔35を設けてもよい。
【0053】
樹脂に比べて剛性の高い中央縦ワイヤー24a上に圧力センサ25が配置されるため、乗員の荷重が加わった時にセンサ載置部26の撓みが比較的小さく、圧力センサ25に比較的大きな圧力が加わり、圧力センサ25が圧力を検知し易くなる。また、ワイヤー24の近傍は、乗員の荷重を比較的大きな力で支持するところ、圧力センサ25に電気的に接続されたワイヤーハーネス27aを把持するクリップ32が平面視でワイヤー24に重ならない位置に設けられたクリップ取付孔35に取り付けられるため、クリップ32が乗員の荷重を受けて外れることが抑制される。
【0054】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。上記実施形態の構成は、車両以外の乗物、例えば飛行機等のシートに適用してもよい。クリップ取付孔及び/又は筒状部に代えて、クリップを取付可能な突起を支持部材の裏面に設けてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1:シート
2:シートクッション
8:支持部材
9:パッド
10:表皮材
14:サイドメンバ
15:前部クロスメンバ
16:後部クロスメンバ
20:本体
20a:後部
20b:前部
21:傾斜部
22:前部取付部
23:後部取付部
25:圧力センサ
28:空気用開口(開口)
32:クリップ
33:側部切欠き
35:クリップ取付孔(クリップ取付部)