(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 23/00 20060101AFI20230306BHJP
F25D 27/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
F25D23/00 302Z
F25D27/00
(21)【出願番号】P 2019026174
(22)【出願日】2019-02-18
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】國分 真子
(72)【発明者】
【氏名】船山 敦子
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-046848(JP,A)
【文献】特開2012-220046(JP,A)
【文献】特開2011-202941(JP,A)
【文献】特開2006-017443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/00-23/12
F25D 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷蔵室及び野菜室と、
前記冷蔵室内に形成され、前記野菜室の容器の容積より小さい光合成室と、
前記光合成室に収納可能なケースと、
前記光合成室の背面に備えられ、
光合成に使用される光を前記光合成室
に照射する光源と、を有し、
前記光源は、前記ケースの背面壁の上端よりも高い位置に配置され
、
前記光源の光軸は正面上方を向き、
前記光合成室は、前記光源の光を下方に向けて反射する天面を有する冷蔵庫。
【請求項2】
前記光源の光を反射する前、上、左、及び右面壁の1つ、2つ、3つ、又は4
つを有する請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記前、上、左、及び右面壁の1つ、2つ、3つ、又は4つは、鏡面処理されている請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記光合成室は、
48L以下の内容積で、
前後、左右、及び上下が略覆われ、
冷蔵室扉又は前記ケースの前面壁によって前方が略覆われる請求項2又は3に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記ケースの前面壁が前記光合成室の前方を略覆う部材として機能し、
前記光合成室の上方は、棚で覆われている請求項4に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記光合成室の内のり寸法が、縦140mm以下で、横790mm以下又は奥行き430mm以下である請求項4又は5に記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記光合成室は、前記冷蔵室の左右中央より一方側に配され、
前記光源は、左右方向で前記一方側に光軸が向いている請求項2乃至6何れか一項に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜は収穫後も生きており、呼吸や蒸散といった生理活性を示す。その特徴を活かし、収穫後野菜に光を照射させ光合成を起こし、私たちにとって有益な成分を野菜中で生合成させることができる。
特許文献1には、野菜室15内に、水平面に対して下方に傾斜した光軸Axを有するLED5から野菜収納ケース4の内部に向けて光を出射する発光装置を備えた冷蔵庫が記載されている(
図3)。ケース4は透明にされている(0024)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、野菜室は収納容積も大きく、白菜、キャベツのような大きな野菜が収納されるとその奥や影に隠れた野菜には光が照射されにくい。特にカットされた葉物野菜等の使いかけの野菜・果物や、小さい野菜・果物は、丸のままの野菜等の陰に隠れてしまいやすい。
【0005】
このため、丸のままの野菜の収納に適した比較的大形の野菜室の他、使いかけの野菜の収納に適した空間を別に提供することが望まれる。この際、カットされた野菜はいずれも比較的小さめの塊形状等になっていて、比較的容器の内面下側に存在することが期待される。すると、カットされた野菜もまた光合成するならば(この確認は後述の実施例にて行った。)、特に容器中央から底にかけての領域に効果的に光を照射することが可能な構成が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記事情に鑑みてなされた本発明は、
冷蔵室及び野菜室と、
前記冷蔵室内に形成され、前記野菜室の容器の容積より小さい光合成室と、
前記光合成室に収納可能なケースと、
前記光合成室の背面に備えられ、光合成に使用される光を前記光合成室に照射する光源と、を有し、
前記光源は、前記ケースの背面壁の上端よりも高い位置に配置され、
前記光源の光軸は正面上方を向き、
前記光合成室は、前記光源の光を下方に向けて反射する天面を有する冷蔵庫である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図6】デシケータに葉物野菜を入れ、LEDの照射非照射を繰り返した場合と非照射を維持した場合の二酸化炭素濃度の変化を測定したグラフであり、(a)は丸のままの葉物野菜、(b)はカットした葉物野菜、を入れたグラフ
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は実施例の冷蔵庫の正面図である。
冷蔵庫1は、鋼板製の外箱10a、合成樹脂製の内箱10b、及びこれらの間に断熱材を挟んだ断熱箱体10を有している。断熱箱体10は、前方に開口しており、上方から冷蔵室2、左右に並設された製氷室3と上段冷凍室4、下段冷凍室5、野菜室6の順に貯蔵室を形成している。以下では、製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5は、まとめて冷凍室7と呼ぶ。冷蔵室2の前方の開口は、左右に分割された回転式の冷蔵室扉2a、2bにより開閉され、製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5、野菜室6の前方の開口は、引き出し式の製氷室扉3a、上段冷凍室扉4a、下段冷凍室扉5a、野菜室扉6aによってそれぞれ開閉される。
【0009】
冷蔵室扉2a、2bの庫内側外周には、シール部材として冷蔵室パッキン95a、95bを備えている。野菜室6の扉である野菜室扉6aの庫内側外周には、シール部材として野菜室パッキン97を備えており、扉を閉じた際に、断熱箱体10の前縁部と接触することにより庫内外の空気の流通を抑制するようにしている。扉2aには庫内の温度設定の操作を行う操作部99を設けている。冷蔵室2の温度は、操作部99を介してユーザーが維持温度レベルを選択できるようになっている。冷蔵室2は「強」では約2℃、「中」では約4℃、「弱」では約6℃に維持される。野菜室6は4℃超、本実施例では平均7℃程度に維持される。後述する光合成室36は、冷蔵室2の温度設定に依存して冷却されるが、冷蔵温度帯(チルド温度帯は除かれる。)に冷却され、好ましくは強設定や中設定の概ね2℃以上4℃以下の範囲にされる。光合成室36にはカット野菜等の使いかけの野菜の保存が期待されるところ、このような野菜は表面積が大きいため水分蒸散量が丸のままの野菜より大きくなる。したがって、本実施例のような冷蔵温度で保存することで、野菜室温度より低温で保存する方が蒸散が抑制できて好ましい。また、本実施例では、光合成室36は後述の通り間接冷却構造にされているため、低温を維持しやすい。
【0010】
図2は
図1のA-A断面図である。外箱10aと内箱10bとの間に発泡断熱材(例えば発泡ウレタン)や真空断熱材36を充填して形成される断熱箱体10により、冷蔵庫1の庫外と庫内は隔てられている。冷蔵室2、上段冷凍室4及び製氷室3は断熱仕切壁28によって隔てられ、下段冷凍室5と野菜室6は断熱仕切壁29によって隔てられている。
【0011】
冷蔵室2の扉2a、2bの庫内側には複数の棚34a、34b、34c、34dを設けている。断熱仕切壁28の上方で冷蔵室2内には、冷蔵室2の温度帯より低めに設定可能なチルドルーム35を設けている。チルドルーム35は、ユーザーが操作部99を介して設定温度を選択することができる。具体的には、冷蔵温度帯の約0~3℃に維持する「温度レベル1」と、冷凍温度帯の約-3~0℃に維持する「温度レベル2」の何れかに設定することができる。
【0012】
冷蔵室2の略背部には冷蔵用蒸発器室を備えており、冷蔵用蒸発器室内には、フィンチューブ式熱交換器である冷蔵用蒸発器14aが収納されている。また、冷蔵室2背部の幅方向の略中心には冷蔵室送風路11を備えており、冷蔵室送風路11の上部には、冷蔵室吐出口11aを備えている。
【0013】
冷蔵庫1の天井部には、制御装置の一部であるCPU、ROMやRAM等のメモリ、インターフェース回路等を搭載した制御基板31を配置している。制御基板31は、冷蔵室温度センサ41、冷凍室温度センサ、野菜室温度センサ、蒸発器温度センサ等と接続され、CPUは、これらの出力値や操作部99の設定、ROMに予め記録されたプログラム等を基に、後述する光合成室36の制御等を行っている。
【0014】
図3は、
図1の冷蔵室2のドアを外した状態の正面図である。
図4は、実施例に係る光合成室36に収納されたケース36aの斜視図である。
冷蔵室2の内にある棚34dの上方の領域は、光合成室36としての領域であり、ケース36aが配されている。光合成室36は冷蔵室2とともに扉2によって開閉され、ケース36aを出し入れすることでケース36a内の収納物を出し入れできる。なお、チルドルーム35は扉2に加えてチルドルーム35前方を覆う内扉を開閉することで収納物の出し入れが可能である。
【0015】
光合成室36は、左/右方及び後方が内箱10bに、右/左方が仕切り36bに、後方が内箱10b又は後述する背面パネル100に、上方が棚34cに、下方が棚34dによって覆われる空間である。前方はケース36aのケース前面壁135aによって覆われる。
ケース36aは光合成室36内に出し入れ可能な容器であり、把持部135fを備えるケース前面壁135aと、ケース背面壁135b、ケース左面壁135c、ケース右面壁135d、ケース底面壁135eを有している。ケース36aの上側は開放しているが、光合成室36に収納されると棚34cにより覆われる。そのため、光合成室36に収納されたケース36aの六方は、少なくとも、上下が棚34c,34d、後方が内箱10b又は背面パネル100、左右が内箱10b、仕切り36b、前方が前面壁135aを主として覆われ、冷気がケース36a内に直接入ることを抑制した間接冷却構造となっている。これにより、収納された野菜等の食品の乾燥が抑制されるとともに、光合成室36内において光合成によって生成される二酸化炭素濃度を維持しやすい。間接冷却性を重視して、ケース36aに上面壁(蓋)を取付けたり、各壁135a-135eの高さを揃えても良い。また、前面壁135aの上端と棚34cとの間にパッキン等の弾性部材を配しても良い。
【0016】
ケース36aは非光透過性材料であるが、少なくとも内面には光反射性の良い白色材料を用いるのが望ましい。具体的にはポリプロピレン等の白色の樹脂材料を用いれば、後述する光源200から照射された光がケース36aを透過することなく、ケース36aで乱反射して葉物野菜へ照射される光の量が増え、光合成効率を高めることができる。ケース36aの上部を覆う棚34c、左右に対向する部分の内箱10aや仕切り36bについても非光透過性樹脂、例えばケース36aと同一材料を用いることが好ましい。
【0017】
本実施例のように光源200を背面のみに配する場合は、上面壁を設けるなら光反射性の良い材料にすることが好ましく、光源を別途上面にも配するならば透明にしても良い。光源200の波長は、白色光でもよいが、赤色光、青色光、緑色光でもよい。
【0018】
また、さらに光合成効率を高めるため、鏡面処理等した反射部材を設けてもよい。後述のように光合成室36の背面に光源200を設けているため、光源200の前面に位置するケース前面壁135aや、ケース底面壁135e、ケース36aの上部を覆う棚34c、左右に対向する部分の内箱10aや仕切り36b、ケース左右面壁135c、135dに鏡面等の反射部材を設けてもよい。
【0019】
光合成室36は、例えば、葉物野菜へ照射される光量を増やし、光合成効率を向上させることが目的である。小容積かつ、ケース36aの高さが低いものが望ましい。ケース前面壁135aの横幅をX、ケース左面壁135cおよびケース右面壁135dの奥行き方向の長さをY、ケース前面壁135aおよびケース背面壁135bの高さをZとすると、本実施例におけるケース36aの寸法はX:320mm、Y:430mm、Z:140mmであり、空間容積は19.3Lである。
【0020】
光合成室36は、収納物の重なり合いを防ぎ、葉物野菜等に光源200からの光が照射されやすいように容積は小さいほうが望ましい。また、使いかけ野菜等の保存が期待されるためケースの高さはそれほど必要なく、高くしすぎないことで光源200と収納物の距離が近くなり、収納物への光の照射効率を高くしやすい。
【0021】
仕切り壁36bは透明にするか設けないようにすることで棚34cと棚34dによってできる空間全体に光合成室36を設けられる。設けない場合、光合成室36を構成するケース36aの寸法は、X:790mm、Y:430mm、Z:140mmであり、空間容積は47.6Lにできる。野菜室6の空間容積よりも小さくなるように設定する。このように容積は50L以下、好ましくは20L以下にできる。一方、丸のままの野菜等の収納に適した野菜室6の上段容器6cと下段容器6bとの容積は、それぞれ例えば27L以上、41L以上にでき、合計68L以上にできる。
【0022】
図5は光合成室36背後の領域の横断面図である。冷蔵庫1の内箱10bは、光合成室36背後に、正面、好ましくは正面やや下方に投光する光源200を有する。冷蔵室2の背面としての内箱10bに光源200を配置することで他の電気部品と近づけることができるため配線しやすく、冷蔵室2内に配線がむき出しになるのを回避することができる。
【0023】
光源200が内箱10bに取り付けられていることから、その正面には、冷凍サイクルの蒸発器からの冷気を案内する風路11や冷気吹き出し口が形成された背面パネル100が配され得る。背面パネル100には、光源200の投光領域に重なるところに開口部100aを設けており、光源200からの光が光合成室36内に照射される。このとき、ケース背面壁135bの上端は開口部100aより下方にするか、光源200と開口部100aとを通る直線に重なる領域に孔を設ける。
【0024】
光源200の光軸は、左または右方向にずらし、ユーザの眼に直接光が達しにくいようにすると好ましい。本実施例のように、冷蔵室の中央より左方に光合成室36が配されている場合は、ユーザへの直接光を低減すべく光軸を左にずらすのが好ましい。
また、上下方向については、光軸を下方向にずらす方が食品への直接光照射の観点から好ましいが、上方にある棚34cを高反射率にするならば上方向に光軸をずらしても良い。
【0025】
また、背面パネル100には、開口部100aを覆うように光を透過する素材でカバー100bを設けることができる。光源200を冷蔵室2の背面に設置することで、冷蔵室2の視認性向上も期待できる。
【0026】
光源200としてのLEDを照射することによって収穫後の葉物野菜が低温下で光合成を行うか確認した実験データを示す。
図6は、デシケータに葉物野菜を入れ、LEDの照射非照射を繰り返した場合と非照射を維持した場合の二酸化炭素濃度の変化を測定したグラフであり、(a)は丸のままの葉物野菜、(b)はカットした葉物野菜、を入れたグラフである。
【0027】
LED照射時には二酸化炭素濃度が減少し、無照射時には二酸化炭素濃度が増加している。これより、LEDの照射有無にあわせた二酸化炭素濃度の増減が確認できる。カットした葉物野菜もLED照射によって光合成することが確認された。
【0028】
小容積の光合成室36を設け、内面の反射光が野菜に集まりやすい環境にすることで野菜室では大物の野菜に埋もれ易い使いかけの野菜や、カットしたサラダ等に対しても光照射を行い、光合成させることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 冷蔵庫
2 冷蔵室(第一冷蔵温度帯室)
2a、2b 冷蔵室扉
3 製氷室
4 上段冷凍室
5 下段冷凍室冷凍室
3a、4a、5a 冷凍室扉
6 野菜室(第二冷蔵温度帯室)
6a 野菜室扉
7 冷凍室
10 断熱箱体
10a 外箱
10b 内箱
11 冷蔵室送風路
11a 冷蔵室吐出口
12 冷凍室送風路
12a 冷凍室吐出口
13 野菜室送風路
13a 野菜室吐出口
14a 冷蔵用蒸発器(第一蒸発器)
14b 冷凍用蒸発器(第二蒸発器)
15a、15b 15c 冷蔵室戻り風路
16 ヒンジカバー
17 冷凍室戻り口
18 野菜室戻り風路
18a 野菜室戻り口
19 野菜室ダンパ
21 ラジアントヒータ
24 圧縮機
25 風路
26 庫外ファン
28、29、30 断熱仕切壁
31 制御基板
34 棚(上方の棚34cは天面としても機能)
35 チルドルーム
36 光合成室
36a ケース
36b 仕切り壁
39 機械室
95a、95b 冷蔵室パッキン
96a、96b、96c 冷凍室パッキン
97 野菜室パッキン
135a ケース前面壁
135b ケース背面壁
135c ケース左面壁(左右面壁)
135d ケース右面壁(左右面壁)
135e ケース底面壁
200 光源