IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ウェルシィの特許一覧

特許7237640酸性凝集物含有廃液の処理方法および水処理装置
<>
  • 特許-酸性凝集物含有廃液の処理方法および水処理装置 図1
  • 特許-酸性凝集物含有廃液の処理方法および水処理装置 図2
  • 特許-酸性凝集物含有廃液の処理方法および水処理装置 図3
  • 特許-酸性凝集物含有廃液の処理方法および水処理装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】酸性凝集物含有廃液の処理方法および水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/72 20230101AFI20230306BHJP
   C02F 1/56 20230101ALI20230306BHJP
   B01D 61/14 20060101ALI20230306BHJP
   B01D 61/18 20060101ALI20230306BHJP
   C02F 1/70 20230101ALI20230306BHJP
   C02F 1/66 20230101ALI20230306BHJP
   C02F 3/12 20230101ALI20230306BHJP
   C02F 9/00 20230101ALI20230306BHJP
【FI】
C02F1/72 Z
C02F1/56 K
B01D61/14 500
B01D61/18
C02F1/70 Z
C02F1/66 540H
C02F3/12 F
C02F9/00
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2019028416
(22)【出願日】2019-02-20
(65)【公開番号】P2019171367
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2018058707
(32)【優先日】2018-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】596136316
【氏名又は名称】三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】安保 貴永
(72)【発明者】
【氏名】皆川 正和
【審査官】富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-229415(JP,A)
【文献】特開平11-290894(JP,A)
【文献】特開2014-205099(JP,A)
【文献】特開2007-125521(JP,A)
【文献】特開2015-128751(JP,A)
【文献】特開2014-151307(JP,A)
【文献】特開昭56-048290(JP,A)
【文献】特開平10-202294(JP,A)
【文献】特開昭62-241596(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0261042(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/70-1/78
C02F 1/52-1/56
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
C02F 1/66
C02F 3/12
C02F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(i)~(iv)を有する酸性凝集物含有廃液の処理方法。
(i):酸性凝集物および被酸化性の汚染物質を含む酸性凝集物含有廃液のpHを1.0以上4.0以下に調整するとともに、フェントン反応を行って、前記被酸化性の汚染物質を酸化し、反応液を得る酸化工程
(ii):前記反応液に含まれる第二鉄イオンを、鉄還元触媒の存在下で第一鉄イオンに還元する還元工程
(iii):前記反応液のpHを4.3以上6.5未満に調整し、前記第一鉄イオンおよび前記第二鉄イオンを不溶化させ、第一鉄化合物および第二鉄化合物が懸濁した懸濁液を得る中和工程
(iv):前記懸濁液を、前記第二鉄化合物を含む汚泥と処理水とに分離する固液分離工程
【請求項2】
下記工程(i)~(iii)および下記工程(a)、(b)を有する酸性凝集物含有廃液の処理方法。
(i):酸性凝集物および被酸化性の汚染物質を含む酸性凝集物含有廃液のpHを1.0以上4.0以下に調整するとともに、フェントン反応を行って、前記被酸化性の汚染物質を酸化し、反応液を得る酸化工程
(ii):前記反応液に含まれる第二鉄イオンを、鉄還元触媒の存在下で第一鉄イオンに還元する還元工程
(iii):前記反応液のpHを4.3以上6.5未満に調整し、前記第一鉄イオンおよび前記第二鉄イオンを不溶化させ、第一鉄化合物および第二鉄化合物が懸濁した懸濁液を得る中和工程
(a):前記懸濁液に凝集剤を添加する凝集工程
(b):前記凝集剤が添加された前記懸濁液を、前記第二鉄化合物を含む汚泥と処理水とに分離する固液分離工程
【請求項3】
前記工程(a)と前記工程(b)との間に、下記工程(v)を有する請求項2に記載の酸性凝集物含有廃液の処理方法。
(v):前記凝集剤が添加された前記懸濁液を中和する再中和工程
【請求項4】
前記凝集剤が高分子凝集剤である請求項2または3に記載の酸性凝集物含有廃液の処理方法。
【請求項5】
前記高分子凝集剤がノニオン系高分子凝集剤である請求項4に記載の酸性凝集物含有廃液の処理方法。
【請求項6】
前記工程(iv)または前記工程(b)の後に、下記工程(vi)をさらに有する請求項1~5のいずれか1項に記載の酸性凝集物含有廃液の処理方法。
(vi):前記処理水に含まれる前記被酸化性の汚染物質を微生物により分解し、生物処理水を得る生物処理工程
【請求項7】
下記工程(vii)をさらに有する請求項1~6のいずれか1項に記載の酸性凝集物含有廃液の処理方法。
(vii):前記汚泥の少なくとも一部を前記工程(i)に返送する汚泥返送工程
【請求項8】
前記鉄還元触媒は、活性炭およびゼオライトからなる群から選ばれる少なくとも一つである請求項1~7のいずれか1項に記載の酸性凝集物含有廃液の処理方法。
【請求項9】
前記活性炭が酸化鉄ナノ粒子を有する、請求項8に記載の酸性凝集物含有廃液の処理方法。
【請求項10】
前記工程(i)において、酸を用いて前記酸性凝集物含有廃液のpHを1.0以上4.0以下に調整する請求項1~9のいずれか1項に記載の酸性凝集物含有廃液の処理方法。
【請求項11】
前記酸として、硫酸または塩酸を用いる請求項10に記載の酸性凝集物含有廃液の処理方法。
【請求項12】
前記酸性凝集物含有廃液としてフォトレジスト現像廃液を処理する請求項1~11のいずれか1項に記載の酸性凝集物含有廃液の処理方法。
【請求項13】
下記(1)~(3)を備える、水処理装置。
(1):酸性凝集物および被酸化性の汚染物質を含む酸性凝集物含有廃液中の前記被酸化性の汚染物質をフェントン反応により酸化するとともに、前記フェントン反応により生成した第二鉄イオンを、鉄還元触媒により第一鉄イオンに還元し、反応液を得る反応槽
(2):前記反応液のpHを4.3以上6.5未満に調整し、前記第一鉄イオンおよび前記第二鉄イオンを不溶化させ、第一鉄化合物および第二鉄化合物が懸濁した懸濁液を得る中和槽
(3):前記懸濁液を、前記第二鉄化合物を含む汚泥と処理水とに分離する濃縮装置
【請求項14】
下記(1)、(2)および下記(A)、(B)を備える、水処理装置。
(1):酸性凝集物および被酸化性の汚染物質を含む酸性凝集物含有廃液中の前記被酸化性の汚染物質をフェントン反応により酸化するとともに、前記フェントン反応により生成した第二鉄イオンを、鉄還元触媒により第一鉄イオンに還元し、反応液を得る反応槽
(2):前記反応液のpHを4.3以上6.5未満に調整し、前記第一鉄イオンおよび前記第二鉄イオンを不溶化させ、第一鉄化合物および第二鉄化合物が懸濁した懸濁液を得る中和槽
(A):前記懸濁液に凝集剤を添加する凝集装置
(B):前記凝集剤が添加された前記懸濁液を、前記第二鉄化合物を含む汚泥と処理水とに分離する濃縮装置
【請求項15】
下記(4)をさらに備える請求項14に記載の水処理装置。
(4):前記凝集剤が添加された前記懸濁液を中和する再中和槽
【請求項16】
前記(3)または前記(B)の後に、下記(5)をさらに備える請求項13~15のいずれか1項に記載の水処理装置。
(5):前記処理水に含まれる前記被酸化性の汚染物質を微生物により分解し、生物処理水を得る生物処理槽
【請求項17】
下記(6)をさらに備える請求項13~16のいずれか1項に記載の水処理装置。
(6):前記汚泥の少なくとも一部を前記(1)に返送する汚泥返送手段
【請求項18】
前記鉄還元触媒は、活性炭およびゼオライトからなる群から選ばれる少なくとも一つである請求項13~17のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項19】
前記活性炭が酸化鉄ナノ粒子を有する、請求項18に記載の水処理装置。
【請求項20】
前記(1)に酸またはアルカリを供給して前記酸性凝集物含有廃液のpHを調整する第一pH調整装置と、
前記(2)にアルカリを供給して前記反応液のpHを調整する第二pH調整装置と、をさらに備える請求項13~19のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項21】
前記(3)または前記(B)は、脱水機を有する請求項13~20のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項22】
前記(3)または前記(B)は、濾過膜を有する請求項13~21のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項23】
前記(3)または前記(B)は、前記(2)の内部に設けられている請求項13~22のいずれか1項に記載の水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性凝集物含有廃液の処理方法および水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フェントン反応は、第一鉄イオンに対し過酸化水素を反応させ、ヒドロキシラジカルを発生させる反応である。ヒドロキシラジカルは強力な酸化力を持ち、その強力な酸化力を利用して、殺菌、有害物質や難分解性の汚染物質の分解など、様々な分野に応用が期待されている。
【0003】
フェントン反応で使用した第一鉄イオンは反応の進行に伴い酸化され、第二鉄イオンとなる。例えば、フェントン反応を利用して被酸化性の汚濁物質を含む廃液を処理した場合、第二鉄化合物を含む汚泥が廃棄物となり、その処理コストが高いことが問題となっている。また、フェントン反応の進行に伴い、第一鉄イオンは消費されるので、処理中においても第一鉄イオンを発生させ続けなければならなかった。
【0004】
フェントン反応で生成した第二鉄イオンの一部は、過酸化水素の存在下で、一部が第一鉄イオンに還元されることが知られている。しかしながら、この還元反応はフェントン反応と比較して非常に遅いことが知られている。これに対し、上記還元反応を促進させる鉄還元触媒を添加し、フェントン反応と上記還元反応を同時に行う手法が知られている。このような例として、鉄還元触媒として活性炭を添加する例が挙げられる(特許文献1および特許文献2)。
【0005】
特許文献1および特許文献2に記載の処理方法によれば、フェントン反応のみを利用した水処理方法に比べて、廃棄物の処理にかかるコストを抑えることができる。また、上記還元反応により生成した第一鉄イオンを再利用することができるので、追加で発生させる第一鉄イオンの量を少なくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭56-48290号公報
【文献】特許第5215578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および特許文献2に記載の処理方法では、最終的に得られる処理液から鉄イオンを除去するために、フェントン反応後の反応液のpHを調整し、鉄イオンを不溶化させ、反応液から不溶化した鉄化合物を分離する必要がある。
【0008】
しかしながら、廃液中に酸性条件で凝集する酸性凝集物が溶解している場合、フェントン反応の際には酸性凝集物が不溶化するが、反応液をアルカリ性にすると、酸性凝集物が再溶解する。このとき、酸性凝集物とともに、鉄イオンが不溶化しないことがある。このような酸性凝集物含有廃液を処理すると、最終的に得られる処理液中に鉄イオンが含まれ、処理水の水質が悪化することがある。
【0009】
また、活性炭以外の鉄還元触媒を使用する場合においても、上記と同様の課題が生じることがあった。
【0010】
そこで、本発明の一態様は、第二鉄イオンの還元反応を伴うフェントン反応を利用して酸性凝集物含有廃液に含まれる被酸化性の汚染物質を易分解化させるために分解するとともに、処理水への鉄イオンの溶出を抑制することができる酸性凝集物含有廃液の処理方法および水処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は下記態様を有する。
<1>下記工程(i)~(iv)を有する酸性凝集物含有廃液の処理方法。
(i):酸性凝集物および被酸化性の汚染物質を含む酸性凝集物含有廃液のpHを1.0以上4.0以下に調整するとともに、フェントン反応を行って、前記被酸化性の汚染物質を酸化し、反応液を得る酸化工程
(ii):前記反応液に含まれる第二鉄イオンを、鉄還元触媒の存在下で第一鉄イオンに還元する還元工程
(iii):前記反応液のpHを4.3以上6.5未満に調整し、前記第一鉄イオンおよび前記第二鉄イオンを不溶化させ、第一鉄化合物および第二鉄化合物が懸濁した懸濁液を得る中和工程
(iv):前記懸濁液を、前記第二鉄化合物を含む汚泥と処理水とに分離する固液分離工程
<2>下記工程(i)~(iii)および下記工程(a)、(b)を有する酸性凝集物含有廃液の処理方法。
(i):酸性凝集物および被酸化性の汚染物質を含む酸性凝集物含有廃液のpHを1.0以上4.0以下に調整するとともに、フェントン反応を行って、前記被酸化性の汚染物質を酸化し、反応液を得る酸化工程
(ii):前記反応液に含まれる第二鉄イオンを、鉄還元触媒の存在下で第一鉄イオンに還元する還元工程
(iii):前記反応液のpHを4.3以上6.5未満に調整し、前記第一鉄イオンおよび前記第二鉄イオンを不溶化させ、第一鉄化合物および第二鉄化合物が懸濁した懸濁液を得る中和工程
(a):前記懸濁液に凝集剤を添加する凝集工程
(b):前記凝集剤が添加された前記懸濁液を、前記第二鉄化合物を含む汚泥と処理水とに分離する固液分離工程
<3>前記工程(a)と前記工程(b)との間に、下記工程(v)を有する<2>の酸性凝集物含有廃液の処理方法。
(v):前記凝集剤が添加された前記懸濁液を中和する再中和工程
<4>前記凝集剤が高分子凝集剤である<2>または<3>の酸性凝集物含有廃液の処理方法。
<5>前記高分子凝集剤がノニオン系高分子凝集剤である<4>の酸性凝集物含有廃液の処理方法。
<6>前記工程(iv)または前記工程(b)の後に、下記工程(vi)をさらに有する<1>~<5>のいずれかの酸性凝集物含有廃液の処理方法。
(vi):前記処理水に含まれる前記被酸化性の汚染物質を微生物により分解し、生物処理水を得る生物処理工程
<7>下記工程(vii)をさらに有する<1>~<6>のいずれかの酸性凝集物含有廃液の処理方法。
(vii):前記汚泥の少なくとも一部を前記工程(i)に返送する汚泥返送工程
<8>前記鉄還元触媒は、活性炭およびゼオライトからなる群から選ばれる少なくとも一つである<1>~<7>のいずれかの酸性凝集物含有廃液の処理方法。
<9>前記活性炭が酸化鉄ナノ粒子を有する、<8>の酸性凝集物含有廃液の処理方法。
<10>前記工程(i)において、酸を用いて前記酸性凝集物含有廃液のpHを1.0以上4.0以下に調整する<1>~<9>のいずれかの酸性凝集物含有廃液の処理方法。
<11>前記酸として、硫酸または塩酸を用いる<10>の酸性凝集物含有廃液の処理方法。
<12>前記酸性凝集物含有廃液としてフォトレジスト現像廃液を処理する<1>~<11>のいずれかの酸性凝集物含有廃液の処理方法。
<13>下記(1)~(3)を備える、水処理装置。
(1):酸性凝集物および被酸化性の汚染物質を含む酸性凝集物含有廃液中の前記被酸化性の汚染物質をフェントン反応により酸化するとともに、前記フェントン反応により生成した第二鉄イオンを、鉄還元触媒により第一鉄イオンに還元し、反応液を得る反応槽
(2):前記反応液のpHを4.3以上6.5未満に調整し、前記第一鉄イオンおよび前記第二鉄イオンを不溶化させ、第一鉄化合物および第二鉄化合物が懸濁した懸濁液を得る中和槽
(3):前記懸濁液を、前記第二鉄化合物を含む汚泥と処理水とに分離する濃縮装置
<14>下記(1)、(2)および下記(A)、(B)を備える、水処理装置。
(1):酸性凝集物および被酸化性の汚染物質を含む酸性凝集物含有廃液中の前記被酸化性の汚染物質をフェントン反応により酸化するとともに、前記フェントン反応により生成した第二鉄イオンを、鉄還元触媒により第一鉄イオンに還元し、反応液を得る反応槽
(2):前記反応液のpHを4.3以上6.5未満に調整し、前記第一鉄イオンおよび前記第二鉄イオンを不溶化させ、第一鉄化合物および第二鉄化合物が懸濁した懸濁液を得る中和槽
(A):前記懸濁液に凝集剤を添加する凝集装置
(B):前記凝集剤が添加された前記懸濁液を、前記第二鉄化合物を含む汚泥と処理水とに分離する濃縮装置
<15>下記(4)をさらに備える<14>の水処理装置。
(4):前記凝集剤が添加された前記懸濁液を中和する再中和槽
<16>前記(3)または前記(B)の後に、下記(5)をさらに備える<13>~<15>のいずれかの水処理装置。
(5):前記処理水に含まれる前記被酸化性の汚染物質を微生物により分解し、生物処理水を得る生物処理槽
<17>下記(6)をさらに備える<13>~<16>のいずれかの水処理装置。
(6):前記汚泥の少なくとも一部を前記(1)に返送する汚泥返送手段
<18>前記鉄還元触媒は、活性炭およびゼオライトからなる群から選ばれる少なくとも一つである<13>~<17>のいずれかの水処理装置。
<19>前記活性炭が酸化鉄ナノ粒子を有する、<18>の水処理装置。
<20>前記(1)に酸またはアルカリを供給して前記酸性凝集物含有廃液のpHを調整する第一pH調整装置と、
前記(2)にアルカリを供給して前記反応液のpHを調整する第二pH調整装置と、をさらに備える<13>~<19>のいずれかの水処理装置。
<21>前記(3)または前記(B)は、脱水機を有する<13>~<20>のいずれかの水処理装置。
<22>前記(3)または前記(B)は、濾過膜を有する<13>~<21>のいずれかの水処理装置。
<23>前記(3)または前記(B)は、前記(2)の内部に設けられている<13>~<22>のいずれかの水処理装置。
【0012】
本発明は下記態様を有するともいえる。
[1]下記工程(i)~(v)を有する酸性凝集物含有廃液の処理方法。
(i):酸性凝集物および被酸化性の汚染物質を含む酸性凝集物含有廃液のpHを1.0以上4.0以下に調整するとともに、フェントン反応を行って、前記被酸化性の汚染物質を酸化し、反応液を得る酸化工程
(ii):前記フェントン反応により生成し、前記反応液に含まれる第二鉄イオンを、鉄還元触媒の存在下で第一鉄イオンに還元する還元工程
(iii):前記反応液のpHを4.3以上6.0未満に調整し、前記第一鉄イオンおよび前記第二鉄イオンを不溶化させ、第一鉄化合物および第二鉄化合物が懸濁した懸濁液を得る中和工程
(iv):前記懸濁液に凝集剤を添加する凝集工程
(v):前記凝集剤が添加された前記懸濁液を、前記第二鉄化合物を含む汚泥と処理水とに分離する固液分離工程
[2]下記工程(vi)をさらに有する[1]に記載の酸性凝集物含有廃液の処理方法。
(vi):前記汚泥の少なくとも一部を前記工程(i)に返送する汚泥返送工程
[3]前記工程(iv)と、前記工程(v)と、の間に、下記工程(vii)を有する[2]に記載の酸性凝集物含有廃液の処理方法。
(vii):前記凝集剤が添加された前記懸濁液を中和する再中和工程
[4]前記凝集剤が高分子凝集剤である[2]または[3]に記載の酸性凝集物含有廃液の処理方法。
[5]前記高分子凝集剤がノニオン系高分子凝集剤である[4]に記載の酸性凝集物含有廃液の処理方法。
[6]前記鉄還元触媒は、活性炭およびゼオライトからなる群から選ばれる少なくとも一つである[1]~[5]のいずれか1項に記載の酸性凝集物含有廃液の処理方法。
[7]前記工程(i)において、酸を用いて前記酸性凝集物含有廃液のpHを1.0以上4.0以下に調整する[1]~[6]のいずれか1項に記載の酸性凝集物含有廃液の処理方法。
[8]前記酸として、硫酸または塩酸を用いる[7]に記載の酸性凝集物含有廃液の処理方法。
[9]前記工程(v)の後に、さらに下記工程(viii)を有する[1]~[8]のいずれか1項に記載の酸性凝集物含有廃液の処理方法。
(viii):前記処理水に含まれる前記被酸化性の汚染物質を微生物により分解し、生物処理水を得る生物処理工程
[10]前記酸性凝集物含有廃液としてフォトレジスト現像廃液を処理する[1]~[9]のいずれか1項に記載の酸性凝集物含有廃液の処理方法。
[11]下記(1)~(4)を備える、水処理装置。
(1):酸性凝集物および被酸化性の汚染物質を含む酸性凝集物含有廃液中の前記被酸化性の汚染物質をフェントン反応により酸化するとともに、前記フェントン反応により生成した第二鉄イオンを、鉄還元触媒により第一鉄イオンに還元し、反応液を得る反応槽
(2):前記反応液のpHを4.3以上6.0未満に調整し、前記第一鉄イオンおよび前記第二鉄イオンを不溶化させ、第一鉄化合物および第二鉄化合物が懸濁した懸濁液を得る中和槽
(3):前記懸濁液に凝集剤を添加する凝集装置
(4):前記凝集剤が添加された前記懸濁液を、前記第二鉄化合物を含む汚泥と処理水とに分離する濃縮装置
[12]下記(5)を備える[11]に記載の水処理装置。
(5):前記汚泥の少なくとも一部を前記(1)に返送する汚泥返送手段
[13]下記(6)を備える[12]に記載の水処理装置。
(6):前記凝集剤が添加された前記懸濁液を中和する再中和槽
[14]前記(1)に酸またはアルカリを供給して前記酸性凝集物含有廃液のpHを調整する第一pH調整装置と、
前記(2)にアルカリを供給して前記反応液のpHを調整する第二pH調整装置と、を備える[11]~[13]のいずれか1項に記載の水処理装置。
[15]前記(4)は、脱水機を有する[11]~[14]のいずれか1項に記載の水処理装置。
[16]前記(4)は、濾過膜を有する[11]~[14]のいずれか1項に記載の水処理装置。
[17]前記(4)は、前記(2)の内部に設けられている[11]~[16]のいずれか1項に記載の水処理装置。
[18]前記(4)の後に、下記(7)を備える[11]~[17]のいずれか1項に記載の水処理装置。
(7):前記処理水に含まれる前記被酸化性の汚染物質を微生物により分解し、生物処理水を得る生物処理槽
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、第二鉄イオンの還元反応を伴うフェントン反応を利用して酸性凝集物含有廃液に含まれる被酸化性の汚染物質を易分解化させるために分解するとともに、処理水への鉄イオンの溶出を抑制することができる酸性凝集物含有廃液の処理方法および水処理装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、第1実施形態の処理装置の概略構成を示す図である。
図2図2は、第2実施形態の処理装置の概略構成を示す図である。
図3図3は、第3実施形態の処理装置の概略構成を示す図である。
図4図4は、第4実施形態の処理装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0016】
<第1実施形態>
本実施形態の酸性凝集物含有廃液の処理方法は、下記工程(i)~(iii)および下記工程(a)、(b)を有する。
(i):酸性凝集物および被酸化性の汚染物質を含む酸性凝集物含有廃液のpHを1.0以上4.0以下に調整するとともに、フェントン反応を行って、被酸化性の汚染物質を酸化し、反応液を得る酸化工程
(ii):反応液に含まれる第二鉄イオンを、鉄還元触媒の存在下で第一鉄イオンに還元する還元工程
(iii):反応液のpHを4.3以上6.5未満に調整し、第一鉄イオンおよび第二鉄イオンを不溶化させ、第一鉄化合物および第二鉄化合物が懸濁した懸濁液を得る中和工程
(a):懸濁液に凝集剤を添加する凝集工程
(b):凝集剤が添加された懸濁液を、第二鉄化合物を含む汚泥と処理水とに分離する固液分離工程
【0017】
なお、本明細書では、第一鉄化合物および第二鉄化合物を合わせて「鉄化合物」と呼ぶことがある。
【0018】
[酸性凝集物含有廃液の処理装置]
以下、第1実施形態の酸性凝集物含有廃液の処理方法に用いる処理装置について説明する。図1は、第1実施形態の処理装置の概略構成を示す図である。以下、「酸性凝集物含有廃液」を単に「廃液」と称することがある。また、「酸性凝集物含有廃液の処理装置」を単に「処理装置」と称することがある。また、「酸性凝集物および被酸化性の汚染物質を含む酸性凝集物含有廃液」を単に「酸性凝集物含有廃液」または「廃液」と称することがある。
【0019】
図1に示す処理装置1は、反応槽11と、中和槽21と、濃縮装置41と、凝集装置51と、処理水貯留槽71と、廃液供給流路12と、反応液輸送流路13と、懸濁液輸送流路25と、凝集懸濁液輸送流路53と、第一処理水輸送流路42と、汚泥排出流路43と、を備える。
【0020】
反応槽11は、pH調整装置14と、鉄試薬添加手段15と、過酸化水素添加手段16と、触媒添加手段17と、を備える。
【0021】
中和槽21は、pH調整装置24を備える。
【0022】
本明細書において、pH調整装置14は、特許請求の範囲における第一pH調整装置に相当する。また、pH調整装置24は、特許請求の範囲における第二pH調整装置に相当する。
【0023】
(酸性凝集物含有廃液)
処理装置1は、酸性凝集物および被酸化性の汚染物質を含む廃液を、フェントン反応を利用して酸化処理する。
【0024】
本明細書において、「酸性凝集物」とは、廃液に含まれる水とアルカリ性条件下で反応して当該廃液に溶解するとともに、廃液に含まれる水と酸性条件下で反応して凝集し、当該廃液に対して不溶化する物質を意味する。
【0025】
このような酸性凝集物としては、フミン質や、フォトレジストまたはフォトレジストの分解物が挙げられる。酸性凝集物を含有する廃液としては、例えばフミン質を含む廃液やフォトレジスト現像廃液が挙げられる。
【0026】
「フミン質」とは、土壌や石炭などの中に含まれている物質であり、動植物の遺骸や排泄物の化学的・生化学的な分解、又は微生物による合成の結果生成する複雑な化学構造を有し、褐色を呈する分子量数百~数万の高分子化合物である。フミン質は、単一の化合物からなるものではなく、構造を特定できない複数種の有機物を含んでいる混合物である。
フミン質の代表的な元素組成は、炭素:50~65%、水素:4~6%、酸素:30~41%であり、その他微量の窒素、リン、イオウなどを含んでいる。また、フミン質は、主に芳香族からなり、カルボキシル基、フェノール性水酸基、カルボニル基、水酸基などの官能基を有する。
【0027】
フォトレジスト現像廃液は、半導体デバイス、液晶ディスプレイ、プリント基板などの電子部品などを製造する際の現像工程や、現像工程後の洗浄工程で排出される。電子部品の製造方法の一例では、まず、基板上にフォトレジストの膜(以下、レジスト膜)を形成し、パターンマスクを介して光をレジスト膜に照射する。次いで、レジスト膜を形成した基板から、現像液にレジスト膜の不要な部分(樹脂成分)を溶解させることにより除去して、現像する。さらに、現像後の基板にエッチング処理などを行った後、基板上の残ったレジスト膜を剥離する。
【0028】
フォトレジスト現像廃液は、アルカリ性である。フォトレジスト現像廃液には、樹脂成分が10~1000ppm程度溶解されている。このような樹脂成分は、フォトレジスト現像廃液に含まれる水と酸性条件下で反応して凝集し、フォトレジスト現像廃液に対して不溶化する。
【0029】
被酸化性の汚染物質は、生物処理による分解が困難な有機物、または、亜リン酸や次亜リン酸などの無機物を含んでいてもよい。
【0030】
上記有機物としては、例えば1,4-ジオキサンなどの有機溶剤などが挙げられる。
亜リン酸や次亜リン酸は、めっき工場の工場廃液などに含まれている。
【0031】
(反応槽)
反応槽11は、廃液に含まれる被酸化性の汚染物質をフェントン反応により酸化するとともに、フェントン反応により生成した第二鉄イオンを鉄還元触媒により第一鉄イオンに還元する。反応槽11には、少なくとも第一鉄イオン(Fe2+)を発生させる鉄試薬、過酸化水素および鉄還元触媒が充填されている。
【0032】
反応槽11には、廃液供給流路12と、反応液輸送流路13と、がそれぞれ接続されている。
【0033】
廃液供給流路12には、反応槽11に供給される廃液が流れている。
反応液輸送流路13には、反応槽11から中和槽21に輸送される反応液が流れている。
【0034】
図1に示す処理装置1において、反応槽11から中和槽21に反応液を供給する方法は特に限定されず、ポンプを用いて反応液を供給してもよいし、オーバーフローを利用して反応液を供給してもよい。
【0035】
なお、図1に示す処理装置1において、反応槽11が一つ設けられている例を示したが、複数の反応槽11が直列に配置されていてもよい。その場合、フェントン反応にかかる時間を長くすることができるので、過酸化水素をフェントン反応で十分消費させることができる。
【0036】
また、反応槽11が複数配置されている場合、第一反応槽から第二反応槽に送液する方法は特に限定されず、ポンプを用いて送液してもよいし、オーバーフローを利用して送液してもよい。なお、本明細書において、第一反応槽および第二反応槽は、特許請求の範囲における反応槽を構成している。
【0037】
(第一pH調整装置)
pH調整装置14は、供給される廃液のpHに応じて、反応槽11内に酸またはアルカリを添加し、反応槽11の廃液のpHを調整する。
【0038】
反応槽11の廃液のpHは、鉄試薬を水に溶解させて第一鉄イオンを発生させ、かつ、ヒドロキシラジカルを発生させることが可能な範囲に調整される。本実施形態において、反応槽11の廃液は、酸性に調整され、具体的には1.0以上4.0以下の範囲に調整される。反応槽11の廃液のpHが1.0以上4.0以下であると、水に対する鉄試薬の溶解性を良好に保ちつつ、第二鉄イオンと鉄還元触媒との接触効率を高めることができる。
反応槽11の廃液のpHは、2.0以上3.0以下に調整されることが好ましく、2.5以上3.0以下に調整されることがより好ましい。酸性凝集物は、pHが1.0以上4.0以下の条件で、廃液に含まれる水に対して不溶化する。
【0039】
なお、処理装置1は、供給される廃液のpHを測定する測定機器(図示略)を備えていることが好ましい。
【0040】
酸の種類としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、シュウ酸、クエン酸、ギ酸、酢酸などの有機酸が挙げられる。なかでも、硫酸または塩酸が好ましく、フェントン反応で生成するヒドロキシラジカルを捕捉しにくいことから硫酸がより好ましい。
これらの酸は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
アルカリの種類としては、例えば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。なかでも、汎用性が高く、フェントン反応で生成する物質と反応しないことから水酸化ナトリウムが好ましい。
これらのアルカリは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
(鉄試薬添加手段)
鉄試薬添加手段15は、反応槽11の廃液に鉄試薬を添加する。
【0043】
鉄試薬としては、水に溶解して第一鉄イオンを発生させるものであれば特に限定されない。この発生した第一鉄イオンにより廃液に含まれる被酸化性の汚染物質を酸化する。鉄試薬としては、第一鉄塩、第一鉄酸化物、第二鉄塩および第二鉄酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つである。好ましくは、鉄試薬は第一鉄塩および第一鉄酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つである。
【0044】
また、鉄試薬としては、排水基準で管理する必要がなく、溶解性に優れることから、硫酸鉄または塩化鉄が好ましい。なかでも、鉄試薬としては、汎用性が高く、腐食性が少ないことから、硫酸鉄がより好ましい。
【0045】
本実施形態において、鉄試薬から発生する第一鉄イオンの大部分はフェントン反応に使われるが、一部は鉄還元触媒と結合する。そのため、発生した第一鉄イオンの量が、鉄還元触媒と結合する第一鉄イオンの量よりも多くなるように、鉄試薬を添加することが好ましい。例えば、第一鉄イオン/鉄還元触媒が質量比で0.01以上1以下となるように鉄試薬を添加することが好ましく、0.03以上0.5以下となるように鉄試薬を添加することがより好ましい。
【0046】
また、本実施形態では、鉄還元触媒により第二鉄イオンが還元されて第一鉄イオンが再生するため、鉄試薬として第二鉄化合物を用いることもできる。
【0047】
鉄試薬としては、固体状態のものを用いてもよいし、鉄試薬の水溶液のように液体状態にしたものを用いてもよい。
【0048】
(触媒添加手段)
触媒添加手段17は、反応槽11の廃液に鉄還元触媒を添加する。
【0049】
鉄還元触媒としては、フェントン反応を実質的に阻害しないとともに、過酸化水素により第二鉄イオンが還元されて第一鉄イオンが再生する反応を促進するものであればよい。
鉄還元触媒としては、活性炭およびゼオライトからなる群から選ばれる少なくとも一つであることが好ましく、触媒効率や廃触媒の処理の観点から、活性炭がより好ましい。
【0050】
鉄還元触媒が活性炭である場合、活性炭が酸化鉄ナノ粒子を有することがさらに好ましく、酸化鉄ナノ粒子は、γ-オキシ水酸化鉄を主成分とすることが特に好ましい。
例えば、活性炭がγ-オキシ水酸化鉄を主成分とする酸化鉄ナノ粒子を有する場合、鉄還元触媒から電子が移動し、γ-オキシ水酸化鉄中の第三鉄イオン(Fe3+)が過酸化水素の存在下で還元され、下式(I)で示すフェントン様反応が進行し、ラジカルが発生する。
Fe3++H → Fe2++H+HO・ ・・・(I)
【0051】
このフェントン様反応が、鉄還元触媒の表面ではなく、酸化鉄ナノ粒子の表面で起きることで、発生したラジカルによる鉄還元触媒の劣化を抑制でき、長期間にわたって鉄還元触媒の触媒性能を維持できる可能性がある。
【0052】
反応液全量に対する鉄還元触媒の濃度は、50000mg/L以下であることが好ましい。鉄還元触媒の質量濃度が50000mg/L以下であることにより、鉄還元触媒による過酸化水素の分解反応が抑制される。
【0053】
鉄還元触媒の形状としては、触媒効率の観点から粉体状であることが好ましい。また、鉄還元触媒の粒径としては、触媒を回収しやすいことから0.05μm~100μmが好ましい。
【0054】
なお、鉄試薬および鉄還元触媒は、反応槽11の廃液に添加する際にそれぞれ単独で添加してもよいが、混合後に添加してもよい。
【0055】
(過酸化水素添加手段)
過酸化水素添加手段16は、反応槽11の廃液に過酸化水素を添加する。
【0056】
反応槽11内では、過酸化水素に第一鉄イオンが反応して、ヒドロキシラジカルが発生する。廃液中に含まれる被酸化性の汚染物質が有機物である場合、発生したヒドロキシラジカルにより有機物は酸化分解される。一方、酸性凝集物は、pHが1.0以上4.0以下の条件で、廃液に含まれる水に対して不溶化する。不溶化した酸性凝集物の一部も酸化分解されることがある。また、不溶化した酸性凝集物の大部分は、後述する濃縮装置で分離される。
【0057】
一方、反応槽11によって得られた反応液中では、第一鉄イオンが過酸化水素の作用により酸化されて第二鉄イオンとなる。
【0058】
本実施形態においては、過酸化水素はフェントン反応のほかに、フェントン反応により生成した第二鉄イオンの還元反応にも使われる。そのため、過酸化水素添加手段16から添加する過酸化水素の量をフェントン反応で使用する理論値よりも多くすることが好ましい。
【0059】
反応槽11が複数配置されている場合、過酸化水素添加手段16から過酸化水素を添加する反応槽11は、最下流の反応槽11以外の槽とすることが好ましい。過酸化水素を添加する反応槽11が上流であるほど、フェントン反応にかかる時間をより長くすることができるので、過酸化水素をフェントン反応で十分消費させることができる。したがって、反応槽11の下流の中和槽21に未反応の過酸化水素の漏出を抑制することができる。また、未反応の過酸化水素による処理水中の化学的酸素要求量の上昇を抑制することができる。
【0060】
(中和槽)
中和槽21は、第一鉄イオン、およびフェントン反応により生成した第二鉄イオンを反応液から除去するために不溶化させ、第一鉄化合物および第二鉄化合物を生成させる。
【0061】
本実施形態において、第一鉄イオンおよび第二鉄イオンは、酸化鉄、水酸化鉄または塩化鉄などの鉄化合物となって不溶化する。
【0062】
中和槽21には、反応液輸送流路13と、懸濁液輸送流路25と、がそれぞれ接続されている。
【0063】
(第二pH調整装置)
pH調整装置24は、反応槽11から供給される反応液のpHに応じて、中和槽21内にアルカリを添加し、中和槽21の反応液のpHを調整する。中和槽21の反応液のpHは、第一鉄イオンおよび第二鉄イオンを不溶化させることが可能であり、かつ、酸性凝集物が水に対して不溶な状態に維持可能である範囲に調整される。中和槽21の反応液のpHは、4.3以上6.5未満の範囲に調整される。中和槽21の反応液のpHが4.3以上であると、第一鉄イオンおよび第二鉄イオンを十分に不溶化させることができると考えられる。
【0064】
発明者らの検討により、反応液をアルカリ性にすると、酸性凝集物が反応液中に溶解し、それに伴って第一鉄イオンおよび第二鉄イオンが不溶化しにくくなる、または、一度生成した第一鉄化合物および第二鉄化合物が反応液中に再溶解することがわかった。中和槽21の反応液のpHが6.5未満であると、酸性凝集物が反応液中に溶解しにくくなり、さらには第一鉄イオンおよび第二鉄イオンを不溶化させることができると考えられる。
【0065】
中和槽21の反応液のpHは、4.5以上6.5未満に調整されることが好ましく、4.5以上6.0未満に調整されることがより好ましく、4.5以上5.9以下に調整されることがさらに好ましく、4.7以上5.9以下に調整されることが特に好ましい。
【0066】
また、処理装置1は、反応槽11から供給される反応液のpHを測定する測定機器(図示略)を備えていることが好ましい。
【0067】
添加するアルカリの種類としては、pH調整装置14で添加することができるアルカリと同様のものが挙げられる。
【0068】
(凝集装置)
凝集装置51は、第二鉄化合物を含む汚泥が凝集した凝集懸濁液を得る。本明細書において、凝集懸濁液とは、汚泥が凝集した懸濁液を意味する。凝集装置51は、凝集剤添加装置52と、凝集槽54と、を備える。
【0069】
凝集槽54は、後述する凝集剤を用いて、第二鉄化合物を含む汚泥を凝集させる。凝集槽54には、懸濁液輸送流路25と、凝集懸濁液輸送流路53と、が接続されている。
【0070】
懸濁液輸送流路25には、中和槽21から凝集槽54に輸送される懸濁液が流れている。
【0071】
凝集懸濁液輸送流路53には、凝集槽54から濃縮装置41の濃縮槽44に輸送される凝集懸濁液が流れている。
【0072】
凝集剤添加装置52は、凝集槽54内の懸濁液に凝集剤を添加する。凝集剤の種類としては、例えば高分子凝集剤が好ましい。懸濁液のpHが4.3以上6.5未満であることから、このpH範囲で安定な凝集剤が好ましく、例えばノニオン系高分子凝集剤がより好ましい。ノニオン系高分子凝集剤としては、例えばポリアクリルアミド系凝集剤、変性ポリアクリルアミド系凝集剤、ポリエチレンオキサイド系凝集剤、澱粉などが挙げられる。
【0073】
(濃縮装置)
凝集装置51の凝集槽54から供給される凝集懸濁液は、第二鉄化合物を含む汚泥が凝集している。濃縮装置41は、この凝集懸濁液を、第二鉄化合物を含む汚泥と処理水とに固液分離する。濃縮装置41は、濃縮槽44を備えている。濃縮槽44は、凝集懸濁液中で汚泥を沈降させることにより、凝集懸濁液を汚泥と処理水とに固液分離する、いわゆる沈殿池である。濃縮槽44の上部には、処理水が多く存在し、濃縮槽44の下部には、汚泥が多く存在する。
【0074】
濃縮槽44の上部には、凝集懸濁液輸送流路53と、第一処理水輸送流路42と、がそれぞれ接続されている。濃縮槽44の下部には、汚泥排出流路43が接続されている。
【0075】
第一処理水輸送流路42には、濃縮装置41の濃縮槽44から処理水貯留槽71に輸送される処理水が流れている。
【0076】
汚泥排出流路43には、濃縮装置41の濃縮槽44から排出される汚泥が流れている。
【0077】
(処理水貯留槽)
処理水貯留槽71は、処理水を貯留する。処理水貯留槽71には、第一処理水輸送流路42が接続されている。処理水貯留槽71に貯留された処理水は、例えば、廃液を放出した工場等に返送され、再利用されるか、場合によっては工業用水などで希釈され、河川などに放流されてもよい。
【0078】
[酸性凝集物含有廃液の処理方法]
図1に示す処理装置1を用いる酸性凝集物含有廃液の処理方法について説明する。以下、「酸性凝集物含有廃液の処理方法」を単に「処理方法」と称することがある。本実施形態の処理方法は、酸化工程、還元工程、中和工程、凝集工程および固液分離工程をこの順で行う。なお、酸化工程と、還元工程とが、同時に行われてもよい。
【0079】
本実施形態の酸化工程では、最初に、反応槽11において、廃液のpHを1.0以上4.0以下に調整するとともに、廃液に含まれる被酸化性の汚染物質をフェントン反応により酸化する。また、不溶化した酸性凝集物の一部も酸化分解されることがある。不溶化した酸性凝集物の大部分は、後述する濃縮装置で分離される。
【0080】
本実施形態の還元工程では、反応槽11において、フェントン反応により生成した第二鉄イオンを、鉄還元触媒の存在下で第一鉄イオンに還元する。
【0081】
本実施形態の中和工程では、中和槽21において、酸化工程で得られた反応液のpHを4.3以上6.5未満に調整し、第一鉄イオンおよび第二鉄イオンを不溶化させ、第一鉄化合物および第二鉄化合物を生成させる。反応液のpHを4.3以上6.5未満に調整することにより、第一鉄イオンおよび第二鉄イオンを不溶化させることが可能であり、かつ、酸性凝集物が水に対して不溶な状態に維持可能である。これにより、第一鉄化合物および第二鉄化合物が懸濁した懸濁液が得られる。
【0082】
本実施形態の凝集工程では、酸性凝集物、第一鉄化合物および第二鉄化合物を含む懸濁液に凝集剤を添加し、凝集懸濁液を得る。凝集懸濁液は、凝集懸濁液輸送流路53を介して濃縮装置41の濃縮槽44に輸送される。凝集工程において、第二鉄化合物を含む汚泥を凝集させているので、次の固液分離工程において、汚泥を分離しやすい。
【0083】
本実施形態の固液分離工程では、凝集懸濁液を、濃縮装置41の濃縮槽44を用いて第二鉄化合物を含む汚泥と処理水とに固液分離する。
【0084】
上述したように、懸濁液中には、第一鉄化合物および第二鉄化合物と、酸性凝集物とが、水に対して不溶化している。そのため、本実施形態の固液分離工程では、第一鉄化合物および第二鉄化合物を含む汚泥と、処理水とを分離しやすい。このとき、酸性凝集物の分解物は低分子量となって処理水中に溶解している。一方、分解されなかった酸性凝集物は、汚泥中に含まれている。その結果、本実施形態の固液分離工程では、最終的に得られる処理水に鉄イオンが溶出するのを抑制することができる。
【0085】
分離された汚泥は汚泥排出流路43を介して処理装置1の外部に排出される。分離された処理水は、第一処理水輸送流路42を介して処理水貯留槽71に輸送される。
【0086】
以上のことから、本実施形態の酸性凝集物含有廃液の処理方法は、第二鉄イオンの還元反応を伴うフェントン反応を利用して酸性凝集物含有廃液に含まれる被酸化性の汚染物質を易分解化させるために分解するとともに、処理水への鉄イオンの溶出を抑制することができる。
【0087】
本実施形態の酸性凝集物含有廃液の処理方法において、第一鉄化合物および第二鉄化合物が懸濁した懸濁液に凝集剤を添加する凝集工程は省略可能である。すなわち、本実施形態の酸性凝集物含有廃液の処理方法においては、中和工程で得られる懸濁液を、第二鉄化合物を含む汚泥と処理水とに分離してもよい。
この場合、本実施形態の酸性凝集物含有廃液の処理方法は、下記工程(i)~(iv)を有する。
(i):酸性凝集物および被酸化性の汚染物質を含む酸性凝集物含有廃液のpHを1.0以上4.0以下に調整するとともに、フェントン反応を行って、被酸化性の汚染物質を酸化し、反応液を得る酸化工程
(ii):反応液に含まれる第二鉄イオンを、鉄還元触媒の存在下で第一鉄イオンに還元する還元工程
(iii):反応液のpHを4.3以上6.5未満に調整し、第一鉄イオンおよび第二鉄イオンを不溶化させ、第一鉄化合物および第二鉄化合物が懸濁した懸濁液を得る中和工程
(iv):懸濁液を、第二鉄化合物を含む汚泥と処理水とに分離する固液分離工程
【0088】
このように凝集工程を省略する場合でも、懸濁液中には、第一鉄化合物および第二鉄化合物と、酸性凝集物とが、水に対して不溶化しているため、第一鉄化合物および第二鉄化合物を含む汚泥と、処理水とを分離しやすい。このとき、酸性凝集物の分解物は低分子量となって処理水中に溶解し、分解されなかった酸性凝集物は、汚泥中に含まれている。
よって、凝集工程を省略し、中和工程で得られる懸濁液を、第二鉄化合物を含む汚泥と処理水とに分離する場合でも、最終的に得られる処理水に鉄イオンが溶出するのを抑制することができる。
【0089】
<第2実施形態>
[酸性凝集物含有廃液の処理装置]
以下、第2実施形態の酸性凝集物含有廃液の処理方法に用いる処理装置について説明する。図2は、第2実施形態の処理装置の概略構成を示す図である。
【0090】
図2に示すように、処理装置2は、反応槽11と、中和槽21と、濃縮装置41と、凝集装置51と、処理水貯留槽71と、汚泥返送手段32と、廃液供給流路12と、反応液輸送流路13と、懸濁液輸送流路25と、凝集懸濁液輸送流路53と、第一処理水輸送流路42と、汚泥排出流路43と、を備える。したがって、本実施形態において第1実施形態と共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0091】
(汚泥返送手段)
汚泥返送手段32は、濃縮装置41の濃縮槽44から反応槽11に汚泥の少なくとも一部を返送する。汚泥には、不溶化した酸性凝集物が含まれている。汚泥に含まれている酸性凝集物は、反応槽11で再び処理される。汚泥返送手段32は、汚泥返送流路33と、汚泥返送流路33の途中に設けられたポンプ33aと、を備えている。汚泥返送流路33は、ポンプ33aによって、濃縮槽44から反応槽11に汚泥の少なくとも一部を返送する。
【0092】
反応槽11が複数配置されている場合、濃縮槽44から汚泥を返送する反応槽11は、最下流の反応槽11以外の槽とすることが好ましい。汚泥を返送する反応槽11が上流であるほど、汚泥中の第二鉄化合物が溶解して第二鉄イオンとなり、さらに第一鉄イオンに還元されてからフェントン反応に使用されるまでの時間をより長くすることができる。したがって、返送した汚泥中の第二鉄化合物をフェントン反応に効果的に再利用することができる。
【0093】
なお、汚泥返送手段32は、濃縮槽44から反応槽11に、汚泥とともに処理水の一部を返送してもよい。また、別途設けた槽で汚泥と処理水の一部とを所定の濃度に調整してから、得られた懸濁液を反応槽11に返送してもよい。
【0094】
本実施形態の処理装置2は、汚泥返送流路33と、汚泥排出流路43と、をそれぞれ備えているが、汚泥排出流路43の途中に汚泥返送流路33が接続されていてもよい。
【0095】
本実施形態では、フェントン反応を利用した水処理では廃棄されていた第二鉄化合物を再利用することができる。そのため、第二鉄化合物の処理にかかる費用を削減できるほか、鉄試薬添加手段15から添加する鉄試薬の量を少なくすることができる。
【0096】
[酸性凝集物含有廃液の処理方法]
図2に示す処理装置2を用いる酸性凝集物含有廃液の処理方法について説明する。本実施形態の処理方法は、酸化工程、還元工程、中和工程、凝集工程、固液分離工程および汚泥返送工程をこの順で行う。なお、第1実施形態と同様に、酸化工程と、還元工程とが、同時に行われてもよい。
【0097】
本実施形態の固液分離工程では、第1実施形態と同様に、第二鉄化合物を含む汚泥が凝集した凝集懸濁液を、濃縮装置41の濃縮槽44を用いて汚泥と処理水とに固液分離する。
【0098】
本実施形態の汚泥返送工程では、汚泥返送手段32によって分離された汚泥の一部を、濃縮装置41の濃縮槽44から反応槽11に返送する。
【0099】
反応槽11では、返送された汚泥に含まれる第一鉄化合物および第二鉄化合物が酸化工程に再利用される。具体的に、第一鉄化合物は、反応槽11内の廃液に溶解して第一鉄イオンとなり、フェントン反応に使用される。一方、第二鉄化合物は、反応槽11内の廃液に溶解して第二鉄イオンとなり、過酸化水素および鉄還元触媒により第一鉄イオンに還元される。
【0100】
以上のことから、本実施形態の酸性凝集物含有廃液の処理方法は、第二鉄イオンの還元反応を伴うフェントン反応を利用して酸性凝集物含有廃液に含まれる被酸化性の汚染物質を易分解化させるために分解するとともに、処理水への鉄イオンの溶出を抑制することができる。
【0101】
特に、第2実施形態の酸性凝集物含有廃液の処理方法は、廃棄物の処理にかかるコストを抑えることができる。また、上記還元反応により生成した第一鉄イオンを再利用することができるので、第2実施形態の酸性凝集物含有廃液の処理方法は、追加で発生させる第一鉄イオンの量を少なくすることができる。
【0102】
<第3実施形態>
[酸性凝集物含有廃液の処理装置]
以下、第3実施形態の酸性凝集物含有廃液の処理方法に用いる処理装置について説明する。図3は、第3実施形態の処理装置の概略構成を示す図である。
【0103】
図3に示す処理装置3は、反応槽11と、中和槽21と、濃縮装置41と、凝集装置51と、再中和槽61と、処理水貯留槽71と、廃液供給流路12と、反応液輸送流路13と、懸濁液輸送流路25と、凝集懸濁液輸送流路53と、中和懸濁液輸送流路63と、第一処理水輸送流路42と、汚泥排出流路43と、を備える。したがって、本実施形態において第1実施形態と共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0104】
(再中和槽)
再中和槽61は、第二鉄化合物を含む汚泥が凝集した懸濁液を中和する。再中和槽61には、凝集懸濁液輸送流路53と、中和懸濁液輸送流路63と、が接続されている。
【0105】
第3実施形態の凝集懸濁液輸送流路53には、凝集槽54から再中和槽61に輸送される凝集懸濁液が流れている。
【0106】
中和懸濁液輸送流路63は、再中和槽61から濃縮装置41の濃縮槽44に中和懸濁液を輸送する。本明細書において、中和懸濁液とは、汚泥が凝集した懸濁液を中和して得られる懸濁液を意味する。
【0107】
再中和槽61は、pH調整装置62を備える。pH調整装置62は、供給される凝集懸濁液のpHに応じて、再中和槽61内にアルカリを添加し、再中和槽61の凝集懸濁液のpHを調整する。pH調整装置62は、凝集懸濁液のpHを、6.0以上8.0以下に調整することが好ましく、6.0以上7.0以下に調整することがより好ましい。凝集懸濁液のpHがこの範囲であると、装置の腐食が少ない。
【0108】
処理装置3は、供給される凝集懸濁液のpHを測定する測定機器(図示略)を備えていることが好ましい。
【0109】
アルカリの種類としては、pH調整装置14で添加することができるアルカリと同様のものが挙げられる。
【0110】
[酸性凝集物含有廃液の処理方法]
図3に示す処理装置3を用いる酸性凝集物含有廃液の処理方法について説明する。本実施形態の処理方法は、酸化工程、還元工程、中和工程、凝集工程、再中和工程および固液分離工程をこの順で行う。なお、第1実施形態と同様に、酸化工程と、還元工程とが、同時に行われてもよい。
【0111】
本実施形態の再中和工程では、pH調整装置62を用いて、再中和槽61内の凝集懸濁液にアルカリを添加し、凝集懸濁液を再中和する。本実施形態の再中和工程では、凝集懸濁液のpHを、6.0以上8.0以下に調整することが好ましく、6.0以上7.0以下に調整することがより好ましい。凝集懸濁液のpHがこの範囲であると、装置の腐食が少ない。
【0112】
本実施形態の固液分離工程では、中和した凝集懸濁液を、濃縮装置41の濃縮槽44を用いて第二鉄化合物を含む汚泥と処理水とに固液分離する。
【0113】
酸性凝集物含有廃液を、フェントン反応を利用して処理する場合、フェントン反応の際には酸性凝集物が不溶化するが、反応液を6.0以上8.0以下にすると、酸性凝集物が再溶解する。このとき、酸性凝集物とともに、第一鉄イオンおよび第二鉄イオンが不溶化しないことがある。このような酸性凝集物含有廃液を処理すると、最終的に得られる処理液中に第一鉄イオンおよび第二鉄イオンが含まれ、処理水の水質が悪化することがある。
【0114】
発明者らの検討により、懸濁液中の汚泥を凝集装置51によって予め凝集させておくと、凝集懸濁液のpHを6.0以上8.0以下にしても、酸性凝集物が再溶解しにくいことがわかった。その結果、第一鉄イオンおよび第二鉄イオンの不溶化が阻害されず、目的の処理水と、不溶化した第一鉄化合物および第二鉄化合物と、を分離することが可能であることがわかった。
【0115】
以上のことから、本実施形態の酸性凝集物含有廃液の処理方法は、第二鉄イオンの還元反応を伴うフェントン反応を利用して酸性凝集物含有廃液に含まれる被酸化性の汚染物質を易分解化させるために分解するとともに、処理水への鉄イオンの溶出を抑制することができる。
【0116】
特に、第3実施形態の酸性凝集物含有廃液の処理方法は、再中和工程において、凝集懸濁液のpHを6.0以上8.0以下に調整しているので、固液分離工程において、装置の腐食が少ない。
【0117】
高分子凝集剤は、pH1.0以上4.0以下の水中では分解すると考えられる。第3実施形態の酸性凝集物含有廃液の処理方法では、中和槽21を用いる中和工程において反応液を一度中和した後、凝集装置51を用いる凝集工程において、懸濁液に凝集剤を添加している。そのため、第3実施形態の酸性凝集物含有廃液の処理方法は、添加した高分子凝集剤が分解するのを抑制している。
【0118】
<第4実施形態>
[酸性凝集物含有廃液の処理装置]
以下、第4実施形態の酸性凝集物含有廃液の処理方法に用いる処理装置について説明する。図4は、第4実施形態の処理装置の概略構成を示す図である。
【0119】
図4に示す処理装置4は、反応槽11と、中和槽21と、濃縮装置41と、凝集装置51と、再中和槽61と、生物処理槽81と、生物処理水貯留槽91と、廃液供給流路12と、反応液輸送流路13と、懸濁液輸送流路25と、凝集懸濁液輸送流路53と、中和懸濁液輸送流路63と、第一処理水輸送流路42と、生物処理水輸送流路82と、汚泥排出流路43と、を備える。
【0120】
生物処理水輸送流路82は、生物処理槽81から生物処理水貯留槽91に生物処理水を輸送する。
【0121】
(生物処理槽)
生物処理槽81は、処理水に含まれる易分解化された被酸化性の汚染物質を微生物により分解し、生物処理水を得る。生物処理槽81には、第一処理水輸送流路42と、生物処理水輸送流路82と、が接続されている。
【0122】
第4実施形態の第一処理水輸送流路42には、濃縮装置41の濃縮槽44から生物処理槽81に輸送される処理水が流れている。
【0123】
(生物処理水貯留槽)
生物処理水貯留槽91は、生物処理水を貯留する。生物処理水貯留槽91には、生物処理水輸送流路82が接続されている。
【0124】
[酸性凝集物含有廃液の処理方法]
図4に示す処理装置4を用いる酸性凝集物含有廃液の処理方法について説明する。本実施形態の処理方法は、酸化工程、還元工程、中和工程、凝集工程、再中和工程、固液分離工程および生物処理工程をこの順で行う。なお、第1実施形態と同様に、酸化工程と、還元工程とが、同時に行われてもよい。
【0125】
本実施形態の生物処理工程では、生物処理槽81を用いて、処理水に含まれる易分解化された被酸化性の汚染物質を微生物により分解し、生物処理水を得る。
【0126】
以上のことから、本実施形態の酸性凝集物含有廃液の処理方法は、第二鉄イオンの還元反応を伴うフェントン反応を利用して酸性凝集物含有廃液に含まれる被酸化性の汚染物質を易分解化させるために分解するとともに、処理水への鉄イオンの溶出を抑制することができる。
【0127】
特に、本実施形態の酸性凝集物含有廃液の処理方法は、生物処理工程において、処理水に含まれる被酸化性の汚染物質を微生物により分解することができる。
【0128】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【0129】
本発明の一態様の酸性凝集物含有廃液の処理装置は、中和槽と凝集槽とが一つの槽であってもよい。この場合、pH調整装置を用いて槽内にアルカリを添加し、懸濁液のpHが十分安定してから、凝集剤添加装置を用いて槽内に凝集剤を添加することが好ましい。
【0130】
本発明の一態様の濃縮装置は、砂濾過装置、加圧浮上分離装置、遠心分離装置、ベルトプレス、脱水機、濾過膜などを備えていてもよい。濾過膜としては、例えば精密濾過膜または限外濾過膜などが挙げられる。精密濾過膜としては、モノリス型膜が挙げられる。限外濾過膜としては、中空糸膜、平膜、チューブラ膜が挙げられる。なかでも、容積充填率が高いことから、中空糸膜が好ましく用いられる。
【0131】
中空糸膜の材質としては、セルロース、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデンジフロライド(PVDF)、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)などが挙げられる。なかでも、中空糸膜の材質としては、耐薬品性やpH変化に強い点から、ポリフッ化ビニリデンジフロライド(PVDF)、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)が好ましい。
【0132】
モノリス型膜の材質としては、セラミックスが好ましい。
【0133】
濾過膜に形成される微細孔の平均孔径は、0.01μm以上1.0μm以下が好ましく、0.05μm以上0.45μm以下がより好ましい。前記微細孔の平均孔径が下限値以上であれば、固液分離に要する圧力を十分小さく抑えられる。一方、前記微細孔の平均孔径が上限値以下であれば、汚泥が処理水中に漏出するのを抑えることができる。
【0134】
本発明の一態様の膜モジュールを備えた濃縮装置は、中和槽内に配置されていなくてもよい。その場合、中和槽の下流に別の槽を配置し、この槽内に濃縮装置を配置してもよい。
【0135】
本発明の第1実施形態~第3実施形態の酸性凝集物含有廃液の処理装置は、第4実施形態の生物処理槽81、生物処理水輸送流路82および生物処理水貯留槽91を備えていてもよい。
【0136】
本発明の一態様の処理装置は、貯留槽を省略してもよい。また、本発明の一態様の酸性凝集物含有廃液の処理装置は、生物処理水貯留槽を省略してもよい。
【実施例
【0137】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0138】
以下の説明において、全鉄とは、総鉄とも呼ばれ、第一鉄イオンまたは第二鉄イオンのようなイオン状態の鉄(溶存鉄)と、第一鉄化合物または第二鉄化合物のような水に溶解しない鉄(懸濁鉄)との総称である。すなわち、全鉄濃度とは、これらの鉄の合計の濃度である。
【0139】
[全鉄濃度の測定]
処理水中の全鉄濃度の測定は、デジタルパックテストマルチ(株式会社共立理化学研究所製)により測定した。
【0140】
本実施例では、鉄還元触媒、鉄試薬および凝集剤として以下の材料を用いた。
鉄還元触媒:活性炭(三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社製、「DiaFellow CT」)
鉄試薬:硫酸鉄(II)七水和物(FeSO・7HO)
凝集剤溶液:溶液全量に対して0.1質量%ノニオン系高分子凝集剤(三菱ケミカルアクア・ソリューションズ社製、「NP500」)を含む溶液
【0141】
[実施例1]
2000mLの容器Aにフォトレジスト現像廃液(モデル排水)1500mLを入れ、さらに、フォトレジスト現像廃液を撹拌しながら容器Aに硫酸を添加してpHを2.9に調整した。
【0142】
容器Aに、鉄還元触媒と、鉄試薬と、を添加した。このとき、反応液全量に対する鉄還元触媒の質量濃度は2000mg/Lであった。反応液全量に対する鉄試薬の質量濃度は第一鉄イオン換算で956mg/Lであった。これらの混合液を撹拌することにより、廃液中に十分に分散または溶解させた。
【0143】
次いで、この溶液を撹拌しながら、容器Aに過酸化水素を添加し、反応液とした。このとき、反応液全量に対する過酸化水素の質量濃度は5000mg/Lであった。さらに、反応液を撹拌しながら、フェントン反応を24時間実施した(酸化工程)。
【0144】
フェントン反応終了後の反応液を撹拌しながら、120mLの容器Bに反応液100mLを採り、容器Bに水酸化ナトリウム水溶液を添加して反応液のpHを4.7となるように調製し、懸濁液とした(中和工程)。
【0145】
次いで、容器Bに凝集剤溶液を添加し、汚泥を凝集させた(凝集工程)。このとき、凝集剤溶液を添加後の凝集懸濁液全量に対する凝集剤の質量濃度は、50mg/Lであった。
【0146】
汚泥が凝集した懸濁液を、第二鉄化合物を含む汚泥と処理水とに分離した(固液分離工程)。処理水の全鉄濃度は47mg/Lであった。
【0147】
[実施例2]
中和工程において、反応液のpHを5.1としたこと以外は、実施例1と同様に行った。処理水の全鉄濃度は35mg/Lであった。
【0148】
[実施例3]
中和工程において、反応液のpHを5.5としたこと以外は、実施例1と同様に行った。処理水の全鉄濃度は38mg/Lであった。
【0149】
[実施例4]
中和工程において、反応液のpHを5.9としたこと以外は、実施例1と同様に行った。処理水の全鉄濃度は51mg/Lであった。
【0150】
[比較例1]
中和工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同様に行った。処理水の全鉄濃度は636mg/Lであった。
【0151】
[比較例2]
中和工程において、反応液のpHを3.1としたこと以外は、実施例1と同様に行った。処理水の全鉄濃度は282mg/Lであった。
【0152】
[比較例3]
中和工程において、反応液のpHを3.5としたこと以外は、実施例1と同様に行った。処理水の全鉄濃度は187mg/Lであった。
【0153】
[比較例4]
中和工程において、反応液のpHを3.9としたこと以外は、実施例1と同様に行った。処理水の全鉄濃度は111mg/Lであった。
【0154】
[比較例5]
中和工程において、反応液のpHを6.7としたこと以外は実施例1と同様に行った。
処理水の全鉄濃度は106mg/Lであった。
【0155】
[比較例6]
中和工程において、反応液のpHを7.1としたこと以外は実施例1と同様に行った。
処理水の全鉄濃度は160mg/Lであった。
【0156】
[実施例5]
高分子凝集剤添加後、十分に汚泥フロックが形成した後に、pHが7.0となるよう再中和を行い、得られた不溶化液を、鉄化合物および鉄還元触媒を含む汚泥と処理水とに分離したこと以外は実施例1と同様に行った。
【0157】
処理水の全鉄濃度を測定したところ、33mg/Lであった。
【0158】
[実施例6]
凝集工程後、固液分離工程までの間において、十分に汚泥の凝集体が形成したことを確認してから、凝集懸濁液のpHが7.0となるよう再中和を行ったこと以外は実施例2と同様に行った。処理水の全鉄濃度は31mg/Lであった。
【0159】
[実施例7]
凝集工程後、固液分離工程までの間において、十分に汚泥の凝集体が形成したことを確認してから、凝集懸濁液のpHが7.0となるよう再中和を行ったこと以外は実施例3と同様に行った。処理水の全鉄濃度は39mg/Lであった。
【0160】
[実施例8]
凝集工程後、固液分離工程までの間において、十分に汚泥の凝集体が形成したことを確認してから、凝集懸濁液のpHが7.0となるよう再中和を行ったこと以外は実施例4と同様に行った。処理水の全鉄濃度は40mg/Lであった。
【0161】
[実施例9]
中和工程において、反応液のpHを4.3としたこと以外は実施例1と同様に行った。
処理水の全鉄濃度は65mg/Lであった。
【0162】
[実施例10]
凝集工程後、固液分離工程までの間において、十分に汚泥の凝集体が形成したことを確認してから、凝集懸濁液のpHが7.0となるよう再中和を行ったこと以外は実施例9と同様に行った。処理水の全鉄濃度は30mg/Lであった。
【0163】
[実施例11]
中和工程において、反応液のpHを6.3としたこと以外は実施例1と同様に行った。
処理水の全鉄濃度は92mg/Lであった。
【0164】
実施例1~11において、処理前のモデル排水の生物化学的酸素要求量(以下、BOD)は350mg/Lであり、処理後のBODは5200mg/Lであった。このように処理前後でBODの値が上昇していたことから、実施例1~11では、被酸化性の汚染物質を易分解化させるために分解できたことが確認された。
【0165】
実施例および比較例における処理水中の全鉄濃度および全鉄の除去率の結果を表1に示す。
【0166】
廃水処理の性能の評価は、以下の基準により行った。表1において、全鉄の除去率が90%以上だったものを「○」とし、全鉄の除去率が90%未満だったものを「×」とした。
なお、全鉄の除去率は、反応液全量に対する鉄試薬の質量濃度に対する、処理水全量に対する鉄試薬の質量濃度の割合を採用した。
【0167】
【表1】
【0168】
表1に示すように、本発明を適用した実施例1~11は、中和工程において反応液のpHを4.3以上6.5未満に調整することにより、酸性凝集物の再溶解を抑制するとともに、第一鉄イオンおよび第二鉄イオンを不溶化させることができた。その結果、実施例1~10では、処理水中の全鉄濃度が十分低く、処理水への第一鉄イオンおよび第二鉄イオンの溶出を抑制できたことが示された。
【0169】
比較例1は、中和工程を行わなかったことで、第一鉄イオンおよび第二鉄イオンを不溶化させることができなかった。その結果、第一鉄イオンおよび第二鉄イオンを分離することができず、処理水中に第一鉄イオンおよび第二鉄イオンが残存していることが示された。
【0170】
一方、比較例2~4は、中和工程において反応液のpHを4.3未満に調整することにより、酸性凝集物は不溶化した状態を維持できたが、第一鉄イオンおよび第二鉄イオンを十分に不溶化させることができなかった。その結果、処理水中の全鉄濃度が高く、処理水への第一鉄イオンおよび第二鉄イオンの溶出していることが示された。
【0171】
比較例5、6は、中和工程において反応液のpHを6.5以上に調整することにより、酸性凝集物が再溶解するとともに、酸性凝集物の再溶解に伴って、第一鉄イオンおよび第二鉄イオンを十分に不溶化させることができなかった。その結果、処理水中の全鉄濃度が高く、処理水への第一鉄イオンおよび第二鉄イオンの溶出していることが示された。
【0172】
以上のことから、本発明が有用であることが示された。
【0173】
次に、各実施例でフェントン反応を実施する前の容器Aから、鉄還元触媒と、鉄試薬と、を添加した時点の反応液を回収し、鉄還元触媒の表面状態を観察した。
反応液における鉄還元触媒の表面状態は、走査型電界放出型透過電子顕微鏡(以下「(S)TEM」と記載する。)により観察した。
【0174】
まず、鉄還元触媒の試料をエタノールに分散させ、TEM観察用マイクログリッド(応研商事株式会社製「NS-C15」)上に滴下し、乾燥したのち、以下の装置を使用し、複数の観察方法で観察を行った。
【0175】
(装置)
・電界放出型透過電子顕微鏡(日本電子株式会社製「JEM 2100F」)
・エネルギー分散型X線分光装置(日本電子株式会社製「JED-2300T」)
【0176】
(観察方法)
・TEM明視野法
・高角度環状暗視野走査透過型電子顕微鏡法((S)TEM-HAADF)
・(S)TEM二次電子法
・TEM/(S)TEMエネルギー分散型X線分析(EDS)分析
【0177】
上述の装置および観察方法を用いた観察により、還元触媒の表面上にはナノサイズの粒子が形成されていることが分かった。
【0178】
次に、このナノサイズの粒子の組成を下記のXAFS装置により解析した。
XAFS装置:高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所放射光実験施設のBL-12Cの測定装置
【0179】
まず、各実施例でフェントン反応を実施する前の容器Aから、鉄還元触媒と、鉄試薬と、を添加した時点の反応液を回収し、スラリー状の鉄還元触媒を含む試料をポリエチレン袋に分取し測定に使用した。試料について、XAFS装置を使用してFe K-edge X線吸収スペクトルを測定した。測定した試料のスペクトルと、α-FeOOH、γ-FeOOH、Fe、Feの標準品のスペクトルの測定結果との比較から試料中の化学種の同定を行った。
【0180】
具体的な測定条件を下記に示す。
・光子数:5×1010photons/s
・分光器:Si(111)二結晶分光器
・検出器:19素子SSD
・測定法:透過法(電離箱ガス:窒素ガス100%)
・エネルギー範囲:7090~7190eV
【0181】
(解析方法)
解析ソフトとしてEXAFSH2およびXMCDを使用して、XANES(X-ray Absorption Near Edge Structure)およびEXAFS(Extended X-ray Absorption Fine Structure)を下記の方法でそれぞれ解析した。
【0182】
(XANES)
吸収端前のバックグラウンドを下式(II)で示すVictoreen関数に類似の関数で除去した後、エッジジャンプを1として規格化し、ナノサイズの粒子の組成を解析した。
μt=Cλ-Dλ ・・・(II)
ここで式(II)中、μは波長λ(オングストローム)のX線に対する質量吸収係数であり、tは試料の厚み(cm)であり、CおよびDは元素により決まる係数(https://www.kspub.co.jp/download/153295-3CD.pdf参照)であり、λはX線の波長である。
【0183】
(EXAFS)
バックグラウンド除去後、吸収立ち上がりの変曲点をEとしてX線エネルギーEを、下式(III)で示す光電子の波数kに変換し、原子吸収分を除去して規格化した。次いで、動径構造関数であるEXAFS関数にkの重みをかけ、複素フーリエ変換して、ナノサイズの粒子の組成を解析した。
k=2m(E-E)h/2π ・・・(III)
ここで式(III)中、mは電子質量であり、hはプランク定数であり、πは円周率である。(h/2π)はディラック定数である。
【0184】
XAFS装置による解析により、(S)TEMにより観察されたナノサイズの粒子はγ-オキシ水酸化鉄を主成分とする酸化鉄であることが判明した。この酸化鉄ナノ粒子の形成は鉄の還元反応の進行、維持に重要であることが示唆された。
【0185】
大阪府立産業技術総合研究所報告 No.21,2007,79-83.に記載のように、γ-オキシ水酸化鉄は弱いフェントン様反応を起こすことが知られている。鉄還元触媒からの電子移動によりFe(III)イオンがFe(II)イオンに還元され、フェントン様反応が促進されるとともに、フェントン様反応が電子移動の起こる鉄還元触媒表面でなく、酸化鉄ナノ粒子の表面上の近傍で起こると考えられる。その結果、発生したヒドロキシラジカルによる鉄還元触媒の劣化が抑制され、長期間触媒性能を維持できると考えられた。
【符号の説明】
【0186】
1,2,3,4…処理装置、11…反応槽、14,24,62…pH調整
装置、21…中和槽、32…汚泥返送手段、41…濃縮装置、51…凝集装置、61…再中和槽、81…生物処理槽
図1
図2
図3
図4