(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】回転位置検出装置及びモータ装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20230306BHJP
G02B 26/12 20060101ALI20230306BHJP
H02K 11/225 20160101ALI20230306BHJP
【FI】
G01D5/245 110M
G02B26/12
H02K11/225
(21)【出願番号】P 2019029546
(22)【出願日】2019-02-21
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000106944
【氏名又は名称】シナノケンシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100135622
【氏名又は名称】菊地 挙人
(72)【発明者】
【氏名】小松 広基
(72)【発明者】
【氏名】水井 茂
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-124248(JP,A)
【文献】特開平9-37535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/245
G02B 26/12
H02K 11/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体と共に回転し、前記回転体の回転軸心周りの周方向に等角度間隔でN極及びS極が交互に着磁されたFGマグネットと、
前記FGマグネットの回転により誘起電圧が発生するように前記FGマグネットに対向したFGパターンが形成された基板と、を備え、
前記基板は、第1及び第2層を有した多層基板であり、
前記FGパターンは、
互いに異なる前記第1及び第2層にそれぞれ設けられた第1及び第2パターンを含み、
前記第1及び第2パターンは、前記回転軸心を中心とする同一の円周上に設けられ、且つ電気角で位相が180度ずれて
おり、
前記第1及び第2パターンは、それぞれ、前記回転軸心周りの周方向に円弧状に形成された円弧部、前記回転軸心周りに放射状に延びた複数の放射部、隣接する前記放射部同士を前記回転軸心から離れた側で接続する第1接続部、隣接する前記放射部同士を前記回転軸心に近い側で接続し前記第1接続部と前記周方向で交互に並ぶ第2接続部、を有し、
前記第1パターンの前記放射部と、前記第2パターンの前記放射部とは、前記回転軸心の方向で重なり、
前記第1パターンの前記円弧部と、前記第2パターンの前記円弧部とは、前記回転軸心の方向で重なり、
前記第1パターンの前記第1接続部と、前記第2パターンの前記第1接続部とは、前記周方向で交互に並び、
前記第1パターンの前記第2接続部と、前記第2パターンの前記第2接続部とは、前記周方向で交互に並ぶ、回転位置検出装置。
【請求項2】
前記第1パターンで発生した誘起電圧信号と前記第2パターンで発生した誘起電圧信号との一方から他方を減算する、又は一方を反転させて他方に加算する処理が実行される、
請求項1の回転位置検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2の前記回転位置検出装置を備えたモータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転位置検出装置及びモータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転体と共に回転するFGマグネットに対向したFGパターンで発生する誘起電圧に基づいて、回転体の回転位置を検出する回転位置検出装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
誘起電圧にノイズが重畳すると、回転位置の検出精度が低下する恐れがある。
【0005】
そこで本発明は、回転位置の検出精度が向上した回転位置検出装置及びそれを備えたモータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、回転体と共に回転し、前記回転体の回転軸心周りの周方向に等角度間隔でN極及びS極が交互に着磁されたFGマグネットと、前記FGマグネットの回転により誘起電圧が発生するように前記FGマグネットに対向したFGパターンが形成された基板と、を備え、前記基板は、第1及び第2層を有した多層基板であり、前記FGパターンは、前記第1及び第2層にそれぞれ設けられた第1及び第2パターンを含み、前記第1及び第2パターンは、前記回転軸心を中心とする同一の円周上に設けられ、且つ電気角で位相が180度ずれている、回転位置検出装置によって達成できる。また、上記目的は、上記の回転位置検出装置を備えたモータ装置によっても達成できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、回転位置の検出精度が向上した回転位置検出装置及びそれを備えたモータ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施例に係る回転位置検出装置が搭載されたモータ装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、FGマグネットとパターンとを示した斜視図である。
【
図4】
図4Aは、FGマグネットの回転に伴ってパターンのそれぞれで発生した誘起電圧を示したグラフであり、
図4Bは、本実施例での加算処理後の誘起電圧を示している。
【
図5】
図5Aは、比較例での2つのパターンのそれぞれで発生した誘起電圧信号を示したグラフであり、
図5Bは、比較例での加算処理後の誘起電圧信号を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施例に係る回転位置検出装置が搭載されたモータ装置1の斜視図である。モータ装置1は、回転子軸4、回転子ヨーク5、ベースプレート6、プリント基板8、回転子ハブ13、FGマグネット16、バックヨーク17等を備える。回転子軸4は、ベースプレート6にベアリングを介して回転可能に支持されている。回転子ヨーク5は、筒状であって、回転子ハブ13に対して一体に組み付けられている。回転子ハブ13には、内部に、回転子軸4が圧入、焼嵌め、接着、溶接等により一体に組み付けられた筒部が設けられている。また、回転子ヨーク5の内周面には、複数の永久磁石が固定されている。複数の永久磁石は、周方向にN極及びS極が交互に並ぶように配置され、各永久磁石は、回転子ヨーク5内に配置された固定子の各極歯と対向している。固定子の各極歯には、コイルが巻回されており、コイルの通電状態が切り替えられることにより、各極歯と各永久磁石との間に磁気的吸引力又は磁気的反発力が作用して、回転子ヨーク5が回転する。本実施例のモータ装置1は、いわゆるアウターロータ型モータであるが、これに限定されず、インナーロータ型モータであってもよい。
【0010】
プリント基板8は、ベースプレート6上に配置されている。プリント基板8は、各コイルに導通接続されて、各コイルの通電状態を切り替える。バックヨーク17は、回転子ヨーク5の下端部に設けられ、回転子ヨーク5よりも径が大きく薄い略円板状の磁性体である。FG(FREQUENCY GENERATOR)マグネット16は、バックヨーク17の下面に固定されている。従って、回転子ヨーク5の回転に伴って、バックヨーク17及びFGマグネット16も回転する。FGマグネット16は、プリント基板8と対向する。プリント基板8には、FGマグネット16と対向する面に後述するFGパターン19が形成されている。FGマグネット16の回転に伴ってFGパターン19には誘起電圧が発生する。この電圧信号を検出することにより、FGマグネット16の回転位置、即ち、回転子ヨーク5の回転位置が検出される。従って、FGマグネット16と、詳しくは後述するFGパターンが形成されたプリント基板8とが、回転位置検出装置に相当する。尚、本実施例では、FGマグネット16はバックヨーク17に固定されているが、バックヨーク17に限定されずに、回転子ヨーク5にFGマグネット16を接続でき、回転子ヨーク5と共にFGマグネット16が回転できる構造であればよい。
【0011】
図2は、FGマグネット16とパターン19A及び19Bとを示した斜視図である。パターン19A及び19Bは、FGパターンの一例である。尚、
図2には、プリント基板8の図示は省略してあり、また、パターン19A及び19Bに導通接続された信号処理部100を模式的に示している。
図3は、
図2の部分拡大図である。FGマグネット16は、周方向に等角度間隔でN極及びS極が交互に着磁された環状である。ここで、互いに隣接する一対のN極及びS極の、回転子軸4の中心軸心Cに対する角度をθaとする。パターン19Aは、FGマグネット16に対向するプリント基板8の最外層に形成されており、パターン19Bは、プリント基板8の内層に形成されている。即ち、プリント基板8は多層基板である。パターン19A及び19Bは、FGマグネット16と同心状に形成されており、具体的には、中心軸心Cを中心とする同一の円周上の、それぞれの層において形成されている。即ち、仮に中心軸心Cの方向から見た場合、パターン19A及び19Bは互いに重なる位置に形成されている。
【0012】
パターン19A及び19Bのそれぞれは、互いに直列に導通した円弧部191、放射部193、第1接続部195、及び第2接続部197を含む。円弧部191は、中心軸心Cを中心とした円弧状である。放射部193、第1接続部195、及び第2接続部197は、円弧部191よりも径方向外側に位置している。放射部193は、中心軸心Cを中心として放射状に延びている。第1接続部195は、隣接する2つの放射部193に連続して、周方向に沿うように略直線状に形成されている。第2接続部197も、隣接する2つの放射部193に連続して、周方向に沿うように略直線状に形成されている。パターン19A及び19Bのそれぞれの第1接続部195及び第2接続部197は、周方向に交互に並ぶように形成されている。第1接続部195は中心軸心Cから離れており、第2接続部197は中心軸心Cの近くであり円弧部191近傍に形成されている。上述したように円弧部191は円弧状であるが、放射部193、第1接続部195、及び第2接続部197はそれぞれ略直線状である。これら複数の放射部193、第1接続部195、及び第2接続部197は全体で矩形波状となるように連続している。
【0013】
パターン19A及び19Bは、略同じ形状であり、電気角で180度の位相分だけずれて設けられている。具体的には、以下のようにして設けられている。パターン19A及び19Bの円弧部191は、中心軸心Cの方向で重なるように設けられ、パターン19A及び19Bの放射部193も同様に、中心軸心Cで重なるように設けられている。パターン19Aの第1接続部195とパターン19Bの第1接続部195とは、互いに異なる平面上に設けられるが、周方向に交互に並ぶように設けられている。同様に、パターン19Aの第2接続部197とパターン19Bの第2接続部197とは、周方向に交互に並ぶように設けられている。
【0014】
ここで、上述したFGマグネット16の互いに隣接する一対のN極及びS極の角度θa[deg]は、電気角で360度に対応した機械角である。また、パターン19Aの、隣接する2つの第1接続部195及び第2接続部197を挟む2つの放射部193同士の間の角度もθaである。パターン19Bも同様である。上述したように、パターン19A及び19Bは、電気角で180度ずれているため、
図3に示すように、FGマグネット16の回転に伴ってパターン19A及び19Bで発生する起電力は、大きさが略同じであるが方向が逆である。詳しくは後述する。
【0015】
図2に示すように、パターン19Aは、円弧部191の始端部191eから中心軸心Cを中心として反時計方向に円弧状に略一周に亘って延びて、放射部193eから反対方向に折り返して矩形波状に第2接続部197の終端部197eまで延びている。パターン19Bは、円弧部191の始端部191eから中心軸心Cを中心として円弧上に時計方向に略一周に亘って延びて、放射部193eから反対方向に折り返して矩形波状に第2接続部197の終端部197eまで延びている。パターン19Aの始端部191eは、円弧部191の端部であり、パターン19Aの端部でもある。パターン19Bの終端部197eは、第2接続部197の端部でもありパターン19Aの端部でもある。パターン19Aの始端部191e及び終端部197eは互いに近傍に位置している。パターン19Bの始端部191e及び終端部197eも同様である。
【0016】
図4Aは、FGマグネット16の回転に伴ってパターン19A及び19Bのそれぞれで発生した誘起電圧信号を示したグラフである。本実施例では、パターン19A及び19Bは電気角で180度分の位相がずれているため、パターン19A及び19Bのそれぞれで発生する誘起電圧信号の位相も180度ずれる。ここで、
図4の例では、パターン19A及び19Bの誘起電圧信号に同一のタイミングでノイズが重畳した場合を示している。パターン19A及び19Bでそれぞれ発生した誘起電圧信号は、信号処理部100に入力され、信号処理部100はこの誘起電圧信号を加工し、それをモータの駆動を制御するCPUに出力したり、又は信号処理の判定結果をCPUに通知したりする。
【0017】
本実施例では、信号処理部100は、パターン19A及び19Bでそれぞれ発生した誘起電圧信号の一方を反転させた上で他方に加算する処理が実行される。
図4Bは、本実施例での加算処理後の誘起電圧信号を示している。このように反転された誘起電圧信号では、ノイズも反転されるため、反転された誘起電圧信号と反転されていない誘起電圧信号とを加算することにより、ノイズは打ち消し合う。また、2つの誘起電圧信号の位相は180度ずれているため、一方のみを反転して他方に加算することにより、誘起電圧信号の振幅が2倍に増幅される。このように、ノイズを低減しつつ誘起電圧信号の振幅を増幅させることができ、回転位置の検出精度が向上している。
【0018】
図5Aは、比較例での2つのパターン19Ax及び19Bxのそれぞれで発生した誘起電圧信号を示したグラフである。パターン19Ax及び19Bxは、電気角で互いに同じ位相である。従って、位相が同じ誘起電圧信号が発生する。各誘起電圧信号にノイズが重畳した場合を示している。比較例では、パターン19Ax及び19Bxでそれぞれ発生した誘起電圧信号が入力される制御回路により、2つの誘起電圧信号を加算する処理が実行される。
図5Bは、比較例での加算処理後の誘起電圧信号を示している。位相が同じである2つの誘起電圧信号を加算することにより、誘起電圧信号の振幅が2倍に増幅される。しかしながら、ノイズも同様に倍増し、回転位置の検出精度が低下する場合がある。本実施例ではノイズを低減しつつ誘起電圧信号の振幅を増大させることができるため、比較例よりも優れた効果を奏する。
【0019】
上記実施例及び変形例においては、回転位置検出装置はモータ装置に組み込まれているが、このような構成に限定されない。例えば、モータ装置とは別体に構成された回転位置検出装置であってもよい。
【0020】
信号処理部100は、パターン19A及び19Bでそれぞれ発生した誘起電圧信号の一方から他方を減算してもよい。この場合も、2つの誘起電圧信号の位相は180度ずれているため、ノイズを低減しつつ誘起電圧信号の振幅を増大させることができる。
【0021】
パターン19A及び19Bは、それぞれプリント基板8の最外層及び内層に設けられているが、双方とも内層に設けられていてもよい。
【0022】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 モータ装置
16 FGマグネット
19A、19B パターン
191 円弧部
193 放射部
195 第1接続部
197 第2接続部
C 中心軸心