(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】ごみ焼却炉の自動燃焼制御方法
(51)【国際特許分類】
F23G 5/50 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
F23G5/50 C ZAB
F23G5/50 N
(21)【出願番号】P 2019037809
(22)【出願日】2019-03-01
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【氏名又は名称】村田 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100093388
【氏名又は名称】鈴木 喜三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206302
【氏名又は名称】落志 雅美
(72)【発明者】
【氏名】中神 健司
(72)【発明者】
【氏名】泉 正二
(72)【発明者】
【氏名】柴田 一栄
(72)【発明者】
【氏名】眞田 孝輔
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-040410(JP,A)
【文献】特開2017-145979(JP,A)
【文献】特開2017-026172(JP,A)
【文献】特開平11-264534(JP,A)
【文献】特開2000-018549(JP,A)
【文献】特開平06-265124(JP,A)
【文献】特開平11-094227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ごみ焼却炉でごみを焼却処理するプロセスにおいて、以下の手順に基づき焼却炉に投入されたごみ質を特定し、当該特定されたごみ質に応じてごみ焼却炉に供給する
一次空気吹込量を制御し、焼却炉の燃焼制御を行うことを特徴とするごみ焼却炉の自動燃焼制御方法。
ごみ焼却炉に投入され燃焼しているごみ質を次のステップに従って計算し推算する。
(R1)
ごみ質データベースは、ごみの発熱量の順に並んでおり、前記ごみ質データベースから任意のごみ質を選び焼却炉で燃焼されたときに、発生する酸素濃度を計算式に従って計算値を出す。
(R2)ごみ焼却炉から排気された酸素濃度を測定し実測値を出す。
(R3)前記酸素濃度の計算値と実測値を比較する。
(R4)前記酸素濃度の計算値と実測値が所定の範囲内で一致するときは、ごみ質の特定を終え、前記酸素濃度の計算値と実測値を比較し酸素濃度の計算値と実測値が所定の範囲で異なっているときは、前記ごみ質データベースから別のごみ質を選び前記(R1)から(R3)のステップに従って酸素濃度の計算値と実測値が所定の範囲内で一致するまで前記ごみ質を変えて計算し、ごみ質を特定する。
(R5)前記特定されたごみ質に応じてごみ焼却炉に供給する
一次空気吹込量を制御する。
【請求項2】
ごみ焼却炉でごみを焼却処理するプロセスにおいて、以下の手順に基づき焼却炉に投入されたごみ質を特定し、当該特定されたごみ質に応じてごみ焼却炉に供給する
一次空気吹込量を制御し、焼却炉の燃焼制御を行うことを特徴とするごみ焼却炉の自動燃焼制御方法。
ごみ焼却炉に投入され燃焼しているごみ質を次のステップに従って計算し推算する。
(S1)
前記ごみ質データベースから任意のごみ質を選び焼却炉で燃焼されたときに、発生する二酸化炭素濃度を計算式に従って計算値を出す。
(S2)ごみ焼却炉から排気された二酸化炭素濃度を測定し実測値を出す。
(S3)前記二酸化炭素濃度の計算値と実測値を比較する。
(S4)前記二酸化炭素濃度の計算値と実測値が所定の範囲内で一致するときは、ごみ質の特定を終え、前記二酸化炭素濃度の計算値と実測値を比較し二酸化炭素濃度の計算値と実測値が所定の範囲で異なっているときは、前記ごみ質データベースから別のごみ質を選び前記(S1)から(S3)のステップに従って二酸化炭素濃度の計算値と実測値が所定の範囲内で一致するまで前記ごみ質を変えて計算し、ごみ質を特定する。
(S5)前記特定されたごみ質に応じてごみ焼却炉に供給する
一次空気吹込量を制御する。
【請求項3】
前記ごみ質データベースから選ばれたごみ質が焼却炉で燃焼されたときに、発生する酸素及び二酸化炭素濃度の計算値を次の計算式に従って求めることを特徴とする請求項1又は2に記載のごみ焼却炉の自動燃焼制御方法。
酸素濃度及び二酸化炭素濃度の算出は、まず下記(A) 式(1)~式(4)及び(B)式(5)~式(8)に従い、制御サイクルn回目の焼却炉出口での水の総量:(H
2O)、二酸化炭素の総量:(CO
2)、酸素の総量:(O
2)、窒素の総量:(N
2)を求める。
その後、(C) 式(9)、式(10)を用いて排ガス中の酸素濃度、二酸化炭素濃度を求める。
なお、式中で用いる数値の〈1〉実測値、〈2〉定数、〈3〉ごみ質データベース値、
〈4〉算出値の分類は以下の通りになる。
〈1〉実測値
・(ごみ焼却量) [kg/h]
・(
一次空気吹込量) [m
3N/h]
・(ごみ汚水噴霧量) [kg/h]
・(補助燃料投入量) [L/h]
・(尿素水噴霧量) [kg/h]
・(二次空気量) [m
3N/h]
・EGR流量 [m
3N/h]
〈2〉定数
・(補助燃料の燃焼で生じる水分:α1) [m
3N/L]
・(補助燃料の燃焼で生じる二酸化炭素:α2) [m
3N/L]
・(補助燃料の燃焼で生じる窒素:α3) [m
3N/L]
・(補助燃料燃焼用理論空気量:ε) [m
3N/L]
・(飛灰率β)[%]
・(熱灼減量γ)[%]
・(ごみ汚水噴霧用空気量:δ) [m
3N/kg]
・(補助燃料燃焼用理論空気量の空気過剰率:ζ)
・(尿素水噴霧用空気量:η) [m
3N/kg]
・(
一次空気吹込量の空気過剰率:X)
〈3〉ごみ質データベース値
・(ごみ中の水分)[%]
・(ごみ中の可燃分)[%]
・(ごみ中の灰分)[%]
・(ごみ中の炭素の割合)[%]
・(ごみ中の水素の割合)[%]
・(ごみ中の窒素の割合)[%]
〈4〉算出値(詳細は(B)項で記述)
・(n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した水分濃度) [%]
・(n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した二酸化炭素濃度) [%]
・(n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した酸素濃度) [%]
・(n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した窒素濃度) [%]
(A)焼却炉出口での各排ガスの総排出量
(A)-1 水の総量
(H
2O)[m
3N/h]
= (ごみ焼却量) [kg/h]
× [ (ごみ中の水素の割合)[%] × ((22.4L/mol)/(2.0g/mol)) ×(ごみ中の可燃分)[%]
+(ごみ中の水分)[%] × ((22.4L/mol)/(18.0g/mol)) ]
+(ごみ汚水噴霧量) [kg/h] × ((22.4L/mol)/(18.0g/mol))
+ EGR流量[m3N/h] ×(n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した水分濃度) [%]
+(補助燃料投入量) [L/h] × (補助燃料の燃焼で生じる水分:α1) [m
3N/L]
+(尿素水噴霧量) [kg/h] × ((22.4L/mol)/(18.0g/mol)) ・・・式(1)
(A)-2 二酸化炭素の総量
(CO
2)[m
3N/h]
= (ごみ焼却量) [kg/h] × ((22.4L/mol)/(12.0g/mol))
× [ (ごみ中の炭素の割合)[%] × (ごみ中の可燃分)[%]
- (ごみ中の灰分)[%] × (1-(飛灰率β)[%]) × (熱灼減量γ)[%] ]
+ EGR流量[m
3N/h] ×(n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した二酸化炭素濃度) [%]
+ (補助燃料投入量) [L/h] × (補助燃料の燃焼で生じる二酸化炭素:α2) [m
3N/L]
・・・式(2)
(A)-3 酸素の総量
(O
2)[m
3N/h]
= (
一次空気吹込量) [m
3N/h] × 0.21 × [(
一次空気吹込量の空気過剰率:X)-1]
+(ごみ汚水噴霧量) [kg/h] × (ごみ汚水噴霧用空気量:δ) [m
3N/kg] × 0.21
+ EGR流量[m
3N/h] ×(n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した酸素濃度) [%]
+ [ (補助燃料燃焼用理論空気量:ε) [m
3N/L] × (補助燃料投入量) [L/h]
×[ (補助燃料燃焼用理論空気量の空気過剰率:ζ) - 1] × 0.21 ]
+ (二次空気量) [m
3N/h] × 0.21
+ (尿素水噴霧量) [kg/h] × (尿素水噴霧用空気量:η) [m
3N/kg] × 0.21
・・・式(3)
(A)-4 窒素の総量
(N
2)[m
3N/h]
=(
一次空気吹込量) [m
3N/h] × 0.79
+(ごみ焼却量) [kg/h]
×(ごみ中の窒素の割合)[%] × ((22.4L/mol)/(28.0g/mol))× (ごみ中の可燃分)[%]
+(ごみ汚水噴霧量) [kg/h] × (ごみ汚水噴霧用空気量:δ) [m
3N/kg] × 0.79
+ EGR流量[m
3N/h] ×(n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した窒素濃度) [%]
+ (補助燃料投入量) [L/h] ×[ (補助燃料燃焼用理論空気量:ε) [m
3N/L] ×
(補助燃料燃焼用理論空気量の空気過剰率:ζ)× 0.79 + (補助燃料の燃焼で生じる窒素
:α3) [m
3N/L] ]
+ (二次空気量) [m
3N/h] × 0.79
+ (尿素水噴霧量) [kg/h] × (尿素水噴霧用空気量:η) [m
3N/kg] × 0.79
・・・式(4)
(B)( n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過したガス濃度) [%]について
[1](n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した水分濃度) [%]
[2](n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した二酸化炭素濃度) [%]
[3](n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した酸素濃度) [%]
[4](n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した窒素濃度) [%]
[1](n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した水分濃度) [%]は、一次空気吹込量を出力する制御サイクルをn回目としたとき、制御サイクルn-1回目の焼却炉出口での排ガス量に、
制御サイクルn-1回目の冷却水噴霧量 [kg/h]× ((22.4L/mol)/(18.0g/mol)) を加えたときの水分濃度[%]である。
ここで、制御サイクルn-1回目の冷却水噴霧量 [kg/h]は実測値である。
上記の[2]~[4]のガス濃度は、一次空気吹込量が出力される制御サイクルのn-1回目で冷却塔を通過した排ガス中の二酸化炭素の濃度、酸素の濃度、窒素の濃度である。
それぞれの濃度は、
(H
2O’)=(n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した水分量) [m
3N/h]
(CO
2’)=(n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した二酸化炭素量) [m
3N/h]
(O
2’)=(n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した酸素量) [m
3N/h]
(N
2’)=(n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した窒素量) [m
3N/h]
を用いて下式で計算される。
・(n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した水分濃度)
(H
2O’) /{(H
2O’)+(CO
2’)+(O
2’)+(N
2’)}×100 ・・・式(5)
・(n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した二酸化炭素濃度)
(CO
2’) /{(H
2O’)+(CO
2’)+(O
2’)+(N
2’)}×100 ・・・式(6)
・(n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した酸素濃度)
(O
2’) /{(H
2O’)+(CO
2’)+(O
2’)+(N
2’)}×100 ・・・式(7)
・(n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した窒素濃度)
(N
2’) /{(H
2O’)+(CO
2’)+(O
2’)+(N
2’)}×100 ・・・式(8)
(C)酸素濃度及び二酸化炭素濃度の算出
・酸素濃度
(O
2)/{(H
2O)+(CO
2)+(O
2)+(N
2)}×100 ・・・式(9)
・二酸化炭素濃度
(CO
2)/{(H
2O)+(CO
2)+(O
2)+(N
2)}×100 ・・・式(10)
【請求項4】
前記ごみ焼却炉の自動燃焼制御方法におけるごみ質データベースから焼却炉に投入されたごみ質を次の手順により特定することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載されたごみ焼却炉の自動燃焼制御方法。
(T1)ごみ質データベースは、ごみの発熱量の順に並んでおり、発熱量が少ないごみ質はデータベースの左側、発熱量が多いごみ質はデータベースの右側に並べる。
ごみ質データベースに記載されている複数のごみ質の中心に近いごみ質を選び焼却炉で燃焼させたときに、発生する酸素濃度又は二酸化炭素濃度の計算値と実測値と比較し、酸素濃度の計算値と実測値が所定の範囲内で一致するとき又は二酸化炭素濃度の計算値と実測値が所定の範囲内で一致するときは前記焼却炉内に投入されたごみ質が選択したごみ質であると特定する。
(T2)酸素濃度の場合において、計算値と実測値が所定の範囲内で一致しなかった場合、前記計算値が前記実測値に対して高い場合と低い場合に分けて、ごみ質を選択しなおす。前記計算値が前記実測値に対して高い場合は、前記選んだ中心にあるごみ質と最も発熱量が大きい右にあるごみ質の間でごみ質選択範囲を狭め、前記計算値が前記実測値に対して低い場合は、前記選んだ中心にあるごみ質と最も発熱量が小さい左にあるごみ質の間でごみ質選択範囲を狭め、狭めた範囲内で中心に位置するごみ質を選び、選んだごみ質が焼却炉で燃焼したときに発生する酸素濃度を計算し、酸素濃度の計算値と実測値が所定の範囲内で一致するときは前記焼却炉に投入されたごみ質が、選択したごみ質であると特定する。
(T3)酸素濃度の場合において、前記により選んだごみ質を焼却炉で燃焼させたときに、発生する酸素濃度の計算値と実測値とが異なるときは再度上記手順に従ってごみ質を選び、選んだごみ質の酸素濃度の計算値と実測値が所定の範囲内で一致するまで上記(T2)の手順を繰り返す。
(T2’)二酸化炭素濃度の場合において、計算値と実測値が所定の範囲内で一致しなかった場合、前記計算値が前記実測値に対して高い場合と低い場合に分けて、ごみ質を選択しなおす。前記計算値が前記実測値に対して高い場合は、前記選んだ中心にあるごみ質と最も発熱量が小さい左にあるごみ質の間でごみ質選択範囲を狭め、前記計算値が前記実測値に対して低い場合は、前記選んだ中心にあるごみ質と最も発熱量が大きい右にあるごみ質の間でごみ質選択範囲を狭め、狭めた範囲内で中心に位置するごみ質を選び、選んだごみ質が焼却炉で燃焼したときに発生する二酸化炭素濃度を計算し、二酸化炭素濃度の計算値と実測値が所定の範囲内で一致するときは前記焼却炉に投入されたごみ質が、選択したごみ質であると特定する。
(T3’)二酸化炭素濃度の場合において、前記により選んだごみ質を焼却炉で燃焼させたときに、発生する二酸化炭素濃度の計算値と実測値が異なるときは再度上記手順に従ってごみ質を選び、選んだごみ質の二酸化炭素濃度の計算値と実測値が所定の範囲内で一致するまで上記(T2’)の手順を繰り返す。
【請求項5】
前記ごみ焼却炉の自動燃焼制御方法におけるごみ質データベースから焼却炉に投入されたごみ質を次の手順により特定することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載されたごみ焼却炉の自動燃焼制御方法。
(U1)ごみ質データベースは、ごみの発熱量の順に並んでおり、発熱量が少ないごみ質はデータベースの左側、発熱量が多いごみ質はデータベースの右側に並べる。
ごみ質データベースに記載されている[1]最も左側のごみ質、[2]最も右側のごみ質及び[3]複数のごみ質の中心に近いごみ質を選び焼却炉で燃焼させたときに、発生する酸素濃度又は二酸化炭素濃度の計算値と実測値と比較し、実測値の含まれる範囲が[1]~[2]か[2]~[3]を判定する。
(U2)実測値が含まれる範囲において、残りのごみ質が2又は3個になるまで(U1)を繰り返す。
(U3)ごみ質が残り2又は3個になったら、各々のごみ質の計算値を算出し、実測値に近いごみ質を選んでごみ質を特定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ごみ焼却場におけるごみ焼却炉の自動燃焼制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
事業所や家庭等から廃棄されたごみは、各地域に設けられたごみ焼却場に搬送され、焼却処理されて清浄化された排ガスや焼却灰として処分される。
ごみ焼却場には多種多様なごみ(紙、繊維、プラスチック、水分を多く含んだ生ごみなど)が搬入され、(焼却)処理されている。しかし、それらの性状は一様でなく組成も不明なため、ごみ焼却場の焼却炉内の燃焼状態(燃焼炉内温度や排ガス濃度)は、投入されるごみの組成・熱量(ごみ質)によって大きく変動し、焼却炉で安定して燃焼させることが難しい。
一般的なごみ焼却炉は、
図9に示すように燃焼温度と排ガス性状を制御しごみを焼却している。
[1]一次空気吹き込み:ごみ焼却炉1のごみ燃焼室2内のストーカ6の真下から空気送風機7で空気を送り込みごみを燃焼させる。
[2]ごみ汚水噴霧+汚水噴霧用空気吹き込み:貯留しているごみから染み出した汚水(ごみ汚水)を処分するために、空気とともにごみ汚水を前記ごみ燃焼室2内へ吹き込み、燃焼させる。
[3]排ガス再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation):前記ごみ燃焼室2から排出された排ガスの一部を焼却炉に戻し、局所的な高温燃焼を抑制することで、NOx(窒素酸化物)の生成を抑える。
[4]補助燃料+補助燃料用空気投入:熱量の小さなごみがごみ燃焼室2に投入され焼却炉内の温度が低下した場合に、焼却炉内の温度を上げるためごみ焼却炉内に補助燃料(灯油等)と空気を投入する。
[5]二次空気吹き込み:排ガス中の未燃ガスを完全燃焼させるためと、排ガスの温度を低下させるためにごみ焼却炉2に二次空気を吹き込む。
[6]尿素水噴霧+尿素水噴霧用空気吹き付け:排ガスに尿素水を吹き付け、窒素酸化物を窒素と水に分解する。
[7]冷却水噴霧:冷却塔において排ガスに冷却水を吹き付けて排ガスの温度を下げる。
上記のように現状用いられている手法としては、焼却炉出口温度を参照し、焼却炉出口温度が目標値となるようにプッシャー速度やストーカ速度、燃焼用空気風量の調整を行い、焼却炉内の燃焼状態を制御する方法の他、様々な新たな手法も提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来は、作業員が排ガスの温度や濃度の測定値を確認後、燃焼させるごみの量、燃焼用空気量を調整して、焼却炉内温度を安定させている。しかし、作業員の調整が反映されるまでに時間を要するため、焼却炉内における燃焼温度の調整処理が遅れる。なおかつ、反映までに時間を要するために、処理を施したごみ質と現在燃焼しているごみ質が異なってしまうことから焼却炉内の燃焼状態を常に一定に保つことは難しい。
【0004】
本発明は、かかる観点に鑑みてなされたもので、予め焼却場に持ち込まれるごみの分析値のデータベース(ごみ質データベース)を作っておき、当該ごみ質データベースを使ってごみ焼却場の焼却炉内に投入したごみのごみ質を計算によって推算し特定し、当該特定されたごみ質に対応して焼却炉に吹き込む一次空気量(「一次空気吹込量」と称す。単に「一次空気量」と称すときもある。)を調整することで、ごみ焼却炉内の燃焼温度と排ガス性状を最適に制御し、排ガス中の有害成分の発生を抑制する自動燃焼制御方法を提供することを目的とするものである。
本発明に係るごみ焼却炉の自動燃焼制御方法は、ごみ焼却炉でごみを焼却処理するプロセスにおいて、以下の手順に基づき焼却炉の燃焼制御を行うことを特徴とする。
(1)ごみ質データベースを用いて焼却炉内で燃えているごみ質を特定する。
(2)特定されたごみ質に応じて一次空気の吹き込み量を制御する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を下記の手段により解決した。
〈1〉ごみ焼却炉でごみを焼却処理するプロセスにおいて、以下の手順に基づき焼却炉に投入されたごみ質を特定し、当該特定されたごみ質に応じてごみ焼却炉に供給する一次空気吹込量を制御し、焼却炉の燃焼制御を行うことを特徴とするごみ焼却炉の自動燃焼制御方法。
ごみ焼却炉に投入され燃焼しているごみ質を次のステップに従って計算し推算する。
(R1)ごみ質データベースは、ごみの発熱量の順に並んでおり、前記ごみ質データベースから任意のごみ質を選び焼却炉で燃焼されたときに、発生する酸素濃度を計算式に従って計算値を出す。
(R2)ごみ焼却炉から排気された酸素濃度を測定し実測値を出す。
(R3)前記酸素濃度の計算値と実測値を比較する。
(R4)前記酸素濃度の計算値と実測値が所定の範囲内で一致するときは、ごみ質の特定を終え、前記酸素濃度の計算値と実測値を比較し酸素濃度の計算値と実測値が所定の範囲で異なっているときは、前記ごみ質データベースから別のごみ質を選び前記(R1)から(R3)のステップに従って酸素濃度の計算値と実測値が所定の範囲内で一致するまで前記ごみ質を変えて計算し、ごみ質を特定する。
(R5)前記特定されたごみ質に応じてごみ焼却炉に供給する一次空気吹込量を制御する。
なお、前記酸素の濃度に基づいてごみ質を特定する場合における計算値と実測値が所定の範囲とは、計算値と実測値の差が、例えば±0.05の範囲内であることをいう。このように、計算値と実測値とが完全一致の場合に限定されるものではなく、所定の範囲(しきい値)(例えば酸素濃度で±0.05)内で一致する場合を含む。
例えば、酸素濃度の実測値が3.07%であったとしたら計算値は3.02%~3.12%の範囲内であれば一致とする。
〈2〉ごみ焼却炉でごみを焼却処理するプロセスにおいて、以下の手順に基づき焼却炉に投入されたごみ質を特定し、当該特定されたごみ質に応じてごみ焼却炉に供給する一次空気吹込量を制御し、焼却炉の燃焼制御を行うことを特徴とするごみ焼却炉の自動燃焼制御方法。
ごみ焼却炉に投入され燃焼しているごみ質を次のステップに従って計算し推算する。
(S1)前記ごみ質データベースから任意のごみ質を選び焼却炉で燃焼されたときに、発生する二酸化炭素濃度を計算式に従って計算値を出す。
(S2)ごみ焼却炉から排気された二酸化炭素濃度を測定し実測値を出す。
(S3)前記二酸化炭素濃度の計算値と実測値を比較する。
(S4)前記二酸化炭素濃度の計算値と実測値が所定の範囲内で一致するときは、ごみ質の特定を終え、前記二酸化炭素濃度の計算値と実測値を比較し二酸化炭素濃度の計算値と実測値が所定の範囲で異なっているときは、前記ごみ質データベースから別のごみ質を選び前記(S1)から(S3)のステップに従って二酸化炭素濃度の計算値と実測値が所定の範囲内で一致するまで前記ごみ質を変えて計算し、ごみ質を特定する。
(S5)前記特定されたごみ質に応じてごみ焼却炉に供給する一次空気吹込量を制御する。
なお、前記二酸化炭素濃度に基づいてごみ質を特定する場合における計算値と実測値が所定の範囲とは、計算値と実測値の差が、例えば±2.0の範囲内であることをいう。
このように、計算値と実測値とが完全一致の場合に限定されるものではなく、所定の範囲(しきい値)(例えば二酸化炭素濃度で±2.0以内)内で一致する場合を含む。
例えば、二酸化炭素濃度の実測値が19.0%であったとしたら計算値は17.0~21.0%の範囲内であれば一致とする。
〈3〉前記ごみ質データベースから選ばれたごみ質が焼却炉で燃焼されたときに、発生する酸素及び二酸化炭素濃度の計算値を一連の計算式に従って求めることを特徴とする請求項〈1〉又は〈2〉に記載のごみ焼却炉の自動燃焼制御方法。
なお、前記一連の計算式とは、請求項3に記載する式(1)~式(10)のことである。
〈4〉前記ごみ焼却炉の自動燃焼制御方法におけるごみ質データベースから焼却炉に投入されたごみ質を次の手順により特定することを特徴とする〈1〉又は〈2〉のいずれかに記載されたごみ焼却炉の自動燃焼制御方法。
(T1)ごみ質データベースは、ごみの発熱量の順に並んでおり、発熱量が少ないごみ質はデータベースの左側、発熱量が多いごみ質はデータベースの右側に並べる。
ごみ質データベースに記載されている複数のごみ質の中心に近いごみ質を選び焼却炉で燃焼させたときに、発生する酸素濃度又は二酸化炭素濃度の計算値と実測値と比較し、酸素濃度の計算値と実測値が所定の範囲内で一致するとき又は二酸化炭素濃度の計算値と実測値が所定の範囲内で一致するときは前記焼却炉内に投入されたごみ質が選択したごみ質であると特定する。
(T2)酸素濃度の場合において、計算値と実測値が所定の範囲内で一致しなかった場合、前記計算値が前記実測値に対して高い場合と低い場合に分けて、ごみ質を選択しなおす。前記計算値が前記実測値に対して高い場合は、前記選んだ中心にあるごみ質と最も発熱量が大きい右にあるごみ質の間でごみ質選択範囲を狭め、前記計算値が前記実測値に対して低い場合は、前記選んだ中心にあるごみ質と最も発熱量が小さい左にあるごみ質の間でごみ質選択範囲を狭め、狭めた範囲内で中心に位置するごみ質を選び、選んだごみ質が焼却炉で燃焼したときに発生する酸素濃度を計算し、酸素濃度の計算値と実測値が所定の範囲内で一致するときは前記焼却炉に投入されたごみ質が、選択したごみ質であると特定する。
(T3)酸素濃度の場合において、前記により選んだごみ質を焼却炉で燃焼させたときに、発生する酸素濃度の計算値と実測値とが異なるときは再度上記手順に従ってごみ質を選び、選んだごみ質の酸素濃度の計算値と実測値が所定の範囲内で一致するまで上記(T2)の手順を繰り返す。
(T2’)二酸化炭素濃度の場合において、計算値と実測値が所定の範囲内で一致しなかった場合、前記計算値が前記実測値に対して高い場合と低い場合に分けて、ごみ質を選択しなおす。前記計算値が前記実測値に対して高い場合は、前記選んだ中心にあるごみ質と最も発熱量が小さい左にあるごみ質の間でごみ質選択範囲を狭め、前記計算値が前記実測値に対して低い場合は、前記選んだ中心にあるごみ質と最も発熱量が大きい右にあるごみ質の間でごみ質選択範囲を狭め、狭めた範囲内で中心に位置するごみ質を選び、選んだごみ質が焼却炉で燃焼したときに発生する二酸化炭素濃度を計算し、二酸化炭素濃度の計算値と実測値が所定の範囲内で一致するときは前記焼却炉に投入されたごみ質が、選択したごみ質であると特定する。
(T3’)二酸化炭素濃度の場合において、前記により選んだごみ質を焼却炉で燃焼させたときに、発生する二酸化炭素濃度の計算値と実測値が異なるときは再度上記手順に従ってごみ質を選び、選んだごみ質の二酸化炭素濃度の計算値と実測値が所定の範囲内で一致するまで上記(T2’)の手順を繰り返す。
〈5〉前記ごみ焼却炉の自動燃焼制御方法におけるごみ質データベースから焼却炉に投入されたごみ質を次の手順により特定することを特徴とする〈1〉又は〈2〉のいずれかに記載されたごみ焼却炉の自動燃焼制御方法。
(U1)ごみ質データベースは、ごみの発熱量の順に並んでおり、発熱量が少ないごみ質はデータベースの左側、発熱量が多いごみ質はデータベースの右側に並べる。
ごみ質データベースに記載されている[1]最も左側のごみ質、[2]最も右側のごみ質及び[3]複数のごみ質の中心に近いごみ質を選び焼却炉で燃焼させたときに、発生する酸素濃度又は二酸化炭素濃度の計算値と実測値と比較し、実測値の含まれる範囲が[1]~[2]か[2]~[3]を判定する。
(U2)実測値が含まれる範囲において、残りのごみ質が2又は3個になるまで(U1)を繰り返す。
(U3)ごみ質が残り2又は3個になったら、各々のごみ質の計算値を算出し、実測値に近いごみ質を選んでごみ質を特定する。
【発明の効果】
【0006】
本発明のごみ焼却炉の自動燃焼制御方法によれば、ごみ焼却場の焼却炉内に投入したごみ質を計算によって推算し、当該特定されたごみ質に対応して焼却炉に吹き込む一次空気量を調整することで焼却炉内の燃焼温度と排ガス性状を最適に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】本発明におけるごみ質データベースの例を示す図である。
【
図3】本発明におけるごみ質データベースからごみ質を特定するための手順を説明するため説明図である。
【
図4】本発明におけるごみ質データベースからごみ質を特定するための別の手順を説明するため説明図である。
【
図5】本発明におけるごみ焼却炉の自動燃焼制御方法のフローチャートである。
【
図6】本発明における別のごみ焼却炉の自動燃焼制御方法のフローチャートである。
【
図7】本発明を実施する他のごみ焼却施設の全体系統図である。
【
図8】本発明を実施する他のごみ焼却施設の全体系統図である。
【
図9】従来のごみ焼却施設を部分的に示した系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係るごみ焼却炉の自動燃焼制御方法を実施するための形態を、実施例の図に基づいて説明する。
図1は、本発明に係るごみ焼却炉の自動燃焼制御方法のごみ焼却施設の概略全体系統図である。
図1において、1はごみ焼却炉、2はごみ燃焼室、3はごみ供給ホッパ、4はごみ、5はプッシャー、6はストーカ、6aは乾燥ストーカ、6bは燃焼ストーカ、6cは後燃焼ストーカ、7は空気送風機、8は冷却塔、9は煙突、10は灰シュート、11は燃焼制御部、12はコントローラ、13は演算装置である。
図1を参照してこの焼却炉へのごみ投入から当該ごみが焼却されるまでの流れを説明する。
ごみ供給ホッパ3よりクレーン(図示しない)にて投入されたごみ4はごみ焼却炉1に入り乾燥ストーカ6a、燃焼ストーカ6b、後燃焼ストーカ6c上を移動する。このとき焼却量の信号aが燃焼制御部11へ送られ演算装置13で演算された燃焼用の一次空気量[A]が空気送風機7によりごみ焼却炉1の下から供給される。ごみ焼却炉1内で、ごみ4は燃焼し灰となり、焼却炉1の灰シュート10より排出され発生した排ガス[G]はダクト等を通り冷却塔8に送られる。
【0009】
ごみが燃焼し灰となる過程において焼却炉1へは燃焼制御部11による制御に従い以下の処理が行われる。
ごみ焼却炉へ投入されたごみ焼却量の信号aが燃焼制御部11に送られこれに対応した一次空気量Aが空気送風機7によりごみ焼却炉1の下から供給される([A])。また、前記信号aを受け前記ごみ焼却量に対応した汚水量がごみ焼却炉1内に噴霧される(ごみ汚水噴霧量)([B])。
排ガスを再利用するため排ガスをごみ焼却炉1に供給する(排ガス再循環)([C])。
ごみ焼却炉1内の燃焼温度Aの信号bが燃焼制御部11へ送られ前記燃焼温度Aに対応した補助燃料がごみ焼却炉1内へ供給される([D])。
ごみ焼却炉1内の燃焼温度Bの信号cが燃焼制御部11へ送られ前記燃焼温度Bに対応した二次空気がごみ焼却炉1へ吹き込まれる([E])。
冷却塔8から煙突9へ送られる途中の排ガスのNOX量の信号gが燃焼制御部11に送られこれに対応した尿素水がごみ焼却炉1へ噴霧される(尿素噴霧量)([F])。
このとき焼却炉内から排出される排ガス内に含まれる酸素濃度及び二酸化炭素濃度の実測値の信号dを前記燃焼制御部11へ送る。
なお、前記酸素濃度又は二酸化炭素濃度の実測値を後述するごみ質データベース表1から選んだごみ質を前記の条件で焼却した場合に発生する排ガス内の酸素濃度又は二酸化炭素濃度を計算式で計算した計算値と比較することで前記ごみ質を特定する過程で使用する。
前記焼却炉内から排出された排ガスの温度(排ガス温度)Cの信号eが燃焼制御部11へ送られ前記排ガス温度Cに対応した冷却水が冷却塔8内へ吹き込まれる(冷却水噴霧量)([I])。
前記冷却塔8内に吹き込まれた冷却水により温度Cに冷却された排ガスの一部は、前記ごみ焼却炉1内に供給され(排ガス再循環)([C])、残りは煙突9から排出される。
【0010】
表1は本発明に係るごみ焼却炉の自動燃焼制御方法を実施するためのごみ質データベースで、当該ごみ質データベースの概念を説明するものであり、本発明においては焼却炉内で燃焼しているごみ質(ごみの組成・熱量)を計算によって推算する過程で使用される。
ごみ焼却場に運び込まれるごみは季節によって異なることから、本発明の実施形態においては、ごみ焼却場に運び込まれる焼却されるごみを例えば1週間ごとにサンプリングし、組成や熱量を分析し分析値(発熱量、可燃分、水分、灰分、元素構成比)を蓄積し、月ごとの平均値をとり、ごみ質データベースを作成している。
表1の一番上の横欄に前記複数の異なるごみのごみ質が記載され、左側縦欄に、上からごみ質の含まれる水分量、可燃分量、灰分量を%で記載している。また、上記ごみ質を焼却炉内で同じ燃焼条件で燃焼させたときに発生する発熱量、可燃分に含まれている炭素(C)、水素(H)、窒素(N)、酸素(0)の元素の構成比が記載されている。
なお、表1の一番上の横欄に記載されたごみ質は、左から右に向かって前記発熱量に従って左から右に大きくなるように分けられている。
表2は、ごみ焼却場に運び込まれたごみに基づいて作成したごみ質データベースの一例であり、一番下の欄に、前記
図1の本発明に係るごみ焼却炉の自動燃焼制御方法によるごみ質の排ガス内の酸素濃度と二酸化炭素濃度の計算値を記載している
【表1】
【表2】
【0011】
図2は、本発明におけるごみ質データベースの例を示す図であり、
図3は、本発明の実施形態におけるごみ焼炉内の自動燃焼制御方法におけるごみ質データベースから焼却炉に投入されたごみ質を特定するための手順を説明するため説明図である。
前記焼却炉内に投入されたごみ質を特定するための手順の要旨は、次の手順に従ってごみ質を選択することにある。
前記
図2に示すごみ質データベースからごみ質を特定するための手順の一例を、
図3に基づいて説明する。
最初にごみ質データベースに記載されている複数のごみ質の中心に近いごみ質(6)を選択し発生する酸素濃度又は二酸化炭素濃度の計算値を計算式に基づいて求め、前記焼却炉から排出された排気ガスの酸素濃度又は二酸化炭素実測値と前記計算値が一致した場合は、ごみ質(6)を前記焼却炉内に投入されたごみ質とし、前記計算値と実測値が異なった場合、計算値と実測値の大小関係から次の計算で用いるごみ質を選択する。
なお、本実施の形態においては、前記ごみ質データベースの複数のごみ質の中心のごみ質を選択する場合、ごみ質の番号(1)~(12)の中心値である6.5を切り下げて(6)を選んでいるが、これに限定されるものではなく中心値を切り上げて(7)を選ぶ方法でも構わない。
なお、前記焼却炉から排出された排気ガスの酸素の濃度又は二酸化炭素の実測値と前記計算値が一致した場合とは、計算値と実測値とが完全一致の場合に限定されるものではなく、所定の範囲(しきい値)(例えば、酸素濃度で±0.05、二酸化炭素濃度で±2.0以内)内で一致する場合を含む。
例えば、酸素濃度の実測値が3.07%であったとしたら計算値は3.02%~3.12%の範囲内であれば一致とし、二酸化炭素濃度の実測値が19.0%であったとしたら計算値は17.0%~21.0%の範囲内であれば一致とする。
1)酸素濃度を計算する場合
1-1)前記選択されたごみ質(6)について計算値が実測値より小さい場合、ごみ質データベースの発熱量が小さいごみ質側の一番左(1)と上記(6)の左隣の(5)との中心のごみ質(3)を選択する。
1-1-1)前記選択されたごみ質(3)について同様に計算値を求め、当該計算値と実測値が一致した場合は、前記ごみ質(3)を前記焼却炉内に投入されたごみ質とし、当該計算値と実測値が異なった場合、計算値が実測値より小さい場合は残った(1)と(2)のうち、発熱量の大きな(2)を選択し、前記と同様に計算値を求め、計算値と実測値が一致した場合は、前記ごみ質(2)を前記焼却炉内に投入されたごみ質とし、当該計算値と実測値が異なった場合、残りのごみ質(1)を前記焼却炉内に投入されたごみ質とする。
1-1-2)前記選択されたごみ質(3)について前記と同様に計算値を求め、計算値が実測値より大きい場合は残った(4)と(5)のうち、発熱量の大きな(5)を選択し、前期と同様に計算値を求め、計算値と実測値が一致した場合は、前記ごみ質(5)を前記焼却炉内に投入されたごみ質とし、当該計算値と実測値が異なった場合、残りのごみ質(4)を前記焼却炉内に投入されたごみ質とする。
1-2) 前記選択されたごみ質(6)について計算値が実測値より大きい場合、ごみ質データベースの発熱量が大きいごみ質側の一番右の(12)と上記(6)右隣の(7)との中心に近いごみ質(9)と(10)のうち、熱量の大きな(10)を選択する。
1-2-1)前記選択されたごみ質(10)について前記と同様に計算値を求め、当該計算値と実測値が一致した場合は、前記ごみ質(10)を前記焼却炉内に投入されたごみ質とし、当該計算値と実測値が異なった場合で、計算値が実測値より小さい場合、(7)と(9)の中心のごみ質(8)を選択し、前記と同様に計算値を求め、当該計算値と実測値が一致した場合は、前記ごみ質(8)を前記焼却炉内に投入されたごみ質とし、当該計算値と実測値が異なった場合、計算値が実測値より小さい場合はごみ質(7)を、計算値が実測値より大きい場合はごみ質(9)を前記焼却炉内に投入されたごみ質とする。
1-2-2)前記選択されたごみ質(10)について、前記と同様に計算値を求め、当該計算値と実測値が異なった場合で、計算値が実測値より大きい場合、(11)と(12)のうち、発熱量の大きな(12)を選択し、前記と同様に計算値を求め、当該計算値と実測値が一致した場合は、前記ごみ質(12)を前記焼却炉内に投入されたごみ質とし、当該計算値と実測値が異なった場合、残りのごみ質(11)を前記焼却炉内に投入されたごみ質とする。
なお、1-1-1)、1-1-2)及び1-2-2)において発熱量の大きなほうを選んでいるが、もちろん発熱量の小さなほうを選ぶように決めてもよいし、ごみ質の番号(1)~(12)の中心値である6.5を切り下げて(6)を中心値として、発熱量の小さい側では残ったごみ質のうち発熱量の小さいごみ質を選択し、発熱量の大きい側では残ったごみ質のうち発熱量の大きいごみ質を選択するようにしてもよい。
上記のように選択したごみ質の計算値と実測値の大小を比較し両者の値が異なった場合、計算値と実測値の大小関係から上記手順に従って次のごみ質を選択することで、上記1-1)計算値が実測値より小さい場合は、(6)より右にあるごみ質(7)~(12)のごみ質の計算値を求める必要がなく、上記1-2)計算値が実測値より大きい場合は、(6)より左にあるごみ質(1)~(5)のごみ質の計算値を求める必要がない。このごみ質の特定手順に従えば、ごみ質データベースの全てのごみ質について計算値を求める必要がないので、実際に焼却炉内で燃焼しているごみ質を効率よく特定することができる。
なお、計算値と実測値とが完全一致の場合に限定されるものではなく、所定の範囲(しきい値)(例えば、酸素濃度で±0.05)内で一致する場合を含む。
例えば、酸素濃度の実測値が3.07%であったとしたら計算値は3.02%~3.12%の範囲内であればよい。
2)二酸化炭素濃度を計算する場合
前記酸素濃度を計算する場合と同様に、選択されたごみ質の二酸化炭素濃度について計算値と実測値が一致した場合は、前記ごみ質を前記焼却炉内に投入されたごみ質とする。以下前記酸素濃度と同様に、二酸化炭素濃度が計算値と実測値が異なった場合に、残りのごみ質を選択し前記焼却炉内に投入されたごみ質を特定する。
2-1)前記選択されたごみ質(6)について、計算値が実測値より大きい場合、ごみ質データベースの発熱量が小さいごみ質側の一番左(1)と上記(6)の左隣の(5)との中心のごみ質(3)を選択する。
2-1-1)前記選択されたごみ質(3)について、同様に計算値を求め、当該計算値と実測値が一致した場合は、前記ごみ質(3)を前記焼却炉に投入されたごみ質とし、当該計算値と実測値が異なった場合、計算値が実測値より大きい場合は残った(1)と(2)のうち、発熱量の大きな(2)を選択し、前記と同様に計算値を求め、計算値と実測値が一致した場合は、前記ごみ質(2)を前記焼却炉内に投入されたごみ質とし、当該計算値と実測値が異なった場合、残りのごみ質(1)を選択する。
2-1-2)前記選択されたごみ質(3)について、前記と同様に計算値を求め、計算値が実測値より小さい場合は残った(4)と(5)のうち、発熱量の大きな(5)を選択し、前期と同様に計算値を求め、計算値と実測値が一致した場合は、前記ごみ質(5)を前記焼却炉に投入されたごみ質とし、当該計算値と実測値が異なった場合、残りのごみ質(4)を前記焼却炉に投入されたごみ質とする。
2-2) 前記選択されたごみ質(6)について、計算値が実測値より小さい場合、ごみ質データベースの発熱量が大きいごみ質側の一番右の(12)と上記(6)右隣の(7)との中心に近いごみ質(9)と(10)のうち、熱量の大きな(10)を選択する。
2-2-1)前記選択されたごみ質(10)について、前記と同様に計算値を求め、計算値と実測値が一致した場合は、前記ごみ質(10)を前記焼却炉に投入されたごみ質とし、当該計算値と実測値が異なった場合で、計算値が実測値より大きい場合、(7)と(9)の中心のごみ質(8)を選択し、前記と同様に計算値を求め、当該計算値と実測値が一致した場合は、前記ごみ質(8)を前記焼却炉に投入されたごみ質とし、当該計算値と実測値が異なった場合、計算値が実測値より大きい場合はごみ質(7)を、計算値が実測値より小さい場合はごみ質(9)を前記焼却炉に投入されたごみ質とする。
2-2-2)前記選択されたごみ質(10)について、前記と同様に計算値を求め、当該計算値と実測値が異なった場合で、計算値が実測値より小さい場合、(11)と(12)のうち、発熱量の大きな(12)を選択し、前記と同様に計算値を求め、当該計算値と実測値が一致した場合は、前記ごみ質(12)を前記焼却炉に投入されたごみ質とし、当該計算値と実測値が異なった場合、残りのごみ質(11)を前記焼却炉内に投入されたごみ質とする。
なお、2-1-1)、2-1-2)及び2-2-2)において発熱量の大きなほうを選んでいるが、もちろん発熱量の小さなほうを選ぶように決めてもよいし、ごみ質の番号(1)~(12)の中心値である6.5を切り下げて(6)を中心値として、発熱量の小さい側では残ったごみ質のうち発熱量の小さいごみ質を選択し、発熱量の大きい側では残ったごみ質のうち発熱量の大きいごみ質を選択するようにしてもよい。
上記のように選択したごみ質の計算値と実測値の大小を比較し両者の値が異なった場合、計算値と実測値の大小関係から上記手順に従って次のごみ質を選択することで、上記2-1)計算値が実測値より大きい場合は、(6)より右にあるごみ質(7)~(12)のごみ質の計算値を求める必要がなく、上記2-2)計算値が実測値より小さい場合は、(6)より左にあるごみ質(1)~(5)のごみ質の計算値を求める必要がない。このごみ質の特定手順に従えば、ごみ質データベースの全てのごみ質について計算値を求める必要がないので、実際に焼却炉内で燃焼しているごみ質を効率よく特定することができる。
なお、計算値と実測値とが完全一致の場合に限定されるものではなく、所定の範囲(しきい値)(例えば、二酸化炭素濃度で±2.0以内)内で一致する場合を含む。
例えば、二酸化炭素濃度の実測値が19.0%であったとしたら計算値は17.0%~21.0%の範囲内、であればよい。
【0012】
図4は、別の本発明の実施形態におけるごみ焼炉の自動燃焼制御方法におけるごみ質データベースから焼却炉内に投入されたごみ質を特定するための手順を説明するため説明図である。
前記焼却炉内に投入されたごみ質を特定するための手順の要旨は、次の手順に従ってごみ質を選択することにある。
前記
図2に示すごみ質データベースからごみ質の特定するための手順の一例を、
図4に基づいて説明する。
最初にごみ質データベースに記載されている複数の、ごみ質の最も発熱量の小さいごみ質(1)、中心に近いごみ質(7)及びごみ質の最も発熱量の大きいごみ質(12)を選択し発生する酸素濃度又は二酸化炭素濃度を計算して実測値と比較し、実測値の含まれる範囲が、<(7)か(7)≦か、を判定する。
なお本実施の形態においては、前記ごみ質データベースの複数のごみ質の中心のごみ質を選択する場合、ごみ質の番号(1)~(12)の中心値である6.5を切り上げて(7)を選んでいるが、これに限定されるものではなく中心値を切り下げて(6)を選ぶ方法でも構わない。
2-1)実測値の含まれる範囲が、<(7)の場合、<(7)のごみ質データベースに記載されている複数の、ごみ質の最も発熱量の小さいごみ質(1)、中心に近いごみ質(4)及びごみ質の最も発熱量の大きいごみ質(6)を選択し発生する酸素濃度又は二酸化炭素濃度を計算して実測値と比較し、実測値の含まれる範囲が、<(4)か(4)≦か、を判定する。
2-1-1)実測値の含まれる範囲が、<(4)の場合、<(4)のごみ質データベースに記載されている(1)~(3)の発生する酸素濃度又は二酸化炭素濃度を各々計算して実測値と比較し、最も実測値に近いごみ質を選択し、前記焼却炉内に投入されたごみ質とする。
2-1-2)実測値の含まれる範囲が、(4)≦の場合、(4)≦のごみ質データベースに記載されている(4)~(6)の発生する酸素濃度又は二酸化炭素濃度を各々計算して実測値と比較し、最も実測値に近いごみ質を選択し、前記焼却炉内に投入されたごみ質とする。
2-2)実測値の含まれる範囲が、(7)≦の場合、(7)≦のごみ質データベースに記載されている複数の、ごみ質の最も発熱量の小さいごみ質(7)、中心に近いごみ質(10)及びごみ質の最も発熱量の大きいごみ質(12)を選択し発生する酸素濃度又は二酸化炭素濃度を計算して実測値と比較し、実測値の含まれる範囲が、<(10)か(10)≦か、を判定する。
2-2-1)実測値の含まれる範囲が、<(10)の場合、<(10)のごみ質データベースに記載されている(7)~(9)の発生する酸素濃度又は二酸化炭素濃度を各々計算して実測値と比較し、最も実測値に近いごみ質を選択し、前記焼却炉内に投入されたごみ質とする。
2-2-2)実測値の含まれる範囲が、(10)≦の場合、(10)≦のごみ質データベースに記載されている(10)~(12)の発生する酸素濃度又は二酸化炭素濃度を各々計算して実測値と比較し、最も実測値に近いごみ質を選択し、前記焼却炉内に投入されたごみ質とする。
上記のように実測値の含まれるごみ質の範囲を選択して絞り込んでいくことで、上記2-1)の範囲に実測値が含まれる場合は、(7)から右にあるごみ質(7)~(12)のごみ質の計算値を求める必要がなく、上記2-2)の範囲に実測値が含まれる場合は、(7)より左にあるごみ質(1)~(6)のごみ質の計算値を求める必要がない。このごみ質の特定手順に従えば、ごみ質データベースの全てのごみ質について計算値を求める必要がないので、実際に焼却炉で燃焼しているごみ質を効率よく特定することができる。
【0013】
〔ごみ質データベースから選ばれたごみ質の排気ガス中の酸素濃度の算出〕
前記ごみ質データベースから選ばれたごみ質が燃焼炉で燃焼されたときに、発生する酸素濃度の計算値を求める。
ここでは、表2のごみ質4を例にして計算する。ただし、実測値と定数は以下の値で与えられているものとする。
〈1〉実測値
・(ごみ焼却量) [kg/h] = 4000
・(一次空気量) [m
3N/h] = 2900
・(ごみ汚水噴霧量) [kg/h] = 200
・(補助燃料投入量) [L/h] = 95.3
・(尿素水噴霧量) [kg/h] = 52.7
・(二次空気量) [m
3N/h] = 250
・EGR流量 [m
3N/h] = 2380.62
〈2〉定数
・(補助燃料の燃焼で生じる水分:α1) [m
3N/L] = 0.90
・(補助燃料の燃焼で生じる二酸化炭素:α2) [m
3N/L] = 0.85
・(補助燃料の燃焼で生じる窒素:α3) [m
3N/L] = 3.0
・(補助燃料燃焼用理論空気量:ε) [m
3N/L] = 7.5
・(飛灰率β)[%] = 10
・(熱灼減量γ)[%] = 5
・(ごみ汚水噴霧用空気量:δ) [m
3N/kg] = 0.5
・(補助燃料燃焼用理論空気量の空気過剰率:ζ) = 1.5
・(尿素水噴霧用空気量:η) [m
3N/kg] = 0.30
・(一次空気量の空気過剰率:X)= 1.3
〈3〉ごみ質データベース値
・(ごみ中の水分)[%] = 43
・(ごみ中の可燃分)[%] = 50
・(ごみ中の灰分)[%] = 7
・(ごみ中の炭素の割合)[%] = 54
・(ごみ中の水素の割合)[%] = 7.6
・(ごみ中の窒素の割合)[%] = 0.4
〈4〉算出値
算出値は下記式(5)~式(8)で求める。
・(n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した水分濃度)
(H
2O’) /{(H
2O’)+(CO
2’)+(O
2’)+(N
2’)}×100 ・・・式(5)
・(n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した二酸化炭素濃度)
(CO
2’) /{(H
2O’)+(CO
2’)+(O
2’)+(N
2’)}×100 ・・・式(6)
・(n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した酸素濃度)
(O
2’) /{(H
2O’)+(CO
2’)+(O
2’)+(N
2’)}×100 ・・・式(7)
・(n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した窒素濃度)
(N
2’) /{(H
2O’)+(CO
2’)+(O
2’)+(N
2’)}×100 ・・・式(8)
式(5)の(n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した水分濃度) [%]は、
図5又は
図6のフローチャートでの一次空気吹込量を出力する制御サイクルをn回目としたとき、制御サイクルn-1回目の焼却炉出口での排ガス量に、
制御サイクルn-1回目の冷却水噴霧量 [kg/h]× ((22.4L/mol)/(18.0g/mol)) を加えたときの水分濃度[%]である。ここで、制御サイクルn-1回目の冷却水噴霧量 [kg/h]は実測値である。
上記の式(6)~式(8)のガス濃度は、
図5又は
図6のフローチャートでの一次空気吹込量を出力する制御サイクルをn回目としたとき、制御サイクルのn-1回目で冷却塔を通過した排ガス中の二酸化炭素濃度、酸素濃度、窒素濃度である。
上記の、
図5又は
図6のフローチャートでの一次空気吹込量を出力する制御サイクルをn回目としたとき、制御サイクルn-1回目の焼却炉出口での水分濃度、二酸化炭素濃度、酸素濃度および窒素濃度から、酸素濃度を計算する理由としては、焼却炉へ流入する冷却塔通過後の排ガス再循環(EGR)の各成分ガス濃度がn回目の制御サイクルの酸素濃度の計算に必要で、各成分ガス濃度は制御サイクルn回目の一つ前のn-1回目の制御サイクルでの各成分ガス濃度を用いているためである。
算出にあたり、上記式(5)~式(8)に下記の値を使用した。
(H
2O’)=(n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した水分量) [m
3N/h]=9374.8、
(CO
2’)=(n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した二酸化炭素量) [m
3N/h]=2445、
(O
2’)=(n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した酸素量) [m
3N/h]=339.6
(N
2’)=(n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した窒素量) [m
3N/h]=3711.4
その結果算出された算出値は以下の通りである。
・(n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した水分濃度) [%] = 59.07
・(n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した二酸化炭素濃度) [%] = 15.41
・(n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した酸素濃度) [%] = 2.14
・(n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した窒素濃度) [%] = 23.38
上記〈1〉と〈2〉の値、表2のごみ質データベースのごみ質4の値〈3〉及び〈4〉の値を下式(1)~(4)及び式(9)に代入すると、酸素濃度3.10%を得る。
・水の総量
(H
2O)[m
3N/h]
= (ごみ焼却量) [kg/h]
× [ (ごみ中の水素の割合)[%] × ((22.4L/mol)/(2.0g/mol)) ×(ごみ中の可燃分)[%]
+ (ごみ中の水分)[%] × ((22.4L/mol)/(18.0g/mol)) ]
+ (ごみ汚水噴霧量) [kg/h] × ((22.4L/mol)/(18.0g/mol))
+ EGR流量[m
3N/h] ×(n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した水分濃度) [%]
+ (補助燃料投入量) [L/h] × (補助燃料の燃焼で生じる水分:α1) [m
3N/L]
+ (尿素水噴霧量) [kg/h] × ((22.4L/mol)/(18.0g/mol)) ・・・式(1)
・二酸化炭素の総量
(CO
2)[m
3N/h]
= (ごみ焼却量) [kg/h] × ((22.4L/mol)/(12.0g/mol))
× [ (ごみ中の炭素の割合)[%] × (ごみ中の可燃分)[%]
-(ごみ中の灰分)[%] × [1-(飛灰率β)[%]] × (熱灼減量γ)[%] ]
+ EGR流量[m
3N/h] ×(n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した二酸化炭素濃度) [%]
+(補助燃料投入量) [L/h] × (補助燃料の燃焼で生じる二酸化炭素:α2) [m
3N/L]
・・・式(2)
・酸素の総量
(O
2)[m
3N/h]
= (一次空気量) [m
3N/h] × 0.21 × [(一次空気の空気過剰率:X)-1]
+(ごみ汚水噴霧量) [kg/h] × (ごみ汚水噴霧用空気量:δ) [m
3N/kg] × 0.21
+ EGR流量[m
3N/h] ×(n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した酸素濃度) [%]
+ [ (補助燃料燃焼用理論空気量:ε) [m
3N/L] × (補助燃料投入量) [L/h]
×[ (補助燃料燃焼用理論空気量の空気過剰率:ζ) - 1] × 0.21 ]
+ (二次空気量) [m
3N/h] × 0.21
+ (尿素水噴霧量) [kg/h] × (尿素水噴霧用空気量:η) [m3N/kg] × 0.21
・・・式(3)
・窒素の総量
(N
2)[m
3N/h]
= (一次空気量) [m
3N/h] × 0.79
+(ごみ焼却量) [kg/h]
× (ごみ中の窒素の割合)[%] × ((22.4L/mol)/(28.0g/mol)) × (ごみ中の可燃分)[%]
+(ごみ汚水噴霧量) [kg/h] × (ごみ汚水噴霧用空気量:δ) [m
3N/kg] × 0.79
+ EGR流量[m
3N/h] ×(n-1回目の制御サイクルに冷却塔を通過した窒素濃度) [%]
+ (補助燃料投入量) [L/h] × [ (補助燃料燃焼用理論空気量:ε) [m
3N/L]
× (空気過剰率:ζ)× 0.79 + (補助燃料の燃焼で生じる窒素:α3) [m
3N/L] ]
+ (二次空気量) [m
3N/h] × 0.79
+ (尿素水噴霧量) [kg/h] × (尿素水噴霧用空気量:η) [m
3N/kg] × 0.79
・・・式(4)
・排ガス中の酸素濃度を求める式
(O
2)/{(H
2O)+(CO
2)+(O
2)+(N
2)}×100 ・・・式(9)
【0014】
〔ごみ質データベースから選ばれたごみ質の排気ガス中の二酸化炭素濃度の算出〕
前記ごみ質データベースから選ばれたごみ質が燃焼炉で燃焼されたときに、発生する二酸化炭素濃度の計算値を求める。ここでは、表2のごみ質4を例にして計算する。ただし、〈1〉実測値と〈2〉定数は〔0013〕と同様の値で与えられているものとする。
上記〈1〉と〈2〉の値、表2のごみ質データベースのごみ質4の値〈3〉及び〈4〉の値を〔0013〕の式(1)~(4)と下式の(10)に代入すると、二酸化炭素濃度17.6%を得る。
・排ガス中の二酸化炭素濃度を求める式
(CO2)/{(H2O)+(CO2)+(O2)+(N2)}×100 ・・・式(10)
【0015】
図5のフローチャートにより本発明に係るごみ焼却炉の〔0011〕の場合の自動燃焼制御方法を説明する。
本発明に係るごみ焼却炉の自動燃焼制御への切替えは、作業者が焼却炉を稼働させ焼却炉にごみを投入し、ごみ投入量を燃焼制御部11で当該ごみ投入量を計算し、一次空気量、ごみ汚水噴霧量、排ガス再循環量、補助燃料投入量、尿素水噴霧量等を計算し焼却炉へ供給したうえで、問題がない(定常状態)ことを確認してから行う。自動制御へ切り替えると、演算装置13のプログラムにより計算開始となる。
前記の工程において、投入されたごみのごみ質を特定するために、燃焼制御部11においてごみ質データベースの表1に基づきごみ質を選択し式(1)~(4)と式(9)、(10)に基づき選択されたごみ質の排ガスに含まれる酸素濃度又は二酸化炭素濃度の計算値を求める(S-1)。一方で排ガスに含まれている酸素濃度又は二酸化炭素濃度を測定し実測値を求める。
燃焼制御部において酸素濃度又は二酸化炭素濃度の計算値と実測値を比較する(S-2)。
計算値と実測値がしきい値の範囲内で一致した場合は投入したごみ質が特定できたことになるので、燃焼制御部において前記特定されたごみ質に対応して焼却炉に吹き込む一次空気量を決めて送風機からごみ焼却炉へ吹き込むことで燃焼温度を最適に制御することができる(S-3、S-4)。
計算値と実測値が一致しない場合は、改めてごみ質データベースの表1から別のごみ質を選択し、一致するごみ質が特定されるまで上記のステップを繰り返す(S-5)。
【0016】
図6のフローチャートにより本発明に係るごみ焼却炉の〔0012〕の場合の自動燃焼制御方法を説明する。
本発明に係るごみ焼却炉の自動燃焼制御への切替えは、作業者が焼却炉を稼働させ焼却炉にごみを投入しごみ投入量を燃焼制御部11で当該ごみ投入量を計算し、一次空気量、ごみ汚水噴霧量、排ガス再循環量、補助燃料投入量、尿素水噴霧量等を計算し焼却炉へ供給したうえで、問題がない(定常状態)ことを確認してから行う。自動制御へ切り替えると、演算装置13のプログラムにより計算開始となる。
前記の工程において、投入されたごみのごみ質データベースのごみ質範囲を判定するために、燃焼制御部11においてごみ質データベースの表1に基づき表1の最小、中間及び最大のごみ質を選択し式(1)~(4)と式(9)、(10)に基づき選択されたごみ質の排ガスに含まれる酸素濃度又は二酸化炭素濃度の各計算値を求める(S-1)。一方で排ガスに含まれている酸素濃度又は二酸化炭素濃度を測定し実測値を求める。
燃焼制御部において酸素濃度又は二酸化炭素濃度の計算値と実測値を比較し、実測値が(最小~中間)と(中間~最大)のどちらにあるかを判定し、実測値がある範囲を選択する(S-2)。
残りのごみ質データベースのごみ質が2又は3個であれば(S-3)、最小、中間及び最大の各計算値のうち最も実測値に近いごみ質を選択し、特定する(S-4)。
投入したごみ質が特定できたことになるので、制御部において前記特定されたごみ質に対応して焼却炉に吹き込む一次空気量を決めて送風機からごみ焼却炉へ吹き込むことで焼却炉の燃焼温度を最適に制御することができる(S-5)。
ごみ質データベースの残りのごみ質個数が4個以上の場合は、ごみ質データベースの選択範囲の最小、中間及び最大のごみ質を選択し式(1)~(4)と式(9)、(10)に基づき選択されたごみ質の排ガスに含まれる酸素濃度又は二酸化炭素濃度の各計算値を求めるステップを繰り返す(S-6)。
【0017】
上記本発明のごみ焼却炉の自動燃焼制御方法によれば、ごみが焼却炉内に投入される都度、当該投入されたごみ質を特定することができるので、焼却炉内に吹き込む一次空気量を調整することでごみ焼却炉内の燃焼温度と排ガス性状を最適に制御し、排ガス中の有害成分の発生を抑制することができる。
【0018】
図7及び
図8は本発明を実施する他のごみ焼却施設の全体系統図である。
図7はボイラ付き焼却炉で、乾燥段・燃焼段・後燃焼段から成るストーカの下方から一次空気を供給するライン、焼却炉内の温度が一定以下なら補助燃料を投入する補助燃料供給装置、ごみ汚水噴霧装置、排ガスの一部を焼却炉内に戻し窒素酸化物生成を抑止する排ガス再循環、未燃ガスや未燃物を完全燃焼させる二次空気供給ラインで構成されていて、その他、ガス濃度測定部、ボイラ、エコノマイザ、バグフィルタ、誘引送風機、煙突を備えている。
図8は乾燥段・燃焼段・後燃焼段から成るストーカの下方から一次空気を供給するライン、焼却炉内の温度が一定以下なら補助燃料を投入する補助燃料供給装置、ごみ汚水噴霧装置、排ガスの一部を焼却炉内に戻し窒素酸化物生成を抑止する排ガス再循環、未燃ガスや未燃物を完全燃焼させる二次空気供給ラインで構成されていて、その他、ガス濃度測定部、ガス冷却塔、熱交換器、温水熱交換器、減温塔、バグフィルタ、誘引送風機、煙突を備えている。
【符号の説明】
【0019】
1 ごみ焼却炉
2 ごみ燃焼室
3 ごみ供給ホッパ
4 ごみ
5 プッシャー
6 ストーカ
7 空気送風機
8 冷却塔
9 煙突
10 灰シュート
11 燃焼制御部
12 コントローラ
13 演算装置