(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】掘削ロッド
(51)【国際特許分類】
E21D 9/00 20060101AFI20230306BHJP
E21B 6/04 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
E21D9/00 Z
E21B6/04
(21)【出願番号】P 2019042520
(22)【出願日】2019-03-08
【審査請求日】2022-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】500355075
【氏名又は名称】株式会社日本地下探査
(73)【特許権者】
【識別番号】000230788
【氏名又は名称】日本基礎技術株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桑原 徹
(72)【発明者】
【氏名】山田 信人
(72)【発明者】
【氏名】東芝 崇
(72)【発明者】
【氏名】新町 修一
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-269068(JP,A)
【文献】特開2017-066646(JP,A)
【文献】特開2005-226388(JP,A)
【文献】特開2000-011286(JP,A)
【文献】特開2017-128881(JP,A)
【文献】特開2003-184065(JP,A)
【文献】特開平11-107668(JP,A)
【文献】特開2001-280054(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106703682(CN,A)
【文献】特開2003-066155(JP,A)
【文献】特開2015-081471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00-9/14
E21B 1/00-19/24
E21B 44/00-44/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削ビットと該掘削ビットに打撃力を発生させる振動発生機構とを備える削孔機の背面側に、
先端が配置される掘削ロッドであって、
金属製の中空筒体よりなる掘削ロッド本体と、
該掘削ロッド本体の中空部に収納される導電棒と、
該導電棒と前記掘削ロッド本体との間
であって、該導電棒の両端部、及び該両端部に挟まれた中間部に介装される
複数のスペーサと、を備え、
前記スペーサに、前記掘削ロッド本体の軸線方向に連通する連通部が備えられて
、前記掘削ロッド本体と前記導電棒との隙間に、前記振動発生機構を作動させるために供給する作動流体が流下する作動流体流路が形成されるとともに、
前記導電棒の中間部に介装される前記スペーサにはさらに、前記掘削ロッド本体の内面を押圧する板バネよりなる押圧部が備えられ、
前記導電棒は、前記掘削ロッド本体とともに2芯の電気ケーブルとして機能するものであることを特徴とする掘削ロッド。
【請求項2】
請求項1に記載の掘削ロッドにおいて、
前記導電棒の中間部に介装される前記スペーサが、
前記導電棒を把持するリング形状の把持部と、
該把持部の外縁より突出して、突出端部を前記掘削ロッド本体の内周面に当接させる複数の導電棒支持部と、を備え、
前記連通部は、隣り合う前記導電棒支持部の間に形成され、
前記押圧部は、その基端部が、前記導電棒支持部に形成された前記導電棒の軸線と直交する面に固定され、前記導電棒と離間する方向に向けて延在し、前記導電棒支持部の前記突出端部より前記導電棒の軸線直交方向に張り出したところで、先端部が内巻きに加工されていることを特徴とする掘削ロッド。
【請求項3】
請求項1または2に記載の掘削ロッドにおいて、
前記導電棒が、複数の導電棒一般部を接続して構成され、前記導電棒一般部の両端部にオス電極部もしくはメス電極部が設けられるとともに、
前記掘削ロッド本体が、前記導電棒一般部を収納する複数の掘削ロッド本体一般部を接続して構成され、前記掘削ロッド本体一般部の両端部に互いに嵌合するオス継手もしくはメス継手が設けられることを特徴とする掘削ロッド。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の掘削ロッドにおいて、
前記導電棒は、前記スペーサを介して前記掘削ロッド本体に着脱自在に収納されることを特徴とする掘削ロッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地山を削孔する削孔装置に用いられる掘削ロッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、山岳トンネルを施工する際には、掘削対象領域を含む周辺地山に対して事前調査を行い、この調査結果に基づいてトンネルの設計及び施工計画を立案する。山岳トンネルの事前調査では、地山の地盤強度や地層境界の位置を把握する手段として弾性波探査技術が採用されるが、弾性波探査を地表から行うため、土被りの大小により探査精度に影響が生じやすい。このため、より正確に地山状況を把握するべく、山岳トンネルの施工中においても、切羽前方地山の弾性波探査を実施している。
【0003】
例えば、特許文献1では、トンネル切羽から前方に向けてドリルビットによる削孔を行いつつ、切羽近傍に配置した受振器でドリルビットから地山を直接伝わってきた削孔振動を受振するとともに、ボーリングマシンに取り付けたパイロットセンサで掘削ビットから掘削ロッドを伝ってきた削孔振動を受振する。そして、これら2地点で受振した振動情報に基づいて、ドリルビット先端とトンネル切羽の間の領域における相似的な区間弾性波速度を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような、地山を削孔するドリルビットを利用して切羽前方地山の状況把握を行う削孔検層によれば、ドリルビットによる削孔振動を発振源とするため、切羽近傍で実施する打撃や発破等を発振源とする速度検層と比較して、大掛かりな発振に係る作業を省略できる。
【0006】
しかし、ドリルビットによる削孔振動は、上述した切羽近傍で実施する打撃や発破と比較して、その振動が微弱である。また、ドリルビットによる削孔は、掘削ロッドの後端部近傍に配置されたボーリングマシンにドリフタ―等の打撃装置を装備し、この打撃装置から掘削ロッドを介してドリルビットに打撃力を発生させる。このため、ボーリングマシンから大きな機械振動が発振されるとともに、掘削ロッドを継ぎ足しながら削孔作業を行う場合には、掘削ロッドのジョイント部で削孔振動の重複反射が生じる。
【0007】
すると、ボーリングマシンに取り付けられ、ドリルビットから掘削ロッドを伝ってきた削孔振動を受振するパイロットセンサは、上記の削孔振動の重複反射やボーリングマシンの機械振動等のノイズを、微弱な削孔振動と併せて受振することとなり、解析結果の精度や信頼性に影響を生じやすい。
【0008】
このような中、パイロットセンサが受振するノイズを減少させる方法として、掘削ビットに打撃力を発生させる打撃装置を、掘削ロッドの後端部側に配置する後端打撃方式から、掘削ロッドの先端に配置する先端打撃方式に切り替えたり、パイロットセンサの設置位置を、ボーリングマシンから掘削ビットにほど近い掘削ロッドの先端近傍に移動する等が考えられる。
【0009】
これらの方法を採用するには、掘削ロッドの先端に配置する打撃装置に作動流体を供給するための供給管や、パイロットセンサで受振したビット振動情報を伝送するための電気ケーブル等が必要となる。しかし、これら供給管や電気ケーブルを掘削ロッドに収納しようとすると、断面径の大きい掘削ロッドを使用せざるを得ず、ひいては削孔径を大きく取る必要が生じるため、合理的とは言えない。
【0010】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、先端打撃方式で地山を削孔する際に適用でき、かつ、電気ケーブルとして利用することの可能な、掘削ロッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するため、本発明の掘削ロッドは、掘削ビットと該掘削ビットに打撃力を発生させる振動発生機構とを備える削孔機の背面側に、先端が配置される掘削ロッドであって、金属製の中空筒体よりなる掘削ロッド本体と、該掘削ロッド本体の中空部に収納される導電棒と、該導電棒と前記掘削ロッド本体との間であって、該導電棒の両端部、及び該両端部に挟まれた中間部に介装される複数のスペーサと、を備え、前記スペーサに、前記掘削ロッド本体の軸線方向に連通する連通部が備えられて、前記掘削ロッド本体と前記導電棒との隙間に、前記振動発生機構を作動させるために供給する作動流体が流下する作動流体流路が形成されるとともに、前記導電棒の中間部に介装される前記スペーサにはさらに、前記掘削ロッド本体の内面を押圧する板バネよりなる押圧部が備えられ、前記導電棒は、前記掘削ロッド本体とともに2芯の電気ケーブルとして機能するものであることを特徴とする。また、前記導電棒の中間部に介装される前記スペーサが、前記導電棒を把持するリング形状の把持部と、該把持部の外縁より突出して、突出端部を前記掘削ロッド本体の内周面に当接させる複数の導電棒支持部と、を備え、前記連通部は、隣り合う前記導電棒支持部の間に形成され、前記押圧部は、その基端部が、前記導電棒支持部に形成された前記導電棒の軸線と直交する面に固定され、前記導電棒と離間する方向に向けて延在し、前記導電棒支持部の突出端部より前記導電棒の軸線直交方向に張り出したところで、先端部が内巻きに加工されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の掘削ロッドは、前記導電棒が、複数の導電棒一般部を接続して構成され、前記導電棒一般部の両端部にオス電極部もしくはメス電極部が設けられるとともに、前記掘削ロッド本体が、前記導電棒一般部を収納する複数の掘削ロッド本体一般部を接続して構成され、前記掘削ロッド本体一般部の両端部に互いに嵌合するオス継手もしくはメス継手が設けられることを特徴とする。
【0013】
本発明の掘削ロッドによれば、掘削ロッド本体をマイナス配線と見做し、導電棒をプラス配線と見做した2芯の電気ケーブルとして機能させつつ、掘削ロッド本体と導電棒の隙間を、掘削ロッド本体の先端側に位置する削孔機の振動発生機構を作動させる作動流体の流路として利用でき、作動流体の流下を妨げることなく、掘削ロッドの先端部近傍に掘削ビットから発生されるビット振動を受振する受振器等の電子部品を配置し、伝送や給電を行うことが可能となる。
【0014】
また、掘削ロッドが、作動流体を流下させる機能と電気ケーブルとしての機能を併せ持つことにより、別途作動流体の供給管や電気ケーブルを準備する必要が無いため、これらを掘削ロッドに収納する場合と比較して、掘削ロッドの径を小さくでき、ひいては削孔径を小さくすることが可能となる。
【0015】
本発明の掘削ロッドは、前記導電棒が、前記スペーサを介して前記掘削ロッド本体に着脱自在に収納されることを特徴とする。
【0016】
本発明の掘削ロッドによれば、導電棒を掘削ロッド本体から容易に取り外しできることから、掘削ロッド本体内の清掃や導電棒の取り換え等、掘削ロッドのメンテナンス作業を容易に実施することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、掘削ロッドを構成する掘削ロッド本体と導電棒を2芯の電気ケーブルとして機能させつつ、掘削ロッドをその前方に位置する削孔機の振動発生機構を作動させる作動流体の流路として利用でき、作動流体の流下を妨げることなく、掘削ロッドの先端部近傍に電子部品を配置し、伝送や給電を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態における掘削ロッドを備えた削孔装置を削孔検層に採用する場合の概略を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態における掘削ロッドの詳細を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態における掘削ロッドを分割した掘削ロッド一般部を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態における導電棒の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の掘削ロッドは、地山を削孔する削孔装置に用いるものであって、特に、削孔機を掘削ロッドの先端部に装着して地山を削孔する先端打撃方式の削孔装置に好適な掘削ロッドである。
【0020】
以下に、掘削ロッドを、削孔検層に用いる削孔装置に適用する場合を事例とし、
図1~4を用いてその詳細を説明するが、これに先立ち、掘削ロッドが用いられる削孔装置の概略を説明する。
【0021】
本実施の形態における削孔装置Mは、
図1(a)で示すように、トンネルTの切羽前方地山を掘削ビット21により削孔しつつ、掘削ビット21から発生するビット振動を、切羽近傍に設置した受振器Aおよび掘削ビット21の背面側近傍に配置されたパイロットセンサ10の2地点で連続的に受振し、受振した情報から羽前前方の地山状況を把握する削孔検層に用いられるトンネル切羽前方探査システムSに採用されるものである。
【0022】
削孔装置Mは、削孔機2と、掘削ロッド3と、掘削ロッド3を把持して回転力と推進力を付与するボーリングマシンBを備える。削孔機2は、地山を削孔する掘削ビット21と、掘削ビット21の背面側に位置して打撃を付与する振動発生機構22とを備え、本実施の形態では、振動発生機構22として、作動流体Wに高圧水を使用する水圧ハンマーを採用している。
【0023】
掘削ロッド3は、先端部にパイロットセンサ10を備える振動センサ機構1が接続され、その前方に上記の削孔機2が配置されている。また、掘削ロッド3はその後端部が、ボーリングマシンBに備えられたロータリージョイント付き高圧スイベル15を介して、データ処理装置4及び高圧水供給パイプPに連結されている。
【0024】
データ処理装置4は、データ収録システム41と、データ解析装置42とを備え、データ収録システム41は、いわゆるデータロガーであり、受振器A及びパイロットセンサ10が受振したビット振動に係る情報を読み取り、データ解析装置42に出力する。
【0025】
受振器Aには、弾性波探査で一般に用いられる3成分加速度計を採用している。また、パイロットセンサ10にも同様の3成分加速度計を採用できるが、本実施の形態では、パイロットセンサ10に求められる精度や配置スペース等を考慮し、1成分加速度計を採用している。なお、振動センサ機構1については、後述する。
【0026】
上記のように、振動センサ機構1を介して削孔機2の背面側に配置される掘削ロッド3は、
図1(a)で示すように、金属製の中空筒体よりなる掘削ロッド本体5と、導電材料で形成された高導電性金属棒であり、掘削ロッド本体5より十分小さい断面径を有する導電棒7と、掘削ロッド本体5と導電棒7との間に介装されるスペーサ9と、を備えている。
【0027】
スペーサ9は、
図1(b)で示すように、導電棒7を把持する把持部91と、把持部91の外縁より突出し、突出端部が掘削ロッド本体5の内周面に当接する導電棒支持部92と、を有する。また、スペーサ9は、導電棒7を把持した状態で掘削ロッド本体5へ挿入した際に、掘削ロッド本体5の中空部を閉塞することのないよう、掘削ロッド本体5の軸線方向に延びる切欠きや通し孔等により形成される連通部93を備えている。
【0028】
これら、把持部91、導電棒支持部92及び連通部93は、いずれの形状を有するものでもよいが、本実施の形態では、把持部91が導電棒7を包持するようリング形状に形成され、導電棒支持部92は把持部91の外縁より放射方向に3体突出し、隣り合う導電棒支持部92の間に連通部93が設けられている。
【0029】
掘削ロッド3は、このような構成のスペーサ9を長手方向に間隔を設けて複数取り付けた導電棒7を掘削ロッド本体5に挿入することで、導電棒7と掘削ロッド本体5との間に確保した隙間を、作動流体Wが流下する作動流体流路L1として機能させている。なお、スペーサ9には連通部93が設けられているため、作動流体Wは連通部93を通過でき、掘削ロッド3内をスムーズに流下することが可能となっている。
【0030】
さらに、
図1(a)で示すように、掘削ロッド3の先端部に接続される振動センサ機構1に、掘削ロッド3の作動流体流路L1と削孔機2の振動発生機構22に連通する作動流体流路L2を設けることにより、別途作動流体Wの供給管を掘削ロッド3に内装させることなく、振動発生機構22を作動させることが可能となる。
【0031】
また、掘削ロッド3は、金属製の掘削ロッド本体5をマイナス配線と見做すとともに、導電棒7をプラス配線と見做して2芯の電気ケーブルとして機能させることができる。
【0032】
したがって、
図1(a)で示すように、掘削ロッド3の先端部に接続される振動センサ機構1に、掘削ロッド本体5と接続可能なマイナス配線および導電棒7と接続可能なプラス配線を設けることにより、掘削ロッド3を介して振動センサ機構1に備えたパイロットセンサ10で受振したビット振動に関する情報を伝送できるとともに、パイロットセンサ10に給電することも可能となる。
【0033】
なお、本実施の形態において振動センサ機構1は、
図2(a)(b)で示すように、パイロットセンサ10と、パイロットセンサ10が固定される固定台11と、固定台11に固定された状態のパイロットセンサ10が挿入されるセンサケース12とを備える。さらに、センサケース12に内装した接続端子(図示せず)に一端が接続されるセンサ側導電棒13と、センサ側導電棒13およびセンサケース12が挿入されるケースロッド14とを備える。なお、センサ側導電棒13は、掘削ロッド3の導電棒7と同様の高導電性金属棒よりなる。
【0034】
そして、固定台11、センサケース12及びケースロッド14は、いずれも金属製の部材により製作されており、これらをマイナス配線と見做し、センサ側導電棒13をプラス配線と見做して2芯の電気ケーブルとして機能させることができる。したがって、パイロットセンサ10のマイナス配線を固定台11を介してセンサケース12及びケースロッド14に接続し、プラス配線をセンサケース12に内装した接続端子(図示せず)を介してセンサ側導電棒13に接続する。
【0035】
そのうえで、掘削ロッド3の掘削ロッド本体5と振動センサ機構1のケースロッド14を接続し、掘削ロッド3の導電棒7と振動センサ機構1のセンサ側導電棒13を接続する。さらに、
図1で示すように、ロータリージョイント付き高圧スイベル15を介して掘削ロッド3をデータ処理装置4のデータ収録システム41に接続する。
【0036】
これにより、データ収録システム41から掘削ロッド3および振動センサ機構1を介して、パイロットセンサ10に電力が自動供給され、パイロットセンサ10で受振したビット振動情報はデータ収録システム41に伝送される。
【0037】
また、
図2(a)(b)で示すように、振動センサ機構1のセンサ側導電棒13には、導電棒7と同様にスペーサ9が設置されており、スペーサ9の連通部93により、センサ側導電棒13とケースロッド14との間に隙間が形成されている。また、センサケース12にはその外周面に、ケースロッド14の軸線方向に延びる切欠き123が設けられており、センサケース12とケースロッド14との間に隙間が設けられている。
【0038】
これらケースロッド14とセンサ側導電棒13の隙間と、センサケース12とケースロッド14の隙間とは連通しており、振動発生機構22に供給する作動流体Wが流下する作動流体流路L2として機能する。そして、ケースロッド14は、掘削ロッド3の掘削ロッド本体5及び振動発生機構22と連通状態で接続可能に構成されている。
【0039】
これにより、
図1で示すように、ロータリージョイント付き高圧スイベル15を介して掘削ロッド3の後端部から高圧水給水パイプPより高圧水を注入することで、高圧水が掘削ロッド3に形成された作動流体流路L1および振動センサ機構1に形成された作動流体流路L2を介して振動発生機構22に供給され、振動発生機構22に採用した水圧ハンマーを作動させることが可能となる。
【0040】
このように、掘削ロッド3は、掘削ロッド本体5をマイナス配線と見做し、導電棒7をプラス配線と見做した2芯の電気ケーブルとして機能させつつ、掘削ロッド本体5と導電棒7の隙間を、作動流体流路L1として利用でき、作動流体Wの流下を妨げることなく、掘削ロッド3の先端部にパイロットセンサ10を備える振動センサ機構1を設置し、パイロットセンサ10が受振したビット振動に係る情報の伝送やパイロットセンサ10への給電を行うことが可能となる。
【0041】
また、別途作動流体Wの供給管や電気ケーブルを準備する必要が無いため、これらを掘削ロッド3に収納する場合と比較して、掘削ロッド3の径を小さくでき、ひいては削孔径を小さくすることが可能となる。
【0042】
さらに、スペーサ9を設置した導電棒7は掘削ロッド本体5に挿入するのみであり、着脱自在に収納されることから、掘削ロッド本体5内の清掃や導電棒7の取り換え等、掘削ロッド3のメンテナンス作業を容易に実施することが可能となる。
【0043】
このような構成の掘削ロッド3は、地山削孔が進行するにつれてその長さを伸長させるものである。このため、掘削ロッド3は、
図2で示すように、複数の掘削ロッド一般部3aにより構成されるとともに、掘削ロッド一般部3aは長手方向に継ぎ足し自在な構成を有している。
【0044】
図2及び
図3で示すように、掘削ロッド一般部3aは、掘削ロッド本体5の分割体の一部である掘削ロッド本体一般部5aと、導電棒7の分割体の一部である導電棒一般部7aと、掘削ロッド本体一般部5aと導電棒一般部7aとの間に介装されるスペーサ9と、を備えている。
【0045】
掘削ロッド本体一般部5aは、一方の端部にメス継手61が設けられるとともに、このメス継手61に嵌合するオス継手62が他方の端部に設けられている。なお、オス継手62とメス継手61とからなる継手構造の種類は、着脱自在な構造であればいずれの継手構造を採用してもよい。
【0046】
また、オス継手62には、例えばOリング等の止水部材(図示せず)が備えられており、掘削ロッド本体一般部5aを長手方向に複数継ぎ足すべくオス継手62にメス継手61を嵌合した際に、止水性能を有する継手構造が形成される。
【0047】
図3及び
図4で示すように、掘削ロッド本体一般部5aに収納される導電棒一般部7aは、一方の端部にオス電極部81が設けられるとともに、このオス電極部81に嵌合するメス電極部82が他方の端部に形成されている。なお、メス電極部82は、導電棒一般部7aに接続するセンサ側導電棒13の他方の端部にも設置されている。
【0048】
掘削ロッド本体一般部5aにおける導電棒一般部7aのオス電極部81とメス電極部82の配置位置は、
図2で示すように、隣り合う掘削ロッド一般部3aどうしを接続する際、一方の掘削ロッド本体一般部5aのオス継手62を他方の掘削ロッド本体一般部5aのメス継手61に嵌合させることにより、隣り合う導電棒一般部7aのオス電極部81とメス電極部82が、自動的に差し込まれる位置に配置されている。
【0049】
また、
図4(a)(b)で示すように、導電棒一般部7aに装着されるスペーサ9は、前述した把持部91、導電棒支持部92、連通部93に加えてさらに、導電棒支持部92の各々に押圧部94を設置してもよい。
【0050】
板バネよりなる押圧部94はその基端部が、導電棒支持部92の導電棒一般部7aの軸線と直交する面に固定され、導電棒7と離間する方向に向けて延在し、導電棒支持部92の突出端部より導電棒一般部7aの軸線直交方向に張り出したところで、先端部が内巻きに加工処理されている。
【0051】
このような構成の押圧部94をスペーサ9に備えると、3体の導電棒支持部92各々に設けられた3体の押圧部94が、
図3で示すように掘削ロッド本体一般部5aの内周面を強固に押圧することから、着脱自在でありながら導電棒一般部7aを掘削ロッド本体一般部5aに対して強固に固定することができる。
【0052】
したがって、掘削ロッド一般部3aは、導電棒一般部7aと掘削ロッド本体一般部5aとの間に、掘削ロッド本体一般部5aの長手方向に連通する作動流体流路L1を確保しつつ、導電棒一般部7aを掘削ロッド本体一般部5aの略軸線上に配置することができる。
【0053】
上記のとおり、掘削ロッド3に形成された作動流体流路L1および振動センサ機構1に形成された作動流体流路L2には、作動流体Wである高圧水が流下する。このため、掘削ロッド3の導電棒7及び振動センサ機構1のセンサ側導電棒13はそれぞれ、
図2で示すように、高圧水が直接触れることのないよう電気絶縁材料よりなる絶縁部材Eにより被覆され、漏電対策が講じられている。
【0054】
また、導電棒7を構成する導電棒一般部7a及びセンサ側導電棒13に備えられるメス電極部82は、その外周部が絶縁部材(図示せず)により形成されており、オス電極81が差し込まれると絶縁が確保されるキャップ状に形成されている。また、内周面には止水ゴムとして一般に広く用いられているOリング(図示せず)が設置されており、オス電極部81が嵌合して形成される接続部は、水密構造となっている。さらに、掘削ロッド3及び振動センサ機構1の両者に用いられているスペーサ9も、電気絶縁材料により形成されている。
【0055】
なお、
図3(a)(b)で示すようにスペーサ9は、導電棒一般部7aの長手方向に複数設置するが、例えば、作動液体流路L1を流下する作動液体Wの液圧が小さく、導電棒一般部7aが掘削ロッド本体一般部5a内で揺動する恐れがない場合には、押圧部94は必ずしも設置したすべてのスペーサ9に設けなくてもよい。
【0056】
さらに、スペーサ9は、導電棒一般部7aの長手方向中間部だけでなく、導電棒一般部7aの両端部に設けられるオス電極部81とメス電極部82各々の近傍にも設置するとよい。
【0057】
本発明の掘削ロッド3は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0058】
例えば、本実施の形態では、掘削ビット21に打撃力を発生させる振動発生機構22として水圧ハンマーを採用し、掘削ロッド3の作動流体流路L1に作動流体Wとして高圧水を流下させたが、流下させる作動流体Wは、必ずしも高圧水でなくても採用可能である。
【0059】
また、本実施の形態では、掘削ロッド3の先端部にパイロットセンサ10を備える振動センサ機構1を設置する場合を事例としたが、必ずしもこれに限定されるものでない。掘削ロッド3の先端部に配置可能な電子部品であれば、いずれを採用しても掘削ロッド3を2芯の電気ケーブルとして利用し、給電や伝送を行うとが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 振動センサ機構
2 削孔機
21 掘削ビット
22 振動発生機構
3 掘削ロッド
3a 掘削ロッド一般部
3b 掘削ロッド先端部
4 データ処理装置
41 データ収録システム
42 データ解析装置
3 掘削ロッド
5 掘削ロッド本体
5a 掘削ロッド本体一般部
5b 掘削ロッド本体先端部
61 メス継手
62 オス継手
63 受け口
7 導電棒
7a 導電棒一般部
81 オス電極部
82 メス電極部
9 スペーサ
91 把持部
92 導電棒支持部
93 連通部
94 押圧部
10 パイロットセンサ
11 固定台
12 センサケース
123 切欠き部
13 センサ側導電棒
14 ケースロッド
15 ロータリージョイント付き高圧スイベル
A 受振器
B ボーリングマシン
E 絶縁部材
L1 作動流体流路
L2 作動流体流路
M 削孔装置
P 高圧水給水パイプ
S トンネル切羽前方探査システム
W 作動流体(高圧水)