(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】デッキ用受け材及び該デッキ用受け材の取付方法
(51)【国際特許分類】
E04B 5/40 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
E04B5/40 E
(21)【出願番号】P 2019046630
(22)【出願日】2019-03-14
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】田戸 康平
(72)【発明者】
【氏名】関 勝輝
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-018515(JP,U)
【文献】特開2000-141035(JP,A)
【文献】特開平10-280692(JP,A)
【文献】特開平11-310983(JP,A)
【文献】特開平10-280601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 5/36-5/40
E04B 1/41
E04G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄骨構造物において、鋼製梁を接合する矩形状のスプライスプレートの周囲を囲うように配置され、デッキプレートを載置させて接合するために使用されるデッキ用受け材であって、
平面的に見てコ字状から成る一対の受け部材を備えており、
前記受け部材は、前記鋼製梁の長手方向に沿って延び、前記鋼製梁の
側面に溶接されるデッキ載置部と、前記デッキ載置部の長手方向の両端から前記鋼製梁の短手方向に向かって突き出す接合面部と、を有し、
一対の前記受け部材は、前記鋼製梁の上面に配置した前記スプライスプレートの周囲を囲うように、コ字の開口側を対向させて配置され、各端部において互いに対向する前記接合面部
同士が接合される構成であることを特徴とする、デッキ用受け材。
【請求項2】
前記鋼製梁の長手方向に沿って配置され、前記デッキ載置部の下面から前記鋼製梁の側面に向かって一端縁が突き出すように設けられた裏当て金を、更に備えていることを特徴とする、請求項1に記載のデッキ用受け材。
【請求項3】
前記受け部材は、前記デッキ載置部の中間で分割された2つの受け部品から成り、2つの前記受け部品が、分割した対向する端部でボルト接合又は溶接されて構成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のデッキ用受け材。
【請求項4】
2つの前記受け部品は、分割した対向する端部間に繋ぎ部材が設けられ、前記繋ぎ部材を介してボルト接合又は溶接される構成であることを特徴とする、請求項3に記載のデッキ用受け材。
【請求項5】
前記接合面部は、前記鋼製梁の短手方向に沿って長孔が形成されており、
各端部において互いに対向する前記接合面部は、重ね合わせた当接面の長さが調整され、前記長孔に共通のボルトを通して接合される構成であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のデッキ用受け材。
【請求項6】
前記接合面部には、複数のボルト孔が前記鋼製梁の短手方向に沿って間隔をあけて形成されており、
各端部において互いに対向する前記接合面部は、重ね合わせた当接面の長さが調整され、複数の前記ボルト孔のうち該当する前記ボルト孔にボルトを通して接合される構成であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のデッキ用受け材。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のデッキ用受け材の取付方法であって、
一対の前記受け部材を、前記鋼製梁の上面に配置した前記スプライスプレートの周囲を囲うように、コ字の開口側を対向させて配置して位置合わせを行う工程と、
一対の前記受け部材の位置合わせを行った後、各端部において互いに対向する前記接合面部
同士を接合する工程と、
前記デッキ載置部と前記鋼製梁とを溶接する工程と、を有することを特徴とする、デッキ用受け材の取付方法。
【請求項8】
前記鋼製梁の短手方向の一方側のみに前記デッキプレートを設置する場合には、前記デッキ載置部と前記鋼製梁とを溶接する工程において、前記デッキプレートを設置する側のみ、前記デッキ載置部と前記鋼製梁とを溶接し、
当該溶接後に、前記接合面部の接合状態を解除して、溶接した前記受け部材から溶接をしていない前記受け部材を取り外すことを特徴とする、請求項7に記載のデッキ用受け材の取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼製梁を接合するためのスプライスプレートの周囲に配置され、デッキプレートを載置させて接合するために使用されるデッキ用受け材及び該デッキ用受け材の取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄骨構造物には、H型鋼梁のフランジの上面にデッキプレートを載置させて溶接等で接合し、デッキプレートの上面にコンクリートを打設して形成された合成スラブを有する構造が知られている。ここで、H型鋼梁が大梁等である場合には、スプライスプレート及び高力ボルトを用いて接合される。しかし、この場合、スプライスプレートを設置した部分におけるフランジの上面にデッキプレートを載置させることができない。そこで、従来の鉄骨構造物では、スプライスプレートを設置する部分におけるフランジの側面に、平板状のデッキプレート受け材を溶接等で取り付け、デッキプレート受け材にデッキプレートの端部を載置させて溶接等をすることとしている。
【0003】
通常、デッキプレート受け材は、例えば工場等においてH型鋼梁のフランジの側面に溶接して取り付けられる。しかし、デッキプレート受け材の取付作業を忘れられた状態でH型鋼梁が現場に納入される場合があった。現場の作業者は、鉄骨の建方前にデッキプレート受け材がフランジに取り付けられていない事態に気付くことがある。その場合、現場の鉄骨置き場等を利用して、デッキプレート受け材をフランジの側面に取り付けることができる。しかし、実際には、現場の作業者は、鉄骨の建方後に、デッキプレート受け材がフランジに取り付けられていない事態に気付くことが多い。そのため、デッキプレート受け材を追加で建方後の鉄骨に溶接する必要があるが、適切に溶接することは困難であり、作業者の安全性の確保も難しいことが問題となっていた。
【0004】
そこで、特許文献1では、矩形状のスプライスプレートの周囲を囲うように配置され、デッキプレートを載置させて接合するために使用されるスラブ施工用枠体が開示されている。このスラブ施工用枠体は、H型鋼梁の長手方向におけるフランジの縁部に沿って配置される一対の支承板と、H型鋼梁の短手方向に配置され、一対の支承板の対向する両端部繋ぐ一対の載置杆と、支承板の内側の端縁部に設けられ、上方に立ち上がる漏れ止め板と、を備えている。支承板は、デッキプレートを支承させるために設けられている。載置杆は、フランジの上面に溶接されている。漏れ止め板は、支承板と該支承板の上面に配置されるデッキプレートとの間から打設したコンクリートが漏れる事態を防止するために設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたスラブ施工用枠体は、載置杆をフランジの上面に溶接し、支承板をフランジに溶接しないことで、設置作業を簡単且つ早く行うこととしている。しかし、載置杆のみをフランジの上面に溶接しただけでは、必要とされる溶接長を確保することができず、スラブ施工用枠体とH形鋼梁との接合強度が不十分となるおそれがある。また、デッキプレートの上面に耐火補強筋を設置する場合において、漏れ止め板の存在が障害となり、スプライスプレートを設けた箇所に耐火補強筋を配筋することができない。このような理由により、特許文献1のスラブ施工用枠体では、信頼性の高い合成スラブを形成することができないおそれがある。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、鉄骨の建方後であってもスプライスプレートを設けた箇所に容易に取り付けることができ、且つ必要な溶接長を確保することができ、信頼性の高い合成スラブの形成に寄与できるデッキ用受け材及び該デッキ用受け材の取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るデッキ用受け材は、鉄骨構造物において、鋼製梁を接合する矩形状のスプライスプレートの周囲を囲うように配置され、デッキプレートを載置させて接合するために使用されるデッキ用受け材であって、平面的に見てコ字状から成る一対の受け部材を備えており、前記受け部材は、前記鋼製梁の長手方向に沿って延び、前記鋼製梁の側面に溶接されるデッキ載置部と、前記デッキ載置部の長手方向の両端から前記鋼製梁の短手方向に向かって突き出す接合面部と、を有し、一対の前記受け部材は、前記鋼製梁の上面に配置した前記スプライスプレートの周囲を囲うように、コ字の開口側を対向させて配置され、各端部において互いに対向する前記接合面部同士が接合される構成であることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るデッキ用受け材の取付方法は、一対の前記受け部材を、前記鋼製梁の上面に配置した前記スプライスプレートの周囲を囲うように、コ字の開口側を対向させて配置して位置合わせを行う工程と、一対の前記受け部材の位置合わせを行った後、各端部において互いに対向する前記接合面部同士を接合する工程と、前記デッキ載置部と前記鋼製梁とを溶接する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、一対の受け材部品が、スプライスプレートの周囲を囲うように、開口を対向させて配置され、各端部において互いに対向する接合面部が接合される構成なので、鉄骨の建方後であっても、スプライスプレートを設けた箇所に容易に取り付けることができる。しかも、鋼製梁の長手方向に沿って延びるデッキ載置部が鋼製梁に溶接される構成なので、溶接長を十分に確保することができ、接合強度を高めることができる。また、耐火補強筋の設置に障害となる部材も存在しない。よって、本発明に係るデッキ用受け材及び該デッキ用受け材の取付方法は、信頼性の高い合成スラブの形成に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態に係るデッキ用受け材を鉄骨構造物に設置した状態であって、デッキ用受け材にデッキプレートを設置する様子を示した斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るデッキ用受け材を鉄骨構造物に設置した状態であって、デッキプレート、耐火補強筋及びコンクリートを設置した形態を示した斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係るデッキ用受け材を鉄骨構造物に設置した状態の要部を拡大して示した平面図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係るデッキ用受け材を分解して示した平面図である。
【
図6】
図3に示したB部を側面方向から見た拡大図である。
【
図8】2つの受け部品を接合する手段のバリエーションを示した説明図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係るデッキ用受け材のデッキ載置部の変形例を示した説明図である。
【
図10】本発明の実施の形態に係るデッキ用受け材の接合面部の変形例を示した説明図である。
【
図11】本発明の実施の形態に係るデッキ用受け材の変形例であって、鉄骨構造物に設置した状態を示した要部拡大平面図である。
【
図12】本発明の実施の形態に係るデッキ用受け材の取付方法の一例を示した説明図である。
【
図13】本発明の実施の形態に係るデッキ用受け材を鉄骨構造物に設置した状態であって、上面が平坦なデッキプレートを用いた場合の形態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には、同一符号を付して、その説明を適宜省略又は簡略化する。また、各図に記載の構成について、その形状、大きさ、及び配置等は、本発明の範囲内で適宜変更することができる。
【0013】
実施の形態.
図1は、本発明の実施の形態に係るデッキ用受け材を鉄骨構造物に設置した状態であって、デッキ用受け材にデッキプレートを設置する様子を示した斜視図である。
図2は、本発明の実施の形態に係るデッキ用受け材を鉄骨構造物に設置した状態であって、デッキプレート、耐火補強筋及びコンクリートを設置した形態を示した斜視図である。
図3は、本発明の実施の形態に係るデッキ用受け材を鉄骨構造物に設置した状態の要部を拡大して示した平面図である。
図4は、
図3に示したA-A線矢視断面図である。
図5は、本発明の実施の形態に係るデッキ用受け材を分解して示した平面図である。
図6は、
図3に示したB部を側面方向から見た拡大図である。
図7は、
図5に示したC-C線矢視断面図である。
【0014】
本実施の形態に係るデッキ用受け材1は、
図1及び
図2に示すように、鉄骨構造物100において、隣り合う鋼製梁10を接合する矩形状のスプライスプレート11の周囲を囲うように配置され、デッキプレート12を載置させて接合するために使用されるものである。本実施の形態に係るデッキ用受け材1は、鉄骨の建方後であってもスプライスプレート11を設けた箇所に取り付けることができるものである。
【0015】
鉄骨構造物100は、
図1及び
図2に示すように、合成スラブ101を有する構造である。合成スラブ101は、H形鋼から成る鋼製梁10の上フランジ10aの上面にデッキプレート12が載置されて溶接等で接合され、デッキプレート12の上面に複数本の耐火補強筋13が設けられ、その上からコンクリート14が打設された構成である。なお、鉄骨構造物100は、耐火補強筋13を設けずに合成スラブ101を構成する場合もある。また、鋼製梁10は、図示したH形鋼に限定されず他の形鋼でも良く、またビルトH材、ラチス材及びトラス材など、鋼製梁の形状や成形方法は問わない。
【0016】
図1~
図4に示すように、隣り合う鋼製梁10は、長手方向の端面を突き合わせて配置され、複数枚のスプライスプレート11が上フランジ10aの上下面、下フランジ10bの上下面、及びウェブ10cの左右側面に跨がって配置されている。隣り合う鋼製梁10は、上フランジ10a、下フランジ10b及びウェブ10cが、それぞれスプライスプレート11と高力ボルト11aで接合されている。なお、
図4では、高力ボルト11aを省略した状態を示している。
【0017】
デッキプレート12は、
図1及び
図2に示すように、山頂面部と、山頂面部に略平行な谷底面部と、山頂面部と谷底面部とを連結する傾斜面部と、を有し、山頂面部と谷底面部とが交互に連なる構成である。耐火補強筋13は、デッキプレート12の谷部にそれぞれ設けられている。
【0018】
デッキ用受け材1は、
図3及び
図5に示すように、平面的に見てコ字状から成る一対の受け部材2と、鋼製梁10の長手方向に沿って配置され、受け部材2の下面に接合された裏当て金5と、を備えている。
【0019】
受け部材2は、鋼製梁10の長手方向に沿って延び、鋼製梁10の上フランジ10aの側面に溶接される平板状のデッキ載置部3と、デッキ載置部3の長手方向の両端から鋼製梁10の短手方向に向かって突き出す接合面部4と、を有している。一対の受け部材2は、上フランジ10aの上面に設けたスプライスプレート11の周囲を囲うように、コ字の開口側を対向させて配置され、各端部において互いに対向する接合面部4が接合される構成である。
【0020】
受け部材2は、デッキ載置部3の中間で分割された2つの受け部品20から成り、
図3及び
図6に示すように、2つの受け部品20が分割した対向する端部でボルト接合されて構成されている。つまり、デッキ用受け材1は、4つの受け部品20で構成されているので、現場への運搬効率を高めることができるし、部材を共通化して部材点数を減らすこともでき、コストの削減に寄与できる。受け部品20は、
図3~
図7に示すように、分割したデッキ載置部3の一端側に下方へ向かって屈曲する鉛直面部30が設けられ、他端側に接合面部4が設けられている。鉛直面部30には、
図4及び
図7に示すように、ボルト31を通すボルト孔30aが形成されている。2つの受け部品20は、
図3及び
図6に示すように、鉛直面部30を対向させ、ボルト31の軸部を、ネジ孔を形成したボルト孔30aにネジ込んで締結されている。
【0021】
2つの受け部品20は、対向する鉛直面部30の間隔を調整し、当該間隔に適合する長さのボルト31を使用することで、デッキ載置部3の長手方向の長さを調整することができる。つまり、受け部材2は、スプライスプレート11の長手方向の長さに合うように、現場にてデッキ載置部3の長さを適宜調整することができる。また、受け部材2の製作及び施工の寸法誤差に追随させることもできる。よって、本実施の形態のデッキ用受け材1は、スプライスプレート11の長手方向の大きさに合わせて、大きさの異なる複数種類の部材を用意する必要がない。また、長さを調整する構造がシンプルなので、製造コストを削減できるし、2つの受け部品20をボルト31で締結するだけの簡単な作業で接合できるので、設置作業の作業性を向上させることもできる。なお、2つの受け部品20の対向する鉛直面部30間に設けた隙間は、溶接長を十分に確保でき溶接強度に問題ない程度とする。
【0022】
図8は、2つの受け部品を接合する手段のバリエーションを示した説明図である。先ず、
図8(A)は、2つの受け部品20の対向する鉛直面部30が、ボルト31の軸部をボルト孔30aに通してナット32で締結された構成を示している。この場合、ナット32は、鉛直面部30に予め溶接して取り付けた構成としてもよいし、鉛直面部30に溶接することなくボルト31に締めて付けてもよい。なお、ナット32は、図示した2個に限定されない。
【0023】
次に、
図8(B)は、2つの受け部品20の対向する鉛直面部30間に、繋ぎ部材33が設置され、該繋ぎ部材33を介して2つの受け部品20が1本のボルト31でボルト接合された構成を示している。繋ぎ部材33は、一例として溝形鋼であり、左右の側面にボルト31の軸部を通すためのボルト孔33aが形成された構成である。受け部品20の鉛直面部30に形成されたボルト孔30aと、繋ぎ部材33のボルト孔33aとに、ボルト31の軸部を通して、2つの受け部品20が接合される。ボルト孔30a及び33aは、ネジ孔として形成されている。なお、ボルト31はナットを用いて締結してもよい。また、繋ぎ部材33は、図示した1つに限定されず、2つ以上設けてもよい。また、繋ぎ部材33に、受け部材2の下面に接合される裏当て金5を予め取り付けておいてもよい。
【0024】
繋ぎ部材33は、2つの受け部品20の対向する鉛直面部30間の幅寸に適合する大きさで構成されている。デッキ用受け材1は、繋ぎ部材33を設けることによって、2つの受け部品20の間に形成される隙間を埋めることができるので、溶接長を確保することができるし、繋ぎ部材33とデッキプレート12の谷底面部とを接合することができ、デッキプレート12を安定させて設置することができる。なお、繋ぎ部材33は、図示した溝形鋼に限定されず、他の形状からなる鋼材でもよい。
【0025】
次に、
図8(C)は、2つの受け部品20の対向する鉛直面部30間に、繋ぎ部材33が設置され、該繋ぎ部材33と各受け部品20の鉛直面部30とが、それぞれボルト接合された構成を示している。つまり、
図8(C)に示す形態は、ボルト31を2本用いてボルト接合された構成である。
図8(C)に示す形態は、2つの受け部品20の鉛直面部30間が大きく、繋ぎ部材33が鋼製梁10の長手方向に長さを有する場合に有効である。繋ぎ部材33は、例えば溝形鋼であり、左右の側面にボルト31を通すためのボルト孔33aが形成された構成である。受け部品20の鉛直面部30に形成されたボルト孔30aと、繋ぎ部材33のボルト孔33aとに、ボルト31の軸部を通して、受け部品20と繋ぎ部材33とが接合される。ボルト孔30a及び33aは、ネジ孔として構成されている。なお、ボルト31はナットを用いて締結してもよい。
【0026】
次に、
図8(D)は、2つの受け部品20の対向する鉛直面部30間に、繋ぎ部材33が2つ設置されており、繋ぎ部材33同士がボルト接合され、且つ各受け部品20の鉛直面部30と、該鉛直面部30に対向する繋ぎ部材33とがボルト接合された構成を示している。
図8(D)に示す形態も、2つの受け部品20の鉛直面部30間が大きい場合に有効である。なお、ボルト31は、ネジ孔としたボルト孔30a及び33aに締結されているが、ナットを用いて締結してもよい。また、繋ぎ部材33は、図示した2つに限定されず、3つ以上設けてもよい。
【0027】
図9は、本発明の実施の形態に係るデッキ用受け材のデッキ載置部の変形例を示した説明図である。
図9に示すデッキ載置部3は、鉛直面部30を有さない構成である。この場合、2つの受け部品20は、分割した対向するデッキ載置部3の端部において、下面に繋ぎ部材34である鋼板が当てがわれ、各デッキ載置部3と繋ぎ部材34とが溶接される。なお、2つの受け部品20は、対向するデッキ載置部3の端部の間隔を調整し、当該間隔に適合する長さの繋ぎ部材34を使用することで、スプライスプレート11の長手方向の長さに合わせて、デッキ載置部3の長さを調整することができる。なお、各デッキ載置部3と繋ぎ部材34とを溶接する作業は、予め工場で行ってもよいし、現場で行ってもよい。
【0028】
裏当て金5は、
図3~
図7に示すように、例えば鋼板で構成され、鋼製梁10の長手方向に沿って長さを有している。裏当て金5は、各受け部品20のデッキ載置部3の下面にそれぞれ溶接されて設けられている。裏当て金5は、デッキ載置部3の下面から鋼製梁10の上フランジ10aの側面に向かって一端縁が突き出すように設けられている。デッキ用受け材1は、裏当て金5を設けることによって、溶接の品質を向上させることができる。また、スプライスプレート11に取り付ける際に、裏当て金5の突き出した一端縁を上フランジ10aの側面に突き当てることで受け部材2を位置決めすることができる。つまり、裏当て金5は、受け部材2をスプライスプレート11に取り付ける際のガイド機能も有している。なお、裏当て金5は、必ずしも設ける必要はなく、デッキ載置部3と鋼製梁10の上フランジ10aとの溶接方法によっては省略してもよい。
【0029】
接合面部4は、
図3~
図5及び
図7に示すように、例えばアングル材で構成されており、水平面40の一端部がデッキ載置部3の端部の上面に載置されて接合され、垂直面41が水平面40から上方に向かって立ち上がるように設けられている。一対の受け部材2は、各端部において対向する接合面部4の垂直面41が互いに向き合うように設けられている。垂直面41は、一例として上フランジ10aの上面から30mm程度の高さを有しており、上フランジ10aの上面から40mm程度の高さに設けられる耐火補強筋13と干渉することがない。
【0030】
また、接合面部4の垂直面41には、鋼製梁10の短手方向に沿って長孔41aが形成されている。各端部において互いに対向する接合面部4は、垂直面41が重ね合わされ、上フランジ10aの短手方向の長さに合うように、重ね合わせた当接面の長さが調整され、長孔41aに通したボルト42の軸部をナット43で締結して接合される。このとき、受け部材2の製作及び施工の寸法誤差に追随させることもできる。なお、接合面部4における長さの調整は、裏当て金5を上フランジ10aの側面に突き当てて位置決めされた状態で行われる。つまり、本実施の形態のデッキ用受け材1は、上フランジ10aの短手方向の長さに合わせて、大きさの異なる複数種類の部材を用意する必要が少ない。また、長さを調整する構造がシンプルなので、製造コストを削減できるし、2つの受け部品20をボルト42とナット43で締結するだけの簡単な作業で接合できるので、設置作業の作業性を向上させることもできる。なお、接合面部4は、図示したアングル材に限定されず、他の形態からなる部材で構成してもよい。
【0031】
図10は、本発明の実施の形態に係るデッキ用受け材の接合面部の変形例を示した説明図である。
図10に示すように、接合面部4は、長孔41aに代えて、複数の円孔から成るボルト孔41bを垂直面41に形成した構成でもよい。複数のボルト孔41bは、鋼製梁10の短手方向に沿って間隔をあけて形成されている。
図10では、各垂直面41にボルト孔41bを5つずつ形成した構成を示しているが、図示した個数に限定されない。
【0032】
また、図示することは省略したが、接合面部4は、長孔41a又はボルト孔41bを形成せずに、垂直面41を重ね合わせて溶接した構成でもよい。
【0033】
図11は、本発明の実施の形態に係るデッキ用受け材の変形例であって、鉄骨構造物に設置した状態を示した要部拡大平面図である。本実施の形態のデッキ用受け材1は、上記した受け部材2を2つの受け部品20で構成することなく、
図11に示すように、デッキ載置部3を一枚の鋼板で構成し、デッキ載置部3の長手方向の両端から鋼製梁10の短手方向に向かって突き出す接合面部4を設けた構成としてもよい。この場合、デッキ載置部3は、予めスプライスプレート11の長手方向の長さに合わせた長さ以上で形成される。
【0034】
次に、上記構成のデッキ用受け材1の取付方法を説明する。本実施の形態のデッキ用受け材1は、先ず、一対の受け部材2を、鋼製梁10の上フランジ10aの上面に設けたスプライスプレート11の周囲を囲うように、コ字の開口側を対向させて配置し、位置合わせを行う。受け部材2は、予め工場で2つの受け部品20を接合した後、現場に納入してもよいし、現場で2つの受け部品20を接合して形成してもよい。受け部材2における鋼製梁10の長手方向の位置合わせは、
図3~
図8に示す構成の場合、デッキ載置部3の対向する鉛直面部30の間隔を調整した後、鉛直面部30のボルト孔30aにネジ込んだボルト31を締結し、最後に微調整することにより行う。なお、
図9に示す構成の場合では、デッキ載置部3の下面に共通の繋ぎ部材34を当てがい、各デッキ載置部3と繋ぎ部材34とを溶接することにより行われる。また、
図11に示す構成の場合では、デッキ載置部3が一枚の鋼板で構成されているので、当該位置合わせを省略する。
【0035】
一方、受け部材2における鋼製梁10の短手方向の位置合わせは、裏当て金5を上フランジ10aの側面に突き当てて位置決めし、各端部において互いに対向する接合面部4の垂直面41を重ね合わせ、スプライスプレート11の短手方向の長さに合わせて、重ね合わせた当接面の長さを調整する。位置合わせを行った後、各接合面部4の垂直面41に形成された長孔41aに、ボルト42の軸部を共通に挿入し、ナット43で締結して接合面部4を接合する。このようにして、デッキ用受け材1は、鋼製梁10を接合する矩形状のスプライスプレート11の周囲を囲うように配置される。
【0036】
そして、デッキ載置部3の長手方向の端縁と、鋼製梁10の上フランジ10aの側面とを、鋼製梁10の上面側から突合せ溶接又は部分溶け込み溶接を行う。そして、デッキ載置部3の上面に、デッキプレート12が載置されて接合される。なお、デッキプレート12の端面には、小口塞ぎ12aを取り付けること、または、図示することは省略したが、デッキプレート12の端面を塞ぐエンドクローズド加工を行うことで、打設したコンクリート14の流出を防止する。
【0037】
図12は、本発明の実施の形態に係るデッキ用受け材の取付方法の一例を示した説明図である。鉄骨構造物100の外周部等に位置する鋼製梁10は、短手方向の一方側のみにデッキプレート12を設置すればよい。そのため、
図12に示すように、鋼製梁10の短手方向の一方側のみにデッキプレート12を設置する場合には、デッキ載置部3を鋼製梁10の上フランジ10aに溶接する工程において、デッキプレート12を設置する側のみ、デッキ載置部3と鋼製梁10の上フランジ10aとを溶接する。そして、当該溶接後に、ボルト42を取り外して接合面部4の接合状態を解除し、溶接した受け部材2から溶接をしていない受け部材2を取り外す。
【0038】
なお、
図13は、本発明の実施の形態に係るデッキ用受け材を鉄骨構造物に設置した状態であって、上面が平坦なデッキプレートを用いた場合の形態を示した斜視図である。本実施の形態に係るデッキ用受け材1は、
図1及び
図2に示した山頂面部と谷底面部とが交互に連なるデッキプレート12に限定されない。デッキ用受け材1は、例えば
図13に示すように、上面が平坦なフラットデッキプレート15を載置させて接合することもできるし、他の形状のデッキプレートであっても適用できる。
【0039】
以上のように、本実施の形態に係るデッキ用受け材1は、平面的に見てコ字状から成る一対の受け部材2を備えている。受け部材2は、鋼製梁10の長手方向に沿って延び、鋼製梁10の上フランジ10aに溶接されるデッキ載置部3と、デッキ載置部3の長手方向の両端から鋼製梁10の短手方向に向かって突き出す接合面部4と、を有している。一対の受け部材2は、スプライスプレート11の周囲を囲うように、コ字の開口側を対向させて配置され、各端部において互いに対向する接合面部4が接合される構成である。
【0040】
よって、本実施の形態に係るデッキ用受け材1は、鉄骨の建方後であっても、スプライスプレート11を設けた箇所に容易に取り付けることができる。しかも、デッキ用受け材1は、上フランジ10aの上面に接合面部4が載置されて、取り付け状態の安定性を確保できるから、デッキ載置部3と鋼製梁10の上フランジ10aとの溶接作業の作業性及び安全性を高めることができる。更に、デッキ用受け材1は、鋼製梁10の長手方向に沿って延びるデッキ載置部3が鋼製梁10の上フランジ10aに溶接される構成なので、溶接長を十分に確保することができ、接合強度を高めることができる。よって、デッキ用受け材1は、信頼性の高い合成スラブ101の形成に寄与できる。
【0041】
また、本実施の形態に係るデッキ用受け材1は、鋼製梁10の長手方向に沿って配置され、デッキ載置部3の下面から鋼製梁10の上フランジ10aの側面に向かって一端縁が突き出すように設けられた裏当て金5を更に備えていることで、溶接の品質を向上させることができる。また、デッキ用受け材1は、スプライスプレート11に取り付ける際に、裏当て金5の突き出した一端縁を上フランジ10aの側面に突き当てることで受け部材2を位置決めすることができる。
【0042】
受け部材2は、デッキ載置部3の中間で分割された2つの受け部品20から成り、2つの受け部品20が、分割した対向する端部でボルト接合又は溶接されて構成されている。つまり、デッキ用受け材1は、4つの受け部品20で構成されているので、現場への運搬効率を高めることができるし、部材を共通化して部材点数を減らすこともでき、コストの削減に寄与できる。
【0043】
また、2つの受け部品20は、対向する鉛直面部30の間隔を調整してボルト接合又は溶接することで、デッキ載置部3の長手方向の長さを調整することができる。また、受け部材2の製作及び施工の寸法誤差に追随させることもできる。よって、デッキ用受け材1は、スプライスプレート11の長手方向の大きさに合わせて、大きさの異なる複数種類の部材を用意する必要が少ない。また、長さを調整する構造がシンプルなので、製造コストを削減できるし、2つの受け部品20をボルト31で締結するだけの簡単な作業で接合できるので、設置作業の作業性を向上させることもできる。
【0044】
また、2つの受け部品20は、分割した対向する端部間に繋ぎ部材33又は34が設けられ、繋ぎ部材33又は34を介してボルト接合又は溶接される構成である。よって、デッキ用受け材1は、繋ぎ部材33又は34を設けることによって、2つの受け部品20の間に形成される隙間を埋めることができるので、溶接長を確保することができるし、繋ぎ部材33とデッキプレート12の谷底面部とを接合することができ、デッキプレート12を安定させて設置することができる。
【0045】
接合面部4は、鋼製梁10の短手方向に沿って長孔41aが形成されている。各端部において互いに対向する接合面部4は、重ね合わせた当接面の長さが調整され、長孔41aに共通のボルト42を通して接合される構成である。よって、本実施の形態のデッキ用受け材1は、スプライスプレート11の短手方向の大きさに合わせて、大きさの異なる複数種類の部材を用意する必要が少ない。また、受け部材2の製作及び施工の寸法誤差に追随させることもできる。更に、長さを調整する構造がシンプルなので、製造コストを削減できるし、2つの受け部品20をボルト42で締結するだけの簡単な作業で接合できるので、作業性を向上させることもできる。
【0046】
接合面部4には、複数のボルト孔41bが鋼製梁10の短手方向に沿って間隔をあけて形成されている。各端部において互いに対向する接合面部4は、重ね合わせた当接面の長さが調整され、複数のボルト孔41bのうち該当するボルト孔41bにボルト42を通して接合される構成である。よって、本実施の形態のデッキ用受け材1は、スプライスプレート11の短手方向の大きさに合わせて、大きさの異なる複数種類の部材を用意する必要が少ない。また、受け部材2の製作及び施工の寸法誤差に追随させることもできる。更に、長さを調整する構造がシンプルなので、製造コストを削減できるし、2つの受け部品20をボルト42で締結するだけの簡単な作業で接合できるので、作業性を向上させることもできる。
【0047】
以上に本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上述した実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば、鉄骨構造物100は、上記した構成に限定されず、他の形態でもよい。要するに、本発明は、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更及び応用のバリエーションの範囲を含むものである。
【符号の説明】
【0048】
1 デッキ用受け材、2 受け部材、3 デッキ載置部、4 接合面部、5 裏当て金、10 鋼製梁、10a 上フランジ、10b 下フランジ、10c ウェブ、11 スプライスプレート、11a 高力ボルト、12 デッキプレート、12a 小口塞ぎ、13 耐火補強筋、14 コンクリート、15 フラットデッキプレート、20 受け部品、30 鉛直面部、30a ボルト孔、31 ボルト、32 ナット、33、34 繋ぎ部材、33a ボルト孔、40 水平面、41 垂直面、41a 長孔、41b ボルト孔、42 ボルト、43 ナット、100 鉄骨構造物、101 合成スラブ。