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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230306BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20230306BHJP
   B05C 5/02 20060101ALI20230306BHJP
   B05C 9/10 20060101ALI20230306BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20230306BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20230306BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20230306BHJP
   B05D 1/30 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
H01L21/304 643C
B08B3/02 C
B05C5/02
B05C9/10
B05C11/10
B05D3/12 Z
B05D1/26 Z
B05D1/30
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019047970
(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公開番号】P2020150190
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】山岡 英人
(72)【発明者】
【氏名】伊吹 征也
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-266545(JP,A)
【文献】特開2015-192980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B08B 3/02
B05C 5/02
B05C 9/10
B05C 11/10
B05D 3/12
B05D 1/26
B05D 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に第1処理液が付着した基板を、前記表面を上向きにして水平方向に沿った搬送方向に搬送する搬送機構と、
前記搬送方向と直交する幅方向における前記基板の全域に亘り前記表面に気体を吹き付けて、前記第1処理液を前記表面から除去する気体吐出部と、
前記気体吐出部からの前記気体が吹き付けられる位置よりも前記搬送方向における下流側の前記表面に対し、第2処理液を供給する液体吐出部と
を備え、
前記液体吐出部は、
前記基板の前記幅方向における一端部から他端部までをカバーするスリット状に開口し、前記表面の方向へ前記第2処理液を吐出する吐出口と、
前記吐出口の開口部の全体と対向するように前記吐出口の下方に設けられ、前記搬送方向の上流側から下流側に向かって下るように傾斜する平滑な傾斜面と
を有し、前記吐出口から吐出された前記第2処理液を前記傾斜面に沿って流下させることで、前記搬送方向の下流側に向かう方向の成分を有する薄層状の液流を前記傾斜面上に形成し、該液流を前記傾斜面の前記搬送方向における下流側端部から前記表面に流下させ、
記下流側端部と前記表面との距離が、前記液流により前記表面に形成される液膜の厚さよりも大きく、
前記表面に対向する前記液体吐出部の下面が、前記表面に形成される液膜とは接触しない、基板処理装置。
【請求項2】
表面に第1処理液が付着した基板を、前記表面を上向きにして水平方向に沿った搬送方向に搬送する搬送機構と、
前記搬送方向と直交する幅方向における前記基板の全域に亘り前記表面に気体を吹き付けて、前記第1処理液を前記表面から除去する気体吐出部と、
前記気体吐出部からの前記気体が吹き付けられる位置よりも前記搬送方向における下流側の前記表面に対し、第2処理液を供給する液体吐出部と
を備え、
前記液体吐出部は、
前記基板の前記幅方向における一端部から他端部までをカバーするスリット状に開口し、前記表面の方向へ前記第2処理液を吐出する吐出口と、
前記吐出口の開口部の全体と対向するように前記吐出口の下方に設けられ、前記搬送方向の上流側から下流側に向かって下るように傾斜する平滑な傾斜面と
を有し、
前記液体吐出部の下面は、前記搬送方向の下流側に向かって下る勾配を有するとともに最も低い部分で前記傾斜面の下流側端部と接続しており、
前記下流側端部と前記表面との距離が、前記幅方向に直交する方向における前記吐出口の開口サイズよりも大きい、基板処理装置。
【請求項3】
表面に第1処理液が付着した基板を、前記表面を上向きにして水平方向に沿った搬送方向に搬送する搬送機構と、
搬送される前記基板に対して気体と液体とをそれぞれ吐出する複合ノズルと
を備え、
前記複合ノズルは、前記搬送方向と直交する幅方向における前記基板の全域に亘り前記表面に前記気体を吹き付けて、前記第1処理液を前記表面から除去する気体吐出部と、前記気体吐出部からの前記気体が吹き付けられる位置よりも前記搬送方向における下流側の前記表面に対し、前記液体として第2処理液を供給する液体吐出部とが一体化された構造を有し、
前記液体吐出部では、前記基板の前記幅方向における一端部から他端部までをカバーするスリット状に開口し前記表面の方向へ前記第2処理液を吐出する吐出口と、前記吐出口の開口部の全体と対向するように前記吐出口の下方に設けられ前記搬送方向の上流側から下流側に向かって下るように傾斜する平滑な傾斜面とが設けられ、
前記気体吐出部では、前記吐出口に対し前記搬送方向の上流側に隣接して前記複合ノズルに設けられ前記複合ノズルの下面まで連通する空隙が前記気体の流路となる、
基板処理装置。
【請求項4】
前記吐出口は、前記傾斜面の前記下流側端部よりも上方位置で開口する請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記表面に対向する前記液体吐出部の下面と前記表面との距離は、前記下面のうち前記傾斜面の前記下流側端部との接続部分において最小である請求項1、2、4のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記第2処理液が前記表面に着液する着液位置のうち前記搬送方向における最上流側端部が、前記傾斜面の前記下流側端部よりも前記搬送方向において下流側である請求項1、2、4、5のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記液体吐出部は、断面形状が前記吐出口の開口形状と同一で前記吐出口に連通し、前記吐出口に向けて前記第2処理液を流通させる流路を有し、当該流路における前記第2処理液の流通方向が鉛直下向きである請求項1ないし6のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記搬送方向において、前記気体吐出部と前記液体吐出部との間に前記気体を排出するための排気経路が設けられる請求項1ないし7のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項9】
表面に第1処理液が付着した基板を、前記表面を上向きにして水平方向に沿った搬送方向に搬送しながら、前記搬送方向と直交する幅方向における前記基板の全域に亘り前記表面に気体を吹き付けて、前記第1処理液を前記表面から除去する第1処理工程と、
前記気体が吹き付けられる位置よりも前記搬送方向における下流側の前記表面に対し、液体吐出部から第2処理液を供給する第2処理工程と
を備え、
前記第2処理工程では、
前記基板の前記幅方向における一端部から他端部までをカバーするスリット状に開口する吐出口から前記表面の方向へ前記第2処理液を吐出させ、
前記吐出口から吐出された前記第2処理液を、前記吐出口の開口部の全体と対向するように前記吐出口の下方に設けた、前記搬送方向の上流側から下流側に向かって下るように傾斜する平滑な傾斜面に沿って流下させることで、前記搬送方向の下流側に向かう方向の成分を有する薄層状の液流を前記傾斜面上に形成し、該液流を前記傾斜面の前記搬送方向における下流側端部から前記表面に流下させ、
記下流側端部と前記表面との距離を、前記液流により前記表面に形成される液膜の厚さよりも大きくすることで、前記表面に対向する前記液体吐出部の下面を前記表面に形成される液膜と接触させずに前記第2処理液を供給する、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表面に処理液が付着した基板を洗浄する基板処理装置および基板処理方法に関するものである。なお、上記基板には、半導体基板、フォトマスク用基板、液晶表示用基板、有機EL表示用基板、プラズマ表示用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や表示装置などの電子部品等の製造工程においては、基板表面に例えば加工のための処理液を作用させることで基板を加工し、その後に洗浄液で洗浄するという処理工程が常用されている。この場合の処理液としては、例えば現像液やエッチング液等が挙げられる。この場合、基板表面において均一かつ良好な処理結果を得るためには、処理液による処理において規定の処理時間が厳密に守られる必要がある。この目的のためには、処理液による処理が規定時間継続された後、直ちに、かつ確実に処理液が除去され処理が停止されることが求められる。
【0003】
例えば特許文献1に記載の技術では、上記した「処理液」に該当する現像液が表面に液盛りされた状態で水平搬送される基板に対し、まずカーテン状のエアを吹き付けることで現像液を除去し、さらにその下流側で基板表面にリンス液を下流方向に向けて吹き付け基板を液膜で覆うことで現像の進行が停止される。この技術においては、リンス液を吐出するノズルの下面と基板表面との間をリンス液により液密状態とすることにより、基板に吹き付けられたエアが下流側へ侵入しリンス液の液膜を乱すことが防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-192980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記技術において基板に形成される液膜中には、特に液膜のうち基板の搬送方向の上流側端部近傍において、処理液に溶け込んだあるいは浮遊していた不純物が不可避的に含まれる。上記従来技術では、ノズル下面と基板表面との間を液密状態としており、このような液中の不純物がノズルに付着または再析出することがあり得る。特にノズルの吐出口が付着物で部分的に塞がれてしまうと、この部分で洗浄液が基板に供給されず、結果として現像等の加工処理にムラが生じるおそれがある。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、表面が処理液により処理された基板を適切に洗浄し処理ムラの発生を抑制することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る基板処理装置は、表面に第1処理液が付着した基板を、前記表面を上向きにして水平方向に沿った搬送方向に搬送する搬送機構と、前記搬送方向と直交する幅方向における前記基板の全域に亘り前記表面に気体を吹き付けて、前記第1処理液を前記表面から除去する気体吐出部と、前記気体吐出部からの前記気体が吹き付けられる位置よりも前記搬送方向における下流側の前記表面に対し、第2処理液を供給する液体吐出部とを備えている。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る基板処理装置の一の態様では、前記液体吐出部は、前記基板の前記幅方向における一端部から他端部までをカバーするスリット状に開口し、前記表面の方向へ前記第2処理液を吐出する吐出口と、前記吐出口の開口部の全体と対向するように前記吐出口の下方に設けられ、前記搬送方向の上流側から下流側に向かって下るように傾斜する平滑な傾斜面とを有し、前記吐出口から吐出された前記第2処理液を前記傾斜面に沿って流下させることで、前記搬送方向の下流側に向かう方向の成分を有する薄層状の液流を前記傾斜面上に形成し、該液流を前記傾斜面の前記搬送方向における下流側端部から前記表面に流下させ、前記下流側端部と前記表面との距離が、前記液流により前記表面に形成される液膜の厚さよりも大きく、前記表面に対向する前記液体吐出部の下面が、前記表面に形成される液膜とは接触しない。
【0009】
また、他の一の態様では、前記液体吐出部は、前記基板の前記幅方向における一端部から他端部までをカバーするスリット状に開口し、前記表面の方向へ前記第2処理液を吐出する吐出口と、前記吐出口の開口部の全体と対向するように前記吐出口の下方に設けられ、前記搬送方向の上流側から下流側に向かって下るように傾斜する平滑な傾斜面とを有し、前記液体吐出部の下面は、前記搬送方向の下流側に向かって下る勾配を有するとともに最も低い部分で前記傾斜面の下流側端部と接続しており、記下流側端部と前記表面との距離が、前記幅方向に直交する方向における前記吐出口の開口サイズよりも大きい。
【0010】
また、この発明に係る基板処理方法は、上記目的を達成するため、表面に第1処理液が付着した基板を、前記表面を上向きにして水平方向に沿った搬送方向に搬送しながら、前記搬送方向と直交する幅方向における前記基板の全域に亘り前記表面に気体を吹き付けて、前記第1処理液を前記表面から除去する第1処理工程と、前記気体が吹き付けられる位置よりも前記搬送方向における下流側の前記表面に対し、液体吐出部から第2処理液を供給する第2処理工程とを備えている。
【0011】
前記第2処理工程では、前記基板の前記幅方向における一端部から他端部までをカバーするスリット状に開口する吐出口から前記表面の方向へ前記第2処理液を吐出させ、前記吐出口から吐出された前記第2処理液を、前記吐出口の開口部の全体と対向するように前記吐出口の下方に設けた、前記搬送方向の上流側から下流側に向かって下るように傾斜する平滑な傾斜面に沿って流下させることで、前記搬送方向の下流側に向かう方向の成分を有する薄層状の液流を前記傾斜面上に形成し、該液流を前記傾斜面の前記搬送方向における下流側端部から前記表面に流下させる。さらに、前記下流側端部と前記表面との距離を、前記液流により前記表面に形成される液膜の厚さよりも大きくしておくことで、前記表面に対向する前記液体吐出部の下面を前記表面に形成される液膜と接触させずに前記第2処理液を供給する。
【0012】
このように構成された発明では、吐出口から吐出される第2処理液は、気体により第1処理液を除去された後の基板に対し直接供給されるのではなく、いったん傾斜面に吐出され傾斜面を流下した上で基板に供給される。こうして供給される第2処理液による液膜が基板表面に形成されて基板が洗浄される。幅広いスリット状の吐出口から吐出された第2処理液が吐出口と対向する幅広の傾斜面を流下することで、幅方向において均一な薄層状の液流を基板表面に供給することができる。
【0013】
なお、以下の説明においては、説明が煩雑になるのを回避するため、「基板の搬送方向における上流、上流側、上流方向」をそれぞれ単に「上流、上流側、上流方向」と略称し、また「基板の搬送方向における下流、下流側、下流方向」をそれぞれ単に「下流、下流側、下流方向」と略称することがある。
【0014】
本発明では、傾斜面のうち第2処理液が基板に供給される直前に通過する最下流側の端部が、基板表面に供給される液流によって基板表面に形成される液膜の上面よりも上方となるように、傾斜面の下流側端部と基板表面との距離が設定されている。このように傾斜面の下流側端部が基板表面から離されていること、および、傾斜面から基板表面に流下する液流に基板の搬送方向の下流側に向かう方向の成分が与えられていることから、供給される第2処理液による液膜は、傾斜面の下流側端部よりも下流側、かつそれよりも下方で基板表面に形成されることになる。
【0015】
そのため、第1処理液による基板処理後の残滓が液体吐出部の周辺に付着することが回避される。また仮に第1処理液(または第1処理液と第2処理液との混合物)の飛沫が傾斜面に飛来したとしても、流下する液流に取り込まれて排出される。さらに、仮に吐出口への付着物によって吐出口から吐出される第2処理液の幅方向における均一性が低下したとしても、傾斜面を流下する間に解消される。したがって、付着物に起因する基板表面への第2処理液の供給をムラなく均一なものとすることができ、基板の処理ムラを抑制することができる。
【0016】
また、基板表面に供給される際の液流の方向は傾斜面の傾斜によって規定されるため、吐出口に至るまでの第2処理液の流路については比較的自由に設定することができる。したがって流路自体を上流側から下流側へ向かうものとする必要はなく、流路を含む液体吐出部を小型に構成することができる。これにより、気体吐出部による気体の吹き付け位置と第2処理液の供給位置との距離を小さくすることが可能であり、気体吹き付けによる第1処理液除去後の基板表面に対し速やかに第2処理液を供給することが可能となる。このことも処理ムラの発生を抑制する効果に資する。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、表面が第1処理液により処理された基板に対し、気体の吹き付けによって第1処理液を除去し、さらに均一に供給される第2処理液により洗浄を行うので、基板を適切に洗浄し、処理ムラの発生を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態の基板処理装置の概略構成を示す側面断面図である。
図2】基板処理装置の動作を示すフローチャートである。
図3】現像部とリンス部との境界部分を拡大して示す概略側面図である。
図4】リンス液ノズルの外形および内部構造を示す分解斜視図である。
図5】リンス液ノズルと基板との寸法関係を示す図である。
図6】リンス液ノズルの内部構造を示す部分断面図である。
図7】リンス液ノズル下面の位置および形状の他の例を示す図である。
図8】リンス液ノズルの変形例を示す図である。
図9】リンス液ノズルの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る基板処理装置について説明する。ここで説明する基板処理装置1は、例えば液晶表示装置等の表示装置における表示用画面パネルを製造する基板処理システムの一部として機能するものである。このような基板処理システムの全体構成は、前述の特許文献1(特開2015-192980号公報)に開示されている。基板処理システムは、画面パネルとなる例えば角型のガラス基板にレジスト膜を形成し、それを露光し現像することにより、基板に所定の回路パターンを形成するという一連の製造プロセスを実行するものである。本実施形態の基板処理装置1は、露光後の基板を現像し洗浄する処理に適用可能である。
【0020】
また、本実施形態の基板処理装置1は、後述するリンス液ノズルの構造および動作に主たる特徴を有するが、それ以外の基本的な構成および動作は、特許文献1(例えば図2)に記載の基板処理装置と共通している。このような共通する構成については特許文献1の記載を参照することができるため、ここでは簡単な説明に留めることとする。
【0021】
図1は本実施形態の基板処理装置の概略構成を示す側面断面図である。なお、図1および以降の各図にはそれらの方向関係を明確にするため、Z方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系を適宜付している。また、理解を容易にする目的で、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0022】
この基板処理装置1は、表面にレジスト膜が形成され、それが所定のパターン形状に応じて露光されたガラス基板(以下、単に「基板」という)Sを受け入れて現像、洗浄および乾燥を行うための装置である。この目的のために、基板処理装置1には、現像部20、リンス部30および乾燥部300が設けられている。現像部20は、露光された基板Sを現像液L1に浸漬し、不要なレジスト膜を除去する。リンス部30は、現像処理された基板Sをリンス液L2でリンス処理することで現像を停止させ基板Sを洗浄する。乾燥部300は、基板S上のリンス液を除去し基板Sを乾燥させる。
【0023】
現像部20、リンス部30および乾燥部300は、X方向に沿ってこの順番に配列されている。基板Sは、(+X)方向に搬送されることにより現像部20、リンス部30および乾燥部300をこの順番に通過し処理を受ける。以下の説明では、特に断りのない限り、基板Sの搬送方向の上流側、すなわち(-X)方向側を単に「上流側」と称し、基板Sの搬送方向の下流側、すなわち(+X)方向側を単に「下流側」と称する。また、搬送方向であるX方向に直交する、つまり図1において紙面に垂直な方向であるY方向を、基板Sの「幅方向」と称する。
【0024】
現像部20、リンス部30および乾燥部300は筐体40に収容されている。筐体40は、現像部20とリンス部30とを区画する仕切板41、および、リンス部30と乾燥部300とを区画する仕切板42を備えている。仕切板41には基板Sを通過させるための通路口411が、また仕切板42には基板Sを通過させるための通路口421が、それぞれ設けられている。また、筐体40の上流側側面には前工程(例えば露光工程)を実行する装置からの基板Sを受け入れるための搬入口401が設けられる一方、下流側側面には後工程(例えばポストベーク工程)を実行する装置に基板Sを払い出すための搬出口402が設けられている。
【0025】
基板処理装置1では、基板Sは、X方向に沿って配列され、図示しない駆動機構により回転駆動される複数の搬送ローラ50により搬送される。より具体的には、前工程から払い出される基板Sは搬入口401を介して基板処理装置1の現像部20に搬入される。そして、搬送ローラ50の作動により、基板Sは現像部20からリンス部30および乾燥部300に順次送り込まれ、最終的に搬出口402から後工程へ払い出される。
【0026】
現像部20には、基板Sの上面に現像液L1を供給する現像液ノズル22と、基板Sの上面にエアを吹き付けるエアノズル24とが設けられている。現像液ノズル22は、現像部20の上流側端部近く、つまり筐体40の内側であって搬入口401の近傍に設けられている。一方、エアノズル24は、現像部20の下流側端部近く、具体的には仕切板411の上流側の側面に取り付けられている。
【0027】
現像液ノズル22の下面には現像液L1を吐出する吐出口が、またエアノズル24の下面にはエアを吐出する吐出口がそれぞれ設けられている。これらの吐出口は、それぞれ幅方向に細長いスリット状の開口を有しており、該開口は基板Sの幅方向における両端部間の全体をカバーするように設けられる。
【0028】
したがって、現像液ノズル22から吐出される現像液L1は、基板Sの幅方向(Y方向)の全体に亘り略均一に吐出される。基板Sが搬送方向(X方向)に搬送されることで基板Sへの現像液供給位置がX方向に順次変化し、最終的には基板Sの全体が、現像液L1により液盛りされてパドル状の液膜で覆われた状態となる。
【0029】
エアノズル24は、下方を搬送される基板Sに対して、基板Sの幅よりも十分長いカーテン状(薄膜状または帯状)のエアを上方から吹き付ける。これによって、基板Sの上面に盛られた現像液L1がより下流へ搬送されることが防止される。すなわち、エアノズル24は、基板Sに沿った現像液L1の広がりをカーテン状エアによって遮断するエアナイフ装置としての機能を有している。現像部20の下部には現像液回収部26が設けられており、基板Sの縁から溢れて下方へ落下する現像液L1は現像液回収部26により回収される。回収された現像液については、現像処理により溶解されて基板から除去されたレジスト膜の溶解生成物や異物を除去したり濃度調整をしたりする等の再生処理を必要に応じ施して現像処理に再利用することが可能である。あるいは、廃液として処理されてもよい。
【0030】
リンス部30には、搬送される基板Sの上面にリンス液L2を供給するリンス液ノズル32が設けられている。リンス液ノズル32は、筐体40における仕切板41の下流側近傍に設けられている。したがって、エアナイフにより現像液L1が除去された直後の基板Sに対しリンス液が供給されることになる。リンス液ノズル32の構造については後に詳しく説明する。また、リンス液ノズル32よりも下流側には、基板Sの上方からリンス液を供給する複数のシャワーノズル34が設けられている。これにより基板Sの上面はリンス液L2の液膜により覆われ洗浄される。
【0031】
乾燥部300には、基板Sの上面および下面にカーテン状のエアを供給することによって基板Sに盛られたリンス液L2を除去し、基板Sを乾燥させる一対のエアノズル35a,35bが設けられている。一対のエアノズル35a,35bは、乾燥部300において搬出口402の近傍に設けられている。リンス部30および乾燥部300の下部にはリンス液回収部36が設けられており、基板Sから下方へ落下するリンス液L2はリンス液回収部36により回収される。
【0032】
このように、現像液L1が扱われる現像部20と、リンス液L2が扱われるリンス部30および乾燥部300とが仕切板411,421によってそれぞれ区画され、またそれぞれで排出される現像液L1とリンス液L2とが個別に回収されることにより、現像液の再利用など、回収された液体の有効活用や廃液処理のコスト抑制が可能となる。
【0033】
図2は基板処理装置の動作を示すフローチャートである。上記したように、基板処理装置1は、前工程で露光処理されて搬入される基板Sを水平方向に搬送し(ステップS101)、該基板Sに対し現像液L1の供給による現像処理(ステップS102)、エアナイフによる現像液の除去(ステップS103)、リンス液L2の液膜によるリンス処理(ステップS104)、およびリンス液による液膜の除去・乾燥(ステップS105)という一連の処理を実行する。
【0034】
上記のように構成された基板処理装置1およびその動作においては、基板Sの全体で均一かつ良好な現像結果を得るためには、現像液に触れる時間(以下、「現像時間」という)が基板Sの全体で等しくなる必要がある。基板Sの各部が最初に現像液L1に触れ現像が開始されるのは現像液ノズル22の直下位置を通過する時である。一方、現像液が除去され現像が停止されるのは、原則的にはエアナイフとして機能するエアノズル24の直下位置を通過する時である。したがって、現像液ノズル22とエアノズル24との距離が固定され、基板Sの搬送速度が一定であれば、基板Sの現像時間は位置によらず一定となるはずである。
【0035】
ただし、エアナイフによる現像液の除去位置を通過した後にも基板Sの上面に現像液が残留付着していることがある。このような局所的な現像液の残存により現像が進行するため、現像時間に位置による差が生じ、現像ムラ、つまり現像結果のばらつきが生じるおそれがある。現像液除去後の基板Sにリンス液L2が供給されることで現像は確実に停止されるが、リンス液供給のタイミングが幅方向においてばらつくと、現像停止のタイミングが不均一となり、やはり現像ムラの原因となる。この問題を解消するための本実施形態のリンス液ノズル32の構造およびその機能について、以下に詳しく説明する。
【0036】
図3は現像部とリンス部との境界部分を拡大して示す概略側面図である。また、図4ないし図6はリンス液ノズルの構造をより詳細に示す図である。より具体的には、図4はリンス液ノズル32の外形および内部構造を示す分解斜視図であり、図5はリンス液ノズル32と基板Sとの寸法関係を示す図である。また、図6(a)はリンス液ノズル32の内部構造を示す部分断面図であり、図6(b)はリンス液ノズル32から吐出されるリンス液の状態を示す図である。
【0037】
図3に示すように、エアノズル24とリンス液ノズル32とは仕切板411を挟んで近接配置されている。エアノズル24は仕切板411の上流側側面に取り付けられている。エアノズル24には圧縮エア供給部29から圧縮エアが供給され、また下端には吐出口241が設けられている。したがって、エアノズル24は、上面に現像液L1の液膜が形成され搬送ローラ50の回転により(+X)方向に搬送される基板Sの上面に向けて、その上方からカーテン状のエアAを噴出する。これにより現像液L1の液膜がさらに下流側へ搬送されることは阻止され、エア吹き付け位置より下流側の基板Sの上面は現像液が除去された状態となっている。基板Sから下方へ落下する現像液L1は、現像液回収部26により回収される。
【0038】
一方、リンス液ノズル32は、図示しない支持部材により、仕切板411の下流側側面から所定の距離を隔てて支持されている。このため、仕切板411の下流側側面とリンス液ノズル32の上流側側面との間には空隙Gが設けられている。リンス液ノズル32にはリンス液供給部39からリンス液L2として例えば純水、脱イオン水(DIW)等の液体が供給される。次に詳しく説明する構造により、リンス液ノズル32は、リンス液L2を下流方向かつ下向きの方向成分を有する液流として基板Sに供給する機能を有する。これにより基板Sの上面にリンス液L2の液膜が形成される。基板Sから下方へ落下するリンス液L2は、リンス液回収部36により回収される。
【0039】
エアノズル24から吹き出されるエアによってリンス液L2の液流が乱されるのを防止するために、仕切板411とリンス液ノズル32との間に空隙Gが設けられている。すなわち、この空隙Gがなければ吹き出されたエアはリンス液ノズル32と基板Sとの隙間に流れ込み、リンス液ノズル32から基板Sに供給されるリンス液L2の流れを乱す。空隙Gを設けることにより、エアはこの空隙Gを通って上方へ抜けるため、リンス液L2の流れが乱されることはない。つまり、空隙Gはエアノズル24から吹き出されるエアをリンス液ノズル32の周辺から排出する機能を有する。
【0040】
図4および図6(a)に示すように、リンス液ノズル32は、第1部材321および第2部材322がスペーサ323を介してX方向に積層された構造を有している。第1部材321および第2部材322は、リンス液供給部39から供給されるリンス液の圧力に耐える材料、例えば適度な硬度を有する樹脂または金属製とすることができる。
【0041】
第1部材321は、X方向から見たときにY方向を長手方向とする略長方形の外形を有する平板状の平坦部321aと、平坦部321aの下端に接続されて(+X)方向および(-Z)方向に斜め下向きに延びる傾斜部321bとを有する。傾斜部321bの断面形状は楔型であり、その厚みは先端に近いほど薄くなっている。傾斜部321bの上面は滑らかな平面状の傾斜面321cとなっており、該傾斜面の法線は(+X)方向および(+Z)方向の成分を有している。
【0042】
また、第2部材322は、X方向から見た平面サイズが第1部材321の平坦部321aと略同じである略直方体のブロックである。その(-X)側側面と(+X)側側面との間を貫通して、リンス液供給部39から供給されるリンス液を受け入れるための貫通孔322aが設けられている。図5に破線で示すように、貫通孔322aはY方向に位置を異ならせて複数設けられてもよい。
【0043】
スペーサ323は、第1部材321の平坦部321aをX方向から見たときの長方形のうち下辺を除く3辺に沿った逆U字型の部材である。第1部材321と第2部材322とがスペーサ323を介して積層されることにより、第1部材321の(+X)側側面と第2部材322の(-X)側側面とは第2部材322とはスペーサ323の厚みに相当する間隔を隔てて対向することになる。これにより、両者の間に一定幅のギャップ空間GSが形成される。スペーサ323には、第1部材321と第2部材322との間隔を微小かつ一定に保ちつつ隙間からの液漏れを防止することのできる材料、例えば適度な弾性を有する樹脂材料を用いることができる。以下の通り、ギャップ空間GSはリンス液の流路の一部として機能する。
【0044】
ギャップ空間GSの下端はスペーサ323により塞がれず外部空間に連通しており、また貫通孔322aはギャップ空間GSに連通する位置に設けられている。したがって、リンス液供給部39から貫通孔322aに供給されるリンス液はギャップ空間GSを満たし、最終的にギャップ空間GSの下端から外部空間へ吐出される。この意味において、ギャップ空間GSの下端において第1部材321、第2部材322およびスペーサ323により形成される開口部が、リンス液ノズル32におけるリンス液の吐出口324を構成する。したがって、幅方向と直交する方向(X方向)における吐出口324の開口サイズは、ギャップ空間GSのギャップ間隔(図6(b)に符号Dgで示す)と同じである。そして、吐出口324の直下には傾斜部321bの上面である傾斜面321cが位置しており、該傾斜面321cは吐出口324と対向する位置に設けられているといえる。
【0045】
吐出口324から下向きに吐出される液体は、傾斜部321bの傾斜面321cに当たり、傾斜面に沿って流下する薄層状の液流を形成する。該液流は、最終的に傾斜面321cの下端から下方へ流れ落ちる。図5に示すように、X方向に見たとき、吐出口324の開口幅Ydは基板Sの幅Ysよりも大きく、かつ、吐出口324はY方向における基板Sの両端部を含む全体をカバーする開口を有している。また、傾斜面321cの幅Ycは吐出口324の開口幅Ydよりも大きく、かつ、傾斜面321cはY方向における吐出口324の両端部を含む全体をカバーするように設けられている。したがって、吐出口324から吐出され傾斜面321cを流れ落ちる液体は、基板Sの幅方向(Y方向)における全域に亘って一様に供給される。
【0046】
このように構成されたリンス液ノズル32に対し、リンス液供給部39からリンス液L2が圧送される。これにより、図6(b)に示すように、吐出口324から吐出されるリンス液L2は、傾斜面321cに沿って流下しその下端部から基板Sの上面Saに供給される。液の供給量、加圧力、ギャップ間隔Dg等を適宜に設定すれば、傾斜面321cから落下するリンス液L2の液流は、下流側へ向けて勢いよく噴射される、つまり(+X)方向の速度成分を比較的多く含むものとすることができる。例えば、傾斜面321cから流れ落ちるリンス液L2の流速が、基板Sの搬送速度よりも大きくなるようにすることができる。
【0047】
このようにすると、傾斜面321cの下流側端部よりも下流側でリンス液L2を基板Sの上面Saに着液させることができる。つまり、X方向における着液位置P2を、傾斜面321cの下流側端部の位置P1よりも(+X)側の位置とすることができる。これにより、リンス液ノズル32の下面320にリンス液L2が付着することが防止される。ノズル下面320にリンス液が付着すると、ノズル下面320から基板Sへのリンス液L2の落下や、ノズル下面320と基板上面Saとの間が局所的にリンス液L2で液密状態となること等により、基板Sが最初にリンス液L2に触れる位置が、本来の着液位置P2よりも上流側にずれることになる。このようなずれが局所的に生じることで現像ムラが発生してしまう。リンス液L2がノズルの最下流側端部(すなわち傾斜面321cの先端321d)よりも下流側で基板Sに着液するようにすることで、リンス液がノズル下面320に回り込んで付着するのを抑制することが可能である。
【0048】
また、基板Sに供給されるリンス液L2は下流側へ向かう速度成分を有した状態で基板Sに着液するため、着液位置から上流側に向けて逆流するおそれは極めて低くなっている。したがって、基板Sが最初にリンス液L2に接触する位置を、幅方向(Y方向)の全域において一定とすることが容易である。また、エアノズル24から吹き出されてリンス液ノズル32と基板Sとの隙間に流れ込むエアの影響も抑えることができる。
【0049】
リンス液供給部39から一定量のリンス液L2が継続的に供給されているとき、その流路であるギャップ空間GSの間隔Dg(吐出口324の開口サイズもこれと等しい)と、傾斜面321cを流下する液流の厚さTcと、基板Sへの着液直後に基板Sに形成される液膜の厚さTpとは略同一である。これらの寸法に対し、傾斜面321cの下端と基板上面Saとの間隔Dsの方が大きくなるように、つまり傾斜面321cの下端が基板上の液膜の上面よりも上方に位置するように、リンス液ノズル32のZ方向における配設位置が設定されている。したがって吐出口324の鉛直方向位置も液膜上面の高さより上方にある。また、リンス液ノズル32の下面のうち基板Sの上面Saに最も近い位置にあるのは、ノズル下面320と傾斜面321cとの接続部分である傾斜部321bの最下流側端部321dである。これらの目的も、ノズル下面320へのリンス液L2の付着を防止することである。すなわち、ノズル下面320のうち最も下流側の端部321dが最も低い位置にあり、この位置からリンス液が放出されることで、ノズル下面320の他の位置への液の回り込みを抑制することができる。
【0050】
図7はリンス液ノズル下面の位置および形状の他の例を示す図である。図7(a)に示す比較例では、リンス液ノズル32の下面320と基板上面Saとの距離が、基板S上の液膜の厚さよりも小さい。このような場合、傾斜部321bの先端部分が実質的に液膜中に含まれてしまうことになるまた、図7(b)に示す比較例のリンス液ノズルN1では、下面が基板Sの上面と平行である。また、図7(c)に示す比較例のリンス液ノズルN2では、ノズル底面に、傾斜部の最下流側端部よりも基板Sに近い部分がある。これらの構成では、それぞれ点線で囲んだ部分でリンス液の滞留が生じやすくなり、これにより現像ムラが発生しやすい。図7(b)および(c)に示す例では、特にノズル下面と基板上面Saとの距離が小さいときに問題が生じやすい。
【0051】
図6(b)に示すように、本実施形態のリンス液ノズル32では、ノズル下面320が下流側に向かって低くなっており、そのうち傾斜部321bの最下流側端部321dが最も低い、つまり基板上面Saに近い位置にある。しかも、該最下流側端部と基板上面Saとの間隔Dsは基板S上の液膜の厚さTpよりも大きい。さらに、リンス液ノズル32から基板Sに供給されるリンス液L2の液流は、(+X)方向への比較的大きい速度成分を有している。これらの構成により、ノズル下面320と基板上面Saとの間にリンス液が滞留することは効果的に抑制されている。そのため、リンス液の滞留に起因する現像ムラの発生が抑制される。
【0052】
また、基板Sに供給されたリンス液には、基板Sに残留する現像液に含まれていた、基板Sから剥落したまたは液中に溶解したレジスト膜の成分が混入している。吐出口の周囲やノズル下面を液密状態にする構成では、このような成分が再析出して吐出口やノズル下面に付着し、液の流れを妨げることで現像ムラが生じることがあり得る。
【0053】
本実施形態では、ノズル下面320をリンス液に触れさせていないので、ノズル下面320にこのような付着物が生じることはなく、また仮に付着したとしてもリンス処理への影響はない。また、傾斜面321cには新しいリンス液L2が常時供給されている。このため、レジスト膜の成分を含む液の飛沫が飛来したとしても液流に取り込まれて下流側へ流されるので、傾斜面321cやさらに上流の吐出口324に付着することは防止される。また、仮に吐出口324に付着物が生じ吐出量が不均一になったとしても、傾斜面321cを流れ下る間に液流が均一化されるため、このような原因による現像ムラの発生は防止される。
【0054】
また、この実施形態のリンス液ノズル32では、下向きに開口する吐出口324の下方に傾斜面321cを対向させている。吐出口324から下向きに吐出されたリンス液L2は、傾斜面321cに沿って流下することで下流側へ向かう速度成分を付与される。このため、吐出口324よりも上流側にリンス液の流路を設ける必要はない。このことは、吐出口324よりも上流側におけるリンス液ノズル32の形状が流路に制約されず、高い自由度を有することを意味する。例えば、基板Sにおけるエアの供給位置とリンス液の供給位置との間隔を適宜に設定して、現像液が除去されてからリンス液が供給されるまでの時間を調整することが可能である。
【0055】
以上説明したように、上記実施形態においては、現像液L1およびリンス液L2がそれぞれ本発明の「第1処理液」および「第2処理液」に相当している。また、上記実施形態では、搬送ローラ50、エアノズル24およびリンス液ノズル32がそれぞれ本発明の「搬送機構」、「気体吐出部」および「液体吐出部」として機能している。また、上記実施形態では、リンス液ノズル32のギャップ空間GSが本発明の「流路」に相当し、リンス液ノズル32と仕切板411との空隙Gが本発明の「排気経路」に相当している。また、図2のステップS103、S104が、それぞれ本発明の「第1処理工程」、「第2の処理工程」に相当している。
【0056】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態のリンス液ノズル32に代えて、以下のような構造のノズルを適用することも可能である。
【0057】
図8および図9はリンス液ノズルのいくつかの変形例を示す図である。図8(a)に示す変形例のリンス液ノズル61では、第1部材611は平板状部材の下端を下流側へ折り曲げることにより、平坦部611aと傾斜部611bとを設けたものである。第2部材612およびスペーサ613については、上記実施形態のものと同一とすることができる。このような構造のリンス液ノズル61については、上記実施形態のリンス液ノズル32に代えて基板処理装置に搭載することができる。
【0058】
また、図8(b)~図8(d)に示す変形例は、リンス液ノズルにエアノズルの機能も兼備させた複合ノズルとしたものである。すなわち、図8(b)に示す変形例の複合ノズル62では、第1部材621と第2部材622とがスペーサ624を介して対向配置されている点は上記実施形態と同じである。一方で、第2部材622とは反対側の第1部材621の側面(基板搬送方向においては上流側)に、スペーサ625を介して第3部材623が取り付けられている。
【0059】
このような構成では、第1部材621と第3部材623との間の空隙にエアを送り込み、空隙の下端の開口部626からエアを吹き出させることにより、リンス液ノズルがエアノズルとしての機能も有することになる。したがって、上記実施形態において設けられていたエアノズル24およびリンス液ノズル32の代替品として複合ノズル62を適用可能である。この場合、複合ノズル62を仕切板411に取り付ければよいが、基板から落下する現像液とリンス液とを分別して回収することができるようにするための配慮がなされることが望ましい。以下の各変形例においても同様である。
【0060】
図8(c)に示す変形例の複合ノズル63は、上記した複合ノズル62を一部変更したものである。すなわち、スペーサ634を介して対向配置された第1部材631と第2部材632とがリンス液の流路を形成する点は上記変形例の複合ノズル62と同じである。一方、スペーサ635を介して対向する第1部材631と第3部材633とで構成されるエアの流路は、その下端において上流側(図において左側)に曲げられている。
【0061】
このような構成では、吹き出されるエアが上流方向への速度成分を有することとなる。そのため、基板に付着する現像液を上流側へ押し戻すことにより、現像液とリンス液との混合をより確実に防止することが可能となる。
【0062】
図8(d)に示す変形例の複合ノズル64は、スペーサ645を介して対向する第1部材641および第2部材642を含んで構成されるリンス液ノズル64aと、スペーサ646を介して対向する第3部材643および第4部材644を含んで構成されるエアノズル64bとが、排気経路647となる一定の空隙を隔てて対向するように、図示しない適宜の支持部材で支持された構造を有する。排気経路647の上端部分については、筐体40内の空間に開放されていてもよく、また適宜の排気機構に接続されてもよい。
【0063】
このような構成によれば、エアノズル64aから吹き出されるエアが排気経路647を通って排気されるため、エアがリンス液ノズル64aの下面と基板との間に回り込んでリンス液の液流を乱すことが防止される。また、エアによる液流の乱れを生じさせることなくエアノズルとリンス液ノズルとを近接して配置することができるので、現像液が除去されてからリンス液が供給されるまでの基板表面が露出した時間を短くすることができる。
【0064】
また、図9に示す変形例のリンス液ノズル65は、第1部材651、第2部材652および第3部材653の3つのブロックを組み合わせた構造を有している。第1部材651と第2部材652とはギャップ空間GSを挟んで対向しており、第1部材651の下部に第3部材653が取り付けられている。第1部材651および第3部材653は、これらが一体として上記実施形態の第1部材321に相当するものであり、主に製作のしやすさの観点から2ピースに分割されている。
【0065】
第3部材653は、その上面655が「傾斜面」として機能するものである。上面655の下流側先端部は、上記実施形態では鋭い断面形状となっていた先端部を少し切り落とした形状となっている。したがって、上面655の下流側端部655aと、下面650の下流側端部650aとが一致していない。すなわち、下面650の下流側端部650aは、下流側端部655aよりも下方かつ上流側に位置している。このような形状は、上記と同様の製作しやすさと、鋭い先端部よりも他の部材との接触等による変形、欠損のおそれが少ないという実用上の理由とに基づくものである。
【0066】
この場合においても、上面655の下流側端部655aの高さを基板上面Saに形成される液膜の厚さよりも大きくしておくことで、ノズル下部への液体の回り込みを防止することができる。この効果をより高めるには、下面650の下流側端部650aが液膜の厚さより大きいこと、またノズル下面650において最も低い位置にあるのが下面650の下流側端部650aであること等の要件が満たされていることがより好ましい。
【0067】
また、上記実施形態は、本発明の「第1処理液」としての現像液および「第2処理液」としてのリンス液を用いて基板を処理する基板処理装置であるが、第1処理液および第2処理液の種類についてはこれに限定されるものではなく、種々の液体を用いる基板処理に、本発明を適用することが可能である。
【0068】
以上、具体的な実施形態を例示して説明してきたように、本発明に係る基板処理装置において、吐出口は、例えば傾斜面の下流側端部よりも上方位置で開口するように構成されてよい。このような構成によれば、第2処理液に含まれる不要な成分が吐出口の周辺に付着して詰まらせたり、第2処理液の流れを乱したりするという問題が解消される。
【0069】
また例えば、傾斜面の下流側端部と接続し表面に対向する液体吐出部の下面と基板表面との距離が、搬送方向の上流側ほど大きくなるように構成されてよい。言い換えれば、基板表面に対向する液体吐出部の下面と基板表面との距離は、液体吐出部の下面のうち傾斜面の下流側端部との接続部分において最小であるように構成されてよい。このような構成によれば、液体吐出部の下面と基板表面との間に第2処理液が滞留することに起因する処理ムラを抑制することができる。
【0070】
また例えば、液流が基板表面に着液する着液位置のうち搬送方向における最上流側端部が、傾斜面の下流側端部よりも搬送方向において下流側であるように構成されてよい。このような構成によれば、基板に付着することで汚染源を含み得る第2処理液が液体吐出部に付着することが回避される。
【0071】
また例えば、基板表面に対向する液体吐出部の下面が、基板表面に形成される液膜とは接触しないように構成されてよい。このような構成によっても、基板に付着することで汚染源を含み得る第2処理液が液体吐出部に付着することが回避される。
【0072】
また例えば、液体吐出部は、断面形状が吐出口の開口形状と同一で吐出口に連通し、吐出口に向けて第2処理液を流通させる流路を有し、流路における第2処理液の流通方向が鉛直下向きである構成とされてよい。このような構成によれば、吐出口よりも上流側における液体吐出部の形状についての自由度が高く、例えば気体吐出部と液体吐出部との間隔を適宜に調整することが可能となる。
【0073】
また例えば、搬送方向において、気体吐出部と液体吐出部との間に気体を排出するための排気経路が設けられてよい。このような構成によれば、気体吐出部から吹き出された気体が液体吐出部と基板表面との間に吹き込むことにより液流が乱されるのを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、処理液による処理後の基板から処理液を除去する各種の基板処理に適用可能である。例えばレジスト膜の現像処理、エッチング処理、剥離処理などに、本発明を好適に適用可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 基板処理装置
20 現像部
24 エアノズル(気体吐出部)
30 リンス部
32 リンス液ノズル(液体吐出部)
50 搬送ローラ(搬送機構)
321 第1部材
321c 傾斜面
322 第2部材
GS ギャップ空間(流路)
S 基板
Sa 基板上面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9