(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】鉄道車両構体
(51)【国際特許分類】
B61D 17/08 20060101AFI20230306BHJP
B61D 17/00 20060101ALI20230306BHJP
B61F 1/14 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
B61D17/08
B61D17/00 C
B61F1/14
(21)【出願番号】P 2019066126
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】712004783
【氏名又は名称】株式会社総合車両製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】麻生 和夫
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/033372(WO,A1)
【文献】特開2007-168673(JP,A)
【文献】特開2015-020729(JP,A)
【文献】特開2020-164009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 17/00 - 49/00
B61F 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア用開口部が設けられた外板と、
前記外板の内側に配置された側梁と、
前記ドア用開口部に対応する位置で前記外板と前記側梁とに挟まれたドアフレームと、を備え、
前記ドアフレームは、
厚肉の本体部と、前記本体部よりも薄い薄肉部と、を有し、
前記ドアフレームは、前記薄肉部において前記外板及び前記側梁に溶接されている、鉄道車両構体。
【請求項2】
前記本体部と前記薄肉部との間には、
少なくとも湾曲面が設けられている、請求項1に記載の鉄道車両構体。
【請求項3】
前記本体部と前記薄肉部との間には、
少なくとも傾斜面が設けられており、
前記傾斜面と前記薄肉部の表面とのなす角は、鈍角である、請求項1又は2に記載の鉄道車両構体。
【請求項4】
前記薄肉部は、前記側梁に沿って延在している、請求項1~3のいずれか一項に記載の鉄道車両構体。
【請求項5】
前記ドア用開口部に対応する位置を除く位置において、前記外板と前記側梁とは、別の強度部材を介して溶接されている、請求項1~4のいずれか一項記載の鉄道車両構体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両構体に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両構体として、側構体にドア部を設けた構成が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1には、側構体において、外板にドアフレームを溶接する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉄道車両構体では、デザイン性の問題など様々な観点から、外板よりも内側にドアフレームが配置され(以下、「内嵌め構造」という)、ドアフレームを挟んで外板と側梁とを溶接することがある。ドアフレームの板厚は、鉄道車両構体の強度を確保するために、一般に外板の板厚より厚くなっている。このため、内嵌め構造の形成においては、溶接の接合強度の確保と入熱の抑制との両立が課題となっていた。
【0005】
また、内嵌め構造を採用する場合、ドアフレームが配置されていない位置では、ドアフレームの板厚の分だけ外板と側梁との間に隙間が生じ得る。この隙間を埋めるには、例えば当該隙間にドアフレームの板厚と等しい厚さを有する別の強度部材を設けることが考えられる。しかしながら、かかる別部材が配置された場合にも、上述したドアフレームの溶接の場合と同様に、溶接の接合強度の確保と入熱の抑制との両立が課題となる。
【0006】
本発明は、内嵌め構造において溶接の接合強度の確保と入熱の抑制とを両立できる鉄道車両構体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る鉄道車両構体は、ドア用開口部が設けられた外板と、外板の内側に配置された側梁と、ドア用開口部に対応する位置で外板と側梁とに挟まれたドアフレームと、を備え、ドアフレームは、厚肉の本体部と、本体部よりも薄い薄肉部と、を有し、ドアフレームは、薄肉部において外板及び側梁に溶接されている。
【0008】
この鉄道車両構体では、ドアフレームは、外板と側梁とに挟まれ、本体部よりも薄い薄肉部において外板及び側梁に溶接されている。このため、内嵌め構造において、本体部によってドアフレームの強度を確保しつつ、薄肉部によって入熱が抑制された溶接を行うことができる。また、外板と側梁とに挟まれた薄肉部が本体部よりも薄い分だけ、ドアフレームが配置されていない位置でも外板と側梁との間の隙間が縮小されている。このため、ドアフレームが配置されていない位置に別の強度部材を配置する場合においても、溶接の接合強度の確保と入熱の抑制とを両立できる。
【0009】
本体部と薄肉部との間には、湾曲面が設けられていてもよい。この場合、本体部と薄肉部との間における応力集中を緩和できる。
【0010】
本体部と薄肉部との間には、傾斜面が設けられており、傾斜面と薄肉部の表面とのなす角は、鈍角であってもよい。この場合、本体部と薄肉部との間における応力集中を緩和できる。
【0011】
薄肉部は、側梁に沿って延在していてもよい。この場合、ドアフレームにおける薄肉部の形成面積が抑えられるので、ドアフレーム自体の強度の低下を抑えられる。
【0012】
ドア用開口部に対応する位置を除く位置において、外板と側梁とは、別の強度部材を介して溶接されていてもよい。上記構成を有する鉄道車両構体によれば、当該別の強度部材を薄くできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、内嵌め構造において溶接の接合強度の確保と入熱の抑制とを両立できる鉄道車両構体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る鉄道車両構体を示す概略斜視図である。
【
図4】外板とドアフレームと側梁との結合体を示す概略的な正面図である。
【
図7】外板とドアフレームと側梁との溶接箇所の拡大断面図である。
【
図8】外板と長土台と側梁との溶接箇所の拡大断面図である。
【
図9】外板とドアフレームと側梁との溶接箇所の拡大断面図である。
【
図10】比較例に係る外板とドアフレームと側梁との溶接箇所の拡大断面図である。
【
図11】比較例に係る外板と長土台と側梁との溶接箇所の拡大断面図である。
【
図12】本実施形態の変形例に係る鉄道車両構体のドアフレームの概略的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0016】
まず、
図1及び
図2を参照して、本実施形態に係る鉄道車両構体について説明する。
図1は、鉄道車両構体の一例を示す斜視図である。
図1に示されているように、鉄道車両構体1は、台枠2と、側構体3と、屋根構体4と、妻構体5とを備えている。鉄道車両構体1は、台枠2、側構体3、屋根構体4、及び妻構体5が相互に接合されることにより、乗客を収容する空間を内部に有する箱型形状をなしている。
【0017】
台枠2は、鉄道車両の床部を構成する構体として鉄道車両構体1の底部に配置されている。側構体3及び妻構体5は、車両の側部を構成する構体として、台枠2の左右の縁部及び前後の縁部を囲むように立設されている。側構体3には、ドア扉が取り付けられるドア部6が等間隔に設けられている。
【0018】
また、ドア部6,6間と側構体3の両端部とには、窓部7が設けられている。妻構体5には、乗員が車両間を行き来するための出入口部8が設けられている。屋根構体4は、鉄道車両の屋根部を構成する構体であり、台枠2、側構体3及び妻構体5によって囲まれる空間に対して蓋をするように鉄道車両構体1の上部に配置されている。車両の屋根構体4には、その上部に車内の温度を調整するためのエアコンディショナー、及びパンタグラフ(図示しない)などが設置されている。
【0019】
図2は、鉄道車両構体1からドア扉及び窓が取り外された状態における部分断面図である。側構体3は、外板10と、外板10に溶接されたドアフレーム20とを含む。台枠2は、側梁30を含む。側梁30は、鉄道車両構体1の長手方向に延在しており、外板10の内側に配置されている。側構体3と側梁30とは、互いに溶接されている。本実施形態に係る鉄道車両構体1では、ドアフレーム20が外板10の内側に配置されている。換言すれば、ドアフレーム20は、外板10よりも鉄道車両構体1の内側に配置されている。
【0020】
次に、
図3から
図6を参照して、外板10とドアフレーム20とについて詳細に説明する。
図3は、外板10を示す概略平面図である。
図4は、外板10にドアフレーム20が設けられた状態を示す概略平面図である。
【0021】
図3に示されているように、外板10は、幕板12と腰板13とが接合されて構成されている。幕板12は車両上側に位置し、腰板13は車両下側に位置する。幕板12は、複数の切欠部12a,12bを有する。腰板13は、複数の切欠部13a,13bを有する。2つの幕板12の切欠部12aと2つの腰板13の切欠部13aとによって、ドア部6を構成するドア用開口部6aが画定されている。1つの幕板12の切欠部12bと1つの腰板13の切欠部13bとによって、窓部7を構成する窓用開口部7aが画定されている。
図4に示されているように、ドア用開口部6aには、矩形枠状のドアフレーム20が溶接されている。ドアフレーム20は、外板10の厚さ方向から見て、四辺のうち三辺で外板10に溶接されている。
【0022】
図5は、ドアフレーム20を開口方向から見た状態を示す図である。
図6は、ドアフレーム20を開口方向に直交する方向から見た状態を示す図である。
図5及び
図6に示されているように、ドアフレーム20は、外板10の内面10aに接する平板部21と、平板部21と交差する方向に延在する平板部22とを有する。側面10bは、ドア用開口部6aを画定する面である。平板部21と平板部22とは、互いに一体に成形されている。
【0023】
ドアフレーム20に設けられた開口の四隅は、湾曲している。平板部21の外周縁21aは角張っているのに対して、平板部21の内周縁21bは外周縁21aよりも丸められている。平板部22は、ドアフレーム20の四隅において、平板部21の内周縁21bに沿った湾面を有する。
【0024】
図5に示されているように、ドアフレーム20の平板部21は、厚肉の本体部23、本体部23よりも薄い薄肉部24、及び、本体部23と薄肉部24との間に位置する段差部25とを含む。本体部23、薄肉部24、及び段差部25は、互いに一体に成形されている。本体部23の板厚は、外板10の板厚よりも厚い。薄肉部24は、本体部23の下方において、本体部23に接続されている。薄肉部24は、鉄道車両構体1の長手方向に延在している。段差部25は、本体部23と薄肉部24とを接続している。段差部25も、鉄道車両構体1の長手方向に延材している。本実施形態では、平板部21は、段差部25を境に、外板10に接する面と反対側の面が薄肉部24の位置で窪むように形成されている。換言すれば、薄肉部24は、厚さ方向において外板10側に窪んでいる。
【0025】
本実施形態では、平板部21において外板10に接する面は、本体部23の位置と薄肉部24の位置とで面一に構成されている。平板部21の構成はこれに限定されず、例えば、段差部25が外板10側に設けられていてもよい。換言すれば、平板部21は、外板10に接する面が薄肉部24の位置で窪むように形成されていてもよい。外板10に接する面が窪む構成では、外板10は、平板部21の窪んだ形状に沿って湾曲していてもよい。
【0026】
次に、
図7及び
図8を参照して、側構体3と側梁30との溶接箇所の構成について更に詳細に説明する。
図7は、ドアフレーム20が配置されている位置の溶接箇所の断面を示している。
図8は、ドアフレーム20が配置されていない位置の溶接箇所の断面を示している。側梁30は、断面U字形状であり、外板10の厚さ方向に直交する平板部31と、側梁30の延在方向から見て平板部31に直交する平板部32,33とを有する。
【0027】
平板部32,33は、側梁30の延在方向から見て、それぞれ平板部31の一端と他端とに接続されている。平板部32は、平板部33に対向しており、平板部31,33よりも上方に位置する。平板部31,32,33は、鉄道車両構体1の長手方向に延在している。ドアフレーム20の薄肉部24は、平板部31に沿って延在している。
図7及び
図8に示されている断面は、薄肉部24の延在方向に直交する面である。
【0028】
図7に示されているように、側梁30の平板部31は、ドアフレーム20を挟んで外板10に溶接されている。ドアフレーム20は、薄肉部24において側梁30と外板10とに挟まれている。換言すれば、側梁30は、厚さ方向から見て薄肉部24の形成位置でドアフレーム20及び外板10に溶接されている。本実施形態では、外板10とドアフレーム20と側梁30とは抵抗スポット溶接で溶接されている。このため、外板10とドアフレーム20と側梁30との溶接箇所にはナゲット41が形成されている。ナゲット41は、薄肉部24を貫通し、外板10と側梁30とを接続している。外板10とドアフレーム20と側梁30とは、抵抗スポット溶接以外の溶接方法によって溶接されてもよい。
【0029】
図8に示されているように、側構体3は、厚さ方向から見てドアフレーム20が配置されていない位置に長土台50を含んでいる。長土台50は、外板10の厚さ方向に直交する平板部51を有する。平板部51は、鉄道車両構体1の長手方向に延在している。側梁30の平板部31は、
図8に示されているように、ドアフレーム20が配置されていない位置において長土台50を挟んで外板10に溶接されている。長土台50は、平板部51において側梁30と外板10とに挟まれている。本実施形態では、外板10と長土台50と側梁30は、抵抗スポット溶接で溶接されている。このため、外板10と長土台50と側梁30との溶接箇所には、ナゲット42が形成されている。ナゲット42は、長土台50を貫通し、外板10と側梁30とを接続している。外板10と長土台50と側梁30とは、抵抗スポット溶接以外の溶接方法によって溶接されてもよい。
【0030】
本実施形態では、
図7に示されているように、段差部25は、外板10に向かって湾曲する湾曲面25aを有している。湾曲面25aは、本体部23と薄肉部24との間に設けられている。湾曲面25aは、本体部23の表面23a及び薄肉部24の表面24aに接続されている。本体部23の表面23a及び薄肉部24の表面24aは、外板10の厚さ方向に直交する平面である。
【0031】
薄肉部24の段差部25は、
図7に示した形状に限定されない。例えば、薄肉部24の段差部25は、
図9に示した形状を有していてもよい。
図9は、一例として、ドアフレーム20が配置されている位置の溶接箇所の断面を示している。この場合においても、外板10とドアフレーム20と側梁30とは、抵抗スポット溶接によって溶接されてもよいし、他の溶接方法によって溶接されてもよい。
図9に示されている構成では、段差部25は、傾斜面25bを有している。換言すれば、傾斜面25bが、本体部23と薄肉部24との間に設けられている。傾斜面25bは、本体部23の表面23b及び薄肉部24の表面24bに接続されている。本体部23の表面23b及び薄肉部24の表面24bは、外板10の厚さ方向に直交する平面である。傾斜面25bと薄肉部24の表面24bとのなす角αは、鈍角である。例えば、なす角αは、90°より大きく180°未満である。
【0032】
図7から
図9に示されているように、ドアフレーム20の本体部23の板厚t1は、外板10の板厚t2及び側梁30の平板部31の板厚t3よりも厚い。ドアフレーム20の薄肉部24の板厚t4は、ドアフレーム20の本体部23の板厚t1よりも薄い。ドアフレーム20の薄肉部24の板厚t4は、長土台50の平板部51の板厚t5と等しくなっている。「等しい」には、製造誤差の範囲も含まれる。本実施形態では、例えば、板厚t1は4mmであり、板厚t2は1.5mmであり、板厚t3は3mmであり、板厚t4は1.5mmであり、板厚t5は1.5mmである。
【0033】
抵抗スポット溶接を行う場合には、抵抗スポット溶接に用いられる一対の電極で挟まれる部分の厚さが、板厚t2の5倍以下であることが好ましい。したがって、本実施形態では、板厚t2と板厚t3と板厚t4の合計は、板厚t2の5倍以下であることが好ましい。板厚t2と板厚t3と板厚t5の合計は、板厚t2の5倍以下であることが好ましい。
【0034】
次に、
図10及び
図11を参照して、本実施形態に係る鉄道車両構体1における作用効果について説明する。
図10は、比較例に係る外板とドアフレームと側梁との溶接箇所の拡大断面図である。
図11は、比較例に係る外板と長土台と側梁との溶接箇所の拡大断面図である。
【0035】
図10には、ドアフレーム60が側梁30の平板部31と外板10とに挟まれた内嵌め構造が示されている。ドアフレーム60の板厚t6は、鉄道車両構体の強度を確保するために、外板10の板厚t2よりも厚い。例えば、ドアフレーム60の板厚t6は、ドアフレーム20の本体部23の板厚t1と等しい。板厚t6は、例えば、4mmである。この場合、ドアフレーム60が比較的厚いため、外板10とドアフレーム60と側梁30の平板部31とが適切に溶接され難い。仮に、外板10とドアフレーム60と側梁30の平板部31との溶接において溶接強度を確保しようとすれば、比較的大きな入熱が発生するため、溶接歪みが懸念される。したがって、内嵌め構造において、溶接の接合強度の確保と入熱の抑制との両立が課題となっている。
【0036】
また、ドアフレーム60が配置されていない位置では、ドアフレーム60の板厚t6の分だけ外板10と側梁30の平板部31との間に隙間が生じる。例えば、
図11に示されているようにドアフレーム60が配置されていない位置に長土台50が配置される構成では、長土台50の板厚t5がドアフレーム60の板厚t6よりも薄いため、長土台50と側梁30との間にスペーサ70が配置されている。スペーサ70の板厚t7は、例えば、2.5mmである。この場合、板厚t5と板厚t7との合計が板厚t6と等しい。この場合、外板10と側梁30との間に複数の別部材が含まれるため、溶接作業は更に困難である。
【0037】
外板10と側梁30との間に生じた隙間を埋めるように、長土台50を厚くする構成も考えられる。しかし、この場合も、ドアフレーム60の溶接の場合と同様に、溶接の接合強度の確保と入熱の抑制との両立が課題となる。さらには、長土台50を厚くした分だけ、鉄道車両構体1の全体の重量も増加するという問題も生じる。
【0038】
鉄道車両構体1では、ドアフレーム20は、外板10と側梁30とに挟まれ、本体部23よりも薄い薄肉部24において外板10及び側梁30に溶接されている。このため、内嵌め構造において、本体部23によってドアフレーム20の強度を確保しつつ、薄肉部24によって入熱が抑制された溶接を行うことができる。また、外板10と側梁30とに挟まれた薄肉部24が本体部23よりも薄い分だけ、ドアフレーム20が配置されていない位置でも外板10と側梁30との間の隙間が縮小されている。
図8に示されているように、ドアフレーム20が配置されていない位置に別の強度部材として長土台50を配置する場合においても、長土台50の板厚t5を大きくしたりスペーサ70を配置したりすることなく、外板10と側梁30との間の隙間を埋めることができる。この結果、内嵌め構造においても、溶接の接合強度の確保と入熱の抑制とが両立され得る。
【0039】
本体部23と薄肉部24との間には、湾曲面25aが設けられている。この場合、本体部23と薄肉部24との間における応力集中を緩和できる。
【0040】
本体部23と薄肉部24との間には、傾斜面25bが設けられており、傾斜面25bと薄肉部24の表面24aとのなす角αは、鈍角である。この場合、本体部23と薄肉部24との間における応力集中を緩和できる。
【0041】
薄肉部24は、側梁30に沿って延在している。この場合、ドアフレーム20における薄肉部24の形成面積が抑えられるので、ドアフレーム20自体の強度の低下を抑えられる。
【0042】
ドア用開口部6aに対応する位置を除く位置において、外板10と側梁30とは、別の強度部材を介して溶接されている。例えば、
図8に示される構成では、外板10と側梁30とが長土台50を介して溶接されている。上記構成を有する鉄道車両構体1によれば、これら別の強度部材を薄くできる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0044】
例えば、薄肉部24は、溶接を行う箇所のみに設けられてもよい。薄肉部24が、例えば切削加工で形成される場合、薄肉部24を溶接箇所のみに設けることで加工部分が削減される。この結果、作業工数及びコストが削減され得る。
【0045】
本実施形態では、薄肉部24が側梁30に沿って延在している場合について説明した。しかし、本実施形態の変形例として、
図12に示されているように、薄肉部24は、ドアフレーム20の下方において、2箇所の角部に設けられていてもよい。この場合、各薄肉部24は、例えば、ドアフレーム20を開口方向から見て矩形状である。2つの薄肉部24の間には、本体部23が位置している。この場合、段差部25も各薄肉部24に沿って設けられる。
図12は、本実施形態の変形例に係る鉄道車両構体のドアフレームの概略的な正面図である。
【符号の説明】
【0046】
1…鉄道車両構体、6a…ドア用開口部、10…外板、20…ドアフレーム、23…本体部、24…薄肉部、25a…湾曲面、25b…傾斜面、30…側梁、α…なす角、50…長土台。