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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/10 20060101AFI20230306BHJP
   B23C 9/00 20060101ALI20230306BHJP
   B23B 29/12 20060101ALI20230306BHJP
   B23B 27/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
B23C5/10 D
B23C5/10 Z
B23C9/00 Z
B23B29/12 Z
B23B27/00 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019067941
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020163535
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124420
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】藤瀬 憲則
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-519533(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0161543(US,A1)
【文献】特開2006-015444(JP,A)
【文献】特開平02-198705(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0116883(US,A1)
【文献】特表2011-528284(JP,A)
【文献】特表2005-519776(JP,A)
【文献】特開2013-013943(JP,A)
【文献】特開2005-066814(JP,A)
【文献】特開昭64-005702(JP,A)
【文献】中国実用新案第203253947(CN,U)
【文献】特開昭61-100303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/10
B23C 9/00
B23B 29/12
B23B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械に取り付けるためのボディ部又はシャンク部と、
刃先が取り付けられ又は形成される刃部と、
前記ボディ部又は前記シャンク部と前記刃部との間に配置された、弾性を呈する弾性部と、
を備えており、
前記弾性部は、前記刃部毎に複数の弾性体を有しており、
各前記弾性体は、工具すくい面に垂直な方向であるすくい面垂直方向に変形し易くなっており、前記刃部毎に、前記すくい面垂直方向で互いに離れて並ぶ状態で配置されている
ことを特徴とする切削工具。
【請求項2】
前記弾性は、板バネであ
ことを特徴とする請求項1に記載の切削工具。
【請求項3】
前記刃部毎の各前記弾性体の間に、外力を減衰させる減衰体が配置されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断続切削加工等に用いる切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
下記非特許文献1~7に示されるように、断続切削における、衝撃的な切削力による工具のチッピング及び欠損への対策、並びにびびり振動の抑制が試みられている。
即ち、工具のチッピング及び欠損を防止するため、靱性の高い工具材種が選択される。
又、衝撃的な切削力を緩和するため、切削速度及び送りの少なくとも一方が低下される。
更に、びびり振動の抑制のため、高減衰材料が選択されたり、オイルダンパを介して工具が保持されたりする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】工具エンゲージにおける切削力-断続切削の基礎研究(第1報)-精密機械39巻9号
【文献】断続切削における工具摩耗-断続切削の基礎研究(第2報)-,精密機械39巻11号
【文献】制振合金による複合工具シャンクの動剛性向上について,精密工学会誌53巻10号
【文献】高減衰材料によるツールホールダの動剛性向上に関する研究,精密機械48巻12号
【文献】防振合金利用の切削工具によるびびり振動の抑制,精密機械50巻5号
【文献】ER流体ダンパによる工作機械工具系の振動抑制,日本機械学会論文集64巻622号
【文献】減衰を有するばねバイトによる自励びびりの防止,精密機械36巻12号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、靱性の高い工具材種が選択されると、反対に硬度が低下するため、耐摩耗性が低下し、工具が早く摩耗してしまう。
又、切削速度及び送りの少なくとも一方が低下されると、その分だけ加工効率が低下する。
更に、高減衰材料あるいはオイルダンパの使用は、材料の選定及び配置が困難であったり、オイルダンパの配置及び取り付けが困難であったりする等、高コスト化を招くし、十分なびびり振動の抑制効果を得ることが難しくなっている。
そこで、本開示は、断続切削時の工具食いつき時等における工具と工作物(ワーク)との衝突による衝撃的な切削力が、よりシンプルな構成で効果的に緩和され、チッピング及び欠損が防止される切削工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本開示は、切削工具において、工作機械に取り付けるためのボディ部又はシャンク部と、刃先が取り付けられ又は形成される刃部と、前記ボディ部又は前記シャンク部と前記刃部との間に配置された、弾性を呈する弾性部と、を備えていることが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、工具と工作物(ワーク)との衝突による衝撃的な切削力が、よりシンプルな構成で効果的に緩和され、チッピング及び欠損が防止される切削工具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1形態に係る切削工具の(A)前面図,(B)左側面図である。
図2】本発明の第1形態に係る切削工具と本発明に属さない比較例とについての、切削力の経時変化が示されるグラフである。
図3】本発明の第1形態に係る切削工具と本発明に属さない比較例とについての、工具摩耗量の経時変化が示されるグラフである。
図4】比較例に係る所定の切削後における刃先の写真である。
図5図4の説明図である。
図6】本発明の第1形態の切削工具に係る所定の切削後における刃先の写真である。
図7図6の説明図である。
図8】本発明の第2形態に係る切削工具の(A)左側面図,(B)下面図である。
図9】本発明の第3形態に係る切削工具の(A)上面図,(B)前面図である。
図10】本発明の第4形態に係る切削工具の(A)上面図,(B)前面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る実施の形態及びその変更例が、適宜図面に基づいて説明される。
尚、本発明は、下記の実施の形態及び変更例に限定されない。又、前後上下左右の各方向は、説明の便宜上定められたものであり、切削工具の保持の態様、切削工具とワークとの相対的な位置関係、及び回転等の動作の少なくとも何れかにより変化することがある。
【0009】
[第1形態]
図1(A)は、本発明の第1形態に係る切削工具1の前面図である。図1(B)は、切削工具1の左側面図である。
切削工具1は、エンドミルであり、シャンク部2と、刃部4と、これらの間に配置された弾性部としての板バネ部6と、を備えている。
【0010】
シャンク部2は、金属製で円柱状であり、工作機械の主軸のチャックに把持されて、工作機械に取り付けられる部分である。
刃部4は、シャンク部2と同径でシャンク部2より短い円柱状である刃装着部10と、刃装着部10の曲面に対して周方向に等間隔である状態で取り付けられた複数(2個)のチップ12と、を有している。各チップ12は、ワークを切削する刃先14を有しており、刃先14の延びる方向が切削工具1の長手方向(上下方向とする)を向き、刃先14の作用する方向が周方向(刃部4側の端部側即ち下方からみて反時計回り)であるように配置されている。又、切削工具1のすくい面R1は、各チップ12における下方から見て時計回り側の面となっており、径方向及び上下方向に広がっている。尚、刃部4は、刃装着部10と各チップ12とが一体化しているもの、即ち円柱状の刃基部の下端部に各刃先14が形成されたものであっても良い。
【0011】
板バネ部6は、図1の状態において上下左右に広がる複数(2枚)の板バネ16を有している。各板バネ16は、その幅方向を左右方向として上下方向に延びており、シャンク部2からみて刃部4側の端部(下端部)が前後に振れるように撓むことで、刃装着部10を介して各チップ12に弾性作用を施す。ここでは、各板バネ16の形状(肉厚等の寸法も適宜含む)及び向きは、同じものとされている。各チップ12は、一対の板バネ16の間の下方に配置されている。尚、各板バネ16の形状及び向きの少なくとも一方は、互いに異なるものとされても良い。又、板バネ16は、1枚あるいは3枚以上設けられても良い。
各板バネ16は、幅方向が図1における左右方向(チップ12のすくい面R1に平行な方向)となっており、板バネ部6は、すくい面R1に垂直な方向である周方向(すくい面垂直方向,図1では前後方向)に変形し易くなっている。
【0012】
切削工具1は、例えば次のように形成される。即ち、シャンク部2となる部分から刃装着部10となる部分までにわたる1本の円柱材における刃装着部10寄りの中央部に対し、左右方向に延びる直方体状の貫通孔18と、貫通孔18の両側にそれぞれ配置される溝19と、が形成され、貫通孔18と各溝19との間に、板バネ16が現出するようにする。
尚、貫通孔18は、片側あるいは両側からの有底穴であっても良いし、省略されても良い。溝19は、片方のみ設けられても良いし、省略されても良い。
【0013】
かような第1形態に係る切削工具1では、板バネ部6の付与により、衝突時における切削力の立上り時間が各板バネ16の変形量に相当する分だけ遅くなり、衝撃力が緩和される。そして、衝撃力の緩和により、切削工具1の耐欠損性が向上し、切削工具1においてチッピング及び欠損が発生し難くなり、切削工具1の寿命が延びる。
【0014】
この点は、以下に説明される実験により、具体的に明らかとなる。
即ち、切削工具1と、本発明に属さない比較例とについて、切削力が測定された。
本実験における切削工具1は、各チップ12以外の部分の材質が金属製、各チップ12の材質が超硬合金製、シャンク部2の上下長さが100mm(ミリメートル)、シャンク部2の直径が20mm、刃装着部10の上下長さが30mm、各板バネ16の上下長さが25mm、各板バネ16の幅が16~19.1mm、各板バネ16の肉厚が3mmとされた。
又、比較例は、切削工具1と同様であるものの、2枚のチップ12以外の部分において、貫通孔18と各溝19とが形成されずに板バネ部6がなく、当該部分が、シャンク部2から刃装着部10までにわたる1本の円柱材(切削工具1の板バネ部6以外の部分と同材質で同径)とされたものである。
そして、工作機械における主軸に、切削工具1又は比較例が装着され、切削動力計を備えたテーブル上にそれぞれ用意されたワーク(上下35mm、左右60mm、前後60mmの直方体状であるチタン合金製のブロック)が、同じ条件(軸方向の切り込み1.0mm、径方向の切り込み5.0mm、送り速度0.115mm/Tooth即ち146.42mm/分)で切削され、切削動力計の出力値が切削力[N(ニュートン)]に換算された。
【0015】
図2は、切削開始からの経過時間(Time)[ms(ミリ秒)]が横軸とされ、切削力(Cutting force)[N]が縦軸とされたグラフである。
図2によれば、切削工具1の最大切削力は比較例より小さくなり、最大切削力となる時間である立上り時間が比較例より長くなっている。即ち、切削工具1において、衝撃力は、比較例と比べて緩和されている。
【0016】
更に、切削長さを60mmとした切削が1単位の工程(Pass)とされた状態で、当該工程がそれぞれ繰り返されて、切削工具1及び比較例における各工程後の摩耗が測定された。これらの工程には、最初の工程が1とされて、順に工程番号(Pass number)が付された。
【0017】
図3は、工程番号が横軸とされ、工具摩耗量(Flank wear width)[mm]が縦軸とされたグラフである。
図3によれば、比較例では、工程番号7に係る工程の完了後に工具摩耗量が急増して0.3mmに達し、工程番号8において工具摩耗量が0.5mmに達したことが分かる。そして、工程番号8において比較例でチッピングが観察された。工程番号8に係る工程の完了後における刃先14の拡大写真が、図4に示される。図4の上半部はすくい面側の写真であり、下半部は逃げ面側の写真である。又、図5は、図4の説明図である。図4図5に示されるように、逃げ面側において、欠損(チッピング)が発生している。
これに対し、切削工具1では、工程番号13において、比較例の工程番号6と同様な工具摩耗量となり、工程番号14において工具摩耗量が急増して0.32mm程度となるものの、未だ刃先14にチッピングは発生していない。比較例においてチッピングが発生した工程番号8に係る工程の完了後における、切削工具1の刃先14の拡大写真が、図6に示される。図6の上半部はすくい面側の写真であり、下半部は逃げ面側の写真である。又、図7は、図6の説明図である。図6図7(切削工具1)によれば、図4図5(比較例)に比べ、摩耗の程度が抑制され、欠損が発生していないことが分かる。
【0018】
かように、切削工具1によれば、工作機械に取り付けるためのシャンク部2と、刃先14を有する各チップ12が取り付けられる刃部4と、シャンク部2と刃部4との間に配置された、弾性を呈する板バネ部6と、を備えている。よって、切削工具1において、衝撃力が緩和され、耐欠損性が向上し、チッピング及び欠損が発生し難くなり、摩耗の進行が抑制され、結果切削工具1の寿命が延びる。
又、板バネ部6は、板バネ16を有している。よって、弾性を呈する部分がシンプルに実現される。
更に、板バネ16は、2枚設けられている。よって、板バネ部6は、板バネ16が1枚の場合に比べ、弾性を呈しながら剛性を確保することができ、びびり振動及び工具の曲げ量がより低減される。
加えて、板バネ部6は、すくい面R1に垂直な方向に変形し易くなっている。よって、切削工具1の板バネ部6は、ワークから受ける力の方向に合った方向で変形し易くなり、刃部4に対し適切に弾性力を与えることができ、切削工具1の寿命が更に延びる。
【0019】
尚、第1形態の切削工具1は、上述の変更例の他、次に示されるような更なる変更例を適宜有する。
各板バネ16の間(貫通孔18)に、樹脂製ブロック(シリコン樹脂製ゴムブロック等)を始めとする、外力を減衰させる減衰体が設けられても良い。この場合、各板バネ16による弾性作用に加え、減衰体による減衰作用が施されて、更に衝撃力が緩和され、耐欠損性が向上し、チッピング及び欠損が発生し難くなり、摩耗の進行が抑制され、結果切削工具1の寿命が延びることとなる。
板バネ16の少なくとも一方は、コイルバネ等の他の弾性体とされても良い。
板バネ16の少なくとも一方の断面は、幅方向が肉厚方向に比べて大きいものに限られず、幅方向の寸法と肉厚方向の寸法とが同等なもの(正方形状)等であっても良い。
【0020】
[第2形態]
図8(A)は、本発明の第2形態に係る切削工具101の左側面図である。図8(B)は、切削工具101の下面図である。
切削工具101は、旋削バイトであり、シャンク部102と、刃部104と、これらの間に配置された弾性部としての板バネ部106と、を備えている。
【0021】
シャンク部102は、金属製で四角柱状である。
刃部104は、シャンク部102と同形状でシャンク部102より短い四角柱状のベース部107の下部に下方への膨出部108が付加された形状を呈する刃装着部110と、刃装着部110の膨出部108に対して取り付けられたチップ112と、を有している。チップ112は、ワークを切削する刃先114を有しており、刃先114の作用する方向が、ワークの前後方向の軸周りでの回転(前方からみて反時計回り)により、ワーク上部の接線方向である左方であるように配置されている。又、切削工具101のすくい面R2は、チップ112の左面となっており、前後上下に広がっている。
【0022】
板バネ部106は、図8の状態において前後上下に広がる複数(2枚)の板バネ116を有している。各板バネ116は、その幅方向を上下方向として前後方向に延びており、シャンク部102からみて刃部104側の端部(前端部)が左右に振れるように撓むことで、刃装着部110を介してチップ112に弾性作用を施す。ここでは、各板バネ116の形状及び向きは、同じものとされている。
各板バネ116は、幅方向が図8における上下方向(チップ112のすくい面R2に平行な方向)となっており、板バネ部106は、チップ112のすくい面R2に垂直な方向である左右方向(すくい面垂直方向)に変形し易くなっている。
【0023】
切削工具101は、例えば次のように形成される。即ち、シャンク部102となる部分から刃装着部110となる部分までにわたる1本の膨出部108付き四角柱材における刃装着部110寄りの中央部に対し、上下方向に延びる直方体状の貫通孔118が形成され、貫通孔118の両外側に、板バネ116が現出するようにする。
尚、第1形態の溝19と同様の溝が、貫通孔118の片側又は両側に設けられても良い。
【0024】
かような第2形態に係る切削工具101では、工作機械に取り付けるためのシャンク部102と、刃先114を有するチップ112が取り付けられる刃部104と、シャンク部102と刃部104との間に配置された、弾性を呈する板バネ部106と、を備えている。よって、切削工具101において、第1形態と同様に、衝突時における切削力の立上り時間が板バネ部106の変形量に相当する分だけ遅くなり、衝撃力が緩和される。そして、衝撃力の緩和により、切削工具101の耐欠損性が向上し、切削工具101においてチッピング及び欠損が発生し難くなり、又摩耗が抑制され、切削工具101の寿命が延びる。
又、板バネ部106は、板バネ116を有している。よって、弾性を呈する部分がシンプルに実現される。
更に、板バネ116は、2枚設けられている。よって、板バネ部106は、板バネ116が1枚の場合に比べ、弾性を呈しながら剛性を確保することができ、びびり振動及び工具の曲げ量がより低減される。
加えて、板バネ部106は、すくい面R2に垂直な方向に変形し易くなっている。よって、切削工具101の板バネ部106は、ワークから受ける力の方向に合った方向で変形し易くなり、刃部104に対し適切に弾性力を与えることができ、切削工具101の寿命が更に延びる。
【0025】
尚、第2形態の切削工具101は、上述の変更例の他、第1形態と同様な変更例を適宜有する。
【0026】
[第3形態]
図9(A)は、本発明の第3形態に係る切削工具201の上面図である。図9(B)は、切削工具201の前面図である。
切削工具201は、フライスカッタであり、ボディ部202と、複数(4箇所)の刃部204と、これらの間に配置された弾性部としての板バネ部206と、を備えている。
尚、第3形態に係る切削工具201の前後左右上下は、立フライス盤に取り付けられた場合に準じているところ、切削工具201は、横フライス盤等の他の工作機械に取り付けられても良い。
【0027】
ボディ部202は、金属製であり、上下に延びる円筒状の軸部207と、軸部207の下部から径方向外方へ突出するリング部208と、を有する。
刃部204は、リング部208の径方向外方において周方向に等間隔に配置された複数(4箇所)の刃装着部210と、各刃装着部210に対して取り付けられたチップ212と、を有している。各チップ212は、ワークを切削する刃先214を有している。各刃先214は、第1形態の刃先14と同様にワークに作用する。又、切削工具201のすくい面R3は、各チップ212における下方から見て時計回り側の面となっており、径方向を向いている。尚、刃装着部210の数は、3箇所以下であっても良いし、5箇所以上であっても良い。
【0028】
各板バネ部206は、リング部208と刃装着部210との間に渡される複数(2枚)の板バネ216を有している。各板バネ216は、その幅方向を上下方向として径方向に延びており、リング部208からみて刃部204側の端部が周方向に振れるように撓むことで、刃装着部210を介してチップ212に弾性作用を施す。ここでは、各板バネ216の形状及び向きは、板バネ部206毎に同じものとされている。又、全ての板バネ216の形状は、同じものとされている。尚、板バネ216の形状は、板バネ216毎あるいは板バネ部206毎に異なっていても良い。又、板バネ部206における一対の板バネ216の向きは、互いに異なっていても良い。
各板バネ216は、幅方向が図9における上下方向(チップ212のすくい面R3に平行な方向)となっており、各板バネ部206は、第2形態と同様に、対応するチップ212のすくい面R3に垂直な方向である周方向(接線方向,すくい面垂直方向)に変形し易くなっている。
【0029】
切削工具201は、例えば次のように形成される。即ち、ボディ部202となる部分から刃装着部210となる部分までにわたる軸部207付きの4枚羽根の風車状のブロック材における各刃装着部210とリング部208との間に対し、上下方向に延びる直方体状の貫通孔218が形成され、各貫通孔218の両外側に、板バネ216が現出するようにする。
【0030】
かような第3形態に係る切削工具201では、工作機械に取り付けるためのボディ部202と、刃先214を有するチップ212がそれぞれ取り付けられる4個の刃部204と、ボディ部202と各刃部204との間に配置された、弾性を呈する板バネ部206と、を備えている。よって、切削工具201において、第1形態及び第2形態と同様に、衝突時における切削力の立上り時間が板バネ部206の変形量に相当する分だけ遅くなり、衝撃力が緩和される。そして、衝撃力の緩和により、切削工具201の耐欠損性が向上し、切削工具201においてチッピング及び欠損が発生し難くなり、又摩耗が抑制され、切削工具201の寿命が延びる。
又、板バネ部206は、板バネ216を有している。よって、弾性を呈する部分がシンプルに実現される。
更に、板バネ216は、刃部204毎に2枚ずつ設けられている。よって、板バネ部206は、板バネ216が刃部204毎に1枚設けられる場合に比べ、弾性を呈しながら剛性を確保することができ、びびり振動及び工具の曲げ量がより低減される。
加えて、板バネ部206は、すくい面R3に垂直な方向に変形し易くなっている。よって、切削工具201の板バネ部206は、ワークから受ける力の方向に合った方向で変形し易くなり、刃部204に対し適切に弾性力を与えることができ、切削工具201の寿命が更に延びる。
【0031】
尚、第3形態の切削工具201は、上述の変更例の他、第1形態及び第2形態と同様な変更例を適宜有する。
【0032】
[第4形態]
図10(A)は、本発明の第4形態に係る切削工具301の上面図である。図10(B)は、切削工具301の前面図である。
切削工具301は、フライスカッタであり、ボディ部302と、リング状の刃部304と、これらの間に配置された弾性部としての板バネ部306と、を備えている。
尚、第4形態に係る切削工具301の前後左右上下は、立フライス盤に取り付けられた場合に準じているところ、切削工具301は、横フライス盤等の他の工作機械に取り付けられても良い。
【0033】
ボディ部302は、金属製であり、上下に延びる円筒状の軸部307と、軸部307の下部から径方向外方へ突出するリング部308と、を有する。
刃部304は、リング部308の径方向外方に配置されており、周方向に等間隔に配置された複数(4箇所)の刃装着部310と、各刃装着部310に対して取り付けられたチップ312と、を有している。各チップ312は、ワークを切削する刃先314を有している。各刃先314は、第3形態の刃先214と同様にワークに作用する。又、切削工具301のすくい面R4は、各チップ312における下方から見て時計回り側の面となっており、径方向を向いている。尚、各チップ312の数は3箇所以下であっても良いし、5箇所以上であっても良い。
【0034】
各板バネ部306は、リング部308と刃装着部310との間に渡される1枚の板バネ316を有している。板バネ316は、その幅方向を上下方向として径方向に延びており、リング部308からみて刃部304側の端部が周方向に振れるように撓むことで、刃装着部310を介してチップ312に弾性作用を施す。ここでは、板バネ316の形状は、互いに同じものとされている。
各板バネ316は、幅方向が図10における上下方向(チップ312のすくい面R4に平行な方向)となっており、各板バネ部306は、第2形態及び第3形態と同様に、対応するチップ312のすくい面R4に垂直な方向である周方向(接線方向,すくい面垂直方向)に変形し易くなっている。
【0035】
切削工具301は、例えば次のように形成される。即ち、ボディ部302となる部分からリング状の刃部304となる部分までにわたる軸部307付きの円盤状のブロック材における刃部304とリング部308との間に対し、上下方向に延びる肉厚な四半円筒面状の貫通孔318が周方向に間隔を置いて4個並ぶように形成され、各貫通孔318の間に、対応する刃装着部310へ向かう板バネ316が現出するようにする。
尚、各貫通孔318の間に、更に上下に延びる直方体状の貫通孔が形成され、リング状の刃部304における刃装着部310毎に複数の板バネ316が設けられるようにしても良い。
【0036】
かような第4形態に係る切削工具301では、工作機械に取り付けるためのボディ部302と、刃先314を有するチップ312が周方向に等間隔に4個取り付けられる刃部304と、ボディ部302と刃部304との間に配置された、弾性を呈する板バネ部306と、を備えている。よって、切削工具301において、第1形態ないし第3形態と同様に、衝突時における切削力の立上り時間が板バネ部306の変形量に相当する分だけ遅くなり、衝撃力が緩和される。そして、衝撃力の緩和により、切削工具301の耐欠損性が向上し、切削工具301においてチッピング及び欠損が発生し難くなり、又摩耗が抑制され、切削工具301の寿命が延びる。
又、板バネ部306は、板バネ316を有している。よって、弾性を呈する部分がシンプルに実現される。
加えて、板バネ部306は、対応する刃先314におけるすくい面R4に垂直な方向に変形し易くなっている。よって、切削工具301の板バネ部306は、ワークから受ける力の方向に合った方向で変形し易くなり、刃部304に対し適切に弾性力を与えることができ、切削工具301の寿命が更に延びる。
【0037】
尚、第4形態の切削工具301は、上述の変更例の他、第1~第3形態と同様な変更例を適宜有する。
【符号の説明】
【0038】
1,101,201,301・・切削工具、2,102・・シャンク部、4,104,204,304・・刃部、6,106,206,306・・板バネ部(弾性部)、12,112,212,312・・チップ、14,114,214,314・・刃先、16,116,216,316・・板バネ、202,302・・ボディ部、R1,R2,R3,R4・・すくい面(工具すくい面)。
図1
図2
図3
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図7
図8
図9
図10