(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】抵抗器用水性カーボンナノ粒子インク組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/52 20140101AFI20230306BHJP
H01B 1/24 20060101ALI20230306BHJP
H01C 7/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
C09D11/52
H01B1/24 A
H01C7/00 310
(21)【出願番号】P 2019076579
(22)【出願日】2019-04-12
【審査請求日】2022-04-08
(32)【優先日】2018-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】チャド・エス・スミッソン
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-281672(JP,A)
【文献】特開2015-147373(JP,A)
【文献】特開2013-256430(JP,A)
【文献】Hirotaka Koga et al.,Transparent, Conductive, and Printable Composites Consisting of TEMPO-Oxidized Nanocellulose and Carbon Nanotube,BIOMACROMOLECULES,2013年02月22日,Vol. 14, No. 4,pp. 1160-1165
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00
H01B 1/24
H01C 7/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性溶媒と、1つ以上のカーボンナノ粒子と、1つ以上のセルロースナノ結晶と、を含む、水性インク組成物であって、前記1つ以上のカーボンナノ粒子は非官能化多層
カーボンナノチューブを含み、水性インク組成物は25℃で1cP~15cPの粘度を有し、前記1つ以上のセルロースナノ結晶は第一級アルコール基を含み、セルロースナノ結晶の第一級アルコール基はそれぞれカルボキシレート基に酸化されたものである、水性インク組成物。
【請求項2】
前記1つ以上のカーボンナノ粒子が、カーボンナノチューブをさらに含み、水性インク組成物中に存在するカーボンナノ粒子の量は、水性インク組成物の全重量の1重量%から5重量%である、請求項1に記載の水性インク組成物。
【請求項3】
前記1つ以上のカーボンナノ粒子が、1つ以上の単層
カーボンナノチューブおよび二層
カーボンナノチューブをさらに含む、請求項1に記載の水性インク組成物。
【請求項4】
前記1つ以上のカーボンナノ粒子が、官能化多層
カーボンナノチューブをさらに含む、請求項1に記載の水性インク組成物。
【請求項5】
前記セルロースナノ結晶が、100mmol/kg~1600mmol/kgの総酸含量を有する、請求項1に記載の水性インク組成物。
【請求項6】
前記カルボキシレート基が、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)で酸化されたものである、請求項1に記載の水性インク組成物。
【請求項7】
前記カルボキシレート基が、pH10で、TEMPOで酸化されたものである、請求項6に記載の水性インク組成物。
【請求項8】
水性溶媒と、1つ以上のカーボンナノ粒子と、1つ以上のセルロースナノ結晶と、を含む、水性インク組成物であって、前記水性溶媒が、水を含み、前記1つ以上のカーボンナノ粒子が、非官能化多層
カーボンナノチューブを含み、前記1つ以上のセルロースナノ結晶が、第一級アルコール基を含み、前記第一級アルコール基はそれぞれカルボキシレート基に酸化されており、前記1つ以上のセルロースナノ結晶が、100mmol/kg~1600mmol/kgの総酸含量を有する、水性インク組成物。
【請求項9】
前記水性インク組成物が、25℃で1cP~15cPの粘度を有する、請求項8に記載の水性インク組成物。
【請求項10】
前記水性インク組成物が、25℃で1.22cP~1.36cPの粘度を有する、請求項8に記載の水性インク組成物。
【請求項11】
前記水性インク組成物が、前記水性溶媒と、前記1つ以上のカーボンナノ粒子と、前記1つ以上のセルロースナノ結晶と、からなる、請求項8に記載の水性インク組成物。
【請求項12】
セルロースナノ結晶溶液を調製するために、前記セルロースナノ結晶を前記水性溶媒と
接触させることと、
セルロースナノ結晶を、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)との酸化を介して、カルボキシレート基で官能化することと、
前記1つ以上のカーボンナノ粒子を前記セルロースナノ結晶溶液中に分散させるために、前記1つ以上のカーボンナノ粒子を前記セルロースナノ結晶溶液と接触させることと、を含む、請求項1に記載の水性インク組成物を調製するための方法。
【請求項13】
前記セルロースナノ結晶を用いて、前記非官能化多層カーボンナノチューブを少なくとも部分的に安定化させることをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
プリント回路用の抵抗材料を製造するための方法であって、
請求項1に記載の水性インク組成物を基材上に堆積させることと、
前記水性インク組成物を少なくとも部分的に乾燥させることと、を含む、方法。
【請求項15】
前記水性インク組成物を少なくとも部分的に乾燥させることが、前記水性インク組成物を加熱することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
水性溶媒と、非官能化多層
カーボンナノチューブと、1つ以上のセルロースナノ結晶と、を含む、水性インク組成物であって、前記水性インク組成物は25℃で1.22cP~1.36cPの粘度を有し、前記多層の
カーボンナノチューブは、前記多層の
カーボンナノチューブの最大安定充填量の33%以上の量で存在し、1つ以上のセルロースナノ結晶は、前記水性溶媒中の前記多層
カーボンナノチューブの安定化を促進するように構成されたカルボキシル化セルロースナノ結晶(CNC(COOH))であり、カルボキシル化セルロースナノ結晶が、前記水性溶媒中に有効な量存在する、水性インク組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示されている実施形態または実施態様は、プリント電子機器用の抵抗材料を対象とする。
【0002】
従来の抵抗器は、電流の通過に対して抵抗を与える指定された抵抗を有する材料または素子であり得るかまたはそれらを含み得る。例えば、抵抗器またはその抵抗材料は、しばしば、プリント回路の一部の電流に抵抗を与えるために、プリント回路上に配置または堆積され得る。従来の抵抗器の抵抗を変えるために、抵抗器または抵抗器に利用される材料の寸法は、調整または修正され得る。プリント電子機器のような多くの用途において、抵抗器の大きさを調節することは望ましくない。さらに、広範囲の抵抗を提供するために様々な抵抗を有する多数の抵抗材料を利用することは、コストがかかりすぎ、よって、同様に望ましくない。
【0003】
上記を考慮して、抵抗器は、その抵抗値を調整するために希釈され得る抵抗性ポリマーベースの溶液またはインクから製造されることが多い。例えば、従来の抵抗器は、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)などの導電性材料を組み込んだ希釈可能なポリマーベースの溶液から製造されることが多い。導電性材料を有機またはポリマーベースの溶液に分散させることが有効である一方で、導電性材料(例えばMWCNT)をプリント電子機器または噴射用途(例えば、エアロゾルジェット、インクジェット印刷など)に利用し得る水性媒体または溶液に組み込むことが課題であることが示されている。例えば、MWCNTは、水性媒体中に容易に分散されず、分散を容易にするためにMWCNTを官能化することは、得られる抵抗器の電気的性能または有効性に悪影響を及ぼす。
【0004】
したがって、必要とされているのは、改良された抵抗材料、ならびにプリント電子機器において抵抗材料を調製および利用するための方法である。
【0005】
以下に、本教示の1つ以上の実施形態のいくつかの態様の基本的な理解を提供するための簡略化された概要を提示する。この概要は、広範囲の概要ではなく、また本教示の主要なまたは重要な要素を特定することも、本開示の範囲を描写することも意図されていない。むしろ、その主な目的は、後で提示される詳細な説明の前置きとして、単純に1つ以上の概念を簡略化された形態で提示することである。
【0006】
本開示は、水性溶媒と、1つ以上のカーボンナノ粒子と、1つ以上のセルロースナノ結晶と、を含む、水性インク組成物を提供し得る。水性インク組成物は、25℃で約1cP~約15cPの粘度を有し得る。
【0007】
いくつかの例では、1つ以上のカーボンナノ粒子は、カーボンナノチューブを含み得る。
【0008】
いくつかの例では、1つ以上のカーボンナノ粒子は、1つ以上の単層ナノチューブ、二層ナノチューブ、および多層ナノチューブを含み得る。
【0009】
少なくとも一つの例では、1つ以上のナノ粒子は、多層ナノチューブを含む。多層ナノチューブは、裸の多層ナノチューブを含み得る。多層ナノチューブは、官能化多層ナノチューブも含み得る。
【0010】
少なくとも1つの例では、1つ以上のセルロースナノ結晶は、官能化セルロースナノ結晶を含み得る。官能化セルロースナノ結晶は、そのそれぞれの表面に配置された複数のカルボキシレート基を含み得る。官能化セルロースナノ結晶は、約100mmol/kg~約1600mmol/kgの総酸含量を有し得る。
【0011】
本開示はまた、水性溶媒と、1つ以上のカーボンナノ粒子と、1つ以上のセルロースナノ結晶と、を含む、水性インク組成物を提供し得る。1つ以上のカーボンナノ粒子は、多層ナノチューブを含み得、1つ以上のセルロースナノ結晶は、約100mmol/kg~約1600mmol/kgの総酸含量を有するカルボキシル化セルロースナノ結晶を含み得る。
【0012】
いくつかの例では、多層ナノチューブは、裸の多層ナノチューブであり得る。
【0013】
いくつかの例では、水性インク組成物は、25℃で約1cP~約15cPの粘度を有し得る。他の例では、水性インク組成物は、25℃で約1.22cP~約1.36cPの粘度を有し得る。
【0014】
いくつかの例では、水性インク組成物は、水性溶媒と、1つ以上のカーボンナノ粒子と、1つ以上のセルロースナノ結晶と、のみを含み得る。
【0015】
本開示は、水性インク組成物を調製するための方法をさらに提供し得る。方法は、セルロースナノ結晶を水性溶媒と接触させて、セルロースナノ結晶溶液を調製することを含み得る。方法はまた、カーボンナノ粒子をセルロースナノ結晶溶液と接触させて、カーボンナノ粒子をセルロースナノ結晶溶液中に分散させることを含み得る。
【0016】
いくつかの例では、方法はまた、セルロースナノ結晶をカルボキシレート基で官能化することを含み得る。
【0017】
いくつかの例では、水性溶媒は、水を含み、カーボンナノ粒子は、ベースの多層カーボンナノチューブを含む。
【0018】
いくつかの例では、方法は、セルロースナノ結晶を用いて、裸の多層カーボンナノチューブを少なくとも部分的に安定化させることを含み得る。
【0019】
本開示はまた、プリント回路用の抵抗材料を製造する方法を提供し得る。方法は、本明細書に開示されている任意の水性インク組成物を基材上に堆積させることを含み得る。方法はまた、水性インク組成物を少なくとも部分的に乾燥させることを含み得る。
【0020】
いくつかの例では、水性インク組成物を少なくとも部分的に乾燥させることは、水性インク組成物を加熱することを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】様々な濃度のCNC(COOH)/MWCNT混合物および様々な抵抗器サイズでの温度に対する電気抵抗のプロットを示す。
【
図2】25℃でMWCNTを含む2重量%CNC(COOH)混合物の剪断粘度のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の様々な典型的な態様の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その用途、または用途を限定することを意図するものでは決してない。
【0023】
全体を通して使用される際、範囲は、その範囲内にあるそれぞれのおよび全ての値を説明するための省略表現として使用される。範囲内の任意の値が、範囲の終端として選択され得る。さらに、本明細書に引用された全ての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本開示における定義と引用文献の定義との間に矛盾がある場合には、本開示が優先する。
【0024】
他に特定されない限り、本明細書および本明細書の他の箇所に表される全ての百分率および量は、重量百分率を指すことを理解されたい。与えられた量は、材料の有効重量に基づく。
【0025】
さらに、全ての数値は、示された値の「約」または「およそ」であり、当業者によって予想されるであろう実験誤差および変動を考慮に入れる。本明細書に開示される全ての数値および範囲は、「約」がそれと共に使用されるかどうかにかかわらず、おおよその値および範囲であることを理解されたい。また、本明細書で使用される「約」という用語は、数値と併記されて、±0.01%(両端を含む)、±0.1%(両端を含む)、±0.5%(両端を含む)、その数値の±1%(両端を含む)、その数値の±2%(両端を含む)、その数値の±3%(両端を含む)、その数値の±5%(両端を含む)、その数値の±10%(両端を含む)、またはその数値の±15%(両端を含む)であり得る値を表すことを理解されたい。本明細書に数値範囲が開示されている場合、その範囲内に含まれる任意の数値もまた具体的に開示されていることをさらに理解されたい。
【0026】
本明細書で使用されるとき、「または」という用語は、包括的な演算子であり、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、「および/または」という用語と同等である。「~に基づいて」という用語は、排他的なものではなく、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、記載されていない追加の要因に基づくことを可能にする。本明細書において、「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」という記載は、A、B、もしくはCを含む実施形態、A、B、もしくはCの複数の例、またはA/B、A/C、B/C、A/B/B/、B/B/C、A/B/Cなどの組み合わせを含む。さらに、本明細書全体を通して、「a」、「an」、および「the」の意味は、複数の参照を含む。「内(in)」の意味は、「内(in)」および「上(on)」を含む。
【0027】
ここで、その実施例が添付の図面に示されている、本教示の例示的な実施形態を詳細に参照する。可能な限り、図面の全体にわたって、同一の参照番号は、同一、類似、または同様の部品を指すように使用される。
【0028】
組成物
本明細書に開示される実施形態は、抵抗性インク組成物などのインク組成物であってもよく、またはそれを含んでもよい。例えば、本明細書に開示されるインク組成物は、印刷可能な電子機器用としておよび/またはプラスチック基板上に、抵抗器を製造するために好適なインクジェット印刷可能なインク組成物であってもよい。インク組成物は、水性または水性組成物であってもよい。例えば、インク組成物は、水性溶媒などの溶媒中に懸濁された、溶解された、混合された、または他の方法で分散された、1つ以上のカーボンナノ粒子および1つ以上のセルロースナノ結晶を含む水性インク組成物であってもよい。
【0029】
溶媒中に分散されたカーボンナノ粒子とセルロースナノ結晶とを含む水性インク組成物の粘度は、大きく変わり得る。少なくとも一実施形態では、水性インク組成物は、25℃で約1cP~約15cPの粘度を有し得る。少なくとも一実施形態では、水性インク組成物の粘度は、約0.25cP~約3cP、約0.5cP~約2.5cP、約1cP~約2cP、約1cP~約1.5cP、または約1.22cP~約1.36cPであり得る。
【0030】
本明細書に開示される組成物はまた、溶媒中に懸濁された、溶解された、混合された、または他の方法で分散された1つ以上のカーボンナノ粒子および1つ以上のセルロースナノ結晶を含む水性インク組成物から作製または製造された材料または組成物であってもよく、またはそれを含んでもよい。例えば、本明細書に開示される組成物は、水性インク組成物から(例えば、インクジェット印刷によって)製造された、印刷抵抗器または印刷電子機器用コーティングなどの抵抗器であってもよく、またはそれを含んでもよい。
【0031】
水性インク組成物から製造された材料または組成物(例えば、抵抗器、印刷抵抗器など)は、約1100ppm/℃~約2800ppm/℃の抵抗温度係数(TCR)を有し得る。例えば、水性インク組成物から製造された材料または組成物は、約100℃以下の温度で、約1100ppm/℃~約2800ppm/℃、約1300ppm/℃~約2700ppm/℃、またはで約1350ppm/℃~約2640ppm/℃のTCRを有し得る。
【0032】
カーボンナノ粒子
少なくとも一実施形態では、インク組成物は、1つ以上のカーボンナノ粒子および/またはそれらの複合物を含んでもよい。カーボンナノ粒子は、互いに結合した1つ以上の炭素原子の配列を有する分子構造を含んでもよい。例えば、カーボンナノ粒子は、これらに限定されないが、互いに結合した五角形、六角形、および/または七角形の炭素原子の配列を有するナノスケール分子構造(例えば、100ナノメートル未満の少なくとも1つの寸法を有する)を含んでもよい。例示的なカーボンナノ材料は、これらに限定されないが、フラーレン、グラフェン、カーボンナノチューブなど、およびそれらの混合物または組み合わせを含んでもよい。例示的なフラーレンとしては、これらに限定されないが、C60、C70、C76、C84などが挙げられ得る。
【0033】
本明細書で使用されるとき、「カーボンナノチューブ」(CNT)という用語または表現は、概して細長い中空の管状構造を有する炭素系分子を指し得る。カーボンナノチューブの中空の管状構造は、グラフェンのような六角形に配列された炭素原子の二次元シートから形成されてもよい。CNTは、真っ直ぐなおよび/もしくは曲がった側壁であってもよく、またはそれらを含んでもよく、各CNTのそれぞれの端部は、開いておよび/もしくは閉じてもよい。カーボンナノチューブは、単層ナノチューブ(SWCNT)、二層ナノチューブ、および/または多層ナノチューブ(MWCNT)であってもよい。カーボンナノチューブは、精製カーボンナノチューブおよび/または粗カーボンナノチューブ(例えば、合成されたままのもの)であってもよい。カーボンナノチューブは、裸のもしくは純粋なカーボンナノチューブおよび/もしくは官能化カーボンナノチューブであってもよく、またはそれらを含んでもよい。本明細書で使用されるとき、「裸のカーボンナノチューブ」、「初期のカーボンナノチューブ」、または「非官能化ナノチューブ」という表現は、それらの合成および/または精製に続いて、任意の別個の表面改質および/または処理を受けていないカーボンナノチューブを指し得る。本明細書で使用されるとき、「官能化カーボンナノチューブ」という表現は、1つ以上の官能化学部分がそれと会合するように表面改質および/または処理を受け得るカーボンナノチューブを指し得る。例えば、官能化カーボンナノチューブは、1つ以上の官能化学部分が、側壁(すなわち内側のおよび/または外側の側壁)および/または中空の管状構造の端部と会合し得るように、表面改質処理を受けたカーボンナノチューブを含んでもよい。少なくとも一実施形態では、カーボンナノ粒子は、未処理のまたは官能化されていないMWCNTを含んでもよい。例えば、インク組成物は、供給元によって提供されるようなMWCNTを含んでもよい。官能化MWCNTは、非官能化MWCNTから派生するかまたは異なる1つ以上の電気的特性を有することを理解されたい。
【0034】
インク組成物中に存在するカーボンナノ粒子の濃度の量は、大きく変わり得る。少なくとも一実施形態では、インク組成物中に存在するカーボンナノ粒子の量は、カーボンナノ粒子の最大安定充填量の10%以上であり得る。例えば、インク組成物中に存在するカーボンナノ粒子の量は、約0.01重量%~約5重量%、約0.25重量%~約1.0重量%、約0.1重量%~約1重量%、約1重量%~約2重量%、または約2重量%~約5重量%の最大安定充填量または水性インク組成物の全重量であり得る。最大安定充填量は、カーボンナノ粒子を水性溶媒と混合し、組み合わせ、分散させ、または他の方法で接触させ、続いて混合物を遠心分離して凝集体を除去し、分散したカーボンナノ粒子を水性溶媒中に残すことによって決定してもよいことを理解されたい。代替的に、様々な量のカーボンナノ粒子を含有する水溶液の連続混合物を遠心分離してもよく、最大安定充填量は、凝集物を含有しない混合物によって決定してもよい。最大安定充填量を決定する代替的な方法は、紫外可視分光法を利用することを含んでもよく、当該技術分野において既知である。
【0035】
セルロースナノ結晶
少なくとも一実施形態では、水性インク組成物は、水性溶媒中のカーボンナノ粒子の安定化、混合、または分散を少なくとも部分的に促進するように構成されたセルロースナノ結晶(CNC)を含んでもよい。例えば、セルロースナノ結晶は、物理的および/または化学的相互作用を介して水性溶媒中でカーボンナノ粒子を物理的および/または化学的に安定化させてもよい。水性インク組成物中に存在し得る例示的な物理的および/または化学的相互作用は、共有結合、水素結合、配位錯体結合、イオン結合、ファンデルワールス力、双極子-双極子相互作用など、もしくはそれらの組み合わせであってもよく、またはそれを含んでもよい。物理的および/または化学的相互作用は、CNCとカーボンナノ粒子の間、CNCと溶媒(例えば、水もしくは共溶媒)の間、またはカーボンナノ粒子と溶媒との間に存在してもよい。本明細書で使用されるとき、「セルロースナノ結晶」(CNC)という用語は、硬質の細長い棒状結晶セルロースナノ粒子を指し得る。CNCは、非晶質セルロースと1種以上の酸との解重合を介して、天然セルロース材料または供給源(例えば、木材パルプ、綿、細菌、被嚢類など)から抽出してもよい。CNCは、単一セルロース微結晶の形態であってもよい。CNCはまた、セルロース微結晶の束または群の形態であってもよい。
【0036】
少なくとも一実施形態では、各CNCは、約50nm~約1000nmの長さを有してもよい。例えば、CNCの長さは、約50nm~約1000nm、約200nm~約800nm、または約400nm~約600nmであってもよい。
【0037】
少なくとも一実施形態では、各CNCは、約5nm~約50nmの幅を有してもよい。例えば、CNCの幅は、約5nm~約50nm、約15nm~約40nm、または約25nm~約35nmであってもよい。
【0038】
少なくとも一実施形態では、各CNCのそれぞれの表面は、1つ以上の化学官能基で官能化してもよい。本明細書で使用されるとき、「官能化セルロースナノ結晶」または「官能化CNC」という表現は、1つ以上の官能化学部分が会合するように改質および/または処理を受けたCNCを指し得る。例えば、官能化CNCは、1つ以上の官能化学基がその表面と会合し得るように表面改質処理を受けたCNCであってもよく、またはそれを含んでもよい。例示的な官能化学基は、これらに限定されないが、カルボキシル基、アミド基、スルフィド基、カルボニル基、スルフェート基など、およびそれらの混合物もしくは組み合わせであってもよく、またはそれを含んでもよい。少なくとも一実施形態では、CNCをカルボキシレート基で官能化するか、またはカルボキシレート基をCNCの表面に選択的に導入して、カルボキシル化セルロースナノ結晶(CNC(COOH))を得る。
【0039】
カルボキシル化セルロースナノ結晶(CNC(COOH))は、約100mmol/kg~約1600mmol/kgの総酸含量を有してもよい。例えば、CNCは、得られるCNC(COOH)が、約100mmol/kg~約1600mmol/kg、約300mmol/kg~約1000mmol/kg、または約700mmol/kg~約900mmol/kgの総酸含量を有するようにカルボキシレート基で官能化されてもよい。
【0040】
インク組成物中に存在するCNC(例えば、CNC(COOH))の濃度の量は、大きく変わり得る。少なくとも一実施形態では、CNCは、水性インク組成物中に存在する十分な量のカーボンナノ粒子を安定化させるために有効な量で存在してもよい。例えば、CNCは、水性インク組成物、インク組成物、または製造された抵抗器中に存在する、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または約100%のカーボンナノ粒子を十分に安定化させるために有効な量で存在してもよい。
【0041】
少なくとも一実施形態では、水性インク組成物中に存在するCNCの量は、インク組成物の総重量に基づいて約0.01重量%~約5重量%であってもよい。例えば、インク組成物中に存在するCNCの量は、約0.01重量%~約5重量%、約0.1重量%~約4重量%、約1重量%~約3重量%、約1.5重量%~約2.5重量%、または約2重量%~約2.5重量%であってもよい。
【0042】
溶媒
少なくとも一実施形態では、水性インク組成物の溶媒は、水、脱イオン水、脱塩水、および/または軟水などの水性溶媒であってもよい。水が、水性インク組成物の残りを構成してもよい。別の実施形態では、溶媒は、共溶媒であってもよい。本明細書で使用されるとき、「共溶媒」という用語は、水と、水溶性または水混和性の有機構成要素との混合物を指し得る。例示的な水溶性または水混和性の有機構成要素は、これらに限定されないが、アルコール、アルコール誘導体、アミド、エーテル、尿素、置換尿素(例えば、チオ尿素、エチレン尿素、アルキル尿素など)、カルボン酸およびそれらの塩、エステル、有機硫化物、有機スルホキシド、スルホンなど、およびそれらの混合物または組み合わせであってもよく、またはそれを含んでもよい。例示的なアルコールおよびアルコール誘導体は、これらに限定されないが、脂肪族アルコール、芳香族アルコール、ジアルキル、グリコールエーテル、ポリグリコールエーテル、長鎖アルコール、一級脂肪族アルコール、二級脂肪族アルコール、エタノール、メタノール、プロパノール、1,2-アルコール、1,3-アルコール、1,5-アルコール、エチレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテル、メトキシル化グリセロール、エトキシル化グリセロール、ポリエチレングリコールアルキルエーテルの高級同族体など、具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、3-メトキシブタノール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2,4-ヘプタンジオールなど、およびそれらの混合物もしくは組み合わせであってもよく、またはそれを含んでもよい。
【0043】
追加の構成要素/成分
少なくとも一実施形態では、インク組成物は、1つ以上の追加の構成要素/成分を含んでもよい。追加の構成要素/成分は、インク組成物中のカーボンナノ粒子の安定化を支援または促進しない場合がある。追加の構成要素/成分は、インク組成物の印刷適性を促進するように構成されてもよい。例示的な追加の構成要素/成分は、これらに限定されないが、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、界面活性剤、およびそれらの混合物であってもよく、またはそれを含んでもよい。例示的な界面活性剤は、これらに限定されないが、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、およびそれらの混合物もしくは組み合わせであってもよく、またはそれを含んでもよい。少なくとも一例では、水性インク組成物は、非イオン性界面活性剤ポリエチレングリコールp-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェニルエーテル(C14H22O(C2H4O)n)(CAS No.9002-93-1)またはミズーリ州セントルイスのSigma-Aldrichから市販されている。
【0044】
方法
本開示の実施形態は、溶媒中に懸濁された、溶解された、混合された、または他の方法で分散された1つ以上のカーボンナノ粒子を含む水性インク組成物を生成するための方法を提供し得る。方法は、好適な溶媒中で、カーボンナノ粒子(例えば、非官能化MWCNT)を官能化CNCと組み合わせること、混合すること、撹拌すること、錯化すること、または他の方法で接触させることを含んでもよい。例えば、方法は、水中で非官能化MWCNTを官能化CNCと接触させることを含んでもよい。別の例では、方法は、非官能化MWCNT、官能化CNC、および水を互いに接触させることを含んでもよい。方法はまた、カルボキシレート基でCNCを官能化することを含んでもよい。方法はまた、官能化CNCを用いて、水性溶媒中でカーボンナノ粒子を少なくとも部分的に安定化または完全に安定化することを含んでもよい。
【0045】
本開示の実施形態はまた、抵抗材料、構成要素、または素子を製造するための方法を提供し得る。例えば、本開示は、プリント回路基板上に抵抗器を製造する方法を提供し得る。本明細書では、「プリント回路基板」という用語または表現は、所定の導電パターンを使用して共通の絶縁基板上の電子構成要素を相互接続し得る、完全に処理される「プリント配線」の総称または表現を表し得る。例示的なプリント回路基板は、これらに限定されないが、リジッド、フレキシブル、および/もしくはリジッドフレックス材料で作製し得る片面、両面、および多層の基板であってもよく、またはそれを含んでもよい。
【0046】
抵抗材料を製造するための方法は、水性インク組成物を基材もしくはその電極上に配置もしくは堆積させること、および水性インク組成物を少なくとも部分的に乾燥させること、または水性インク組成物から水性溶媒を少なくとも部分的に蒸発させることを含んでもよい。水性インク組成物は、所定のまたは所望の回路設計に従って基材またはその電極上に堆積されてもよい。水性インク組成物は、接続パッド上に堆積されてもよい(例えば、溶液堆積、噴射など)。本明細書で使用されるとき、「溶液堆積すること」または「溶液堆積」という用語は、それによって液体が堆積されるかまたは基材と接触するプロセスを指し得る。溶液堆積を利用して、コーティングまたはパターンを形成してもよい。例示的な溶液堆積技術としては、これらに限定されないが、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、スロットダイコーティング、フレキソ印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷などが挙げられ得る。
【0047】
少なくとも一実施形態では、本明細書に開示されている方法は、水性インク組成物を基材または他の表面にインクジェット印刷することを含んでもよい。本明細書に開示される方法はまた、水性インク組成物を基材上にエアロゾルジェット印刷することを含んでもよい。本明細書で使用されるとき、「エアロゾルジェット印刷」は、ミクロンスケールで液体の液滴を生成するために液体(例えば、水性インク組成物)を噴霧するプロセスまたは技術を指し得る。エアロゾルジェット印刷の噴霧した液滴は、気体流に同伴されてプリントヘッドに送られ、そこでエアロゾル流の周りに環状のガス流が導入されて液滴を平行ビームまたは経路に集束させ得る。組み合わされたガス流は、エアロゾル流を比較的小さい直径(例えば、1~10μm)に圧縮することができる収束ノズルを通ってプリントヘッドによって推進し得る。ジェットは、プリントヘッドから推進して基材上に堆積されてもよい。
【0048】
基材は、任意の好適な基材または水性インク組成物と適合性のある基材であってもよい。例示的な基材は、これらに限定されないが、シリコン、ガラス板、プラスチックもしくはポリマー材料(例えば、プラスチックフィルム)、シート、布地、合成紙などであってもよく、またはそれを含んでもよい。例示的なポリマー材料は、これらに限定されないが、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドシート、ポリエチレンテレフタレート(PET)シート、ポリエチレンナフタレート(PEN)シートなどであってもよく、またはそれを含んでもよい。
【0049】
少なくとも一実施形態では、水性インク組成物を、少なくとも部分的に乾燥させてもよく、または水性溶媒を硬化もしくは加熱することなく少なくとも部分的に蒸発させてもよい。例えば、水性インク組成物は、風乾してもよい。別の実施形態では、水性インク組成物を少なくとも部分的に乾燥させてもよく、または水性溶媒を硬化もしくは比較的高温(例えば、室温を超える)での加熱によって少なくとも部分的に蒸発させてもよい。本明細書で使用されるとき、「加熱」という用語は、水性インク組成物の溶媒を少なくとも部分的に蒸発させるため、または水性インク組成物を少なくとも部分的に乾燥させるために十分なエネルギーを与え得る任意の技術を指し得る。例示的な加熱技術は、これらに限定されないが、熱加熱(例えば、ホットプレート、オーブン、バーナーなど)、赤外線(IR)放射、レーザービーム、フラッシュライト、マイクロ波放射、紫外線(UV)放射など、およびそれらの組み合わせであってもよく、またはそれを含んでもよい。別の実施形態では、抵抗材料を製造する方法は、いかなる硬化または加熱も含まなくてもよい。例えば、水性溶媒は、室温で少なくとも部分的に蒸発させてもよい。したがって、本明細書に開示されている水性インク組成物は、低融点ポリマー基材を含む様々な基材と共に使用され得ることを理解されたい。
【0050】
方法はまた、水性インク組成物から製造された抵抗材料の抵抗値を少なくとも部分的に増加または減少させることを含んでもよい。方法は、水性インク組成物中に存在するカーボンナノ粒子の量または濃度を増加または減少させることを含んでもよい。例えば、方法は、水性インク組成物を少なくとも部分的に希釈すること、または追加のカーボンナノ粒子を添加して抵抗材料の抵抗値を調節もしくは制御することを含んでもよい。
【実施例】
【0051】
本明細書に記載の実施例および他の実施態様は例示的であり、本開示の組成物および方法の全範囲を記載することを限定することを意図しない。本開示の範囲内で、特定の実施態様、材料、組成物および方法の同等の変更、修正および変形を行うことができ、実質的に同様の結果が得られる。
【0052】
実施例1
カルボキシル化セルロースナノ結晶(CNC(COOH))水溶液を調製した。約12.17mmolの第一級アルコール基を有するセルロースナノ結晶(CNC)約2gを、約100gの脱イオン(DI)水に添加した。次いで、水性混合物を、約500rpmに維持された磁気撹拌棒を用いて撹拌しながら、フルパワーで約1分間、350Wおよび100%の振幅でプローブ音波処理した。次いで、臭化ナトリウム(約6.17mmol)および2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)(約6.17mmol)を、超音波処理した水性混合物に添加した。次いで、約pH10を維持するための約0.2M NaOHを徐々に添加しながら、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)約13.7g(4%水溶液、塩酸で約pH10に調整)を約1mL/分で徐々に添加し、約2時間撹拌した。約2時間撹拌した後、約4mLのメタノールを添加して、過剰のNaClOと反応させて、それによって反応を停止させ、CNC(COOH)溶液を調製した。
【0053】
実施例2
実施例1からのCNC(COOH)水溶液を精製した。精製するために、実施例1の調製したCNC(COOH)水溶液を約2,700gで約20分間遠心分離した。遠心分離後、上澄み液、淡黄色透明液体を除去し、遠心分離管の底部にあるほぼ白色のゲルを集めた。次いで、約20mLのDI水を白色ゲルに添加し、約20分間撹拌し、混合物を約20,000gで約20分間遠心分離した。次いで、遠心分離から生じた上澄み、無色透明の液体を除去し、遠心分離管の底の白いゲルを保持した。次いで、約20mLのDI水を白色ゲルに添加して、約20分間撹拌し、続いて約20,000gで約60分間遠心分離した。遠心分離後、無色透明の上澄み液を除去し、遠心分離管の底にある白いゲルを集めた。約10.62gの白色ゲルを集めて、約91.38gの脱イオン水を添加し、約2重量%の溶液を得て、次いでこれを350Wおよび100%の振幅で約2分間フルパワーで超音波処理し、精製された水性CNC(COOH)溶液を形成し、これは概して分散乳白色溶液として見られた。
【0054】
実施例3
実施例2で調製した精製CNC(COOH)水溶液中に多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を懸濁させるか、またはそうでなければ分散させた。MWCNTを懸濁または分散させるために、約0.1gのMWCNTを約10gの約2重量%のCNC(COOH)溶液に添加し、冷却しながら約20分間350Wおよび100%の振幅でプローブ超音波処理した。得られた溶液は濃い黒色の懸濁液であり、これを約20,000gで約60分間遠心分離した。精製した水性CNC(COOH)中のMWCNTの得られた上澄みまたは飽和溶液を集め、そしてペレットを廃棄した。次いで、MWCNTの飽和溶液を利用して、様々な濃度のMWCNTを有する試料を調製した。特に、飽和溶液は、様々な量または濃度のMWCNTを有する試料を調製するために、様々な量の約2重量%CNC(COOH)溶液を添加することによって希釈された。当然のことながら、同様の手順を行って、より希薄なCNC(COOH)溶液、例えば、約0.1重量%から約2重量%のCNC(COOH)溶液を調製したことを理解されたい。
【0055】
実施例4
櫛型の銀(Ag)電極でパターン化されたポリカーボネート基材を電極間の長さを変えて調製して、種々の量のMWCNTを含むそれぞれのCNC(COOH)溶液(実施例3で調製)をそれぞれのAg電極上に配置または堆積した。各試料電極のサイズまたは寸法を表1に要約する。特に、電極間の様々な長さ、および電極の幅を表1に要約する。堆積後、MWCNTを含むCNC(COOH)溶液を約60℃または約22℃で約20分~約120分乾燥させた。
【0056】
【0057】
電圧を約2Vに保ち、温度を約20℃~約100℃まで変化させながら、各電極間の抵抗を測定した。様々な濃度のCNC(COOH)/MWCNT混合物の温度および様々な抵抗器サイズに関する電気抵抗値を
図1に示す。
図1のプロットは、抵抗器の動作範囲(オーム範囲)を提供し、これは、チャネルの長さおよびカーボンナノ粒子(すなわち、MWCNT)の充填量によって決定され得る。50重量%最大充填値について同様の値が観察されたので、TCRは、装置のサイズとは無関係であることを理解されたい。様々な抵抗器サイズおよびMWCNT濃度を有する様々な試料についてのTCR値を表2に要約する。
【0058】
【0059】
表2に示すように、観察された抵抗温度係数(TCR)は、約1350~約2640ppm/℃であった。観察された抵抗の変化は、少なくとも約100℃までは比較的小さかったことを理解されたい。平均TCRは、約1710ppm/℃であった。表2にさらに示されるように、MWCNTがその最大充填量の約25%以下の量または濃度で提供されたときに、電気的性能の変化が観察された。理論に縛られることなく、最大MWCNT充填量の約25%以下で、試料の各々は近付くが、それを下回らず、そのパーコレーション閾値および電気信号の大部分は、CNCバインダーに起因すると考えられる。これは、MWCNTが最大充填量の約10%および約25%のMWCNTの量で提供された試料1の試験において最もよく説明されている。
【0060】
実施例5
MWCNTを含む約2重量%のCNC(COOH)混合物またはインクのレオロジーまたはレオロジーデータを評価した。レオロジーは、適用された剪断速度掃引が約1s
-1~約400s
-1の範囲になるように、約0.5mmギャップおよび約25℃に設定された約25mm平行板形状を有するアレスG2制御歪みレオメーターを用いて評価した。流動掃引試験手順は、約25℃、約40~約400 1/秒の剪断速度で実施した。流動学的データを表3および
図2に要約する。
【0061】
【0062】
表3および
図2に示すように、レオロジーデータは、約1cP~約2cPの粘度を示した。観察された粘度は、インクジェット印刷の許容範囲内(すなわち、約1cP~約15cP)であることを理解されたい。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕
水性溶媒と、1つ以上のカーボンナノ粒子と、1つ以上のセルロースナノ結晶と、を含む、水性インク組成物であって、25℃で約1cP~約15cPの粘度を有する、水性インク組成物。
〔2〕
前記1つ以上のカーボンナノ粒子が、カーボンナノチューブを含む、前記〔1〕に記載の水性インク組成物。
〔3〕
前記1つ以上のカーボンナノ粒子が、1つ以上の単層ナノチューブ、二層ナノチューブ、および多層ナノチューブを含む、前記〔1〕に記載の水性インク組成物。
〔4〕
前記1つ以上のナノ粒子が、多層ナノチューブを含む、前記〔1〕に記載の水性インク組成物。
〔5〕
前記多層ナノチューブが、裸の多層ナノチューブである、前記〔4〕に記載の水性インク組成物。
〔6〕
前記1つ以上のセルロースナノ結晶が、官能化セルロースナノ結晶を含む、前記〔1〕に記載の水性インク組成物。
〔7〕
前記官能化セルロースナノ結晶が、そのそれぞれの表面に配置された複数のカルボキシレート基を含む、前記〔6〕に記載の水性インク組成物。
〔8〕
前記官能化セルロースナノ結晶が、約100mmol/kg~約1600mmol/kgの総酸含量を有する、前記〔7〕に記載の水性インク組成物。
〔9〕
水性溶媒と、1つ以上のカーボンナノ粒子と、1つ以上のセルロースナノ結晶と、を含む、水性インク組成物であって、前記水性溶媒が、水を含み、前記1つ以上のカーボンナノ粒子が、多層ナノチューブを含み、前記1つ以上のセルロースナノ結晶が、約100mmol/kg~約1600mmol/kgの総酸含量を有するカルボキシル化セルロースナノ結晶を含む、水性インク組成物。
〔10〕
前記多層ナノチューブが、裸の多層ナノチューブである、前記〔9〕に記載の水性インク組成物。
〔11〕
前記水性インク組成物が、25℃で約1cP~約15cPの粘度を有する、前記〔9〕に記載の水性インク組成物。
〔12〕
前記水性インク組成物が、25℃で約1.22cP~約1.36cPの粘度を有する、前記〔9〕に記載の水性インク組成物。
〔13〕
前記水性インク組成物が、前記水性溶媒と、前記1つ以上のカーボンナノ粒子と、前記1つ以上のセルロースナノ結晶と、から本質的になる、前記〔9〕に記載の水性インク組成物。
〔14〕
前記水性インク組成物が、前記水性溶媒と、前記1つ以上のカーボンナノ粒子と、前記1つ以上のセルロースナノ結晶と、からなる、前記〔9〕に記載の水性インク組成物。
〔15〕
セルロースナノ結晶溶液を調製するために、前記セルロースナノ結晶を前記水性溶媒と
接触させることと、
前記カーボンナノ粒子を前記セルロースナノ結晶溶液中に分散させるために、前記カーボンナノ粒子を前記セルロースナノ結晶溶液と接触させることと、を含む、前記〔1〕に記載の水性インク組成物を調製するための方法。
〔16〕
前記セルロースナノ結晶をカルボキシレート基で官能化することをさらに含む、前記〔15〕に記載の方法。
〔17〕
前記水性溶媒が、水を含み、前記カーボンナノ粒子が、裸の多層カーボンナノチューブを含む、前記〔16〕に記載の方法。
〔18〕
前記セルロースナノ結晶を用いて、前記裸の多層カーボンナノチューブを少なくとも部分的に安定化させることをさらに含む、前記〔17〕に記載の方法。
〔19〕
プリント回路用の抵抗材料を製造するための方法であって、
前記〔1〕に記載の水性インク組成物を基材上に堆積させることと、
前記水性インク組成物を少なくとも部分的に乾燥させることと、を含む、方法。
〔20〕
前記水性インク組成物を少なくとも部分的に乾燥させることが、前記水性インク組成物を加熱することを含む、前記〔19〕に記載の方法。