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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】双極板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/18 20060101AFI20230306BHJP
   H01M 8/0226 20160101ALI20230306BHJP
   H01M 8/0221 20160101ALI20230306BHJP
   H01M 8/0213 20160101ALI20230306BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/0226
H01M8/0221
H01M8/0213
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019082518
(22)【出願日】2019-04-24
(65)【公開番号】P2020181658
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】502130098
【氏名又は名称】株式会社FJコンポジット
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194283
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 大勇
(72)【発明者】
【氏名】津島 栄樹
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-228059(JP,A)
【文献】特開昭61-285666(JP,A)
【文献】特開2001-015144(JP,A)
【文献】特開2000-200618(JP,A)
【文献】特開2017-045643(JP,A)
【文献】特開2017-022001(JP,A)
【文献】特開2016-041806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/18
H01M 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素で構成された第1粉末と熱可塑性樹脂材料で構成された第2粉末とを原材料として含む、レドックスフロー電池用の双極板の製造方法であって、
前記第1粉末と前記第2粉末とを前記熱可塑性樹脂材料の軟化温度よりも低い温度で攪拌、混合した混合粉末を得る混合工程と、
前記混合粉末を、前記熱可塑性樹脂材料の軟化温度以上である第1の温度に加熱、かつ加圧した後で冷却し、内部に微細空孔を有し密度が最密充填時の理論密度の70%以上90%未満の値とされた前駆体を得る前駆体成形工程と、
前記前駆体、又は前記前駆体を機械的に加工することによって得られた前駆体加工体を、前記第1の温度よりも高第2の温度に加熱する前駆体加熱工程と、
加熱後の前記前駆体又は前記前駆体加工体を金型を介して加圧した後で冷却し、前記前駆体よりも高密度の前記双極板を得る双極板成形工程と、
を具備することを特徴とする双極板の製造方法。
【請求項2】
前記第1粉末の平均粒径は1mmΦ以下であり、前記第2粉末の平均粒径は前記第1粉末の平均粒径の2倍以下とされたことを特徴とする請求項1に記載の双極板の製造方法。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂材料は、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、FEP(パーフルオロエチレンプロペンコポリマー)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)のいずれかであることを特徴とする請求項1又は2に記載の双極板の製造方法。
【請求項4】
前記双極板における前記第1粉末の体積比率を70%以上としたことを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の双極板の製造方法。
【請求項5】
前記第1粉末と前記第2粉末との混合比を第1混合比とした前記混合粉末である第1混合粉末を前記混合工程で得た後に、当該第1混合粉末を用いて前記前駆体成形工程を行うことによって第1前駆体を製造し、
前記第1粉末と前記第2粉末との混合比を前記第1混合比とは異なる第2混合比とした前記混合粉末である第2混合粉末を前記混合工程で得た後に、当該第2混合粉末を用いて前記前駆体成形工程を行うことによって第2前駆体を製造し、
前記第1前駆体と前記第2前駆体とを機械的に加工して組み合わせた前記前駆体加工体を製造する前駆体加工体形成工程を具備し、
当該前駆体加工体に対して前記前駆体加熱工程及び前記双極板成形工程を行い、前記双極板を得ることを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の双極板の製造方法。
【請求項6】
前記前駆体加工体形成工程において、板状の前記第1前駆体、板状の前記第2前駆体の一方に開口部を形成し、他方を機械的加工した後に前記開口部に嵌合させて前記前駆体加工体とすることを特徴とする請求項に記載の双極板の製造方法。
【請求項7】
熱可塑性樹脂材料で構成された補強材を前記前駆体の面内方向において部分的に当接させて配置して前記前駆体加工体とし、
当該前駆体加工体に対して前記前駆体加熱工程及び前記双極板成形工程を行い、前記双極板を得ることを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の双極板の製造方法。
【請求項8】
前記補強材の前記面内方向と垂直な厚さは0.01mm~2mmの範囲とされたことを特徴とする請求項に記載の双極板の製造方法。
【請求項9】
前記補強材はPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)のいずれかで構成されたことを特徴とする請求項又はに記載の双極板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レドックスフロー電池において使用される双極板の製造方法、双極板に関する。
【背景技術】
【0002】
レドックスフロー電池は、電解液中のバナジウム(V)等のイオンの酸化還元反応に基づく起電力を発生させる二次電池であり、特に大電力の貯蔵用に有望である。レッドクスフロー電池は、電解液が隔壁(イオン交換膜)で仕切られた両側に正極、負極がそれぞれ設けられ、正極側、負極側でそれぞれ電解液がポンプによって循環される構成を具備し、充放電サイクル寿命が長い、応答性が速い、環境負荷が小さい等の長所を具備する。ただし、上記の構成を具備する単一のセルの発生電圧は1.4V程度であるため、所望の出力電圧を得るために、上記の構造のセルが多数積層され直列接続された形態とされる。この際、正極側、負極側の電解液は、全てのセルで共通とされて循環させることができる構成とされる。
【0003】
この際のセル間を仕切る板状の構造体として、双極板が用いられる。双極板には高い導電性が要求されると共に、これを介して電解液が滲み出さないような遮液性が求められる。また、双極板には電解液による圧力や、温度変動による熱膨張差に起因する力等も加わるため、これらに対応できる機械的特性(機械的強度:引張強さ等)も要求される。一般的に双極板には所望のパターンの溝等が形成され、こうした所望の構造を具備する双極板を安価で大量に生産できることも要求される。
【0004】
このような双極板として、特許文献1、2に記載されるように、例えば、炭素(カーボン)系の粉末(炭素粉末)と、熱可塑性樹脂とが混合されて成形されたものがある。この構成とすることにより、導電性が炭素粉末によって得られると共に、熱可塑性樹脂によってその遮液性が得られ、かつ金型を用いて所望の構造をもつ成形体を得ることが容易であるために、双極板を安価で大量に生産することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-228059号公報
【文献】特開2012-221775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
実際にこのように熱可塑性樹脂と炭素粉末とが混合された板状の成形体(双極板)を製造するに際して、炭素粉末が一様に混合され一様な導電率を有する成形体を得るためには、その製造工程は、段階的に行われる。まず、ペレット状とされた熱可塑性樹脂と、炭素粉末とがミキサーで一様に混合された後で、熱可塑性樹脂の融点以上に加熱されて熱可塑性樹脂と炭素粉末とが一様に混合された後に冷却され、固体化された混合体(コンパウンド)が得られる。ただし、このコンパウンドは例えばペレット状や、原材料よりも大きな粉末状とされ、少なくとも溝等が形成された本来の双極板の形状とはされていない。このため、このコンパウンドが金型に投入され、改めて熱可塑性樹脂の融点以上の温度で成形されて双極板の形態に成形される。
【0007】
ここで、コンパウンドを製造する際に、一様に炭素粉末を分散させるためには、加熱後における熱可塑性樹脂の流動性が必要となり、このためには、一定比率以上の熱可塑性樹脂が必要となる。一方、双極板における高い導電性を得るためには、炭素粉末の添加濃度を高くすることが要求される。上記の製造方法においては、熱可塑性樹脂の割合を低くすることが困難であるため、炭素粉末の添加濃度が高く一様に高い導電性をもつ双極板を製造することは困難であった。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明の双極板の製造方法は、炭素で構成された第1粉末と熱可塑性樹脂材料で構成された第2粉末とを原材料として含む、レドックスフロー電池用の双極板の製造方法であって、前記第1粉末と前記第2粉末とを前記熱可塑性樹脂材料の軟化温度よりも低い温度で攪拌、混合した混合粉末を得る混合工程と、前記混合粉末を、前記熱可塑性樹脂材料の軟化温度以上である第1の温度に加熱、かつ加圧した後で冷却し、内部に微細空孔を有し密度が最密充填時の理論密度の70%以上90%未満の値とされた前駆体を得る前駆体成形工程と、前記前駆体、又は前記前駆体を機械的に加工することによって得られた前駆体加工体を、前記第1の温度よりも高第2の温度に加熱する前駆体加熱工程と、加熱後の前記前駆体又は前記前駆体加工体を金型を介して加圧した後で冷却し、前記前駆体よりも高密度の前記双極板を得る双極板成形工程と、を具備することを特徴とする。
本発明の双極板の製造方法において、前記第1粉末の平均粒径は1mmΦ以下であり、前記第2粉末の平均粒径は前記第1粉末の平均粒径の2倍以下とされたことを特徴とする
本発明の双極板の製造方法において、前記熱可塑性樹脂材料は、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、FEP(パーフルオロエチレンプロペンコポリマー)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)のいずれかであることを特徴とする。
本発明の双極板の製造方法は、前記双極板における前記第1粉末の体積比率を70%以上としたことを特徴とする。
本発明の双極板の製造方法は、前記第1粉末と前記第2粉末との混合比を第1混合比とした前記混合粉末である第1混合粉末を前記混合工程で得た後に、当該第1混合粉末を用いて前記前駆体成形工程を行うことによって第1前駆体を製造し、前記第1粉末と前記第2粉末との混合比を前記第1混合比とは異なる第2混合比とした前記混合粉末である第2混合粉末を前記混合工程で得た後に、当該第2混合粉末を用いて前記前駆体成形工程を行うことによって第2前駆体を製造し、前記第1前駆体と前記第2前駆体とを機械的に加工して組み合わせた前記前駆体加工体を製造する前駆体加工体形成工程を具備し、当該前駆体加工体に対して前記前駆体加熱工程及び前記双極板成形工程を行い、前記双極板を得ることを特徴とする。
本発明の双極板の製造方法は、前記前駆体加工体形成工程において、板状の前記第1前駆体、板状の前記第2前駆体の一方に開口部を形成し、他方を機械的加工した後に前記開口部に嵌合させて前記前駆体加工体とすることを特徴とする。
本発明の双極板の製造方法は、熱可塑性樹脂材料で構成された補強材を前記前駆体の面内方向において部分的に当接させて配置して前記前駆体加工体とし、当該前駆体加工体に対して前記前駆体加熱工程及び前記双極板成形工程を行い、前記双極板を得ることを特徴とする。
本発明の双極板の製造方法において、前記補強材の前記面内方向と垂直な厚さは0.01mm~2mmの範囲とされたことを特徴とする。
本発明の双極板の製造方法において、前記補強材はPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)のいずれかで構成されたことを特徴とする
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係る双極板の製造方法における混合工程を模式的に示す図である。
図2】本発明の実施の形態に係る双極板の製造方法における前駆体成形工程を示す図である。
図3】本発明の実施の形態に係る双極板の製造方法における前駆体加熱工程、双極板成形工程を示す図である。
図4】本発明の実施の形態に係る双極板の製造方法における前駆体加工工程の一例を示す図である。
図5】本発明の実施の形態に係る双極板の製造方法において、補強材を用いる場合の前駆体加熱工程、双極板成形工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係る双極板の製造方法について説明する。この製造方法においては、特許文献1、2に記載の技術と同様に、主原材料となるのは、炭素粉末(第1粉末)と、粉末状態の熱可塑性樹脂(熱可塑性樹脂粉末:第2粉末)である。最終的に熱可塑性樹脂の軟化点以上の温度で金型を用いた成形がされることによって所望の形態の双極板が形成される点についても同様である。しかしながら、このように最終的な形状の成形体を得るまでの製造工程が特許文献1、2に記載のものとは異なる。この製造方法によって、双極板中における炭素粉末の添加濃度を高くすることができ、双極板の導電率を高く(体積抵抗率を低く)することができる。また、製造の途中において、定形性のある板状のプリフォーム(前駆体)を形成し、これを適宜加工することによって、様々な構造の双極板を容易に製造することができる。
【0012】
ここで原材料として用いられる炭素粉末(第1粉末)は、黒鉛粒子(人造、天然)であり、その密度は2.2g/cm程度とされる。その平均粒径については後述する。
【0013】
原材料となるもう一方の粉末(第2粉末)を構成する熱可塑性樹脂としては、双極板としての使用に適した、強酸、強アルカリに対する耐食性があるオレフィン系樹脂であるPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)や、同様の耐食性があるフッ素樹脂であるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、FEP(パーフルオロエチレンプロペンコポリマー)や、耐熱性のPPS(ポリフェニレンサルファイド)等がある。熱可塑性樹脂粉末の平均粒径、及びその平均粒径の、黒鉛粉末の平均粒径に対する関係については後述する。
【0014】
ここでは、まず、前記の第1粉末と第2粉末とが所望の比率で混合される(混合工程)。この工程は、室温(非加熱:熱可塑性樹脂の軟化点未満)で行われ、図1は、この混合工程を模式的に示す図である。ここで示されるように、例えば、回転するミキサー20中に上記の2種類の粉末(第1粉末10A、第2粉末10B)が所定の比率で投入され、これらの粉末が一様に攪拌・混合された後に、混合粉末10が得られる。
【0015】
次に、この混合粉末10が低温、低圧でプレス成形されて平板状の成形体(プリフォーム:前駆体)が得られる(前駆体成形工程)。図2は、前駆体形成工程を模式的に示す図である。ここで得られるプリフォームは平板状であるため、図2(a)に示されるように、これに対応した形状で上部が開口された箱状の前駆体金型21中に前記の混合粉末10が投入される。その後、図2(b)に示されるように、混合粉末10の量が調整された後に、図2(c)に示されたように、板状の前駆体金型22が前駆体金型21と組み合わされ、図2(d)に示されるように、前駆体金型22が一定の圧力(例えば1MPa程度)で加圧されることによって、プリフォーム(前駆体)30が形成される。この際の温度を熱可塑性樹脂(第2粉末10B)の融点よりも十分に高くすると共に、この圧力を十分に高くすることによって、プリフォーム30を高密度、高強度とすることも可能ではあるが、ここでは、プリフォーム30は、板状とされた形状の定形性が保たれるが、その密度は高くならないように設定される。具体的には、この密度が最密充填時の理論密度の70%以上90%未満となるように設定される。この密度は、最終的に製造されるべき双極板の密度よりも低く、このプリフォーム30の機械的強度は高くない。仮にこのプリフォーム30に所望の形状の溝を形成したとしても、これをそのまま双極板として使用することはできない程度の密度である。このようなプリフォーム30が形成されるように、図2(d)の状態における温度(第1の温度)、圧力(第1の圧力)は設定される。この温度は熱可塑性樹脂(第2粉末10B)の融点に近い温度(例えば融点の±50℃程度)とされるが、その中でも比較的低温であれば、この圧力は高く設定され、この温度が比較的高温であれば、この圧力は低く設定される。
【0016】
前記の通り、従来の製造方法においても、炭素粉末と熱可塑性樹脂粉末とが混合されて固形化したコンパウンドが形成される。しかしながら、このコンパウンドは熱可塑性樹脂を十分に軟化させてから形成されるため、その密度は高い。また、このコンパウンドは、後で再びこれを軟化させて金型を用いて成形するために、ペレット状、あるいは粒径の大きな粉末状とされる。これに対して、このプリフォーム30は、低密度の板状とされる。
【0017】
次に、このプリフォーム30が、最終的な双極板の形状に対応した金型にセットされて加熱され(前駆体加熱工程)、その後にこのプリフォーム30が高密度化されると共にその表面形状が所望の双極板の形状となるように成形が行われる(双極板成形工程)。図3は前駆体加熱工程、双極板成形工程の状況等を模式的に示す図である。ここでは、双極板には複数の溝が形成され、図3においては、この溝は紙面垂直方向に延伸するように形成されているものとする。なお、図3以降の図においては、記載されたプリフォームや双極板の図中上下方向に沿ったサイズと図中左右方向に沿ったサイズの比率は、構造を強調して示すために、実際のものとは異なって示されている。
【0018】
図3(a)に示されるように、前駆体加熱工程において、板状のプリフォーム30は、下側の金型41と上側の金型42で挟持された状態で加熱される。この温度(第2の温度)は、前記の前駆体成形工程における温度(第1の温度)よりも高く設定され、熱可塑性樹脂が十分に軟化するように設定される。
【0019】
図3(b)に示されるように、双極板成形工程は、前駆体加熱工程直後に、金型41あるいは金型42をプリフォーム30の面内方向と垂直な方向に加圧することによって行われ、実際にはこの工程は冷間プレス機を用いて行われる。このため、少なくともこの工程の終了時における温度は室温となる。これによって、プリフォーム30が厚さ方向で加圧され圧縮されることによって高密度化すると共に、最終的な双極板の形状に対応した溝等も形成され、図3(c)に示される双極板50が得られる。このため、前駆体加熱工程、双極板成形工程は、上記のようにプリフォーム30を高密度化し、かつ双極板50における表面の構造を形成するために行われる。ここでは前記の前駆体成形工程とは異なり、溝等が形成されるため、プリフォーム30に印加される圧力(第2の圧力)は一様とはならないが、その圧力は例えば7MPa程度とされる。
【0020】
この製造方法において、最終的に形成される双極板50とプリフォーム30を比較すると、密度あるいは空孔率は異なるものの、第1粉末/第2粉末の存在比率は変わらない。一方、前記の従来の製造方法において製造される双極板と、その途中で形成されるペレット状又は粉末状のコンパウンドとを比較した場合においても、炭素粉末/熱可塑性樹脂の存在比率は変わらない。上記のように混合工程、前駆体成形工程を用いて形成されたプリフォーム30においては、従来の製造方法において形成されたコンパウンドと比べて、第1粉末(炭素粉末)の比率を高めることができる。このため、最終的に製造される双極板50における第1粉末(炭素粉末)の体積比率を例えば70%以上と高くすることができ、双極板50の導電性を高めることができる。この際、双極板50における空孔(微細空孔)の体積比率が10%未満と小さく高密度とすることができるために、その機械的強度も高くなる。
【0021】
この際、上記のような混合工程、前駆体成形工程によって、定形性のある板状のプリフォーム30と、その後の前駆体加熱工程、双極板成形工程によって第1粉末(炭素粉末)が均一に分散された双極板50を得るためには、第1粉末(炭素粉末)の平均粒径は1mmΦ以下、第2粉末(熱可塑性樹脂粉末)の平均粒径は、第1粉末(炭素粉末)の平均粒径の2倍以下とすることが好ましい。第1粉末(炭素粉末)の平均粒径が1mmΦを超えると、双極板中に第1粉末が均一に分散させることが困難である。また、双極板を高密度とするためには、双極板における第1粉末が分散された隙間が第2粉末を構成する熱可塑性樹脂で充填されることが必要であるが、第2粉末の平均粒径を第1粉末の平均粒径の2倍以下とすることで、この隙間が十分に充填される。第2粉末の平均粒径が第1粉末の平均粒径の2倍を超えると、この充填が困難となる。
【0022】
また、上記のように形成された板状のプリフォーム30は定形性を有しているため、これに対する機械的加工が容易である。このため、上記のように製造されたプリフォーム30に対して非熱的な加工を施した加工体(プリフォーム加工体:前駆体加工体)を製造することができる(前駆体加工体形成工程)。このプリフォーム加工体は、プリフォーム30に対して高圧、高温の処理が施されていなければ、元のプリフォーム30と同様の組成(炭素粉末/熱可塑性樹脂粉末比)がそのまま維持され、密度もそのまま維持されている。このため、このプリフォーム加工体をプリフォーム30の代わりとして前記の前駆体加熱工程、双極板成形工程を行なえば、これに対応した構成の双極板を得ることができる。
【0023】
図4は、このような前駆体加工体形成工程で行われる機械的加工の例を示す図である。ここでは、第1粉末/第2粉末比が異なるプリフォーム(第1プリフォーム:第1前駆体)31、プリフォーム(第2プリフォーム:第2前駆体)32が用いられる。プリフォーム31、32は共に前記の混合工程、前駆体成形工程を経て製造され、混合工程における第1粉末/第2粉末混合比率が異なり、例えば、第1粉末(炭素粉末)比はプリフォーム31においてプリフォーム32よりも大きく設定される。前駆体成形工程における温度、圧力、前駆体金型21、22はプリフォーム31、32で異なっていてもよい。また、プリフォーム31、32の厚さは同一に設定される。
【0024】
図4に示されるように、矩形体形状のプリフォーム31は、面内中央部で小さな矩形体として機械的に切断されて形成された、より小さなプリフォーム加工体31Aとされる。一方、同様に矩形体形状のプリフォーム32は、面内中央部がプリフォーム31Aと同一の矩形体形状でくり抜かれた開口部32Bを有するプリフォーム加工体32Aとされる。その後、プリフォーム加工体31Aがプリフォーム加工体32Aにおける開口部32Bに嵌合され、新たなプリフォーム加工体33とされる。この際、接着剤等は不要であり、前駆体加熱工程においてプリフォーム加工体32Aに対するプリフォーム加工体31Aの位置が定まっていればよい。
【0025】
このプリフォーム加工体33に対して、図3と同様に前駆体加熱工程、双極板成形工程を行うことができる。これらの工程で加熱、加圧された後にプリフォーム加工体31Aとプリフォーム加工体32Aは一体化される。このように製造された双極板の形状は図3(c)と同様であるが、面内中央の開口部32B(プリフォーム加工体31A)に対応した部分では炭素粉末組成が高く、その外側の領域では炭素粉末組成が小さくなる。一般的に、炭素粉末/熱可塑性樹脂粉末組成比が大きい方が導電率は高いが機械的強度が低く、炭素粉末/熱可塑性樹脂粉末組成比が小さい方が導電率は低いが機械的強度が高くなる。このため、このプリフォーム加工体33を用いて得られた双極板においては、面内中央で導電性が高く、周囲で機械的強度が高くなる。一般的に、レドックスフロー電池において、双極板はその周辺部付近でパッキン等を用いて固定されて使用される。このため、双極板の周辺部付近では導電性が高いことよりも機械的強度が高いことが望まれる。上記のような双極板は、この点において特に好ましい。
【0026】
このように、組成(第1粉末/第2粉末組成比)が異なる2つのプリフォームを機械的に加工(切断等)し、加工後の各プリフォーム加工体を組み合わせて新たなプリフォーム加工体を用いることができる。上記の例においては、使用された各プリフォームに対応した2つの領域を有する双極板を得ることができる。同様に、3つ以上のプリフォームを用いて、3つ以上の領域を有する双極板を製造することができる。各領域の形状も、その後でこのプリフォーム加工体に対して前駆体加熱工程、双極板成形工程を行うことができる限りにおいて、任意である。
【0027】
また、前記のプリフォーム加工体33のように、一方を他方に嵌合させた平板形状のものではなく、これに対して同様に前駆体加熱工程、双極板成形工程を行うことができる限りにおいて、他の形態のプリフォーム加工体(前駆体加工体)を用いることもできる。例えば、プリフォームに対して、これを部分的に補強するための補強材を張り付けてプリフォーム加工体とすることができる。この補強材は、熱可塑性樹脂で構成された構造体を用いることができる。
【0028】
図5は、このようなプリフォーム加工体を用いて双極板を製造する際の前駆体加熱工程、双極板成形工程における状況を図3に対応させて示す。図5(a)において、前記のプリフォーム30に対して補強材35が左右の上下両面に載置されて金型41、42の間に載置される。補強材35は小さな板状に熱可塑性樹脂で構成される。図5(a)に示されるように、この場合のプリフォーム加工体36は、プリフォーム30に対して補強材35が積層されて構成され、この状態で前駆体加熱工程が行われる。
【0029】
その後、前記と同様に、図5(b)に示されるように双極板成形工程が行われると、補強材35とプリフォーム30は共に圧縮された形で高密度化し、図5(c)に示された双極板51が得られる。この双極板51においては、大部分がプリフォーム30に対応した双極板主部51Aとなっており、図中左右両側の上下が補強材35に対応して熱可塑性樹脂材料のみで構成された補強部51Bとなっている。この場合においても、図4の場合と同様に、面内中央部で導電性が高く、かつ端部で機械的強度が高くなる。
【0030】
図5に示された製造工程を行うためには、プリフォーム加工体36が単純な平板形状に近い形状であることが好ましく、補強材35はプリフォーム30の厚さに対して薄いことが好ましい。補強材35の厚さは0.01mm~2mmの範囲とすることが好ましい。この厚さが0.01mm未満では補強の効果が小さく、2mmを超える場合には、双極板成形工程で図5(c)に示されたように所望の位置に補強部51Bを設けることが困難となる。
【0031】
また、補強材35は第2粉末と同様に熱可塑性樹脂で構成されるが、これらが同一の材料である必要はない。第2粉末における熱可塑性樹脂は粉末として用いられたのに対して、補強材35はシート状に形成されるため、それぞれの態様を安価に実現することができる材料をそれぞれ用いることができる。補強部35には特に機械的強度が高いことが要求され、補強材35を構成する材料としては、例えばPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)がある。
【0032】
なお、上記の例では、プリフォームやプリフォーム加工体がいずれも平板状とされ、双極板成形工程においては、実質的にこれらが圧縮されると共に溝が形成されるような成形が行われた。しかしながら、これらが平板状でなくとも、これらを加熱後に加圧して双極板とすることができる。あるいは、特にプリフォーム加工体を用いて双極板を製造する場合には、プリフォームの形態は所望のプリフォーム加工体が製造しやすいように適宜設定することもできる。すなわち、プリフォームやプリフォーム加工体の形態は平板状に限定されない。
【0033】
以下に、実際に上記の製造方法の実施例、あるいは比較例によって双極板を製造した。その結果(双極板、プリフォーム等)について説明する。
【0034】
(実施例1)
上記の第1粉末(炭素粉末)として、平均粒径20μmの人造黒鉛粒子(密度2.2g/cm)を3kgと、上記の第2粉末(熱可塑性樹脂粉末)として平均粒径10μmのPE(ポリエチレン、密度0.92g/cm)粒子を500g、前記の混合工程によって、混合した。この場合の最密充填時の理論密度は1.83g/cmである。
【0035】
混合工程は、上記の粉末をミキサー(製品名AC-50S:愛工舎製作所)に投入し、1分間高速回転させることによって行われた。その後、前記の前駆体金型21として、内部寸法が880mm×440mm×20mmのアルミニウム製のものが用いられ、前駆体成形工程が行われた。この際の温度は、PEの軟化温度が80℃であるのに対して150℃(第1の温度)とされ、上側の前駆体金型22を用いて2MPaの圧力が印加されて上記の寸法の平板状のプリフォーム30が形成された。プリフォーム30の密度は1.50g/cmであり、前記の最密充填時の理論密度に対する比率は0.82であったが、取扱可能な定形性を有していた。
【0036】
その後、図3に示されるように、このプリフォーム30が金型41、42に挟持され、前駆体加熱工程として、180℃(第2の温度)に加熱された。その後、双極板成形工程として、金型41に300トンの荷重(圧力7.7MPa)が印加され、双極板50が製造された。この双極板50の密度は1.80g/cmであり、前記の最密充填時の理論密度に対する比率は0.98であった。また、体積抵抗値を測定したところ、炭素粉末の組成比が高いことを反映し、10mΩ・cmと低い値が得られた。このため、この双極板50は高密度、高導電性であることが確認された。
【0037】
(比較例1)
第2粉末(熱可塑性樹脂粉末)として平均粒径500μmとした以外は実施例と同様にして、プリフォーム、双極板を製造した。その結果、最密充填時の理論密度は前記と同一であるのに対して、得られた双極板の密度は1.52g/cm(前記の比率=0.83)と大幅に低下した。これは、双極板におけるボイド率が17%であることを意味し、炭素粉末間に熱可塑性樹脂が十分に充填されていないことを意味する。
【0038】
また、ボイド率を反映し、第1粉末/第2粉末組成比が実施例1と同一であるにも関わらず、体積抵抗率が65mΩ・cmと高くなった。遮液性や気密性も実施例1の双極板と比べて劣ることが確認された。
【0039】
同様に、実施例1と同様の製造条件で第2粉末(熱可塑性樹脂粉末)の平均粒径を500μmから徐々に小さくしたところ、第2粉末の平均粒径が40μm(第1粉末の平均粒径の2倍)となった場合において、実施例1と同等の特性の双極板が得られた。
【0040】
(比較例2)
実施例1において、第1粉末(炭素粉末)の平均粒径を200μmと大きくし、比較例1と同様に、第2粉末(熱可塑性樹脂粉末)の平均粒径を変化させた。その結果、第2粉末(熱可塑性樹脂粉末)の平均粒径が400μm以下の場合に、実施例1と同等の特性の双極板が得られた。すなわち、第2粉末の平均粒径が第1粉末の平均粒径の2倍を超えると、緻密な双極板を得ることが困難となることが確認された。
【0041】
(実施例2)
実施例1と同様の第1粉末(炭素粉末)が実施例1と同一量、第2粉末(熱可塑性樹脂粉末)として平均粒径10μmのPP(ポリプロピレンン、密度0.92g/cm)が500g、前記の混合工程によって、混合された。この場合の最密充填時の理論密度は1.83g/cmである。
【0042】
混合工程、前駆体成形工程は、実施例1と同様に行われ、実施例1と同一寸法のプリフォーム30が得られた。ここで、前駆体成形工程における温度(PPの軟化温度=120℃)、圧力も実施例1と同様とされた。このプリフォーム30の密度は1.50g/cm(前記の比率=0.82)であった。
【0043】
その後、実施例1と同様に、図3における前駆体加熱工程、双極板成形工程が行われ、双極板50が製造された。前駆体加熱工程における温度、双極板成形工程における圧力も実施例1と同一とされた。得られた双極板50の密度は1.82g/cmであり、前記の最密充填時の理論密度に対する比率は0.99であった。また、体積抵抗値を測定したところ、5mΩ・cmと低い値が得られた。すなわち、上記の製造方法は、熱可塑性樹脂としてPPを用いた場合においても同様に有効であることが確認できた。
【0044】
(実施例3)
ここでは、図4に示されたようなプリフォーム加工体33が製造され、これを用いて双極板が製造された。ここでは、実施例2と同様の第1粉末(炭素粉末)第2粉末(熱可塑性樹脂粉末)がそれぞれ実施例2と同一量用いられ、前記の混合工程によって、混合された。この混合粉末を用いて、実施例2と同様に実施例2と同一寸法のプリフォーム31が製造された。
【0045】
一方、実施例2と同様の第1粉末(炭素粉末)が1.5kg、実施例2と同様の第2粉末(熱可塑性樹脂粉末)が1.22kg、前記の混合工程によって、混合された。この混合粉末を用いて、実施例2と同様に実施例2と同一寸法のプリフォーム32が製造された。プリフォーム32における炭素粉末の組成比はプリフォーム31における炭素粉末の組成比よりも小さい。
【0046】
その後、図4に示されたように、プリフォーム31が680mm×240mmの矩形形状として切り出されたプリフォーム加工体31Aが得られると共に、プリフォーム32の中央部分にこれと同一寸法の開口部32Bが形成されたプリフォーム加工体32Aが形成された。その後、プリフォーム加工体32Aの開口部32Bにプリフォーム加工体31Aが嵌合されてプリフォーム加工体33が形成された。
【0047】
その後、このプリフォーム加工体33を用いて実施例1、3と同様に前駆体加熱工程、双極板成形工程が行われ、双極板が得られた。この双極板においては、中央部(プリフォーム加工体31Aに対応)の体積抵抗率は5mΩ・cmであるのに対して、周辺部(プリフォーム加工体32Aに対応)の体積抵抗率は120mΩ・cmと高かった。一方、周辺部の曲げ強度は40MPaであり、中央部の約1.5倍であった。このため、図4に示された製造方法(前駆体加工体形成工程)を行うことによって、面内方向において異なる特性を有する双極板を得ることができる。
【0048】
(実施例4)
ここでは、図5に示された製造方法によって、双極板が製造された。ここでは、実施例1と同様のプリフォーム30が製造された。その後、図5(a)における補強材35として、このプリフォーム30の4辺の上下両面に図5(a)における水平方向の幅100mm、厚さ0.5mmのPE製シートを、図5(a)の形態で載置して、金型41、42の間に配置して前駆体加熱工程、双極板成形工程が実施例1と同様に行われた。
【0049】
その結果得られた双極板51においては、中央部(双極板主部51A)では実施例1と同様の体積抵抗率及び曲げ強度を有し、端部から100mm程度の領域(補強部51B)では曲げ強度が中央部の1.5倍となった。このため、補強材35としてPE製シートを用いて図5に示された製造方法を実施することによって、面内方向において異なる特性を有する双極板51を得ることができる。
【0050】
(実施例5)
実施例4において補強材35として用いられたPE製シートの代わりに、同一寸法のPP製シートを同様に用いて同様の条件で双極板51を製造した。その結果、中央部の特性は実施例4と同様であり、かつ端部から100mm程度の領域(補強部51B)では曲げ強度が中央部の1.8倍となった。このため、補強材35としてPP製シートを用いても、図5に示された製造方法を実施することによって、面内方向において異なる特性を有する双極板51を得ることができる。
【0051】
(実施例6)
実施例1と同様の第1粉末(炭素粉末)を同一量用いると共に、第2粉末(熱可塑性樹脂粉末)として、平均粒径20μmのPPS(ポリフェニレンサルファイド)粉末を730g用い、同様に混合工程が行われた。PPS樹脂の密度は1.35g/cmであった。その後の前駆体成形工程における温度は340℃、圧力は0.5MPaとされて実施例1と同一寸法のプリフォーム30が製造された。実施例1と同様の金型を用いて、前駆体加熱工程の温度を360℃とし、双極板成形工程における圧力を25MPaとして、同様に双極板を製造した。その結果、双極板の密度は1.95g/cmであり、前記の最密充填時の理論密度に対する比率は0.99以上であった。
【0052】
PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)等の軟化点が300℃以上と高い熱可塑性樹脂は、耐熱性が高く機械的強度も高いため、双極板を構成するための材料として好ましい。一方、軟化点が高いために、従来は、これらの熱可塑性樹脂と炭素粉末とを、炭素粉末の組成比を高くして混合した複合材料を得ることは困難であった。これに対して、本発明の製造方法によれば、PPSを用いてPEやPPを用いた場合と同様に緻密な双極板が得られた。このため、軟化点が高い熱可塑性樹脂を用いた場合においても、前駆体成形工程や前駆体加熱工程の温度をこれに応じて高めることによって、良好な特性の双極板を得ることができる。
【0053】
上記の実施例以外の熱可塑性樹脂を第2粉末や補強材等として用いても、前駆体成形工程の条件(第1の温度、圧力)、前駆体加熱工程の条件(第2の温度)、双極板成形工程(圧力)を熱可塑性樹脂に応じて設定することによって、同様にプリフォーム、双極板を得ることができる。また、上記の実施例では原材料が第1粉末(炭素粉末)と第2粉末(熱可塑性樹脂粉末)の2成分とされたが、適宜他成分を混入させてもよく、また、第2粉末が2成分(以上)とされていてもよい。こうした場合であっても、上記のように前駆体(あるいは更に前駆体加工体)を経て同様に双極板を形成できる限りにおいて、上記の製造方法を同様に適用することができる。
【0054】
また、図4図5に示された以外の構成を具備する前駆体加工体も、要求される双極板の構造に応じて適宜作成することができる。更に、導電性のために炭素粉末が添加され、熱可塑性樹脂粉末を用いて成形される板状部材であれば、レドックスフロー電池用の双極板以外においても、上記の製造方法を適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
10 混合粉末
10A 第1粉末(炭素粉末)
10B 第2粉末(熱可塑性樹脂粉末)
20 ミキサー
21、22 前駆体金型
30 プリフォーム(前駆体)
31 プリフォーム(第1プリフォーム:第1前駆体)
31A、32A、33、36 プリフォーム加工体(前駆体加工体)
32 プリフォーム(第2プリフォーム:第2前駆体)
32B 開口部
35 補強材
41、42 金型
50、51 双極板
51A 双極板主部
51B 補強部
図1
図2
図3
図4
図5