(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】工作機械における主軸軸受の潤滑廃油回収装置及び潤滑廃油回収方法
(51)【国際特許分類】
F16C 33/66 20060101AFI20230306BHJP
F16C 19/14 20060101ALI20230306BHJP
F16N 7/32 20060101ALI20230306BHJP
F16C 35/12 20060101ALI20230306BHJP
B23Q 11/12 20060101ALI20230306BHJP
B23B 19/02 20060101ALI20230306BHJP
F16N 31/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
F16C33/66 Z
F16C19/14
F16N7/32 B
F16C35/12
B23Q11/12 E
B23B19/02 A
F16N31/00 B
(21)【出願番号】P 2019147879
(22)【出願日】2019-08-09
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】野々村 良太
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】実開平3-57599(JP,U)
【文献】特開2002-18676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16N 31/00
F16C 33/66
F16C 19/14
F16N 7/32
F16C 35/12
B23Q 11/12
B23B 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気と潤滑油とを混合してなるオイルエアが軸受に供給される主軸と、前記主軸の外側に隙間を介して配置され、前記軸受を潤滑した後の潤滑廃油を受ける潤滑廃油受けと、を備えた工作機械において、潤滑廃油を回収する装置であって、
前記潤滑廃油受けに接続される廃油回収管と、
圧縮空気が流れるエアパイプと、
前記エアパイプに設けられ、前記廃油回収管が接続される真空発生器と、
前記エアパイプに設けられる流量調整器と、を含み、
前記流量調整器により、前記エアパイプの圧縮空気の流量を、前記真空発生器による潤滑廃油の吸引量が前記隙間からのエア排出量と略等しくなるように設定したことを特徴とする工作機械における主軸軸受の潤滑廃油回収装置。
【請求項2】
圧縮空気と潤滑油とを混合してなるオイルエアが軸受に供給される主軸と、前記主軸の外側に隙間を介して配置され、前記軸受を潤滑した後の潤滑廃油を受ける潤滑廃油受けと、を備えた工作機械において、潤滑廃油を回収する方法であって、
前記潤滑廃油受けに廃油回収管を接続し、
前記廃油回収管を、圧縮空気が流れるエアパイプに真空発生器を介して接続して、
前記エアパイプに圧縮空気を流すことで前記真空発生器に負圧を発生させ、前記廃油回収管を介して前記潤滑廃油受けから潤滑廃油を吸引すると共に、
前記エアパイプの圧縮空気の流量を、前記真空発生器による潤滑廃油の吸引量が前記隙間からのエア排出量と略等しくなるように設定することを特徴とする工作機械における主軸軸受の潤滑廃油回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マシニングセンタ等の工作機械において、主軸の軸受に用いられた潤滑廃油を回収する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マシニングセンタ等の工作機械において、主軸の軸受には潤滑油が供給される。
図2は、従来の潤滑油供給機構の一例を示す説明図で、まず、主軸ユニット1は、主軸2を軸受3を介して下向きに支持している。軸受3には、オイルエア供給管4を介してオイルエア混合器5が接続されている。オイルエア混合器5は、図示しないタンク及びポンプから潤滑油が供給されるオイル供給管6と、コンプレッサ等のエア駆動源から圧縮空気が供給されるエア供給管7とをオイルエア供給管4に接続し、潤滑油と圧縮空気とを混合する。エア供給管7の上流側には、エア流路を開閉する電磁弁8と、フィルタ10及びミストセパレータ11を含む空気浄化器9と、フィルタ13及びレギュレータ14を含む調圧器12とが設けられている。
【0003】
よって、オイルエア混合器5からオイルエア供給管4を介して圧縮空気を混合した潤滑油(オイルエア)が軸受3に供給されることで、軸受3の潤滑が図られる。
一方、主軸ユニット1内で軸受3の下方には、非回転体である潤滑廃油受け20が設けられて、軸受3を潤滑した後の潤滑廃油を回収するようになっている。潤滑廃油の回収態様として、特許文献1には、潤滑廃油受け(オイルパン)にパイプを接続し、当該パイプに繋がるエアパイプに高速エアを供給することで、水流ポンプの原理で負圧を生じさせてオイルパン内の廃油を吸引する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の潤滑油供給機構においては、潤滑廃油受け20と主軸2との間に隙間Sが存在するため、隙間Sを通過する排出エアの流れにより、当該隙間Sから潤滑廃油が漏れ出て落下するおそれがあった。このため、主軸ユニット1の下方のテーブル21上にセットされるワークWが樹脂材であると、潤滑廃油が落下して付着することがないようにグリス潤滑に変更する等の対応が必要となり、主軸ユニット1の主要部品や加工工程の共通化が阻害されてしまう。特許文献1のように潤滑廃油を吸引するようにしても、吸引量よりも隙間Sを通過する排出エアの量が上回ると、潤滑廃油の落下を防止することはできない。
【0006】
そこで、本発明は、簡単な構成で排出エアによる潤滑廃油の落下のおそれをなくすことができる工作機械における主軸軸受の潤滑廃油回収装置及び潤滑廃油回収方法を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、圧縮空気と潤滑油とを混合してなるオイルエアが軸受に供給される主軸と、前記主軸の外側に隙間を介して配置され、前記軸受を潤滑した後の潤滑廃油を受ける潤滑廃油受けと、を備えた工作機械において、潤滑廃油を回収する装置であって、
前記潤滑廃油受けに接続される廃油回収管と、
圧縮空気が流れるエアパイプと、
前記エアパイプに設けられ、前記廃油回収管が接続される真空発生器と、
前記エアパイプに設けられる流量調整器と、を含み、
前記流量調整器により、前記エアパイプの圧縮空気の流量を、前記真空発生器による潤滑廃油の吸引量が前記隙間からのエア排出量と略等しくなるように設定したことを特徴とする。
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、圧縮空気と潤滑油とを混合してなるオイルエアが軸受に供給される主軸と、前記主軸の外側に隙間を介して配置され、前記軸受を潤滑した後の潤滑廃油を受ける潤滑廃油受けと、を備えた工作機械において、潤滑廃油を回収する方法であって、
前記潤滑廃油受けに廃油回収管を接続し、
前記廃油回収管を、圧縮空気が流れるエアパイプに真空発生器を介して接続して、
前記エアパイプに圧縮空気を流すことで前記真空発生器に負圧を発生させ、前記廃油回収管を介して前記潤滑廃油受けから潤滑廃油を吸引すると共に、
前記エアパイプの圧縮空気の流量を、前記真空発生器による潤滑廃油の吸引量が前記隙間からのエア排出量と略等しくなるように設定することを特徴とする。
ここで、各発明において、潤滑廃油の吸引量と隙間からのエア排出量とが「略等しい」とは、当該吸引量と当該エア排出量とが等しい(差がゼロ)場合と、当該吸引量が当該エア排出量よりも僅かに大きい場合とを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡単な構成で排出エアによる潤滑廃油の落下のおそれをなくすことができる。よって、主軸ユニットの主要部品や加工工程の共通化が図れて、生産効率の低下やコストアップが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、工作機械の一例であるマシニングセンタにおいて、
図2で示した従来の潤滑油供給機構に本発明の潤滑廃油回収装置30を併設した構成を示す説明図である。潤滑油供給機構については
図2と同じ構成のため、重複する説明は省略する。
この潤滑廃油回収装置30は、エア供給管7から分岐してタンク31に至るエア分岐管32と、エア分岐管32に設けられる真空発生器33及び流量調整器34と、潤滑廃油受け20に接続されて真空発生器33に接続される廃油回収管35と、を備えている。すなわち、エア分岐管32を流れる圧縮空気が真空発生器33を通過することで負圧を発生させて、潤滑廃油受け20の潤滑廃油を廃油回収管35で吸い込み、エア分岐管32からタンク31へ回収可能としたものである。
そして、ここでは流量調整器34により、主軸2と潤滑廃油受け20との間の隙間Sを通るエア排出量と、真空発生器33による潤滑廃油の吸引量とが等しくなるように、エア分岐管32での圧縮空気の流量が調整されている。
【0011】
以上の如く構成された潤滑廃油回収装置30においては、主軸2の回転中は、オイルエア混合器5から供給されるオイルエアによって軸受3が潤滑されると、潤滑後の潤滑廃油を潤滑廃油受け20で受ける。これと同時にエア分岐管32を流れる圧縮空気によって真空発生器33で負圧を発生させ、潤滑廃油受け20に受けられた潤滑廃油を廃油回収管35で吸引し、エア分岐管32からタンク31に回収する。
このとき、流量調整器34では、前述のように隙間Sを通るエア排出量と潤滑廃油の吸引量とが等しくなるように圧縮空気の流量を調整しているので、軸受3を潤滑した潤滑廃油は全て潤滑廃油受け20で受けられて廃油回収管35で吸引される。よって、隙間Sから下方へ排出される潤滑廃油がなくなり、ワークW上や加工空間内に落下するおそれがなくなる。また、加工空間内で供給される切削液の飛散により生じるミストも吸引されるため、ミストが軸受3に悪影響を及ぼすおそれも防止される。
【0012】
このように、上記形態の潤滑廃油回収装置30及び潤滑廃油回収方法によれば、潤滑廃油受け20に廃油回収管35を接続し、廃油回収管35を、圧縮空気が流れるエア分岐管32(エアパイプ)に真空発生器33を介して接続して、エア分岐管32に圧縮空気を流すことで真空発生器33に負圧を発生させ、廃油回収管35を介して潤滑廃油受け20から潤滑廃油を吸引すると共に、エア分岐管32での圧縮空気の流量を、隙間Sからのエア排出量と、真空発生器33による潤滑廃油の吸引量とが等しくなるように設定することで、簡単な構成で排出エアによる潤滑廃油の落下のおそれをなくすことができる。よって、主軸ユニット1の主要部品や加工工程の共通化が図れて、生産効率の低下やコストアップが抑えられる。
【0013】
なお、上記形態では、エア分岐管での圧縮空気の流量を、隙間からのエア排出量と、真空発生器による潤滑廃油の吸引量とが等しくなるように設定しているが、これに限らず、真空発生器による潤滑廃油の吸引量が隙間からのエア排出量より僅かに大きくなるように圧縮空気の流量を設定してもよい。
また、潤滑廃油回収装置の構成は上記形態に限らず、真空発生器や流量調整器の位置を変えたりする等、適宜変更可能である。潤滑油供給機構も上記形態に限らない。
【符号の説明】
【0014】
1・・主軸ユニット、2・・主軸、3・・軸受、4・・オイルエア供給管、5・・オイルエア混合器、6・・オイル供給管、7・・エア供給管、8・・電磁弁、9・・空気浄化器、12・・調圧器、20・・潤滑廃油受け、30・・潤滑廃油回収装置、31・・タンク、32・・エア分岐管、33・・真空発生器、34・・流量調整器、35・・廃油回収管、W・・ワーク、S・・隙間。