(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】硫黄含有の芳香族ポリマー及びフルオロエラストマーを含むポリマーアロイ
(51)【国際特許分類】
C08L 81/02 20060101AFI20230306BHJP
C08L 81/06 20060101ALI20230306BHJP
C08L 27/12 20060101ALI20230306BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
C08L81/02
C08L81/06
C08L27/12
C08K3/22
(21)【出願番号】P 2019556949
(86)(22)【出願日】2018-04-19
(86)【国際出願番号】 EP2018059997
(87)【国際公開番号】W WO2018193020
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-03-19
(32)【優先日】2017-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】サングイネーティ, アルド
(72)【発明者】
【氏名】ミレンダ, マルコ
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第93/021272(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/135937(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/178309(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/142983(WO,A1)
【文献】特開平03-172352(JP,A)
【文献】米国特許第05389725(US,A)
【文献】特開2008-308657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- (a)硫黄含有の芳香族ポリマー[芳香族ポリマー(A)]
60~90重量%と、
- (b)少なくとも1種の非架橋型フルオロエラストマー(E)と少なくとも1種の二価金属の酸化物又は水酸化物(MO)との混合物(M)
10~40重量%と
を含
むポリマーアロイ(PA)であって、前述の重量百分率の全てが、ポリマーアロイ(PA)の総重量に対して示され、
前記芳香族ポリマー(A)が、ポリ(アリーレンスルフィド(PAS)又は芳香族スルホンポリマー(SP)であり、
前記混合物(M)は、前記非架橋型フルオロエラストマー(E)100部当たり0.1~10部の範囲で含まれる量で前記少なくとも1種の二価金属の酸化物又は水酸化物(MO)を含み、
前記少なくとも1種の二価金属の酸化物又は水酸化物(MO)が、CaO、Ca(OH)
2
、MgO、Mg(OH)
2
及びそれらの混合物からなる群から選択され、
前記非架橋型フルオロエラストマー(E)が:
- フルオロポリマー樹脂(R)であって、少なくとも1個のフッ素原子を含む少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー[フッ素化モノマー]に由来する繰り返し単位を40重量%超と、場合により、フッ素原子を含まない少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー[水素化モノマー]に由来する繰り返し単位とを含み、実質的に非晶質の生成物が25℃未満のガラス転移温度(Tg)を有するフルオロポリマー樹脂(R)であり、
前記フルオロポリマー樹脂(R)が:
(1)VDF系コポリマーであって、VDFは、以下の類:
(a1)C
2~C
8パーフルオロオレフィン;
(b1
)C
2~C
8
部分フッ素化オレフィン;
(c1)C
2~C
8クロロ、及び/又はブロモ、及び/又はヨード-フルオロオレフィン;
及び
(h1)C
2~C
8非フッ素化オレフィン(Ol)
からなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーと共重合されており、ただし、このようなコモノマーは、VDFと異なる、VDF系コポリマー;又は
(2)TFE系コポリマーであって、TFEは、(a1)
及び(h1)の
類からなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーと共重合されるTFE系コポリマ
ー
を含
む、ポリマーアロイ(PA)。
【請求項2】
前記フルオロポリマー樹脂(R)が、VDF/TFEコポリマー、VDF/TFE/HFPターポリマー、VDF/TFE/CTFEターポリマー、VDF/TFE/TrFEターポリマー、VDF/HFPコポリマー、VDF/TFE/HFP/CTFEポリマーからなる群から選択される請求項
1に記載のポリマーアロイ(PA)。
【請求項3】
前記混合物(M)が、100部の少なくとも1種の非架橋型フルオロエラストマー(E)、0.5~5部のCa(OH)
2、及び0.5~5部のMgOを含む請求項1
又は2に記載のポリマーアロイ(PA)。
【請求項4】
さらに
- (c)少なくとも1種の
半結晶性の熱可塑性フルオロポリマー[フルオロポリマー(F)]
を含む請求項1に記載のポリマーアロイ(PA)。
【請求項5】
前記少なくとも1種のフルオロポリマー(F)が:
- 以下の(a)~(f)からなる群から選択される1種又は複数種のモノマー(FM)に由来する繰り返し単位:
(a)C
2~C
8パーフルオロオレフィン;
(b)含水素C
2~C
8フルオロオレフィン;
(c)C
2~C
8クロロ-及び/又はブロモ-含有のフルオロオレフィン;
(d)式CF
2=CFOR
f1(式中、R
f1はC
1~C
6パーフルオロアルキル基である)のパーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE);
(e)式CF
2=CFOX0(式中、X0は、1個又は複数個のエーテル性酸素原子を含むC
1~C
12パーフルオロオキシアルキル基である)のパーフルオロオキシアルキルビニルエーテル;並びに
(f)式:
[式中、R
f3、R
f4、R
f5及びR
f6のそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、独立して、フッ素原子、場合により1個又は複数個の酸素原子を含むC
1~C
6パーフルオロ(オキシ)アルキル基である]の(パー)フルオロジオキソール;
- 場合により、1種又は複数種の水素化モノマーに由来する繰り返し単位
を含む、請求項
4に記載のポリマーアロイ(PA)。
【請求項6】
前記混合物(M)が、前記ポリマーアロイ(PA)の総重量に対して、0.1~20重量%含まれる量で存在する請求項
4又は
5に記載のポリマーアロイ(PA)。
【請求項7】
以下
- (a)60~90重量%の芳香族ポリマー(A);
- (b)0.1~20重量%の混合物(M);及び
- (c)9~39重量%の少なくとも1種のポリマー(F)
を含み、
前述の重量百分率の全てが、ポリマーアロイ(PA)の総重量に対して示される請求項
4~
6のいずれか1項に記載のポリマーアロイ(PA)。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載のポリマーアロイ(PA)を調製する方法であって、前記方法が、前記芳香族ポリマー(A)、前記混合物(M)及び場合により前記少なくとも1種のフルオロポリマー(F)を溶融混合することを含む方法。
【請求項9】
請求項1~
7のいずれか1項に記載のポリマーアロイを含む物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年04月21日に出願された欧州特許出願公開第17167523.4号に対する優先権を主張し、この出願の全内容は、全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、硫黄含有の芳香族ポリマー及び少なくとも1種のフルオロエラストマーを含むポリマーアロイであって、改善された分散性及び改善された機械物性を有するポリマーアロイに関する。
【0003】
本発明は又、前記ポリマーアロイの調製方法、及び前記ポリマーアロイを含む物品にも関する。
【背景技術】
【0004】
ポリアリーレンスルフィド及びポリアリールスルホン等の硫黄含有の芳香族ポリマーは、スルフィド基、エーテル基及び/又はスルホン基を結合するフェニル基又はビフェニル基から主になる熱安定性エンジニアリングプラスチックである。これらの材料は、優れた耐熱性及び耐薬品性を有する。しかしながら、それらは、機械物性、具体的には耐衝撃性が不十分である。
【0005】
硫黄含有芳香族ポリマーの機械物性を改善することに長い間、関心が集まっている。
【0006】
硫黄含有芳香族ポリマーをフッ素含有のポリマーとブレンドすることにより、両方のタイプの性能及び特性を兼ね備える新規の材料を生成することができる。しかしながら、それらは、非相溶性が高く、配合するのが困難である。
【0007】
特定のポリフェニレンスルフィドを、無機充填材及びフッ素含有ゴム、例えばフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー又はフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレンのターポリマーなどと混合することが既に提案されている。そのようなブレンドは、例えば、米国特許第4395512号明細書(信越化学工業株式会社)に開示されている。この特許文献においては、前記ブレンドは、ポリフェニレンスルフィドと比較して向上した耐衝撃性を示すと記載されている。
【0008】
しかし、硫黄含有芳香族ポリマーとフッ素含有ポリマーとのブレンドは、細かく良好に分散したドメインよりもむしろ個々のポリマーの大きな領域又はドメインを有するモルフォロジーを持つ傾向にある。大きなドメインは、不十分な機械物性を有する材料、例えば不十分な引張特性を有する射出成形部品を生み出す傾向にある。
【0009】
これらのドメイン間の界面は又、不十分な強度を有し、そのことにより、今度は総体的に低い機械物性のブレンドを生み出す。
【0010】
ブレンドの分散性を改善するために、相溶化剤を添加することができる。
【0011】
しかし、米国特許第5470901号明細書(ダイキン工業株式会社)は、ポリフェニレンスルフィド中のフッ素含有エラストマーの分散性を改善するのに必要とされる耐薬品性及び耐熱性を有する好適な相溶化剤は、存在しないと開示する。
【0012】
米国特許第5470901号明細書は、機械物性、具体的には、ポリフェニレンスルフィド及びフルオロエラストマーを含む組成物の耐衝撃性が、前記フルオロエラストマーに架橋を施す場合、改善されることがあり得るとさらに開示する。
【0013】
したがって、両方の原料の有利な性能、とりわけ、硫黄含有芳香族ポリマーの耐薬品性とフッ素含有ポリマーの機械物性の耐熱性とを兼ね備える、硫黄含有芳香族ポリマー中に細かく分散したフッ素含有ポリマーを含むブレンドに関しては、当技術分野において依然として達成されていない。
【発明の概要】
【0014】
本願出願人は、前記フルオロエラストマーを特定量の少なくとも1種の二価の金属酸化物と混合する場合、硫黄含有芳香族ポリマーの非架橋型フルオロエラストマーとの相溶性が、改善することを驚くべきことに見いだした。
【0015】
したがって、本発明の第一目的は:
- (a)硫黄含有の芳香族ポリマー[芳香族ポリマー(A)]と、
- (b)少なくとも1種の非架橋型フルオロエラストマー(E)と少なくとも1種の二価の金属酸化物(MO)との混合物(M)と
を含むポリマーアロイ(PA)を提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、前記ポリマーアロイを調製する方法を提供することである。
【0017】
さらなる目的においては、本発明は、前記ポリマーアロイから作製される物品に関する。
【0018】
本願出願人は、少なくとも1種の非架橋型フルオロエラストマー(E)と少なくとも1種の二価の金属酸化物(MO)とを含む混合物(M)は、特定量添加される場合、他のフルオロポリマー、熱可塑性フルオロポリマーの、特に硫黄含有芳香族ポリマーとの相溶性を改善するのに効果的であることを驚くべきことに見いだした。
【0019】
本発明の尚さらなる目的は、したがって:
- (a)硫黄含有の芳香族ポリマー[芳香族ポリマー(A)];
- (b)少なくとも1種の非架橋型フルオロエラストマー(E)と少なくとも1種の二価の金属酸化物(MO)とを含む混合物(M);及び
- (c)少なくとも1種の熱可塑性フルオロポリマー[フルオロポリマー(F)]
を含むポリマーアロイ(PA)を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】比較例1のブレンドの倍率1000.0xでのSEM画像を示す。
【
図2】実施例1のブレンドの倍率1000.0xでのSEM画像を示す。
【
図3】比較例2のブレンドの倍率1040.0xでのSEM画像を示す。
【
図4】実施例2のブレンドの倍率967.0xでのSEM画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
芳香族ポリマー(A)
本発明で使用する芳香族ポリマー(A)は、ポリ(アリーレンスルフィド)(PAS)又は芳香族スルホンポリマー(SP)であってよい。
【0022】
PASは、主構成単位として式-(Ar-S)-の繰り返し単位を含む、好ましくは80モル%以上の量でその繰り返し単位を含有するポリマーである。Arは、芳香族基を表し、例としては、以下に示す式(I)~(XI)で表す単位(RU1)が挙げられ、それらのうちで、式(I)が特に好ましい:
[式中、R1及びR2は、水素、炭素数1~12のアルキル、炭素数1~12のアルコキシ、炭素数6~24のアリーレン、及びハロゲンから選択される置換基をそれぞれ表し、R1及びR2は、同一でも異なっていてもよい]。
【0023】
したがって、ポリ(アリーレンスルフィド)(PAS)は、好ましくはポリフェニレンスルフィド(PPS)である。
【0024】
本発明の目的上、定義「芳香族スルホンポリマー(SP)」は、繰り返し単位(RU2)の50重量%超、好ましくは70重量%超、より好ましくは90重量%超が、式(XII)の基を少なくとも1つ含む任意のポリマー意味するものとする:
[Ar’は、以下の構造式のうちから選択される基である:
RDは以下の式である:
n=1~6の整数]。
【0025】
繰り返し単位(RU2)は、好ましくは以下の式から選択される:
【0026】
したがって、芳香族スルホンポリマー(SP)は、好ましくはポリスルホン(PSU)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリエーテルスルホン(PESU)、それらのコポリマー及び混合物からなる群から選択され、そして最も好ましくは、ポリスルホン(PSU)又はポリフェニルスルホン(PPSU)である。
【0027】
ポリスルホンは、とりわけSolvay Specialty Polymers USA,L.L.C.からUDEL(登録商標)PSUとして入手可能である。
【0028】
ポリスルホンは、ビスフェノールAと4,4’-ジクロロジフェニルスルホンを縮合することにより、作製される。
【0029】
ポリフェニルスルホンは、とりわけSolvay Specialty Polymers USA,L.L.C.からRADEL(登録商標)Rとして入手可能であり、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン及び4,4’-ビフェノールの反応単位により作製される。
【0030】
ポリフェニルスルホンを調製するのに当技術分野で公知の方法は、米国特許第3634355号明細書;米国特許第4008203号明細書;米国特許第4108837号明細書及び米国特許第4175175号明細書の特許文献に記載される方法であり、それらの全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
混合物(M)
本発明に使用される混合物(M)は、少なくとも1種の非架橋型フルオロエラストマー(E)と少なくとも1種の二価の金属酸化物(MO)とを含む物理的混合物であるのが好ましい。
【0032】
本明細書に使用される、用語「物理的混合物」は、構成成分が化学結合をしないで組み合わされる又は混合されている、具体的には構成成分間に共有化学結合を実質的に含まない組成物を指す。
【0033】
本発明の混合物(M)に使用することができる二価の金属酸化物は、Mg、Ca、Pb及びZnなどの二価金属の酸化物又は水酸化物から選択される。カルシウム及びマグネシウムの酸化物又は水酸化物が特に好ましい。
【0034】
本発明による非架橋型フルオロエラストマー(E)と少なくとも1種の二価の金属酸化物(MO)との混合物は、非架橋型フルオロエラストマー(E)100部当たり0.1~10部の範囲で含まれる量で少なくとも1種の二価の金属酸化物(MO)を含むのが好ましい。
【0035】
好ましい実施形態においては、混合物(M)は、少なくとも1種の非架橋型フルオロエラストマー(E)と、CaO、Ca(OH)2、MgO、Mg(OH)2及びそれらの混合物からなる群から選択される二価の金属酸化物(MO)とを含む。
【0036】
さらに好ましい実施形態においては、混合物(M)は、100部の少なくとも1種の非架橋型フルオロエラストマー(E)、0.5~5部のCa(OH)2、及び0.5~5部のMgOを含む。
【0037】
非架橋型フルオロエラストマー(E)
語句「非架橋型フルオロエラストマー(E)」は、フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む非架橋型ポリマーを明示するために、本発明の枠組み内で使用される。
【0038】
第一変形形態においては、非架橋型フルオロエラストマー(E)は、少なくとも1個のフッ素原子を含む少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー[フッ素化モノマー]に由来する繰り返し単位を40重量%超、好ましくは50重量%超と、場合により、フッ素原子を含まない少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー[水素化モノマー]に由来する繰り返し単位とを含むフルオロポリマー樹脂(R)を意味するものとする。
【0039】
本発明によるフルオロポリマー樹脂(R)は、25℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する実質的に非晶質の生成物である。
【0040】
用語「実質的に非晶質」とは、本明細書においては、30%未満の結晶化度を有するフルオロポリマー樹脂を意味するものとする。
【0041】
フルオロポリマー樹脂(R)は、有利には10℃未満、好ましくは5℃未満、より好ましくは0℃のTgを有する。
【0042】
好適なフッ素化モノマーの非限定的な例は、とりわけ:
- C
2~C
8フルオロ-及び/又はパーフルオロオレフィン、例えばテトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、ペンタフルオロプロピレン及びヘキサフルオロイソブチレン;
- C
2~C
8水素化モノフルオロオレフィン、例えばフッ化ビニル、1,2-ジフルオロエチレン、フッ化ビニリデン(VDF)及びトリフルオロエチレン(TrFE);
- 式CH
2=CH-R
f0(式中、R
f0は、C
1~C
6(パー)フルオロアルキル又は1個若しくは複数のエーテル基を有するC
1~C
6(パー)フルオロオキシアルキルである)に従う(パー)フルオロアルキルエチレン;
- クロロトリフルオロエチレン(CTFE)のようなクロロ-、及び/又はブロモ-、及び/又はヨード-C
2~C
6フルオロオレフィン;
- 式CF
2=CFOR
f1(式中、R
f1は、C
1~C
6フルオロ-又はパーフルオロアルキル、例えば、-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7である)を満たすフルオロアルキルビニルエーテル;
- 式CH
2=CFOR
f1(式中、R
f1は、C
1~C
6フルオロ-又はパーフルオロアルキル、例えば、-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7である)を満たすヒドロフルオロアルキルビニルエーテル;
- 式CF
2=CFOX0(式中、X0は、C
1~C
12オキシアルキル、又はパーフルオロ-2-プロポキシ-プロピルのような、1個又は複数個のエーテル基を有するC
1~C
12(パー)フルオロオキシアルキルである)に従うフルオロ-オキシアルキルビニルエーテル;
- 式CF
2=CFOCF
2OR
f2(式中、R
f2は、C
1~C
6フルオロ-若しくはパーフルオロアルキル、例えば-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7、又は-C
2F
5-O-CF
3のような1個又は複数個のエーテル基を有するC
1~C
6(パー)フルオロオキシアルキルである)に従うフルオロアルキル-メトキシ-ビニルエーテル;
- 式CF
2=CFOY0(式中、Y0は、C
1~C
12アルキル若しくは(パー)フルオロアルキル、又はC
1~C
12オキシアルキル若しくはC
1~C
12(パー)フルオロオキシアルキルであり、前記Y0基は、カルボン酸基又はスルホン酸基を、その酸、酸ハライド若しくは塩の形態で含む)を満たす官能性フルオロ-アルキルビニルエーテル;
- 式:
[式中、R
f3、R
f4、R
f5、R
f6のそれぞれは互いに等しいか又は異なり、独立して、フッ素原子、又は場合により1個又は複数個の酸素原子を含むC
1~C
6フルオロ-又はパー(ハロ)フルオロアルキル基、例えば-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7、
-OCF
3、-OCF
2CF
2OCF
3である]のフルオロジオキソール:
【0043】
水素化モノマーの例は、とりわけ、エチレン、プロピレン、1-ブテンを含む水素化アルファ-オレフィン、ジエンモノマー、スチレンモノマーであり、アルファ-オレフィンが通常使用される。
【0044】
好ましい実施形態においては、フルオロポリマー樹脂(R)は:
(1)VDF系コポリマーであって、VDFは、以下の類:
(a1)C
2~C
8パーフルオロオレフィン、例えばテトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ヘキサフルオロイソブチレン;
(b1)含水素C
2~C
8オレフィン、例えばC
2~C
8非フッ素化オレフィン(Ol)、C
2~C
8部分フッ素化オレフィン、フッ化ビニル(VF)、トリフルオロエチレン(TrFE)、式CH
2=CH-Rf(式中、Rfは、C
1~C
6パーフルオロアルキル基である)のパーフルオロアルキルエチレン;
(c1)C
2~C
8クロロ、及び/又はブロモ、及び/又はヨード-フルオロオレフィン、例えばクロロトリフルオロエチレン(CTFE);
(d1)式CF
2=CFORf(式中、Rfは、C
1~C
6(パー)フルオロアルキル基である)の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル;好ましくは上式(式中、Rfは、C
1~C
6パーフルオロアルキル基、例えばCF
3、C
2F
5、C
3F
7である)のパーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE);
(e1)式CF
2=CFOX(式中、Xは、カテナリー酸素原子を含むC
1~C
12((パー)フルオロ)-オキシアルキル、例えばパーフルオロ-2-プロポキシプロピル基である)の(パー)フルオロ-オキシ-アルキルビニルエーテル;
(f1)式:
[式中、R
f3、R
f4、R
f5、R
f6は互いに等しいか又は異なり、独立して、フッ素原子、及び、とりわけ-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7、-OCF
3、-OCF
2CF
2OCF
3などの、場合により1個又は複数個の酸素原子を含むC
1~C
6(パー)フルオロアルキル基から選択される]
を有する(パー)フルオロジオキソール;好ましくはパーフルオロジオキソール;
(g1)式:
CFX
2=CX
2OCF
2OR’’f
[式中、R’’fは、直鎖又は分枝鎖の、C
1~C
6(パー)フルオロアルキル;C
5~C
6環状(パー)フルオロアルキル;及び1~3個のカテナリー酸素原子を含む、直鎖又は分枝鎖の、C
2~C
6(パー)フルオロオキシアルキルから選択され、X
2=F、Hであり;好ましくは、X
2はFであり、R’’fは、-CF
2CF
3(MOVE1);-CF
2CF
2OCF
3(MOVE2);又は-CF
3(MOVE3)である]
を有する(パー)フルオロ-メトキシ-ビニルエーテル(以下、MOVE);
(h1)C
2~C
8非フッ素化オレフィン(Ol)、例えばエチレン及びプロピレン
からなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーと共重合されており、ただし、そのようなコモノマーは、VDFと異なる、VDF系コポリマーと、
(2) TFE系コポリマーであって、TFEは、(a1)、(c1)、(d1)、(e1)、(g1)、(h1)の類、及び以下の類
(i2)シアニド基を含有するパーフルオロビニルエーテル、例えばとりわけ米国特許第4281092号明細書、米国特許第5447993号明細書及び米国特許第5789489号明細書中に記載されたもの
からなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーと共重合されるTFE系コポリマーと、
を含む、好ましくはそれらからなる。
【0045】
最も好ましいフルオロポリマー樹脂(R)は、以下の組成物(モル%)を有する樹脂である:
(i)フッ化ビニリデン(VDF)35~85%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)10~45%、テトラフルオロエチレン(TFE)0~30%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0~15%;
(ii)フッ化ビニリデン(VDF)50~80%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)5~50%、テトラフルオロエチレン(TFE)0~20%;
(iii)フッ化ビニリデン(VDF)20~30%、C2~C8非フッ素化オレフィン(Ol)10~30%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)及び/又はパーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)18~27%、テトラフルオロエチレン(TFE)10~30%;
(iv)テトラフルオロエチレン(TFE)50~80%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)20~50%;
(v)テトラフルオロエチレン(TFE)45~65%、C2~C8非フッ素化オレフィン(Ol)20~55%、フッ化ビニリデン0~30%;
(vi)テトラフルオロエチレン(TFE)32~60%モル%、C2~C8非フッ素化オレフィン(Ol)10~40%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)20~40%、フルオロビニルエーテル(MOVE)0~30%;
(vii)テトラフルオロエチレン(TFE)33~75%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)15~45%、フッ化ビニリデン(VDF)5~30%、ヘキサフルオロプロペンHFP0~30%;
(viii)フッ化ビニリデン(VDF)35~85%、フルオロビニルエーテル(MOVE)5~40%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0~30%、テトラフルオロエチレン(TFE)0~40%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)0~30%;
(ix)テトラフルオロエチレン(TFE)20~70%、フルオロビニルエーテル(MOVE)30~80%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0~50%。
【0046】
場合により、フルオロポリマー樹脂(R)は又、一般式:
[式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、互いに等しいか又は異なり、H、ハロゲン、基RAlk又は、ORAlkであり、ここで、RAlkは、部分的に、実質的に若しくは完全にフッ素化又は塩素化され得る分岐又は直鎖のアルキルラジカルであり、Zは、場合により酸素原子を有し、好ましくは少なくとも部分フッ素化の直鎖若しくは分岐のC1~C18アルキレン又はシクロアルキレンラジカル、又は例えば欧州特許出願公開第661304A号明細書(AUSIMONT SPA)1995年7月5日に記載される(パー)フルオロポリオキシアルキレンラジカルである]
を有するビス-オレフィン[ビス-オレフィン(OF)]に由来する繰り返し単位も含む。
【0047】
ビス-オレフィン(OF)は、好ましくは、式(OF-1)、式(OF-2)及び式(OF-3):
「式中、jは2~10、好ましくは4~8の整数であり、R1、R2、R3、R4は互いに等しいか又は異なり、H、F、又はC1~5のアルキル又は(パー)フルオロアルキル基である]、
[式中、Aのそれぞれは、互いに且つそれぞれ出現ごとに等しく又は異なり、独立して、F、Cl、及びHから選択され;Bのそれぞれは、互いに且つ出現ごとに等しく又は異なり、独立して、F、Cl、H及びORB(ここで、RBは、部分的に、実質的に又は完全にフッ素化又は塩素化され得る分枝鎖又は直鎖のアルキルラジカルである)から選択され;Eは、エーテル結合が挿入され得る、場合によりフッ素化された、炭素数2~10の二価の基であり;Eは、mが3~5の整数である、-(CF
2)m-基であるのが好ましく;(OF-2)タイプの好ましいビス-オレフィンは、F
2C=CF-O-(CF
2)
5-O-CF=CF
2である];
[式中、E、A及びBは、上に定義したものと同じ意味を有し;R5、R6、R7は、互いに等しく又は異なり、H、F又はC
1~5アルキル又は(パー)フルオロアルキル基である]
に従うものからなる群から選択される。
【0048】
この第一変形形態による好ましい非架橋型フルオロエラストマー(E)は、VDF/TFEコポリマー、VDF/TFE/HFPターポリマー、VDF/TFE/CTFEターポリマー、VDF/TFE/TrFEターポリマー、VDF/HFPコポリマー、VDF/TFE/HFP/CTFEポリマーなどからなる群から選択されるフルオロポリマー樹脂(R)である。
【0049】
第二変形形態においては、非架橋型フルオロエラストマー(E)は、以下を含むフッ素化熱可塑性エラストマー[ポリマー(F-TPE)]から選択してよい:
(i)繰り返し単位の配列からなる少なくとも1種のエラストマーブロック(A)であって、前記配列が少なくとも1種のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含み、前記ブロック(A)が、ASTM D3418に従って測定すると、25℃未満のガラス転移温度を有するエラストマーブロック(A)、
(ii)繰り返し単位の配列からなる少なくとも1種の熱可塑性ブロック(B)であって、前記配列が少なくとも1種のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む熱可塑性ブロック(B)。
【0050】
フッ素化熱可塑性エラストマー[ポリマー(F-TPE)]
本発明の目的上、用語「エラストマー性」は、本明細書において「ブロック(A)」と共に使用する場合には、単独で取り出した際に、ASTM D3418に従い測定すると、2.0J/g未満、好ましくは1.5J/g未満、より好ましくは1.0J/g未満の融解熱を有するポリマー鎖セグメントを意味するものとする。
【0051】
本発明の目的上、用語「熱可塑性」は、本明細書において「ブロック(B)」と共に使用する場合には、単独で取り出した際に半結晶性であり、ASTM D3418に従い測定すると、10.0J/gを超える関連融解熱を有する、検出可能な融点を有するポリマー鎖セグメントを意味するものとする。
【0052】
この第二変形形態によるフッ素化熱可塑性エラストマーは、有利にはブロックコポリマーであり、前記ブロックコポリマーは、通常、少なくとも1種のブロック(A)と少なくとも1種のブロック(B)を交互に含む構造を有する、つまり、前記フッ素化熱可塑性エラストマーは、通常、1つ又は複数のB-A-B型の繰り返し構造を含み、好ましくはその構造からなる。一般に、ポリマー(F-TPE)は、(B)-(A)-(B)型の、即ち両末端で側ブロック(B)に連結した2つの末端を有する中央ブロック(A)を含む構造を有する。
【0053】
ブロック(A)は、多くの場合、代替的にソフトブロック(A)と呼ばれ、ブロック(B)は、多くの場合、代替的にハードブロック(B)と呼ばれる。
【0054】
任意のブロック(A)および(B)は、フッ素化される、即ち、それは、少なくとも1種のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む、ここで、用語「フッ素化モノマー」は、上で定義した通りである。
【0055】
任意のブロック(A)および(B)は、少なくとも1種の水素化モノマーに由来する繰り返し単位をさらに含むことがある、ここで、用語「水素化モノマー」は、上で定義した通りである。
【0056】
エラストマー性ブロック(A)は、上で定義した、少なくとも1種のビス-オレフィン[ビス-オレフィン(OF)]に由来する繰り返し単位をさらに含むことがある。
【0057】
ブロック(A)が、少なくとも1種のビス-オレフィン(OF)に由来する繰り返し単位をさらに含む繰り返し単位配列からなる場合、前記配列は、通常、ブロック(A)の繰り返し単位の総モルを基準にして0.01モル%~1.0モル%、好ましくは0.03モル%~0.5モル%、より好ましくは0.05モル%~0.2モル%含まれる量で、前記少なくとも1種のビス-オレフィン(OF)に由来する繰り返し単位を含む。
【0058】
ポリマー(F-TPE)は:
- 以下の(1)及び(2)からなる群から選択される少なくとも1種のエラストマー性ブロック(A)と、
(1)繰り返し単位の配列からなるフッ化ビニリデン(VDF)系のエラストマーブロック(A
VDF)であって、前記配列が、VDFに由来する繰り返し単位と、VDFと異なる少なくとも1種のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位とを含み、VDFと異なる前記フッ素化モノマーが、通常、以下の(a)~(f)からなる群から選択されるフッ化ビニリデン(VDF)系のエラストマーブロック(A
VDF):
(a)テトラフルオロエチレン(TFE)及びヘキサフルオロプロピレン(HFP)などの、C
2~C
8パーフルオロオレフィン;
(b)フッ化ビニル、トリフルオロエチレン(VF3)、ヘキサフルオロイソブチレン(HFIB)、式CH
2=CH-R
f1(式中、R
f1は、C
1~C
6パーフルオロアルキル基である)のパーフルオロアルキルエチレンなどの、VDFとは異なる含水素C
2~C
8フルオロオレフィン;
(c)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)などのC
2~C
8クロロ-及び/又はブロモ-含有のフルオロオレフィン;
(d)式CF
2=CFOR
f1(式中、R
f1は、CF
3(PMVE)、C
2F
5又はC
3F
7などの、C
1~C
6パーフルオロアルキル基である)のパーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE);
(e)式CF
2=CFOX0(式中、X0は、1個又は複数個のエーテル性酸素原子を含むC
1~C
12パーフルオロオキシアルキル基である)のパーフルオロオキシアルキルビニルエーテルであって、とりわけ式CF
2=CFOCF
2OR
f2(式中、R
f2は、-CF
2CF
3、-CF
2CF
2-O-CF
3、及び-CF
3などの、C
1~C
3パーフルオロ(オキシ)アルキル基である)のパーフルオロメトキシアルキルビニルエーテルを含む、パーフルオロオキシアルキルビニルエーテル;及び
(f)式:
[式中、R
f3、R
f4、R
f5及びR
f6のそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、独立して、フッ素原子、場合により1個又は複数個の酸素原子を含むC
1~C
6パーフルオロ(オキシ)アルキル基、例えば-CF
3、-C
2F
5、
-C
3F
7、-OCF
3又は-OCF
2CF
2OCF
3;
(2)繰り返し単位の配列からなるテトラフルオロエチレン(TFE)系のエラストマー性ブロック(A
TFE)であって、前記配列が、TFEに由来する繰り返し単位と、TFEと異なる少なくとも1種のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位とを含み、前記フッ素化モノマーが、通常、上で定義した(b)、(c)、(d)、(e)の類のものからなる群から選択されるテトラフルオロエチレン(TFE)系のエラストマー性ブロック(A
TFE);
- 繰り返し単位の配列からなる少なくとも1種の熱可塑性ブロック(B)であって、前記配列が、少なくとも1種のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む熱可塑性ブロック(B)と
からなるのが好ましい。
【0059】
任意のブロック(AVDF)及び(ATFE)は、少なくとも1種の水素化モノマーに由来する繰り返し単位をさらに含んでもよく、その水素化モノマーは、エチレン、又はプロピレンなどの水素化アルファ-オレフィンからなる群から選択されてよく、上で詳述された少なくとも1種のビス-オレフィン(OF)に由来する繰り返し単位をさらに含んでもよい。
【0060】
エラストマーブロック(A)は、上で詳述されたブロック(AVDF)であるのが好ましく、前記ブロック(AVDF)は、通常、ブロック(AVDF)の配列の繰り返し単位の総モルに対して、
- フッ化ビニリデン(VDF)に由来する繰り返し単位を45モル%~80モル%と、
- VDFとは異なる少なくとも1種のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を5モル%~50モル%と、
- 場合により、上で詳述された少なくとも1種のビス-オレフィン(OF)に由来する繰り返し単位を1.0モル%まで;及び
- 場合により、少なくとも1種の水素化モノマーに由来する繰り返し単位を30モル%まで
を含む、好ましくはそれらからなる繰り返し単位の配列からなる。
【0061】
ブロック(B)は、繰り返し単位の配列からなってもよく、前記配列は:
- 1種又は複数種のフルオロモノマー、好ましくは以下の(a)~(f)からなる群から選択されるフルオロモノマーに由来する繰り返し単位と、
(a)テトラフルオロエチレン(TFE)及びヘキサフルオロプロピレン(HFP)などのC
2~C
8パーフルオロオレフィン;
(b)フッ化ビニリデン(VDF)、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン(VF3)、ヘキサフルオロイソブチレン(HFIB)、式CH
2=CH-R
f1(式中、R
f1は、C
1~C
6パーフルオロアルキル基である)のパーフルオロアルキルエチレンなどの含水素C
2~C
8フルオロオレフィン;
(c)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)などのC
2~C
8クロロ-及び/又はブロモ-含有のフルオロオレフィン;
(d)式CF
2=CFOR
f1(式中、R
f1は、CF
3(PMVE)、C
2F
5又はC
3F
7などのC
1~C
6パーフルオロアルキル基である)のパーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE);
(e)式CF
2=CFOX0(式中、X0は、1個又は複数個のエーテル性酸素原子を含むC
1~C
12パーフルオロオキシアルキル基である)のパーフルオロオキシアルキルビニルエーテル、とりわけ式CF
2=CFOCF
2OR
f2(ここで、R
f2は、-CF
2CF
3、-CF
2CF
2-O-CF
3、及び-CF
3などのC
1~C
3パーフルオロ(オキシ)アルキル基である)のパーフルオロメトキシアルキルビニルエーテル;
(f)式:
[式中、R
f3、R
f4、R
f5及びR
f6のそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、独立して、フッ素原子、場合により1個又は複数個の酸素原子を含むC
1~C
6パーフルオロ(オキシ)アルキル基、例えば-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7、-OCF
3又は-OCF
2CF
2OCF
3である]のフルオロジオキソール;
- 場合により、上で詳述された1種又は複数種の水素化モノマー、とりわけエチレン、プロピレン、(メタ)アクリル系モノマー、スチレンモノマーに由来する繰り返し単位と
を含む。
【0062】
より具体的には、ブロック(B)は:
- ブロック(BVDF)であって、フッ化ビニリデンに由来する繰り返し単位及び場合によりVDFと異なる1種又は複数種の追加のフッ素化モノマー、例えば、HFP、TFE又はCTFEに由来する繰り返し単位、及び場合により上で詳述された水素化モノマー、例えば、(メタ)アクリル系モノマーに由来する繰り返し単位の配列からなるが、VDFに由来する繰り返し単位の量が、ブロック(BVDF)の繰り返し単位の総モルを基準として、85~100モル%であるブロック(BVDF);
- ブロック(BTFE)であって、テトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位、及び場合によりTFEと異なる追加の過フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位の配列からなるが、TFEに由来する繰り返し単位が、ブロック(B)の繰り返し単位の総モルを基準として、75~100モル%であるブロック(BTFE);
- ブロック(BE/(C)TFE)であって、エチレンに由来する繰り返し単位、並びに追加のモノマーとの組み合わせのこともある、CTFE及び/又はTFEに由来する繰り返し単位の配列からなるブロック(BE/(C)TFE)
からなる群から選択してよい。
【0063】
フッ素化熱可塑性エラストマー中のブロック(A)のブロック(B)との重量比は、通常95:5~10:90の間に含まれる。
【0064】
特定の好ましい実施形態によると、ポリマー(F-TPE)は、かなりの量のブロック(A)を含む。これらの実施形態によると、本発明の方法で使用するポリマー(F-TPE)は、95:5~65:35、好ましくは90:10~70:30の、ブロック(A)のブロック(B)との重量比を特徴とする。
【0065】
本願出願人は、二価の金属酸化物(MO)を非架橋型フルオロエラストマー(E)に添加することにより、硫黄含有の芳香族ポリマーと非架橋型フルオロポリマーとをあらゆる重量比で含み、アロイの成分が均一に分散している、ポリマーアロイの調製が可能となることを驚くべきことに見いだしている。
【0066】
硫黄含有の芳香族ポリマーと、非架橋型フルオロエラストマーと少なくとも1種の二価の金属酸化物の混合物とのブレンドを全ての成分が溶融形態である温度を超える温度で溶融混合した後に、連続相内に分散した複数の離散的ドメイン(discrete domains)が形成され、前記離散的ドメインの粒径の寸法が、溶融混合を施さなかったブレンドと比較して著しく低減することが実際に観察されている。
【0067】
本発明の第一の目的によるポリマーアロイ(PA)は:
- (a)芳香族ポリマー(A)を1~99重量%;及び
- (b)少なくとも1種の非架橋型フルオロエラストマー(E)と少なくとも1種の二価の金属酸化物(MO)とを含む混合物(M)を1~99重量%
を含んでもよく、
前述の重量百分率の全ては、ポリマーアロイ(PA)の総重量に対して示される。
【0068】
一態様においては、本発明は、硫黄含有の芳香族ポリマー[芳香族ポリマー(A)]の連続相と少なくとも1種の非架橋型フルオロエラストマー(E)の離散的ドメインとを含むポリマーアロイを提供する。
【0069】
この第一態様による好ましい一実施形態においては、本発明は:
- (a)芳香族ポリマー(A)を60~90重量%、好ましくは70~85重量%;
- (b)少なくとも1種の非架橋型フルオロエラストマー(E)と少なくとも1種の二価の金属酸化物(MO)とを含む混合物(M)を10~40重量%、好ましくは20~30重量%、より好ましくは15~25重量%
を含むポリマーアロイ(PA)を提供し、
前述の重量百分率の全ては、ポリマーアロイ(PA)の総重量に対して示される。
【0070】
第二態様においては、本発明は、少なくとも1種の非架橋型フルオロエラストマー(E)の連続相と、硫黄含有の芳香族ポリマー[芳香族ポリマー(A)]の離散的ドメインとを含むポリマーアロイを提供する。
【0071】
この第二態様による好ましい一実施形態においては、本発明は:
- (a)芳香族ポリマー(A)を10~40重量%、好ましくは20~30重量%;
- (b)少なくとも1種の非架橋型フルオロエラストマー(E)と少なくとも1種の二価の金属酸化物(MO)とを含む混合物(M)を60~90重量%、好ましくは70~85重量%、
を含むポリマーアロイ(PA)を提供し、
前述の重量百分率の全ては、ポリマーアロイ(PA)の総重量に対して示される。
【0072】
本願出願人は又、少なくとも1種の非架橋型フルオロエラストマー(E)と少なくとも1種の二価の金属酸化物(MO)とを含む混合物(M)の使用は、熱可塑性フルオロポリマーの硫黄含有芳香族ポリマー中での分散性を改善するように用いることができ、したがって、硫黄含有芳香族ポリマーと熱可塑性フルオロポリマーとをあらゆる重量比で含み、ポリマーアロイ中の全成分が均一に分散している、ポリマーアロイの調製が可能となることを驚くべきことに見いだしている。
【0073】
本発明の第二の目的は、したがって:
- (a)硫黄含有の芳香族ポリマー[芳香族ポリマー(A)];
- (b)少なくとも1種の非架橋型フルオロエラストマー(E)と少なくとも1種の二価の金属酸化物(MO)とを含む混合物(M);及び
- (c)少なくとも1種の熱可塑性フルオロポリマー[フルオロポリマー(F)]
を含むポリマーアロイ(PA)を提供することである。
【0074】
熱可塑性フルオロポリマーと硫黄含有の芳香族ポリマーとのブレンドを少なくとも1種の非架橋型フルオロエラストマー(E)と少なくとも1種の二価の金属酸化物(MO)との混合物の特定量の存在下、全ての成分が溶融形態である温度を超える温度で混合することにより、実際に結果として、平均粒径が低減した分散ドメインが連続相内に分散している均一分散のアロイとなる。
【0075】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、硫黄含有の芳香族ポリマーを、少なくとも1種の非架橋型フルオロエラストマー(E)と少なくとも1種の二価の金属酸化物(MO)との混合物と溶融ブレンドすることにより、系内発生相溶化剤として働く、化学結合したフッ素化芳香族部分を付与すると思われている。
【0076】
したがって、この第二目的によると、好ましくは:
- (a)芳香族ポリマー(A)を1~98.9重量%;
- (b)少なくとも1種の非架橋型フルオロエラストマー(E)と少なくとも1種の二価の金属酸化物(MO)とを含む混合物(M)を0.1~20重量%、好ましくは1~10重量%、より好ましくは2~5重量%;及び
- (c)少なくとも1種のフルオロポリマー(F)を1~98.9重量%
を含むポリマーアロイ(PA)が提供され、
前述の重量百分率の全ては、ポリマーアロイ(PA)の総重量に対して示される。
【0077】
フルオロポリマー(F)
語句「フルオロポリマー(F)」は、熱可塑性ポリマー、すなわち、加熱すると軟化し室温で冷却すると硬化し、室温で、十分に非晶質の場合はそのガラス転移温度未満で、又は半結晶性の場合はその融点未満で存在するポリマーを明示するために、本発明の枠組み内で使用される。
【0078】
それにもかかわらず、フルオロポリマー(F)が半結晶性であること、すなわち明瞭な融点を有することは、概して好ましく、好ましいフルオロポリマー(F)は、少なくとも5J/g、好ましくは少なくとも10J/g、より好ましくは少なくとも30J/gの融解熱を有するものである。融解熱の上限は重要ではないが、それにもかかわらず、フルオロポリマー(F)は、概して最高で55J/g、好ましくは最高で53J/g、より好ましくは最高で50J/gの融解熱を有すると理解される。
【0079】
融解熱は、一般に、ASTM D3418標準に従ってDSCにより求められる。
【0080】
この第二目的によるフルオロポリマー(F)は:
- 少なくとも1種のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位であって、「フルオロポリマー(F)」と共に使用する用語「フッ素化モノマー」が、上で定義した通りであるフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位と
- 場合により、上で詳述された1種又は複数種の水素化モノマー、とりわけエチレン、プロピレン、(メタ)アクリル系モノマー、スチレンモノマーに由来する繰り返し単位と
を含む。
【0081】
この第二目的による好ましい一実施形態においては、フルオロポリマー(F)は:
- フッ化ビニリデンに由来する繰り返し単位及び場合によりVDFと異なる1種又は複数種の追加のフッ素化モノマー、例えば、HFP、TFE又はCTFEに由来する繰り返し単位、及び場合により上で詳述された水素化モノマー、例えば、(メタ)アクリル系モノマーに由来する繰り返し単位であるが、VDFに由来する繰り返し単位の量が、フルオロポリマー(F)の繰り返し単位の総モルを基準として、85~100モル%である繰り返し単位
を含む。
【0082】
この第二目的による好ましい別の実施形態においては、フルオロポリマー(F)は:
- テトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位、及び場合によりTFEと異なる追加の過フッ素化モノマー、例えばパーフルオロオキシアルキルビニルエーテルに由来する繰り返し単位であるが、TFEに由来する繰り返し単位が、フルオロポリマー(F)の繰り返し単位の総モルを基準として、75~100モル%である繰り返し単位
を含む。
【0083】
この第二目的による好ましいさらに別の実施形態においては、フルオロポリマー(F)は:
- エチレンに由来する繰り返し単位と、追加のモノマーとの組み合わせのこともある、CTFE及び/又はTFEに由来する繰り返し単位とを含む。
【0084】
この第二目的によるポリマーアロイ中の混合物(M)は、ポリマーアロイ(PA)の総重量に対して0.1~20重量%、好ましくは1~10重量%、より好ましくは2~5重量%含まれる量で存在することができる。
【0085】
この第二目的による一態様においては、本発明は、硫黄含有の芳香族ポリマー[芳香族ポリマー(A)]の連続相と、フルオロポリマー(F)及び非架橋型フルオロエラストマー(E)の離散的ドメインとを含むポリマーアロイを提供する。
【0086】
本態様による好ましい一実施形態においては、ポリマーアロイ(PA)は:
- (a)芳香族ポリマー(A)を60~90重量%、好ましくは70~80重量%;
- (b)少なくとも1種の非架橋型フルオロエラストマー(E)と少なくとも1種の二価の金属酸化物(MO)とを含む混合物(M)を0.1~20重量%、好ましくは1~10重量%、より好ましくは2~5重量%;及び
- (c)少なくとも1種のフルオロポリマー(F)を9重量%~39重量%、好ましくは15重量%~35重量%、より好ましくは20重量%~30重量%
を含み、
前述の重量百分率の全ては、ポリマーアロイ(PA)の総重量に対して示される。
【0087】
この第二目的の第二態様においては、本発明は、フルオロポリマー(F)及び非架橋型フルオロエラストマー(E)の共連続相と、硫黄含有の芳香族ポリマー[芳香族ポリマー(A)]の離散的ドメインとを含むポリマーアロイを提供する。
【0088】
本態様による好ましい一実施形態においては、ポリマーアロイ(PA)は:
- (a)芳香族ポリマー(A)を10~40重量%、好ましくは15~25重量%;
- (b)少なくとも1種の非架橋型フルオロエラストマー(E)と少なくとも1種の二価の金属酸化物(MO)とを含む混合物(M)を0.1~20重量%、好ましくは1~10重量%、より好ましくは2~5重量%;及び
- (c)少なくとも1種のフルオロポリマー(F)を59~89重量%、好ましくは75~85重量%
含む。
【0089】
本発明のポリマーアロイにおける離散的ドメインの平均粒径は、好都合には2ミクロン未満、好ましくは1ミクロン未満、より好ましくは0.5ミクロン未満である。本発明によるポリマーアロイ中の成分の平均粒径は、すべての成分が溶融形態である温度よりも高い温度でブレンド物を溶融混合した後に得られる凍結破砕したブレンド物で、約1000倍の倍率で写真を分析することにより得られる100個の粒子の平均として、走査型電子顕微鏡により測定することができる。
【0090】
ポリマーアロイの機械物性をさらに改善するために、充填材及び可塑剤のような様々な添加剤、例えば、有機エステルは、本発明のポリマーアロイに添加してもよい。充填材の例は、ガラス繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、シリカ-アルミナ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、チタン酸カリウムのウィスカー、ポリアミド繊維、ポリフェノール繊維、シリカ、タルク、粘土、雲母、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、窒化ケイ素などである。
【0091】
さらなる目的においては、本発明は、上で定義したポリマーアロイ(PA)を調製する方法を提供し、前記方法は、芳香族ポリマー(A)、混合物(M)、及び場合により少なくとも1種のフルオロポリマー(F)を溶融混合することを含む。
【0092】
溶融混合は、全ての成分が溶融形態である温度、つまり、ガラス転移温度を超える温度又は全ての成分の溶融温度を超える温度で、実施される。
【0093】
溶融混合の手順においては、芳香族ポリマー(A)、混合物(M)及び、場合により少なくとも1種のフルオロポリマー(F)は、一緒に溶融され、それらのそれぞれの溶融温度に個々になった後に、互いに混合することができ、又は続いて最初に溶融したポリマーに添加することができる。
【0094】
上で定義した第一目的による好ましい一実施形態においては、溶融混合手順は、混合物(M)を溶融形態の芳香族ポリマー(A)に加えて実施される。
【0095】
上で定義した第二目的による好ましい一実施形態においては、溶融混合手順は、混合物(M)を溶融形態の芳香族ポリマー(A)に加え、数分間混合した後、少なくとも1種のフルオロポリマー(F)を添加することにより、実施される。
【0096】
上で定義した第二目的によるさらなる好ましい一実施形態においては、混合物(M)と少なくとも1種のフルオロポリマー(F)を溶融形態の芳香族ポリマー(A)に加える。
【0097】
このように形成したブレンドは、数分間撹拌され、室温まで冷却されて、本発明のポリマーアロイを提供する。
【0098】
本発明のポリマーアロイは、ペレットの形態であるのが好ましい。
【0099】
本発明のポリマーアロイは、本発明のポリマーの優れた特性を維持しながら、改善された機械物性、具体的には引張特性を有する。したがって、本発明のポリマーアロイは、自動車、石油及びガス並びに化学プロセス産業を含む様々な分野で好適に使用される。
【0100】
さらなる目的においては、したがって、本発明は、上で定義したポリマーアロイを含む物品を提供する。本発明による物品は、押出又は成形技術により形成されるパイプ又は備品であり得るのが好ましい。射出成形を用いて、所望の備品を取得するのが好ましい。加えて、本発明の物品は、共押出又はオーバーモールド技術により、他の物品に接合することができる。
【0101】
参照により本明細書に組み込まれる任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合は、本記載が優先するものとする。
【0102】
ここで、本発明が以下の実施例に関連して説明され、その目的は、単に例示的なものであるにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例】
【0103】
原材料
PPS: SolvayからRyton(登録商標)として販売されているポリフェニレンスルフィド
FKM1=フッ素含有量68.5%を有する、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン/テトラフルオレチレン(tetrafluorethylene)ターポリマー
FKM2=フッ素含有量66.0%を有する、フッ化ビニリデン//ヘキサフルオロプロピレンコポリマー
Rhein ChemieからRhenofit(登録商標)-CFとして販売されているCa(OH)2
HallstarからMaglite-DE(登録商標)として販売されているMgO
以下の実施例において密閉式混練機として、ローラーブレードを備えるBrabender 50 EHTを使用した。
【0104】
粒径の測定
ポリマーアロイの成分の平均粒径は、約1000倍の倍率で写真を分析することにより得られる100個の粒子の平均として、SEMにより測定された。
【0105】
引張測定
ASTM D638試験片タイプVに従って、引張測定を行った。
【0106】
比較例1
310℃でローラーブレードを用いて密閉式混練機中でPPSとFKM1のブレンドを調製した。約53グラムのPPSを混錬機中に注ぎ、30rpmで15分間溶融した。次に、18グラムのFKM1を加え、70rpmで15分間混合した。最後に混合物を手動で混錬機から取り出し、液体窒素中で研磨し、続いて、引張解析及びSEM解析のために、1mm厚の膜に圧縮成形した。
【0107】
比較例1で取得したブレンドのSEM画像を
図1に示す。
【0108】
実施例1
第一工程においては、約100グラムのFKM1を2グラムのCa(OH)2及び1グラムのMgOと密閉式混練機中で弾性ブレードを用いて10rpmで30分混合し、圧縮空気で混錬機を冷却した。このようにして得た混合物1を混錬機から取り出し、その後の使用のために液体窒素中で研磨した。第二工程においては、310℃でローラーブレードを用いて密閉式混練機中でPPSと混合物1のブレンドを調製した。約53グラムのPPSを混錬機に注ぎ、30rpmで15分間溶融した後、18グラムの混合物1を加え、70rpmで15分間混合した。最後にブレンドを手動で混錬機から取り出し、液体窒素中で研磨し、続いて、引張解析及びSEM解析のために、1mm厚の膜に圧縮成形した。
【0109】
実施例1で取得したブレンドのSEM画像を
図2に示す。
【0110】
比較例2
310℃でローラーブレードを用いて密閉式混練機中でPPSとFKM2のブレンドを調製した。約53グラムのPPSを混錬機中に注ぎ、30rpmで15分間溶融した。次に、18グラムのFKM2を加え、70rpmで15分間混合した。最後にブレンドを手動で混錬機から取り出し、液体窒素中で研磨し、続いて、引張解析及びSEM解析のために、1mm厚の膜に圧縮成形した。
【0111】
比較例2で取得したブレンドのSEM画像を
図3に示す。
【0112】
実施例2
第一工程においては、約100グラムのFKM2を2グラムのCa(OH)2及び1グラムのMgOと密閉式混練機中で弾性ブレードを用いて10rpmで30分混合し、圧縮空気で混錬機を冷却した。このようにして得た混合物2を混錬機から取り出し、その後の使用のために液体窒素中で研磨した。第二ステップにおいては、310℃でローラーブレードを用いて密閉式混練機中でPPSと混合物2のブレンドを調製した。約53グラムのPPSを混錬機中に注ぎ、30rpmで15分間溶融した。次に、18グラムの混合物2を加え、70rpmで15分間混合した。最後にブレンドを手動で混錬機から取り出し、液体窒素中で研磨し、続いて、引張解析及びSEM解析のために、1mm厚の膜に圧縮成形した。
【0113】
実施例2で取得したブレンドのSEM画像を
図4に示す。
【0114】
【0115】
本発明によるポリマーアロイは、いかなる金属酸化物も金属水酸化物も存在しないで調製したアロイと比較して、非架橋型フルオロエラストマー(E)の平均粒径の著しい低減を示す。
【0116】
この結果は、少なくとも1種の金属酸化物の存在することによる、フルオロエラストマーと硫黄含有芳香族ポリマーとの相容性の改善における効果を実証する。
【0117】
さらに、本発明によるポリマーアロイは、改善した破断点伸びによって実証されるように、改善した引張特性を示す。