(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】イオン源装置
(51)【国際特許分類】
H01J 27/02 20060101AFI20230306BHJP
H01J 37/08 20060101ALI20230306BHJP
H01J 27/18 20060101ALI20230306BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20230306BHJP
H05H 7/08 20060101ALI20230306BHJP
H05H 3/06 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
H01J27/02
H01J37/08
H01J27/18
H05H1/46 C
H05H7/08
H05H3/06
(21)【出願番号】P 2020043867
(22)【出願日】2020-03-13
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐古 貴行
(72)【発明者】
【氏名】大崎 一哉
(72)【発明者】
【氏名】高山 茂貴
(72)【発明者】
【氏名】松田 晋弥
(72)【発明者】
【氏名】スパダベッキヤ ウルデリコ クラウディオ アントニオ
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-231712(JP,A)
【文献】特開2018-161449(JP,A)
【文献】特表2001-504977(JP,A)
【文献】特開2008-077857(JP,A)
【文献】特開2010-062056(JP,A)
【文献】特開2010-251708(JP,A)
【文献】特開2015-065010(JP,A)
【文献】特開2015-109150(JP,A)
【文献】特開2016-100056(JP,A)
【文献】米国特許第05969470(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 27/02
H01J 37/08
H01J 27/18
H05H 1/46
H05H 7/08
H05H 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧が印加されると共に開口部が形成された第1電極を収容する第1真空容器と、
開口部が形成された第2電極を収容する第2真空容器と、
前記第1電極または前記第1真空容器と前記第2電極または前記第2真空容器との間に配置され、絶縁素材で形成された絶縁部材とを有し、
前記第1電極及び前記第2電極のそれぞれの前記開口部を通してイオンビームを引き出すイオン源装置であって、
前記第1電極及び前記第2電極と前記絶縁部材との間に、前記絶縁部材を内側から覆う保護部材が配置され、この保護部材が、可動機構により前記第1電極に対して移動可能に構成され
、
前記保護部材は、前記第1真空容器と前記第2真空容器の少なくとも一方に設置され、
前記保護部材が設置された前記第1真空容器と前記第2真空容器の少なくとも一方に隔離機構を介して、外部に開口可能な第3真空容器が配置され、
前記保護部材は、前記隔離機構の開放時に前記可動機構により、前記絶縁部材の内側空間と前記第3真空容器との間で搬出入可能に構成されたことを特徴とするイオン源装置。
【請求項2】
前記保護部材は、
前記第1電極と
前記第2電極のそれぞれの
前記開口部の中心を結ぶビーム軸の周方向に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のイオン源装置。
【請求項3】
前記第1真空容器または
前記第2真空容器には、その周囲に磁場発生装置が配置されると共に、ガス導入路が接続され、
前記第1真空容器には、マイクロ波導入路を介してマイクロ波発生装置が接続されて、
電子サイクロトロン共鳴により前記第1真空容器内に生成されたプラズマからイオンビームを発生させるよう構成されたことを特徴とする請求項1
または2に記載のイオン源装置。
【請求項4】
前記第2真空容器における
前記第1真空容器との反対側にビーム輸送系、加速器が順次接続されて、粒子線治療装置の入射器として用いられるよう構成されたことを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載のイオン源装置。
【請求項5】
前記第2真空容器における
前記第1真空容器との反対側にビーム輸送系、加速器、中性子生成標的が順次接続されて、中性子源として用いられるよう構成されたことを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載のイオン源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、生成したプラズマからイオンビームを引き出すイオン源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、イオン源装置は、高電圧側電極と接地側電極の二種類を用意し、電極間に高電圧を印加することでプラズマからイオンビームを静電加速して引き出す。このようなイオン源装置としては、プラズマ室のアノード電極と、内部に引き出し電極を設けたイオン引き出し用のケーシングとを用いる構造がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のイオン源装置においては、高電圧印加のために、絶縁素材で構成された絶縁管が両電極間に配置される。ところが、例えば炭素ビームを生成する場合には、イオン源装置の運転により炭素の汚れが絶縁管に付着して絶縁管の耐電圧性能が低下し、このため放電のリスクが増大する。従って、定期的なメンテナンスとして絶縁管表面の汚れの除去、真空運転のためのベーキング、あるいは絶縁管の新品への交換等の作業が必要になる。
【0005】
本発明の実施形態は、上述の事情を考慮してなされたものであり、少なくとも第1電極と第2電極とを電気的に絶縁する絶縁部材の耐電圧性能の低下を防止できるイオン源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態におけるイオン源装置は、高電圧が印加されると共に開口部が形成された第1電極を収容する第1真空容器と、開口部が形成された第2電極を収容する第2真空容器と、前記第1電極または前記第1真空容器と前記第2電極または前記第2真空容器との間に配置され、絶縁素材で形成された絶縁部材とを有し、前記第1電極及び前記第2電極のそれぞれの前記開口部を通してイオンビームを引き出すイオン源装置であって、前記第1電極及び前記第2電極と前記絶縁部材との間に、前記絶縁部材を内側から覆う保護部材が配置され、この保護部材が、可動機構により前記第1電極に対して移動可能に構成され、前記保護部材は、前記第1真空容器と前記第2真空容器の少なくとも一方に設置され、前記保護部材が設置された前記第1真空容器と前記第2真空容器の少なくとも一方に隔離機構を介して、外部に開口可能な第3真空容器が配置され、前記保護部材は、前記隔離機構の開放時に前記可動機構により、前記絶縁部材の内側空間と前記第3真空容器との間で搬出入可能に構成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、少なくとも第1電極と第2電極とを電気的に絶縁する絶縁部材の耐電圧性能の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係るイオン源装置を示す断面図。
【
図2】
図1の保護部材を示し、(A)が円筒形状の場合を、(B)が板形状の場合をそれぞれ示す斜視図。
【
図3】
図1の保護部材が円筒形状である場合を示す部分拡大断面図。
【
図5】
図1の保護部材が板形状である場合を示す部分拡大断面図。
【
図7】第2実施形態に係るイオン源装置を示す断面図。
【
図8】
図7のイオン源装置の変形形態を示す断面図。
【
図9】第3実施形態に係るイオン源装置を示す断面図。
【
図10】
図9の一部を拡大して示す部分拡大断面図。
【
図11】第4実施形態に係るイオン源装置を示す断面図。
【
図12】第5実施形態のイオン源装置が適用された粒子線治療装置を示す概略構成図。
【
図13】第6実施形態のイオン源装置が適用された中性子生成装置を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明する。
[A]第1実施形態(
図1~
図6)
図1は、第1実施形態に係るイオン源装置を示す断面図である。この
図1に示すイオン源装置10は、第1真空容器11、第2真空容器12、第1電極1、第2電極2、絶縁材としての絶縁管13、保護部材14及び可動機構15を有して構成され、第1真空容器11内で生成されたプラズマからのイオンビーム(共に図示せず)を、第1電極1及び第2電極2のそれぞれの開口部1X、2Xを通して引き出すものである。ここでイオンビームは、第1電極1の開口部1Xの中心と第2電極2の開口部2Xの中心とを結ぶビーム軸Pに沿って進行する。
【0010】
第1真空容器11は第1電極1を収容する。更に、第1真空容器11には、第1電極1が存在する内側空間を大気圧よりも低く保持するために真空排気ポンプ16が直接、またはバルブ17介して接続される。真空排気ポンプ16としては、ターボ分子ポンプ、イオンポンプ、ロータリポンプ、ドライポンプ、スクロールポンプ等である。また、バルブ17としては、ゲートバルブやバタフライバルブ等である。更に、第1真空容器11には、コールドカソードゲージ、ヌードイオンゲージ、ピラニーゲージ、ぺニングゲージ等の真空計18が接続されてもよい。
【0011】
第1電極1には、この第1電極1を高電圧に印加し保持するための電源19が接続されている。また、第1電極1の開口部1Xは、プラズマからイオンビームを引き出すために例えば円形状に形成されている。この開口部1Xは、イオンビームを引き出すための電場形成用にテーパ20(
図3、
図5)が形成されている。
【0012】
第2真空容器12は第2電極2を収容する。更に、第2真空容器12には、第2電極2が存在する内側空間を大気圧よりも低く保持するために、第1真空容器11と同様に真空排気ポンプ16が直接、またはバルブ17を介して接続され、また真空計18が接続されてもよい。更に第2電極2の開口部2Xにも、テーパ20と同様なテーパ21(
図3、
図5)が形成されている。
【0013】
絶縁管13は、第1真空容器11と第2真空容器12との間に配置され、絶縁素材にて構成される。これらの絶縁管13と第1真空容器11及び第2真空容器12とは、Oリングやインジウムリング等で真空封止される。絶縁素材としては、セラミックやガラス、ガラスエポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂などがある。従って、この絶縁管13により、第1電極1及び第1真空容器11と第2電極2及び第2真空容器12とが電気的に絶縁される。なお、絶縁管13(絶縁部材)は、第1真空容器11と第2電極2との間、第1電極1と第2真空容器12との間、第1電極1と第2電極2との間にそれぞれ配置されてもよい。
【0014】
保護部材14は、第1電極1及び第2電極2と絶縁管13との間に配置され、イオンビームのビーム軸Pの周方向に設けられて絶縁管13を内側から覆う。この保護部材14は、可動機構15により、第1電極1に対してビーム軸Pの方向に移動可能に構成される。更に、第1実施形態では、保護部材14は可動機構15を介して第2真空容器12に設置されている。
【0015】
この保護部材14は、可動機構15により移動可能な形状に形成される。可動機構15がベローズ22(
図3)に代表される蛇腹機構である場合には、保護部材14は、
図2(A)に示すように、ビーム軸Pが内部に貫通する円筒形状または同軸状に組み合された複数のリング形状に形成される。また、可動機構15がベルトコンベア23(
図5)やアームなどの搬送機構である場合には、保護部材14は、
図2(B)に示すように、ビーム軸P方向の辺の長さがビーム軸Pに垂直方向の辺の長さに等しい正方形または長い長方形のそれぞれ板形状に形成される。
【0016】
図3及び
図4に示すように、可動機構15がベローズ22の場合、例えば円筒形状の保護部材14は、ベローズ22の伸縮により、第1電極1に対してビーム軸Pの方向に移動可能に設けられる。これにより、第1電極1から飛散する汚れは、保護部材14の内面に付着して絶縁管13の内面への付着が抑制される。更に、ベローズ22の伸縮により、保護部材14への汚れの付着箇所を変更して、保護部材14における汚れが付着していない箇所を、第1電極1に対する所定位置に位置づけることが可能になる。
【0017】
上述の円筒形状または複数のリング形状の保護部材14は、ビーム軸Pの周方向に隙間無く設けられることで、ビーム軸Pから絶縁管13を目視したとき、絶縁管13の内表面がビーム軸Pの周方向に露出して目視されることがない。これにより、絶縁管13の内表面への汚れの付着防止が確実化される。また、
図4の破線に示すように、例えば円筒形状の複数の保護部材14が半径方向に重ね合され、それぞれの保護部材14がベローズ22に支持されてもよい。内側の保護部材14のビーム軸P方向における略全内表面に第1電極1からの汚れが付着し堆積したときには、この内側の保護部材14をベローズ22の作用で第1電極1から退避させ、外側の保護部材14(破線表示)に第1電極1からの汚れを付着させるようにしてもよい。
【0018】
図5及び
図6に示すように、可動機構15がベルトコンベア23の場合、例えば板形状の保護部材14は、ベルトコンベア23の搬送により、第1電極1に対してビーム軸P方向に移動可能に設けられる。この場合ベルトコンベア23は、
図6に示すように、ビーム軸Pの周方向における例えば上下左右の各位置に配置される。これにより、第1電極1から飛散する汚れは、各ベルトコンベア23における内側(ビーム軸P側)に位置づけられた保護部材14の表面に付着して、絶縁管13の内面への付着が抑制される。更に、
図5に示すように、ベルトコンベア23のビーム軸P方向の搬送により、汚れが付着していない新たな保護部材14を、ベルトコンベア23における内側(ビーム軸P側)に位置づけ、且つ第1電極1に対する所定位置に位置づけることが可能になる。
【0019】
また、
図6の破線に示すように、ベルトコンベア23により搬送される保護部材14では、絶縁管13の周方向に隣接配置された保護部材14のそれぞれを、絶縁管13の半径方向の異なる位置に位置づけて、ビーム軸Pの周方向に隙間なく配置してもよい。これにより、ビーム軸Pから絶縁管13を目視したとき、絶縁管13の内表面がビーム軸Pの周方向に露出して目視されることがなくなり、絶縁管13の内表面への汚れの付着防止が確実化される。
【0020】
ここで、
図1に示す上述の第1電極1、第2電極2、第1真空容器11、第2真空容器12及び保護部材14の主要な材料としては、加工性に富むステンレスなどの導電性金属のほか、融点の高いモリブデンやタングステン等の材質が用いられる。また、鉄やアルミニウムなどの材料で成形した後に異種の金属(例えば銅)の鍍金を施して、第1電極1、第2電極2、第1真空容器11、第2真空容器12及び保護部材14を形成してもよい。
【0021】
以上のように構成されたことから、本第1実施形態によれば次の効果(1)~(3)を奏する。
(1)
図1に示すように、第1電極1及び第2電極2と絶縁管13との間に、絶縁管13を内側から覆う保護部材14が配置されたので、イオン源装置10の運転により第1電極1から飛散する汚れが保護部材14に付着し、絶縁管13への付着を抑制できる。この結果、第1電極1及び第1真空容器11と第2電極2及び第2真空容器12とを電気的に絶縁する絶縁管13の耐電圧性能の低下を防止できる。これにより、イオン源装置10の短時間のメンテナンスが不要となり、また絶縁管13の交換頻度を大幅に低減できる。
【0022】
(2)保護部材14が、可動機構15(ベローズ22、ベルトコンベア23等)により第1電極1に対して移動可能に構成されたので、例えばベローズ22により保護部材14における汚れが付着していない箇所、または例えばベルトコンベア23により汚れが付着していない新たな保護部材14を、第1電極1に対する所定位置に位置づけることができる。このため、保護部材14に汚れが堆積し、この堆積した汚れにイオンビームが衝突して、第1真空容器11、第2真空容器12及び絶縁管13の各内側空間で構成された真空空間内への汚れの拡散を防止できる。この結果、真空空間の真空度の低下を抑制できるので、イオン源装置10のビーム性能を良好に確保できる。
【0023】
(3)保護部材14が可動機構15を介して第2真空容器12に設置されることで、これらの保護部材14及び可動機構15を第2真空容器12と同電位に容易に保持できる。このため、第1電極1を正の高電圧に設定し第2電極2を接地したときには、保護部材14及び可動機構15を共に接地構造に構成できるので、これらの保護部材14及び可動機構15の構成を簡素化できる。
【0024】
[B]第2実施形態(
図7、
図8)
図7は、第2実施形態に係るイオン源装置を示す断面図である。この第2実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0025】
本第2実施形態のイオン源装置25が第1実施形態と異なる点は、保護部材14が可動機構15を介して第1真空容器11に設置された点である。保護部材14は、第1真空容器11に設置されることで第1真空容器11と同電位になるが、汚れが発生しやすい第1電極1の近傍に配置されることで、この第1電極1からの汚れを確実に付着させることが可能になる。
【0026】
また、
図8に示すように、第2実施形態の変形形態におけるイオン源装置26では、保護部材14が第1真空容器11に設置されると共に、保護部材14と同様に構成された保護部材27が、第1実施形態と同様に可動機構15を介して第2真空容器12に設置される。これらの保護部材14及び27は、ビーム軸P方向に重ね合されることで、ビーム軸P方向に隙間なく配置される。これにより、ビーム軸Pから絶縁管13を目視したときに、絶縁管13の内表面がビーム軸P方向に露出することがない。
【0027】
以上のように構成されたことから、本第2実施形態によれば、第1実施形態の効果(1)及び(2)と同様な効果を奏するほか、次の効果(4)及び(5)を奏する。
【0028】
(4)
図7に示すイオン源装置25では、保護部材14が第1真空容器11に設置されて、汚れが発生し易い第1電極1の近傍に保護部材14が配置されるので、第1電極1からの汚れを保護部材14に効果的に付着させることができる。この結果、絶縁管13への汚れの付着を確実に防止できる。
【0029】
(5)
図8に示すイオン源装置26では、保護部材14が第1真空容器11に設置され、更に保護部材27が第2真空容器12に設置され、これらの保護部材14及び27がビーム軸P方向に重ね合されて、ビーム軸P方向に隙間無く設けられている。これにより、第1電極1から発生した汚れは、保護部材14及び27に付着するので、絶縁管13の内表面に付着することをより一層確実に防止できる。
【0030】
[C]第3実施形態(
図9、
図10)
図9は、第3実施形態に係るイオン源装置を示す断面図である。この第3実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0031】
本第3実施形態のイオン源装置30が第1実施形態と異なる点は、保護部材14が可動機構15を介して設置された第2真空容器12に、外部に開口可能な第3真空容器33が隔離機構31を介して配置され、保護部材14が、隔離機構31の開放時に可動機構15により、絶縁管13の内側空間と第3真空容器33の内側空間との間で搬出入可能に構成された点である。
【0032】
隔離機構31は、ゲートバルブなどの気圧保持可能なバルブである。また、可動機構15は、ベルトコンベア23やアーム等の搬送機構である。例えばベルトコンベア23は、
図10に示すように、絶縁管13の内側空間に設けられたメインベルトコンベア23Aと、第3真空容器33内に設けられたサブベルトコンベア23Bとを有して構成される。これらのメインベルトコンベア23Aとサブベルトコンベア23Bは、隔離機構31を隔ててその両側に配置され、隔離機構31の開放時に、この隔離機構31を通して保護部材14を受け渡して搬送(搬出入)可能とする。
【0033】
汚れが付着した保護部材14を、絶縁管13の内側空間内のメインベルトコンベア23Aから第3真空容器33内へ搬送する場合には、第3真空容器33を外部に対して閉塞した状態で、隔離機構31を開放してメインベルトコンベア23Aからサブベルトコンベア23Bへ保護部材14を搬送(搬出)する。次に、隔離機構31を閉止した後に第3真空容器33を外部に対して開口して、第1真空容器11、第2真空容器12及び絶縁管13の各内側空間を真空状態に維持したまま、サブベルトコンベア23Bにより、汚れが付着した保護部材14を第3真空容器33外へ排出させる。
【0034】
また、汚れが付着していない新たな保護部材14を第3真空容器33外から絶縁管13の内側空間に搬入する場合には、隔離機構31を閉止した状態で第3真空容器33を外部に対し開口して、サブベルトコンベア23Bにより新たな保護部材14を第3真空容器33外から第3真空容器33内に搬入する。次に、第3真空容器33を外部に対して閉塞した状態で隔離機構31を開放し、第1真空容器11、第2真空容器12及び第3真空容器33の各内部空間を真空状態に維持した状態で、メインベルトコンベア23A及びサブベルトコンベア23Bにより、新たな保護部材14を、第3真空容器33内から隔離機構31を通して絶縁管13の内部空間に搬入する。
【0035】
以上のように構成されたことから、本第3実施形態によれば、第1実施形態の効果(1)~(3)と同様な効果を奏するほか、次の効果(6)を奏する。
【0036】
(6)保護部材14が可動機構15を介して設置された第2真空容器12に、第3真空容器33が隔離機構31を介して配置され、この第3真空容器33が外部に対して開口可能に設けられ、第3真空容器33の内側空間と絶縁管13の内側空間との間で、可動機構15(メインベルトコンベア23A、サブベルトコンベア23B)により保護部材14が搬出入(搬送)可能に構成されている。
【0037】
隔離機構31の閉止時に第3真空容器33を外部に対して開口させ、隔離機構31の開放時に第3真空容器33を外部に対して閉塞することで、第1真空容器11、第2真空容器12及び絶縁管13の各内部空間を真空状態に維持した状態で、汚れが付着した保護部材14を第3真空容器33外へ排出し、且つ汚れが付着していない保護部材14を絶縁管13の内側空間に搬入することができる。この結果、イオン源装置30の真空度及び清浄度を良好に確保することができる。
【0038】
なお、第3真空容器33は、保護部材14が可動機構15を介して第1真空容器11に設置されている場合には、この第1真空容器11に隔離機構31を介して配置され、また、保護部材14が可動機構15を介して第1真空容器11及び第2真空容器12に共に設置されている場合には、これらの第1真空容器11及び第2真空容器12に隔離機構31を介して配置される。
【0039】
[D]第4実施形態(
図11)
図11は、第4実施形態に係るイオン源装置を示す断面図である。この第4実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0040】
本第4実施形態のイオン源装置40が第1実施形態と異なる点は、磁場発生装置41、マイクロ波発生装置42、マイクロ波導入路43及びガス導入路44を有して、第1真空容器11内で電子サイクロトロン共鳴によりプラズマを生成し、このプラズマからイオンビームを引き出す点である。
【0041】
つまり、磁場発生装置41は、第1真空容器11及び/または第2真空容器12(例えば第1真空容器11)の周囲に配置される。この磁場発生装置41は、永久磁石または電磁石が用いられ、ソレノイドコイルやヘルムホルツコイルで形成される一様磁場のほか、磁場強度に極値を持つミラー磁場を用いてもよい。また、磁場発生装置41は、例えば第1真空容器11の周方向に永久磁石または電磁石を所定間隔で配置して、多極磁場を形成してもよい。
【0042】
マイクロ波導入路43は真空容器(例えば第1真空容器11)に接続され、このマイクロ波導入路43にマイクロ波発生装置42が接続される。マイクロ波導入路43としては、方形もしくは円形の導波管、または同軸ケーブルなどが用いられる。マイクロ波発生装置42としては、マグネトロンやクライストロン、半導体高周波源などが用いられる。このマイクロ波発生装置42にて発生したマイクロ波がマイクロ波導入路43を介して真空容器内に導入される。
【0043】
ガス導入路44は、第1真空容器11及び/または第2真空容器12(例えば第1真空容器11)に接続される。このガス導入路44には、炭素を含むメタンや二酸化炭素のほか、窒素、酸素、水素、ヘリウム、キセノン、アルゴン等を貯蔵するガスボンベ、または水素発生器などの気体発生器が接続される。このガス導入路44を通して、イオン生成用の上述のガスが真空容器(例えば第1真空容器11)内に導入される。
【0044】
磁場発生装置41による磁場が第1真空容器11内に形成され、マイクロ波発生装置42及びマイクロ波導入路43により第1真空容器11内にマイクロ波が、ガス導入路44により第1真空容器11内にイオン生成用ガスがそれぞれ導入されることで、第1真空容器11内に電子サイクロトロン共鳴によるプラズマが生成される。イオン源装置40は、このプラズマにて発生したイオンビームを、第1電極1及び第2電極2のそれぞれの開口部1X、2Xを通して引き出す。
【0045】
本第3実施形態のイオン源装置40によれば、第1実施形態の効果(1)~(3)と同様な効果を奏するほか、電子サイクロトロン共鳴で生成されたプラズマからイオンビームを引き出すことができる。
【0046】
[E]第5実施形態(
図12)
図12は、第5実施形態のイオン源装置が適用された粒子線治療装置を示す概略構成図である。この第5実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0047】
本第5実施形態のイオン源装置50が第1~第4実施形態と異なる点は、イオン源装置50の第2真空容器12における第1真空容器11との反対側に、粒子線治療装置51(例えば重粒子線癌治療装置)のビーム輸送系52、線形加速器53、主加速器54、高エネルギビーム輸送系55、ビーム照射系56、及び治療室57が順次接続されることで、粒子線治療装置51の入射器として構成された点である。
【0048】
ビーム輸送系52は、イオンビームを通過させる真空容器を備え、更に必要に応じて、ビーム収束系であるアインツェルレンズ、四重極電磁石、四重極静電レンズ等と、ビームを曲げる偏向電磁石、チョッパ等と、ビームの計測系であるファラデーカップ、変流器、ワイヤモニタ、蛍光板、ワイヤチェンバ、ドリフトチェンバ、シンチレータ、電離箱等とを用いて構成される。
【0049】
線形加速器53としては、高周波四重極線形加速器、ドリフトチューブ加速器等が挙げられる。また、主加速器54としては、シンクロトロン、サイクロトロン、シンクロサイクロトロン、固定磁場強収束加速器等が挙げられる。また、高エネルギビーム輸送系55の代表的な構成はビーム輸送系52と同様である。
【0050】
ビーム照射系56としては、壁面に固定された固定照射ポートの他、回転ガントリ等が用いられる。粒子線治療装置51の治療室57には、イオン源装置50から引き出されたイオンビームが、線形加速器53及び主加速器54により加速されて輸送される。
【0051】
以上のように構成されたことから、本第5実施形態のイオン源装置50によれば、第1~第4実施形態の効果(1)~(6)と同様な効果を奏するほか、引き出したイオンビームを粒子線治療装置51のビーム輸送系52、線形加速器53及び主加速器54等へ供給することで、粒子線治療装置51の入射器として機能させることができる。
【0052】
[F]第6実施形態(
図13)
図13は、第6実施形態のイオン源装置が適用された中性子生成装置を示す概略構成図である。この第6実施形態において第1及び第5実施形態と同様な部分については、第1及び第5実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0053】
本第6実施形態のイオン源装置60が第1~第5実施形態と異なる点は、イオン源装置60の第2真空容器12における第1真空容器11との反対側に、中性子生成装置61のビーム輸送系52、線形加速器53及び中性子生成標的62が順次接続されることで、中性子生成装置61の中性子源として構成された点である。
【0054】
中性子生成標的62は、線形加速器53にて加速されたイオンビームのイオン種に応じた、中性子生成量の多い材質で構成される。例えば、この中性子生成標的62は、イオンビームが陽子ビームの場合にはリチウムやベリリウムなどが用いられ、イオンビームが重イオンビームの場合には、融点が高く且つ原子番号の大きな材質(例えばタングステン等)が用いられる。この中性子生成標的62に、イオン源装置60にて発生したイオンビームが線形加速器53により加速されて輸送される。
【0055】
以上のように構成されたことから、本第6実施形態のイオン源装置60は、第1~第4実施形態の効果(1)~(6)と同様な効果を奏するほか、引き出したイオンビームを中性子生成装置61の中性子生成標的62へ供給して中性子を生成させることで、中性子生成装置61の中性子源として機能させることができる。
【0056】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができ、また、それらの置き換えや変更は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1…第1電極、2…第2電極、1X、2X…開口部、10…イオン源装置、11…第1真空容器、12…第2真空容器、13…絶縁管(絶縁部材)、14…保護部材、15…可動機構、25、26…イオン源装置、27…保護部材、30…イオン源装置、31…隔離機構、33…第3真空容器、40…イオン源装置、41…磁場発生装置、42…マイクロ波発生装置、43…マイクロ波導入路、44…ガス導入路、50…イオン源装置、51…粒子線治療装置、52…ビーム輸送系、53…線形加速器、54…主加速器、60…イオン源装置、61…中性子生成装置、62…中性子生成標的、P…ビーム軸