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特許7237896屈曲可能なガラススタックアセンブリおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】屈曲可能なガラススタックアセンブリおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 17/10 20060101AFI20230306BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20230306BHJP
   B32B 37/14 20060101ALI20230306BHJP
   C03C 21/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
B32B17/10
B32B27/36
B32B37/14 Z
C03C21/00 101
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020132938
(22)【出願日】2020-08-05
(62)【分割の表示】P 2017509638の分割
【原出願日】2015-08-11
(65)【公開番号】P2020199771
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2020-09-02
(31)【優先権主張番号】62/039,120
(32)【優先日】2014-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】テレサ チャン
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー マイケル グロス
(72)【発明者】
【氏名】グアンリー フゥ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス ジェイムズ スミス
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ アーネスト ウェブ
【審査官】櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2012-0016906(KR,A)
【文献】国際公開第2014/035942(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/166343(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C03C 15/00-23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス素子及び第2の層を具備するスタックアセンブリであって、
25μm~125μmの第1の厚さと、第1および第2の主面とを有する前記ガラス素子であって、
(a)第1および第2の主面を有する第1のガラス層と、
(b)前記ガラス層の前記第2の主面から前記ガラス層中の第1の深さまで延在する圧縮応力領域であって、前記層の前記第2の主面における少なくとも100MPaの圧縮応力によって画定され、5μm以下の最大欠陥寸法を有する圧縮応力領域と
をさらに含む前記ガラス素子と;
前記ガラス層の前記第2の主面に結合した第2の厚さを有する前記第2の層であって、ポリエチレンテレフタレート及びポリメタクリル酸メチルの少なくとも一方を含むポリマと光学的に透明な接着剤(OCA)との複合材料を含み、前記OCAが前記ガラス層の前記第2の主面に結合し、前記ポリマの層、前記OCA、並びに前記ガラス層の厚さ及び弾性率が、前記第の主面が張力下にある場合に、前記第2の層に結合しない場合の前記ガラス層の中立軸の位置と比較して、前記ガラス層の前記第2の主面に向かって前記中立軸が移動するよう構成された前記第2の層と
を有する前記スタックアセンブリにおいて、
前記ガラス素子が、
(a)25℃および相対湿度50%において前記ガラス素子を3mm~10mmの曲げ半径で少なくとも60分間維持する場合に破壊が起こらないことと、
(b)前記ガラス素子の前記第2の主面が、(i)1GPa未満の弾性率を有する厚さ25μmの感圧接着剤および(ii)10GPa未満の弾性率を有する厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートの層によって支持され、かつ、前記ガラス素子の前記第1の主面が、直径200μmの平底を有するステンレス鋼ピンによる負荷を受ける場合に、1.5kgf(14.7N)を超える貫入抵抗と、
(c)8H以上の鉛筆硬度と、
(d)前記第2の主面と前記第1の厚さの半分との間に位置する前記ガラス層中の中立軸と
により特徴付けられる、スタックアセンブリ。
【請求項2】
前記ガラス層の前記第2の主面における前記圧縮応力が300MPa~1000MPaであることを特徴とする請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記第1の深さが、前記ガラス層の前記第2の主面から前記ガラス層の前記厚さの3分の1以下に設定されることを特徴とする請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記ガラス層が端部をさらに含み、
前記ガラス素子が、前記端部から前記ガラス層中の端部深さまで延在する端部圧縮応力領域をさらに含み、
前記端部圧縮応力領域が、前記端部における少なくとも100MPaの圧縮応力によって画定されることを特徴とする請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記第2の層が、前記ガラス層の弾性率よりも低い弾性率を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記圧縮応力領域が2.5μm以下の最大欠陥寸法を有することを特徴とする請求項1に記載のアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条の下で、2014年8月19日に出願された米国仮特許出願第62/039120号(その内容に本明細書が依拠し、その全体が参照により本明細書に援用される)の優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、一般に、ガラススタックアセンブリ、素子、および層、ならびにそれらの種々の製造方法に関する。特に、本開示は、限定するものではないが薄膜トランジスタ(TFT)バックプレーン、有機発光ダイオード(OLED)デバイス、コンフォーマブルディスプレイスタック、大型曲面ディスプレイ、および汚れ止め板などの用途のための、これらの構成要素の積層が最適化され屈曲可能で貫入抵抗性の種類のもの、およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
従来剛性である製品および部品の可撓性の種類のものが、新しい用途のために概念化されている。たとえば、可撓性電子デバイスによって、薄く、軽量で、可撓性の性質を得ることができ、それによって新しい用途、たとえば曲面ディスプレイおよびウェアラブルデバイスの可能性が生じる。これらの可撓性電子デバイスの多くは、これらのデバイスの電子部品を保持し搭載するための可撓性基板を必要とする。金属箔は、熱安定性および耐薬品性などのいくつかの利点を有するが、高コストであり光透過性がないことが問題となる。ポリマー箔は、疲労破壊に対する抵抗性などのいくつかの利点を有するが、光透過性がわずかであり、熱安定性が不十分であり、機密性が制限されることが問題となる。
【0004】
これらの電子デバイスの一部では、可撓性ディスプレイが使用される場合もある。光透過性および熱安定性が可撓性ディスプレイ用途に重要な性質となることが多い。さらに、可撓性ディスプレイは、特にタッチスクリーン機能を有する、および/または折り畳み可能である可撓性ディスプレイの場合に、小さな曲げ半径において破壊に対する抵抗性などの高い疲労抵抗および貫入抵抗を有するべきである。
【0005】
従来の可撓性ガラス材料では、可撓性基板および/またはディスプレイの用途に必要な性質の多くが得られる。たとえば、極薄ガラス(<200μm)は、これらの用途において、金属およびポリマーの代替品に対して透明性、化学安定性、および引っかきに対する抵抗性を提供する役割を有することが期待される。しかし、これらの可撓性用途にガラス材料を利用しようとする試みは、これまでほとんど失敗している。一般に、ガラス基板は、ますます小さくなる曲げ半径を実現するために、非常に小さい厚さレベル(<25μm)で製造することができる。これらの「薄い」ガラス基板は、貫入抵抗が制限されることが欠点である。同時に、より厚いガラス基板(>150μm)は、より良好な貫入抵抗を有するように製造できるが、これらの基板は、屈曲時の適切な疲労抵抗および機械的信頼性が不足している。
【0006】
たとえば折り畳み可能なディスプレイ用途に関連する屈曲条件下で、このような薄いガラス基板は、デバイスのディスプレイ側とは反対側の主面(たとえば、屈曲中の凸状の側)において最大引張曲げ応力が生じる。特に、このような折り畳み可能なディスプレイ中のガラス基板は、基板のディスプレイ側が(たとえば財布のように)互いの上に折り重ねられるように曲げられるように意図され、それらの内側の面(すなわち、ディスプレイ側表面とは反対側の表面)は張力下に置かれる。このような引張応力は、曲げ半径または曲率半径の減少とともに増加する。これらの主面において、傷およびその他の欠陥が存在しうる。結果として、それらの使用環境でこのような薄いガラス基板に加えられる屈曲力によって、これらのガラス基板は特に引張関連および疲労関連の破壊が生じやすくなり、場合によりそのような傷および欠陥において亀裂が開始する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、可撓性基板の信頼性の高い使用、および/またはディスプレイ用途および機能のため、特に可撓性電子デバイス用途のためのガラス材料、ガラススタックアセンブリ、部品、およびその他の関連するアセンブリが必要とされている。さらに、使用環境において生じる応力に留意するこのような可撓性ガラスアセンブリおよび部品を開発するための材料の設計および加工方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様によると、約25μm~約125μmの第1の厚さと、第1および第2の主面とを有するガラス素子を含むスタックアセンブリが提供される。このガラス素子は、(a)第1および第2の主面を有する第1のガラス層と、(b)ガラス層の第2の主面からガラス層中の第1の深さまで延在する圧縮応力領域において、層の第2の主面における少なくとも約100MPaの圧縮応力によって画定される圧縮応力領域とをさらに含む。本発明のスタックアセンブリは、第2の厚さを有するガラス層の第2の主面に結合した第2の層も含む。ある態様では、第2の層は、ガラス層の弾性率よりも低い弾性率を有する。上記ガラス素子は、(a)約25℃および相対湿度約50%において素子を約3mm~約20mmの曲げ半径で少なくとも60分間維持する場合に破壊が起こらないことと、(b)素子の第2の主面が、(i)約1GPa未満の弾性率を有する厚さ約25μmの感圧接着剤(PSA)および(ii)約10GPa未満の弾性率を有する厚さ約50μmのポリエチレンテレフタレート層によって支持され、素子の第1の主面が、直径200μmの平底を有するステンレス鋼ピンによる負荷を受ける場合に、約1.5kgf(約14.7N)を超える貫入抵抗と、(c)8H以上の鉛筆硬度と、(d)第2の主面と第1の厚さの半分との間に位置するガラス層中の中立軸とを特徴とする。
【0009】
ある実施形態では、本発明のガラス素子は、第1のガラス層の下に配置される1つ以上の追加のガラス層および1つ以上のそれぞれの圧縮応力領域をさらに含むことができる。たとえば、ガラス素子は、2、3、4、またはそれを超える数の追加のガラス層および対応する追加の圧縮応力領域を第1のガラス層の下に含むことができる。
【0010】
一態様によると、約25μm~約125μmの第1の厚さを有するガラス層を含むガラス物品が提供される。この層は、(a)第1の主面と、(b)第2の主面と、(c)ガラス層の第2の主面からガラス層中の第1の深さまで延在する圧縮応力領域において、層の第2の主面における少なくとも約100MPaの圧縮応力によって画定される圧縮応力領域とをさらに含む。このガラス物品は、第2の厚さを有するガラス層の第2の主面に結合した第2の層も含む。ある態様によると、第2の層は、ガラス層の弾性率よりも低い弾性率を有する。上記ガラス層は、(a)約25℃および相対湿度約50%において層を約3mm~約20mmの曲げ半径で少なくとも60分間維持する場合に破壊が起こらないことと、(b)層の第2の主面が、(i)約1GPa未満の弾性率を有する厚さ約25μmの感圧接着剤および(ii)約10GPa未満の弾性率を有する厚さ約50μmのポリエチレンテレフタレート層によって支持され、層の第1の主面が、直径200μmの平底を有するステンレス鋼ピンによる負荷を受ける場合に、約1.5kgf(約14.7N)を超える貫入抵抗と、(c)8H以上の鉛筆硬度と、(d)第2の主面と第1の厚さの半分との間に位置するガラス層中の中立軸とを特徴とする。
【0011】
ある実施形態では、ガラス層は、アルカリを含有しないまたはアルカリを含有するアルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、ホウアルミノケイ酸塩、またはケイ酸塩のガラス組成物を含む。ガラス層の厚さは約50μm~約100μmであってよい。ある態様によると、ガラス層の厚さは60μm~約80μmの範囲であってよい。
【0012】
ある実施形態では、ガラス素子またはガラス層の曲げ半径は約3mm~約20mmであってよい。別の態様では曲げ半径は約3mm~約10mmであってよい。
【0013】
ある態様によると、ガラス素子またはガラス層は、ガラス素子または層の第1の主面上(たとえば、スタックアセンブリのディスプレイ側の上)に配置される低摩擦係数の第3の層を含むことができる。ある態様によると、第3の層は、熱可塑性プラスチックおよび非晶質フルオロカーボンからなる群から選択されるフルオロカーボン材料を含むコーティングであってよい。第3の層は、シリコーン、ワックス、ポリエチレン、ホットエンド、パリレン、およびダイヤモンド様コーティング調製物からなる群の1つ以上を含むコーティングであってもよい。さらに、第3の層は、酸化亜鉛、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、六方晶窒化ホウ素、およびホウ化アルミニウムマグネシウムからなる群から選択される材料を含むコーティングであってよい。ある実施形態によると、第3の層は、酸化亜鉛、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、六方晶窒化ホウ素、およびホウ化アルミニウムマグネシウムからなる群から選択される添加剤を含むコーティングであってよい。
【0014】
ある実装形態では、第2の層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)と光学的に透明な接着剤(OCA)との複合材料を含むことができる、またはのみからなることができ、接着剤はガラス層または素子の第2の主面に結合することができる。第2の層は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)とOCAとの複合材料を含むこともできる、またはのみからなることもでき、接着剤はガラス層または素子の第2の主面に結合することができる。スタックアセンブリの個別の用途によって、ガラス層または素子よりも低い弾性率を有する第2の層の構造として、別の材料、材料の組合せ、および/または構造を使用することができる。ある実装形態では、ガラス素子または層の厚さおよび弾性率は、第2の層の厚さおよび弾性率とともに、ガラス層または素子中の中立軸がガラス層または素子の第2の主面に向かって移動するように構成される。
【0015】
ある態様では、第2の主面における圧縮応力領域内の圧縮応力は約300MPa~1000MPaである。圧縮応力領域は、ガラス層の第2の主面において5μm以下の最大欠陥寸法を含むこともできる。ある場合では、圧縮応力領域は、2.5μm以下、またはさらには0.4μm以下の最大欠陥寸法を含む。ある実装形態では、第1の主面において第2の圧縮応力領域を含むこともできる。ガラス層または素子の1つ以上の端部においてさらなる圧縮領域を形成することもできる。これらのさらなる圧縮応力領域によって、用途に応じた引張応力が必ずしも最大とならないデバイスのディスプレイ側の上などの別の位置における、応力によって誘発される亀裂および表面の傷に関連してガラス中に発生する伝播を軽減またはなくすさらなる利点を得ることができる。
【0016】
別の態様では、圧縮応力領域は、複数のイオン交換可能な金属イオンおよび複数のイオン交換された金属イオンを含み、イオン交換された金属イオンは、圧縮応力が生じるように選択される。ある態様では、イオン交換された金属イオンは、イオン交換可能な金属イオンの原子半径よりも大きい原子半径を有する。別の一態様によると、ガラス層は、コア領域と、コア領域上に配置された第1および第2のクラッド領域とをさらに含むことができ、さらに、コア領域の熱膨張係数はクラッド領域の熱膨張係数よりも大きい。
【0017】
さらなる一態様によると、第1のガラス層を形成するステップであって、第1および第2の主面と、ガラス層の第2の主面からガラス層中の第1の深さまで延在する圧縮応力領域と、最終厚さとを有し、上記領域が、層の第2の主面における少なくとも約100MPaの圧縮応力によって画定される第1のガラス層を形成するステップと;第1のガラス層の第2の主面に結合する第2の厚さを有する第2の層を形成するステップとを含む、スタックアセンブリの製造方法が提供される。ある態様では、第2の層は、ガラス層の弾性率よりも低い弾性率を有する。上記方法は、約25μm~約125μmの厚さを有するガラス素子を形成するステップであって、素子が第1および第2の主面と、第1のガラス層とをさらに含むステップも含む。このガラス素子は、(a)約25℃および相対湿度約50%において素子を約3mm~約20mmの曲げ半径で少なくとも60分間維持する場合に破壊が起こらないことと、(b)素子の第2の主面が、(i)約1GPa未満の弾性率を有する厚さ約25μmの感圧接着剤および(ii)約10GPa未満の弾性率を有する厚さ約50μmのポリエチレンテレフタレート層によって支持され、素子の第1の主面が、直径200μmの平底を有するステンレス鋼ピンによる負荷を受ける場合に、約1.5kgf(約14.7N)を超える貫入抵抗と、(c)8H以上の鉛筆硬度と、(d)第2の主面と第1の厚さの半分との間に位置するガラス層中の中立軸とを特徴とする。
【0018】
本発明の方法のある実施形態では、第1のガラス層を形成するステップは、フュージョン法、スロットドロー法、圧延法、リドロー法、およびフロート法からなる群から選択される形成方法を含むことができ、この形成方法はガラス層が最終厚さに成形されるようにさらに構成される。ガラス層の最終形状要素および/または最終ガラス層に使用されるガラス前駆体の中間寸法によっては、別の形成方法を使用することができる。形成方法は、ガラス層から材料を除去して最終厚さに到達するように構成された材料除去プロセスを含むこともできる。
【0019】
本発明の方法のある態様によると、ガラス層の第2の主面からガラス層中の第1の深さまで延在する圧縮応力領域を形成するステップは、ガラス層中に含まれる複数のイオン交換可能な金属イオンの原子半径よりも大きいサイズの原子半径を有する複数のイオン交換用金属イオンを含む強化浴を提供するステップと;ガラス層中の複数のイオン交換可能な金属イオンの一部を強化浴中の複数のイオン交換用金属イオンの一部と交換して、第2の主面からガラス層中の第1の深さまで延在する圧縮応力領域を形成するために、ガラス層を強化浴中に浸漬するステップとを含む。場合によっては、浸漬ステップは、ガラス層を約400℃~約450℃の強化浴中に約15分~約180分間浸漬するステップを含む。
【0020】
ある実施形態では、上記方法は、圧縮応力領域が形成された後、第2の主面においてガラス層の最終厚さから約1μm~約5μmを除去するステップを含むこともできる。この除去ステップは、圧縮応力領域が、ガラス層の第2の主面において5μm以下の最大欠陥寸法を含むように行うことができる。この除去ステップは、圧縮応力領域が、ガラス層の第2の主面において2.5μm以下、またはさらには0.4μm以下の最大欠陥寸法を含むように行うこともできる。
【0021】
さらなる特徴および利点は以下の詳細な説明に記載され、部分的には、その説明から当業者には容易に明らかとなり、以下の詳細な説明、請求項、および添付の図面を含めて本明細書に記載される実施形態を実施することによって理解されるであろう。種々の態様は、たとえば以下のように、ありとあらゆる適切な組合せで使用することができる。
【0022】
第1の態様によると、
約25μm~約125μmの第1の厚さと、第1および第2の主面とを有するガラス素子であって、
(a)第1および第2の主面を有する第1のガラス層と、
(b)ガラス層の第2の主面からガラス層中の第1の深さまで延在する圧縮応力領域において、層の第2の主面における少なくとも約100MPaの圧縮応力によって画定される圧縮応力領域と、
をさらに含むガラス素子と;
第2の厚さを有するガラス層の第2の主面に結合した第2の層と、
を有するスタックアセンブリにおいて、
ガラス素子が、
(a)約25℃および相対湿度約50%において素子を約3mm~約20mmの曲げ半径で少なくとも60分間維持する場合に破壊が起こらないことと、
(b)素子の第2の主面が、(i)約1GPa未満の弾性率を有する厚さ約25μmの感圧接着剤および(ii)約10GPa未満の弾性率を有する厚さ約50μmのポリエチレンテレフタレート層によって支持され、素子の第1の主面が、直径200μmの平底を有するステンレス鋼ピンによる負荷を受ける場合に、約1.5kgf(約14.7N)を超える貫入抵抗と、
(c)8H以上の鉛筆硬度と、
(d)第2の主面と第1の厚さの半分との間に位置するガラス層中の中立軸と、
を特徴とする、スタックアセンブリが提供される。
【0023】
第2の態様によると、第1のガラス層が、アルカリを含有しないまたはアルカリを含有するアルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、ホウアルミノケイ酸塩、またはケイ酸塩のガラス組成物を含む、態様1のアセンブリが提供される。
【0024】
第3の態様によると、素子の厚さが約50μm~約100μmである、態様1または態様2のアセンブリが提供される。
【0025】
第4の態様によると、素子の曲げ半径が約3mm~約10mmである、態様1~3のいずれか1つのアセンブリが提供される。
【0026】
第5の態様によると、ガラス層の第2の主面における圧縮応力が約300MPa~1000MPaである、態様1~4のいずれか1つのアセンブリが提供される。
【0027】
第6の態様によると、第1の深さが、ガラス層の第2の主面からガラス層の厚さの約3分の1以下に設定される、態様1~5のいずれか1つのアセンブリが提供される。
【0028】
第7の態様によると、圧縮応力領域が複数のイオン交換可能な金属イオンおよび複数のイオン交換された金属イオンを含み、イオン交換された金属イオンがイオン交換可能な金属イオンの原子半径よりも大きい原子半径を有する、態様1~6のいずれか1つのアセンブリが提供される。
【0029】
第8の態様によると、ガラス層が端部をさらに含み、ガラス素子が、端部からガラス層中の端部深さまで延在する端部圧縮応力領域をさらに含み、端部圧縮応力領域が、端部における少なくとも約100MPaの圧縮応力によって画定される、態様1~7のいずれか1つのアセンブリが提供される。
【0030】
第9の態様によると、第2の層がポリエチレンテレフタレート(PET)と光学的に透明な接着剤(OCA)との複合材料を含み、接着剤がガラス層の第2の主面に結合する、態様1~8のいずれか1つのアセンブリが提供される。
【0031】
第10の態様によると、第2の層がポリメタクリル酸メチル(PMMA)と光学的に透明な接着剤(OCA)との複合材料を含み、接着剤がガラス層の第2の主面に結合する、態様1~9のいずれか1つのアセンブリが提供される。
【0032】
第11の態様によると、ガラス層の第2の主面に実質的に向かって中立軸が移動するように、PET、OCA、およびガラス層の厚さおよび弾性率が構成される、態様9のアセンブリが提供される。
【0033】
第12の態様によると、ガラス層の第2の主面に実質的に向かって中立軸が移動するように、PMMA、OCA、およびガラス層の厚さおよび弾性率が構成される、態様10のアセンブリが提供される。
【0034】
第13の態様によると、
約25μm~約125μmの第1の厚さを有するガラス層であって、
(a)第1の主面と、
(b)第2の主面と、
(c)ガラス層の第2の主面からガラス層中の第1の深さまで延在する圧縮応力領域において、層の第2の主面における少なくとも約100MPaの圧縮応力によって画定される圧縮応力領域と、
をさらに含むガラス層と;
第2の厚さを有するガラス層の第2の主面に結合した第2の層と、
を含むガラス物品において、
上記ガラス層が、
(a)約25℃および相対湿度約50%において層を約3mm~約20mmの曲げ半径で少なくとも60分間維持する場合に破壊が起こらないことと、
(b)層の第2の主面が、(i)約1GPa未満の弾性率を有する厚さ約25μmの感圧接着剤および(ii)約10GPa未満の弾性率を有する厚さ約50μmのポリエチレンテレフタレート層によって支持され、層の第1の主面が、直径200μmの平底を有するステンレス鋼ピンによる負荷を受ける場合に、約1.5kgf(約14.7N)を超える貫入抵抗と、
(c)8H以上の鉛筆硬度と、
(d)第2の主面と第1の厚さの半分との間に位置するガラス層中の中立軸と、
を特徴とする、ガラス物品が提供される。
【0035】
第14の態様によると、ガラス層が、アルカリを含有しないまたはアルカリを含有するアルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、ホウアルミノケイ酸塩、またはケイ酸塩のガラス組成物を含む、態様13の物品が提供される。
【0036】
第15の態様によると、ガラス層の厚さが約50μm~約100μmである、態様13または態様14の物品が提供される。
【0037】
第16の態様によると、ガラス層の曲げ半径が約3mm~約10mmである、態様13~15のいずれか1つの物品が提供される。
【0038】
第17の態様によると、ガラス層の第2の主面における圧縮応力が約300MPa~1000MPaである、態様13~16のいずれか1つの物品が提供される。
【0039】
第18の態様によると、第1の深さが、ガラス層の第2の主面からガラス層の厚さの約3分の1以下に設定される、態様13~17のいずれか1つの物品が提供される。
【0040】
第19の態様によると、圧縮応力領域が複数のイオン交換可能な金属イオンおよび複数のイオン交換された金属イオンを含み、イオン交換された金属イオンがイオン交換可能な金属イオンの原子半径よりも大きい原子半径を有する、態様13~18のいずれか1つの物品が提供される。
【0041】
第20の態様によると、ガラス層が、端部と、端部からガラス層中の端部深さまで延在する端部圧縮応力領域とをさらに含み、端部圧縮応力領域が、端部における少なくとも約100MPaの圧縮応力によって画定される、態様13~19のいずれか1つの物品が提供される。
【0042】
第21の態様によると、第2の層がポリエチレンテレフタレート(PET)と光学的に透明な接着剤(OCA)との複合材料を含み、接着剤がガラス層の第2の主面に結合する、態様13~20のいずれか1つの物品が提供される。
【0043】
第22の態様によると、第2の層がポリメタクリル酸メチル(PMMA)と光学的に透明な接着剤(OCA)との複合材料を含み、接着剤がガラス層の第2の主面に結合する、態様13~20のいずれか1つの物品が提供される。
【0044】
第23の態様によると、ガラス層の第2の主面に実質的に向かって中立軸が移動するように、PET、OCA、およびガラス層の厚さおよび弾性率が構成される、態様21の物品が提供される。
【0045】
第24の態様によると、ガラス層の第2の主面に実質的に向かって中立軸が移動するように、PMMA、OCA、およびガラス層の厚さおよび弾性率が構成される、態様22の物品が提供される。
【0046】
第25の態様によると、スタックアセンブリの製造方法において、
第1のガラス層であって、第1および第2の主面と、ガラス層の第2の主面からガラス層中の第1の深さまで延在する圧縮応力領域と、最終厚さとを有し、上記領域が、層の第2の主面における少なくとも約100MPaの圧縮応力によって画定される第1のガラス層を形成するステップと;
第1のガラス層の第2の主面に結合する第2の厚さを有する第2の層を形成するステップと;
約25μm~約125μmの厚さを有するガラス素子であって、が第1および第2の主面、ならびに第1のガラス層をさらに含むガラス素子を形成するステップと、
を含み、
ガラス素子が、
(a)約25℃および相対湿度約50%において素子を約3mm~約20mmの曲げ半径で少なくとも60分間維持する場合に破壊が起こらないことと、
(b)素子の第2の主面が、(i)約1GPa未満の弾性率を有する厚さ約25μmの感圧接着剤および(ii)約10GPa未満の弾性率を有する厚さ約50μmのポリエチレンテレフタレート層によって支持され、素子の第1の主面が、直径200μmの平底を有するステンレス鋼ピンによる負荷を受ける場合に、約1.5kgf(約14.7N)を超える貫入抵抗と、
(c)8H以上の鉛筆硬度と、
(d)第2の主面と第1の厚さの半分との間に位置するガラス層中の中立軸と、
を特徴とする、製造方法が提供される。
【0047】
第26の態様によると、
ガラス層の第2の主面に実質的に向かって中立軸が移動するように、第1のガラス層および第2の層の厚さおよび弾性率を最適化させるステップをさらに含む、態様25の方法が提供される。
【0048】
第27の態様によると、第2の層がポリエチレンテレフタレート(PET)と光学的に透明な接着剤(OCA)との複合材料を含み、接着剤がガラス層の第2の主面に結合する、態様26の方法が提供される。
【0049】
第28の態様によると、第2の層がポリメタクリル酸メチル(PMMA)と光学的に透明な接着剤(OCA)との複合材料を含み、接着剤がガラス層の第2の主面に結合する、態様26の方法が提供される。
【0050】
第29の態様によると、第2の層が、ガラス層の弾性率よりも低い弾性率を有する、態様1~12のいずれか1つのアセンブリが提供される。
【0051】
第30の態様によると、第2の層が、ガラス層の弾性率よりも低い弾性率を有する、態様13~24のいずれか1つの物品が提供される。
【0052】
第31の態様によると、第2の層が、ガラス層の弾性率よりも低い弾性率を有する、態様25~28のいずれか1つの方法が提供される。
【0053】
以上の概要および以下の詳細な説明の両方は、単なる例であり、請求項の性質および特徴の理解のための概観または枠組みの提供が意図されることを理解されたい。添付の図面は、さらなる理解を得るために含まれ、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。図面は、1つ以上の実施形態を示しており、本明細書の記述とともに、種々の実施形態の原理および操作を説明する役割を果たす。本明細書において使用される方向の用語、たとえば、上、下、右、左、前、後、上部、底部は、図の記載のみが参照され、絶対的な向きの暗示を意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】基板の厚さのほぼ半分において中立軸を有する屈曲時のガラス基板を示す概略図である。
図2】本開示の一態様による、第1のガラス層と、ガラス層に結合した第2の層とを有するスタックアセンブリを示す概略図である。
図3】2点曲げ試験構成にある、第1のガラス層と第2の層とを有するスタックアセンブリの概略図である。
図4】本開示の一態様による、OCAおよびPET層が加えられる場合、および加えられない場合のガラス素子または層の主面において見られる最大引張応力の概略図である。
図5】本開示のさらなる一態様による、OCAおよびPET層が加えられる場合、および加えられない場合のガラス素子または層の主面において見られる最大引張応力の概略図である。
図6】本開示の別の一態様による、OCAおよびPET層が加えられる場合、および加えられない場合のガラス素子または層の主面において見られる最大引張応力の概略図である。
図7】本開示のさらなる一態様によるスタックアセンブリを使用する可撓性汚れ止め板の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
これより本発明の好ましい実施形態に詳細に言及し、好ましい実施形態の例が添付の図面に示されている。可能であれば常に、同一または同様の部分を参照するために図面全体にわたって同じ参照番号が使用される。本明細書において、「約」ある特定の値から、および/または「約」別の特定の値までとして範囲を表すことができる。そのような範囲が示される場合、別の実施形態は、そのある特定の範囲から、および/または別の特定の範囲までを含む。同様に、前に「約」を付けることによって、近似値として値が表される場合、その個別の値が別の一実施形態を形成することを理解されよう。それぞれの範囲の端点は、別の端点と関連する場合も、別の端点とは独立している場合もあることをさらに理解されよう。
【0056】
別の特徴および利点の中では、本開示のスタックアセンブリ、ガラス素子、およびガラス物品(ならびにそれらの製造方法)によって、小さい曲げ半径における(たとえば、静的張力および疲労において、または同等の数の動荷重サイクルによる)機械的信頼性および高い貫入抵抗が得られる。小さい曲げ半径および貫入抵抗は、本開示のスタックアセンブリ、ガラス素子、および/またはガラス物品が、折り畳み可能なディスプレイ、たとえばディスプレイのある部分がディスプレイの別の部分の上に折り重ねられるディスプレイに使用される場合に有益となる。たとえば、本開示のスタックアセンブリ、ガラス素子および/またはガラス物品は、貫入抵抗が特に重要となる位置である、折り畳み可能なディスプレイの使用者に面する部分のカバー;デバイス自体の内部に配置され電子部品が上に配置される基板;または折り畳み可能なディスプレイデバイス中の他の箇所の1つ以上として使用することができる。あるいは、本開示のスタックアセンブリ、ガラス素子、および/またはガラス物品は、ディスプレイを有さない装置であるが、ガラス層がその有益な性質のために使用され、折り畳み可能なディスプレイと同様の方法で、小さい曲げ半径で折り畳まれる装置中に使用することができる。使用者が装置と対話する場所である装置外側に、本開示のスタックアセンブリ、ガラス素子、および/またはガラス物品が使用される場合、貫入抵抗が特に有益となる。
【0057】
最初の事柄として、本開示の屈曲可能なガラススタックアセンブリおよび素子、ならびにそれらの製造方法は、それぞれ2014年1月29日および2014年4月3日に出願された米国仮特許出願第61/932,924号明細書および米国仮特許出願第61/974,732号明細書(一括して、“Bendable Glass Applications”)に概略が詳細に示されており、これらの文献全体が参照により本明細書に援用される。たとえば、Bendable Glass Applicationsにおけるスタックアセンブリ100、100a、100b、100c、100d、および100e、ならびにそれらの関連する記述を、たとえば図2に示され以下にさらに詳細に説明される本開示のガラス素子200(本明細書では「ガラス層200」とも記載される)中に使用したり、他の方法で含んだりすることができる。
【0058】
本開示のある態様によるスタックアセンブリの別の利点および特徴は、使用時の曲げに関連する引張応力を打ち消すために大きな圧縮応力を有する圧縮応力領域が不要なことである。結果として、これらのスタックアセンブリは、より低い程度で強化することができ、スタックが最適化されない屈曲可能なガラスアセンブリよりもプロセスに関連するコストを削減することができる。
【0059】
図1を参照すると、図は、上向きの屈曲条件にさらされる(すなわち、基板10が「u」字型に曲げられる)厚さ12(h)を有する露出したガラス基板10(たとえば、追加の層を有さないガラス基板)を示している。図示されるように、基板10の中立軸500は、ガラス基板の一方の主面から距離12aにある。距離12aは、ガラス層のほぼ半分の厚さ(h/2)である。したがって、上向きの動きでのガラス基板10の屈曲では、一般に基板10の上面は(たとえば、「u」字型の内側で)圧縮状態となり、下面は(たとえば、「u」字型の底部、外側で)伸張状態となる。
【0060】
図1中の基板10の屈曲によって生じる引張応力は式:
【0061】
【数1】
【0062】
から計算または推定することができ、式中、Eは基板10の弾性率であり、Rは屈曲中の基板10の曲率半径であり、νは基板10のポアソン比であり、zは中立軸500までの距離である。図1に示されるように、zは、約h/2に位置する基板10の距離12aである。したがって、上記式(1)中にh/2を代入して、基板10の底面における(すなわち、「u」の底部、外側における)最大引張応力を推定することができる。最大引張応力は、ガラス基板10の厚さおよび/または弾性率の増加に比例して増加することも明らかである。
【0063】
図2を参照すると、本開示の一態様によるガラス層200および第2の層260を有するスタックアセンブリ300が示されている。ガラス層200は、参照により本明細書に援用されるBendable Glass Applicationsにおいて100、100a、100b、100c、100d、および100eで示されるスタックアセンブリのいずれかの形態であってよいことを理解すべきである。スタックアセンブリ300によって、上向きの屈曲力(たとえば、観察者に向かって「u」字型、観察者は図2中に眼球で示されている)により張力下にあるガラス層200の主面に向かって移動する中立軸500の効果が得られる。張力下のガラス層200の表面(たとえば、主面206a)に向かって中立軸500が移動することで、より少ない量のガラス層200が引張応力にさらされ、ガラス層の引張面(すなわち、206a)における最大引張応力も減少する。中立軸500の移動の大きさは、ガラス層200および第2の層260(第2の層260中に存在する任意の副層とともに)の弾性率および厚さの制御またはその他の調節によって最適化できることも理解すべきである。この積層の最適化によって、屈曲中に発生する引張応力を打ち消すため、または軽減するために必要な圧縮応力の量が減少するので、ガラス層の引張面に位置する圧縮応力領域中の圧縮応力の大きさ(たとえば、イオン交換プロセスによって得られる)を減少させることができる。たとえば、移動した中立軸を有するこのようなスタックアセンブリにおいて、イオン交換プロセスは、より少ない時間および/または温度で行うことができ、したがってプロセスに関連するコストを削減することができる。
【0064】
図2中、厚さ262(h)を有するスタックアセンブリ300は、弾性率Eを有するガラス層200を含む。ガラス層200は、厚さ202t、ならびにそれぞれ第1および第2の主面206および206aも特徴とする。さらに、ガラス層200は、第1の主面206から距離500aに位置する中立軸500を有する。
【0065】
スタックアセンブリ300は、弾性率がそれぞれEおよびEである2つの副層220および240を有する第2の層260も含む。ある実施形態では、第2の層260(ならびに副層220および240)の弾性率はEよりも小さい。さらに、副層220および240は、それぞれ厚さ222t、および242tを特徴とする。図2に示されるように、第2の層260は、露出した主面244を有し、ガラス層200の第2の主面260aに結合している。ある実装形態では、積層アセンブリ300に屈曲力が加えられる間に意図されるように中立軸を確実に移動させるために、第2の層260のガラス層200の第2の主面206aへの強い接合、またはその他の強い結合が特に重要となる。
【0066】
ある実装形態では、約25μm~約125μmの第1の厚さ202、ならびにそれぞれ第1および第2の主面206および206aを有するガラス素子200(たとえば、1つ以上のガラス層)を含む図2に示されるようなスタックアセンブリ300が提供される。ガラス素子200は、ガラス素子200の第2の主面206aからガラス素子200中の第1の深さまで延在する圧縮応力領域をさらに含み、この領域は、素子200の第2の主面206aにおける少なくとも約100MPaの圧縮応力によって画定される。ある態様では、ガラス素子または層200中の第1の深さは、第2の主面206aから測定して、ガラス層または素子200の厚さ262の約3分の1に設定される。スタックアセンブリ300は、第2の厚さ(たとえば、第2の層260が副層220および240からなる場合は、厚さ222(t)および242(t)の合計)を有するガラス素子200の第2の主面206aに結合した第2の層260も含む。ある実施形態では、第2の層260は、ガラス素子200の弾性率よりも低い弾性率(たとえば、EおよびEの平均)を有する。
【0067】
これらの実装形態では、ガラス素子200は、(a)約25℃および相対湿度約50%において素子200を約3mm~約20mmの曲げ半径で少なくとも60分間維持する場合に破壊が起こらないことと、(b)素子200の第2の主面206aが、(i)約1GPa未満の弾性率を有する厚さ約25μmの感圧接着剤および(ii)約10GPa未満の弾性率を有する厚さ約50μmのポリエチレンテレフタレート層によって支持され、素子200の第1の主面206が、直径200μmの平底を有するステンレス鋼ピンによる負荷を受ける場合に、約1.5kgf(約14.7N)を超える貫入抵抗と、(c)8H以上の鉛筆硬度と、(d)第2の主面206aと第1の厚さ202の半分(t/2)との間に位置するガラス素子200中の中立軸500とを特徴とする。
【0068】
ある実施形態では、ガラス素子または層200は、第1のガラス層の下に配置される1つ以上の追加のガラス層および1つ以上のそれぞれの圧縮応力領域をさらに含むことができる。たとえば、ガラス素子または層200は、2、3、4、またはそれを超える数の追加のガラス層および対応する追加の圧縮応力領域を第1のガラス層の下に含むことができる。
【0069】
ある実施形態では、ガラス素子または層200は、アルカリを含有しないまたはアルカリを含有するアルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、ホウアルミノケイ酸塩、またはケイ酸塩のガラス組成物を含む。ガラス素子または層200の厚さ202(t)は約50μm~約100μmの範囲であってもよい。ある態様によると、ガラス層200の厚さ202(t)は60μm~約80μmの範囲であってよい。
【0070】
ある実施形態では、ガラス素子またはガラス層200の曲げ半径は約3mm~約20mmであってよい。別の態様では、曲げ半径は約3mm~約10mmであってよい。本開示の一態様では、ガラス素子または層200の曲げ半径はスタックアセンブリ300に意図される用途に基づいて設定でき、次に、そのような曲げ半径によって生じることが予想される応力レベルを考慮してガラス層200および第2の層260の厚さおよび弾性率を最適化または調整することによって積層の最適化を行うことができることをさらに理解すべきである。
【0071】
ある態様によると、ガラス素子またはガラス層200は、図2に示されるようなガラス素子または層200の第1の主面206の上(たとえば、スタックアセンブリのディスプレイ側の上)に配置される低摩擦係数の第3の層を含むことができる。ある態様によると、第3の層は、熱可塑性プラスチックおよび非晶質フルオロカーボンからなる群から選択されるフルオロカーボン材料を含むコーティングであってよい。第3の層は、シリコーン、ワックス、ポリエチレン、ホットエンド、パリレン、およびダイヤモンド様コーティング調製物からなる群の1つ以上を含むコーティングであってもよい。さらに、第3の層は、酸化亜鉛、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、六方晶窒化ホウ素、およびホウ化アルミニウムマグネシウムからなる群から選択される材料を含むコーティングであってよい。ある実施形態によると、第3の層は、酸化亜鉛、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、六方晶窒化ホウ素、およびホウ化アルミニウムマグネシウムからなる群から選択される添加剤を含むコーティングであってよい。
【0072】
ある実装形態では、第2の層260(図2参照)は、ポリエチレンテレフタレート(PET)と光学的に透明な接着剤(OCA)との複合材料を含むことができる、またはのみからなることができ、接着剤はガラス層または素子200の第2の主面206aに結合することができる。第2の層260は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)とOCAとの複合材料を含むこともできる、またはのみからなることもでき、接着剤はガラス層または素子200の第2の主面206aに結合することができる。ある実施形態では、スタックアセンブリ300の個別の用途によって、ガラス層または素子200よりも低い弾性率を有する第2の層260の構造として、別の材料、材料の組合せ、および/または構造を使用することができる。ある実装形態では、ガラス素子または層200の厚さおよび弾性率は、第2の層260の厚さおよび弾性率とともに、ガラス層または素子200中の中立軸500がガラス層または素子200の第2の主面206aに向かって移動するように構成される。
【0073】
ある態様では、第2の主面206aの圧縮応力領域(図示せず)内の圧縮応力は約300MPa~1000MPaである。圧縮応力領域は、ガラス層の第2の主面206aにおいて5μm以下の最大欠陥寸法を含むこともできる。ある場合では、圧縮応力領域は、2.5μm以下、またはさらには0.4μm以下の最大欠陥寸法を含む。ある実装形態では、第1の主面206において、好ましくは約300MPa~1000MPaの第2の圧縮応力領域を含むこともできる。ガラス層または素子の1つ以上の端部において、好ましくはそのような端部における少なくとも100MPaの圧縮応力によって画定されるさらなる圧縮領域を形成することもできる。これらの(たとえば、ガラス層または素子200の第1の主面206および/または端部における)さらなる圧縮応力領域は、用途に応じた引張応力が必ずしも最大とならないがスタックアセンブリ300中で傷および欠陥の集団が広く行き渡る場合があるデバイスのディスプレイ側の上などの位置における、応力によって誘発される亀裂および表面の傷に関連してガラス中に発生する伝播の軽減または解消に役立ちうる。
【0074】
別の態様では、圧縮応力領域は、複数のイオン交換可能な金属イオンおよび複数のイオン交換された金属イオンを含み、イオン交換された金属イオンは、圧縮応力が生じるように選択される。ある態様では、イオン交換された金属イオンは、イオン交換可能な金属イオンの原子半径よりも大きい原子半径を有する。別の一態様によると、ガラス層200は、コア領域と、コア領域上に配置された第1および第2のクラッド領域とをさらに含むことができ、さらに、コア領域の熱膨張係数はクラッド領域の熱膨張係数よりも大きい。
【0075】
図3を参照すると、第1のガラス層(たとえば、ガラス層200)および第2の層(たとえば、第2の層260)を有するスタックアセンブリ300は、2点曲げ試験構成にある。図3中、スタックアセンブリ300を屈曲させるために、屈曲板320が互いに近づいて移動する。屈曲板320の間の距離330は、屈曲板が互いに近づいて移動するにつれて変化し、したがってスタックアセンブリ300に関連する曲げ半径が減少する。
【0076】
図3に示される曲げ試験構成では、屈曲板の間の距離の関数としてガラス板の最大曲げ応力を推定するために以下の式を使用でき:
【0077】
【数2】
【0078】
式中、Eはガラス板の弾性率であり、hはガラス板の厚さであり、Dは屈曲板の間の距離である。式(2)に関しては、Matthewson,M.J.et al.,Strength Measurement of Optical Fibers by Bending,J.Am.Ceram.Soc.、vol.69、815-21(Matthewson)が参照される。Matthewsonは、特に式(2)に関するその開示に関して参照により本明細書に援用される。
【0079】
図3に示されるスタックアセンブリ300がガラス層200と第2の層260との複合スタックである場合、図2に関連して本開示で概要を前述した中立軸の移動を説明するために式(2)を改良することができる。すなわち、図3に示されるスタックアセンブリ300の場合、第2の主面206aにおけるガラス層200上の最大引張応力は、式:
【0080】
【数3】
【0081】
で示すことができ、式中、xは第1の主面206から中立軸500までの距離(すなわち、距離500a)であり、hはスタックアセンブリ300の全体の厚さ(すなわち、厚さ262)であり、tはガラス層200の厚さ(すなわち厚さ202)であり、およびEはガラス層200の弾性率である。
【0082】
中立軸500に関する式(3)中のxは、式:
【0083】
【数4】
【0084】
に基づいて計算することができ、式中の変数は、図2と関連して前述したスタックアセンブリ300の要素と関連して説明したものと同じである。上記式(3)および(4)を使用して、ガラス層200および第2の層260(たとえば、副層220および240)の弾性率および厚さを変化させて、スタックアセンブリ300のガラス層200中の最大引張応力に対するそれぞれの影響を評価することができる。
【0085】
図4を参照すると、本開示の一態様による、OCAおよびPET層が加えられる場合、および加えられない場合のスタックアセンブリ300のガラス素子または層200の主面206aにおいて見られる最大引張応力の概略図が示されている。図4に示される結果は、前出の式(3)および(4)によってモデル化した。この評価では、スタックアセンブリ300は、70GPaの弾性率を有するガラス層200と、1MPaの弾性率を有するOCAを含む副層220と、1660MPaの弾性率を有するPET材料を含む副層240とを有すると仮定した。5mmの曲げ半径をスタックアセンブリ300に加え、板の距離Dは10mmと仮定した。さらに、ガラス層200の厚さ(t)は75μmの一定に維持し、副層220および240の厚さ(tおよびt)はそれぞれ25~100μmおよび50~300μmで変化させた。比較点として、第2の層および副層を全く有さないスタックアセンブリ300の最大応力値も図4にプロットした。
【0086】
さらに図4を参照すると、追加層を全く有さないスタックアセンブリ300の推定最大引張応力は634MPaであった。比較において、ガラス層に加えて弾性率のより低い副層を有するスタックアセンブリ300の推定最大引張応力は230~620MPaの範囲であった。明らかに、OCAおよびPET副層の厚さを増加させると、ガラス層200中に観察される推定最大引張応力が減少しうる。PET層の厚さの増加は、ガラス層200の表面206aにおける最大引張応力の大きさの減少においてより有効であることも明らかである。
【0087】
図5を参照すると、本開示のさらなる一態様による、OCAおよびPET層が加えられる場合、および加えられない場合のスタックアセンブリ300のガラス素子または層200の主面206において見られる最大引張応力の概略図が示されている。図5に示される結果も、前出の式(3)および(4)によってモデル化した。この評価では、スタックアセンブリ300は、70GPaの弾性率を有するガラス層200と、1MPaの弾性率を有するOCAを含む副層220と、5000MPaの弾性率を有するPET材料を含む副層240とを有すると仮定した。5mmの曲げ半径をスタックアセンブリ300に加え、板の距離Dは10mmと仮定した。さらに、ガラス層200の厚さ(t)は75μmの一定に維持し、副層220および240の厚さ(tおよびt)はそれぞれ25~100μmおよび50~300μmで変化させた。比較点として、第2の層および副層を全く有さないスタックアセンブリ300の最大応力値も図5にプロットした。
【0088】
図4および5を比較すると、モデル化したスタックアセンブリ300の間の主要な差は、PET副層240の弾性率である。図5中、スタックアセンブリ300は、5000MPaのはるかに高い弾性率を有するPET副層240を有する(すなわち、図4でモデル化したスタックアセンブリ300中の副層240の1660MPaと比較した場合)。さらに図5を参照すると、追加層を全く有さないスタックアセンブリ300の推定最大引張応力は634MPaであった。比較において、ガラス層に加えて弾性率のより低い副層を有するスタックアセンブリ300の推定最大引張応力は-479~+574MPaの範囲であった。明らかに、PET副層の弾性率を増加させると、第2の主面206aにおいてガラス層200中に観察される推定最大引張応力を減少させることができる。ある条件では、第2の主面206aにおいて観察される推定最大応力が負となるが、これは圧縮応力を示しており、ガラスの機械的信頼性が高いことを示している。同様に、ガラス層200の主面206aにおいて圧縮応力を有するこのようなスタックアセンブリ300は、追加の圧縮応力領域の形成および付与(たとえば、Bendable Glass Applicationsに概略が示されるような化学イオン交換法による)を必要とせずに、多くの可撓性電子デバイス用途に適切となりうる。
【0089】
図6を参照すると、本開示のさらなる一態様による、OCAおよびPET層が加えられる場合、および加えられない場合のスタックアセンブリ300のガラス素子または層200の主面206aにおいて見られる最大引張応力の概略図が示されている。図6に示される結果も同様に、前出の式(3)および(4)によってモデル化した。この評価では、スタックアセンブリ300は、70GPaの弾性率を有するガラス層200と、100MPaの弾性率を有するOCAを含む副層220と、1660MPaの弾性率を有するPET材料を含む副層240とを有すると仮定した。5mmの曲げ半径をスタックアセンブリ300に加え、板の距離Dは10mmと仮定した。さらに、ガラス層200の厚さ(t)は75μmの一定に維持し、副層220および240の厚さ(tおよびt)はそれぞれ25~100μmおよび50~300μmで変化させた。比較点として、第2の層および副層を全く有さないスタックアセンブリ300の最大応力値も図6にプロットした。
【0090】
図4および6を比較すると、モデル化したスタックアセンブリ300の間の主要な差は、OCA副層220の弾性率である。図6中、スタックアセンブリ300は、100MPaのはるかに大きい弾性率を有するOCA副層220(すなわち、図4でモデル化したスタックアセンブリ300中の副層220の1MPaと比較した場合)。さらに図6を参照すると、追加層を全く有さないスタックアセンブリ300の推定最大引張応力は634MPaであった。しかし、本明細書に示されるように、OCA副層220の弾性率を増加させることで、ガラス層200の主面206aにおける推定最大引張応力に対して数MPaのあまり顕著ではない減少が得られる。
【0091】
図4~6に示される結果およびモデル化は、本開示の態様による屈曲可能なガラススタックアセンブリ(たとえば、スタックアセンブリ300)の開発のための積層の最適化方法の例であることを理解すべきである。式(3)および(4)を使用して、スタックアセンブリ300などのこれらの屈曲可能なガラススタックアセンブリの中立軸の位置を最適化することができ、用途に応じた屈曲構成に関連するガラス層の主面で観察される引張応力を最小化することができ、または一部の実装形態ではなくすことができる。
【0092】
図7を参照すると、本開示のさらなる一態様による可撓性汚れ止め板用途において使用される場合のスタックアセンブリ300が示されている。図7から明らかなように、スタックアセンブリ300は、その第1の主面206が圧縮下にあり(たとえば、凹型)、ガラス層200の第2の主面206a(図示せず)であってよい第2の層260の主面244が張力下にあるように、壁400の間で上向きに曲がっている。すなわち、スタックアセンブリ300中のガラス層200は外側を向いており、したがって洗浄の容易さ、耐ひっかき性、および貫入抵抗性が得られる。
【0093】
本開示のさらなる一態様によると、スタックアセンブリ300の製造方法は、ステップ:第1および第2の主面(たとえば、それぞれ主面206および206a)と、ガラス層の第2の主面からガラス層中の第1の深さまで延在する圧縮応力領域と、最終厚さ(たとえば、厚さ262)とを有する第1のガラス層(たとえば、ガラス層200)を形成するステップを含み、上記領域は、層の第2の主面における少なくとも約100MPaの圧縮応力によって画定される。この方法は、第1のガラス層の第2の主面に結合する第2の厚さ(たとえば、厚さ262)を有する第2の層(たとえば、第2の層260)を形成するステップも含む。ある実施形態では、第2の層は、ガラス層の弾性率よりも低い弾性率を有する。上記方法は、約25μm~約125μmの厚さを有するガラス素子(たとえば、ガラス素子または層200)を形成するステップも含み、この素子は、第1および第2の主面と、第1のガラス層とをさらに含む。このような方法によって形成されたガラス素子または層は、(a)約25℃および相対湿度約50%において素子を約3mm~約20mmの曲げ半径で少なくとも60分間維持する場合に破壊が起こらないことと、(b)素子の第2の主面が、(i)約1GPa未満の弾性率を有する厚さ約25μmの感圧接着剤および(ii)約10GPa未満の弾性率を有する厚さ約50μmのポリエチレンテレフタレート層によって支持され、素子の第1の主面が、直径200μmの平底を有するステンレス鋼ピンによる負荷を受ける場合に、約1.5kgf(約14.7N)を超える貫入抵抗と、(c)8H以上の鉛筆硬度と、(d)第2の主面と第1の厚さの半分との間に位置するガラス層または素子中の中立軸とを特徴とする。
【0094】
本発明の方法のある実施形態では、第1のガラス層を形成するステップは、フュージョン法、スロットドロー法、圧延法、リドロー法、およびフロート法からなる群から選択される形成方法を含むことができ、この形成方法はガラス層が最終厚さに成形されるようにさらに構成される。ガラス層の最終形状要素および/または最終ガラス層に使用されるガラス前駆体の中間寸法によっては、別の形成方法を使用することができる。形成方法は、ガラス層から材料を除去して最終厚さに到達するように構成された材料除去プロセスを含むこともできる。
【0095】
本発明の方法のある態様によると、ガラス層の第2の主面(たとえば、第2の主面206a)からガラス層中の第1の深さまで延在する圧縮応力領域を形成するステップは、ガラス層中に含まれる複数のイオン交換可能な金属イオンの原子半径よりも大きいサイズの原子半径を有する複数のイオン交換用金属イオンを含む強化浴を提供するステップと;ガラス層中の複数のイオン交換可能な金属イオンの一部を強化浴中の複数のイオン交換用金属イオンの一部と交換して、第2の主面からガラス層中の第1の深さまで延在する圧縮応力領域を形成するために、ガラス層を強化浴中に浸漬するステップとを含む。場合によっては、浸漬ステップは、ガラス層を約400℃~約450℃の強化浴中に約15分~約180分間浸漬するステップを含む。
【0096】
ある実施形態では、上記方法は、圧縮応力領域が形成された後、第2の主面(たとえば、第2の主面206a)においてガラス層の最終厚さ(たとえば、厚さ262)から約1μm~約5μmを除去するステップを含むこともできる。この除去ステップは、圧縮応力領域が、ガラス層の第2の主面において5μm以下の最大欠陥寸法を含むように行うことができる。この除去ステップは、圧縮応力領域が、ガラス層の第2の主面において2.5μm以下、またはさらには0.4μm以下の最大欠陥寸法を含むように行うこともできる。
【0097】
ある実装形態では、上記方法は、ガラス層の第2の主面に向かって、すなわちスタックアセンブリのディスプレイ側とは反対側の主面に向かってスタックアセンブリの中立軸(たとえば、中立軸500)が移動するように、ガラス層(たとえば、ガラス層または素子200)および第2の層(たとえば、第2の層260)の厚さおよび弾性率を最適化するステップを含むことができる。
【0098】
請求項の意図および範囲から逸脱することなく種々の修正および変形が可能であることは当業者には明らかであろう。特に、以上の開示は、種々の態様の解説の目的で概説した折り畳み可能なデバイスの用途を有する積層が最適化された屈曲可能なガラスアセンブリ、ならびにそのようなアセンブリおよびそれらの製造方法の詳細を提供している。しかし、これらのガラスアセンブリおよび関連する方法は、前述の折り畳み可能なデバイスの用途で考慮されるものとは異なる方向および角度で屈曲力が加えられる別の可撓性デバイス用途にも使用できることを理解すべきである。たとえば、このような積層が最適化されたアセンブリは、対象の用途によってそれらの第1の主面が張力下に置かれる状況で使用できることが考慮される。上記の原理をこのような積層が最適化されたアセンブリに適用することができ、たとえば、1つ以上の追加層(ある実施形態では、ガラス層の弾性率よりも低い弾性率を有する)を、最適化された弾性率および/または厚さを有するそのような表面に結合させることによって、中立軸をそれらの第1の主面に向けて移動させて、それらの位置で観察される引張応力の大きさを減少させることができる。
【0099】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0100】
実施形態1
約25μm~約125μmの第1の厚さと、第1および第2の主面とを有するガラス素子であって、
(a)第1および第2の主面を有する第1のガラス層と、
(b)前記ガラス層の前記第2の主面から前記ガラス層中の第1の深さまで延在する圧縮応力領域において、前記層の前記第2の主面における少なくとも約100MPaの圧縮応力によって画定される圧縮応力領域と
をさらに含むガラス素子と;
第2の厚さを有する前記ガラス層の前記第2の主面に結合した第2の層と、
を有するスタックアセンブリにおいて、
前記ガラス素子が、
(a)約25℃および相対湿度約50%において前記素子を約3mm~約20mmの曲げ半径で少なくとも60分間維持する場合に破壊が起こらないことと、
(b)前記素子の前記第2の主面が、(i)約1GPa未満の弾性率を有する厚さ約25μmの感圧接着剤および(ii)約10GPa未満の弾性率を有する厚さ約50μmのポリエチレンテレフタレート層によって支持され、前記素子の前記第1の主面が、直径200μmの平底を有するステンレス鋼ピンによる負荷を受ける場合に、約1.5kgf(約14.7N)を超える貫入抵抗と、
(c)8H以上の鉛筆硬度と、
(d)前記第2の主面と前記第1の厚さの半分との間に位置する前記ガラス層中の中立軸と
を特徴とする、スタックアセンブリ。
【0101】
実施形態2
前記素子の前記曲げ半径が約3mm~約10mmであることを特徴とする実施形態1に記載のアセンブリ。
【0102】
実施形態3
前記ガラス層の前記第2の主面における前記圧縮応力が約300MPa~1000MPaであることを特徴とする実施形態1または2に記載のアセンブリ。
【0103】
実施形態4
前記第1の深さが、前記ガラス層の前記第2の主面から前記ガラス層の前記厚さの約3分の1以下に設定されることを特徴とする実施形態1~3のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【0104】
実施形態5
前記ガラス層が端部をさらに含み、前記ガラス素子が、前記端部から前記ガラス層中の端部深さまで延在する端部圧縮応力領域をさらに含み、前記端部圧縮応力領域が、前記端部における少なくとも約100MPaの圧縮応力によって画定されることを特徴とする実施形態1~4のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【0105】
実施形態6
前記第2の層が、ポリエチレンテレフタレート(PET)と光学的に透明な接着剤(OCA)との複合材料を含み、前記接着剤が前記ガラス層の前記第2の主面に結合し、前記ガラス層の前記第2の主面に実質的に向かって前記中立軸が移動するように、前記PET、OCA、および前記ガラス層の厚さおよび弾性率が構成されることを特徴とする実施形態1~5のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【0106】
実施形態7
前記第2の層が、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)と光学的に透明な接着剤(OCA)との複合材料を含み、前記接着剤が前記ガラス層の前記第2の主面に結合し、前記ガラス層の前記第2の主面に実質的に向かって前記中立軸が移動するように、前記PMMA、OCA、および前記ガラス層の厚さおよび弾性率が構成されることを特徴とする実施形態1~5のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【0107】
実施形態8
前記第2の層が、前記ガラス層の弾性率よりも低い弾性率を有することを特徴とする実施形態1~7のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【0108】
実施形態9
スタックアセンブリの製造方法において、
第1のガラス層であって、第1および第2の主面と、前記ガラス層の前記第2の主面から前記ガラス層中の第1の深さまで延在する圧縮応力領域と、最終厚さとを有し、前記領域が、前記層の前記第2の主面における少なくとも約100MPaの圧縮応力によって画定される第1のガラス層を形成するステップと;
前記第1のガラス層の前記第2の主面に結合する第2の厚さを有する第2の層を形成するステップと;
約25μm~約125μmの厚さを有するガラス素子であって、第1および第2の主面と、前記第1のガラス層とをさらに含むガラス素子を形成するステップと
を含み、
前記ガラス素子が、
(a)約25℃および相対湿度約50%において前記素子を約3mm~約20mmの曲げ半径で少なくとも60分間維持する場合に破壊が起こらないことと、
(b)前記素子の前記第2の主面が、(i)約1GPa未満の弾性率を有する厚さ約25μmの感圧接着剤および(ii)約10GPa未満の弾性率を有する厚さ約50μmのポリエチレンテレフタレート層によって支持され、前記素子の前記第1の主面が、直径200μmの平底を有するステンレス鋼ピンによる負荷を受ける場合に、約1.5kgf(約14.7N)を超える貫入抵抗と、
(c)8H以上の鉛筆硬度と、
(d)前記第2の主面と前記第1の厚さの半分との間に位置する前記ガラス層中の中立軸と
を特徴とする、スタックアセンブリの製造方法。
【0109】
実施形態10
前記ガラス層の前記第2の主面に実質的に向かって前記中立軸が移動するように、前記第1のガラス層および前記第2の層の厚さおよび弾性率を最適化するステップをさらに含むことを特徴とする実施形態9に記載の方法。
【0110】
実施形態11
前記第2の層が、前記ガラス層の弾性率よりも低い弾性率を有することを特徴とする実施形態9または10に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7