(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】発泡剤としての機能化微粒子重炭酸塩、それを含有する発泡性ポリマー組成物、及び熱可塑性発泡ポリマーの製造でのその使用
(51)【国際特許分類】
C08J 9/08 20060101AFI20230306BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20230306BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20230306BHJP
C08L 27/06 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
C08J9/08 CEV
C08K3/26
C08K5/00
C08L27/06
(21)【出願番号】P 2020502303
(86)(22)【出願日】2018-07-20
(86)【国際出願番号】 EP2018069727
(87)【国際公開番号】W WO2019016355
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-06-17
(32)【優先日】2017-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2018-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591001248
【氏名又は名称】ソルヴェイ(ソシエテ アノニム)
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カッバベ マラヴェ, ホルヘ アレハンドロ
(72)【発明者】
【氏名】カヴァリエール, カリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】パスカル, ジャン-フィリップ
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/102603(WO,A1)
【文献】特開昭50-151968(JP,A)
【文献】特開平01-062334(JP,A)
【文献】国際公開第2012/032991(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106543465(CN,A)
【文献】特開2008-106227(JP,A)
【文献】特表2018-502038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
C08L
C08K
B29C 44/00-44/60,67/20
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリマー前駆体
、又は
押出プロセスにおけるポリマー樹脂
を発泡させるための化学発泡剤であって、
前記化学発泡剤が機能化微粒子重炭酸塩を含み、
前記機能化微粒子重炭酸塩が少なくとも1種の添加物を含有し
、
前記機能化微粒子重炭酸塩中の添加物が、ロジン酸、それの任意の誘導体、それの任意の塩、又はそれらの任意の組み合わせを含み
、かつ
前記機能化微粒子重炭酸塩が、シリカをさらに含む、
化学発泡剤。
【請求項2】
熱可塑性ポリマー前駆体がPVCプラスチゾルである、請求項1に記載の化学発泡剤。
【請求項3】
発泡剤が、発熱性発泡剤である、いかなるさらなる発泡剤も含有しない、又は化学発泡剤が、加熱中に窒素ガスを遊離させる化合物を含有しない、又は化学発泡剤が、加熱中にアンモニアガスを遊離させる化合物を含有しない、請求項1
又は2に記載の化学発泡剤。
【請求項4】
機能化微粒子重炭酸塩が、
- 1種以上のポリマー;
- 1種以上のアミノ酸、それらの任意の誘導体、及びそれらの塩;
- 1種以上の無機塩;
- 1種以上の油;
- 1種以上の脂肪;
- 1種以上の樹脂酸、それらの任意の誘導体、及びそれらの塩;
- 1種以上の脂肪酸、それらの任意の誘導体、及びそれらの塩;
- カルボン酸若しくはポリカルボン酸、それの誘導
体、若しくはそれの塩;
- 1種以上の石鹸;
- 1種以上のワックス;又は
- それらの任意の組み合わせ
から選択され
る
少なくとも1種の追加の添加物を含む、請求項1
~3のいずれか一項に記載の化学発泡剤。
【請求項5】
機能化微粒子重炭酸塩が、少なくとも50重量%及び100重量%未満の重炭酸塩成分と、50重量%以下~0.02重量%の前記添加物の少なくとも1種とを含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の化学発泡剤。
【請求項6】
機能化微粒子重炭酸塩が、少なくとも65重量%及び100重量%未満の重炭酸塩成分と、35重量%以下~0.02重量%の前記添加物の少なくとも1種とを含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載の化学発泡剤。
【請求項7】
機能化微粒子重炭酸塩の粒子が、1μm超及び最大でも250μ
mのD
50の粒度分布を有する、請求項1~
6のいずれか一項に記載の化学発泡剤。
【請求項8】
機能化微粒子重炭酸塩
の粒子が、最大でも1μmのD
50の粒度分布を有する、請求項1~
6のいずれか一項に記載の化学発泡剤。
【請求項9】
機能化微粒子重炭酸塩が、以下のプロセスの少なくとも1つによって:
- 噴霧乾燥(アトマイゼーションとしても知られる)によって、ここで、添加物は重炭酸塩含有溶液に溶解しており、
- エマルジョン若しくは粉末形態での前記添加物との粉砕若しくは共粉砕(ミリング若しくは共ミリングとしても知られる)によって;
- 流動床内でのスプレーコーティング及び噴霧造粒によって、
- 流動床内での噴霧集塊によって、
- 噴霧チリン
グによって、
- ローラー圧縮によって、並びに/又は
- 同時混合/押出などの、押出によって
得ら
れる、
請求項1~
8のいずれか一項に記載の化学発泡剤。
【請求項10】
加熱時にCO
2を遊離させる第2化合物をさらに含む、請求項1~
9のいずれか一項に記載の化学発泡剤であって、前記第2化合物が、カルボン酸若しくはポリカルボン酸、それの誘導
体、又はそれの塩からなる群から選択さ
れる、化学発泡剤。
【請求項11】
ポリマーと
、請求項1~10のいずれか一項に記載の化学発泡剤とを含む、発泡性ポリマー組成物であって、前記ポリマーが、PVC、ポリウレタン、ポリオレフィ
ン、スチレン系ポリマ
ー、エンジニアリング樹脂、ポリフェニレンオキシド、ポリイミド
、天然ゴム
若しくは合成ゴム、又はポリアミドである組成物。
【請求項12】
発熱性化学発泡剤をさらに含
む、請求項11に記載の発泡性ポリマー組成物。
【請求項13】
発泡性PVCプラスチゾル組成物である、請求項11又は12に記載の発泡性ポリマー組成物であって、ポリマーがPVC樹脂を含む組成物。
【請求項14】
発泡性PVCプラスチゾル組成物である、請求項11に記載の発泡性ポリマー組成物であって、ポリマーがPVC樹脂を含
む、組成物。
【請求項15】
機能化微粒子重炭酸塩を含む請求項11又は12に記載の発泡性ポリマー組成物を、ポリマーのガラス転移温度Tgよりも上の及び/又は溶融温度Tmよりも上の温度で、130秒未満であるゲル化時間の間CO
2ガスを遊離させる及びポリマーを溶融させるのに好適な温度で加熱する工程を含む、ポリマーの製造方法。
【請求項16】
ポリマーが、PVC、ポリウレタン、ポリオレフィン、又はポリアミドである、請求項15に記載の方法によって得られる発泡ポリマー。
【請求項17】
機能化微粒子重炭酸塩とPVC樹脂とを含む請求項13又は14に記載の発泡
性ポリマー組成物を、190~210
℃の温度で、90秒~120秒のゲル化時間の間CO
2ガスを遊離させる及びPVCポリマーを溶融させるのに好適な温度で加熱して発泡PVCポリマーを提供する工程を含む、PVC発泡ポリマーの製造方法であって
、PVC発泡ポリマーが、少なくとも27
0の膨張比を有する及び/又は0.6g/cm
3未
満の密度を有する方法。
【請求項18】
機能化微粒子重炭酸塩を含む請求項13又は14に記載の発泡性PVCプラスチゾル組成物を、ゲル化時間の間CO
2ガスを遊離させる及びPVC樹脂を溶融させるのに好適な温度で加熱する工程を含む、ポリマーの製造方法であって、機能化微粒子を含む化学発泡剤での前記ゲル化時間が、発泡性PVCプラスチゾル組成物中の全ての他の成分が同じものである、N
2を遊離させる化学発泡剤で得られるゲル化時間未満である方法。
【請求項19】
請求項17又は18に記載の方法によって得られる発泡PVC。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年7月20日出願の欧州特許出願第17182354.5号、及び2018年1月22日出願の欧州特許出願第18152720.1号に対する優先権を主張するものであり、これらの出願の各々の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
連邦支援研究又は開発に関する陳述
該当なし
【0003】
本発明は、添加物を含有する機能化微粒子重炭酸塩に関する。本発明はまた、PVCプラスチゾルなどの、それを含有する発泡性組成物に、及び熱可塑性発泡ポリマー、特に発泡PVCを製造するためのその使用/方法に関する。
【背景技術】
【0004】
ポリマーフォームは、我々の近代世界において実質的にどこでも見いだされ、ファストフードの使い捨てパッケージング、家具のクッション材及び絶縁材料などの多種多様の用途に使用されている。
【0005】
ポリマーフォームは、フォームを形成するために一緒に混合された固相と気相とで構成されている。2つの相を速やかに組み合わせることによって、発泡と、クローズドセル構造かオープンセル構造かのいずれかとして知られる、気泡かガストンネルかのいずれかがその中に組み込まれたポリマーマトリックスの形成とをもたらす。クローズドセルフォームは一般により硬質であり、一方、オープンセルフォームは通常柔軟性がある。
【0006】
フォームで使用されるガスは、発泡剤と称され、化学発泡剤か物理発泡剤かのいずれかであってもよい。化学発泡剤は、プロセスにおいて反応に関与するか又は分解し、ガスを放つ化学物質である。物理発泡剤は、発泡プロセスにおいて化学的に反応せず、それ故マトリックスを形成するポリマーに不活性であるガスである。
【0007】
ポリ塩化ビニル(PVC)又はポリオレフィン(PO、PE、PP)、スチレン系樹脂(PS、ABS、ASA、SAN)並びに天然ゴム及びニトリルブタジエンゴム(NBR)又はクロロプレンゴム(CR)などの合成ゴムなどの、熱可塑性材料の加工のために、化学発泡剤が数十年間使用されている。化学発泡剤は、発泡熱可塑性ポリマーの製造における添加物である。化学発泡剤は、室温で安定であるが、ポリマーの加工中の高温でガスを発生しながら分解する。このガスは、フォーム構造を熱可塑性ポリマーに生み出す。化学発泡剤は、発泡壁紙、人造皮革、床及び壁被覆材、カーペット裏地、断熱材、絶縁シーラント、履物、自動車構成部品、ケーブル絶縁材、及び包装材料の製造などの多種多様の用途に使用されている。
【0008】
確立された発泡剤は、アゾジカルボン酸ジアミド(アゾジカルボンアミド、ADC、ADCA、CAS No.123-77-3)、スルホンヒドラジド 4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH、CAS No.80-51-3)及びp-トルエンスルホニルヒドラジド(TSH、CAS No.1576-35-8)などの発熱性発泡剤と、重炭酸ナトリウム(SBC、NaHCO3、CAS No.144-55-8)のような、炭酸塩並びにクエン酸及びそのエステルなどの吸熱性発泡剤とである。
【0009】
数年来、アゾジカルボンアミド(ADCA)は、セル状熱可塑性樹脂及びゴム用途に使用するための最も効果的な、且つ、広く使用される化学発泡剤の1つである(例えばDE-AS 1 037 700号明細書を参照されたい)。アゾジカルボンアミドは、加熱時に分解して、窒素及び一酸化炭素から主としてなる、大容積のガスを与える。これらの分解生成物は、収縮の少ない微細な及び一様なセル構造化フォームを生み出すために好適であり、その特性は、可塑化PVC(P-PVC)又はゴムフォームなどのソフトフォームの製造において基本的である。アゾジカルボンアミドの分解温度は、好適な活性化剤(分解開始剤)の添加によって200~220℃から125℃ほどに低くまで下げることができるが、有用な分解速度は、通常、140℃以上で達成されるにすぎない。活性化剤つまり分解開始剤は、発泡剤の分解温度及びガス放出の速度に影響を及ぼすために使用される、当該技術分野で公知の添加剤である。
【0010】
アゾジカルボンアミドは、熱可塑性材料の加工挙動を改善するために及び最終製品を最適化するために、他の化学発泡剤と組み合わせられ得る。例えば、発泡異形材又はシートなどのセル状硬質PVC(U-PVC;可塑剤を添加することによるポリマーの軟化なしの)用途において、ADCAは、許容できる技術的性能のフォーム構造を製造するために重炭酸ナトリウムと組み合わせて使用され得る(英国特許第2314841号明細書)。メルトレオロジー、フォーム構造に関する加工及び需要の相違のために、この技術は、可塑化された、軟質PVC及びPVCプラスチゾル加工に移転することができない。
【0011】
しかしながら、プラスチックにおける発泡剤としてのアゾジカルボンアミドは、食品と直接接触することを意図されるプラスチック物品の製造に対して、欧州連合では2005年8月以降禁止されている(発泡剤としてのアゾジカルボンアミドの使用の一時停止に関する指令2002/72/ECを改正する2004年1月6日の委員会指令(COMMISSION DIRECTIVE 2004/1/EC of 6 January 2004 amending Directive 2002/72/EC as regards the suspension of the use of azodicarbonamide as blowing agent”.)欧州連合の官報(Official Journal of the European Union.2004-01-13))。
【0012】
さらに、2012年12月に、欧州化学物質庁(European Chemicals Agency)(ECHA)は、ADCAの将来使用を限定する又は制限するであろう、リーチ規制(Reach Regulation)の第57及び59条の下での同庁の非常に高い懸念の物質(SVHC)の候補リスト(Candidates List of Substances of Very High Concern)(SVHC)にアゾジカルボンアミドが含められるべきであったと発表した。それ故、とりわけ発泡PVCでの用途向けに、同じ有益な性能を有するADCAの代替品が必要とされている。
【0013】
最も頻繁に使用される発泡剤、ADCAが、例えばポリマー調合物におけるそのような添加剤の安全な及び持続可能な使用に関する高い懸念のために課題にますます直面しつつある場合に、ADCAの好適な代替品を見いだすことへの要求は増加すると予期されるであろう。いずれにせよ、規制がそれほど厳しくない地域について、コスト効率の高い、エコに優しい発泡剤代替品でのADCAの部分又は完全置換は、最終使用者の持続可能性戦略のための手段を提供するであろうし、懸念の高いものと見なされるそのような物質を段階的に廃止する全体的な流れと合致する。
【0014】
可能な代替解決策は、スルホニルヒドラジド及び炭酸塩のクラスによって提供されるが、これらの物質は、発泡剤として使用される場合に、とりわけ可塑化、軟質PVCでの用途向けに使用される場合に幾つかの不利点を示す。
【0015】
p-トルエンスルホニルヒドラジド(TSH)は、硬質の及び可塑化PVCの加工にとって低すぎると考えられる、約105℃の温度で分解し始める。4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)もまた、分解時に窒素を放出するが、ガス発生特性は、アゾジカルボンアミドのそれと異なる。OBSHの分解点よりも上の温度で、窒素放出は速いが、アゾジカルボンアミドと比べて異なる温度で起こる。約155℃の絶対製品分解温度よりも下では、分解、したがってガス放出は遅い。さらにOBSHは、分解生成物及び生成する発泡最終物品が、180℃よりも高い典型的なP-PVC加工温度で意図せぬ茶色っぽい変色を有するという不利点を有する。
【0016】
重炭酸ナトリウムなどの炭酸塩は、分解時に窒素を遊離させないが、二酸化炭素及び場合により水を遊離させる。ポリマーへのその高い溶解性は二酸化炭素に典型的であるが、それは、とりわけ可塑化PVC用途において、窒素よりも迅速にポリマーマトリックスから透過し出て、それを発泡剤としてあまり効率的ではないものにする。炭酸塩は、一般に、収縮の少ない微細な及び一様なセル構造のソフトフォームの製造にとって有用ではない。重炭酸ナトリウム、化学発泡剤として使用される炭酸塩の最も一般的な代表物は、ADCA及びOBSHの両方と比較して、より幅広い温度範囲にわたって起こる、遅い分解及びガスの放出を有する。重炭酸ナトリウムの分解温度は、クエン酸によって影響を受け得る。
【0017】
重炭酸ナトリウム粒子及び重炭酸カリウム粒子などの、アルカリ金属重炭酸塩粒子は、当技術分野で公知である。これらの製品は、それらを興味深いものとする数多くの特性を有し、医薬産業、飼料及び食品産業などの、幾つかの技術分野において、洗剤において、並びに非鉄金属の処理において広く使用されている。
【0018】
重炭酸塩粒子を製造するための最も一般的な方法は、対応するアルカリ金属(例えば炭酸ナトリウム若しくは炭酸カリウム)の溶液又は対応するアルカリ金属の水酸化物の溶液の二酸化炭素での炭素化による結晶化である。重炭酸塩溶液の制御された冷却によって、又はそのような溶液の溶媒を蒸発させることによって、重炭酸塩を結晶化させることもまた一般的である。
【0019】
アルカリ金属重炭酸塩粒子の工業的な使用のためには、粒子の特定の特性、例えば、それらの嵩密度(注ぎ嵩密度)又は安息角の制御が必要とされる。嵩密度などの、これらのパラメータを制御するためのいくつかの方法は、当技術分野で公知である。例えば、米国特許第5,411,750号明細書は、70~500kg/m3の嵩密度の炭酸水素ナトリウム粉末の製造方法を開示している。粒子は、添加物としてのアルカリ金属塩と一緒の重炭酸塩の希薄水溶液を噴霧乾燥することによって調製される。国際公開第2014/096457号パンフレットは、1~10重量%の重炭酸ナトリウムと、マグネシウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、及び大豆レシチンからなる群から選択される添加物とを含む水溶液の噴霧乾燥による、重炭酸ナトリウム粒子の製造方法を開示している。
【0020】
上述の非アゾジカルボンアミド発泡剤は、良好な発泡剤の予期される要件プロフィールを満たすことができないし、この点において改善が必要とされる。
【発明の概要】
【0021】
本発明の態様は、発泡PVC、ポリウレタン、ポリアミド、ポリオレフィンなどの、特に発泡熱可塑性材料の製造のための、ポリマー製造における非アゾジカルボンアミド発泡剤として有利に使用することができる、機能化微粒子重炭酸塩を提供する。
【0022】
本発明の一態様は、機能化微粒子重炭酸塩及び
- 熱可塑性ポリマー、又は
- 押出プロセスにおいてポリマー樹脂
を発泡させるための化学発泡剤としてのその使用に関する。
【0023】
機能化微粒子重炭酸塩中の添加物は、ロジン酸、それの任意の誘導体、それの塩、又はそれらの任意の組み合わせを含むか又はそれらからなる。
【0024】
ロジン酸の好適な誘導体は、例えば、ロジンのC1~25アルキルエステル、グリセロールロジンエステル、ペンタエリスリトールロジンエステル、又はそれらの組み合わせなどの、1種以上のロジン酸エステルからなり得るか又はそれらを含んでもよい。ロジン酸の他の好適な誘導体は、水素化ロジン酸、ロジン酸の二量体、又は重合ロジンさえを含んでもよい。ロジン酸の好ましい誘導体は、ジヒドロアビエチン酸、好ましくは少なくとも50重量%のジヒドロアビエチン酸を含んでもよい。
【0025】
機能化微粒子重炭酸塩中のロジン酸添加物は、好ましくは、アビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、ネオアビエチン酸、ロジン酸エステル、又はそれらの混合物を含み、より好ましくは、アビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、又はそれらの混合物を含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、機能化微粒子重炭酸塩は、
- 1種以上のポリマー;
- 1種以上のアミノ酸、それらの任意の誘導体、及びそれらの塩;
- 1種以上の無機塩;
- 1種以上の油;
- 1種以上の脂肪;
- 1種以上の樹脂酸、それらの任意の誘導体、及びそれらの塩;
- 1種以上の脂肪酸、それらの任意の誘導体、及びそれらの塩;
- カルボン酸若しくはポリカルボン酸、それの誘導体(エステルなどの)、若しくはそれの塩;
- 1種以上の石鹸;
- 1種以上のワックス;又は
- それらの任意の組み合わせ
から選択され;
好ましくは、ポリエチレングリコールなどのポリオキシアルキレン及びそれらの誘導体、ポリ(メタ)アクリレート及びそれらの誘導体、ポリビニルアルコール、多糖類並びにそれらの組み合わせからなる群からより好ましくは選択される少なくとも1種のポリマーから;さらにより好ましくは、ポリビニルアルコール並びにポリエチレングリコールなどのポリオキシアルキレン及びそれらの誘導体から選択される
少なくとも1種の追加の添加物(ロジン酸、それの任意の誘導体、それの塩、又はそれらの組み合わせ以外の)をさらに含んでもよい。
【0027】
いくつかの実施形態において、機能化重炭酸塩は、シリカをさらに含んでもよい。シリカは、機能化重炭酸塩のための加工助剤、アンチケーキング剤及び/又は流動助剤として使用され得る。シリカは非晶質(及び非結晶性)形態にあることが推奨される。好ましくは、機能化重炭酸塩中のシリカは、非晶質沈澱シリカである。機能化重炭酸塩は、機能化重炭酸塩の全組成物を基準として少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.2重量%、より好ましくは少なくとも0.5重量%のシリカを含んでもよい。機能化重炭酸塩は、5重量%以下のシリカ、好ましくは4重量%以下のシリカ、より好ましくは3重量%以下のシリカを含むことが推奨される。
【0028】
機能化微粒子重炭酸塩は、前記添加物の存在下での噴霧乾燥重炭酸塩粒子、又は前記添加物の存在下での共ミリングされた(co-milled)重炭酸塩粒子であっても、又は流動床において添加物でコートされても、又は流動床において添加物とともに造粒されても、又は押出装置において添加物でコートされてもよい。
【0029】
機能化微粒子重炭酸塩は、少なくとも50重量%及び100重量%未満の重炭酸塩成分と、50重量%~0.02重量%の前記添加物の少なくとも1種とを含んでもよい。機能化微粒子重炭酸塩は、少なくとも65重量%及び100重量%未満の重炭酸塩成分と、35重量%~0.02重量%の前記添加物の少なくとも1種とを含んでもよい。機能化微粒子重炭酸塩は、少なくとも75重量%及び100重量%未満の重炭酸塩成分と、25重量%~0.02重量%の前記添加物の少なくとも1種とを含んでもよい。機能化微粒子重炭酸塩は、少なくとも90重量%及び100重量%未満の重炭酸塩成分と、10重量%~0.02重量%の前記添加物の少なくとも1種とを含んでもよい。任意選択的に、機能化重炭酸塩は、0.1重量%~5重量%又は0.2重量%~4重量%又は0.5重量%~3重量%のシリカ、好ましくは非晶質シリカ、より好ましくは非晶質沈澱シリカをさらに含んでもよい。
【0030】
本発明の別の態様は、押出プロセスにおいて熱可塑性ポリマー、例えばPVCプラスチゾル又はポリマー樹脂を発泡させるための化学発泡剤であって、前記化学発泡剤が機能化微粒子重炭酸塩を含み、ここで前記機能化微粒子重炭酸塩が少なくとも1種の添加物を含有する化学発泡剤に関する。
【0031】
好ましい実施形態において、化学発泡剤は吸熱性である。
【0032】
好ましい実施形態において、化学発泡剤は、発熱性である発泡剤を含有しない。
【0033】
好ましい実施形態において、化学発泡剤は、発泡ポリマーがそのような化学発泡剤を使用して製造される場合に加熱中に窒素ガス及び/又はアンモニアを遊離させるであろう発泡剤を含有しない。
【0034】
最も好ましい実施形態において、化学発泡剤は、機能化微粒子重炭酸ナトリウムを含むか又はそれからなる。
【0035】
いくつかの実施形態において、化学発泡剤は、加熱時にCO2を遊離させる第2化合物であって、前記第2化合物が、カルボン酸若しくはポリカルボン酸、それの誘導体(エステルなどの)、又はそれの塩からなる群から選択される第2化合物をさらに含む。第2化合物は、
- フマル酸、
- 酒石酸、
- クエン酸、クエン酸塩(クエン酸水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウムなどの)、若しくはクエン酸のエステル;又は
- それらの組み合わせ
の少なくとも1つを含んでも又はそれであってもよい。
第2化合物は、機能化微粒子重炭酸塩中に使用されるものと異なる又は同じものである少なくとも1種の添加物で機能化され得る。
【0036】
本発明の別の態様は、発泡剤としての機能化微粒子重炭酸塩を含む発泡性ポリマー組成物であって、前記機能化微粒子重炭酸塩が少なくとも1種の添加物を含有する組成物に関する。
【0037】
いくつかの実施形態において、発泡性ポリマー組成物は、第1吸熱性発泡剤としての機能化微粒子重炭酸塩と、第2吸熱性発泡剤としてのカルボン酸若しくはポリカルボン酸、それのエステル、又はそれの塩とを含む。カルボン酸若しくはポリカルボン酸、それのエステル、又はそれの塩もまた機能化され得る。機能化微粒子重炭酸塩及び機能化カルボン酸若しくはポリカルボン酸、それのエステル、又はそれの塩は、一緒に又は別々に機能化され得る。
【0038】
特定の実施形態において、発泡性ポリマー組成物は、発泡ポリマーがそのような発泡性組成物から製造される場合に、加熱中に窒素ガス及び/又はアンモニアを遊離させるであろう発泡剤を含有しない。
【0039】
いくつかの実施形態において、発泡性ポリマー組成物は、発熱性発泡剤を含有しない。
【0040】
ポリマー樹脂の発泡(プラスチゾル又は押出プロセス)中に、非機能化重炭酸ナトリウムの粒子が発泡剤として使用される場合、重炭酸塩の速い分解のために、ガス放出が予期されるよりも早く起こることが観察された。特有の添加物でのコーティングによる、造粒による、及び/又はカプセル化による重炭酸塩粒子の機能化は、小さい(いくつかはナノサイズであってもよい)及び大きい(いくつかはミクロンサイズであってもよい)、様々な重炭酸塩粒径を有する場合に、熱分解を遅らせる、不活性バリアでの重炭酸塩粒子の保護を高めることが分かった。
【0041】
本発明のこの態様による機能化微粒子重炭酸塩は、好ましくは、少なくとも1種の添加物で機能化されている微粒子重炭酸ナトリウムである。この機能化微粒子重炭酸ナトリウムは、同等サイズの非機能化微粒子重炭酸ナトリウムと比べると膨張の改善された特性を示す。「非機能化微粒子重炭酸ナトリウム」は、機能化微粒子重炭酸ナトリウムの製造において使用される添加物なしで製造された微粒子重炭酸ナトリウムと定義される。発泡性ポリマー組成物中の機能化微粒子重炭酸ナトリウムは、ポリマーのガラス転移温度Tgよりも上の及び/又は溶融温度Tmよりも上の温度でのゲル化の時間を低減し得る。例えばPVCプラスチゾルについて、ポリマーのガラス転移温度Tgよりも上の及び/又は溶融温度Tmよりも上の温度でのゲル化時間は、90秒未満、好ましくは80秒以下、又は70秒以下、又はより好ましくは60秒以下であり得る。
【0042】
ポリマーの製造方法は、機能化微粒子重炭酸塩を含む発泡性ポリマー組成物を、ポリマーのガラス転移温度Tgよりも上の及び/又は溶融温度Tmよりも上の温度で、130秒未満であるゲル化時間の間CO2ガスを遊離させる及びポリマーを溶融させるのに好適な温度で加熱する工程を含み得る。
【0043】
PVCポリマーの製造方法のいくつかの実施形態について、発泡性ポリマー組成物が加熱される場合、発泡PVCポリマーを提供するために機能化微粒子重炭酸ナトリウムからCO2ガスを遊離させる及びPVCポリマーを溶融させるのに好適な温度は、90~120秒のゲル化時間の間、190~210℃、好ましくは200~210℃であってもよい。
【0044】
発泡性ポリマー組成物が加熱及びポリマー溶融前に表面上にスプレッドコートされる場合、発泡ポリマーは、少なくとも270、好ましくは少なくとも280、より好ましくは少なくとも300の膨張比を有し得る及び/又は0.6g/cm3未満、好ましくは0.55g/cm3未満、より好ましくは最大でも0.5g/cm3の密度を有する。膨張比は、その層がオーブン中でゲル化の間加熱されるときに発泡性ポリマー組成物のスプレッドコーテッド層の初期厚さで割った最終厚さの比に基づいて計算される。
【0045】
機能化重炭酸ナトリウム粒子は、重炭酸ナトリウムを含有する溶液から又は固体重炭酸ナトリウム粒子から直接に少なくとも1種の添加物の存在下で製造される。機能化微粒子重炭酸塩中の添加物は、ロジン酸、それの任意の誘導体、それの塩、又はそれらの任意の組み合わせを含むか又はそれらからなる。
【0046】
機能化微粒子重炭酸塩は、以下のプロセスの少なくとも1つによって:
- 噴霧乾燥(アトマイゼーションとしても知られる)によって、ここで、添加物は重炭酸塩含有溶液に溶解しており、
- エマルジョン若しくは粉末形態での添加物との粉砕若しくは共粉砕(ミリング若しくは共ミリングとしても知られる)によって;
- 流動床内でのスプレーコーティング及び噴霧造粒によって、
- 流動床内での噴霧集塊(spray agglomeration)によって、
- 噴霧チリング(例えば、噴霧冷却、噴霧凍結)によって、
- ローラー圧縮によって、
並びに/又は
- 同時混合/押出などの、押出によって
得ることができる。
【0047】
このリストからの1つ以上の方法が除外され得ることは理解されるべきである。
【0048】
好ましい実施形態において、機能化微粒子重炭酸塩は、以下のプロセスの少なくとも1つによって:
- エマルジョン若しくは粉末形態での添加物との粉砕若しくは共粉砕(ミリング若しくは共ミリングとしても知られる)によって;
- 流動床内でのスプレーコーティング及び噴霧造粒によって、
並びに/又は
- 同時混合/押出などの、押出によって
得ることができる。
【0049】
より好ましい実施形態において、機能化微粒子重炭酸塩は、以下のプロセスの少なくとも1つによって:
- エマルジョン若しくは粉末形態での添加物との粉砕若しくは共粉砕(ミリング若しくは共ミリングとしても知られる)によって;
及び/又は
- 同時混合/押出などの、押出によって
得ることができる。
【0050】
少なくとも1つの前記プロセスによって得られる機能化微粒子重炭酸塩は、さらに、その平均粒径を低減するためにミリングにかけられてもよい。
【0051】
任意の追加の添加物での微粒子重炭酸塩の機能化方法は、ロジン酸、それの任意の誘導体、それの塩、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される添加物で同じ微粒子重炭酸塩を機能化するために用いられる方法と同じものであっても異なるものであってもよい。
【0052】
機能化微粒子重炭酸塩は、優れたCO2放出特性を示す。TGA分析によって測定されるように、機能化微粒子重炭酸塩の最大損失温度は、好ましくは、添加物を使わない非機能化重炭酸塩よりも高い。機能化微粒子重炭酸塩のCO2放出は、典型的には、少なくとも130℃の温度で、好ましくは少なくとも135℃の温度で、より好ましくは少なくとも140℃の温度で、さらにより好ましくは少なくとも145℃の温度で、特に好ましくは少なくとも155℃の温度でその最大値を有する。
【0053】
DSC熱分析によって測定されるように、機能化微粒子重炭酸塩の最大ピーク温度は、好ましくは、添加物を使わない非機能化重炭酸塩よりも高い。機能化微粒子重炭酸塩のDSC最大ピーク温度は、少なくとも140℃、好ましくは少なくとも145℃、より好ましくは少なくとも150℃、さらにより好ましくは少なくとも155℃の温度で、特に好ましくは少なくとも160℃であり得る。
【発明を実施するための形態】
【0054】
定義
ある要素若しくは組成物が、列挙された要素若しくは構成要素のリストに含まれる及び/又はリストから選択されると記されている、本記述では、本明細書で明示的に企図される関連実施形態において、その要素若しくは構成要素は、個別の列挙された要素若しくは構成要素の任意の1つでもあることができるか、又は明示的にリストアップされた要素若しくは構成要素の任意の2つ以上からなる群から選択することもできることが理解されるべきである。
【0055】
さらに、本明細書に記載される装置、プロセス又は方法の要素及び/又は特徴は、本明細書において明示的であるか暗示的であるかに関わらず、本教示の範囲及び開示から逸脱することなく様々なやり方で組み合わせることができることが理解されるべきである。
【0056】
用語「熱可塑性材料」は、特定の温度よりも上で柔軟に又は成形可能になり、そのため熱分解温度よりも下の高温で流動することができ、冷却すると固体状態に戻るポリマーを意味するものとする。ポリマーは、ホモポリマー及びコポリマーを含む、同じ又は異なるタイプのモノマーを反応させること(すなわち重合させること、縮合)によって調製される高分子化合物である。熱可塑性材料は、連鎖重合、重付加及び/又は重縮合によって製造される。
【0057】
用語「機能化微粒子重炭酸塩」は、好ましくは同じ粒子内に、重炭酸塩と添加物とを含む粒子と定義するとして理解されるべきである。例えば、添加物が重炭酸塩上に層若しくはコーティングを形成してもよいし、又は重炭酸塩が添加物上に層若しくはコーティングを形成してもよい。或いは又はさらに、添加物が重炭酸塩のマトリックス内に埋め込まれてもよいし、又は逆もまた同様である。重炭酸塩と添加物とを含む粒子は、より小さい粒子の集塊であってもよいし、又は構成要素の1つの小さい粒子が、他の構成要素のより大きい粒子(若しくはより大きい複数粒子)へと塊になってもよい。好ましくは、用語「機能化微粒子重炭酸塩」には、それが液体形態にあるか粒子の形態にあるかに関わらず、重炭酸塩と少なくとも1種の添加物との単なる混合物は含まれない。
【0058】
用語「機能付与添加物」は、本明細書で用いるところでは、この添加物が重炭酸ナトリウムと調合された場合に、重炭酸ナトリウム単独(添加物なし)と比べて、重炭酸ナトリウムの少なくとも1つのCO2放出特性を改善することができる化合物を言う。例えば、機能付与添加物は、本出願の実施例54に従って測定される、機能化微粒子重炭酸塩CO2放出開始温度及び/又はCO2放出最大温度を上げることができる。
【0059】
用語「含む」は、「から本質的になる」及び「からなる」を包含する。
【0060】
用語「熱可塑性材料」、「ポリマー」及び「PVC」に関連した用語「発泡した」は、加工中の化学発泡剤の熱分解及び/又は化学反応からのガス発生によって形成されるセル状構造のそのような材料、ポリマー、又はPVCを意味するものとする。
【0061】
用語「ppm」は、重量で表される、百万当たりの部(例えば、1ppm=1mg/kg)を意味する。
【0062】
用語「pcr」は、樹脂の重量部(例えば、80pcrの添加物=樹脂の100g当たり80gの添加物)を意味する。
【0063】
記号「%」又は「重量%」は、特に明記しない限り、「重量パーセント」を意味する。
【0064】
用語「粉末」は、ミルにかけられた(粉砕された)、押し出された、又は噴霧乾燥された固体粒子からなるコンパウンドを意味するものとする。
【0065】
用語「発熱性発泡剤」は、その分解中に熱を発生する化学物質を定義する。発熱性発泡剤は、典型的には、狭い温度範囲で速い分解を受ける。一般的に言えば、発熱性化学発泡剤は、主な発泡ガスとしてN2を与える(発生ガスの50容積%超がN2である)それらの化学物質と関連している。しかし、他の少量のガスが発熱性化学発泡剤の分解から生成し得る。これらの他の少量のガスには、一酸化炭素、同様に少量(5容積%未満)のアンモニア、及び/又はCO2が含まれ得る。
【0066】
用語「吸熱性発泡剤」は、その分解中に熱を吸収する化学物質を定義する。吸熱性発泡剤は、典型的には、温度及び時間の両方の観点からより幅広い分解範囲を有する。ほとんどの吸熱性化学発泡剤は、主な発泡ガスとしてCO2を発生させる(発生ガスの50容積%超がCO2である)。
【0067】
本発明の一態様による機能化微粒子重炭酸塩のCO2放出特性は、温度に依存する試料の重量損失を測定する、機能化微粒子重炭酸塩試料の熱重量分析(TGA)を行うことによって決定することができる。CO2放出特性は、温度に依存する重量損失についての微分値によって特徴付けられる。CO2放出開始温度は、重量損失についての微分値が上がり始める温度である。CO2放出最大温度は、重量減少についての微分値が最大である温度である。典型的には、加熱は、10℃/分の速度で30℃~250℃で行われる。熱重量分析は、例えば、STD Q600 V20.9 Build 20熱重量分析機器(TA Instrumentsにより提供される)において行うことができる。
【0068】
複数の要素には、2つ以上の要素が含まれる。
【0069】
語句「A及び/又はB」は、次の選択:要素A;又は要素B;又は要素AとBとの組み合わせ(A+B)を指す。語句「A及び/又はB」は、A及びBの少なくとも1つと同等である。語句「A及び/又はB」は、A及びBの少なくとも1つと同じである。
【0070】
n≧3の語句「A1、A2、…、及び/又はAn」には、次の選択:任意の単一要素Ai(i=1、2、…n);又はA1、A2、…、Anから選択される2~(n-1)個の要素の任意の部分的な組み合わせ、又は全ての要素Ai(i=1、2、…n)の組み合わせが含まれる。例えば、語句「A1、A2、及び/又はA3」は、次の選択:A1;A2;A3;A1+A2;A1+A3;A2+A3;又はA1+A2+A3を言う。
【0071】
本明細書において、最下限、若しくは最上限によって、又は最下限及び最上限によって規定される、変数についての値の範囲の記述はまた、変数が、最下限を除く、若しくは最上限を除く、又は最下限及び最上限を除く値範囲内で、各々、選択される実施形態を含む。
【0072】
本明細書において、同じ変数についての値の幾つかの連続する範囲の記述はまた、その変数が、その連続する範囲中に含まれる任意の他の中間範囲において選択される実施形態の記述を含む。したがって、例示目的のために、「要素Xは一般に少なくとも10、有利には少なくとも15である」と述べられている場合、本記述はまた、新たな最小値を10~15の間で選択することができる、例えば:「要素Xが少なくとも11である」、又はまた、「要素Xが少なくとも13.74である」などの別の実施形態を含み;11又は13.74は、10~15の間に含まれる値である。同様に例示目的のために、「要素Xは一般に最大でも15、有利には最大でも10である」と示されている場合、本記述はまた、新たな最大値を10~15の間で選択することができる別の実施形態を含む。
【0073】
ある要素若しくは組成物が、列挙された要素若しくは構成要素のリストに含まれる及び/又はリストから選択されると記されている、本記述では、本明細書で明示的に企図される関連実施形態において、その要素若しくは構成要素は、個別の列挙された要素若しくは構成要素の任意の1つであることもできるか、又は明示的にリストアップされた要素若しくは構成要素の任意の2つ以上からなる群から選択することもできることが理解されるべきである。
【0074】
例えば、ある実施形態において、要素の群からのある要素の選択が記述されている場合、以下の実施形態:
- その群からの2つ以上の要素の選択、
- 1つ以上の要素が除去されている要素の群からなる要素の部分群からのある要素の選択
もまた明示的に記述されている。
【0075】
本明細書での単数形「1つ(a)」又は「1つ(one)」の使用は、特に明記しない限り複数形を含む。
【0076】
さらに、用語「約(about)」又は「約(ca.)」が定量値の前に用いられる場合、本教示はまた、特に明記しない限り、具体的な定量値自体を含む。本明細書で用いるところでは、用語「約(about)」又は「約(ca.)」は、特に明記しない限り、その名目値からの±10%の変動を意味する。
【0077】
機能化微粒子重炭酸塩
本発明の一態様は、機能化微粒子重炭酸塩に関する。
【0078】
機能化微粒子重炭酸塩は、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、及び重炭酸アンモニウムなどの、好ましくはアルカリ又はアンモニウム塩である重炭酸塩成分を含む。重炭酸ナトリウム及びカリウム、特に重炭酸ナトリウムが好ましい。
【0079】
いくつかの実施形態において、機能化微粒子重炭酸塩は、好ましくは、少なくとも50重量%、又は少なくとも55重量%、又は少なくとも60重量%、又は少なくとも65重量%さえの、しかし100重量%未満の重炭酸塩成分(例えば、重炭酸アンモニウム、ナトリウム又はカリウム)を含む。
【0080】
いくつかの実施形態において、機能化微粒子重炭酸塩は、少なくとも90重量%、又は少なくとも93重量%、又は少なくとも94重量%、又は少なくとも95重量%さえの、しかし100重量%未満の重炭酸塩成分(例えば、重炭酸アンモニウム、ナトリウム又はカリウム)を含んでもよい。
【0081】
いくつかの特定の実施形態において、機能化微粒子重炭酸塩は、好ましくは、少なくとも90重量%、しかし100重量%未満のアルカリ金属重炭酸塩を含む。機能化微粒子重炭酸塩は、好ましくは、少なくとも92重量%のアルカリ金属重炭酸塩、少なくとも93重量%、より好ましくは少なくとも94重量%、特には少なくとも95重量%のアルカリ金属重炭酸塩、特に重炭酸ナトリウムを含む。
【0082】
いくつかの実施形態において、機能化微粒子重炭酸塩は、50重量%以下、又は45重量%以下、又は40重量%以下、又は35重量%以下さえの、少なくとも1種の添加物を有し得る。
【0083】
いくつかの特定の実施形態において、機能化微粒子重炭酸塩は、10重量%以下、又は7重量%以下、又は5重量%以下、又は3重量%以下の、添加物を含有する。
【0084】
添加物は、少なくとも0.02重量%、好ましくは少なくとも0.05重量%、特には少なくとも0.1重量%の量で本発明による機能化微粒子重炭酸塩中に存在すべきである。機能化微粒子重炭酸塩中の添加物の重量%が高ければ高いほど、それは、コスト理由でより不利であろう。好ましくは、重炭酸塩成分と比べてより高価な添加物のコストを削減するために、最大でも8重量%、より好ましくは最大でも6重量%、特には最大でも5重量%の添加物を機能化微粒子重炭酸塩に使用することが望ましい。
【0085】
しかしながら、添加物が比較的高価でない実施形態においては(例えばそのコストが重炭酸塩成分のそれの2倍以下である場合には)、少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも7重量%、特には少なくとも10重量%及び/又は最大でも50重量%、より好ましくは最大でも40重量%、その上より好ましくは最大でも35重量%の添加物を機能化微粒子重炭酸塩に使用することが望ましい場合がある。
【0086】
いくつかの特定の実施形態において、機能化微粒子重炭酸塩は、0.02~50重量%、又は0.02~45重量%、又は0.02~40重量%、又は0.02~35重量%の少なくとも1種の添加物を含んでもよい。
【0087】
いくつかの特定の実施形態において、機能化微粒子重炭酸塩は、10%超及び50重量%以下の少なくとも1種の添加物を含んでもよい。
【0088】
いくつかの実施形態において、費用対効果のために、機能化微粒子重炭酸塩は、0.02重量%~10重量%の添加物を含んでもよい。
【0089】
特定の実施形態において、機能化微粒子重炭酸塩は、少なくとも65重量%及び100重量%未満の重炭酸塩成分と、35重量%~0.02重量%の少なくとも1種の添加物とを含んでもよいし;又は少なくとも75重量%及び100重量%未満の重炭酸塩成分と、25重量%~0.02重量%の少なくとも1種の添加物とを含んでもよい。
【0090】
機能化微粒子重炭酸塩は、好ましくは、発泡又は押出ポリマー(発泡PVC又はポリウレタン;押出PVC、ポリオレフィン、ポリアミドなどの)用の発泡剤として使用され、好ましく吸熱性発泡剤として使用される。ポリマーの非限定的な例は、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン、ポリオレフィン(PO、PE、PP)、スチレン系樹脂(PS、ABS、ASA、SAN)並びに天然ゴム及びニトリルブタジエンゴム(NBR)又はクロロプレンゴム(CR)などの合成ゴム、ポリアミド、ポリイミドである。
【0091】
機能化微粒子重炭酸塩は、CO2を遊離させることができる、及び微粒子重炭酸塩に機能化するためにも使用される添加物をさらに含有し得る。この添加物は、機能化微粒子重炭酸塩中の第二発泡剤と見なされ得る。この添加物は、機能化微粒子重炭酸塩が吸熱性発泡剤として使用される場合にCO2生成の増加を提供するであろうのみならず、この添加物は、重炭酸塩コアを、その表面(又はその一部)を保護することによって時期尚早のCO2放出から防護するであろう。このCO2-遊離添加物は、カルボン酸若しくはポリカルボン酸、それの誘導体(エステルなどの)、又はそれの塩であってもよい。
【0092】
好適なカルボン酸には、式:HOOC--R--COOH(ここで、Rは、1個以上のヒドロキシ基又はケト基でまた置換されていてもよく、不飽和をまた含有していてもよい、1~約8個の炭素原子のアルキレン基である)のものが含まれる。エステル、塩及びハーフ塩もまた含まれる。
【0093】
好ましいCO2-遊離添加物には、
- フマル酸、
- 酒石酸、又は
- クエン酸、クエン酸塩(クエン酸水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウムなどの)、若しくはクエン酸のエステル
の少なくとも1つが含まれ得る。
【0094】
クエン酸のエステルには、トリブチルシトレート、トリエチルシトレート、トリ-C12~13アルキルシトレート、トリ-C14~15アルキルシトレート、トリカプリリルシトレート、トリエチルヘキシルシトレート、トリイソセチルシトレート、トリオクチルドデシルシトレート及びトリイソステアリルシトレート、イソデシルシトレート及びステアリルシトレート、ジラウリルシトレート、並びに/又はエチルシトレート(トリ-、ジ-及びモノエステルの混合物)、好ましくはトリブチルシトレート、トリエチルシトレート、イソデシルシトレート、又はトリエチルヘキシルシトレートが含まれ得る。
【0095】
より好ましいCO2-遊離添加物は、クエン酸、そのエステル、又はそれの塩を含むか又はそれらからなる。
【0096】
いくつかの実施形態において、機能化微粒子重炭酸塩は、クエン酸、そのエステル、又はそれの塩を含有しない。
【0097】
いくつかの実施形態において、機能化微粒子重炭酸塩は、発熱性発泡剤を含有しない。
【0098】
いくつかの特定の実施形態において、機能化微粒子重炭酸塩は、アンモニアを遊離させる発泡剤として使用される化合物を含有しない。
【0099】
いくつかの特定の実施形態において、機能化微粒子重炭酸塩は、窒素ガスを遊離させる発泡剤として使用される化合物を含有しない。窒素ガスを遊離させる発泡剤の例は、アゾジカルボン酸ジアミド(アゾジカルボンアミド、ADC、ADCA、CAS No.123-77-3)、スルホンヒドラジド 4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH、CAS No.80-51-3)及びp-トルエンスルホニルヒドラジド(TSH、CAS No.1576-35-8)などの発熱性発泡剤である。
【0100】
好ましい実施形態において、機能化微粒子重炭酸塩は、アゾジカルボンアミドを含有しない。
【0101】
代わりの又は追加の好ましい実施形態において、機能化微粒子重炭酸塩は、ベンゼンスルホニルヒドラジドを含有しない。
【0102】
代わりの又は追加の実施形態において、機能化微粒子重炭酸塩は、p-トルエンスルホニルヒドラジドを含有しない。
【0103】
本発明の好ましい実施形態において、機能化微粒子重炭酸塩は、粉末形態での重炭酸塩成分と、少なくとも1種の添加物とを含む。
【0104】
ある種の用途向けには、本発明の機能化微粒子重炭酸塩は、添加物のコーティングでコートされている粒子としての重炭酸ナトリウムを含有することが好ましい。そのようなコーティングは、機能化微粒子重炭酸塩のいくつかの特性を改善することができる。そのような場合における添加物は、「コーティング剤」と称され得る。コーティング剤としての添加物は、この添加物が、重炭酸塩の粒子の表面を、部分的に又は完全に、覆うことができることを意味するものとする。「コーティング剤」は、粒子のコアがそれでできている重炭酸塩成分と異なる化合物である。
【0105】
ある種の用途向けには、本発明の機能化微粒子重炭酸塩は、1種の添加物と共ミリングされた重炭酸ナトリウムを含有すると想定される。添加物とのそのような共ミリングは、機能化微粒子重炭酸塩のいくつかの特性を改善することができる。
【0106】
ある種の用途向けには、本発明の機能化微粒子重炭酸塩は、2種以上の添加物で機能化されている粒子としての重炭酸ナトリウムを含有する。重炭酸ナトリウム粒子の機能付与は、1つの機能付与方法を用いて添加物(複数)で同時に実施されてもよいし、又は1つの機能付与方法で1種の添加物を使用して、次に、同じ又は異なる機能付与方法で別の添加物を使用して順次実施されてもよい。例えば、重炭酸ナトリウム粒子が、先ず、第1添加物で機能化され、次に、これらの第1機能化粒子が、再び、第2添加物(第1添加物と同じ組成又は異なる組成を有する、好ましくは異なる組成を有する第2添加物)で機能化され得る。後続の機能付与のために用いられる方法は、同じものであってもよいが、好ましくは異なる。(第1及び第2)機能付与方法は、好ましくは、押出、共粉砕、及びスプレーコーティングからなる群から選択される。例えば、第1機能付与方法は、共粉砕又は押出を含んでも又はそれらからなってもよいし、第2機能付与方法は、押出、共粉砕、又はスプレーコーティングを含んでも又はそれらからなってもよい。好ましくは、第1機能付与方法は、共粉砕を含んでも又は共粉砕からなってもよいし、第2機能付与方法は、押出を含んでも又は押出からなってもよい。(第1及び第2)機能付与添加物の少なくとも1種は、ロジン酸、それの任意の誘導体、それの塩、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0107】
ある種の用途向けには、本発明の機能化微粒子重炭酸塩は、1種の添加物で機能化されている粒子としての重炭酸ナトリウムを含有するが、添加物は全て同時に添加されるわけではなく、数部分で順次添加される。例えば、重炭酸塩粒子は、先ず、添加物の第1部分で機能化され、次に、これらの第1機能化重炭酸塩粒子が再び、同じ添加物の第2部分で機能化され得る。機能付与のために用いられる方法は、同じものであってもよいし、又は異なってもよい。例えば、(第1及び第2)機能付与方法は、好ましくは、押出、共粉砕、及びスプレーコーティングからなる群から選択される。好ましくは、第1機能付与方法は、共粉砕を含んでも又は共粉砕からなってもよいし、第2機能付与方法は、押出を含んでも又は押出からなってもよい。
【0108】
ある種の用途向けには、本発明の機能化微粒子重炭酸塩は、第1添加物のコーティングでコートされている粒子としての重炭酸ナトリウムを含有し、次に、これらのコーテッド粒子が第2添加物(第1添加物と同じ組成又は異なる組成を有する第2添加物)と共ミリングされることが好ましい場合がある。
【0109】
ある種の用途向けには、一定の少量のガスを1つの場所で生成しているような、微細なセル状フォームの製造が望ましい場合がある。セル状フォーム構造を改善するために、機能化微粒子重炭酸塩は特有の粒径及び粒度分布を有することが好適であり得る。D50という用語は、50重量%の粒子がD50(重量平均径)以下の直径を有する、その直径を意味する。D10という用語は、10重量%の粒子がD10以下の直径を有する、その直径を意味する。D90という用語は、90重量%の粒子がD90以下の直径を有する、その直径を意味する。
【0110】
機能化微粒子重炭酸塩は、好ましくは小さいスパンとともに小さい粒径などの、有利な特性を有し得る。粒度分布のスパンは、当技術分野で公知のように、比率(D90-D10)/D50と定義される。スパンは、約1~約3などの、約1~約6の範囲であってもよい。一実施形態において、スパンは、6よりも小さく、好ましくは4よりも小さく、より好ましくは3よりも小さくてもよい。一実施形態において、スパンは、1よりも大きく、好ましくは2よりも大きくてもよい。別の実施形態において、スパンは、1.8よりも小さく、より好ましくは最大でも1.7、特には最大でも1.6、例えば最大でも1.5であってもよい。
【0111】
好ましくは、機能化微粒子重炭酸塩の粒子は、最大でも250μm、好ましくは最大でも100μm、より好ましくは最大でも60μm、その上より好ましくは最大でも40μm、又は最大でも30μm、又は最大でも25μmのD50の粒度分布を有する。
【0112】
いくつかの実施形態において、機能化微粒子重炭酸塩の粒子は、1μm超、好ましくは2μm超、より好ましくは5μm超、その上より好ましくは少なくとも8μmのD50の粒度分布を有する。この機能化微粒子重炭酸塩は、「機能化ミクロンサイズの重炭酸塩」と称される。
【0113】
いくつかの実施形態において、機能化微粒子重炭酸塩の粒子は、1μm~160μmの範囲の、好ましくは1μm~10μmの範囲の、より好ましくは2μm~10μmの範囲の、その上より好ましくは4μm~8μmの範囲の、特には5μm~6μmのD10を有する。
【0114】
いくつかの実施形態において、機能化微粒子重炭酸塩の粒子は、20μm~450μm、好ましくは30μm~200μm、より好ましくは30μm~165μm、特には30μm~100μmの範囲のD90を有する。
【0115】
重量平均径D50、並びにD10及びD90値は、重炭酸塩で飽和したエタノール溶液を使用する、632.8nmの波長、18mmの直径を有するHe-Neレーザー源と、後方散乱300mmレンズ(300RF)を備えた測定セルと、MS 17液体調製ユニットと、自動溶媒濾過キット(「エタノールキット」)とを使用するMalvern Mastersizer S粒径分析器でレーザー回折及び散乱によって測定することができる(湿式法)。
【0116】
機能化微粒子重炭酸塩は、優れたCO2放出特性を示す。TGA分析によって測定されるように、機能化微粒子重炭酸塩の最大損失温度は、好ましくは、添加物を使わない非機能化重炭酸塩よりも高い。機能化微粒子重炭酸塩のCO2放出は、典型的には、少なくとも130℃の温度で、好ましくは少なくとも135℃の温度で、より好ましくは少なくとも140℃の温度で、さらにより好ましくは少なくとも145℃の温度で、特に好ましくは少なくとも155℃の温度でその最大値を有する。
【0117】
示差走査熱量測定法(DSC)熱分析によって測定されるように、機能化微粒子重炭酸塩は、好ましくは、添加物を使わない非機能化重炭酸塩よりも高い最大ピーク温度を有する。機能化微粒子重炭酸塩のDSC最大ピーク温度は、少なくとも140℃、好ましくは少なくとも145℃、より好ましくは少なくとも150℃、さらにより好ましくは少なくとも155℃の温度において、特に好ましくは少なくとも160℃の温度においてであり得る。
【0118】
機能化ナノサイズの重炭酸塩
いくつかの実施形態において、機能化微粒子重炭酸塩の粒子は、最大でも1μm、好ましくは1μm未満のD50の粒度分布を有する。この機能化微粒子重炭酸塩は、「機能化ナノサイズの重炭酸塩」と称される。
【0119】
機能化微粒子重炭酸塩がナノサイズの重炭酸塩粒子をベースとする場合に、重炭酸塩ナノサイズの粒子は機能付与の前に形成されることが好ましい。溶媒を使った湿式粉砕、ミクロン化及び乾式ナノ粉砕などの技術が有効であろう。タンブラーボールミル、遊星ボールミル(例えばRetchから入手可能な)又はジェットミル(例えばAlpineから入手可能な)などのミルの使用が、ナノサイズの重炭酸塩粒子を製造するのに好適である。ボールミリングは、機械力を用いてナノスケールレジームへの嵩高い固体材料の分解を伴う。高エネルギーボールミリングによる粒径の低減は、機械的ミリングと称される。ナノサイズレベルへの重炭酸塩粉末の粉末のミリングは、極めて多くの熱を発生させるので、ミリングの間ずっと冷却することが推奨される。さらに、ナノサイズレベルへのミリングを容易にするために、滑剤を使用することが推奨され得る。
【0120】
さらに、粒子がミリング中に又はミルを出た後に再び塊になるのを防ぐために、界面活性剤を使用することが推奨され得る。これらのナノサイズの粒子は、大きい比表面積を有するせいで塊になる強い傾向を有する。界面活性剤は、立体バリアを提供する及び表面張力を下げることによってナノサイズの粒子のこの密接な接触を防ぐための重量な役割を果たし得る。界面活性剤分子は、新たに形成される表面の周りに薄い有機層を形成して、それらがミリングプロセス中に別の表面と接触するときに又はそれらがミルを出るときに露出表面を冷間圧接から守る。好適な界面活性剤には、ポリ(アクリル酸、ナトリウム塩)などのポリマー、又はオレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸若しくはオレイルアミン、パルミチン酸、ミリスチン酸、ウンデカン酸、オクタン酸、及び/又は吉草酸などの、脂肪酸若しくはそれのエステルが含まれ得る。
【0121】
機能付与は、別の化合物(添加物)をナノサイズの重炭酸塩コア粒子に添加するので、当初の重炭酸塩コア粒子のサイズを有意に増やさないであろう添加物堆積/組み入れのための技術(以下により詳細に記載される技術)を選択することが推奨される。例えば、機能付与前に1μm以下のD50を当初有する微粒子重炭酸塩が機能付与後に、依然として最大でも1μm以下のD50のナノサイズ範囲の機能化微粒子重炭酸塩を生成することが好ましいであろう。だがいくつかの場合には、ナノサイズの重炭酸塩コア粒子から出発した機能化微粒子重炭酸塩が機能付与後に2μm以下のD50に達し得ることは許容される。
【0122】
機能化微粒子重炭酸塩中の添加物
機能化微粒子重炭酸塩中の添加物は、ロジン酸、それの任意の誘導体、それの塩、又はそれらの任意の組み合わせを含むか又はそれらからなる。
【0123】
本発明との関連で、「ロジン酸」は、「アビエチン酸」((アビエタ-7,13-ジエン-18-酸)とも称される)を意味する。
【0124】
ロジン酸の好適な誘導体は、例えば、ロジンのC1~25アルキルエステル、グリセロールロジンエステル、ペンタエリスリトールロジンエステル、又はそれらの組み合わせなどの、1種以上のロジン酸エステルからなっても又はロジン酸エステルを含んでもよい。ロジン酸の他の好適な誘導体は、水素化ロジン酸(ジヒドロアビエチン酸などの)、ネオアビエチン酸、ロジン酸の二量体、又は重合ロジンさえを含んでもよい。
【0125】
ロジン酸の好ましい誘導体は、ジヒドロアビエチン酸(CAS No.1740-19-8)、好ましくは少なくとも50重量%のジヒドロアビエチン酸を含んでもよい。Resigral 52は、少なくとも52重量%のジヒドロアビエチン酸を含有する市販製品であり;Dax,FranceのLES DERIVES RESINIQUES ET TERPENIQUES(DRT)によって供給されるResigral 52は、その異なる異性体の割合を変更することによってその熱安定性を改善するために化学試薬によって変性された不均化ロジンである。
【0126】
DRTによって製造される他の市販のロジン酸ベースの製品、例えば、
水系ロジン分散系(DERMULSENE RE 1513=その固形分が約56重量%である、安定化ロジンエステルをベースとする水性の、溶媒を含まない分散系、DERMULSENE A 7510=安定化及び重合ロジン分散系)、
グリセロールロジンエステル(DERTOLINE G2L);
ペンタエリスリトールロジンエステル(DERTOLINE P2L=ペンタエリスリトールでエステル化されたトール油樹脂;HYDROGRAL P=水素化ロジンのペンタエリスリトールエステル);
二量体ロジン酸(POLYGRAL 95、POLYGRAL 115、POLYGRAL 140);
重合ロジン酸(POLYGRAL);及び/又は
水素化ロジン(HYDROGRAL)
などを、ロジン酸誘導体のための1種以上の源として使用することができる。
【0127】
DRT製の液体ロジンエステルは、GRANOLITE TEG=トリエチレングリコールロジンエステル;GRANOLITE M=ロジンのメチルエステル;及び/又はHYDROGRAL M=水素化ロジンのメチルエステルから選択され得る。
【0128】
ロジン誘導体は、変性ロジン、つまり、無水マレイン酸、フマル酸、アセチレンジカルボン酸及びクエン酸の脱水生成物などの変性剤として--COC==C--基を含有し、アビエチン酸及び関連化合物の少なくともいくらかをトリカルボン酸化学種に変換する、少量の、しかし有効量の酸性化合物の反応した内容物を有するロジンを含んでも又はそれらからなってもよい。
【0129】
ロジン酸の好適な塩は、例えば、アルカリ金属及びアルカリ土類金属塩であるが、他の塩も同じく好適である。好ましい塩は、ナトリウム塩である。
【0130】
ロジン酸はまた、トール油などの、ロジン酸を含む混合物の形態で添加物として使用され得る。
【0131】
機能化微粒子重炭酸塩中の好ましい量のロジン酸添加物などの、全ての好ましい実施形態は、任意選択の追加の添加物に関して以下に記載されるようなものである。
【0132】
機能化微粒子重炭酸塩中の機能付与添加物は、非限定的な例として、少なくとも1種の以下の化合物:
- 1種以上のポリマー;
- 1種以上のアミノ酸、それらの任意の誘導体、及びそれらの塩;
- 1種以上の無機塩;
- 1種以上の油;
- 1種以上の脂肪;
- 1種以上の樹脂酸、それらの任意の誘導体、及びそれらの塩;
- 1種以上の脂肪酸、それらの任意の誘導体、及びそれらの塩;
- カルボン酸若しくはポリカルボン酸、それの誘導体(エステルなどの)、若しくはそれの塩;
- 1種以上の石鹸;
- 1種以上のワックス;又は
- それらの任意の組み合わせ
をさらに含んでもよい。
【0133】
いくつかの実施形態において、追加の機能付与添加物は、ポリビニルアルコール、ポリグリコール、多糖、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(アクリル酸 コ-マレイン酸、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、N-2(-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、ポリエチレングリコールなどのポリオキシアルキレン及びそれらの誘導体、並びにそれらの組み合わせなどからなる群から選択されるポリマーを含んでも又はポリマーからなってもよい。
【0134】
いくつかの実施形態において、追加の添加物は、加水分解デンプン、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸及びその塩、アラビアゴム、カラギーナン;グアーガム、イナゴマメガム、キサンタン(xantham)ゴム並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される多糖を含んでも又は多糖からなってもよい。
【0135】
いくつかの実施形態において、追加の添加物は、カゼイン、ゼラチン、グリシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、グルタミン酸、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、リジン、ペクチン、セリン、ロイシン、バリン、フェニルアラニン、トレオニン、イソロイシン、ヒドロキシリジン、メチオニン、ヒスチジン、チロシン及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸、それの誘導体又はそれの塩を含んでも又はそれらからなってもよい。
【0136】
いくつかの実施形態において、追加の添加物は、ケイ酸塩(例えば、ケイ酸ナトリウム)、NaCl、KCl、MgCl2、リン酸ナトリウム、ホウ酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩及びそれらの組み合わせからなる群から選択される無機塩を含んでも又は無機塩からなってもよい。
【0137】
いくつかの実施形態において、追加の機能付与添加物は、
- アミノ酸、それの誘導体、若しくはそれの塩、
- 多糖(加水分解デンプン、ガム、カルボキシメチルセルロースなどの)、
- 樹脂酸、それの誘導体、若しくはそれの塩、
- 脂肪酸、それの誘導体(エステルなどの)、若しくはそれの塩、
- カルボン酸若しくはポリカルボン酸、それの誘導体、若しくはそれの塩;又は
- それらの任意の組み合わせ
を含んでも又はそれらからなってもよい。
【0138】
いくつかの実施形態において、追加の機能付与添加物は、
- ポリマー(ポリエチレングリコールなどのポリオキシアルキレン及びそれらの誘導体、ポリ(メタ)アクリレート及びそれらの誘導体、ポリビニルアルコール並びに、変性された、特に加水分解されたデンプン、マルトデキストリン及びアラビアゴムなどの、多糖類などの)、
- アミノ酸、それの誘導体、若しくはそれの塩(ロイシンなどの)、
- 油(エポキシ化大豆油などの)、
- 樹脂酸、それの誘導体、若しくはそれの塩(ロジン酸などの)、
- 脂肪酸、それの誘導体、若しくはそれの塩(ステアリン酸、ラウリン酸、リノール酸及びグリセロールモノステアレートなどの)、
- ワックス(蜜ろう及びカルナバワックスなどの)、又は
- それらの任意の組み合わせ
を含んでも又はそれらからなってもよい。
【0139】
いくつかの実施形態において、追加の機能付与添加物は、CO2を遊離させることができる、及び微粒子重炭酸塩を機能化するためにも使用される化合物を含んでも又はそれらからなってもよい。この添加物は、機能化微粒子重炭酸塩中の第二発泡剤と見なされ得る。この添加物は、機能化微粒子重炭酸塩が吸熱性発泡剤として使用される場合にCO2生成の増加を提供するであろうのみならず、この添加物は、重炭酸塩コアを、その表面(又はその一部)を保護することによって時期尚早のCO2放出から防護するであろう。このCO2-遊離添加物は、カルボン酸若しくはポリカルボン酸、それの誘導体(エステルなどの)、又はそれの塩であってもよい。
【0140】
好適なカルボン酸には、式:HOOC--R--COOH(ここで、Rは、1個以上のヒドロキシ基又はケト基でまた置換されていてもよく、不飽和をまた含有していてもよい、1~約8個の炭素原子のアルキレン基である)のものが含まれる。エステル、塩及びハーフ塩もまた含まれる。
【0141】
好ましいCO2-遊離添加物には、
- フマル酸、
- 酒石酸、又は
- クエン酸、クエン酸塩(クエン酸水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウムなどの)、若しくはクエン酸のエステル
の少なくとも1つが含まれ得る。
【0142】
クエン酸のエステルには、トリブチルシトレート、トリエチルシトレート、トリ-C12~13アルキルシトレート、トリ-C14~15アルキルシトレート、トリカプリリルシトレート、トリエチルヘキシルシトレート、トリイソセチルシトレート、トリオクチルドデシルシトレート及びトリイソステアリルシトレート、イソデシルシトレート及びステアリルシトレート、ジラウリルシトレート、並びに/又はエチルシトレート(トリ-、ジ-及びモノエステルの混合物)、好ましくはトリブチルシトレート、トリエチルシトレート、イソデシルシトレート、又はトリエチルヘキシルシトレートが含まれ得る。
【0143】
より好ましいCO2-遊離添加物は、クエン酸、それの任意のエステル、又はそれの任意の塩を含むか又はそれらからなる。
【0144】
いくつかの実施形態において、機能付与添加物は、クエン酸、そのエステル、又はそれの塩を排除する。
【0145】
いくつかの実施形態において、追加の添加物は、アミノ酸、それの誘導体、又はそれの塩を含んでもよいし又はそれらからなってもよい。
【0146】
一般に、アミノ酸は、アミノ基官能基とカルボン酸官能基とからなる、当該技術分野で公知の化合物である。アミノ基は、IUPAC命名法に従って、ヒドロカルビル基で1個、2個、又は3個の水素原子を置き替えることによってアンモニア(NH3)から形式的には誘導され、一般構造RNH2(第一級アミン)、R2NH(第二級アミン)又はR3N(第三級アミン)を有する化合物である。IUPAC命名法に従って、窒素に結合している水素の全4個がヒドロカルビル基で置き替えられているアンモニウム化合物(NH4
+)Y-の誘導体は、アミンではない第四級アンモニウム化合物と見なされる。つまり、本発明に従って使用されるようなアミノ酸において、アミン基、好ましくはα-アミン基は、RNH2、R2NH又はR3N残基であり、NR4
+残基ではない。好ましくは、カルボン酸基を含む第四級アンモニウム化合物は、本発明に従ったアミノ酸添加物として使用されない。
【0147】
本発明の好ましい実施形態において、追加の添加物として使用されるアミノ酸は、β-アミノ酸又はα-アミノ酸であり、α-アミノ酸が最も好ましい。α-アミノ酸は、一般に、式(I):
又はそれの塩に従った化学構造を有する。残基Rは、水素、又はアルキル若しくは任意選択的に置換されたアリール若しくは任意選択的に置換されたヘテロアリール基であってもよい。好ましくは、残基Rは、C
1~C
10アルキル基、特にC
1~C
6アルキル基である。最も好ましくは、Rは、メチル、プロパン-2-イル(イソプロピル)、ブタン-2-イル、又は2-メチル-プロパン-1-イルである。
【0148】
好ましい実施形態において、α-アミノ酸は、アルギニン、ヒスチジン、及びリシンなどの、正電荷を有するアミノ酸、アスパラギン酸又はグルタミン酸などの負電荷を有するアミノ酸、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、又はシステイン、セレノシステイン、グリシン及びプロリンなどの極性の電荷のないアミノ酸からなる群から選択される。アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファンなどの、疎水性側鎖を持ったアミノ酸が、特に好ましい。添加物として使用される最も好ましいアミノ酸は、バリン、イソロイシン及びロイシンであり、ロイシンが最も好ましい。
【0149】
α-アミノ酸は、キラル化合物である。一般に、両エナンチオマーの両ラセミ混合物、並びに1つのエナンチオマー、例えばD-又はL-エナンチオマーに富む組成物を使用することができる。好ましくは、アミノ酸のラセミ混合物が、本発明の一実施形態に従って使用され得る。
【0150】
アミノ酸の好適な誘導体は、例えば、ヒドロキシアルキル残基、特にヒドロキシC1~20アルキル残基を含むエステルなどの、エステルである。或いは又はさらに、アミノ酸誘導体は、アミドであってもよい。好適な塩は、例えば、アルカリ金属及びアルカリ土類金属塩、又は無機酸若しくはカルボン酸などの、酸と、アミノ酸のアミノ基との間で形成される塩である。
【0151】
アミノ酸は、少なくとも0.02重量%、好ましくは少なくとも0.05重量%、特には少なくとも0.1重量%の量で本発明による機能化微粒子重炭酸塩中に存在してもよい。機能化微粒子重炭酸塩中の10重量%超のアミノ酸は、コスト理由で不利である。好ましくは、最大でも8重量%、より好ましくは最大でも6重量%、特には最大でも5重量%のアミノ酸が、本発明の一実施形態に従った機能化微粒子重炭酸塩中に存在する。
【0152】
機能化微粒子重炭酸塩中の追加の機能付与添加物として使用される好ましいアミノ酸は、ロイシンである。ロイシンは、例えば、0.02重量%~5重量%の量で、好ましくは0.05重量%~2重量%の量で、より好ましくは0.05重量%~0.5重量%の量で機能化微粒子重炭酸塩中に存在してもよい。
【0153】
一実施形態において、アミノ酸、特にロイシンでさらに機能化されている微粒子重炭酸塩は、噴霧乾燥によって調製される。
【0154】
追加の又は代わりの実施形態において、機能化微粒子重炭酸塩中の追加の添加物は、樹脂酸、それの誘導体、又はそれの塩を含んでも又はそれらからなってもよい。
【0155】
一般に、機能化微粒子重炭酸塩中の追加の添加物として使用されるべき樹脂酸は、当技術分野で公知のような樹脂酸の1つである。樹脂酸は、木樹脂に見いだされる、関連カルボン酸、好ましくはアビエチン酸の混合物を言う。典型的には、樹脂酸は、経験式C19H29COOHを持った3つの縮合環の基本骨格を有する。好ましい樹脂酸は、三環式ジテルペンカルボン酸であり、アビエタンジテルペン群に属するものが、より好ましい。好ましい樹脂酸は、例えば、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、及びパルストリン酸からなる群から選択される、アビエチン酸型酸である。ピマール酸(ピマラ-8(14),15-ジエン-18-酸)、レボピマール酸、又はイソピマール酸からなる群から選択される、ピマール酸型酸もまた好適である。そのような酸は、天然源から、又は例えば米国特許出願公開第2014/0148572 A1号明細書から公知のような化学合成によって入手可能である。
【0156】
本発明に従って使用され得る樹脂酸を含有する誘導体は、トール油である。トール油(液体ロジンとも呼ばれる)は、木材パルプ製造のクラフト法の副産物として得られる。粗トール油は、ロジン、樹脂酸(主としてアビエチン酸及びその異性体)、脂肪酸(主としてパルミチン酸、及びオレイン酸)、脂肪アルコール、ステロール並びにアルキル炭化水素誘導体を含有する。最も好ましいピマール酸及びその塩、特にナトリウム塩は、各々、本発明に従って追加の添加物として使用される。
【0157】
樹脂酸、それの誘導体、又はそれの塩は、少なくとも0.02重量%、好ましくは少なくとも0.05重量%、特には少なくとも0.1重量%の量で本発明による機能化微粒子重炭酸塩中に存在してもよい。ロジン酸などの、樹脂酸、それの誘導体、又はそれの塩は、例えば、0.02重量%~25重量%、好ましくは0.02重量%~20重量%又は、0.5重量%~10重量%などの、0.1重量%~11重量%の量で存在してもよい。
【0158】
機能化微粒子重炭酸塩中の追加の添加物として使用される好ましい樹脂酸は、ロジン酸、それの誘導体、又はそれの塩である。
【0159】
ロジン酸、それの誘導体、又はそれの塩は、例えば、機能化重炭酸塩中に1重量%~25重量%、好ましくは5重量%~20重量%の量で存在してもよい。
【0160】
その上追加の又は代わりの実施形態において、機能化微粒子重炭酸塩中の追加の添加物は、脂肪酸、それの誘導体(エステルなどの)、又はそれの塩を含んでも又はそれらからなってもよい。
【0161】
本発明の方法において添加物として使用されるようなそれらの脂肪酸は、当技術分野で公知のような脂肪酸、すなわち、飽和か不飽和かのいずれかである、脂肪族残基を有するカルボン酸である。好ましい、脂肪酸は、式(II)
R-COOH(II)
(式中、Rは、飽和の又は不飽和のC6~C18アルキル基、好ましくは、C12~C16アルキル基などの、C12~C18基である)
に従った化合物である。脂肪酸は、それらの塩、特にナトリウム塩又はカリウム塩、最も好ましくはナトリウム塩の形態で使用され得る。さらにより好ましい残基Rは、C16~C18アルキル基であり、最も好ましい、脂肪酸は、パルミチン酸、リノール酸、ラウリン酸又はステアリン酸であり、後者が最も好ましい。
【0162】
脂肪酸誘導体の例は、グリセリドである。グリセリドは、グリセロールと脂肪酸とから形成されるエステル、特にグリセロールモノ、ジ及びトリ脂肪エステルである。
【0163】
機能化微粒子重炭酸塩中の追加の添加物として使用される好ましい脂肪酸は、ステアリン酸、それのエステル、又はそれの塩である。機能化微粒子重炭酸塩中の追加の添加物として使用されるより好ましい脂肪酸は、ステアリン酸、ステアリン酸塩、又はトリステアリン、つまり、3単位のステアリン酸に由来するトリグリセリドである、グリセリルトリステアレートなどの、グリセロールとのそのエステルなどの、ステアリン酸のエステルである。別の好ましい添加物は、グリセロールモノステアレートである。
【0164】
脂肪酸、それの誘導体、又はそれの塩は、少なくとも0.02重量%、好ましくは少なくとも0.05重量%、特には少なくとも0.1重量%の量で本発明による機能化微粒子重炭酸塩中に存在してもよい。ある種の実施形態において、脂肪酸、それの誘導体、又はそれの塩は、0.02重量%~30重量%、好ましくは0.1重量%~10重量%、より好ましくは0.5重量%~7重量%の量で機能化微粒子重炭酸塩中に存在してもよい。
【0165】
いくつかの実施形態において、添加物は、ステアリン酸、それのエステル、又はそれの塩を排除し得る。
【0166】
その上より多くの追加の又は代わりの実施形態において、追加の添加物は、ポリビニルアルコール、ポリグリコール、多糖、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(アクリル酸 コ-マレイン酸、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、N-2(-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、ポリエチレングリコールなどのポリオキシアルキレン及びそれらの誘導体、並びにそれらの組み合わせなどからなる群から選択されるポリマーなどの、ポリマーを含んでも又はポリマーからなってもよい。
【0167】
ポリマーは、天然ポリマーであっても又は合成ポリマーであってもよい。天然ポリマーは、デンプン及びアラビアゴムなどの、天然源からであるポリマーである。天然ポリマーはまた、加水分解デンプンなど、変性されていてもよい。
【0168】
合成ポリマーは、例えばポリ(メタ)アクリレート及びそれらの誘導体、ポリエチレングリコールなどのポリオキシアルキレン及びそれらの誘導体、並びにポリビニルアルコールである。好ましいポリオキシアルキレン誘導体は、例えばBYK-Chemie GmbHによって商品名BYK 3155で提供されるポリマーである。メタ-/アクリルポリマーは、例えば官能基としてメタクリル酸を有するアニオン性ポリマー、官能基としてメチルアミノエチルメタクリレートを有するカチオン性ポリマー、官能基としてトリメチル-アミノエチル-メタクリレートを有するメタ-/アクリレートコポリマー及び商標Eudragit(登録商標)でEvonikから入手可能であるメタ-/アクリレートの中性ポリマーであってもよい。好適なEudragit(登録商標)銘柄は、例えば銘柄L、S、FS、E、RL、RS、NE及びNMである。銘柄RLのEudragits(登録商標)、特にEudragit(登録商標)RL 30Dが好ましい。
【0169】
ポリエチレングリコールは、広範囲の異なる分子量で入手可能である。本発明の一実施形態において、1000g/モル未満の分子量を有する低分子量ポリエチレングリコール、好ましくは、300~500g/モルの範囲のなどの、200~600g/モルの範囲の分子量を有するポリエチレングリコール、好ましくはPEG400を使用することができる。本発明の別の実施形態において、1000g/モル以上の分子量を有する高分子量ポリエチレングリコールが用いられ得る。好ましくは、高分子量ポリエチレングリコールは、1000~10000g/モル、より好ましくは、PEG4000などの、2000~8000g/モルの分子量を有する。
【0170】
いくつかの実施形態において、多糖が機能化微粒子重炭酸塩中の追加の添加物として使用される場合、多糖添加物は、加水分解デンプン、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸及びそれの塩、アラビアゴム、カラギーナン、グアーガム、イナゴマメガム、キサンタン(xantham)ゴム、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の多糖であってもよい。
【0171】
機能化微粒子重炭酸塩中の添加物は、
- グアーガム及びそれらの誘導体、特にヒドロキシプロピルグアー(Jaguar HP-105などの);
- ナトリウム、カルシウム又は銅塩(例えば、Kaltostat、Calginat、Landalgine、Kalrostat、Kelacid、Vocoloid、Xantalgin)などの、アルギン酸及びそれの塩;並びに
- カルボキシメチルセルロース(例えば、Aquaplast、Carmethose、CELLOFAS、Cellpro、Cellugel、Collowel、Ethoxose、Orabase、Lovosa)
からなる群から選択される多糖を含んでも又は多糖からなってもよい。
【0172】
別の実施形態において、機能化微粒子重炭酸塩の追加の添加物は、変性された、特に加水分解されたデンプン又はそのようなデンプンを含む化合物を含んでも又はそれらからなってもよい。このクラスの特に好ましい添加物は、加水分解デンプン、アラビアゴム及びマルトデキストリンであり、マルトデキストリンが特に好ましい。ポリマーは、少なくとも0.02重量%、好ましくは少なくとも0.05重量%、より好ましくは少なくとも0.1重量%の量で本発明による機能化微粒子重炭酸塩中に存在してもよい。特に、加水分解デンプン、アラビアゴム、マルトデキストリン、ポリエチレングリコールなどのポリオキシアルキレン誘導体、ポリ(メタ)アクリレート、及びポリビニルアルコールは、例えば、0.02重量%~40重量%、より好ましくは0.1重量%~35重量%、さらにより好ましくは、2重量%~10重量%などの、1重量%~20重量%の量で存在してもよい。
【0173】
一実施形態において、機能化微粒子重炭酸塩は、ロジン酸、それの任意の誘導体又はそれの塩と一緒に追加の添加物として少なくとも1種のポリマーを含む。この組み合わせにおいて、ポリマーは、好ましくは、ポリエチレングリコールなどのポリオキシアルキレン及びそれらの誘導体、ポリ(メタ)アクリレート及びそれらの誘導体、ポリビニルアルコール並びに変性された、特に加水分解されたデンプン、マルトデキストリン及びアラビアゴムなどの、多糖類からなる群から選択される。高分子量又は低分子量のポリエチレングリコール(上に定義されたような)、特に低分子量ポリエチレングリコールが好ましい。
【0174】
機能化微粒子重炭酸塩の添加物としてのロジン酸又はそれの任意の誘導体若しくは塩と、ポリエチレングリコール(好ましくは低分子量ポリエチレングリコール)との組み合わせの特定の実施形態において、ロジン酸は、機能化微粒子重炭酸塩の総量の5重量%~20重量%の、好ましくは7重量%~11重量%の量で存在し、ポリエチレングリコールは、機能化微粒子重炭酸塩の総量の各々、1重量%~30重量%の、好ましくは、例えば約10重量%又は約20重量%などの、5重量%~25重量%の量で存在する。
【0175】
さらに好ましい実施形態において、第1添加物としてロジン酸又はそれの任意の誘導体若しくは塩と、第2添加物としてのポリエチレングリコールとを含む機能化微粒子重炭酸塩は、先ず、ロジン酸又はそれの任意の誘導体若しくは塩の存在下で重炭酸塩粒子を共ミリングすることによって調製され、このようにして得られた機能化粒子は、次に、ポリマーと混合され、ロジン酸及びポリマー、特にポリエチレングリコールで機能化されている微粒子重炭酸塩を得るために押し出される。
【0176】
本発明において追加の添加物として使用される油は、動物、植物、又は石油化学起源のものであり得る有機油又は鉱油であってもよい。好適な油は、例えば、オリーブ油、トウモロコシ油、ヒマワリ油及び大豆油である。
【0177】
油は、エポキシ化などの、化学的に変性されてもよい。好ましい油は、エポキシ化大豆油である。油は、少なくとも0.02重量%、好ましくは少なくとも0.05重量%、特には少なくとも0.1重量%の量で本発明による機能化微粒子重炭酸塩中に存在してもよい。好ましい実施形態において、油は、0.1重量%~10重量%、より好ましくは1重量%~7重量%の量で機能化微粒子重炭酸塩中に存在することができる。
【0178】
さらなる実施形態において、機能化微粒子重炭酸塩中の追加の添加物は、蜜ろう又はカルナバワックスなどの、ワックスである。
【0179】
ワックスは、少なくとも0.02重量%、好ましくは少なくとも0.05重量%、特には少なくとも0.1重量%の量で本発明による機能化微粒子重炭酸塩中に存在してもよい。ワックスは、例えば、1重量%~30重量%、好ましくは5重量%~25重量%の量で存在することができる。
【0180】
機能化微粒子重炭酸塩の特定の特性に関する追加の情報は、添加物がアミノ酸又はそれの塩を含むか又はそれからなる場合、SOLVAY SAによる国際公開第2016/102591A1号パンフレットに;添加物が添加物としての樹脂酸又は脂肪酸を含むか又はそれからなる場合、SOLVAY SAによる欧州特許出願公開第3037388A1号明細書に見いだすことができる。
【0181】
いくつかの実施形態において、機能化重炭酸塩は、加工助剤、アンチケーキング剤及び/又は流動助剤をさらに含んでもよい。
【0182】
この加工助剤、アンチケーキング剤及び/又は流動助剤は、先ず、機能付与添加物と混合され、その後、それらの混合物が微粒子重炭酸塩を機能化するために使用される。或いは、この加工助剤、アンチケーキング剤及び/又は流動助剤は、機能化重炭酸塩と混合されてもよい。例えば、機能化重炭酸塩粉末は、徐々に加工助剤、アンチケーキング剤及び/又は流動助剤を導入することによってLoedige型「プラウシェア」ミキサーで混合されてもよい。
【0183】
いくつかの好ましい実施形態において、機能化重炭酸塩は、シリカをさらに含んでもよい。シリカは、機能化重炭酸塩用の加工助剤、アンチケーキング剤及び/又は流動助剤として使用され得る。シリカは非晶質(及び非結晶性)形態にあることが推奨される。好ましくは、機能化重炭酸塩中のシリカは、非晶質沈澱シリカである。機能化重炭酸塩は、機能化重炭酸塩の全組成物を基準として少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.2重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%のシリカを含んでもよい。機能化重炭酸塩は5重量%以下、好ましくは4重量%以下のシリカ、より好ましくは3重量%以下のシリカを含むことが推奨される。シリカの存在は、機能化重炭酸塩の流動性を改善することができ、それ故、発泡性ポリマー組成物中の化学発泡剤としてのその均質な適用を促進する。
【0184】
シリカは、ISO 5794-1標準、附則Dに従って測定される、例えば180m2/gよりも大きい、好ましくは少なくとも200m2/g、より好ましくは少なくとも400m2/gの、高い比表面積を有する、非常に微細な粒子の形態にあることが好ましい。
【0185】
有利な実施形態によれば、機能化重炭酸塩中のシリカは、20μm未満の平均径を有する、好ましくは最大でも15μm、又は最大でも10μm、より好ましくは最大でも8μmの平均径を有する粒子の形態にある。平均径は、ASTM C-690-1992標準に従って測定される。
【0186】
好適な商業的に入手可能なシリカは、Degussa社によって製造される、非晶質シリカSiperna(登録商標)50S;Sipernat(登録商標)50Sについての450m2/gの代わりに190m2/gのより低い比表面積を有する、Degussaによって製造される非晶質シリカSipernat 22 S;(Sipernat 50S及び22Sについての7μmの代わりに)15μmのより大きい平均径を有する(Solvayによって所有される)Rhodiaによって製造されるシリカTixosil(登録商標)38ABである。それらの制御された粒径を有するRhodia製のTixosil(登録商標)アンチケーキング剤は、水分つまり湿度、圧力、又は静電荷によって悪影響を受ける粉末用の有効な流動性調整剤である。
【0187】
そのような実施形態において、機能化重炭酸塩は、0.1重量%~5重量%の非晶質シリカ、好ましくは0.2重量%~4重量%の非晶質シリカ、より好ましくは0.5重量%~3重量%の非晶質シリカを含んでもよい。シリカは、好ましくは沈澱シリカである。
【0188】
そのような実施形態において、機能化重炭酸塩は、12:1~990:1、好ましくは14:1~99:1、より好ましくは16:1~97:1の重炭酸ナトリウム対シリカの重量比からなってもよい。
【0189】
機能化微粒子重炭酸塩の製造方法
本発明は、さらに、機能化微粒子重炭酸塩の製造方法に関する。
【0190】
機能化微粒子重炭酸塩は、重炭酸塩成分を含有する溶液から、又は既に形成された微粒子重炭酸塩から直接に調製され得る。
【0191】
重炭酸塩成分又は微粒子重炭酸塩は、重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、又はそれらの混合物を含んでも又はそれらから本質的になってもよく、特に重炭酸塩成分又は微粒子重炭酸塩は、重炭酸ナトリウムを含む又は重炭酸ナトリウムから本質的になる。重炭酸塩成分又は微粒子重炭酸塩は、好ましくは、少なくとも80重量%の重炭酸ナトリウムを含む。
【0192】
本発明の一態様による機能化微粒子重炭酸塩は、カプセル化又はコーティングプロセスによって得られ得る。
【0193】
特に、本発明の別の態様は、以下のプロセスの少なくとも1つによる:
- 噴霧乾燥(アトマイゼーションとしても知られる)による、ここで、添加物は重炭酸塩含有溶液に溶解しており、
- エマルジョン若しくは粉末形態での添加物との粉砕若しくは共粉砕(ミリング若しくは共ミリングとしても知られる)による;
- 流動床内でのスプレーコーティング及び噴霧造粒による、
- 流動床内での噴霧集塊による、
- 噴霧チリング(例えば、噴霧冷却、噴霧凍結)による、
- ローラー圧縮による、並びに/又は
- 同時混合/押出などの、押出による、
本発明に従った上に記載されたような機能化微粒子重炭酸塩、好ましくは機能化微粒子アルカリ金属重炭酸塩の調製方法に関する。
【0194】
噴霧乾燥又はアトマイゼーションによる乾燥は、乾燥技術である。この方法は、数秒又はわずかな秒間で、粉末を得るために、高温ガス流中に溶液(又は懸濁液)の形態にある、乾燥すべき生成物を噴霧することを含む。微細な液滴への溶液の分割は、大きな物質移動表面を生み出し、それは、使用された溶液の溶媒の迅速な蒸発をもたらす。
【0195】
噴霧乾燥のための好適な装置は、当技術分野で公知であり、一般に、幾つかのモジュール:溶液をアトマイズする又は噴霧するための装置を含む、溶液を貯蔵及びアトマイズするための回路を含むモジュールと、高温ガスの準備及び高温ガスが噴霧溶液と接触する乾燥チャンバー(噴霧溶液が蒸発し、粒子が形成される乾燥チャンバー)へのその移送のためのモジュールと、サイクロン及び/又は好適なフィルターを一般に含む、粒子を集めるためのモジュールとを含む。
【0196】
一般に、溶液をアトマイズする又は噴霧するための装置は、圧縮ガス噴霧器又は分散タービンである。超音波ノズルもまた、溶液を噴霧するために使用することができる。
【0197】
本発明の噴霧乾燥プロセスにおいて、一般に、重炭酸塩の水溶液が使用される。添加物がそれに溶解できる、他の極性溶媒又は極性溶媒の混合物、例えば水とエタノールとの混合物が使用されてもよいが、水が好ましい溶媒である。
【0198】
本発明の噴霧乾燥法において、噴霧乾燥される水溶液は、1~10重量%の重炭酸塩成分を含む。溶液中の重炭酸塩成分は、好ましくは、アルカリ金属重炭酸塩である。噴霧乾燥される溶液は、1~10,000ppmの添加物又はそれの塩をさらに含む。使用される添加物は、好ましくは、本発明の微粒子重炭酸塩について上に記載されたようなものの1つである。好ましい実施形態において、噴霧乾燥される溶液中の添加物の含有量は、噴霧乾燥される溶液の1kg当たり1~5,000ppm、より好ましくは1~3,000ppm、特には10~2,000ppm、例えば50~1,000ppmの添加物である。一般に、水溶液は、水溶液の1kg当たり、少なくとも1mg、好ましくは少なくとも5mg、より好ましくは少なくとも10mg、さらにより好ましくは少なくとも100mgの添加物を含む。一般に、水溶液は、水溶液の1kg当たり、最大でも2,000mg、好ましくは最大でも1,500mg、より好ましくは最大でも1,200mgの添加物を含む。塩の場合、重量百分率は、遊離の塩基/酸を基準として示される。
【0199】
一般に、機能化微粒子重炭酸塩の製造方法における噴霧乾燥プロセスにおいて、水溶液は、1重量%以上、好ましくは2重量%以上、より好ましくは3重量%以上、さらにより好ましくは4重量%以上、特には5重量%以上の重炭酸塩成分を含む。好ましくは、重炭酸塩成分は、重炭酸ナトリウム及び/又は重炭酸カリウムを含むか又はそれらから本質的になり、特に重炭酸ナトリウムを含む又は重炭酸ナトリウムから本質的になる。水溶液中の高濃度の重炭酸塩成分は、噴霧装置又はアトマイジング装置の高速閉塞につながるので有害である。それ故、水溶液は10重量%以下、好ましくは8%以下、より好ましくは6%以下の重炭酸塩成分、特に重炭酸ナトリウムを含むことが一般に推奨される。好ましくは、重炭酸塩含有溶液は、1重量%~10重量%、有利には3重量%~8重量%、より有利には4重量%~6重量%などの、4重量%~8重量%の重炭酸塩成分、特に重炭酸ナトリウムを含む水溶液である。
【0200】
高温ガスでの乾燥は、アルカリ金属重炭酸塩の一部を、炭酸ナトリウムと、CO2と水との形態へ分解させる。本発明の1つの有利な実施形態において、噴霧乾燥は、乾燥ガス基準で少なくとも5容積%、有利には少なくとも10容積%、より有利には少なくとも20容積%、さらに有利には少なくとも30容積%のCO2を含むガス中で実施される。これは、炭酸塩固体とCO2ガスと水蒸気とへの重炭酸塩分解を制限することを可能にする。一般に、噴霧乾燥は、40℃~220℃に予熱されたガスを使って実施される。有利には、噴霧乾燥は、噴霧乾燥チャンバー中で実施され、ここで、ガスは予熱された後に、少なくとも40℃、好ましくは少なくとも50℃、より好ましくは少なくとも60℃、さらにより好ましくは少なくとも70℃で噴霧乾燥チャンバーへ導入される。また有利には、ガスは、予熱された後に、最大でも220℃、好ましくは最大でも200℃、より好ましくは最大でも180℃、さらにより好ましくは最大でも130℃で噴霧乾燥チャンバーへ導入される。
【0201】
噴霧乾燥操作後のガスの温度が最大でも80℃、有利には最大でも70℃、より有利には最大でも60℃であることが好ましい。
【0202】
機能化微粒子重炭酸塩の製造方法での一実施形態において、水溶液は、噴霧乾燥操作中に噴霧される前に、少なくとも20℃及び好ましくは最大でも80℃の温度に予熱される。特定の一実施形態において、水溶液は、噴霧乾燥操作中に噴霧される前に、少なくとも20℃及び最大でも25℃の温度に予熱される。
【0203】
本発明による機能化微粒子重炭酸塩の製造方法は、共粉砕を受ける物質の100重量部当たり0.02~10重量部の添加物の存在下でなどの、添加物の存在下での重炭酸塩成分の共粉砕を含んでもよい。重炭酸塩成分及び添加物は、好ましくは、上に定義されたとおりである。
【0204】
共粉砕による機能化微粒子重炭酸塩の調製方法において、当技術分野で公知のような全ての好適な粉砕手順を用いることができる。
【0205】
典型的な装置には、可動機械部品の衝撃を受けるときに材料が粉砕され、及び材料の粒子を砕く効果を有するミルである、衝撃式ミルが含まれる。衝撃式ミルは、微細ミリング技術分野で周知である。そのようなミルには、ハンマーミル、スピンドルミル、アトライターミル、ジェットミル、遊星ボールミルなどの、ボールミル、及びケージミルが含まれる。そのようなミルは、例えば、Grinding Technologies and System SRLによって又はHosokawa Alpine AGによって製造され、入手可能である。最も好ましくは、Alpine LGM 3が用いられる。アルカリ金属重炭酸塩粒子の調製方法において、アルカリ金属重炭酸塩は、添加物、すなわち上で定義されたようなアミノ酸の存在下で粉砕される。重炭酸塩及び添加物の総量が一度にミルへ添加され、これにミリングが続くか、好ましくは重炭酸塩及び添加物が一定の速度でミリング装置へ供給されるかのいずれかである。重炭酸塩についての好適な速度は、50kg/h~500kg/h、好ましくは100kg/h~400kg/h、例えば約150kg/hである。添加物の量は、使用される重炭酸塩成分と添加物との重量比に対応する。例えば、重炭酸塩成分が、共粉砕を受ける物質の100重量部当たり、1重量部の添加物の存在下で共粉砕される場合、添加物の供給速度は、重炭酸塩成分の供給速度の1%にすぎない。
【0206】
共粉砕による機能化微粒子重炭酸塩の調製方法における、添加物(例えば、ロジン酸、それの誘導体、若しくはそれの塩、又はそれらの組み合わせ)の量は、共粉砕を受ける物質の100重量部当たり0.02~10重量部である。0.02重量部よりも下では、添加物の効能は少ししかない。10重量部より多い量の添加物を使用すると、コスト理由で不利である。好ましい量は、共粉砕を受ける物質(典型的には重炭酸塩成分及び少なくとも1種の添加物)の100重量部当たり各々、0.2~8重量部の添加物、より好ましくは0.5~5重量部の添加物、さらに好ましくは0.8~2重量部の添加物、特には約1重量部の添加物である。
【0207】
ある実施形態において、本発明による機能化微粒子重炭酸塩の製造方法は、例えば流動床内での、スプレーコーティングを含んでもよい。流動床内でのスプレーコーティングは、粉末(重炭酸塩成分の固体粒子)が流動化チャンバーへ供給される技術である。ガスが、グリッドを通ってチャンバー底部から粒子を流動化させる。溶解形態での、溶融した形態での、及び/又は分散した固体形態での(例えば溶液、エマルジョン、懸濁液、メルト、メルトエマルジョン又はメルト懸濁液での)添加物を含む液体が、粒子上へ層又はコーティングを適用するために流動化粉末へ噴霧される。
【0208】
ある実施形態において、本発明による機能化微粒子重炭酸塩の製造方法は、例えば流動床内の、噴霧造粒を含んでもよい。流動床噴霧造粒は、液体から自由流動性顆粒を製造する方法である。水溶液、エマルジョン、懸濁液、メルト、メルトエマルジョン又はメルト懸濁液などの、固体を含有する液体は、流動床系へ噴霧される。固体は、好ましくは重炭酸塩粒子である。高い熱交換のために、液体中の水性溶媒又は有機溶媒は直ちに蒸発し、固体がスタータコアとしての小さい粒子を形成する。これらは、添加物を含有する別の液体(溶液/懸濁液)とともに噴霧される。ガスは、チャンバーへ噴霧された添加物溶液/懸濁液を流動化させる。流動床における蒸発及び乾燥後に、乾燥添加物は、スタータコアの周りにハードコーティングを形成する。この工程は、顆粒が成長してタマネギ様又はブラックベリー様の構造を形成するように、流動床において連続的に繰り返される。タマネギ様構造は、層ごとのコーティングから得られる。或いは、好適なスタータコアの明確な容積を提供することができる。この選択肢では、液体は、適用されつつある固体用のビヒクルとして役立つにすぎない。
【0209】
ある実施形態において、本発明による機能化微粒子重炭酸塩の製造方法は、例えば流動床内での、噴霧集塊を含んでもよい。流動床内での噴霧集塊は、粉末又は微細顆粒が流動化チャンバーへ供給される技術である。ガスが、グリッドを通ってチャンバー底部から粒子を流動化させる。バインダーとして働く、液体(溶液、エマルジョン、懸濁液、メルト、メルトエマルジョン又はメルト懸濁液のいずれか)が、流動化粒子上に噴霧される。粒子から塊を形成する液体ブリッジが生み出される。噴霧は、塊の所望のサイズに達するまで続く。
【0210】
ある実施形態において、本発明による機能化微粒子重炭酸塩の製造方法は、噴霧チリング(又は噴霧冷却、噴霧凍結)を含んでもよい。噴霧チリングは、メルト、メルトエマルジョン又はメルト懸濁液が流動化チャンバーへ噴霧される技術である。冷却ガスが流動化チャンバーに注入される。固体粒子の固化は、流動床中で冷却空気に熱を失うメルト小滴によって達成される。
【0211】
ある実施形態において、本発明による機能化微粒子重炭酸塩の製造方法は、ローラー圧縮を含んでもよい。ローラー圧縮は、かなりのサイズ拡大を引き起こす、力を粉末上へ加えることによって粉末粒子が互いに付着させられる技術である。粉末は、力を加えるために2つの反対方向に回転するロール間で圧縮される。得られたブリケット、フレーク又はリボンは、所望の粒径に達するためにロールから砕かれる。
【0212】
ある実施形態において、本発明による機能化微粒子重炭酸塩の製造方法は、押出(又は混合押出)を含んでもよい。押出(又は混合押出)は、粉末又は別の材料が、固定横断面のダイに押し通される技術である。1つのスクリュー、2つのスクリュー又は一連のパドルが、混合、脱ガス及び均質化段階に材料を押し通すのを助け得る。距離に沿った温度制御は、相変化、溶融、結晶化、化学反応、材料のコーティング又は造粒を可能にする。
【0213】
いくつかの実施形態において、機能化重炭酸塩が、シリカ、好ましくは非晶質シリカ、より好ましくは非晶質沈澱シリカをさらに含む場合、シリカは、先ず、機能付与添加物と混合されてもよく、その後、それらの混合物が微粒子重炭酸塩を機能化するために使用される。或いは、シリカは、機能化重炭酸塩と、それが調製された後に混合されてもよい。例えば、機能化重炭酸塩粉末は、シリカを機能化微粒子重炭酸塩中へ徐々に導入することによってLoedige型「プラウシェア」ミキサーで混合されてもよい。シリカは、機能化重炭酸塩中に加工助剤、アンチケーキング剤(水捕捉のための乾燥剤として働くなどの)、及び/又は流動助剤として使用され得る。例えば、機能化重炭酸塩粉末は、自由流動性粉末を形成するために非晶質沈澱シリカと混合されてもよい。
【0214】
機能化微粒子重炭酸塩の使用
本発明は、
- 熱可塑性ポリマー、例えばPVCプラスチゾル;又は
- 押出プロセスにおけるポリマー樹脂
を発泡させるための化学発泡剤としての本明細書で記載される機能化微粒子重炭酸塩の使用にさらに関する。
【0215】
化学発泡剤
本発明は、
- 熱可塑性ポリマー;又は
- 押出プロセスにおけるポリマー樹脂
を発泡させるための化学発泡剤にさらに関する。
【0216】
したがって、本発明の別の態様は、本明細書での様々な実施形態において記載されるような機能化微粒子重炭酸塩を含む、熱可塑性ポリマーを発泡させるための化学発泡剤であって、機能化微粒子重炭酸塩が、本明細書での様々な実施形態において記載されるような少なくとも1種の添加物を含有する化学発泡剤を提供する。任意選択的に、機能化微粒子重炭酸塩は、加工助剤、アンチケーキング剤(水捕捉用の乾燥剤として働くなどの)、及び/又は流動助剤をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、機能化微粒子重炭酸塩は、本明細書での様々な実施形態において記載されるような、シリカ、好ましくは非晶質シリカ、より好ましくは非晶質沈澱シリカをさらに含んでもよい。
【0217】
いくつかの実施形態において、熱可塑性ポリマーを発泡させるための化学発泡剤は、1000nm以下の粒径D50を有する機能化微粒子重炭酸塩を含む。
【0218】
代わりの実施形態において、熱可塑性ポリマーを発泡させるための化学発泡剤は、1ミクロン超及び250μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは60μm以下、その上より好ましくは40μm以下、又は30μm以下、又は25μm以下の粒径D50を有する機能化微粒子重炭酸塩を含む。
【0219】
機能化微粒子重炭酸塩中の添加物は、上に定義されたとおりである。
【0220】
本明細書で記載される機能化微粒子重炭酸塩及びその機能付与のために使用される添加物についての任意の特定の実施形態がここで適用できる。
【0221】
いくつかの実施形態において、化学発泡剤は、加熱中に窒素ガスを遊離させる化合物を含有しない。
【0222】
いくつかの実施形態において、化学発泡剤は、加熱中にアンモニアを遊離させる化合物を含有しない。
【0223】
好ましい実施形態において、化学発泡剤は、本明細書での様々な実施形態において記載されるような機能化微粒子重炭酸塩を含む吸熱性化学発泡剤である。
【0224】
好ましい実施形態において、化学発泡剤は、発熱性発泡剤を含有しない。
【0225】
いくつかの実施形態において、化学発泡剤は、機能化微粒子重炭酸塩を含み、別の発泡剤としての第2化合物をさらに含む。
【0226】
第2化合物は、好ましくは、吸熱性発泡剤である。
【0227】
第2化合物は、好ましくは、加熱時にCO2を遊離させることができる。この第2化合物は、好ましくは、加熱時に機能化微粒子重炭酸塩の分解によって既に形成されるCO2発生を増加させる。
【0228】
発泡剤として働くこのCO2-遊離第2化合物は、カルボン酸若しくはポリカルボン酸、それの誘導体(エステルなどの)、又はそれの塩であってもよい。
【0229】
好適なカルボン酸には、式:HOOC--R--COOH(ここで、Rは、1個以上のヒドロキシ基又はケト基でまた置換されていてもよく、不飽和をまた含有していてもよい、1~約8個の炭素原子のアルキレン基である)のものが含まれる。エステル、塩及びハーフ塩もまた含まれる。
【0230】
発泡剤として働く好ましいCO2-遊離第2化合物には、
- フマル酸、
- 酒石酸、又は
- クエン酸、クエン酸塩(クエン酸水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウムなどの)、若しくはクエン酸のエステル
の少なくとも1つが含まれ得る。
【0231】
クエン酸のエステルには、トリブチルシトレート、トリエチルシトレート、トリ-C12~13アルキルシトレート、トリ-C14~15アルキルシトレート、トリカプリリルシトレート、トリエチルヘキシルシトレート、トリイソセチルシトレート、トリオクチルドデシルシトレート及びトリイソステアリルシトレート、イソデシルシトレート及びステアリルシトレート、ジラウリルシトレート、及び/又はエチルシトレート(トリ-、ジ-及びモノエステルの混合物)、好ましくはトリブチルシトレート、トリエチルシトレート、イソデシルシトレート、又はトリエチルヘキシルシトレートが含まれ得る。
【0232】
吸熱性発泡剤として働くより好ましいCO2-遊離第2化合物は、クエン酸、それのエステル、又はそれの塩を含むか又はそれらからなる。
【0233】
その上代わりの実施形態において、化学発泡剤は、好ましくは、ADCA(アゾジカルボンアミド)、OBSH(4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド))、DNPT(ジニトロソペンタメチレンテトラミン)、PTSS(p-トルエンセミカルバジド)、BSH(ベンゼン-4-スルホノヒドラジド)、及びTSH(トルエン-4-スルホノヒドラジド)、5-PT(5-フェニルテトラゾール)からなる群から選択される、発熱性化学発泡剤をさらに含んでもよく、より好ましくは、ADCA(アゾジカルボンアミド)をさらに含んでもよい。そのような実施形態において、化学発泡剤は、5:95~95:5、好ましくは90:10~10:90、より好ましくは85:15~15:85、その上より好ましくは80:20~20:80の機能化重炭酸塩対発熱性化学発泡剤の重量比からなってもよい。
【0234】
任意選択的に、機能化微粒子重炭酸塩を含む化学発泡剤は、加工助剤、アンチケーキング剤(水捕捉のための乾燥剤として働くなどの)、及び/又は流動助剤をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、化学発泡剤は、微粒子の機能化微粒子重炭酸塩と、シリカ、好ましくは非晶質シリカ、より好ましくは非晶質沈澱シリカとの混合物を含む。
【0235】
発泡剤組成物中の機能化第2化合物
CO2発生を補完する、発泡剤組成物中のCO2-遊離第2化合物はまた機能化微粒子形態にあってもよいことがまた想定される。この機能化微粒子第2化合物は、機能化微粒子重炭酸塩に関して本明細書で記載されたような添加物を含むであろう。微粒子第2化合物のこの機能付与はまた、機能化微粒子重炭酸塩の製造に関して上に記載されたような1つ以上の技術を用いてもよい。
【0236】
いくつかの実施形態において、吸熱性発泡剤は、
- 様々な実施形態において本明細書で記載されるような、機能化微粒子重炭酸塩;及び
- 機能化微粒子カルボン酸若しくはポリカルボン酸、それの誘導体(エステルなどの)、又はそれの塩
を含むか、又はそれらから本質的になるか、又はそれらからなる。
【0237】
特定の実施形態において、吸熱性発泡剤は、
- 様々な実施形態において本明細書で記載されるような、機能化微粒子重炭酸塩;及び
- フマル酸、酒石酸、クエン酸、それの塩(クエン線水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウムなどの)、そのエステル、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、機能化微粒子カルボン酸若しくはポリカルボン酸、それの誘導体、又は塩
を含むか、又はそれらから本質的になるか、又はそれらからなる。
【0238】
いくつかの実施形態において、熱可塑性ポリマーを発泡させるための化学発泡剤は、両方とも1000nm以下の粒径D50を有する、機能化微粒子重炭酸塩と、機能化微粒子第2化合物(例えば、機能化カルボン酸若しくはポリカルボン酸、それの誘導体、又は塩)とを含む。
【0239】
代わりの実施形態において、熱可塑性ポリマーを発泡させるための化学発泡剤は、両方とも1ミクロン超及び250ミクロン以下、好ましくは30ミクロン以下の粒径D50を有する、機能化微粒子重炭酸塩と、機能化微粒子第2化合物(例えば、機能化カルボン酸若しくはポリカルボン酸、それの誘導体、又は塩)とを含む。
【0240】
その上代わりの実施形態において、熱可塑性ポリマーを発泡させるための化学発泡剤は、1000nm以下の粒径D50を有する機能化微粒子重炭酸塩と、1ミクロン超及び250ミクロン以下、好ましくは30ミクロン以下の粒径D50を有する機能化微粒子第2化合物(例えば、機能化カルボン酸若しくはポリカルボン酸、それの誘導体、又は塩)とを含む。
【0241】
吸熱性発泡剤が機能化微粒子重炭酸塩と、機能化微粒子第2化合物(例えば、機能化カルボン酸若しくはポリカルボン酸、それの誘導体、又は塩)とを含む実施形態において、そのような発泡剤の製造方法は、以下の工程;
- A/第1添加物(ここで、第1添加物は、本明細書で定義されるものから選択される)を使用して機能化微粒子重炭酸塩を製造する工程;別々に、第2添加物(ここで、第2添加物は、本明細書で定義されるものから選択される)を使用して機能化微粒子第2化合物を製造する工程;機能化微粒子重炭酸塩と機能化微粒子第2化合物とを混合して吸熱性発泡剤を製造する工程;又は
- B/機能付与前に、微粒子重炭酸塩と微粒子第2化合物とを混合して非機能化微粒子混合物を製造する工程;及び少なくとも1種の添加物(本明細書で定義されるような)を使用して非機能化微粒子混合物を機能化して吸熱性発泡剤を製造する工程
を含有し得る。
【0242】
方法A/において、第1及び第2添加物は、同じものであってもよいし、又は異なってもよい。機能化微粒子重炭酸塩及び機能化微粒子第2化合物を製造するための技術は、同じものであってもよいし、又は異なってもよい。
【0243】
方法B/において、添加物並びに微粒子重炭酸塩及び微粒子第2化合物の機能付与のための技術は、一般に同じものであり、したがって、吸熱性発泡剤の製造においてより少ない柔軟性をもたらす。しかしながら、この方法は、よりコスト効率が高いであろう。
【0244】
発泡性ポリマー組成物
本発明の別の態様は、
a)ポリマーと;
b)発泡させるための化学発泡剤として使用される機能化微粒子重炭酸塩と;
c)少なくとも1種のポリマー添加剤と
を含む発泡性ポリマー組成物に関する。
【0245】
任意選択的に、発泡性ポリマー組成物中の機能化微粒子重炭酸塩は、加工助剤、アンチケーキング剤(水捕捉のための乾燥剤として働くなどの)、及び/又は流動助剤をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、発泡性ポリマー組成物中の機能化微粒子重炭酸塩は、本明細書での様々な実施形態において記載されるような、シリカ、好ましくは非晶質シリカ、より好ましくは非晶質沈澱シリカをさらに含んでもよい。
【0246】
発泡性ポリマー組成物は、(本明細書で記載されるような)発泡させるための補完的化学発泡剤として使用される機能化微粒子第2化合物を任意選択的に含んでもよい。
【0247】
発泡性ポリマー組成物は、シリコーン系泡安定剤などの、泡安定剤を任意選択的に含んでもよい。
【0248】
発泡性ポリマー組成物中のポリマーの量は、典型的には、発泡性ポリマー組成物の総重量を基準として約10重量%(又は20重量%)~約90重量%の範囲である。ポリマーの量は、発泡性ポリマー組成物の所望の最終特性に従って選択することができる。
【0249】
本発明による好ましい一実施形態において、発泡性ポリマー組成物は、プラスチゾルの形態にある。用語「プラスチゾル」は、液体可塑剤中のポリマー粒子の懸濁液に関連している。
【0250】
好ましくは、プラスチゾルは、液体可塑剤中のポリ塩化ビニル粒子の懸濁液である。可塑剤の選択は、特に制限されず、それ故、ジオクチルフタレート又は1,2-シクロヘキシルジカルボン酸ジイソノニルエステルなどの、一般に用いられる可塑剤をこの目的のために使用することができる。
【0251】
用語「ポリ塩化ビニル」は、塩化ビニルホモポリマー並びにハロゲン化モノマー(塩化ビニリデン;クロロアクリレート;塩素化ビニルエーテルのようなクロロオレフィン)か、非ハロゲン化モノマー(エチレン及びプロピレンのようなオレフィン;スチレン;酢酸ビニルのようなビニルエーテル)かのいずれかである他のエチレン性不飽和モノマーとの塩化ビニルのコポリマー;並びにアクリル酸及びメタクリル酸;エステル、ニトリル及びアミドとの塩化ビニルコポリマーを意味することを意図する。塩化ビニルホモポリマー及び50~99重量%、好ましくは60~85重量%の塩化ビニルを含有する塩化ビニルコポリマーが好ましい。
【0252】
発泡性ポリマー組成物中のプラスチゾルの量は、典型的には、発泡性ポリマー組成物の総重量を基準として約20重量%~約90重量%の範囲である。プラスチゾルの量は、発泡性ポリマー組成物の所望の最終特性に従って選択することができる。
【0253】
発泡性ポリマー組成物中の機能化微粒子重炭酸塩の量は、典型的には、ポリマーの100重量部当たり5~15重量部の範囲である。例えば、発泡性PVCポリマー組成物について、発泡性PVCポリマー組成物中の機能化微粒子重炭酸塩の量は、典型的には、PVC樹脂の100重量部当たり5~15重量部、好ましくはPVC樹脂の100重量部当たり6~12重量部;より好ましくはPVC樹脂の100重量部当たり7~11重量部又はPVC樹脂の100重量部当たり8~10重量部の範囲である。
【0254】
本発明の発泡性ポリマー組成物は、さらなる成分、例えば、泡安定剤;排気剤;カーボンブラックなどの、充填材又は増量剤(例えば、充填材としてのCaCO3);他のポリマー及び油;硫黄化合物及び酸化亜鉛などの、硬化系の一部として働く様々な化学物質などの、硬化剤;帯電防止剤;殺生物剤;着色剤;カップリング剤;繊維強化材;難燃剤;殺真菌剤;熱安定剤;滑剤;離型剤;可塑剤(例えば、DINP=ジ-イソノニルフタレート);防腐剤;加工助剤;スリップ剤;紫外線安定剤;粘度降下剤;並びに結果として生じる発泡ポリマーの望ましい成分であり得る任意の他の成分を含有し得る。
【0255】
好ましい泡安定剤には、PVCプラスチゾル用のBYK 8020などの、シリコーン系泡安定剤が含まれ得る。
【0256】
いくつかの実施形態において、発泡性組成物は、機能化微粒子重炭酸塩以外の別の発泡剤を含有しない。
【0257】
他の実施形態において、発泡性組成物は、発熱性であるいかなる発泡剤も含有しない。特定の実施形態において、発泡性組成物は、窒素ガス及び/又はアンモニアを遊離させる発泡剤を含有しない。窒素ガスを遊離させる発泡剤の例は、アゾジカルボン酸ジアミド(アゾジカルボンアミド、ADC、ADCA、CAS No.123-77-3)、スルホンヒドラジド:4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH、CAS No.80-51-3)及びp-トルエンスルホニルヒドラジド(TSH、CAS No.1576-35-8)などの発熱性発泡剤である。
【0258】
好ましい実施形態において、発泡性ポリマー組成物は、アゾジカルボンアミドを含有しない。
【0259】
代わりの又は追加の好ましい実施形態において、発泡性ポリマー組成物は、ベンゼンスルホニルヒドラジドを含有しない。
【0260】
代わりの又は追加の実施形態において、発泡性ポリマー組成物は、p-トルエンスルホニルヒドラジドを含有しない。
【0261】
その上代わりの実施形態において、発泡性ポリマー組成物は、ADCA(アゾジカルボンアミド)、OBSH(4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド))、DNPT(ジニトロソペンタメチレンテトラミン)、PTSS(p-トルエンセミカルバジド)、BSH(ベンゼン-4-スルホノヒドラジド)、及びTSH(トルエン-4-スルホノヒドラジド)、5-PT(5-フェニルテトラゾール)からなる群から好ましくは選択される、発熱性化学発泡剤をさらに含んでよく、より好ましくは、ADCA(アゾジカルボンアミド)をさらに含んでもよい。そのような実施形態において、発泡性ポリマー組成物は、5:95~95:5、好ましくは90:10~10:90、より好ましくは85:15~15:85、その上より好ましくは80:20~20:80の機能化重炭酸塩対発熱性化学発泡剤の重量比からなってもよい。
【0262】
発泡性組成物の調製方法
本発明の別の態様は、上に記載されたような発泡性ポリマー組成物の調製方法であって、この方法が、
- 発泡性ポリマー組成物の成分が機能化微粒子重炭酸塩である、本明細書で提供されるような発泡性ポリマー組成物の成分を混合する工程
を含む方法に関する。
【0263】
発泡性ポリマー組成物の調製方法は、例えばオーステナイトステンレス鋼(304L-316L等)でできた、従来装置で実施することができる。本方法はまた、化学薬品使用向けのプラスチック、ガラス及びセラミックスのような非金属材料で実施することができる。
【0264】
好ましくは、本方法における混合工程は、連続混合下で実施される。発泡性ポリマー組成物は比較的高い粘度を有するので、強力混合が、均質な発泡性ポリマー組成物を得るために必要とされる。さらに、発泡効果は混合中に既に起こり始めるので、混合の速度は、短期間内に良好な均質化を達成するために十分に高くあるべきである。好ましくは、均質化は、本方法の混合工程中に約20秒未満内で達成される。混合条件の選択は、装置の具体的な特性に依存する。発泡性ポリマー組成物の調製方法の混合工程は、従来のフォーム製造におけるような任意の好適な温度で実施することができ、本方法は、約0℃~約30℃、例えば約20~25℃の範囲の比較的低い温度(周囲温度)で例えば実施することができる。
【0265】
発泡性ポリマー組成物は、
- 本明細書で記載されるような粉末形態での機能化微粒子重炭酸塩と、
- 任意選択的に、ADCA(アゾジカルボンアミド)、OBSH(4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド))、DNPT(ジニトロソペンタメチレンテトラミン)、PTSS(p-トルエンセミカルバジド)、BSH(ベンゼン-4-スルホノヒドラジド)、及びTSH(トルエン-4-スルホノヒドラジド)、5-PT(5-フェニルテトラゾール)などの、発熱性発泡剤、並びに任意選択的に発熱性発泡剤用の分解開始剤と;
- 少なくとも1種の可塑剤と、
- 少なくとも1種の発泡性ポリマーと、
- 任意選択的に泡安定剤と;
- 任意選択的に無機充填材などの1種以上のポリマー添加剤と
を混合することによって調製され得る。
【0266】
例えば、PVCプラスチゾル組成物は、
- 本明細書で記載されるような粉末形態での機能化微粒子重炭酸塩と、
- 任意選択的に、ADCA(アゾジカルボンアミド)、OBSH(4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド))、DNPT(ジニトロソペンタメチレンテトラミン)、PTSS(p-トルエンセミカルバジド)、BSH(ベンゼン-4-スルホノヒドラジド)、及びTSH(トルエン-4-スルホノヒドラジド)、5-PT(5-フェニルテトラゾール)などの、発熱性発泡剤、並びに任意選択的に発熱性発泡剤用の分解開始剤と;
- 少なくとも1種の可塑剤と、
- 少なくとも1種のポリ塩化ビニル樹脂と、
- 任意選択的に泡安定剤と;
- 任意選択的に無機充填材などの1種以上のポリマー添加剤と
を混合することによって調製され得る。
【0267】
好ましい泡安定剤には、PVCプラスチゾル用のBYK 8020などの、シリコーン系泡安定剤が含まれ得る。
【0268】
PVC発泡性プラスチゾル組成物などの発泡性ポリマー組成物の成分は、高速ミキサーで分散させられ、次に、減圧下で脱気されてもよい。
【0269】
PVC発泡性プラスチゾル組成物は、(本明細書で記載されるような)発泡させるための補完的化学発泡剤として使用される機能化微粒子第2化合物を任意選択的に含んでもよい。機能化微粒子第2化合物は、機能化微粒子カルボン酸若しくはポリカルボン酸、それの誘導体、又は塩であってもよい。機能化微粒子第2化合物は、フマル酸、酒石酸、クエン酸、それの塩(クエン線水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウムなどの)、そのエステル、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0270】
発泡ポリマーの調製方法
本発明のさらなる態様は、上記の発泡性ポリマー組成物が加熱される、発泡ポリマーの調製方法に関する。したがって、発泡ポリマーの調製方法は、以下の工程:
- 本明細書で提供されるような発泡性ポリマー組成物の成分を混合する工程;及び
- 混合から得られた発泡性ポリマー組成物を加熱する工程
を含むことができる。
【0271】
好ましくは、加熱工程は、混合工程の完了後直ちに実施される。
【0272】
発泡ポリマーの調製方法は、押出又は延展などの造形工程を含み得る。好ましくは、加熱工程は、混合及び造形工程の完了後直ちに実施される。
【0273】
加熱工程は、樹脂及びプラスチゾルの組成に応じて、約120℃~約220℃以下、又は約120℃~約210℃以下、又は約120℃~約200以下の温度で実施することができる。
【0274】
加熱工程における加熱時間は、プラスチゾルの処方、材料の形状、温度等に依存する。上述の発泡性ポリマー組成物からの発泡ポリマーの調製方法において、発泡剤としての機能化微粒子重炭酸塩の存在下での加熱期間中のゲル化時間は、(全ての他の成分が同じもののままであるのに)発泡剤としてアゾジカルボンアミドの存在下でのそれ未満である。
【0275】
発泡性ポリマー組成物が機能化微粒子重炭酸塩を含む場合、ポリマーのガラス転移温度Tgよりも上の及び/又は溶融温度Tmよりも上の温度でのゲル化時間は、好ましくは、125秒未満、特には90秒未満、好ましくは80秒以下、又は70秒以下、又はより好ましくは60秒以下などの、180秒未満である。
【0276】
PVCプラスチゾルに関して、結果として生じる液体PVCペースト(プラスチゾル)は、表面(例えば、紙、特にシリコーン紙)上に一定厚さでスプレッドコートし、120秒~30秒の時間、好ましくは120秒~60秒の時間、より好ましくは120秒~90秒の時間などの、130秒以下の時間、硬化(ゲル化)温度(一般に、180℃~210℃、又は185℃~210℃、又は190℃~210℃、又は200℃~210℃などの、150℃~210℃若しくは200℃)にセットされたオーブン(例えば、Thermosol Werner Mathis)中で加熱することができる。
【0277】
一般に、プラスチゾルがゲル化温度に保持される時間は、使用される発泡剤に依存する。発泡剤としてのアミノ酸、特にロイシンについてなどの、いくつかの発泡剤については、より短いゲル化時間が有利であることができ、その場合に、良好な経験及び膨張率のポリマーフォームが100秒未満、特に、50~70秒の範囲のなどの、80秒未満のむしろ短いゲル化時間で得られる。アミノ酸で機能化されている重炭酸塩粒子について、短い時間での良好な結果はまた、ゲル化温度が200℃よりも下、特に175~195℃の範囲においてなどの、むしろ低い場合に特に達成される。ステアリン酸が本発明の機能化微粒子重炭酸塩中の添加物として使用される場合、アミノ酸添加物についてと同じゲル化時間及びゲル化温度が好ましい。
【0278】
PVCポリマーの製造方法のいくつかの実施形態について、発泡性ポリマー組成物が加熱される場合に、機能化微粒子重炭酸ナトリウムからCO2ガスを遊離させる及びPVCポリマーを溶融させるのに好適な温度は、発泡PVCポリマーを提供するための温度で90秒~120秒のゲル化時間の間、190~210℃、好ましくは200~210℃であり得る。
【0279】
発泡性ポリマー組成物が、加熱及びポリマー溶融の前に表面上にスプレッドコートされる場合、発泡ポリマーは、少なくとも270、好ましくは少なくとも280、より好ましくは少なくとも300の膨張比を有し得る及び/又は0.6g/cm3未満、好ましくは0.55g/cm3未満、より好ましくは最大でも0.5g/cm3の密度を有する。膨張比は、その層がオーブン中で加熱されるときに発泡性ポリマー組成物のスプレッドコーテッド層の初期厚さで割った最終厚さの比に基づいて計算される。
【0280】
本発泡剤及び上で議論された発泡性ポリマー組成物を使用して製造される発泡ポリマー生成物は、押出、カレンダー掛け、射出成形、コーティング、膨張キャスティング(expansion casting)又は回転成形を含む方法によって製造することができる。
【0281】
発泡ポリマー
本発明のさらなる態様は、上に記載されたような発泡性組成物から得られる発泡ポリマーに関する。
【0282】
本発明の一実施形態において、発泡ポリマーは、可撓性の発泡ポリマーである。この実施形態において、発泡又は押出ポリマーは、好ましくは、可撓性ポリ塩化ビニルであり、有利には、
- フローリング用途向けに;
- フォームベースの壁紙の製造のために;
- 人造皮革として;又は
- テクニカルフォームとして
使用することができる。
【0283】
機能化微粒子重炭酸塩は、発泡又は押出ポリマー(発泡PVC又はポリウレタン;押出PVC、ポリオレフィン、ポリアミドなどの)用の発泡剤として好ましくは使用され、吸熱性発泡剤として好ましくは使用される。ポリマーの非限定的な例は、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン、ポリオレフィン(PO、PE、PP)、スチレン系樹脂(PS、ABS、ASA、SAN)、エンジニアリング樹脂、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリイミド、並びに天然ゴム及びニトリルブタジエンゴム(NBR)又はクロロプレンゴム(CR)などの合成ゴムである。
【0284】
発泡性ポリマー組成物が加熱及びポリマー溶融の前に表面上にスプレッドコートされる場合、発泡ポリマーは、少なくとも270、好ましくは少なくとも280、より好ましくは少なくとも300の膨張比を有し得る。膨張比は、その層がオーブン中で加熱されるときに発泡性ポリマー組成物のスプレッドコーテッド層の初期厚さで割った最終厚さの比に基づいて計算される。膨張比は、270~450以下、又は280~445以下、又は290~440以下、又は300~440以下であってもよい。
【0285】
いくつかの実施形態において、発泡ポリマーは、0.65g/cm3未満の又は0.6g/cm3未満、好ましくは0.58g/cm3未満、より好ましくは最大でも0.55g/cm3、最も好ましくは最大でも0.5g/cm3又は最大でも0.45g/cm3の密度のPVCフォームである。PVCフォームが少なくとも1種の添加物とともに機能化微粒子重炭酸塩を含有する発泡性PVC組成物でできているいくつかの実施形態において、PVCフォームは、0.3~0.65g/cm3の密度、好ましくは0.33~0.58g/cm3の密度、より好ましくは0.33~0.5g/cm3の密度又は0.33~0.45g/cm3の密度でさえを有する。添加物は、蜜ろう、カルナバワックス、グリセロールモノステアレート、ポリ(メタ)アクリレート、エポキシ化大豆油、アラビアゴム、リノール酸、マルトデキストリン、ポリビニルアルコール、ラウリン酸、ロジン酸又はそれの任意の誘導体、デンプン、ステアリン酸、ポリオキシエチレン化合物(BIK3155、ポリエチレングリコール、例えば、PEG400、PEG4000のような)、ロイシン、及びそれらの2つ以上の任意の組み合わせからなる群から好ましくは選択される。
【0286】
本発明は、本明細書において述べられる添加物の効果の発見に基づくものであり、それについて本方法の異なる変形及び/又は本方法の前記変形によって得られる生成物の異なる変形が以下により詳細に説明される。
【0287】
項目1.熱可塑性ポリマー前駆体、例えばPVCプラスチゾル又はポリマー樹脂を押出プロセスにおいて発泡させるための化学発泡剤であって、
前記化学発泡剤が機能化微粒子重炭酸塩を含み、
ここで、前記機能化微粒子重炭酸塩が少なくとも1種の添加物を含有し、及び
ここで、機能化微粒子重炭酸塩中の前記添加物が、ロジン酸、それの任意の誘導体、それの任意の塩、又はそれらの任意の組み合わせを含む
化学発泡剤。
【0288】
項目2.発泡剤が、発熱性発泡剤であるいかなるさらなる発泡剤も含有しない、又は化学発泡剤が、加熱中に窒素ガスを遊離させる化合物を含有しない、又は化学発泡剤が、加熱中にアンモニアガスを遊離させる化合物を含有しない、項目1に記載の化学発泡剤。
【0289】
項目3.機能化微粒子重炭酸塩が、
- 1種以上のポリマー;
- 1種以上のアミノ酸、それらの任意の誘導体、及びそれらの塩;
- 1種以上の無機塩;
- 1種以上の油;
- 1種以上の脂肪;
- 1種以上の樹脂酸、それらの任意の誘導体、及びそれらの塩;
- 1種以上の脂肪酸、それらの任意の誘導体、及びそれらの塩;
- カルボン酸若しくはポリカルボン酸、それの誘導体(エステルなどの)、若しくはそれの塩;
- 1種以上の石鹸;
- 1種以上のワックス;又は
- それらの任意の組み合わせ
から選択される;
好ましくは、ポリエチレングリコールなどのポリオキシアルキレン及びそれらの誘導体、ポリ(メタ)アクリレート及びそれらの誘導体、ポリビニルアルコール、多糖類並びにそれらの組み合わせからなる群からより好ましくは選択される少なくとも1種のポリマーから;さらにより好ましくは、ポリビニルアルコール並びにポリエチレングリコールなどのポリオキシアルキレン及びそれらの誘導体から選択される
少なくとも1種の追加の添加物を含む、項目1又は2に記載の化学発泡剤。
【0290】
項目4.機能化微粒子重炭酸塩が、少なくとも50重量%及び100重量%未満の重炭酸塩成分と、50重量%以下~0.02重量%の前記添加物の少なくとも1種とを含む、項目1~3のいずれか一項に記載の化学発泡剤。
【0291】
項目5.機能化微粒子重炭酸塩が、少なくとも65重量%及び100重量%未満の重炭酸塩成分と、35重量%以下~0.02重量%の前記添加物の少なくとも1種とを含む、項目1~4のいずれか一項に記載の化学発泡剤。
【0292】
項目6.機能化微粒子重炭酸塩の粒子が、1μm超及び最大でも250μm、好ましくは最大でも100μm、より好ましくは最大でも60μm、その上より好ましくは最大でも40μm、その上最も好ましくは最大でも25μmのD50の粒度分布を有する項目1~5のいずれか一項に記載の化学発泡剤。
【0293】
項目7.機能化微粒子重炭酸塩の粒子が、最大でも1μmのD50の粒度分布を有する、項目1~5のいずれか一項に記載の化学発泡剤。
【0294】
項目8.機能化微粒子重炭酸塩が、以下のプロセスの少なくとも1つによって:
- 噴霧乾燥(アトマイゼーションとしても知られる)によって、ここで、添加物は重炭酸塩含有溶液に溶解しており、
- エマルジョン若しくは粉末形態での添加物との粉砕若しくは共粉砕(ミリング若しくは共ミリングとしても知られる)によって;
- 流動床内でのスプレーコーティング及び噴霧造粒によって、
- 流動床内での噴霧集塊によって、
- 噴霧チリング(例えば、噴霧冷却、噴霧凍結)によって、
- ローラー圧縮によって、並びに/又は
- 同時混合/押出などの、押出によって
得られ;
任意選択的に、このようにして得られた機能化微粒子重炭酸塩を、その平均粒径を低減するためにミリングにかける工程がこれに続き;好ましくは、添加物との共粉砕、押出、及び/又は添加物でのスプレーコーティングによって得られ;より好ましくは、添加物との粉砕及び/又は押出によって得られる、項目1~7のいずれか一項に記載の化学発泡剤。
【0295】
項目9.加熱時にCO2を遊離させる第2化合物をさらに含む、項目1~8のいずれか一項に記載の化学発泡剤であって、前記第2化合物が、カルボン酸若しくはポリカルボン酸、それの誘導体(エステルなどの)、又はそれの塩からなる群から選択され、ここで、前記第2化合物が、任意選択的に、機能化微粒子重炭酸塩中のものと異なるか又は同じものである少なくとも1種の添加物、好ましくは同じ添加物で機能化されており、及びここで、前記第2化合物が、好ましくは、
- フマル酸、
- 酒石酸、
- クエン酸、クエン酸塩(クエン酸水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウムなどの)、若しくはクエン酸のエステル;又はそれらの組み合わせ
の少なくとも1つである化学発泡剤。
【0296】
項目10.化学発泡剤又は機能化微粒子重炭酸塩が、シリカ、好ましくは非晶質シリカ、好ましくは非晶性沈澱シリカをさらに含む、項目1~9のいずれか一項に記載の化学発泡剤。
【0297】
項目11.シリカが、少なくとも180m2/gの、若しくは少なくとも200m2/gの、若しくは少なくとも400m2/gの高い表面積、及び/又は20ミクロン未満の、好ましくは最大でも15ミクロンの平均径を有する非晶質シリカである、項目10のいずれか一項に記載の化学発泡剤。
【0298】
項目12.機能化微粒子重炭酸塩中の添加物が、ロジン酸の誘導体を含み、好ましくは、ロジンのC1~25アルキルエステル、グリセロールロジンエステル、ペンタエリスリトールロジンエステル、又はそれらの組み合わせなどの、ロジン酸エステル、水素化ロジン酸、ロジン酸の二量体、重合ロジンからなる群から選択されるロジン酸の誘導体を含み、より好ましくは、少なくとも50重量%のジヒドロアビエチン酸などの、ジヒドロアビエチン酸を含む、項目1~11のいずれか一項に記載の化学発泡剤。
【0299】
項目13.機能化微粒子重炭酸塩中のロジン酸添加物が、アビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、ロジン酸エステル、又はそれらの混合物を含み、好ましくは、アビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、又はそれらの混合物を含む、項目1~11のいずれか一項に記載の化学発泡剤。
【0300】
項目14.ポリマーと、任意選択的に起泡安定剤と、項目1~13のいずれか一項に記載の化学発泡剤とを含む、発泡性ポリマー組成物であって、ポリマーが、PVC、ポリウレタン、ポリオレフィン、又はポリアミドである組成物。
【0301】
項目15.ADCA(アゾジカルボンアミド)、OBSH(4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド))、DNPT(ジニトロソペンタメチレンテトラミン)、PTSS(p-トルエンセミカルバジド)、BSH(ベンゼン-4-スルホノヒドラジド)、及びTSH(トルエン-4-スルホノヒドラジド)、5-PT(5-フェニルテトラゾール)からなる群から好ましくは選択される、発熱性化学発泡剤をさらに含む、より好ましくはADCAを含む、項目14に記載の発泡性ポリマー組成物。
【0302】
項目16.発泡性PVCプラスチゾル組成物である、項目14又は15に記載の発泡性ポリマー組成物であって、ポリマーがPVC樹脂を含む組成物。
【0303】
項目17.発泡性PVCプラスチゾル組成物である、項目14又は15に記載の発泡性ポリマー組成物であって、ポリマーがPVC樹脂を含み、それが、好ましくはアゾジカルボンアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、及び/又はp-トルエンスルホニルヒドラジドを含有しない組成物。
【0304】
項目18.機能化微粒子重炭酸塩を含む項目14又は15に記載の発泡性ポリマー組成物を、ポリマーのガラス転移温度Tgよりも上の及び/又は溶融温度Tmよりも上の温度で、130秒未満であるゲル化時間の間CO2ガスを遊離させる及びポリマーを溶融させるのに好適な温度で加熱する工程を含む、ポリマーの製造方法。
【0305】
項目19.ポリマーが、PVC、ポリウレタン、ポリオレフィン、又はポリアミドである、項目18に記載の方法によって得られる発泡ポリマー。
【0306】
項目20.機能化微粒子重炭酸塩とPVC樹脂とを含む項目16又は17に記載の発泡性PVCポリマー組成物を、190~210℃、好ましくは200~210℃の温度で、90秒~120秒のゲル化時間の間CO2ガスを遊離させる及びPVCポリマーを溶融させるのに好適な温度で加熱して発泡PVCポリマーを提供する工程を含む、PVC発泡ポリマーの製造方法であって、発泡性PVCポリマー組成物が、好ましくは、加熱及び溶融の前に表面上にスプレッドコートされ、並びに発泡PVCポリマーが、少なくとも270、好ましくは少なくとも280、より好ましくは少なくとも300の膨張比を有する及び/又は0.6g/cm3未満、好ましくは0.55g/cm3未満、より好ましくは最大でも0.5g/cm3の密度を有する方法。
【0307】
項目21.機能化微粒子重炭酸塩を含む、項目16又は17に記載の発泡性PVCプラスチゾル組成物を、ゲル化時間の間CO2ガスを遊離させる及びPVC樹脂を溶融させるのに好適な温度で加熱する工程を含む、ポリマーの製造方法であって、機能化微粒子を含む化学発泡剤での前記ゲル化時間が、発泡性PVCプラスチゾル組成物中の全ての他の成分が同じものである、N2を遊離させる化学発泡剤で得られるであろうゲル化時間未満である方法。
【0308】
項目22.項目20又は21の方法によって得られる発泡PVC。
【0309】
以下の実施例は、本発明、及び当業者に容易に理解できるその変形の非限定的な例示の目的で示される。
【実施例】
【0310】
共ミリング
ミリングは、分級器を備えた、Jaeckering製のUltraRotor III機器で連続的に行った。重炭酸ナトリウム粒子を、室温で空気注入下に10~300kg/hでミルの底部でロードした。機能付与添加物を、ミックス中の機能付与添加物の所望の重量含有量に達するため、ミルの中間レベルで添加した。ミル回転速度及び分級器回転速度は、所望の粒度分布に達するように選択した。
【0311】
押出混合
押出混合プロセスは、注入点及びパドルを有するHASLER Group製のUCP25機器で連続的に行った。重炭酸ナトリウム粒子を、1~2kg/hでUCP25注入点でロードした。機能付与添加物を、0.1~1kg/hで主注入点の2、3センチメートル後でロードした。パドルの回転速度は50rpmであった。機器温度を室温に保った。
【0312】
押出混合後のミリング
押出混合プロセスを出る機能化重炭酸ナトリウムを、0.5~10kg/hのローディング速度でHosokawa Alpine製のUPZ100ミルの最上部で連続的に注入した。ミルは、10,000~17,000rpmで選択されるローター回転速度を有し、ミルは室温で運転された。
【0313】
集塊(⇒FB集塊+ミリング)
流動床集塊プロセスからの生成物を、Hosokawa Alpine製のUPZ100ミルの最上部で注入した。調合重炭酸ナトリウムを0.5~10kg/hでロードし、ミルローター回転速度を10,000~17,000rpmで選択した。プロセス温度は室温であった。
【0314】
流動床スプレーコーティング(⇒FBコーティング+ミリング)
スプレーコーティングは、流動化チャンバー、粒子をロードするための手段、一般に液体形態の機能付与添加物を注入するための手段、及び当該チャンバーの底部で流動化ガスを注入するための手段を含むDMR Prozesstechnologie製のバッチ式流動床WFP-ミニ機器で行った。重炭酸ナトリウム粒子を、流動化チャンバーに100g~1kgで最初にロードした。流動化空気を10から100℃まで加熱し、その流量は、10~40m3/hであった。機能付与添加物を含有する液体を、20~90℃の温度でチャンバー底部から噴霧した。液体は一般に、溶媒中の機能付与添加物の溶液、好ましくは1~80重量%の濃度の水溶液であった。液体を、溶媒(例えば、水)を蒸発させ、及び機能付与添加物を重炭酸ナトリウム粒子上へコートする(一般に結晶化によって)ために、20g/分までの流量下で噴霧した。コートされた機能付与添加物の含有量は、1~70重量%であった。
【0315】
スプレーコーティング後に得られた生成物を、一般にミルにかけた。流動床コーティングプロセスを出るスプレーコートされた粒子を、0.5~10kg/hのローディング速度でHosokawa Alpine製のUPZ100ミルの最上部で注入し、ミルは、10,000~17,000rpmで選択されるローター回転速度を有し、室温で運転された。
【0316】
PVCプラスチゾルの調製
PVCプラスチゾルの製造方法は、一般に、以下の工程に従い得る:
- PVC樹脂の重量を2リットルのステンレス鋼ポットで測定し、処方の残りを別々に秤量する;
- ステンレス鋼ポットを、解膠シャー刃形(ローターブレード径70mm)を持った油圧式ミキサー(Pendraulik)下に置く
- 無機充填材、可塑剤及び発泡剤の添加中250回転/分での撹拌
- 粉末が懸濁したらすぐに、45秒間4200回転/分での撹拌(温度は約40~50℃、より高い撹拌時の場合、温度は60~70℃に上昇し得る)
- 気泡をストリップするための減圧準備。調製物のレベルがビーカー中へ上がる場合、気泡をより速く除去するために、ビーカーを作業台上で軽くたたいてもよい。
- 調製物のレベルが減圧の存在下で安定している場合、減圧を切る前に5分カウントし、次に、空気ストリッピングを終えること。
- 発泡を避けるために、任意選択的に泡安定剤(BYK供給業者製などの)を添加すること
- プレセット温度、通常T=190、200又は210℃でのWerner Mathisオーブンにおける温度設定
- 紙(実施例1~8においてはシリコーン紙及び実施例9~13においては普通紙(Claire Fontaine製))を取り付け、紙から残留水を除去するために10秒間加熱する
- プラスチゾル混合物を750ミクロンの厚さで紙上に広げる
- PVCプラスチゾルを、ゲル化のために2分以下(通常60秒、90秒、120秒)加熱する、
- プラスチゾルが、それを紙から取り外すために冷えるまで待つこと。
【0317】
以下の化学薬品を実施例において使用した:
【0318】
【0319】
実施例1(本発明に従わない)
実施例1のPVCプラスチゾル組成物を、発泡剤としてアゾジカルボンアミドを使用することによって調製した。実施例1のプラスチゾルの他の成分は、少なくとも1種のポリ塩化ビニルポリマー、及び任意選択的に無機充填材などの1種以上のポリマー添加剤であった。
【0320】
表1に挙げられるような具体的な成分及び量を選んだ。
【0321】
各々の実施例において、成分を高速ミキサーで分散させ、混合し、減圧下で脱気した。
【0322】
実施例1の、結果として生じた液体PVCペースト(プラスチゾル)をシリコーン紙上に約0.75mmの厚さでスプレッドコートし、120秒間185℃にセットされたThermosol Werner Mathisオーブン中で加熱した。
【0323】
フォームの表面及び構造を目視により評価した。膨張率は、初期厚さで割った、Werner Mathisオーブン加熱後の発泡生成物の最終厚さと、それがWerner Mathisオーブン加熱を通過する前のスプレッドコーテッド層の初期厚さ(ここでは約0.75mm)との間の差の比であった。膨張比は、スプレッドコーテッド層の初期厚さ(ここでは約0.75mm)で割った発泡生成物の最終厚さの比として計算した。結果を表1に提供し、ここで、「PCR」は、PVC樹脂の重量部を意味する。
【0324】
【0325】
実施例2~5(本発明に従わない)
実施例3~5については、PVCプラスチゾル組成物を、発泡剤として粉末形態での非機能化重炭酸ナトリウムを使用することによって調製した。粉末形態での非機能化重炭酸ナトリウムを、少なくとも1種の可塑剤、少なくとも1種のポリ塩化ビニルポリマー、及び任意選択的に無機充填材などの1種以上のポリマー添加剤の存在下で混合した。実施例2のPVCプラスチゾル組成物は、発泡剤としてアゾジカルボンアミドを使用することによって調製した。実施例2のプラスチゾルの他の成分は、実施例3~5に使用されたものと同じものであった。表2に挙げられるような具体的な成分及び量を選んだ。表2の「PCR」は、樹脂の重量部を意味する。各々の実施例2~5において、成分を高速ミキサーで分散させ、それらを混合し、減圧下で脱気した。
【0326】
実施例2~5の、結果として生じた液体PVCペースト(プラスチゾル)を各場合にシリコーン紙上に約0.75mmの厚さでスプレッドコートし、120秒間185℃でのゲル化期間でセットされたThermosol Werner Mathisオーブン中で加熱した。
【0327】
発泡剤として非機能化重炭酸塩を使った実施例3~5は、発泡剤としてアゾジカルボンアミドを使用する実施例2と比べて不十分な膨張結果を与えた。ゲル化後に、実施例3~5のPVCプラスチゾル表面は、ポリマーメルトにおける気泡の表面癒着のサインである非常にザラザラした外観を有した。
【0328】
【0329】
実施例6(本発明に従わない)
実施例6のPVCプラスチゾル組成物を、発泡剤としてアゾジカルボンアミドを使用することによって調製した。実施例6のプラスチゾルの他の成分は、少なくとも1種の可塑剤、少なくとも1種のポリ塩化ビニルポリマー、及び任意選択的に、無機充填材などの1種以上のポリマー添加剤であった。表3に挙げられるような具体的な成分及び量を選んだ。
【0330】
各々の実施例において、成分を高速ミキサーで分散させ、それらを混合し、減圧下で脱気した。
【0331】
実施例6の、結果として生じた液体PVCペースト(プラスチゾル)をシリコーン紙上に約0.75mmの厚さでスプレッドコートし、実施例6については120秒間185℃にセットされたThermosol Werner Mathisオーブン中で加熱した。
【0332】
フォームの表面及び構造を目視により評価した。膨張率は、初期厚さで割った、Werner Mathisオーブン加熱後の発泡生成物の最終厚さと、それがWerner Mathisオーブン加熱を通過する前のスプレッドコーテッド層の初期厚さ(ここでは約0.75mm)との間の差の比であった。膨張比は、スプレッドコーテッド層の初期厚さ(ここでは約0.75mm)で割った発泡生成物の最終厚さの比として計算した。結果を表3に提供し、ここで、「pcr」は、PVC樹脂の重量部を意味する。
【0333】
【0334】
実施例7(本発明に従わない)
発泡剤=アゾジカルボンアミド
実施例7のPVCプラスチゾル組成物を、発泡剤としてアゾジカルボンアミドを使用することによってDispermat装置で調製した。使用されるアゾジカルボンアミド製品は、75重量%のアゾジカルボンアミドと、25重量%の分解開始剤(酸化亜鉛/ステアリン酸亜鉛)とからなるGenitron SCE(Lanxess)であった。プラスチゾルの成分を高速ミキサーで分散させ、次に混合し、減圧下で脱気した。実施例7の、結果として生じた液体PVCペースト(プラスチゾル)を各場合に一片の紙(Claire Fontaine)上に約0.75mmの厚さでスプレッドコートし、90又は120秒間200又は210℃にセットされたThermosol Werner Mathisオーブン中で加熱した。
【0335】
膨張率は、初期厚さで割った、Werner Mathisオーブン加熱後の発泡生成物の最終厚さと、それがWerner Mathisオーブン加熱を通過する前のスプレッドコーテッド層の初期厚さ(ここでは約0.75mm)との間の差の比であった。膨張比は、スプレッドコーテッド層の初期厚さ(ここでは約0.75mm)で割った発泡生成物の最終厚さの比として計算した。各々のプラスチゾル中の具体的な成分及び量、オーブン温度、ゲル化のための時間、オーブン加熱後の発泡生成物の厚さ、膨張率、膨張比、並びにPVCフォームの密度を表4に提供し、ここで、「pcr」は、PVC樹脂の重量部を意味する。
【0336】
【0337】
実施例8(本発明に従わない)
機能付与添加物=蜜ろうを使う
機能化重炭酸ナトリウムの1つの試料を、重炭酸ナトリウム粒子を蜜ろうで流動床においてスプレーコートし、次に、ミリングすることによって調製した。この機能化重炭酸ナトリウム試料を、実施例8A(20重量%蜜ろう)と特定する。
【0338】
実施例8については、PVCプラスチゾル組成物をDispermat装置で調製した。各々の実施例において、プラスチゾルの成分を高速ミキサーで分散させ、次に混合し、減圧下で脱気した。実施例14の、結果として生じた液体PVCペースト(プラスチゾル)を各場合に一片の紙(Claire Fontaine)上に約0.75mmの厚さでスプレッドコートし、90又は120秒間200又は210℃にセットされたThermosol Werner Mathisオーブン中で加熱した。膨張比は、それがWerner Mathisオーブン加熱を通過する前のスプレッドコーテッド層の初期厚さ(ここでは約0.75mm)で割ったWerner Mathisオーブン加熱後の発泡生成物の厚さの比として計算した。各々のプラスチゾル中の具体的な成分及び量、オーブン温度、ゲル化のための時間、オーブン加熱後の発泡生成物の厚さ、膨張比、並びにPVCフォームの密度を表5に提供し、ここで、「pcr」は、PVC樹脂の重量部を意味する。
【0339】
【0340】
実施例9~11(本発明に従う)
機能付与添加物=ロジン酸
機能化重炭酸塩の3つの試料を、重炭酸ナトリウム粒子をロジン酸と共粉砕(共ミリング)することによって調製した。これらの試料を、実施例9A(1重量%のロジン酸)、10A(2重量%のロジン酸)、11A(10重量%のロジン酸)と特定する。
【0341】
実施例9~11については、PVCプラスチゾル組成物をDispermat装置で調製した。各々の実施例において、プラスチゾルの成分を高速ミキサーで分散させ、次に混合し、減圧下で脱気した。実施例8の、結果として生じた液体PVCペースト(プラスチゾル)を各場合に一片の紙(Claire Fontaine)上に約0.75mmの厚さでスプレッドコートし、90又は120秒間200又は210℃にセットされたThermosol Werner Mathisオーブン中で加熱した。膨張比は、それがWerner Mathisオーブン加熱を通過する前のスプレッドコーテッド層の初期厚さ(ここでは約0.75mm)で割ったWerner Mathisオーブン加熱後の発泡生成物の厚さの比として計算した。各々のプラスチゾル中の具体的な成分及び量、オーブン温度、ゲル化のための時間、オーブン加熱後の発泡生成物の厚さ、膨張比並びにPVCフォームの密度を表6に提供し、ここで、「pcr」は、PVC樹脂の重量部を意味する。
【0342】
【0343】
【0344】
実施例12~13(本発明に従う)
2種の機能付与添加物=ロジン酸;PEG400を使う
機能化重炭酸塩の2つの試料を、機能付与の2つの異なる方法(共粉砕、押出)を用いて、順次添加される2種の異なる機能付与添加物(ロジン酸、PEG400)を適用することによって調製した。先ず、重炭酸ナトリウム粒子を、それらを第1機能付与添加物としてのロジン酸と共粉砕することによって機能化し、次に、第1機能化粒子を、それらを第2機能付与化合物としてのPEG400と押し出すことによって機能化して第2機能化粒子を形成した。これらの試料を、実施例12A(9重量%のロジン酸、10重量%のPEG400)及び実施例13A(8重量%のロジン酸、20重量%のPEG400)と特定する。
【0345】
実施例12~13については、実施例8について記載されるのと同じPVCプラスチゾル組成物の調製方法及びPVCフォームの調製方法を用いた。膨張比は、それがWerner Mathisオーブン加熱を通過する前のスプレッドコーテッド層の初期厚さ(ここでは約0.75mm)で割ったWerner Mathisオーブン加熱後の発泡生成物の厚さの比として計算した。各々のプラスチゾル中の具体的な成分及び量、オーブン温度、ゲル化のための時間、オーブン加熱後の発泡生成物の厚さ、膨張比並びにPVCフォームの密度を表7に提供し、ここで、「pcr」は、PVC樹脂の重量部を意味する。
【0346】
【0347】
実施例14(本発明に従わない)
機能付与添加物=なし
市販の重炭酸ナトリウム(Solvay製のSB/03)を、ミルにかけて粒径を低減した。この試料を、実施例14A(機能付与添加物を使わない)と特定する。
【0348】
実施例14については、PVCプラスチゾル組成物をDispermat装置で調製した。各々の実施例において、プラスチゾルの成分を高速ミキサーで分散させ、次に混合し、減圧下で脱気した。結果として生じた液体PVCペースト(プラスチゾル)を各場合に一片の紙(Claire Fontaine)上に約0.75mmの厚さでスプレッドコートし、90又は120秒間200又は210℃にセットされたThermosol Werner Mathisオーブン中で加熱した。膨張比は、それがWerner Mathisオーブン加熱を通過する前のスプレッドコーテッド層の初期厚さ(ここでは約0.75mm)で割ったWerner Mathisオーブン加熱後の発泡生成物の厚さの比として計算した。各々のプラスチゾル中の具体的な成分及び量、オーブン温度、ゲル化のための時間、オーブン加熱後の発泡生成物の厚さ、膨張比並びにPVCフォームの密度を表8に提供し、ここで、「pcr」は、PVC樹脂の重量部を意味する。
【0349】
【0350】
実施例15
D50、サイズスパン、TGA及びDSC分析
熱重量分析(TGA;35~250℃/10℃/分)及び示差走査熱量測定法(DSC)熱分析を、機能化微粒子重炭酸ナトリウム及び非機能化重炭酸ナトリウム(実施例 14A)のいくつかの試料に関して行った。結果を表9に提供する。これらの重炭酸ナトリウムのD50(μm)及びサイズスパン、並びにこれらの重炭酸ナトリウムで得られた、PVCフォームの最低密度(ρ)及び最高膨張比(%)を、対応するオーブン温度でのそれらの対応するゲル化時間とともに表9に提供する。
【0351】
【0352】
TGA結果は、CO2放出開始温度及びCO2放出最大温度が両方とも、添加物で機能化されなかった、ミルにかけられた市販の重炭酸ナトリウム製品SOLVAY SB/03(実施例 14A)と比べて、機能付与添加物を含む機能化重炭酸ナトリウム試料において上昇したことを示す。
【0353】
DSC分析は、機能付与添加物を含む機能化重炭酸ナトリウム試料についてのピーク温度が、添加物で機能化されなかった、ミルにかけられた市販の重炭酸ナトリウム製品SOLVAY SB/03(実施例 14A)よりも高いことを示した。
【0354】
実施例16~19(本発明に従う)
機能付与添加物=ロジン酸誘導体(Resigral(登録商標)52)
+非晶質沈澱シリカ
機能化重炭酸ナトリウムの4つの試料を、重炭酸ナトリウム粒子を、ロジン酸誘導体(少なくとも52重量%のジヒドロアビエチン酸を含むDRT製のResigral 52)及び沈澱シリカ(Rhodia製のTixosil(登録商標)38AB)と共粉砕すること(共ミリングすること)によって調製した。これらの試料を、実施例16A~19A(90重量%の重炭酸ナトリウム、9重量%のResigral 52、1重量%のシリカ)と特定する。
【0355】
実施例16~19については、PVCプラスチゾル組成物をDispermat装置で調製した。各々の実施例において、プラスチゾルの成分を高速ミキサーで分散させ、次に混合し、減圧下で脱気した。実施例8の、結果として生じた液体PVCペースト(プラスチゾル)を各場合に一片の紙(SAPPI)上に約0.75mmの厚さでスプレッドコートし、90又は120秒間200又は210℃にセットされたThermosol Werner Mathisオーブン中で加熱した。膨張比は、それがWerner Mathisオーブン加熱を通過する前のスプレッドコーテッド層の初期厚さ(ここでは約0.75mm)で割ったWerner Mathisオーブン加熱後の発泡生成物の厚さの比として計算した。各々のプラスチゾル中の具体的な成分及び量、オーブン温度、ゲル化のための時間、オーブン加熱後の発泡生成物の厚さ、膨張比並びにPVCフォームの密度を表10に提供し、ここで、「pcr」は、PVC樹脂の重量部を意味する。
【0356】
【0357】
実施例20(本発明に従う)
2種の機能付与添加物=ロジン酸誘導体(ジヒドロアビエチン酸)+クエン酸を使う
機能化重炭酸ナトリウムの1つの試料を、2種の異なる機能付与添加物:ロジン酸誘導体(少なくとも52重量%のジヒドロアビエチン酸を含むDRT製のResigral(登録商標)52)及びクエン酸を適用することによって調製した。それらを重炭酸塩粒子に一緒に添加し、共ミリングして機能化粒子を形成した。この試料を、実施例20A(10重量%のResigral(登録商標)52、20重量%のクエン酸)と特定する。
【0358】
実施例20については、実施例8ついて記載されるのと同じPVCプラスチゾル組成物の調製方法及びPVCフォームの調製方法を用いた。膨張比は、それが90又は120秒間の200又は210℃でのWerner Mathisオーブン加熱を通過する前のスプレッドコーテッド層の初期厚さ(ここでは約0.75mm)で割ったWerner Mathisオーブン加熱後の発泡生成物の厚さの比として計算した。各々のプラスチゾル中の具体的な成分及び量並びにこの実施例20Aについて得られた最良膨張比を表11に提供し、ここで、「pcr」は、PVC樹脂の重量部を意味する。
【0359】
【0360】
実施例21(本発明に従う)
ADCAとロジン酸誘導体(ジヒドロアビエチン酸)+シリカを含む機能化重炭酸塩とのブレンド物
実施例21については、PVCプラスチゾル組成物を、2種の発泡剤:機能化重炭酸塩(実施例 19A)対Lanxess製のGenitron(登録商標)SCE(70%のADCA+30%の分解開始剤)について重量比80:20での実施例19Aの機能化重炭酸ナトリウム及びADCAを使用してDispermat装置で調製した。機能化重炭酸塩実施例19Aを、重炭酸ナトリウム粒子をロジン酸誘導体(少なくとも52重量%のジヒドロアビエチン酸を含むDRT製のResigral 52)及び沈澱シリカ(Rhodia製のTixosil(登録商標)38AB)と共粉砕すること(共ミリングすること)によって製造して22ミクロンのD90を持った及び90重量%の重炭酸ナトリウム、9重量%のResigral 52、1重量%のシリカを含有する機能化重炭酸塩を得た。
【0361】
この実施例21において、プラスチゾル(2種の発泡剤を含む)の成分を高速ミキサーで分散させ、次に混合し、減圧下で脱気した。実施例21の、結果として生じた液体PVCペースト(プラスチゾル)を一片の紙(SAPPI)上に約0.75mmの厚さでスプレッドコートし、90又は120秒間200又は210℃にセットされたThermosol Werner Mathisオーブン中で加熱した。膨張比は、それがWerner Mathisオーブン加熱を通過する前のスプレッドコーテッド層の初期厚さ(ここでは約0.75mm)で割ったWerner Mathisオーブン加熱後の発泡生成物の厚さの比として計算した。
【0362】
実施例21C(対照-本発明に従わない)については、PVCプラスチゾル組成物を、ADCAのみを使用してDispermat装置で調製し、一片の紙(SAPPI)上に約0.75mmの厚さでスプレッドコートし、120秒間200℃にセットされたThermosol Werner Mathisオーブン中で加熱した。
【0363】
各々のプラスチゾル中の具体的な成分及び量、オーブン温度、ゲル化のための時間、オーブン加熱後の発泡生成物の厚さ、並びに膨張比を表12に提供し、ここで、「pcr」は、PVC樹脂の重量部を意味する。
【0364】
この実施例21は、大部分のADCAを機能化重炭酸塩によってPVCプラスチゾル調合物中で置換することができ、同じ調合物中に専らADCA+分解開始剤を使用する場合(対照実施例21Cを参照されたい)と同様の特性、例えば密度などを持った発泡PVCを生成することを例示する。実施例 21調合物に使用されたADCAの実際の量は、対照実施例 21Cでの2/3未満であった。
【0365】
【0366】
本明細書に引用される全ての特許出願、及び刊行物の開示は、それらが本明細書で記載されるものを補完する例示的、手順的な又は他の詳細を提供する程度まで、参照により本明細書によって援用される。
【0367】
参照により本明細書に援用される特許、特許出願、及び刊行物のいずれかの開示が、用語を不明確にさせ得る程度まで本明細書と矛盾する場合は、本明細書が優先されるものとする。
【0368】
出願において、ある要素若しくは構成要素が、列挙された要素若しくは構成要素のリスト中に含まれる及び/又はリストから選択されると記されている場合、本明細書で明示的に企画される関連実施形態の中で、その要素若しくは構成要素は同様に、個別の列挙された要素若しくは構成要素のいずれか1つであることができるか、又は明示的にリストアップされた要素若しくは構成要素のいずれか2つ以上からなる群からも選択できることが理解されるべきである。要素若しくは構成要素のリストに列挙されたいかなる要素若しくは構成要素も、そのようなリストから省かれ得る。さらに、本明細書中に記載されるプロセス又は方法の要素、実施形態、及び/又は特徴は、本明細書において明示的であるか暗示的であるかに関わらず、本教示の範囲及び開示から逸脱することなく様々なやり方で組み合わせることができることが理解されるべきである。
【0369】
したがって、保護の範囲は、上に説明された記載によって限定されないが、以下の特許請求の範囲によってのみ限定され、その範囲は、特許請求の範囲の対象の全ての同等物を含む。各々の及びあらゆる特許請求の範囲は、本発明の実施形態として本明細書に組み込まれる。したがって、特許請求の範囲は、さらなる説明であり、且つ、本発明の好ましい実施形態への追加である。
【0370】
本発明の好ましい実施形態が示され、且つ、記載されてきたが、それらの変更は、本発明の趣旨又は教示から逸脱することなく当業者によって行われ得る。本明細書に記載される実施形態は、単なる例示であり、限定的ではない。システム及び方法の多くの変形及び変更は、可能であり、本発明の範囲内である。