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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】ダンパユニット
(51)【国際特許分類】
   F02M 59/44 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
F02M59/44 E
F02M59/44 Z
F02M59/44 P
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020519936
(86)(22)【出願日】2019-05-17
(86)【国際出願番号】 JP2019019619
(87)【国際公開番号】W WO2019221261
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2018096190
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100206911
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 岳彦
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕亮
(72)【発明者】
【氏名】岩 俊昭
(72)【発明者】
【氏名】小川 義博
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0209289(US,A1)
【文献】国際公開第2017/022604(WO,A1)
【文献】特開2005-042554(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102015223159(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102016205428(DE,A1)
【文献】特開2015-232283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 59/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容空間に設置される内部に密閉空間を備えたダンパ本体を有してなるダンパユニットであって、
複数個積層される前記ダンパ本体と、前記ダンパ本体同士の間に配置される弾性部材と、両端のダンパ本体の外周縁部に渡って架設されるストッパーと、を有し、
前記ダンパ本体には、前記弾性部材の径方向の移動を規制する規制手段が形成されていることを特徴とするダンパユニット。
【請求項2】
前記ストッパーは、両端のダンパ本体の外周縁部に渡って架設される連結部を前記ダンパ本体の周方向に離間して複数有する請求項1に記載のダンパユニット。
【請求項3】
複数の前記連結部は、前記ダンパ本体の変形作用部を囲む環部材により一体に接続されている請求項2に記載のダンパユニット。
【請求項4】
前記ダンパ本体は、前記外周縁部に、前記環部材の内面または前記連結部の内面に当接する当接部を備えている請求項3に記載のダンパユニット。
【請求項5】
前記ダンパ本体の外周縁部には凹部が形成されており、前記ストッパーには前記凹部に係止される凸部を備えている請求項2または3に記載のダンパユニット。
【請求項6】
前記ストッパーの前記連結部は、前記ダンパ本体の外周縁部に軸方向から当接する係止片部と両端のダンパ本体に渡って延びる延設部とを備え、前記延設部の内径側が前記ダンパ本体の外周縁部における溶接部よりも外径側に配置され、前記ダンパ本体に形成された前記凹部は前記ダンパ本体の外周縁部における溶接部よりも内径側に位置する請求項5に記載のダンパユニット。
【請求項7】
前記連結部は、前記係止片部が前記ダンパ本体の内径方向かつ前記ダンパ本体の外周縁部に垂直に対向するように2本延設され、前記係止片部と前記延設部とによりコ字状に形成されている請求項6に記載のダンパユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ等による液体の送り出しによって生じる脈動を吸収するダンパユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、エンジン等を駆動する際、燃料タンクから供給される燃料をインジェクタ側へ圧送するために高圧燃料ポンプが用いられている。この高圧燃料ポンプは、内燃機関のカムシャフトの回転により駆動されるプランジャの往復移動によって燃料の加圧及び吐出を行っている。
【0003】
高圧燃料ポンプ内における燃料の加圧及び吐出の仕組みとして、先ず、プランジャが下降するときに吸入弁を開けて燃料入口側に形成される燃料チャンバから加圧室へ燃料を吸入する吸入行程が行われる。次に、プランジャが上昇するときに加圧室の燃料の一部を燃料チャンバへ戻す調量行程が行われて、吸入弁を閉じた後、プランジャがさらに上昇するときに燃料を加圧する加圧行程が行われる。このように、高圧燃料ポンプは、吸入行程、調量行程及び加圧行程のサイクルを繰り返すことにより、燃料を加圧してインジェクタ側へ吐出している。このように高圧燃料ポンプを駆動することによって燃料チャンバにおいて脈動が発生する。
【0004】
このような高圧燃料ポンプでは、燃料チャンバに発生する脈動を低減させるためのダンパ本体が燃料チャンバ内に内蔵されている。例えば、特許文献1では、2枚のダイアフラムの間に気体が封入された円盤状のダンパ本体を燃料チャンバ内に2つ配置している。ダンパ本体は、中央側に変形作用部を備え、この変形作用部が脈動を伴う燃料圧を受けて弾性変形することにより、燃料チャンバの容積を可変し、脈動を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-218264号公報(第7頁、第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1において、高圧燃料ポンプにおける燃料チャンバ部分は、装置本体と装置本体の一部を取り囲むカップ形状のカバー部材とにより外部と密閉された空間として形成されており、2つのダンパ本体の間には弾性部材が配置され、2つのダンパ本体は弾性部材により装置本体とカバーとにそれぞれ押し付けられて、2つのダンパ本体が燃料チャンバ内で動かない状態で設置可能となっている。しかしながら、特許文献1の2つのダンパ本体と弾性部材とを燃料チャンバ内に設置する作業としては、まず下方側のダンパ本体を装置本体の上に設置した後、当該ダンパ本体の上に弾性部材を設置し、次いで上方側のダンパ本体を弾性部材の上に載置した状態とし、最後にカバー部材を装置本体に固定する際に上方側のダンパ本体を下方側のダンパ本体の方向に押し付ける態様である。つまり、特許文献1にあっては、それぞれ別個の2つのダンパ本体と弾性部材を装置本体に対して順番に位置決めして積み重ねる作業が必要となり、これらダンパ本体の設置作業が煩雑であるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、簡単な作業で複数のダンパ本体を設置可能とするダンパユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明のダンパユニットは、
収容空間に設置される内部に密閉空間を備えたダンパ本体を有してなるダンパユニットであって、
複数個積層される前記ダンパ本体と、前記ダンパ本体同士の間に配置される弾性部材と、両端のダンパ本体の外周縁部に渡って架設されるストッパーと、を有することを特徴としている。
この特徴によれば、ダンパ本体同士の間に配置された弾性部材の付勢力と、両端のダンパ本体の外周縁部に渡って架設されるストッパーにより、積層された複数のダンパ本体と弾性部材とストッパーとが一体にユニット化され、このユニット化されたダンパユニットを配置するだけで収容空間への複数のダンパ本体の設置を簡単な作業で完了することができる。
【0009】
前記ストッパーは、両端のダンパ本体の外周縁部に渡って架設される連結部を前記ダンパ本体の周方向に離間して複数備える。
これによれば、ダンパ本体の周方向に複数配置された連結部により、積層された複数のダンパ本体を傾き無くユニット化できるとともに、連結部同士の間でダンパ本体同士の間の空間と収容空間とを連通させて、ダンパ本体の脈動抑制機能を十分に確保できる。
【0010】
複数の前記連結部は、前記ダンパ本体の変形作用部を囲む環部材により一体に接続されている。
これによれば、ダンパユニットの組み立てが容易になることに加え、複数の連結部の周方向の位置がずれることがなく積層された複数のダンパ本体を傾き無くユニット化することができる。
【0011】
前記ダンパ本体は、前記外周縁部に、前記環部材の内面または前記連結部の内面に当接する当接部を備えている。
これによれば、両端の一方のダンパ本体の外周縁部の当接部が環部材の内面に、他方のダンパ本体の外周縁部の当接部が連結部の内面にそれぞれ当接することで、径方向の相対移動が防止されるため、両端のダンパ本体を調芯することができ、複数のダンパ本体を適切な位置に設置することができる。
【0012】
前記ダンパ本体の外周縁部には凹部が形成されており、前記ストッパーには前記凹部に係止される凸部を備えている。
これによれば、ストッパーは凸部がダンパ本体の凹部に係止することで、ダンパ本体とストッパーとの径方向の相対移動が規制されるため、ダンパユニットの一体性を向上できる。
【0013】
前記ストッパーの前記連結部は、前記ダンパ本体の外周縁部に軸方向から当接する係止片部と両端のダンパ本体に渡って延びる延設部とを備え、前記延設部の内径側が前記ダンパ本体の外周縁部における溶接部よりも外径側に配置され、前記ダンパ本体に形成された前記凹部は前記ダンパ本体の外周縁部における溶接部よりも内径側に位置する。
これによれば、ダイアフラムの溶接部の外径側に位置する延設部により溶接部が保護されるとともに、延設部自体も溶接部に接触せず、ダンパ本体の脈動抑制機能を維持できる。
【0014】
前記連結部は、前記係止片部が前記ダンパ本体の内径方向かつ前記ダンパ本体の外周縁部に垂直に対向するように2本延設され、前記係止片部と前記延設部とによりコ字状に形成されている。
これによれば、各係止片部は周方向の2個所でダンパ本体の外周縁部に係止されるため、より調心作用を大きくすることができるとともに、係止片部がダンパ本体の外周縁部に垂直に対向し、かつ延設部とによりコ字状を成しているため、ダンパ本体との当接方向における強度が高く、ダンパユニットの形状を安定保持できる。
【0015】
前記ダンパ本体には、前記弾性部材の径方向の移動を規制する規制手段が形成されている。
これによれば、複数のダンパ本体と弾性部材との中心軸を一致させ、複数のダンパ本体を傾き無くユニット化できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例におけるダンパユニットが内蔵される高圧燃料ポンプを示す断面図である。
図2】ダンパユニットを構成する部材を示す分解断面図である。
図3】ダンパ本体に対する係止部の配置関係を示す平面図である。
図4】係止片部の屈曲変形の態様を示す一部拡大平面図である。
図5】(a)はストッパーに一方のダンパ本体を仮固定した状態を示す一部断面図であり、(b)はウェーブスプリングと他方のダンパ本体とを一方のダンパ本体に積層した状態を示す一部断面図である。
図6】(a)はダンパ本体同士を近接せしめ、係止片部を屈曲変形させた状態を示す一部断面図であり、(b)はウェーブスプリングの付勢力によりダンパ本体同士が離間し、ダンパユニットの組み立てが完了した状態を示す一部断面図である。
図7】設置前の収容空間を構成する装置本体とカバー部材とダンパユニットとを示す分解断面図である。
図8】収容空間へのダンパユニットの設置が完了した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係るダンパユニットを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例
【0018】
実施例に係るダンパユニットにつき、図1から図8を参照して説明する。
【0019】
本実施例のダンパユニット1は、図1に示されるように、燃料タンクから図示しない燃料入口を通して供給される燃料をインジェクタ側へ圧送する高圧燃料ポンプ10に内蔵されている。高圧燃料ポンプ10は、内燃機関の図示しないカムシャフトの回転により駆動されるプランジャ12の往復移動によって燃料の加圧及び吐出を行っている。
【0020】
高圧燃料ポンプ10内における燃料の加圧及び吐出の仕組みとして、先ず、プランジャ12が下降するときに吸入弁13を開けて燃料入口側に形成される燃料チャンバ11から加圧室14へ燃料を吸入する吸入行程が行われる。次に、プランジャ12が上昇するときに加圧室14の燃料の一部を燃料チャンバ11へ戻す調量行程が行われて、吸入弁13を閉じた後、プランジャ12がさらに上昇するときに燃料を加圧する加圧行程が行われる。
【0021】
このように、高圧燃料ポンプ10は、吸入行程、調量行程及び加圧行程のサイクルを繰り返すことにより、燃料を加圧して吐出弁15を開いてインジェクタ側へ吐出している。このとき、燃料チャンバ11において高圧と低圧を繰り返す脈動が発生する。ダンパユニット1は、このような高圧燃料ポンプ10の燃料チャンバ11において発生する脈動を低減するために使用される。
【0022】
図2に示されるように、ダンパユニット1は、ダイアフラム4とプレート5とステー部材6とで構成されるダンパ本体2と、ダンパ本体2と軸方向に対称配置されたダンパ本体2’と、ダンパ本体2,2’の間に配置される弾性部材としてのウェーブスプリング7弾性部材と、ストッパー8とを備えている。
【0023】
ダイアフラム4は、金属板をプレス加工して全体が均一な厚みを有して皿状に成形されている。径方向の中央側には軸方向に膨出する変形作用部19が形成され、変形作用部19の外径側には、平板環状の外周縁部20が変形作用部19から外径方向に延出して形成されている。ダイアフラム4は燃料チャンバ11内の流体圧力によって変形作用部19が軸方向に変形し易い構造となっている。
【0024】
プレート5は、ダイアフラム4を形成する金属板より大きな厚みの金属板をプレス加工して平板状に成形されている。内径側は段付きの平面形状となっており、外径側にはダイアフラム4の外周縁部20に重合される外周縁部21が形成されている。プレート5は厚みを有する平板状であり、燃料チャンバ11内の流体圧力によって変形し難い構造となっている。また、外周縁部21の内側には、ウェーブスプリング7の内径より若干小径に形成された規制手段としての環状の凸部22が形成されており、ダイアフラム4とウェーブスプリング7とを組み付けた際において、ウェーブスプリング7の径方向への移動が規制されている。
【0025】
ステー部材6は、図2に示されるように、ダイアフラム4の変形作用部19を周方向に取り囲み、軸方向に貫通する貫通孔が形成された環状の筒部23を備え、筒部23の外径側には、プレート5の外周縁部21に重合される外周縁部24が形成されている。また、筒部23には周方向に離間して貫通孔25が複数形成されている。更に、ステー部材6の外周縁部24におけるプレート5の外周縁部21と反対側の面には、環状の凹部24aが形成されている。
【0026】
図2に示されるように、ダイアフラム4の外周縁部20とプレート5の外周縁部21とステー部材6の外周縁部24とは周方向に溶接固定されてダンパ本体2の外周縁部2aを形成している。溶接部Wは外周縁部2aの最外縁に位置する。ダンパ本体2は、ダイアフラム4の外周縁部20とプレート5の外周縁部21とが溶接固定されることで、その内部が密封されている。また、これらダイアフラム4とプレート5とステー部材6とを一体に固定しておくことで、ダンパユニット1の組み立てが容易となるばかりか、ダイアフラム4がステー部材6の筒部23に衝突して破損することを防止できる。
【0027】
図2図5に示されるように、ウェーブスプリング7は、環状の板状鋼線が波状に変形されて形成されており、軸方向に付勢力を発揮可能となっている。
【0028】
図2図3に示されるように、ストッパー8は、他方のステー部材6’の環状の筒部23を外径側において同心的かつ周方向に取り囲み、軸方向に貫通する貫通孔が形成された環状の円筒部(環部材)26を備え、円筒部26の周方向に離間して係止部27が3つ等配されている。
【0029】
係止部27は、円筒部26の軸方向の端部26bから外径方向に張出し、かつ軸方向に延びて形成されている。詳しくは、係止部27は、円筒部26と同じ一枚の板金から切り出されて構成されており、円筒部26の軸方向の端部26bから軸方向内側(端部26a側)寄りを基点とする切片が外径方向に屈曲された後下方に折り返してL字形に形成されている。
【0030】
係止部27は、円筒部26を構成する切片との境界で外径方向に屈曲されて形成された屈曲部28と、この屈曲部28から外径方向に斜めに向けて延設される平面状に延設された接続部29と、接続部29の端部から屈曲されて円筒部26と平行に延設された延設部30と、延設部30の自由端部の左右に延びる係止片部31,31と、から主に構成されている。
【0031】
図5に示されるように、係止片部31,31は、平板状に形成されており、先端側の上端に突出部(凸部)31a,31aを備えている。図5に示されるように、係止片部31,31は、延設部30との境界部分を内側に(図5(a)において破線で示す部分を基準として内径側に)略90度屈曲変形させることで、ダンパ本体2の内径方向に向け、この屈曲変形させた状態において係止片部31,31は延設部30とでコ字状を成す。また、図4図6(b)とに示されるように、係止片部31,31は屈曲された状態において、ダンパ本体2の外周縁部2aに垂直に対向し、係止片部31,31に形成された突出部31a,31aがステー部材6’の環状の凹部24aにそれぞれ係止されて、ストッパー8とダンパ本体2’との径方向における相対移動が規制される。
【0032】
また、図5に示されるように、円筒部26の端部26bは、ステー部材6の環状の凹部24aに係止されて、ストッパー8とダンパ本体2との径方向における相対移動が規制される。このように係止部27は、係止片部31,31と円筒部26の端部26bと、がダンパ本体2,2’の外周縁部2a,2a’を軸方向両側から挟むように位置し、係止片部31,31と円筒部26の端部26bと、これらを繋ぐ延設部30とにより、ダンパ本体2,2’の外周縁部2a,2a’に架設されてこれらの離間方向の移動を規制する連結部が構成されている。
【0033】
また、ストッパー8の円筒部26には、ステー部材6’の筒部23に形成された貫通孔25と対応する位相で周方向に離間して切欠状の開口部32が複数形成されている。
【0034】
続いて、図5図6を用いてダンパユニット1の組み立て手順を説明する。まず図5(a)に示されるように、一方のダンパ本体2’のステー部材6’の筒部23をストッパー8の円筒部26の内側に嵌合させ、ダンパ本体2’とストッパー8とを仮固定する。このとき、円筒部26の端部26bをステー部材6’の外周縁部24に形成された凹部24a内に配置させる。次いで図5(b)に示されるように、ダンパ本体2’に重ねてウェーブスプリング7と他方のダンパ本体2とを配置する。
【0035】
次に、図6(a)に示されるように、ストッパー8を軸方向に押してダンパ本体2’とダンパ本体2とを近接せしめ、ウェーブスプリング7をダンパ本体2’のプレート5’とダンパ本体2のプレート5とにより圧縮させた状態とし、係止片部31,31を内径側に屈曲変形させる。
【0036】
係止片部31,31を内径側に屈曲変形させた状態とすることで、ダンパ本体2’とダンパ本体2とはウェーブスプリング7の付勢力により離間される方向に移動され、図6(b)に示されるように、係止片部31,31の突出部31a,31aがステー部材6の外周縁部24に形成された凹部24aに軸方向外側(すなわち筒部23側)から係止され、ダンパ本体2とダンパ本体2’とウェーブスプリング7とストッパー8とが一体にユニット化され、ダンパユニット1の組み立てが完了する。
【0037】
一方のダンパ本体2’は、ストッパー8に仮固定されて軸方向への移動が規制され、他方のダンパ本体2は、ストッパー8の係止部27の延設部30に外周縁部2aが案内されてストッパー8に対して相対移動可能となっている。
【0038】
続いて、ダンパユニット1の設置工程について、図7図8を用いて説明する。高圧燃料ポンプ10における燃料チャンバ11部分は、装置本体16と装置本体16の一部を取り囲むカバー部材17とから構成されている。カバー部材17のカバー部材本体17aの内側には、ダンパユニット1の外周縁及び軸方向端部に当接可能なダンパストッパ18が取付けられている。
【0039】
ダンパユニット1のステー部材6を装置本体16の端面16aに載置する。次いで、カバー部材17を上方から装置本体16に当接させた後、液密に固定する。この当接動作時に、装置本体16に近接移動されるカバー部材17を構成するダンパストッパ18の内面18aがストッパー8の円筒部26の端部26aに当接し、その後カバー部材17の移動に伴いストッパー8が押圧される。これにより、ストッパー8の円筒部26の端部26bがステー部材6’の外周縁部24を装置本体16方向に押圧し、装置本体16に当接されたステー部材6からの反力によりダンパ本体2とダンパ本体2’とが近接せしめられる。
【0040】
図8に示されるように、ダンパ本体2とダンパ本体2’同士が近接することで、ウェーブスプリング7が圧縮されるとともに、ダンパ本体2の外周縁部2aと係止部27の係止片部31,31とが離間する。カバー部材17と装置本体16との固定が完了した状態では、ダンパ本体2とダンパ本体2’がウェーブスプリング7の軸方向への付勢力により、軸方向に離間方向に押し付けられ、環状の面を構成するストッパー8の円筒部26の端部26aがカバー部材17のダンパストッパ18の内面18aに押圧され、同様に環状の面を構成するステー部材6の端部23aが装置本体16の端面16aに押圧され、ダンパユニット1が燃料チャンバ11部分に安定的に保持されることになる。
【0041】
また、設置時においてダンパ本体2はステー部材6の筒部23がストッパー8の円筒部26の内周面26cに当接して、ストッパー8との径方向の移動が規制され、ダンパ本体2’はステー部材6’の筒部23が係止片部31,31の先端部31bに当接して、径方向の移動が規制された状態となる。つまりストッパー8によりダンパ本体2,2’同士の径方向の相対移動が規制される。
【0042】
次いで、高圧と低圧とを繰り返す脈動を伴う燃料圧を受けた際のダンパユニット1の脈動吸収について説明する。ダンパ本体2,2’の内部の密閉空間内には、アルゴン及びヘリウム等から構成される所定圧力の気体が封入されている。尚、ダンパ本体2,2’は、内部に封入される気体の内部圧によって容積変化量の調整を行うことにより、所望の脈動吸収性能を得ることができる。
【0043】
脈動に伴う燃料圧が低圧から高圧になり、ダイアフラム4,4に燃料チャンバ11側からの燃料圧がかかると、変形作用部19が内側に押し潰され、ダンパ本体2,2’内の気体は、圧縮される。この変形作用部19が脈動を伴う燃料圧を受けて弾性変形することにより、燃料チャンバ11の容積を可変し、脈動を低減している。
【0044】
また、ウェーブスプリング7は、プレート5に形成された規制手段としての凸部22により径方向への移動が規制されているため、ダンパ本体2,2’とウェーブスプリング7との中心軸を一致させ、ダンパ本体2,2’を均一に離間方向にそれぞれ押圧することができ、複数のダンパ本体2,2’を傾き無くユニット化できる。
【0045】
また、ステー部材6’の筒部23に形成された貫通孔25と、ストッパー8の円筒部26に形成された開口部32とが重なる様にステー部材6’とストッパー8とを組み付けることで、これら貫通孔25と開口部32を通じてステー部材6’の外側すなわち燃料チャンバ11内部空間と、ステー部材6の内側すなわちダンパ本体2’の周囲の空間とが連通する。
【0046】
また、ダンパ本体2の周囲の空間は、ステー部材6の貫通孔25を通じてステー部材6の外側と連通しており、ステー部材6の隣接する貫通孔25同士の間に係止部27を配置することで、ダンパ本体2の周囲の空間とステー部材6の外側との間を繋ぐ流路を阻害することがない。
【0047】
このように、カバー部材17及び装置本体16に当接する部材を環状として、ダンパユニット1を燃料チャンバ11内に安定的に保持可能としながら、燃料チャンバ11内に生じる高圧と低圧を繰り返す脈動を伴う燃料圧をダンパ本体2,2’に直接させ、十分な脈動低減性能を確保することができる。
【0048】
以上説明したように、ダンパ本体2,2’同士の間に配置されたウェーブスプリング7の付勢力と、ダンパ本体2,2’の外周縁部2a,2a’に渡って架設されるストッパー8により、積層された複数のダンパ本体2,2’とウェーブスプリング7とストッパー8とが一体にユニット化され、このユニット化されたダンパユニット1を配置するだけで燃料チャンバ11内へ複数のダンパ本体2,2’を簡単に設置することができる。また、燃料チャンバ11内への複数のダンパ本体2,2’の設置を迅速に完了できるため、燃料チャンバ11内への異物の侵入を防止することができる。
【0049】
また、ストッパー8は、ダンパ本体2,2’の外周縁部2a,2a’に渡って架設される連結部をダンパ本体2,2’の周方向に離間して複数備えることから、積層された複数のダンパ本体2,2’を傾き無くユニット化できるとともに、連結部を構成する係止部27同士の間でダンパ本体2,2’同士の間の空間と燃料チャンバ11内とを連通させて、ダンパ本体2,2’の脈動抑制機能を十分に確保できる。加えて、これら係止部27は、円筒部26より外径側に突出して形成されていることから、仮に振動などでダンパユニット1が径方向に移動した際にあっては、ダンパ本体2,2’の外周縁部2a,2a’より先に係止部27がカバー部材17に当接するため、ダンパ本体2,2’の破損を効果的に防止することができる。
【0050】
また、ストッパー8は、複数の連結部が円筒部26を構成する環部材により一体に接続された構造となっているため、ダンパユニット1の組み立てが容易になることに加え、複数の連結部の周方向の位置を規定して、積層された複数のダンパ本体2,2を傾き無くユニット化することができる。
【0051】
また、ダンパ本体2,2’は、ダイアフラム4の変形作用部の外径側に軸方向に延びるステー部材6を備えており、ストッパー8の円筒部26の内周面26cと係止片部31の先端部31bはステー部材6の筒部23とにそれぞれ当接して、径方向の相対移動が防止されるため、ダンパ本体2,2’を調芯することができ、燃料チャンバ11内の適切な位置に設置することができ、適切な脈動抑制機能を発揮させることができる。加えて、ストッパー8の円筒部26の内周面26cと係止片部31の先端部31bは直接ダイアフラム4に当接しない構造であるため、ダイアフラム4の破損を防止できる。
【0052】
また、ストッパー8の延設部30は、内径側30aがダンパ本体2の外周縁部2aにおける溶接部Wから外径側に離間しており、ダンパ本体2に形成された凹部24aはダンパ本体2の溶接部Wよりも内径側に位置しているため、ダイアフラム4より先に延設部30がカバー部材17に接触して、ダイアフラム4の最外縁に位置する溶接部Wとカバー部材17との接触を防ぐとともに、ストッパー8が溶接部Wに接触しない構造とすることができ、溶接部Wの損傷を確実に防止でき、ダンパ本体の脈動抑制機能を維持できる。
【0053】
また、係止片部31,31はダンパ本体2の内径方向かつダンパ本体2の外周縁部2aに垂直に対向するように2本延設されていることから、周方向の複数個所でダンパ本体2の外周縁部2aに係止されるため、より調心作用を大きくすることができるとともに、係止片部31,31がダンパ本体2の外周縁部2aに垂直に対向し、かつ延設部30とによりコ字状を成していることから、ダンパ本体2との当接方向に対する強度が高く、ダンパユニット1の形状を安定保持できる。
【0054】
また、ダンパ本体2の外周縁部2aには凹部24aが形成されており、円筒部26の端部26bが係止され、ダンパ本体2’の外周縁部2a’の凹部24aには係止片部31,31に形成された突出部31a,31aが係止される構造となっているため、ダンパ本体2,2’とストッパー8との径方向の相対移動が規制されるため、ダンパユニット1の一体性を向上できる。
【0055】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0056】
例えば、前記実施例においてストッパー8における連結部は、係止片部31,31と円筒部26の端部26bと、これらを繋ぐ延設部30とで、ダンパ本体2,2’の外周縁部2a,2a’に架設されて構成されているが、これに限らず、例えば円筒部26の端部26bの代わりに係止部27の屈曲部28をダンパ本体2の外周縁部2aに当接させる構成としてもよい。
【0057】
また、円筒部26の端部26bと係止片部31,31のように、ダンパ本体2,2’の外周縁部2a,2a’にそれぞれ当接する部位と、これら部位を繋ぐ延設部30のような部位を備えて連結部として機能する部材をダンパ本体2の周方向に複数配置し、これら複数配置される連結部として機能する部材によってダンパ本体2,2’とウェーブスプリング7を一体のダンパユニット1にユニット化するストッパーを構成することで、円筒部26のように連結部を一体に接続する環部材を省略してもよい。さらに、連結部と環部材とを別体とし、これらをネジなどの固定手段で固定してストッパーを構成してもよい。
【0058】
また、ストッパー8は、係止部27が周方向に複数配置される構成であれば、係止片部31は係止部27に対して1つのみ設けられる構成であってもよい。
【0059】
また、前記実施例においてストッパー8は、係止部27を周方向に3つ離間して配置する構成で説明したが、これに限らず、例えば4つ以上離間して配置してもよいし、反対に係止部を全周に渡って形成してもよい。尚、係止部を全周に渡って形成した場合、その延設部に相当する箇所に径方向に貫通する孔を設けて、ダンパ本体2,2’同士の間の空間と燃料チャンバ11内とを連通させて、ダンパ本体2,2’の脈動抑制機能を十分に確保することが好ましい。
【0060】
また、ダンパ本体2,2’とストッパー8との径方向の相対移動を規制する構成としては、前記実施例のダンパ本体2の外周縁部2aに形成された凹部24aに限らず、例えば円筒部26の端部26bやダンパ本体2’の外周縁部2a’の凹部24aには係止片部31,31に形成された突出部31a,31aが係止される凸部としてもよい。さらに、ストッパー8における凹部24aに係止される構成としては、突出部31aや円筒部26の端部26bに限らず、例えば円筒部の端部に周方向に離間して複数の凸部を形成し、凹部24aに係止させる構成であってもよく、凹部についても周方向に連続する形状に限らず当該凸部に対応する位置に離間して形成されていてもよい。
【0061】
また、前記実施例におけるダンパユニット1は、積層される2つのダンパ本体2,2’を備えているが、これに限らず、例えば3つ以上のダンパ本体を積層して構成してもよく、この場合ストッパー8は、両端のダンパ本体に渡って架設される構成とする。
【0062】
また、ダンパ本体2にはステー部材6を備えず、ダイアフラム4の外周縁部にストッパー8の円筒部26及び係止部27の係止片部31,31が直接当接される構成としてもよい。尚、ステー部材を省略した場合に、ダンパ本体2とストッパー8との径方向の相対移動を規制するためには、ストッパー8の円筒部26及び係止部27の係止片部31,31がダイアフラム4の変形作用部19に直接当接しないように、ダイアフラム4の外周縁部にストッパー8の円筒部26及び係止部27の係止片部31,31と当接する当接部を形成することが好ましい。
【0063】
また、ダンパ本体2,2’は変形可能なダイアフラム4と変形し難いプレート5とによる構成に限らず、例えば変形可能なダイアフラムを対称に2枚貼り合わせて構成されていてもよい。この場合、ダンパ本体同士の間に配置される付勢手段は、ダイアフラムの変形作用部を避けた外周縁部に当接する構成とし、その構成はウェーブスプリングに限らず、例えばコイルスプリングを周方向に複数の配置したものであってもよい。
【0064】
また、ダンパユニット1は、ストッパー8の円筒部26の端部26aをカバー部材17のダンパストッパ18の内面18aに当接させ、一方のステー部材6の端部23aを装置本体16の端面16aに当接させるように配置して燃料チャンバ11内に設置される例で説明したが、反対に一方のステー部材6をカバー部材17に、ストッパー8を装置本体16に当接させるように配置してもよい。
【0065】
また、前記実施例においては、ストッパー8の円筒部26の端部26aがステー部材6’の端部23aよりも軸方向の外側に位置する(軸方向において端部26aが端部23aから突出する)構成で説明したが、ステー部材6’の端部23aがストッパー8の円筒部26の端部26aよりも軸方向の外側に位置する(軸方向において端部23aが端部26aから突出する)構成としてもよい。
【0066】
また、前記実施例において、ダイアフラム4の外周縁部20とプレート5の外周縁部21とステー部材6の外周縁部24とが周方向に一体に溶接固定されている例で説明したが、これに限らず、例えばダイアフラム4の外周縁部20とプレート5の外周縁部21とを溶接固定とし、プレート5の外周縁部21とステー部材6の外周縁部24とは固定しない構成としてもよい。
【0067】
また、一方のダンパ本体2と他方のダンパ本体2’とは同形状でなくてもよい。
【0068】
また、前記実施例では、ダンパユニット1は、高圧燃料ポンプ10の燃料チャンバ11に設けられ、燃料チャンバ11内の脈動を低減する態様として説明したが、これに限らず、例えばダンパユニット1は、高圧燃料ポンプ10に接続される燃料配管等に設けられることにより脈動を低減してもよい。
【0069】
また、ウェーブスプリング7の径方向の移動を規制する規制手段としては、環状の凸部に限らず、環状に限らず複数点在する凸部でもよいし、環状の凹部でもよい。
【0070】
また、延設部30は、ダンパ本体2の外周縁部2aと同心円の円弧状に形成されていてもよく、これによれば延設部30の外径側をカバー部材17の内周面に沿わせて当接させることで、ダンパユニット1を燃料チャンバ11内の適切な位置に配置できる。
【符号の説明】
【0071】
1 ダンパユニット
2,2’ ダンパ本体
2a,2a’ ダンパ本体外周縁部
4 ダイアフラム
5 プレート
6 ステー部材
7 ウェーブスプリング
8 ストッパー
10 高圧燃料ポンプ
11 燃料チャンバ
12 プランジャ
13 吸入弁
14 加圧室
15 吐出弁
16 装置本体
17 カバー部材
19 変形作用部
22 凸部(規制手段)
23 筒部(当接部)
23a 端部(凸部)
24 外周縁部
24a 凹部
26 円筒部
26b 端部(連結部)
26c 内周面
27 係止部(連結部)
30 延設部(連結部)
30a 内径側
31,31 係止片部(連結部)
31b 先端部
31a,31a 突出部(凸部)
W 溶接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8