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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】改良された外科用の開口器
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/24 20060101AFI20230306BHJP
   A61B 1/24 20060101ALI20230306BHJP
   A61B 13/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
A61B17/24
A61B1/24
A61B13/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020524093
(86)(22)【出願日】2018-10-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 IB2018058428
(87)【国際公開番号】W WO2019082170
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-10-25
(31)【優先権主張番号】102017000122318
(32)【優先日】2017-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】508306026
【氏名又は名称】フォンダツィオーネ イエッレチチェッセ カ’グランダ-オスペダーレ マッジョーレ ポリクリニコ
【氏名又は名称原語表記】Fondazione IRCCS Ca Granda-Ospedale Maggiore Policlinico
【住所又は居所原語表記】Via Francesco Sforza,28,I-20122 Milano(IT)
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】マリオ マントバーニ
(72)【発明者】
【氏名】ロレンツォ ピニャータロ
(72)【発明者】
【氏名】ビットーリオ リナルディ
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/054301(WO,A2)
【文献】特表2017-500929(JP,A)
【文献】米国特許第4151837(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0296654(US,A1)
【文献】国際公開第2016/013274(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/077888(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/24 ― 1/253
A61B 1/32
A61B 13/00
A61B 17/02
A61B 17/24
A61C 19/04 ― 19/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の口蓋領域及び口腔咽頭領域を露出するための開口器(1)であって、
前記開口器(1)は、使用時に患者の口の周辺へ配置されるのに適していると共に該口の最大開口よりも大きいサイズとされているフレーム(2)と、患者の口腔内に挿入可能かつ前記フレーム(2)に対して移動可能な舌圧子ブレード(21、30)と、を備え、
前記フレーム(2)は、
下顎クロスメンバ(3)と、
上顎クロスメンバ(5a、5b)と、
前記下顎クロスメンバ(3)と前記上顎クロスメンバ(5a、5b)とを連結する2つの直立部(4a、4b)と、
使用時に上顎大臼歯をかけるのに適した上方側アーム(8a、8b)と、を備え、
前記舌圧子ブレード(21、30)は、
患者の舌を下顎の床部に押し下げるように構成された舌圧子(21)と、
前記舌圧子ブレード(21、30)の長さを延長するために、前記舌圧子(21)に対して長手方向にスライド可能なスプーン形状要素(30)と、を備え、
前記スプーン形状要素(30)は、前記舌圧子ブレード(21、30)の幅を、下顎大臼歯の間の前記舌圧子ブレード(21、30)の通過を可能にするような最小幅から全ての舌根領域を包含することを可能にするような最大幅まで変化させるために、移動可能な2つの細長要素(31a、31b)によって構成されている、開口器。
【請求項2】
2つの上顎クロスメンバ(5a、5b)と、2つの上方側アーム(8a、8b)と、を備え、各アームは、2つの前記上顎クロスメンバ(5a、5b)の1つと移動可能に連結された、請求項1に記載の開口器。
【請求項3】
前記フレーム(2)は、前記上顎クロスメンバ(5a、5b)の長さを調節するための調整手段(6a、6b)を備えた、請求項1又は2に記載の開口器。
【請求項4】
前記フレーム(2)は、2つの前記上方側アーム(8a、8b)を調節するための調整手段(7a、7b)を備え、該手段は、2つの前記上方側アーム(8a、8b)が、各前記上顎クロスメンバ(5a、5b)の長手方向軸の周りを回転すること、及び/又は、その長さを変更すること、を許容するものとされた、請求項2又は3に記載の開口器。
【請求項5】
前記フレーム(2)は、前記2つの直立部(4a、4b)の長手方向軸に対する、前記2つの直立部(4a、4b)の長さ及び回転を調整するための調整手段(41a、41b)を備えた、請求項1から請求項4の何れか1項に記載の開口器。
【請求項6】
前記舌圧子(21)は、舌の前部を下向きに押す方向を調整することを可能にするために、前記フレーム(2)に対して上側/下側方向に回転可能である、請求項1から請求項5の何れか1項に記載の開口器。
【請求項7】
各アーム(8a、8b)は、犬歯を通り過ぎるのに適していると共に各アーム(8a、8b)の端部が、上顎小臼歯及び上顎大臼歯へ横方向に寄りかかることを確実にするのに適している湾曲領域(9a、9b)を有する、請求項1から請求項6の何れか1項に記載の開口器。
【請求項8】
前記舌圧子(21)は、前記スプーン形状要素(30)を連結するための移動可能な連結手段を備えた、請求項1から請求項7の何れか1項に記載の開口器。
【請求項9】
前記2つの細長要素(31a、31b)は、横断面における横移動(T)を可能にするために、ピン(35)にヒンジで連結されている、請求項1から請求項8の何れか1項に記載の開口器。
【請求項10】
前記舌圧子(21)は、内側において前記2つの細長要素(31a、31b)の前記ピン(35)がスライド可能な長手方向溝(27)を備えた、請求項9に記載の開口器。
【請求項11】
前記長手方向溝(27)は、前記2つの細長要素(31a、31b)の前記ピン(35)との連結を可能にするのに適した穴(28)を備えた、請求項10に記載の開口器。
【請求項12】
前記舌圧子(21)は、前記2つの細長要素(31a、31b)が長手方向にスライドするのに適した2つの横ガイド(26)を備えた、請求項1から請求項11の何れか1項に記載の開口器。
【請求項13】
前記2つの細長要素(31a、31b)は、口腔の反対側の端部においてばね(33)を備え、前記ばね(33)は、前記最大開口の幅の構成において前記2つの細長要素(31a、31b)が結合した状態を保つのに適している、請求項1から請求項12の何れか1項に記載の開口器。
【請求項14】
前記舌圧子(21)は、該圧子(21)に対して実質的に垂直なグリップ(23)を備え、前記グリップ(23)は、前記下顎クロスメンバ(3)に固定された筐体(10)においてスライド可能とされている、請求項1から請求項13の何れか1項に記載の開口器。
【請求項15】
前記筐体(10)は、前記舌圧子(21)が、様々な位置において調整/停止され得るように、前記グリップ(23)のラック(24)に作用する停止要素(12)を備えた、請求項14に記載の開口器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された外科用の開口器(mouse gag)に関しており、開口器は、金属製アーチと、舌圧子ブレードと、を備え、口蓋構造及び口峡峡部の最適な露出を得ることを可能にすると共に、口蓋及び口腔咽頭の手術の実行を一般的に促進すると共に、特に閉塞性睡眠障害の手術の実行を促進する。
【背景技術】
【0002】
通常、上気道の壁に取り付けられた筋肉は、空気の肺への流れを許容するように吸気の間に気道を開放しておく役割も有する。軟口蓋、口蓋垂、咽頭側壁及び舌の筋肉が、上気道の壁のための剛性を十分に保証することができないときには、弛緩した組織は、崩壊し、空気が通過した際に簡単に接近すると共に振動し、いびき又は、さらにひどい場合には、上気道の完全な閉塞を生み出すと共に空気の肺への通路を妨害し、無呼吸を生み出す。いびき及び/又は閉塞性無呼吸の治療の1つは、手術であり、解体(demolition)/切除及び解体又は切除のない機能的な種類の両方である。近年(2012年)、解体又は切除のない、軟口蓋咽頭リフト(velo-uvulo-pharyngeal lift)(VUPLと称する。)又は、ローマンブラインドテクニック(Roman Blind technic)と称する新しい外科手術が導入されており、線維骨性構造(fibro-osseous structures)、この場合は、後鼻棘、翼突下顎縫線及び翼突鉤、の特定の周囲にしっかりと固定することができる縫合糸の使用を通じた軟口蓋及び咽頭側壁の吊り下げ、筋肉の折り畳みによる短縮、進展(前進、advancement)及び硬化(stiffening)を引き起こす。
【0003】
そのような外科的処置は、当初は伝統的な非吸収性の糸で実行され、後には(2013年)、口腔領域及び咽頭領域で従前には使用されたことのない完全に革新的な縫合材料のおかげで、実質的にかなりの進化を遂げた。革新的な縫合材料である、「返しが付けられた縫合糸」、すなわち「セルフロック式」の縫合糸は、その壁に沿って彫刻された特殊な針状体の存在によって、結び目を付ける必要なく、かなり均一な方法で組織に作用することができる。
【0004】
この種の手術を適切な方法によって困難なく実行できるようにするためには、手術を行う咽頭-口蓋領域の最適な露出を提供するために特別に設計された道具を利用できることが不可欠である。
【0005】
現在、上顎と下顎(lower jaw、mandible)との間に配置された開口器が、口咽頭腔において実行される外科的処置の間に、口を開けたままにしておくために使用されており、開口器は、場合によっては、舌圧子ブレード及び/又は他の付属品を伴って設けられている。
【0006】
既知の開口器は、例えば、マカバーの特許文献1、デイビス-メイヤ、ディングマン、クロチャード、又は参考文献2のものであり、上部アーチの前歯に寄りかかっている(resting on)ギャグ(gag)にしっかりと固定された舌圧子ブレードを備えている。
【0007】
例えば、マカバーのギャグは、65年以上に亘って使用されており、図1に示されている。
【0008】
上部アーチの前歯要素に寄りかかることを活用する、これらの伝統的な開口器の欠点は、口蓋後部(retropalatal)に由来するいびき及び閉塞性無呼吸のための近代手術において最も重要となる「硬口蓋」-「軟口蓋」の接合部の適切な露出を有することが不可能なことである。
【0009】
既知の開口器のさらなる欠点は、開口器は、舌根、すなわち、中央部分及び両方の側部を十分に同時に進展させることができないため、舌扁桃溝(glossotonsillar sulcu)レベル(舌扁桃と口蓋扁桃との間の移行部位)において舌根の最適かつ両側の露出を許容することができないことである。
【0010】
実際、舌根(扁桃体-舌溝の両方を含む)を完全に包含するための適切なブレードを備えた舌圧子を設けても、通常、舌底の寸法に対してかなり小さい寸法を備える、両側の下顎大臼歯を分離する空間を通過しないため、そのレベルで配置することは決してできなかった。それゆえ、一旦、舌根の中央部分が下げられると、減少した幅を伴い、大臼歯間の間隔(inter-molar distance)に対応するブレードを必ず使用する必要があり(単独、又は、より良いのは、両側部分の一方だけ)、(図1にはっきりと示されているように)側部の一方又は両方が舌圧子を回避して、再度上向きに盛り上がることを防ぐことはでない。このように、下部にある側部の解剖学的構造、特に、口蓋扁桃、咽頭口蓋筋及び翼状縫線を覆い、手術を妨害する。
【0011】
既知の開口器のさらなる欠点は、上顎切歯にかけることによって、硬口蓋と軟口蓋との間の接合部の直視を妨げるのに加えて、より適切な露出を得ようとする試みの間に、これらの歯科要素に損傷(lesion)を引き起こしうることにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許第2476675号明細書
【文献】国際公開第2009/054301号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、硬口蓋-軟口蓋の接合部を適切に露出すると共に扁桃-舌溝の側部に位置する解剖学的構造を適切に、かつ、両側を露出することができる改良された外科用の開口器を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、手術道具を伴う、動作領域、口蓋及び口峡峡部への自由なアクセスを可能にすることであり、解剖学的構造の周囲の最適な露出のおかげで、舌、上顎及び下顎に作用する口腔の壁を安全かつ効果的に分離する。
【0015】
本発明のもう一つの目的は、上切歯を損傷するリスクを防ぐことである。
【0016】
本発明のさらなる目的は、舌根の外側部分の片側又は両側の外転(eversion)の形成を防ぐことであり、外科医には、かなり迷惑な欠点であり、舌根自体の幅の全体を覆うには不十分な幅を有するブレードを備えて設けられた従来の舌圧子を使用する場合は防ぐことができない。
【0017】
本発明のもう一つの目的は、口腔内において安全かつ簡単に挿入かつ除去できる改良された外科用開口器を提供することである。
【0018】
本発明のさらなる目的は、使用するのに非常に融通が利き、かつ、患者の口腔の様々な形状に迅速かつ簡単に適応する器具を有することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、本発明は、添付の請求項1の記載によって、患者の口蓋領域及び口腔咽頭領域を露出するための外科用の開口器を説明する。
【0020】
外科用の開口器の他の有益な態様は、従属項2から15に含まれている。
【0021】
本発明は、特定の手術(いびき及び無呼吸)及び従来の手術(例えば、扁桃摘出処置、口腔咽頭手術、等)の対象となる全ての口腔、口蓋及び咽頭構造を適切に露出することの主な技術的効果を与える。
【0022】
特に、発明は、以下に記載される技術的効果を達成する。
-歯の損傷、特に、上顎切歯のリスクを低減すること。
-軟組織の筋肉が剛性を与えることができないときに、つぶれることなく、吸気によって生成される負の内圧を耐えるのに十分な基本的な剛性を与えることができるように、上気道の口蓋及び咽頭管を形成する軟組織を自然で安定した解剖学的グリップ(後鼻棘、翼突畳、翼突下顎縫線)に固定できる張力構造を作り出すために、返しがつけられた縫合糸を伴う新しい手術の対象となる解剖学的構造の露出を最適化すること。
-下顎大臼歯の間隔(通常、舌根の幅よりも小さい)によって調整されない適切な幅を備えた舌圧子ブレードを使用して舌根が舌扁桃溝までの完全な進展を許容すること。
【0023】
言及される本発明の技術的効果/利点及び本発明の他の技術的効果/利点は、近似的かつ非限定的な例として添付の図面を参照して設けられる実施形態の例の以下に提供される説明からさらに詳細に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、既知の外科用の開口器を示す。
図2図2は、本発明の第1の実施形態による外科用の開口器の後面斜視図を示す。
図3図3は、図2の外科用の開口器の前面斜視図を示す。
図4図4は、図3の開口器の詳細を示す。
図5図5は、口腔内に挿入されると共に舌を押された舌圧子ブレードを伴う開口器の側断面図を示す。
図6図6は、図5の開口器を上から見た図を示す。
図7図7は、口腔の外側へ向けてスライドされた舌圧子ブレードを伴う図5の開口器を示す。
図8図8は、図7の開口器を上から見た図を示す。
図9図9は、本発明による舌圧子ブレードを示す。
図10図10は、図9の舌圧子ブレードのA-A線に沿った断面の側面図を示す。
図11図11は、図10の舌圧子ブレードのB-B線に沿った断面の後面図を示す。
図12図12は、舌圧子ブレードの2つの要素の結合部分に関する詳細を示す。
図13図13は、図13は、本発明による外科用の開口器の部分的な分解図を示す。
図14図14は、フレームに対する舌圧子ブレードによって想定される3つの異なる角度を示す開口器の側断面図を示す。
図15図15は、本発明による外科用の開口器の第2の実施形態の後面斜視図を示す。
図16図16は、図15の外科用の開口器の前面斜視図を示す。
図17図17は、図15及び図16の舌圧子ブレードを上から見た図を示す。
図18図18は、図15及び図16の舌圧子ブレードを下から見た図を示す。
図19図19は、舌圧子ブレードの部分的な分解図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
第1の実施形態では、本発明は、使用する間ずっと患者の口の周囲に配置されるように適合された口囲支持アーチ又はフレーム2を備えた、患者の口蓋領域及び口腔咽頭領域の露出のための外科用の開口器1を表す。
【0026】
以下に示されるように、「垂直(vertical)」という用語は、実質的に同じことを意味するが、歯の配置と同一の方向を意味せず、本明細書では、垂直方向は、つまり、「上顎へ向けて」のように「上方側(upper or above)」として定義されると共に、反対の垂直方向は、つまり、「下顎の、下顎へ向けて」のように「下方側(lower or downwards)」として定義される。言い換えると、垂直方向は、正中矢状面にある(垂直方向に配置されると共に頭蓋骨を反射鏡に映したような左右の半分に分割するように、頭頂間の縫合線を通過している。)。
【0027】
「横方向(Lateral)」は、口腔の幅に対応する方向を意味しており(右側の下顎大臼歯と左側の下顎大臼歯との間の距離)、さらに、横方向は、つまり、「頬へ向けて」のように「頬(buccal)」方向として定義されると共に、反対の長手方向は、つまり、「舌へ向けて及び正中矢状面へ向けて」のように「舌(lingual)」方向として定義される。横方向は、横断面(上方側、上顎部分を下方側、下顎部分から分離する。)に対して平行な水平面にある。
【0028】
「内部の(internal)」又は「内側へ向けて(towards the inside)」の用語は、口腔及び舌根の方向を意味する。「外部の(External)」又は「外側へ向けて(outside)」は、口腔から離れる方向を意味する。
【0029】
これらの表示は、開口器のフレームが、使用時に患者の口の周辺の顔面に配置されるときに定義されるけれども、これらの表示は、口腔からギャグを取り外すときに、様々な構成要素の配置を記載するためにも使用される
【0030】
フレーム2は、下顎クロスメンバ3と、少なくとも上顎クロスメンバ5a、5bと、下顎クロスメンバ3と上顎クロスメンバ5a、5bとを連結する2つの直立部4a、4bと、を備えており、実質的には、長方形状を伴っており、中央領域において上方側が部分的に開放されている。好ましくは、ギャグ1は、2つの上顎クロスメンバ5a、5bを備える。
【0031】
フレーム2は、使用時に上顎小臼歯及び上顎大臼歯に寄りかかるように適合され、各上顎クロスメンバ5a、5bに着脱可能かつ移動可能に固定された2つの要素又は上方側アーム8a、8bも備える。フレーム2が、上顎クロスメンバを1つだけ備える場合、ギャグは、移動可能に接続された単一の係止(resting)アームだけを含む。
【0032】
クランプ要素12が解放されると、各上方側アーム8a、8bは、フレーム2に対して延長又は短縮させることができ、各支持要素7a、7bを通してスライドさせることができる。
【0033】
さらに、各アーム8a、8bは、図2において矢印によって示されているように、フレーム2を含む実質的に水平面に対して垂直な軸の周りに回転すること、及び/又は、上顎クロスメンバ5a、5bを通過する長手方向軸の周りに回転することによって、好んでいるいずれの方向にも方向づけをすることができる。
【0034】
上記の調整を通じて、簡単かつ迅速に、患者の上歯列弓の特定の形状にギャグを適合させると共に開口器を使用している間に、各アーム8a、8bが、実質的に平行な方向(つまり、上顎大臼歯への長手方向)において上顎小臼歯/大臼歯に寄りかかることを確実にすることが可能である。所望の調整が実行されると、ギャグは、様々なクランプ要素12を介して、このような位置に固定される。
【0035】
切歯又は犬歯を通り過ぎて、上顎小臼歯/大臼歯において、より良い長手方向の支持を有するためには、各要素8a、8bは、湾曲領域9a、9bを備える。
【0036】
図5図6図7及び図8は、ギャグの使用時に、上顎小臼歯/大臼歯に寄りかかっている、つまり、患者の顔に寄りかかっているアーム8bを示す。
【0037】
有利なことに、各直立部4a、4bの長さが、延長又は短縮されることを許容し、かつ/又は、各直立部4a、4bが、直立部自体を通過する長手方向軸に対して回転される直立部4a、4bには、調整手段41a、41bが設けられている。
【0038】
好ましくは、フレーム2は、矢状面における要素8a、8bの回転を可能にする上顎クロスメンバ5a、5bの長さを調整するための調整手段6a、6bを備える。
【0039】
上記のすべての調整は、患者の口腔の特定の形状に適合させることを許容する開口器の使用において大きな適用性を許容する。
【0040】
フレーム2は、さらに、底部において、下顎クロスメンバ3内に存在しており、舌圧子ブレードのグリップ23を、その内部においてスライド可能に受容するように適合された筐体10を備える。
【0041】
開口器1は、患者の口腔内に挿入可能かつフレーム2に対して移動可能な舌圧子ブレード21、30も備える。
【0042】
舌圧子ブレードは、前頭面又は冠状面(開口器が挿入されているとき)に対して実質的に垂直な舌圧子21を備えており、患者の舌を下顎床(mandibular floor)へ押し下げかつ押さえる。また、舌圧子ブレードは、舌圧子ブレード21、30の全長を延長又は短縮することができるように舌圧子21に対して長手方向にスライド可能とされた、実質的にスプーン形状の要素30を備える。
【0043】
舌圧子21は、口腔への挿入及び口腔からの取り出しを促進するように適合された横面取り部分29を備える。
【0044】
さらに、舌圧子21は、実質的に舌圧子21に対して垂直なグリップ23を備えており、開口器の垂直な筐体10の内部でスライド可能とされている。
【0045】
グリップ23は、湾曲した端部25で終結すると共に、例えば、傾斜した歯を備えており、筐体10の解放要素及び停止要素12と係合可能とされたラック24を備える。患者の舌に対する舌圧子21の位置を調整することを可能にするために、解放要素12を押圧したままにすることによって、グリップ23、それゆえ、舌圧子21、を上方側又は下方側へ向けてスライドさせることが可能である。例えば、舌を下顎床に対して押圧する舌圧子21を伴って、所望の垂直位置が見つかると、舌圧子21の位置は、固定されて、解放要素12が解放される。
【0046】
図14に順番に示されるように、舌圧子21は、舌の前部における下向きの押し込みの方向を調整することができるように、フレーム2(正中矢状面上)に対して上/下方向(superior/inferior direction)に回転可能とされている。
【0047】
本発明の非限定的な例によると、舌圧子21のフレーム2に対する回転の調整は、2つの顎部15a、15bを備えたクランプ万力13に対して順に作用する固定-解除要素14に作用することによって行われる。2つの顎部15a、15bは、それぞれ下顎クロスメンバ3の円筒部分20を中に収容することができる補充溝又はシート16a、16bを有する。
【0048】
2つの顎部15a、15bの1つは、筐体10に強固に拘束される(例えば、そこに溶接される)と共に2つの顎部15a、15bは、互いの周囲にヒンジで連結されており、ピン17によって連結される。
【0049】
フレーム2に対する舌圧子ブレード21の角度の調整は、フレームに対して望むように回転されて、正しい位置で固定されることを舌圧子ブレード21に許容するクランプ要素14を、円筒部分20上の顎部15a、15bの圧力を緩めることによってロック解除することによって実行される。クランプ要素14を再び締めることによって、フレームの円筒部分20上の万力13を締めることによって作用する2つの顎部15a、15bは、回転する可能性をブロックする。
【0050】
好ましくは、円筒部分20は、下顎クロスメンバ3の他の部分よりも小さい直径を有すると共に、摩擦を増加させて、万力13の対応する長手方向シート16a、16bをしっかりと捉えるように、縞状の「リブ」タイプの表面(下顎クロスメンバ3の長手方向と平行な方向に沿って実質的に延在する)を備えることができる。
【0051】
スプーン形状要素30は、実質的に細長い形状を有しており、互いに並行しており、舌圧子21に対して平行とされており、かつ、図3に示されたピン35の周りに回転することができる、2つの要素31a、31bを備える。
【0052】
2つの要素31a、31bは、前面(口腔内に挿入可能な側の端部)において、下方側に面する凹面を伴い、舌根を完全に囲うことができる、2つのハーフスプーン32a、32bの形状を有する。2つの要素31a、31bの2つの後端部は、後部グリップ(ギャグ使用時の口腔に対する外側端部)を形成する。2つのハーフスプーン32a、32bが、互いに接触するときは、2つの後端部は、お互いからわずかに広がっている。
【0053】
弾性牽引要素33(例えば、牽引ばね)は、2つのハーフスプーン32a、32bが相互の接触位置から離れるように、2つの後部グリップを一緒に保っており、舌根が完全に捕捉されることを許容するような最大幅寸法(頬から頬までの間隔を意味する)の構成をもたらしている。
【0054】
舌圧子21は、スプーン形状の要素30への可動連結手段を備える。特に、舌圧子21は、舌圧子ブレード21、30の全長を延長又は短縮するように、その内部においてハーフスプーン32a、32bのピン35がスライドできる中央長手方向溝27を備える。長手方向溝27は、ハーフスプーン32a、32bのピン35との連結を許容するように適合された穴28を備える。
【0055】
要素31a、31bが後退された(及び、それゆえ、口腔内の舌圧子ブレードの全長が短縮された)ときに、2つのハーフスプーン32a、32bは、互いに接近し、かつ、舌圧子21の長手方向軸の中央へ向けて移動するように、舌圧子21は、2つの対向する横方向ガイド26を備えており、その半分は、2つの後部グリップと穴28との間の部分を包含しており、2つの細長要素31a、31bをスライドさせるように適合されている。このように、舌圧子ブレード21、30の全幅は、徐々に減少していく。
【0056】
舌圧子ブレードの幅の減少は、舌圧子ブレードが下顎大臼歯の間を通過することと、ギャグの口腔への挿入又は口腔からの取り出しと、を許容する。
【0057】
逆に、細長要素31a、31bの後部グリップを口腔へ向けて長手方向に押すことによって、舌圧子ブレード21、30の長さが増加すると共に、舌圧子ブレードの幅が増加するように、横方向ガイド26、ばね33及びピン35の結合動作は、2つのハーフスプーン32a、32bが、舌圧子ブレード21の長手方向軸の中心から互いに離されることを許容する。このような幅の増加は、舌根全体が収集されかつ収容されることを許容する。
【0058】
2つのハーフスプーン31a、31bは、さらに、幅が固定されること及び舌圧子ブレードが長手方向にスライドする可能性を許容し、2つの細長要素31a、31bを舌圧子21へ固定する固定要素34を備える。
【0059】
本発明の代わりの実施形態では、舌圧子21のガイド部26が、細長要素31a、31bの外縁部とラックのような方法で連結されるように構成されている。
【0060】
舌圧子ブレード21、30が口腔内に挿入されて、下顎大臼歯の間を通過すると、舌圧子ブレードの増加された幅及びフレーム2に対する上下方向における何らかの回転は、舌根領域が完全に囲まれることと、舌の前部を下方側へ押す方向が調節されることと、を許容する。このような操作は、硬口蓋と軟口蓋との接合部を適切に露出させること及び、舌扁桃溝を適切に露出させることを許容する。
【0061】
上記に記載されたギャグ1は、本質的に2つの要素を備えており、フレーム2は、患者の口を可能な限り開いたままにしておくと共に、舌の押圧されている位置における舌圧子ブレードを支持する。
【0062】
しかしながら、既知のタイプの舌圧子ブレードを伴う上記に記載されたようなギャグを有すること自体が、発明を構成することが観察される。このギャグは、口腔咽頭器官のより適切な露出を得ようとする試みの間に、歯の損傷、特に、上顎切歯のリスクを低減するという技術的問題を解決する。
【0063】
さらに、そのことは、ギャグの使用における大きな適用性を許容し、単一の器具が、患者の口腔の特定の形状に適合されることを許容する。
【0064】
この場合、外科用の開口器は、使用時に患者の口の周辺に配置されるように適合されており、口の最大開口よりも大きいサイズを有するフレーム2を備えており、フレーム2は、下顎クロスメンバ3と、少なくとも1つの上顎クロスメンバ5a、5bと、下顎クロスメンバ3と上顎クロスメンバ5a、5bとを連結する2つの直立部4a、4bと、使用時に上顎小臼歯及び大臼歯に長手方向に寄りかかるように適合された2つの上方側アーム8a、8bと、を備えている。フレーム2は、例えば、上顎クロスメンバ3上に存在し、その内部に既知のタイプの舌圧子ブレードのグリップをスライド可能に受け入れるように適合された筐体10をさらに備えることができる。
【0065】
このことは、上記のような舌圧子ブレード21、30を有するもう1つの発明を構成し、グリップ23は、既知のタイプの口の周辺の支持アーチ又はフレームの筐体に取り付けることができる。
【0066】
2つの要素を備えた、この舌圧子ブレードは、硬口蓋と軟口蓋の接合部を適切に露出すること及び舌扁桃溝を適切かつ両側に露出するという技術的な問題を解決する。
【0067】
さらに、舌根に舌扁桃溝まで完全に進展することを許容し、通常、舌根の幅よりも小さい、下顎大臼歯を分離する空間に舌圧子ブレードを配置することを許容する。
【0068】
この場合、既知のタイプの外科用の開口器の舌圧子ブレード21、30は、患者の口腔内に挿入可能であり、開口器のフレームに対して移動可能である。舌圧子ブレード21、30は、前頭面/冠状面に対して垂直な舌圧子21を備え、下顎床に対して患者の舌を押し下げるように構成されており、スプーン形状要素30は、舌圧子ブレード21、30の全長を延長できるように舌圧子21に対して長手方向にスライド可能とされている。
【0069】
舌圧子ブレード21、30の幅を、舌圧子ブレード21、30が下顎大臼歯の間を通過することを許容する最小幅から舌根領域全体を完全に囲むことを許容する最大幅まで変化させることができるように、スプーン形状要素30は、前部において横方向に移動可能な2つのハーフスプーン31a、31bを備える。
【0070】
上記に記載したように、本発明による改良された外科用の開口器は、以下を備える。
a)有益な舌圧子システム(互いに関節で連結されており、舌根全体を尾側(caudal)方向及び後-前(posterior-anterior)方向の両方の方向に段階的な方法で動かすことができる2つのブレードを備える)
b)前述した舌圧子システムを支持すると共に固定する金属製のアーチであって、上顎小臼歯及び大臼歯に寄りかかること(切歯に配慮して)並びに口蓋構造及び口峡峡部の両方の最適な露出を保証すると共に一般的な口蓋及び口腔咽頭の手術及び特に、閉塞性睡眠障害の手術の実行を促進するために適合された前窓として作用することによって特徴づけられる。
【0071】
図15から図19は、図1から図14を参照して上記に記載された外科用の開口器の第2の実施形態を表す。以下は、第1の実施形態の説明に対する相違点だけの説明であり、類似の技術的特徴については、第1の実施形態の説明を参照する。さらに、図15から18において、類似の要素は接頭語「10」を伴って示されている。
【0072】
外科用の開口器101は、フレーム102(下顎クロスメンバ103と、上顎クロスメンバ105a、105bと、2つの直立部104a、104bと、を備える)と、使用時に、患者の上顎大臼歯に寄りかかるように適合された2つの上方側アーム又は羽根108a、108bと、を備える。好ましくは、開口器101のフレームは、円形である。上方側羽根108a、108bは、好ましくは、柔らかい使い捨てシース(さや、sheath)の挿入及び取り出しを促進できるように(衛生上の理由から)、平らな形状の端部を有し、各羽根108a、108bに寄りかかる上顎大臼歯を破壊しないように構成されている。
【0073】
第2の実施形態では、グリップ123は、フック125を伴う下方側端部において終結すると共に部分的には筐体として作用する二重固定要素110の内部でスライド可能とされた管形状要素を備える。その内部において下顎クロスメンバ103の一部を収容することができる補充の二重固定要素115aもある。舌圧子組立品の傾斜は、中央つまみ114を使用して調整することができる。第2の実施形態では、舌圧子ブレードは、舌圧子122と、2つの細長要素132a、132bを備えており、舌圧子122に対して長手方向にスライド可能なスプーン形状要素130と、を備える。好ましくは、2つの細長要素132a、132bは、それぞれ舌圧子ブレードが舌に押し下げられたままであるときに、医師が患者の舌の色を確認できることを許容する1つ又は複数の貫通穴133を備える。この方法において、開口器の操作の間に患者の舌が、押されすぎていないかどうかを検証することができる。代わりに、スプーン形状要素は、透過性素材で作られてもよい。好ましくは、舌圧子122は、テフロンによって作られている。
【0074】
舌圧子122及び2つの細長いスプーン形状要素132a、132bは、一方の端部においてピンが通過する貫通穴200を備えており、ピンは、グリップ123において舌圧子122と2つの細長いスプーン形状要素132a、132bとをヒンジ連結し、舌圧子122及び2つの細長いスプーン形状要素132a、132bは、2つのハーフシェル126a、126bの内部に設けられている。上方側のハーフシェル又はカバー126aは、長手方向の貫通溝127a及び第2の貫通穴201を備えており、さらに、下方側のハーフシェル又は舌圧子ベース126bは、長手方向の溝127bを備えており、第1のハーフシェル126aの溝において、ナット203は、その内部を長手方向にスライドすることができる。下方側のハーフシェル126bの一方の端部には、グリップ123の上方側部分のための筐体204がある。舌圧子ブレード122、132a、132bが、長手方向にスライドすること及び/又は2つの細長要素132a、132bを、所望する位置において舌圧子122に固定することを許容し、鉗子又はタブ202のためのつまみ(ノブ、knob)要素に作用する固定要素134もある。2つのハーフシェル126a、126bの特定の形状は、スプーン形状要素130を前進及び/又は後退させている間に、2つの細長要素132a、132bを広げたり、又は、互いに近づけたりすることを許容する。好ましくは、舌圧子ブレード122の自由端の幅は、2つの細長いスプーン形状要素132a、132bが、最大間隔で互いに広がって離れているときに、2つの細長いスプーン形状要素132a、132bの間で存在する空間を少なくとも覆うようなものでなければならない。これは、2つの細長いスプーン形状要素132a、132bが、舌根をはさんでから互いにより近くに動かされたときの、患者の舌を「締め付けること(pinch)」を防止する。本発明のもう一つの非限定的な例では、上記の開口器は、動物の口腔に容易に適用できることに留意されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14(a)】
図14(b)】
図14(c)】
図15
図16
図17
図18
図19