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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】ステーブ保護システム
(51)【国際特許分類】
   F27D 1/12 20060101AFI20230306BHJP
   C21B 7/10 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
F27D1/12 A
C21B7/10 301
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020549025
(86)(22)【出願日】2019-03-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2019056290
(87)【国際公開番号】W WO2019175245
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-11-20
(31)【優先権主張番号】18161931.3
(32)【優先日】2018-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514251927
【氏名又は名称】プライメタルズ テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・アトキンソン
(72)【発明者】
【氏名】イアン・ジェームズ・マクドナルド
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・オズボーン
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特公平06-063011(JP,B2)
【文献】特開2016-118375(JP,A)
【文献】特開2014-234536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 1/00-21/14
F27D 1/00-99/00
C21B 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冶金炉用のステーブ保護システムであって、
ステーブ(100)であって、その前面(102)に配置された複数のリセス(110)を備えるステーブ(100)と、
複数のインサート(200)であって、それぞれがリセス(110)のそれぞれのものによって受け入れられ、そのように受け入れられたインサート(200)は、使用時に前記ステーブ(100)の前面(102)に炉の負荷物質の保護層を提供するために前記負荷物質が前記インサート(200)によって捕捉されるように前記ステーブ(100)の前面(102)から突出する、複数のインサート(200)と
を具備し、
各インサート(200)は、一組のセグメントと、それぞれのリセス(110)の表面に対してセグメントを押し付けるリテーナと、を備え、前記セグメントは、前記リセス(110)の表面との摩擦接触によって前記リセス(110)内に固定される、ステーブ保護システム。
【請求項2】
前記リテーナは内側部分(204)および外側部分(206)を備え、
前記セグメントの組の第1のサブセット(S1)を形成する前記セグメントの少なくとも一つは、前記内側部分(204)によって前記リセス(110)内に固定され、
前記セグメントの組の第2のサブセット(S2)を形成する前記セグメントの少なくとも一つは、前記外側部分(206)のみによって前記リセス(110)内に固定され、
使用中、
前記リテーナの前記外側部分(206)に対する前記負荷物質の侵食作用によって前記外側部分が除去されることで、前記負荷物質が、前記第2のサブセット(S2)によって空にされた前記リセス(110)の部分を占有することができるように、前記第2のサブセット(S2)が解放され、
前記リテーナの前記内側部分(204)に対する前記負荷物質の侵食効果によって前記内側部分が除去されることで、前記負荷物質が、前記第1のサブセット(S1)によって空にされた前記リセス(110)の部分を占有することができるように、前記第1のサブセット(S1)が解放される、請求項1に記載のステーブ保護システム。
【請求項3】
前記ステーブ保護システムはさらに、前記リセス(110)内の前記セグメントの組の前記第1のサブセットを位置決めするように構成されたロケータ要素(208)を備える、請求項2に記載のステーブ保護システム。
【請求項4】
前記ロケータ要素(208)は、前記リテーナの前記内側部分(204)および前記外側部分(206)を支持するように構成される、請求項3に記載のステーブ保護システム。
【請求項5】
前記リセス(110)のそれぞれのものが六角形の形状を有し、前記セグメントの組が、それぞれのリセス(110)を補完するように六角形に配置された六つのセグメント(202a~f)を含む、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のステーブ保護システム。
【請求項6】
前記セグメントの組の第1のサブセット(S1)が四つのセグメント(202c~f)を含み、かつ、前記セグメントの組の第2のサブセット(S2)が二つのセグメント(202a~b)を含む、請求項5に記載のステーブ保護システム。
【請求項7】
各インサート(200)の前記セグメントおよび/または前記リテーナが耐摩耗性耐火材料を含む、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のステーブ保護システム。
【請求項8】
前記耐摩耗性耐火材料が炭化ケイ素またはアルミナを含む、請求項7に記載のステーブ保護システム。
【請求項9】
各インサート(200)のセグメントおよび/またはリテーナが金属材料を含む、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のステーブ保護システム。
【請求項10】
前記金属材料は、銅、銅合金、鋼または鋳鉄を含む、請求項9に記載のステーブ保護システム。
【請求項11】
前記セグメントのそれぞれのものが、ギャップによって隣接するセグメントから分離させられている、請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載のステーブ保護システム。
【請求項12】
冶金炉ステーブ本体(100)であって、
前面(102)と、背面(104)と、前記前面(102)および前記背面(104)を接続する縁部(106a~d)と、
前記冶金炉ステーブ本体(100)を通って延びる少なくとも一つの冷却通路と、
前記前面(102)に配置された複数の別個のリセス(110)であって、前記リセス(110)の少なくとも一つは前記前面(102)の一部によって囲まれており、使用時、炉の負荷物質は前記リセス(110)によって受け入れられると共に保持されて、前記前面(102)に前記負荷物質の保護層を提供する、複数の別個のリセス(110)と
を具備し、
前記リセス(110)のそれぞれのものは、床(110a)および壁(110b)を含み、
各リセス(110)の前記壁(110b)は、前記リセス(110)が、前記前面(102)における前記リセス(110)の開口から前記床(110a)に向かって末広がりとなるようなテーパーを有する、冶金炉ステーブ本体。
【請求項13】
銅、銅合金、鋼または鋳鉄から構成される、請求項12に記載の冶金炉ステーブ本体(100)。
【請求項14】
前記リセス(110)は六角形の形状を有する、請求項12または請求項13に記載の冶金炉ステーブ本体(100)。
【請求項15】
前記リセス(110)は、前記冶金炉ステーブ本体(100)が第1の方向およびこの第1の方向に垂直な第2の方向に同じ曲げ剛性を有するように均一なパターンで配置される、請求項12ないし請求項14のいずれか1項に記載の冶金炉ステーブ本体(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高炉などの冶金炉のためのステーブ保護システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の高炉は、スタック、ベリー、ボッシュ、羽口、ハース、タップホールなど、いくつかのセクションおよびコンポーネントからなる。高炉の内部シェルは、ステーブと呼ばれる水冷冷却プレートで保護することができ、これは、炉内で行われる還元プロセス中にシェルが過熱するのを防ぐ。最新のステーブは、通常、銅または銅合金から構成されているが、例えば鋼や鋳鉄などのその他の材料が使用されることもある。
【0003】
ステーブには、炉内に投入された固体原料によって、それが炉内を降下する際に、摩損が起きやすい。特にコークスは非常に研磨性がある。ある状況では、摩耗の深刻さにより、予定された耐用年数が経過する前に、ステーブを交換する必要が生じる。これは、炉のダウンタイムのためにコストが高く付く。したがって、耐用年数を延ばすために、摩耗に耐えるステーブを設計することが重要である。
【0004】
運転中にステーブの前面に凍結スラグ付着物を形成することにより、ステーブの摩耗が減少することが知られている。この目的のために、ステーブは、付着物をステーブ上に保持するリブおよび溝を含む、機械加工された前面、すなわち高温面を有する。このタイプの典型的な銅ステーブの一部が図1に示されている。
【0005】
このコンセプトの改良点は、前面保護材、すなわちクラッディングの追加であり、これは、銅の基材よりも硬いが、表面での凍結により保護付着層を形成することを可能にする。これは、銅ステーブおよびその断面を示す図2に示されているように、炭化ケイ素および黒鉛レンガの組み合わせを使用して実現されている。
【0006】
特許文献1は、耐火レンガのライニング、耐火グナイト、またはプロセス生成降着層を表面に固定するための固定手段を形成するリブおよび溝を含む前面を有するステーブを記載している。図3に大まかに示されているように、金属インサートが溝内に設けられている。金属インサートは、リブを侵食から保護するために、リブの側壁を覆っている。だが、この解決策に関して発生する可能性のある問題は、金属インサートに歪みおよび/または座屈が発生しやすくなること、そしてステーブ本体よりも伝導性の低い材料を使用することで(銅の場合)ステーブの熱性能が低下し、これが保護付着層の凍結に影響を与えることである。
【0007】
したがって、ステーブの摩耗速度を低減するための既存の解決策としては以下のものが挙げられる。
i)ステーブ内またはステーブの前方に耐火/セラミック耐摩耗ライニングを設置する。
ii)ステーブの前面に棚を設置して、より厚みのある付着物堆積を促進する。
iii)正面において機械加工された形材内にクラッディングを取り付ける。
【0008】
これらの解決策はいくつかの改善をもたらしたが、耐用年数を延ばし、炉のダウンタイムを削減するために、ステーブの摩耗速度を低減できる新しい技術が依然として必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2009/147292号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、冶金炉用のステーブ保護システムが提供される。このシステムは、ステーブの前面に配置された複数のリセスを備えるステーブと、複数のインサートであって、それぞれがリセスのそれぞれのものによって受け入れられ、そのように受け入れられたインサートは、使用時にステーブの前面に負荷物質の保護層を提供するために炉の負荷物質がインサートによって捕捉されるようにステーブの前面から突出する複数のインサートとを具備し、各インサートは、一組のセグメントと、それぞれのリセスの表面に対してセグメントを押し付けるリテーナとを備え、セグメントは、リセスの表面との摩擦接触によってリセス内に固定される。
【0011】
本明細書で後により詳細に説明するように、インサートは、ステーブの前面(または高温面)のためのクラッディングを提供し、これは、炉の負荷物質の保護層が前面に形成されるのを促進する。インサートは、摩擦のみによってリセスに取り付けられるため、インサートを取り付けるために前面の表面を改変する必要がない。
【0012】
本明細書で使用される場合、「負荷物質」とは、(i)高炉内の鉄含有物質、例えば鉄鉱石または鉄鉱石ペレット、および(ii)高炉スラグ、すなわち鉄鉱石または鉄ペレット、コークスおよびフラックス(石灰岩やドロマイトなど)が高炉内で一緒に溶融され、その後凝固した際に形成されるスラグの一方または両方を指す。
【0013】
リテーナは内側部分および外側部分を備えてもよく、セグメントの組の第1のサブセットを形成するセグメントの少なくとも一つは、内側部分によってリセスに固定され、セグメントの組の第2のサブセットを形成するセグメントの少なくとも一つは、外側部分のみによってリセスに固定され、使用中、リテーナの外側部分に対する負荷物質の侵食作用によって外側部分が除去されることで、負荷物質が、第1のサブセットによって空にされたリセスの部分を占有することができるように、第1のサブセットが解放され、リテーナの内側部分に対する負荷物質の侵食効果によって内側部分が除去されることで、負荷物質が、第2のサブセットによって空にされたリセスの部分を占有することができるように、第2のサブセットが解放される。
【0014】
ステーブ保護システムは、リセス内のセグメントの組の第1のサブセットを位置決めするように構成されたロケータ要素を備えていてもよい。このロケータ要素は、リテーナの内側部分および外側部分を支持するように構成されてもよい。
【0015】
リセスのそれぞれのものは六角形の形状を有していてもよく、セグメントの組は、それぞれのリセスを補完するように六角形に配置される六つのセグメントを備えていてもよい。セグメントの組の第1のサブセットは四つのセグメントを備えていてもよく、セグメントの組の第2のサブセットは二つのセグメントを備えていてもよい。
【0016】
各インサートのセグメントおよび/またはリテーナリテーナは、耐摩耗性の耐火材料を含んでいてもよい。この耐摩耗性の耐火材料は、炭化ケイ素またはアルミナを含んでいてもよい。
【0017】
各インサートのセグメントおよび/またはリテーナは金属材料を含んでいてもよい。この金属材料は、銅、銅合金、鋼または鋳鉄を含んでいてもよい。
【0018】
セグメントのそれぞれのものは、ギャップによって隣接するセグメントから分離させられてもよい。
【0019】
本発明の別の態様によれば、冶金炉ステーブ本体が提供され、これは、前面、背面、およびこれら前面と背面とを接続する縁部と、本体を通って延びる少なくとも一つの冷却通路と、前面に配置された複数の別個のリセスとを備え、リセスの少なくとも一つは前面の一部によって取り囲まれており、これによって、使用時、炉負荷物質はリセスによって受け入れられると共に保持され、前面に負荷物質の保護層を提供する。
【0020】
リセスは、前面を機械加工することによって形成されてもよい。ステーブ本体は鋳物であってもよい。
【0021】
ステーブ本体は、銅、銅合金、鋼または鋳鉄から構成されてもよい。
【0022】
リセスは、六角形の形状を有していてもよい。
【0023】
一つ以上のリセスが、炉の負荷物質を捕捉するための突出インサートを受け入れるように構成されてもよい。
【0024】
リセスは、均一なパターンで配置されてもよい。均一なパターンは、横列および縦列を有するアレイからなっていてもよい。ステーブ本体は、第1の方向およびこの第1の方向に垂直な第2の方向に同じ曲げ剛性を有していてもよい。
【0025】
好ましくは、リセスは六角形の形状を有し、横列および縦列を有するアレイとして配置され、これにより、リセスのハニカムパターンを提供する。ハニカムパターンはステーブ本体に固有の剛性を与え、ステーブ本体は、図1に示す種類の従来の溝付きステーブよりも均一な剛性を持つ傾向がある。
【0026】
次に、添付の図面を参照して、例として実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】炉用の従来の銅ステーブの一部を示す図である。
図2】炭化ケイ素および黒鉛レンガを含む従来の銅ステーブを示す図である。
図3】金属インサートを含む従来の銅ステーブの一部を示す図である。
図4】本発明の一実施形態によるステーブを示す図である。
図5a図4のステーブに取り付けられた一組のインサートを示す図である。
図5b】取り付けられたインサートの一つの破断図である。
図6a】インサートの一部を示す図である。
図6b】インサートの一部を示す図である。
図6c】インサートの一部を示す図である。
図6d】インサートの一部を示す図である。
図7a】ステーブへのインサートの設置を示す図である。
図7b】ステーブへのインサートの設置を示す図である。
図7c】ステーブへのインサートの設置を示す図である。
図7d】ステーブへのインサートの設置を示す図である。
図7e】ステーブへのインサートの設置を示す図である。
図8a】インサートが設置されたステーブの使用法を示す図である。
図8b】インサートが設置されたステーブの使用法を示す図である。
図8c】インサートが設置されたステーブの使用法を示す図である。
図8d】インサートが設置されたステーブの使用法を示す図である。
図9a】本発明の他の実施形態によるステーブおよびインサートの組を示す図である。
図9b】本発明の他の実施形態によるステーブおよびインサートの組を示す図である。
図10a】本発明の他の実施形態によるステーブおよびインサートの組を示す図である。
図10b】本発明の他の実施形態によるステーブおよびインサートの組を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図4を参照すると、長方形の冷却プレート、すなわちステーブ100は、前面(すなわち高温面)102、後面104および縁部106a~dを含む。ステーブ100は、高炉で使用するための複数の類似のステーブの一つであるよう意図されている。
【0029】
この例示的な実施形態では、ステーブ100は銅合金から構成される。代替材料としては、銅、鋼および鋳鉄が含まれるが、これらには限定されない。
【0030】
この実施形態では、ステーブは、約1.5mの長さ、約1.0mの幅、そして約120mmの厚さを有する。
【0031】
ステーブ100の内部には、水冷通路(図示せず)が設けられる。さもなければ、ステーブ100の本体は、通常、中実である。
【0032】
ステーブ100の前面102には、複数のリセス110が形成されている。リセス110は機械加工により形成されている。代替的に、リセス110は鋳造によって形成されてもよい。
【0033】
リセス110のそれぞれのものは、ベースまたは床110aおよび壁110bを含む。床110aは、ステーブ100の前面102と平行であるように平坦である。この実施形態では、各リセス110は、開口において約165mmの幅、および約45mmの(開口から床110aまでの)深さを有する。別の実施形態では、深さは約35ないし55mmであってもよい。
【0034】
各リセス110の壁110bは、床110aとリセス110の開口との間で前面102において収束するようなテーパーを有する。したがって、リセス110の断面積は、開口におけるよりも前面102においてより大きい。
【0035】
リセス110は別個のリセスである。すなわち、リセス110のそれぞれのものは、ステーブ100の本体の材料によって、他のリセス110の全てから分離させられている。したがって、リセス110は、ステーブ100のポケットと見なすことができ、各ポケットは他のポケットから隔離されている。
【0036】
また、リセス110の大部分は、前面102の一部によって、その開口において完全に取り囲まれている(いくつかの例外は、ステーブ100の縁部に位置するリセス110である)。換言すれば、リセス110の大部分はそれぞれ、エンドレスな境界線によって境界付けられかつ画定される。
【0037】
さらに、各リセス110は、ステーブ100の前面102の小部分または一部のみを横切って延びている。リセス110はどれも、前面102の長さまたは幅全体にわたって延びていない。
【0038】
この実施形態では、リセス110は、あるパターンで、具体的には均一なパターンで、より具体的にはアレイ状に配置される。リセス110の均一な間隔の結果として、長方形のステーブは、縦(長さY)方向に関して、横(幅X)方向と同じ曲げ剛性を有する。
【0039】
リセス110のアレイは、15個の(水平)横列および4個の(垂直)縦列を含む。代替的に、アレイは、異なる数の横列および縦列、例えば20個もの横列および5個もの縦列を含むことができる。
【0040】
この実施形態では、リセスは、ハニカムパターンを形成するような(正面視で)六角形である。以下の説明から理解されるように、リセス110の一つ以上は、円、三角形、正方形を含む長方形、五角形、七角形または八角形を含むがこれらには限定されない、その他の形状を取ることができる。
【0041】
ここで図5aおよび図5bを参照すると、インサート200がステーブ100のリセス110に設置される。ステーブ100およびインサート200の組み合わせにより、ステーブ保護システムが構成される。
【0042】
各インサート200は、複数の構成部品またはセグメントを含み、この実施形態では、インサート200ごとに六つのセグメント202a~fが存在する。セグメント202a~fは、それぞれのリセス110の中心軸線Zの周りに配置され、中心軸線Zは、ステーブ100の前面102に垂直である。この実施形態では、セグメント202a~fのそれぞれは炭化ケイ素からなる。代替的に、セグメント202a~fは鋳鉄または鋼からなっていてもよい。
【0043】
各インサート200はさらに、この実施形態では内側部分204および外側部分206を含むリテーナを備える。この実施形態では、リテーナの内側部分204および外側部分206のそれぞれは鋼からなる。代替的に、内側部分204および外側部分206は炭化ケイ素からなっていてもよい。
【0044】
この実施形態では、インサート200はまたロケーターピース208を備える。ロケーターピース208は鋼からなる。代替的に、ロケーターピース208は炭化ケイ素からなっていてもよい。
【0045】
したがって、各インサートはいくつかの構成部品を備え、それらの部品のアセンブリと見なすことができる。以下、インサート200の部品について、特に図6a~dを参照して、より詳細に説明する。
【0046】
先ず図6aを参照すると、ロケーターピース208は、互いに平行でありかつ周壁208cによって接続されている、概して平坦な上面および下面208a,208bを備える。ロケーターピース208の端部208dにおいて、壁208cは凸状であり、さらに上面208aから下面208bに向かって末広がりにテーパーが付けられている。ロケーターピース208の側部208eにおいて、壁208cは、側部208eが平坦であるように、上面208aおよび下面208bに対して垂直である。ロケーターピース208はまた、直立ステム208fを含む。
【0047】
ここで図6bを参照すると、リテーナの外側部分206は、互いに平行でありかつ上面 206aから下面206bに向かって収束するようにテーパー化された周壁206cによって接続されている、概して平坦な上面および下面206a,206bを有する円形本体を備える。言い換えれば、リテーナの外側部分206は(浅い)円錐台である。外側部分206はまた、ロケーターピース208の直立ステム208fをぴったりと受容するようなサイズとされた中央貫通穴206dを備える。
【0048】
ここで図6cを参照すると、リテーナの内側部分204は、外側部分206の一部と同様に成形された本体を備えており、したがって内側部分204は、互いに平行であると共に上面204aから下面204bに向かって収束するようにテーパーが付けられた周壁204cによって接続された、概ね平坦な上面および下面204a,204bを備える。だが、内側部分204は、この内側部分204がD形状を形成するように円の(すなわち外側部分206の)一部が存在しないという点で外側部分206とは異なる。したがって、内側部分204は、上面および下面204a,204bに対して垂直である平坦な縁部204dを備える。内側部分204はまた、ロケーターピース208の直立したステム208fをぴったりと受け入れるようなサイズとされた中央貫通孔204eを備える。
【0049】
ここで図6dを参照すると、例示的なセグメント202aは、周壁によって接続された概ね平坦な上面202a1および下面202a2を備える。周壁は、二つの側面202a5によって接続された内面202a3および外面202a4を備える。外面202a4は、ステーブ100のリセス110のテーパー壁110bを補完するような形状である。側面202a5は、概ね平坦であり、隣接するセグメントの同様の側面に当接するように構成される。内面202a3は、リテーナの内側部分204および外側部分206のそれぞれの周壁204c,206cの半径に対応する半径を有する。
【0050】
内面202a3の下部には、下面202a2まで延びる浅いアンダーカット202a6が設けられている。アンダーカット202a6は、ロケーターピース208の端部208dの一つの凸壁208cを補完するように凹状に形作られている。アンダーカット202a6と上面202a1との間に延びる内面202a3の別の部分は、リテーナの内側部分204と外側部分206のそれぞれの傾斜した周壁204c,206cを補完するような形状とされている。頂点202a7は、(下面202a2まで延びる浅いアンダーカット202a6が設けられた)内面202a3の下部を(アンダーカット202a6と上面202a1との間に延びる)内面202a3の他の部分から分離している。
【0051】
次に、それぞれのリセス110へのインサート200の組の設置について、特に図7a~eを参照して説明する。簡潔にするために、工程は、リセス110の一つにおけるインサート200の一つのみに関して提示する。しかしながら、設置の原理は、インサート200の全てについて同じであることは明かである。
【0052】
ステーブ100は、インサート200の設置のために、最初、水平状態で配置されるのが最も便利である。すなわち、前面102は水平面内にある。この状態では、リセス110の中心軸線Zが前面102から垂直に延びることは明かである。
【0053】
まず図7aを参照すると、設置手順の第1の段階では、インサート200の六つのセグメント202a~fの組の四つのセグメント202c~fが、ステーブ100のリセス110内に直立に配置され、これによって、セグメント202c~fのそれぞれの下面202c2~202f2はリセス110の床110aの上に載る。セグメント202c~fは、それらの側面202c5~202f5が互いに隣接するように集結させられる。四つのセグメント202c~fのそれぞれの周壁の外面202c4~202f4は、リセス110の壁110bに当接する。四つのセグメント202c~fは、リセス110の中心軸線Zを部分的に取り囲んでいる。
【0054】
ここで図7bを参照すると、設置手順の第2の段階では、ロケーターピース208は、このロケーターピース208の下面208bがリセス110の床110aの上に載るように、リセス110内に直立に配置される。最初に、ロケーターピース208は、四つのセグメント202c~fから横方向にオフセットされている。次に、ロケーターピース208は、最も端のセグメント202c,202fの露出した側面の間の開口を通って、リセス110の床110aの上をスライドさせられ、そして、ロケーターピース208の端部208dのそれぞれの凸状周壁208cが二つの最も端のセグメント202c,202fの相補的な凹状アンダーカット202c6,202f6のそれぞれと接触するように、二つの最も端のセグメント202c,202fの間の位置へと回転させられる。この位置では、ロケーターピース208のステム208fはリセス110の中心軸線Zと一致する。
【0055】
正しい位置へと回転させられると、ロケーターピース208は、二つの最端セグメント202c,202fに半径方向外向きの力を加え、これらのセグメント202c,202fを、そしてこれによってまた二つの最も内側のセグメント202d,202eを、リセス110の壁110bに当接した状態で、ぴったりと適所にて保持する。
【0056】
この段階で、四つのセグメント202c~fは、リセス110内で横方向に動くのが防止されるように十分に固定される。
【0057】
次に図7cを参照すると、設置手順の第3の段階では、リテーナの内側部分204は、四つのセグメント202c~fによって形成される中央(部分)穴の上に一時的に配置される。この初期位置では、内側部分204は、その上面204aが最も上になるように向けられ、貫通孔204eは、リセス110の軸線Zと一致する。内側部分204の湾曲し傾斜した周壁204cは、四つのセグメント202c~fの内面202c3~202f3の上に重なり、そしてD字形状の内側部分204の平坦な縁部204dは、ロケーターピース208の平坦な側部208eの一つと重なる。次に、リテーナの内側部分204が降下させられ、貫通孔204eはロケーターピース208の直立したステム208fの上を通過させられる。ステム208fは、セグメント202c~f間を下降する間、内側部分204のガイドとして機能する。
【0058】
内側部分204は、この内側部分204の下面204bがロケーターピース208の上面208aと接触するまで、(例えば手で、あるいは適切な押圧ツールを使用して)下向きに押圧される。この位置では、半径方向の力は、内側部分204の湾曲し傾斜した周壁204cから、四つのセグメント202c~fのそれぞれの湾曲し傾斜した内面202c3~202f3に伝達される。これにより、四つのセグメント202c~fが中心軸線Zの外側に変位させられ、この結果、四つのセグメント202c~fの外面202c4~202f4はリセス110の壁110bに対して押し付けられる。すなわち、四つのセグメント202c~fは、リセス110の壁110bに対して押し付けられ、リテーナの内側部分204と壁110bとの間で効果的に締め付けられる。このようにして四つのセグメント202c~fは、リテーナの内側部分204によってリセス110に完全に固定される。
【0059】
本明細書において後にさらに説明するように、リテーナの内側部分204によってリセス110内に固定される四つのセグメント202c~fは、インサート200の六つのセグメント202a~fの組の第1のサブセットS1を形成する。
【0060】
ここで図7dを参照すると、設置手順の第4の段階では、六つのセグメント202a~fの組の残りの二つのセグメント202a,202bは、リセス110内に直立状態で配置され、したがってセグメント202a,202bのそれぞれの下面202a2,202b2は、リセス110の床110aの上に載っている。二つのセグメント202a,202bは、この二つのセグメント202a,202bのそれぞれの一つの側面202a5,202b5が二つのセグメント202a,202bの他方の側面202a5,202b5に隣接するように配置され、一方、他方の側面202a5,202b5は、隣接するセグメント202c,202fの一つの側面202c5,202f5に隣接する。二つのセグメント202a,202bのそれぞれの外周壁の外面202a4,202b4は、リセス110の壁110bと当接している。六つのセグメント202a~fは、六角形を形成するように、リセス110の中心軸線Zを完全に取り囲んでいる。
【0061】
ここで図7eを参照すると、設置手順の第5の段階では、リテーナの外側部分206は、六つのセグメント202a~fによって形成される中央穴の上に一時的に配置される。この初期位置では、外側部分206は、その上面206aが最も上になるように配向され、貫通孔206dは、リセス110の軸線Zと一致する。外側部分206の湾曲し傾斜した周壁206cは六つのセグメント202a~fの内面202a3~202f3の上に重なる。次に、リテーナの外側部分206が降下させられ、貫通孔206dがロケーターピース208の直立ステム208fの上を通過する。ステム208fは、セグメント202a~f間を下降する間、外側部分206のガイドとして機能する。
【0062】
外側部分206は、この外側部分206の湾曲し傾斜した周壁206cが、六つのセグメント202a~fのそれぞれのものの湾曲し傾斜した内面202a3~202f3と接触するように、(例えば手でまたは適切な押圧ツールを使用して)下向きに押圧される。この位置では、外側部分206の下面206bと、リテーナの内側部分204の上面204aとの間に、小さなギャップ(図7eでは認識できない)が存在する。
【0063】
また、この位置では、半径方向の力が、外側部分206の湾曲し傾斜した周壁206cから、六つのセグメント202a~fのそれぞれのものの湾曲し傾斜した内面202a3~202f3に伝達される。これにより、二つのセグメント202a,202b(これは、セグメントの第1のサブセットS1の四つのセグメント202c~fとは異なり、内側部分204によってリセス110内に固定されない)が中心軸線Zの外側に変位させられ、この結果、二つのセグメント202a,202bの外面202a4,202b4はリセス110の壁110bに押し付けられる。すなわち、二つのセグメント202a、202bは、リセス110の壁110bに押し付けられ、リテーナの外側部分206と壁110bとの間で効果的に締め付けられる。セグメントの第1のサブセットS1の四つのセグメント202c~fもまた、同様に外側部分204によってリセス110内に固定されることは明かである。このようにして、六つのセグメント202a~fは、リテーナの外側部分206によってリセス110内に完全に固定される。
【0064】
本明細書において後にさらに説明するように、リテーナの外側部分206のみによって(すなわち内側部分204によってではなく)リセス110内に固定された二つのセグメント202a,202bは、インサート200の六つのセグメント202a~fの組の第2のサブセットS2を形成する。
【0065】
本明細書において後にさらに説明するように、この実施形態では、固定されたセグメント202a~fの隣接する側面202a5~202f5の各対の間に小さなギャップが存在する。
【0066】
壁110bは、リセス110の床110aと前面102におけるリセス110の開口との間で収束するようにテーパー化されていることに留意されたい。このテーパーは、六つのセグメント202a~fへのクサビ効果を有し、これは、リセス110内でのセグメント202a~fの嵌合の緊密性を強化する。また、テーパーは、セグメント202a~fのそれぞれの相補的な形状の外面202a4~202f4と共同で、強固な「ダブテール」ジョイントを提供し、これは、前面102から離れる方向へのリセス110からのセグメント202a~fの変位に抵抗する。
【0067】
上述したように、リテーナの内側部分204および外側部分206によって加えられる半径方向の力は、それぞれ、リセス110の壁110bからセグメント202a~fに伝達される反力によって相殺される。反力によって、内側および外側部分204,206の傾斜した周壁204c,206cがセグメント202a~fの湾曲し傾斜した内面202a3~202f3の上で(上方に)滑らないことが重要である。なぜなら、これは、セグメント202a~fの外面202a4~202f4を壁110bから離れるように緩ませ、これによってリセス110内でのセグメント202a~fの安定さを損なう傾向があるためである。
【0068】
この理由から、係合面、すなわちリテーナの内側および外側部分204,206のそれぞれの周壁204c,206cおよびセグメント202a~fの内面202a3~202f3は、それらの間の滑りを防ぐのに十分な程度の摩擦を提供するように構成される。必要な摩擦量は、例えば、材料の注意深い選択および/または係合面の処理によって達成することができる。代替的に、リテーナの内側および外側部分204,206の一方または両方は、例えばNord-Lock(RTM)ワッシャーといったウェッジロックワッシャなどの適切な固定具によって適所に固定されてもよい。
【0069】
したがって、設置手順の完了時に、インサート200は、ステーブ100のリセス110に完全に固定される。具体的には、インサートの組の六つのセグメント202a~fのそれぞれは、リセス110内に完全に固定される。さらに具体的には、
i)セグメントの組の六つ全てのセグメント202a~fはリテーナの外側部分206によって固定され、
ii)セグメントの組の第1のサブセットS1を形成する四つのセグメント202c~fは、リテーナの内側部分204によってさらに固定され、
iii)セグメントの組の第2のサブセットS2を形成する二つのセグメント202a,202bは、リテーナの外側部分206のみによって固定される。
【0070】
セグメント202a~fは、このセグメント202a~fの外面202a4~202f4と、リセス110の壁110bの表面との間の摩擦によって、リセス110内に固定される。リテーナの内側および外側部分204,206はセグメント202a~fを壁110bに対して強く押し付ける半径方向外向きの力を加えるので、この摩擦が生じる。したがって、インサート200は、逆クランプまたはスプレッダーと見なすことができる。リテーナの内側部分204および外側部分206が六つのセグメント202a~fによって形成される中央穴に押し込まれる方法を考慮して、内側部分204および外側部分206のそれぞれは固定プラグとして見なすことができる。
【0071】
設置されたインサート200とリセス110との間の接続は、本質的に(圧入または摩擦ばめとしても知られる)締まりばめである。すなわち、インサート200は、他の固定手段によってではなく、摩擦によってリセス110の壁110bに対して取り付けられる。したがってインサートは、ステーブ100の材料にネジまたは孔を設ける必要があるネジ、ボルトまたはリベットなどの従来のファスナーに依存しない。これは、ネジまたは穴を設けることは望ましくないために非常に有利である。というのは、それは、ステーブ材の弱い部分を水冷通路の近くに残す可能性があり、これは、構造的な故障につながり、その結果、使用中に壊滅的な水漏れを引き起こす可能性があるからである。
【0072】
インサート200の設置は、溶接またはロウ付けも含まない。したがって、インサート200を受け入れるためにステーブ100の表面材料を変更する必要がないように、インサート200がリセス110に対して取り付けられることは明かである。
【0073】
リテーナの内側および外側部分204,206のそれぞれは、好ましくは内側および外側部分204,206を破壊することなく、セグメント202a~fの内面202a3~202f3から分離および除去することができ、その結果、インサート200は上記設置手順とは本質的に逆の取り外し手順で取り除くことができる。したがって、いったん設置されると、インサート200はリセス110内に取り外し可能に取り付けられることは明かである。
【0074】
設置されたインサート200は、ステーブ100の前面102から突出または隆起し、インサート200は共に前面102のための保護クラッディングを形成する。以下、高炉に設置されたステーブ100対するクラッディングの使用法について、特に図8a~dを参照して説明する。
【0075】
最初に図8aを参照すると、パネル状のステーブ100は、直立様式で炉の内壁に設置されている。図では、ステーブ100の一部のみが示されていることを理解されたい。前面102は、インサート200が前面102から実質的に水平方向に突出するように、炉の内部に面している。
【0076】
炉が使用されている間、負荷物質は重力によって炉の内部を下方に通過する。負荷物質は、例えば、凝縮蒸気、固化スラグおよび金属を含み得る。炉を通るバルク負荷物質の質量流量は、通常、1時間当たり約240ないし1,100トンである。
【0077】
負荷物質の外側部分は、ステーブ100の前面102の上およびインサート200間を流れる。この負荷物質の一部は、インサート200によって捕捉される。捕捉された負荷物質は、ステーブ100の前面102の冷却される表面(およびインサート200の表面)と接触して保持され、そして負荷物質が還元された液体または半液体状態にあるときに保護層を形成するように表面に付着する。
【0078】
説明される実施形態では、インサート200が負荷物質を捕捉する能力は、インサート200の特定の形態およびステーブ100の前面102上でのそれらの配置によって、以下のように最適化される。
【0079】
再び図8aを参照すると、六角形のインサート200は、インサート200間にチャネルCを画定するように配置される。すなわち、突出セグメント202a~fの外面202a4~202f4の露出部分はチャネルCの壁を画定し、一方、ステーブ100の前面102はチャネルCのベースを形成する。
【0080】
次に図8bも参照すると、例示的な第1および第2のチャネルC1,C2は、第1の六角形インサート200と二つの隣接する六角形インサート200との間に画定され、これらのインサート200のそれぞれは、ステーブ100上のインサート200の第1の(および最も上方の)横列に属する。さらに、例示的な第3および第4のチャネルC3,C4は、第1の六角形インサート200と、他の二つの隣接する六角形インサート200との間に画定され、これらの他のインサート200のそれぞれは、インサート200の第1の横列の下にあるインサート200の第2の横列に属する。第1および第2のチャネルC1,C2のそれぞれのものは二股であり、第1のチャネルC1の分岐の一つは第3のチャネルC3につながり、第2のチャネルC2の分岐の一つは第4のチャネルC4につながる。さらに、第3および第4のチャネルC3,C4は収束する。
【0081】
図8bに矢印で示されているように、負荷物質(それ自体は示されていない)の流動ストリームFは、第1および第2チャネルC1,C2のそれぞれを通って流れ、チャネルC1,C2のそれぞれの分岐点に現れる。第1のチャネルC1からの負荷物質の約半分は第3のチャネルC3に流れ込み、第2のチャネルC1からの負荷物質の約半分は第4のチャネルC4に流れ込む。負荷物質の二つのストリームは、第3および第4のチャネルC3,C4が収束する点で合流する。
【0082】
この収束点で、六角形インサート200の三つの近接点Pによって境界付けられるステーブ100の前面102のゾーンTが画定されることが分かる。点Pは、六角形インサート200の頂点の二次元表示であることは明かである。ゾーンTは、事実上、六角形インサート200の三つの点P間のゾーンTに閉じ込められる傾向がある、負荷物質の流れに対する「ボトルネック」である。したがって、六角形インサート200の構成は、チャネルC1~C4によってゾーンTに向けられる負荷物質を保持するための非常に効果的な「3点アンカー」を提供する。
【0083】
この例示的な実施形態では、三つの点Pのうちの任意の二つの間の距離は約55mmである。これは、それが負荷物質に含まれる典型的な粒子のサイズだからである。この間隔は、あらゆるサイズの負荷物質仕様に適合するように調整できることは明かである。
【0084】
ここで、クラッドの使用について、特に図8cおよび図8dを参照してさらに説明する。
【0085】
先ず図8cを参照すると、インサート200の六つのセグメント202a~fの組が、本明細書で説明した設置手順に従って、ステーブ100のリセス110内に新たに嵌合させられる。(一つのリセス110および一つのインサート200のみが示されているが、ステーブ100は、例えば図8aに示されるように、複数の同様のリセス110およびインサート200を備えることは明かである)。したがって、図8cに示されるインサート200は、炉内でのステーブ100の供用開始時の新しいインサート200を表す。
【0086】
説明される実施形態では、インサート200のセグメント202a~fのそれぞれのものは炭化ケイ素からなることに留意されたい。これは非常に摩耗し難い物質であるが、炉内の過酷な条件は、セグメント202a~202fが、それらの上および周囲を通過する研磨性の負荷物質によって徐々に侵食されることが予想されるようなものである。したがって、時間の経過とともに、セグメント202a~fは負荷物質によってすり減る。さらに、最上部のセグメント202a,202bは、他のセグメント202c~fよりも速い速度で侵食される可能性が高い。なぜなら、それが炉を通り、ステーブの上を降下する際に負荷物質の力の矢面に立つのは最上部のセグメント202a,202bであるからである。
【0087】
結局、セグメント202a~f、特に上記の理由のために最上部のセグメント202a,202bは、リテーナの外側部分206のレベルまで摩耗する。この段階で、外側部分206もまた、流れる負荷物質の研磨効果に曝される。時間が経つにつれ、外側部分206も必然的にすり減る。
【0088】
二つの最上部セグメント202a,202bは、リテーナの外側部分206のみによってリセス110内に固定される六つのセグメント202a~fの組の第2のサブセットS2を形成することに留意されたい。外側部分206が負荷物質の侵食作用により破壊されると、リセス110内で二つの最上部セグメント202a,202b(の何が残っているもの)を保持するものは何も存在せず、したがってそれらはリセス110から解放される。二つのセグメント202a,202bは、流動する負荷物質に巻き込まれ、したがってリセス110から運び去られる。やがて、それらは、ステーブ100の前面102からかなりの距離を運ばれる。
【0089】
図8dは、外側部分206が破壊され、そして二つの最上部のセグメント202a,202bがリセス110から外れて運び去られた段階で、部分的に摩耗した状態のインサート200を示している。図から分かるように、リセス110の一部は、失われたセグメント202a,202bによって空のままとなる。
【0090】
負荷物質は、リセス110の空の部分に流れ込み、その床110aおよび壁110bに付着する傾向がある。このようにして、インサート200の一部が失われた後でさえも、負荷物質はステーブ100のための保護層を提供する。
【0091】
さらに図8dを参照すると、残りの四つのセグメント202c~fは、引き続き、負荷物質の侵食効果に曝され、最終的には、リテーナの内側部分204のレベルまで摩耗する。この段階で、内側部分204はまた、流れる負荷物質の研磨効果に曝される。時間の経過と共に、内側部分204も必然的にすり減る。
【0092】
四つのセグメント202c~fが、リテーナの内側部分204によって(ならびにインサート200の設置点での外側部分206によって)リセス内に固定される六つのセグメント202a~fの組の第1のサブセットS1を形成することに留意されたい。負荷物質の侵食作用により内側部分204が破壊されると(リテーナの外側部分206は既に破壊されている)、リセス110内に四つのセグメント202c~f(の何が残っているもの)を保持するものは何も存在せず、したがってそれらは、ロケーターピース208と共にリセス110から解放される。四つのセグメント202c~fおよびロケーターピース208は、流動する負荷物質に巻き込まれ、したがってリセス110から運び去られる。やがて、それらはステーブ100の前面102から、かなりの距離を運ばれる。
【0093】
リセス110の一部は、失われたセグメント202c~fによって空のままにされる。負荷物質は、リセス110の空の部分に流れ込み、その床110aおよび壁110bに付着する傾向がある。このようにして、インサート200全体が失われた後でさえ、負荷物質はステーブ100に保護層を提供する。
【0094】
したがって、記載された実施形態による本発明は、負荷物質がその上に保護層を形成するようにステーブの前面に付着するように負荷物質を捕捉するインサートを提供する。各インサートの最も上方のセグメント(これは負荷物質の流動バルクの侵食作用によって最も摩耗しやすい)は、摩耗の特定の段階でリセスから解放されるように構成されているため、負荷物質はリセス内で特定の位置を占有し、前面に付着した状態となる。インサートの残りのセグメントも、その後、それらが特定の摩耗段階に達すると、リセスから解放されるように構成されている。これらの残りのセグメントによって占有されていたリセスの部分は、その後、前面に付着している負荷物質によって占有されることになる。リセスは、負荷物質によって占有されるとき、インサートの全てのセグメントが摩耗して失われた後でさえもステーブを保護する「ストーンボックス」である。
【0095】
インサートは、セグメントの段階的な開放をもたらす。セグメントが解放される摩耗段階は、リテーナの部品およびセグメントの端面の相対位置(すなわちステーブの前面からの距離)によって事前に決定される。言い換えると、リテーナの部品がセグメントの端面からセグメント間に凹んでいる度合いである。セグメントが摩耗するとき、リテーナの部品が研磨負荷物の流れにさらされ、これによって侵食されるまで、リセスの深さは減少する。
【0096】
各インサートは、時期尚早にリセスから解放されることなく、熱サイクルを受け入れることができる。これは、インサートが、熱応力の下で独立して屈曲することができるが、組み立てを容易にするために全体として固定可能である複数のセグメントから構成されているためである。固定されたセグメントの隣接する側面の各対間には小さなギャップが存在することに留意されたい。セグメントが独立して屈曲することを可能にするのは、これらのギャップである。さらに、ギャップは、ダストの形態で物質が侵入して弾性分割膜として機能することを促進し、これによって熱サイクルの影響に弾力性を追加する。あまり好ましくない別の実施形態では、セグメントが互いに当接するようにギャップが省略される。
【0097】
説明される実施形態では、リテーナの内側部分204は四つのセグメント202c~f(第1のサブセットS1)を固定し、外側部分206は、二つのセグメント202a,202b(第2のサブセットS2)が外側部分206のみによって固定されるように、六つのセグメント202a~fを固定する。したがって、外側部分206が破壊されると二つのセグメント202a,202bが解放され、その後、内側部分204が破壊されると、四つのセグメント202c~fが解放される。しかしながら、インサート200のセグメント202の組のサブセットS1,S2は、第1のサブセットS1を画定するセグメント202の少なくとも一つが内側部分204によってリセス110内に固定されかつ第2のサブセットS2を画定するセグメント202の少なくとも一つが外側部分206のみによってリセス110内に固定されるならば、異なるように構成されてもよいことは明かである。
【0098】
一方、説明される実施形態は、リテーナの内側部分および外側部分の両方を備えるが、インサートは、代わりに、一つのリテーナ部品のみを使用して固定されてもよいことは明かである。この場合、唯一のリテーナ部品がインサートの全てのセグメントを固定する。もちろん、リテーナ部品を一つだけ含む実施形態は、本明細書で説明した方法でセグメントを段階的に解放するようには構成されない。むしろ、唯一のリテーナ部品が破壊されると、全てのセグメントが実質的に同時にリセスから解放される。
【0099】
代替的に、インサートは二つ以上のリテーナ部品を備えていてもよい。そうした実施形態では、セグメントは、リテーナ部品の数に従って、時間の経過とともに複数の段階で解放されてもよい。
【0100】
説明した実施形態は、六角形に配置された六つのセグメントをそれぞれ含むインサートに関するが、各インサートは、任意の数のセグメントを含むことができ、これらは任意の形状に配置できることを理解されたい。例えば、インサートは、円状に配置されてもよい二つのセグメントを具備することができる。代替的に、インサートは、三角形に配置されてもよい3つのセグメントを具備することができる。代替的に、インサートは、長方形、例えば正方形に配置されてもよい四つのセグメントを具備することができる。代替的に、インサートは五角形に配置されてもよい五つのセグメントを具備することができる。代替的に、インサートは、七角形に配置されてもよい七つのセグメントを具備することができる。代替的に、インサートは、八角形に配置されてもよい八つのセグメントを具備することができる等々である。セグメントの数は変更可能であり、セグメントは任意の形の多角形に配置できることは当業者には明らかであろう。これらの形状および配置の全ては、請求される発明の範囲内のものである。もちろん、ステーブの前面のリセスは、インサートの形状に対応する形状にすることができる。
【0101】
複数のインサートは、異なる形状および/またはサイズのインサートをふくんでいてもよい。さらに、インサートのセグメントの組は、異なる形状および/またはサイズのセグメントを含んでいてもよい。
【0102】
一実施形態では、ロケーターピース208は省略される。ロケーターピース208は、セグメント200a~fをリセス110の壁110bに完全に固定する働きをしないため、インサート200をリセス110内に固定するのには必須ではないことは明かである(むしろ、それはリテーナの内側部分204および外側部分206の機能である)。この実施形態では、(セグメントの内面の下側部分にある)アンダーカットもまた省略される。なぜなら、アンダーカットはロケーターピース208とのインターフェースとしてのみ機能するからである。
【0103】
一実施形態では、リテーナの内側部分および/または外側部分は、セグメントの内面との摩擦接触以外の手段によって、例えば、ネジ、ボルトまたはその他の種類のファスナーによって、または溶接によって、さらに固定される。そのような一実施形態では、ロケーターピースの直立ステムはネジを含み、リテーナの内側部分および/または外側部分の一方または両方は、ネジと係合するナットによって固定される。
【0104】
一実施形態では、リセス110の壁110bは、リセス110の中心軸線Zと平行であり、したがってテーパーを含まない。これにより、リセスの加工がより簡単になる。一方、この実施形態はあまり好ましくない。なぜなら、セグメント202a~fの外面はそれらに加えられる半径方向の力によってリセス110の壁に対して固定されるが、有利なウェッジ効果および強化なダブテール接続が得られないからである。
【0105】
図9a~図10bを参照すると、一実施形態では、各インサートの一つ以上のセグメントが(インサートの他のセグメントと比較して)拡大され、インサートがステーブに設置されるとき別のインサートの同様に拡大されたセグメントの同様の外面と接触するための外面を備える。これにより、ステーブ内の二つの隣接する列のインサートが互いに接触して、インサート間の負荷物質の通過を防ぐことができる連続した棚を形成することが可能となる。これは、図10bに示すように、ステーブの底部で特に有用であろう。これは、負荷物質がステーブの下にある炉を通って降下する前にステーブ上にできるだけ多くの負荷物質を保持しようとすることが望ましいためである。
【符号の説明】
【0106】
100 ステーブ
102 前面
104 後面
106a~d 縁部
110 リセス
110a 床
110b テーパー壁
200 インサート
200a セグメント
202 セグメント
202a セグメント
202a1 上面
202a2 下面
202a3 内面
202a4 外面
202a5 側面
202a6 アンダーカット
202a7 頂点
202b セグメント
202b2 下面
202b4 外面
202b5 側面
202c セグメント
202c2 下面
202c3 内面
202c4 外面
202c5 側面
202c6 アンダーカット
202d~f セグメント
202f2 下面
202f3 内面
202f4 外面
202f5 側面
202f6 アンダーカット
204 内側部分
204a 上面
204b 下面
204c 周壁
204d 縁部
204e 貫通孔
206 外側部分
206a 上面
206b 下面
206c 周壁
206d 貫通孔
208 ロケーターピース
208a 上面
208b 下面
208c 周壁
208d 端部
208e 側部
208f ステム
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6a
図6b
図6c
図6d
図7a
図7b
図7c
図7d
図7e
図8a
図8b
図8c
図8d
図9a
図9b
図10a
図10b