IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 花王株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-容器のリサイクル方法 図1
  • 特許-容器のリサイクル方法 図2
  • 特許-容器のリサイクル方法 図3
  • 特許-容器のリサイクル方法 図4
  • 特許-容器のリサイクル方法 図5
  • 特許-容器のリサイクル方法 図6
  • 特許-容器のリサイクル方法 図7
  • 特許-容器のリサイクル方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】容器のリサイクル方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 7/01 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
B29D7/01
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020563566
(86)(22)【出願日】2019-08-30
(86)【国際出願番号】 JP2019034170
(87)【国際公開番号】W WO2021038838
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】大塚 貴博
(72)【発明者】
【氏名】児玉 大輔
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/163269(WO,A1)
【文献】特開平08-281644(JP,A)
【文献】特開平10-146828(JP,A)
【文献】特開平10-323833(JP,A)
【文献】特開2002-200664(JP,A)
【文献】特表2008-532762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 7/00 ー 7/01
B29B 17/00 ー 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)~(4)の工程を含む、容器のリサイクル方法;
(1)第1樹脂フィルム層および第2樹脂フィルム層を含む複数のフィルム層が積層されたシート材により構成され、
前記シート材の周縁部の少なくとも一部どうしが接合されることによって製袋されて、前記第2樹脂フィルム層の内側に収容物を収容する収容領域が形成されており、
前記第1樹脂フィルム層と前記第2樹脂フィルム層との間に、前記第1樹脂フィルム層と前記第2樹脂フィルム層とが接合しているフィルム接合部と、充填材が封入されていて前記フィルム接合部よりも前記シート材の厚み方向に膨らんでいる充填材封入部と、を有する容器を回収する回収工程、
(2)前記回収工程において回収した前記容器を細断して細断物とし、前記細断物を洗浄する細断および洗浄工程、
(3)前記細断および洗浄工程において細断および洗浄された前記細断物を用いて再生樹脂を形成する再生樹脂形成工程、
(4)前記再生樹脂形成工程において形成された前記再生樹脂を用いて、前記シート材の少なくとも一部を形成するシート材形成工程。
【請求項2】
前記回収工程の前記容器は、前記第2樹脂フィルム層が、前記第1樹脂フィルム層の内側に配置されている、請求項1に記載の容器のリサイクル方法。
【請求項3】
前記回収工程の前記容器が、前記第1樹脂フィルム層の外面側および内面側の表面、ならびに前記第2樹脂フィルム層の外面側および内面側の表面から選ばれる少なくとも1面にインキ層を含む印刷層が形成されており、
前記印刷層が、前記フィルム層の前記表面から、前記細断および洗浄工程における水性溶媒による洗浄により前記細断物から脱離可能である、請求項1または2に記載の容器のリサイクル方法。
【請求項4】
前記細断および洗浄工程が、30℃以上の温水洗浄により前記細断物から前記印刷層を脱離する工程を含む、請求項3に記載の容器のリサイクル方法。
【請求項5】
前記回収工程の前記容器が、前記第1樹脂フィルム層、前記第2樹脂フィルム層、ならびに樹脂素材により構成される第3フィルム層を含む前記シート材により構成され、
前記シート材の周縁部の少なくとも一部どうしが接合されることによって製袋されて、前記第3フィルム層の内側に収容物を収容する収容領域が形成されている、請求項1または2に記載の容器のリサイクル方法。
【請求項6】
前記回収工程の前記容器が、前記第1樹脂フィルム層、前記第2樹脂フィルム層、ならびに樹脂素材および/または非樹脂素材により構成される第3フィルム層を含む前記シート材により構成され、
前記シート材の周縁部の少なくとも一部どうしが接合されることによって製袋されて、前記第3フィルム層の内側に収容物を収容する収容領域が形成されており、
前記回収工程において、前記容器から前記第1樹脂フィルム層および前記第2樹脂フィルム層を分離して回収する、請求項1または2に記載の容器のリサイクル方法。
【請求項7】
前記回収工程の前記容器が、前記第2樹脂フィルム層と前記第3フィルム層との少なくとも一部が互いに接合され、
前記第2樹脂フィルム層と前記第3フィルム層との前記接合が、前記フィルム接合部の前記接合よりも易剥離性である、請求項5または6に記載の容器のリサイクル方法。
【請求項8】
前記回収工程の前記容器が、前記第1樹脂フィルム層の外面側および内面側の表面、前記第2樹脂フィルム層の外面側および内面側の表面、ならびに前記第3フィルム層の外面側および内面側の表面から選ばれる少なくとも1面にインキ層を含む印刷層が形成されており、
前記印刷層が、前記フィルム層の前記表面から前記細断および洗浄工程における水性溶媒による洗浄により前記細断物から脱離可能である、請求項5~のいずれか1項に記載の容器のリサイクル方法。
【請求項9】
前記細断および洗浄工程が、30℃以上の温水洗浄により前記細断物から前記印刷層を脱離する工程を含む、請求項に記載の容器のリサイクル方法。
【請求項10】
前記シート材形成工程が、前記再生樹脂を用いて、前記シート材の前記第1樹脂フィルム層および/または前記第2樹脂フィルム層の少なくとも一部を形成する工程である、請求項1~のいずれか1項に記載の容器のリサイクル方法。
【請求項11】
前記再生樹脂形成工程が、洗浄された前記細断物を主原料として再生樹脂を形成する工程である、請求項1~10のいずれか1項に記載の容器のリサイクル方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器のリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のフィルムが積層され、その層間に空気などの充填材が封入された構造であるシート材容器として、例えば特許文献1には、収容物を収容する内容器と、複数のフィルム層を積層した被覆体構成シート材で構成されていて内容器を覆っている被覆体と、を備えるシート材容器であって、被覆体構成シート材は、複数のフィルム層どうしが接合しているフィルム領域(接合領域)と、複数のフィルム層の層間に空気などの充填材が存在していてフィルム領域よりも被覆体構成シート材の厚み方向に膨らんでいる充填材封入部とを備え、さらに、内容器と被覆体との間に外気を導入させる外気導入部を備えるシート材容器について記載されている。
先行技術文献
特許文献1 特許第6193535号公報
【発明の概要】
【0003】
本発明は、下記(1)~(4)の工程を含む、容器のリサイクル方法に関する。
(1)第1樹脂フィルム層および第2樹脂フィルム層を含む複数のフィルム層が積層されたシート材により構成され、
前記シート材の周縁部の少なくとも一部どうしが接合されることによって製袋されて、前記第2樹脂フィルム層の内側に収容物を収容する収容領域が形成されており、
前記第1樹脂フィルム層と前記第2樹脂フィルム層との間に、前記第1樹脂フィルム層と前記第2樹脂フィルム層とが接合しているフィルム接合部と、前記充填材が封入されていて前記フィルム接合部よりも前記シート材の厚み方向に膨らんでいる充填材封入部と、を有する容器を回収する回収工程、
(2)前記回収工程において回収された前記容器を細断して細断物とし、前記細断物を洗浄する細断および洗浄工程、
(3)前記細断および洗浄工程において細断および洗浄された前記細断物を用いて再生樹脂を形成する再生樹脂形成工程、
(4)前記再生樹脂形成工程において形成された前記再生樹脂を用いて、前記シート材の少なくとも一部を形成するシート材形成工程。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】本実施形態に係る容器のリサイクル方法で回収する容器の一例を示した斜視図である。
図2】本実施形態に係る容器のリサイクル方法の一例を示した工程図である。
図3】本実施形態に係る容器のリサイクル方法で回収する容器から分離した外容器の正面図である。
図4】本実施形態に係る容器のリサイクル方法の変形例を示した工程図である。
図5図1のV-V線に沿ったフィルム層の切断端面図である。
図6】本実施形態に係る容器のリサイクル方法で回収する容器の変形例のフィルム層を示す切断端面図である。
図7】本実施形態に係る容器のリサイクル方法で回収する容器の他の変形例のフィルム層を示す切断端面図である。
図8】本実施形態に係る容器のリサイクル方法で回収する容器のさらなる変形例のフィルム層を示す切断端面図である。
【発明の詳細な説明】
【0005】
特許文献1に記載されたシート材容器は、充填材封入部に充填材が封入されることによりその構造が維持されるため、シート材の薄肉化が可能であり、また、その収容物を使い切った後は、充填材封入部から充填材を除去してその剛性を失わせ、容器を小さく押しつぶすことができるため、廃棄物の削減が可能である。
しかしながら、環境負荷をより軽減するため、このようなシート材容器については、リサイクル性についてさらなる改善が求められており、特に、容器へのリサイクルが可能なシート材容器やそのリサイクル方法が求められている。本発明者の検討によれば、特許文献1に記載されたシート材容器は、廃棄物を削減できる点において優れているが、このシート材容器から再生したリサイクル材(シート材など)の品質などにおいてさらなる改善の余地がある。
【0006】
本発明によれば、分別回収が容易であり且つ容器へのリサイクルが可能な、容器のリサイクル方法を提供することができる。
【0007】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0008】
〔概要〕
まず、図2および図4を用いて本発明に係る容器のリサイクル方法の実施形態概要について説明する。
本発明に係る容器のリサイクル方法は、以下の実施形態を包含するものである。
【0009】
本実施形態に係る容器のリサイクル方法は、(1)第1樹脂フィルム層1および第2樹脂フィルム層2を含む複数のフィルム層が積層されたシート材により構成され、このシート材の周縁部の少なくとも一部どうしが接合されることによって製袋されて、第2樹脂フィルム層2の内側に収容物を収容する収容領域が形成されており、第1樹脂フィルム層1と第2樹脂フィルム層2との間に、第1樹脂フィルム層1と第2樹脂フィルム層2とが接合しているフィルム接合部と、充填材が封入されていてこのフィルム接合部よりもシート材の厚み方向に膨らんでいる充填材封入部5と、を有する容器を回収する回収工程、(2)この回収した容器を細断して細断物とし、この細断物を洗浄する細断および洗浄工程、(3)この細断および洗浄された細断物を用いて再生樹脂を形成する再生樹脂形成工程、(4)この形成された再生樹脂を用いて、上記シート材の少なくとも一部を形成するシート材形成工程、を含む。
【0010】
つまり、本実施形態に係る容器のリサイクル方法は、図2および図4に示すように、充填材が封入された容器(充填材封入容器)を回収してリサイクル材料である再生樹脂(樹脂ペレットなど)を形成し、この再生樹脂を用いてリサイクル材である容器用シート材を形成する、容器の再資源化および再生利用方法(マテリアルリサイクル方法)である。
【0011】
〔回収工程において回収する容器について〕
次に、図1図8を用いて、本実施形態に係る容器のリサイクル方法の回収工程において回収する容器について詳細に説明する。
【0012】
本実施形態に係る容器のリサイクル方法(第1実施形態)の回収工程において回収する容器は、例えば図5および図6に示すような、第1樹脂フィルム層1および第2樹脂フィルム層2を含む複数のフィルム層が積層されたシート材により構成され、このシート材の周縁部の少なくとも一部どうしが接合されることによって製袋されて、第2樹脂フィルム層2の内側に収容物を収容する収容領域が形成された容器である。
そして、この容器は、例えば図5に示すように、第1樹脂フィルム層1と、この第1樹脂フィルム層1の内側に配置された第2樹脂フィルム層2との間に、第1樹脂フィルム層1と第2樹脂フィルム層2とが接合しているフィルム接合部と、充填材が存在していてフィルム接合部よりもシート材の厚み方向に膨らんでいる充填材封入部5を備える。なお、第1樹脂フィルム層1と第2樹脂フィルム層2との間には、フィルム接合部および充填材封入部5の他に、さらに非接合領域を備えていても良い。
【0013】
なお、この第1実施形態の回収工程において回収する容器は、例えば図7および図8に示すように、第1樹脂フィルム層1および第2樹脂フィルム層2に加えて、第2樹脂フィルム層2の内側に配置される樹脂素材(ポリマー樹脂材料により構成された可撓性を有する素材)により構成された第3フィルム層3を含むシート材により構成され、このシート材の周縁部の少なくとも一部どうしが接合されることによって製袋されて、第3フィルム層3の内側に収容物を収容する収容領域が形成されている容器であっても良い。
この容器は、第3フィルム層3も樹脂素材により構成されているため、この第3フィルム層3を含む容器全体をそのまま回収して次の細断および洗浄工程を行うことができる。
【0014】
また、本実施形態に係る容器のリサイクル方法においては、変形例(第2実施形態)として、その回収工程において、第1樹脂フィルム層1および第2樹脂フィルム層2に加えて、第2樹脂フィルム層2の内側に配置される樹脂素材および/または非樹脂素材(ポリマー樹脂を含まない材料により構成された素材)により構成された第3フィルム層3を含むシート材により構成され、このシート材の周縁部の少なくとも一部どうしが接合されることによって製袋されて、第3フィルム層3の内側に収容物を収容する収容領域が形成されている容器から、さらに、例えば図3に示すような第1樹脂フィルム層1および第2樹脂フィルム層2を分離して回収しても良い。この第2実施形態の場合には、回収した容器に収容されていた収容物の残渣を洗浄する工程を省略することができる。
【0015】
なお、図6図8においては、本実施形態に係る容器のリサイクル方法で回収する容器のフィルム構成をわかり易く示すために、便宜上、第1樹脂フィルム層1、第2樹脂フィルム層2および第3フィルム層3を離した状態として図示している。しかし、これらのフィルム層は、フィルム接合されている状態において、充填材除去後の充填材封入部5および非接合領域では、各フィルム層どうしが非接合で当接していても良い。
【0016】
そして、この容器の充填材封入部5は、例えば図1に示すように、容器本体の周縁に沿って一繋がりとなるように形成されている。そして、充填材封入部5に充填材が封入されてシート材の厚み方向に膨らむことにより、容器本体に剛性が付与されている。つまり、容器本体に高い自立性、圧縮強度およびスクイズバック性が付与されている。
なお、この充填材封入部5は、一繋がりではなく、互いに独立して複数形成されていても良く、また、容器本体の周縁以外に形成されていても良く、その数や形成領域は特段限定されない。そして、容器に収容された収容物を使い切った後には、この充填材封入部5から充填材を除去することによって容器本体は剛性を失うため、この容器本体を容易に小さく押しつぶすことができる。なお、本実施形態においては、このような充填材を除去した容器本体を回収しても良く、また、容器を回収した後に充填材封入部5からの充填材除去を行っても良い。あるいは、充填材が気体である場合などにおいては、回収した容器をそのまま細断することによって充填材除去を細断と同時に行っても良い。
【0017】
なお、この充填材封入部5に封入されている充填材は、流体(気体または液体)、固体(例えば粉粒体、樹脂ペレット等)または半固体(例えば、発泡材等)であって良いが、容器回収後における充填材除去のし易さの観点から、この充填材は気体であることが好ましい。充填材とする気体としては、空気、窒素、酸素、不活性ガス(アルゴン、ヘリウムなど)などが例示され、コストなどの観点から空気であるのがより好ましい。
【0018】
さらに、本実施形態に係る容器のリサイクル方法で回収する、充填材封入部5に充填材が封入された容器は、例えば図1に示すように、自立可能な形態となるように容器底部となる底マチ部101が設けられていても良く、さらにこの底マチ部101とは反対側の端部に容器天面部となる天マチ部102が設けられていても良い。あるいは、自立せず寝かせて配置することを想定した形態のものであっても良い。
さらに、本実施形態に係る容器のリサイクル方法で回収する容器には、収容物を収容あるいは排出するための開口部が設けられていても良い。そして、この開口部にはさらに、例えば図1に示すような、ポンプ付きキャップなどにより封止されるスパウト103が設けられていても良い。なお、このスパウト103は、リサイクル性を高める観点から、フィルム層のいずれかと同じ素材により構成されたものであるか、またはフィルム層との分離が容易な構成であるのが好ましい。また、このスパウト103には、上記した開口部の封止を行うネジ山が設けられていても良い。あるいは、本実施形態に係る容器のリサイクル方法で回収する容器は、密封されたフィルム層の一部が切り取られて開封された構成であっても良い。
【0019】
そして、本実施形態に係る容器のリサイクル方法で回収する容器は、収容領域に収容された収容物を使い切った後の空き容器であるが、この収容物の種類は、特に限定されず、例えば、シャンプー、リンス、ボディーソープ、洗顔料、洗剤、漂白剤、柔軟剤、飲料、食品、エンジンオイルなどが挙げられる。そして、容器回収前および/または回収後において、容器の収容領域内にわずかに残る収容物は洗浄により概ね除去されるが、後述する水性溶媒による洗浄により脱離可能である印刷層7を備える容器を回収する場合には、この印刷層7と同時に収容物残渣を洗浄、除去できるという観点から、この収容物も水性溶媒により除去可能なものであるのが好ましい。
なお、この収容物は、液体(ペースト状のものを含む)であっても良いし、固体(例えば、粒状のもの(顆粒状のものを含む)、或いは粉状のものなど)であっても良い。
収容物が液体である場合には、その粘度は、例えば30℃において1mPa・s以上であることが好ましく、そして、12万mPa・s以下であることが好ましく、6万mPa・s以下であることがより好ましい(いずれもB型粘度計(例えば東機産業社製ビスコメーターTV-10またはビスコメーターTVB-10など)により測定)。
【0020】
〔第1実施形態において回収する容器の構成〕
次に、図5図8を用いて、本実施形態に係る容器のリサイクル方法における第1実施形態において回収する容器の構成についてより詳細に説明する。
【0021】
この第1実施形態において回収する容器は、第1樹脂フィルム層1および第2樹脂フィルム層2を含む複数のフィルム層が積層されたシート材により構成され、第2樹脂フィルム層2の内側に収容物を直接的に、つまり第2樹脂フィルム層2に収容物が直接接触するように、あるいは間接的に、つまり第2樹脂フィルム層2の内側に配置された他のフィルム層の内側に収容物が直接接触するように収容する収容領域が形成されており、第1樹脂フィルム層1と第2樹脂フィルム層2との間に、フィルム接合部と、充填材封入部5とを有する。
具体的には、この容器は、その最外フィルム層(容器を形成したときに最も外面側に配置され、容器全体を覆っているフィルム層)として樹脂素材により構成される第1樹脂フィルム層1と、この第1樹脂フィルム層1の内側(容器内部側)に配置された樹脂素材により構成される第2樹脂フィルム層2とを含む複数のフィルム層が積層されたシート材により構成される。つまり、最外フィルム層である第1樹脂フィルム層1の内側に第2樹脂フィルム層2が配置され、この第2樹脂フィルム層2の内側に、シート材の周縁部の少なくとも一部どうしが接合されることによって製袋されて形成された収容物を収容する収容領域が存在する。なお、この第1実施形態において回収する容器は、第2樹脂フィルム層2と収容領域との間に、例えば図7および図8に示される構成(第2樹脂フィルム層の内側に樹脂素材により構成される第3フィルム層3が配置される構成)のように、さらに1以上の樹脂フィルム層が配置されている構成であっても良い。
【0022】
そして、第1樹脂フィルム層1と第2樹脂フィルム層2との間に、充填材が存在していてフィルム接合部よりもシート材の厚み方向に膨らんでいる、容器本体の剛性を維持する機能を有する充填材封入部5と、この充填材封入部5を囲むようにして形成された、第1樹脂フィルム層1と第2樹脂フィルム層2とが接合しているフィルム接合部とが備わる。
なお、この第1樹脂フィルム層1および第2樹脂フィルム層2がヒートシール性を有する樹脂素材により構成される場合には、このフィルム接合部は、ヒートシールにより接合されたものであることが好ましく、この際のヒートシール条件は、上記樹脂素材の特性などにより適宜設定を行えば良いが、例えば110℃以上230℃以下のシール温度、0.1MPa以上1.0MPa以下のシール圧力、0.1秒以上10秒以下のシール時間において行うことなどが例示される。
【0023】
ここで、この第1実施形態において回収する容器の第1樹脂フィルム層1および第2樹脂フィルム層2は、シート材の基材となる樹脂層(樹脂素材により構成される層)であり、限定されるものではないが、例えばナイロン(Ny)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリエチレン(PE)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)などにより構成されているのが好ましい。
また、第1樹脂フィルム層1および第2樹脂フィルム層2は、基材層(フィルムの基材となる層)単一により構成されていても良く、あるいは基材層または基材層とこれ以外の層(付加層や接合層など)とが複数積層された構成であっても良い。なお、この積層は、ヒートシールによる接合により積層された(ラミネート接合層が含まれない)構成、あるいは、ドライラミネート、押出ラミネート、共押出成形などによる接合により積層されたラミネート接合層が含まれる構成のいずれであっても良い。そして、ラミネート接合層が含まれる場合には、このラミネート接合層は金属蒸着層など樹脂素材以外の材料が含まれていても良い。
また、これらのフィルム層の基材層以外の層(付加層)として、印刷層7が形成されるフィルム層の表面に、印刷層7の下地となりインキのりを高める機能を有する層を設けても良い。
さらに、第1実施形態において回収する容器が第1樹脂フィルム層1および第2樹脂フィルム層2に加えて樹脂素材により構成される第3フィルム層3などの他の樹脂フィルム層を含むシート材により構成されている場合には、この他の樹脂フィルム層も上記した樹脂素材により構成されているのが好ましい。
【0024】
例えば、この第1実施形態において回収する容器のシート材の構成の一例としては、以下の層構造が示される。
まず、第1樹脂フィルム層1は、図5図8に示すように、第1-1基材層、第1-2基材層、第1-3基材層および第1-4基材層を容器外面側からこの順に積層することにより構成された4層構造をなしている。
このうち第1-1基材層は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)または延伸ナイロン(ONy)により構成されている。第1-1基材層の主な機能としては、容器の外側に光沢感および印刷適性をもたらすとともに容器の剛性を確保することが挙げられる。
第1-2基材層は、例えば、この第1-2基材層における第1-1基材層側の面にシリカおよび/またはアルミナが蒸着されたポリエチレンテレフタレートにより構成された透明蒸着PETの層である。第1-2基材層の主な機能としては、容器にガスバリア性をもたらすことが挙げられる。
第1-3基材層は、例えば、延伸ナイロンにより構成されている。第1-3基材層の主な機能としては、容器の耐ピンホール性を確保することが挙げられる。
第1-4基材層は、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)により構成されている。第1-4基材層の主な機能としては、第2樹脂フィルム層2とのヒートシール性、第1樹脂フィルム層1どうしのヒートシール性を確保することが挙げられる。
【0025】
次に、第2樹脂フィルム層2の層構造としては、これも図5図8に示すように、第1樹脂フィルム層1の第1-1基材層から第1-4基材層と同様の層構造(第2-1基材層から第2-4基材層)に加えて、例えば直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)により構成されている第2-5基材層を備える構造が挙げられる。第2-5基材層は、第2-1基材層と隣接した層であり、第2樹脂フィルム層2における第2-4基材層とは反対側の面を構成している。第2-5基材層の主な機能としては、第1樹脂フィルム層1とのヒートシール性を確保することが挙げられる。
ただし、第1樹脂フィルム層1および第2樹脂フィルム層2の層構造は、上記の例に限らず、また、第1樹脂フィルム層1および第2樹脂フィルム層2を構成する各層の材料も、上記の例に限らない。また、樹脂素材により構成される第3フィルム層3をさらに備えるシート材の場合には、この第3フィルム層3の構成は、後述する第2実施形態において例示している第3フィルム層3の構成と同じものが例示される。
【0026】
なお、この第1実施形態において回収する容器は、シート材を構成する複数のフィルム層(特に基材層)がいずれも共通の樹脂(分子の化学構造として主鎖および側鎖の分子骨格が共通している樹脂)により構成された素材を含み、この素材が、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)などのポリエチレン系素材、または延伸ポリプロピレン(OPP)、未延伸ポリプロピレン(CPP)、アイソタクチックPP、シンジオタクチックPP、アタクチックPP、ランダムPP、ブロックPPなどのポリプロピレン系素材、またはポリエチレンテレフタレート(PET)、非晶性ポリエチレンテレフタレート(非晶性PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)などのポリエステル系素材、または延伸ナイロン(ONy)、未延伸ナイロン(CNy)、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、MXD6などのポリアミド系素材のいずれかであるのがより好ましく、上記ポリエチレン系素材であるのが特に好ましい。回収する容器がポリエチレン系素材により構成されているため、ポリエチレン系素材の容器リサイクルシステムが構築でき、リサイクル材の物性および品質もより高まるからである。
さらに、この容器は、リサイクル材の物性および品質をさらに高めるという観点から、全てのフィルム層の基材層が共通の樹脂により構成された素材により構成され、この素材以外の素材を実質的に含まないことがより好ましい。なお、この「実質的に含まない」とは、質量割合としてフィルムの1%未満であることを意味し、0.5%未満であることが好ましく、0%であることが最も好ましい。
【0027】
また、この第1実施形態において回収する容器は、シート材の第1樹脂フィルム層1における、最も外面側に位置する最外面層がポリエチレンテレフタレート(PET)などにより構成され、この最外面層を除く層はポリビニルアルコール(PVA)により構成されており、シート材の第2樹脂フィルム層2や他の樹脂フィルム層がポリビニルアルコール(PVA)により構成されていても良い。
ポリビニルアルコールは水性溶媒による洗浄によって溶解除去が可能であるため、ポリエチレンテレフタレートの容器リサイクルシステムが構築でき、リサイクル材の物性および品質がより高まるからである。なお、上記ポリエチレンテレフタレートとしては、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(二軸延伸PET)などが好適例として示される。
【0028】
例えば、第1樹脂フィルム層1が、外面側の表面11から内面側の表面13に向かって順に、PETにより構成される第1-1基材層、およびPVAにより構成される第1-2基材層が積層され、他の樹脂フィルム層がいずれもPVAにより構成される単層である構成の容器を回収するのが、ポリエチレンテレフタレート材へのリサイクルが容易となるため非常に好ましい。
【0029】
ここで、本発明では、上記容器を構成するシート材の各フィルム層において、容器を形成したときに容器外部側(外側)となる表面を「外面側の表面」といい、容器内部側(内側(収容領域側))となる表面を「内面側の表面」という。
【0030】
さらに、この第1実施形態において回収する容器は、第1樹脂フィルム層1の外面側の表面11および内面側の表面13、ならびに第2樹脂フィルム層2の外面側の表面21および内面側の表面23から選ばれる少なくとも1面に、インク層7-2を含み、フィルム層表面から水性溶媒による洗浄により脱離可能である印刷層7が形成されているのが好ましい。回収した容器の細断物から印刷層7を水性溶媒(温水、アルカリ水、酸性水等)による洗浄により容易に脱離させることができ、この洗浄した細断物を用いて形成した再生樹脂の着色を抑制することができるからである。
また、この回収する容器が、樹脂素材により構成される第3フィルム層3をさらに含むシート材により構成された容器である場合には、第1樹脂フィルム層1の外面側の表面11および内面側の表面13、第2樹脂フィルム層2の外面側の表面21および内面側の表面23、ならびに第3フィルム層3の外面側の表面31および内面側の表面33から選ばれる少なくとも1面に上記印刷層7が形成されているのが好ましい。
なお、本発明において、「水性溶媒による洗浄により脱離可能」とは、印刷層7が水性溶媒(水、または水を50質量%以上含む親水性溶媒)と接触することによってフィルム層の表面から脱離することが可能な構成であることを意味し、水性溶媒中における浸漬、および流水のほか、撹拌、電解洗浄、スプレー洗浄、スクラブ洗浄、超音波洗浄などの、物理的な力をさらに加える方法により脱離可能な構成も包含される。さらに、水性溶媒中における浸漬等に限らず、例えば加熱した蒸気(水蒸気など)を用いた方法により脱離可能な構成も包含される。
また、本発明において、フィルム層の表面からの「印刷層の脱離」とは、フィルム層の表面に形成された印刷層7のうち少なくともインキ層7-2の90%以上が脱離することを意味し、この割合は95%以上であることが好ましく、98%以上であることがさらに好ましい。そして、印刷層7全体の90%以上がこの表面から脱離する構成であっても良い。なお、ここで言う割合とは、質量割合を意味する。
【0031】
ここで、この印刷層7は、印刷インキ(顔料、バインダー樹脂等)により構成されるインキ層7-2を少なくとも含む層であり、このインキ層7-2に加えて、インキ層7-2の表面を保護する機能を有するコート層7-1などを含んでも良い。なお、このインキ層7-2は、例えば、オフセット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷などによって形成することができる。さらに、コート層7-1は、無色印刷層であるメジウム印刷層であっても良い。さらに、印刷層7を水性溶媒による洗浄により脱離可能とするために、この印刷層7は、水性溶媒に溶解可能な下地層7-3を備えていても良い。この下地層7-3は、例えば、オフセット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷などにより形成することができるが、印刷以外の方法により形成することも可能である。
【0032】
そして、この印刷層7は、印刷層7として水性溶媒による洗浄により脱離可能である構成であれば良い。具体的には、例えば、印刷層7がフィルム層の表面に形成された水性溶媒に溶解可能な下地層7-3と、この下地層7-3の表面に形成されたインキ層7-2と、このインキ層7-2の表面に形成された水性溶媒に溶解可能なコート層7-1とを含む構成などが示される。この構成の場合、インキ層7-2は水性溶媒に溶解可能でなくとも、下地層7-3が水性溶媒に溶解可能であるため、フィルム層表面からインキ層7-2を含む印刷層7が水性溶媒による洗浄により脱離可能となる。つまり、フィルム層表面からインキ層7-2ごと洗浄により脱離可能となる。一方、印刷層7が水性溶媒に溶解可能な下地層7-3を備えていない場合などでは、このインキ層7-2に水性溶媒に溶解可能な材料が含まれていることが好ましく、例えば、インキ層7-2のバインダー樹脂(好ましくはインキ層7-2の30質量%以上、より好ましくは50質量%以上を構成するバインダー樹脂)が水性溶媒に溶解可能な材料により構成されているものや、バインダー樹脂中の一部(好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上)に水性溶媒に溶解可能であるバインダー樹脂が含まれているものなどが好適である。また、この印刷層7の厚さ(シート材の主面に対して垂直に測定される寸法)は、0.5μm以上であることが好ましい。そして、洗浄による脱離をより容易とするために、30μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
これにより、容器を回収して細断後に、アルカリ洗浄、酸洗浄、温水洗浄などの水性溶媒による洗浄を行うと、細断物からインキ層7-2を含む印刷層7容易に除去することができる。この結果、洗浄した細断物からリサイクル材料である再生樹脂を作製した際に、この再生樹脂の着色が発生し難くなる。
【0033】
特に、この印刷層7は、30℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上の温水洗浄によりフィルム層の表面から脱離可能である構成、つまり、印刷層7に、30℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上の温水に溶解可能である材料を含む構成が好適である。印刷層7の温水洗浄による脱離が非常に容易であり、且つ、洗浄に有機溶媒だけでなくアルカリや酸なども使用する必要がないため、環境負荷が非常に少ないからである。
なお、このような材料としては、樹脂の生成に係る重合を構成する親水基以外の親水性基を有するモノマーユニットAと、樹脂の生成に係る重合を構成する親水基以外の親水性基を有さないモノマーユニットBとを有し、全モノマーユニットの合計に対するモノマーユニットAの割合が5mol%以上35mol%以下である温度応答性の水溶性樹脂が例示される。また、この水溶性樹脂100質量部に対して水溶性樹脂以外の塩を1質量部以上10質量部以下程度混合した混合物であっても良い。このような温度応答性の水溶性樹脂は、優れた耐湿性を有しながら30℃以上の温水に対する溶解速度が極めて高いものである。そして、この温度応答性の水溶性樹脂は、下地層7-3に用いた場合でも、インキ層7-2等との接着性が非常に良好である。
以下に、この温度応答性の水溶性樹脂について詳細に説明する。
【0034】
[モノマーユニットA]
モノマーユニットAは、樹脂の生成に係る重合を構成する親水基以外の親水性基を有する。このモノマーユニットAは、親水性基を有するモノマーユニットであれば特に限定されない。また、このモノマーユニットAを誘導するためのモノマーをモノマーAとも称する。
【0035】
上記親水性基としては、水溶性樹脂の中性水への溶解性を向上させる観点、および水溶性ポリエステル樹脂製造時における重合反応の容易さの観点から、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、第4級アンモニウム塩基、オキシアルキレン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボキシル塩基、リン酸基、リン酸塩基、スルホン酸基、およびスルホン酸塩基からなる群より選ばれる1種以上が例示される。これらの中でも水溶性樹脂の耐熱性を向上させる観点から、第4級アンモニウム塩基、オキシアルキレン基、カルボキシル塩基、リン酸塩基、およびスルホン酸塩基からなる群より選ばれる1種以上が好ましく、第4級アンモニウム塩基、オキシアルキレン基、およびスルホン酸塩基からなる群より選ばれる1種以上がより好ましく、スルホン酸塩基がさらに好ましい。
【0036】
上記スルホン酸塩基は、水溶性樹脂の中性水への溶解性を向上させる観点、および水溶性ポリエステル樹脂製造時における重合反応の容易さの観点から、-SO(ただし、Mはスルホン酸塩基を構成するスルホン酸基の対イオンを示し、水溶性樹脂の中性水への溶解性を向上させる観点から金属イオンおよびアンモニウムイオンからなる群より選ばれる1種以上が好ましく、金属イオンからなる群より選ばれる1種以上がより好ましく、アルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンからなる群より選ばれる1種以上がさらに好ましく、アルカリ金属イオンからなる群より選ばれる1種以上がさらに好ましく、ナトリウムイオンおよびカリウムイオンからなる群より選ばれる1種以上がさらに好ましく、ナトリウムイオンがさらに好ましい)で表されるスルホン酸塩基が好ましい。
【0037】
水溶性樹脂の全モノマーユニットの合計に対する上記モノマーユニットAの割合は、水溶性樹脂の中性水への溶解性を向上させる観点から、5mol%以上であり、7mol%以上が好ましく、10mol%以上がより好ましく、12mol%以上がさらに好ましく、耐吸湿性を向上させる観点から、35mol%以下であり、30mol%以下が好ましく、20mol%以下がより好ましく、15mol%以下がさらに好ましく、13mol%以下がさらに好ましい。また、水溶性樹脂の全モノマーユニットの合計に対する上記モノマーユニットAの割合は、水溶性樹脂の中性水への溶解性および耐吸湿性を向上させる観点から、5~35mol%であり、7~30mol%が好ましく、10~20mol%がより好ましく、12~15mol%がさらに好ましい。
【0038】
[モノマーユニットB]
上記モノマーユニットBは上記親水性基を有さない。このモノマーユニットBを誘導するためのモノマーをモノマーBとも称する。
【0039】
水溶性樹脂中の全モノマーユニットの物質量の合計に対する、水溶性樹脂中の上記モノマーユニットBの物質量の割合は、水溶性樹脂の耐吸湿性を向上させる観点から、15mol%以上が好ましく、25mol%以上がより好ましく、30mol%以上がさらに好ましく、水溶性樹脂の中性水への溶解性を向上させる観点から、45mol%以下が好ましく、42mol%以下がより好ましく、40mol%以下がさらに好ましい。また、水溶性樹脂中の全モノマーユニットの物質量の合計に対する、水溶性樹脂中の前記モノマーユニットBの物質量の割合は、水溶性樹脂の中性水への溶解性および耐吸湿性を向上させる観点から、15~45mol%が好ましく、25~42mol%がより好ましく、30~40mol%がさらに好ましい。
【0040】
水溶性樹脂の重量平均分子量は、印刷層7などの層強度の観点から、1000以上が好ましく、5000以上がより好ましく、10000以上がさらに好ましく、15000以上がさらに好ましく、水溶性樹脂の中性水への溶解性を向上させる観点から、80000以下が好ましく、50000以下がより好ましく、30000以下がさらに好ましく、20000以下がさらに好ましい。なお、この重量平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算で測定する。
【0041】
水溶性樹脂の例としては、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性ポリアミド樹脂、水溶性ポリイミド樹脂、水溶性アクリル樹脂、水溶性ポリウレタン樹脂、水溶性ポリアリルアミン樹脂、水溶性フェノール樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性フェノキシ樹脂、水溶性尿素樹脂、水溶性メラミン樹脂、およびポリビニルアルコール樹脂、並びにこれらの樹脂の変性物が挙げられる。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、水溶性ポリエステル樹脂および水溶性ポリアミド樹脂からなる群より選ばれる1種以上が好ましく、水溶性ポリエステル樹脂がより好ましい。
【0042】
〔水溶性ポリエステル樹脂〕
水溶性ポリエステル樹脂としては、上記親水性基を有する親水性モノマーユニット(モノマーユニットA)、上記親水性基を有さないジカルボン酸モノマーユニット(モノマーユニットB)、およびジオールモノマーユニットを有する水溶性ポリエステル樹脂が例示できる。
【0043】
(親水性モノマーユニット)
水溶性ポリエステル樹脂は、上記親水性基を有する親水性モノマーユニットを有する。上記親水性モノマーユニットは、上記親水性基を有するモノマーユニットであれば特に限定されないが、水溶性樹脂の中性水への溶解性および耐吸湿性を向上させる観点から、上記親水性基を有する芳香族ジカルボン酸モノマーユニットが好ましい。
【0044】
上記モノマーAは、水溶性樹脂の中性水への溶解性および耐吸湿性を向上させる観点、ならびに水溶性ポリエステル樹脂製造時における重合反応の容易さの観点から、カルボン酸、アミン、アミノ酸からなる群より選ばれる1種以上が好ましく、カルボン酸がより好ましい。このカルボン酸の中でも、同様の観点から芳香族カルボン酸が好ましく、ヒドロキシ基含有芳香族ジカルボン酸、第1級アミノ基含有芳香族ジカルボン酸、スルホン酸基含有芳香族ジカルボン酸、およびスルホン酸塩基含有芳香族ジカルボン酸からなる群より選ばれる1種以上がより好ましい。これらの中でも同様の観点からヒドロキシフタル酸、アミノフタル酸、スルホフタル酸、およびスルホナフタレンジカルボン酸からなる群より選ばれる1種以上が好ましく、スルホフタル酸からなる群より選ばれる1種以上がさらに好ましく、スルホイソフタル酸およびスルホテレフタル酸からなる群より選ばれる1種以上がさらに好ましく、5-スルホイソフタル酸がさらに好ましい。
【0045】
水溶性ポリエステル樹脂中の上記親水性基の含有量は、水溶性樹脂の中性水への溶解性を向上させる観点から、0.5mmol/g以上が好ましく、0.6mmol/g以上がより好ましく、0.7mmol/g以上がさらに好ましく、耐吸湿性を向上させる観点から、3.0mmol/g以下が好ましく、2.0mmol/g以下がより好ましく、1.5mmol/g以下がさらに好ましい。また、水溶性ポリエステル樹脂中の上記親水性基の含有量は、水溶性樹脂の中性水への溶解性および耐吸湿性を向上させる観点から、0.5~3.0mmol/gが好ましく、0.6~2.0mmol/gがより好ましく、0.7~1.5mmol/gがさらに好ましい。
【0046】
水溶性ポリエステル樹脂の全モノマーユニットの合計に対する上記親水性モノマーユニットの割合は、水溶性樹脂の中性水への溶解性を向上させる観点から、5mol%以上であり、7mol%以上が好ましく、10mol%以上がより好ましく、12mol%以上がさらに好ましく、耐吸湿性を向上させる観点から、35mol%以下であり、30mol%以下が好ましく、20mol%以下がより好ましく、15mol%以下がさらに好ましく、13mol%以下がさらに好ましい。また、水溶性ポリエステル樹脂の全モノマーユニットの合計に対する上記親水性モノマーユニットの割合は、水溶性樹脂の中性水への溶解性および耐吸湿性を向上させる観点から、5~35mol%であり、7~30mol%が好ましく、10~20mol%がより好ましく、12~15mol%がさらに好ましい。
【0047】
(上記親水性基を有さないジカルボン酸モノマーユニット)
水溶性ポリエステル樹脂は、上記親水性基を有さないジカルボン酸モノマーユニット(以下、疎水性ジカルボン酸モノマーユニットとも称する)を有する。本発明では、この疎水性ジカルボン酸モノマーユニットを誘導するためのジカルボン酸をジカルボン酸とも称する。
【0048】
上記ジカルボン酸は、水溶性樹脂の中性水への溶解性および耐吸湿性を向上させる観点、ならびに水溶性ポリエステル樹脂製造時における重合反応の容易さの観点から、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、および脂環式ジカルボン酸からなる群より選ばれる1種以上が好ましい。これらの中でも、同様の観点から、テレフタル酸、イソフタル酸、2,5-フランジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、および1,3-アダマンタンジカルボン酸からなる群より選ばれる1種以上がより好ましく、テレフタル酸、2,5-フランジカルボン酸、および2,6-ナフタレンジカルボン酸からなる群より選ばれる1種以上がさらに好ましく、2,6-ナフタレンジカルボン酸がさらに好ましい。
【0049】
水溶性ポリエステル樹脂中の全モノマーユニットの物質量の合計に対する、水溶性ポリエステル樹脂中の上記疎水性ジカルボン酸モノマーユニットの物質量の割合は、水溶性樹脂の耐吸湿性を向上させる観点から、15mol%以上が好ましく、25mol%以上がより好ましく、30mol%以上がさらに好ましく、水溶性樹脂の中性水への溶解性を向上させる観点から、45mol%以下が好ましく、42mol%以下がより好ましく、40mol%以下がさらに好ましい。また、水溶性ポリエステル樹脂中の全モノマーユニットの物質量の合計に対する、水溶性ポリエステル樹脂中の上記疎水性ジカルボン酸モノマーユニットの物質量の割合は、水溶性樹脂の中性水への溶解性および耐吸湿性を向上させる観点から、15~45mol%が好ましく、25~42mol%がより好ましく、30~40mol%がさらに好ましい。
【0050】
水溶性ポリエステル樹脂中の上記親水性モノマーユニットと上記疎水性ジカルボン酸モノマーユニットのmol比(上記親水性モノマーユニット/上記疎水性ジカルボン酸モノマーユニット)は、水溶性樹脂の中性水への溶解性および耐吸湿性を向上させる観点から、10/90以上が好ましく、15/85以上がより好ましく、18/82以上がさらに好ましく、20/80以上がさらに好ましく、同様の観点から70/30以下が好ましく、65/35以下がより好ましく、60/40以下がさらに好ましく、40/60以下がさらに好ましく、30/70以下がさらに好ましい。
【0051】
(ジオールモノマーユニット)
水溶性ポリエステル樹脂は、ジオールモノマーユニットを有する。このジオールモノマーユニットを誘導するためのジオールを、ジオールCとも称する。
【0052】
上記ジオールCとしては、脂肪族ジオール、芳香族ジオール等を用いることができる。水溶性ポリエステル樹脂の製造コストの観点から、脂肪族ジオールが好ましい。
【0053】
上記ジオールCの炭素数は、水溶性樹脂の中性水への溶解性および耐吸湿性を向上させる観点から、2以上が好ましく、同様の観点から、31以下が好ましく、25以下がより好ましく、20以下がさらに好ましく、15以下がさらに好ましい。
【0054】
上記脂肪族ジオールとしては、鎖式ジオール、および環式ジオールからなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。水溶性樹脂の中性水への溶解性および耐吸湿性を向上させる観点から、鎖式ジオールが好ましい。
【0055】
上記鎖式ジオールの炭素数は、水溶性樹脂の中性水への溶解性および耐吸湿性を向上させる観点から、2以上が好ましく、同様の観点から、6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下がさらに好ましく、2がさらに好ましい。
【0056】
上記ジオールCは、エーテル酸素を有していても良いが、上記ジオールCが鎖式脂肪族のジオールの場合は、水溶性樹脂の中性水への溶解性および耐吸湿性を向上させる観点から、エーテル酸素の数は1以下が好ましく、上記ジオールC1が環式脂肪族のジオールの場合は、同様の観点から、エーテル酸素の数は2以下が好ましい。
【0057】
上記鎖式ジオールは、水溶性樹脂の中性水への溶解性および耐吸湿性を向上させる観点から、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールからなる群より選ばれる1種以上が好ましく、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、および1,3-プロパンジオールからなる群より選ばれる1種以上がより好ましく、エチレングリコールがさらに好ましい。
【0058】
上記ジオールCがエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、およびジプロピレングリコールからなる群より選ばれる1種以上を含有する場合、水溶性ポリエステル樹脂中の全ジオールモノマーユニットの合計に対する、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、およびジプロピレングリコールの合計の割合は、水溶性樹脂の中性水への溶解性および耐吸湿性を向上させる観点から、80mol%以上が好ましく、90mol%以上がより好ましく、95mol%以上がさらに好ましく、98mol%以上がさらに好ましく、実質的に100mol%がさらに好ましく、100mol%がさらに好ましい。なお、この実質的に100mol%とは、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、およびジプロピレングリコール以外の物質が不可避的に混入する場合を含む意味である。
【0059】
水溶性ポリエステル樹脂は、水溶性樹脂の中性水への溶解性および耐吸湿性を向上させる観点から、上記親水性モノマーユニットを含む全ジカルボン酸モノマーユニットの合計に対する、上記親水性モノマーユニットの割合、および上記ジカルボン酸モノマーユニットの割合が、それぞれ10~70mol%、および30~90mol%であり、上記ジカルボン酸モノマーユニットを得るためのジカルボン酸が2,6-ナフタレンジカルボン酸である水溶性ポリエステル樹脂が好ましい。
水溶性ポリエステル樹脂としては、以下の一般式(1)が例示できる。
【0060】
【化1】
(上記一般式(1)中、p1はエチレン2,6-ナフタレンジカルボキシレートの重合度、q1はエチレン5-スルホイソフタレートの重合度の数を表す。ただし、エチレン2,6-ナフタレンジカルボキシレートとエチレン5-スルホイソフタレートはブロック結合またはランダム結合であり、水溶性樹脂組成物の中性水への溶解性を向上させる観点からランダム結合がより好ましい。)
【0061】
水溶性ポリエステル樹脂は、その効果を損なわない範囲で、上記親水性モノマーユニット、上記疎水性ジカルボン酸モノマーユニット、および上記ジオールモノマーユニット以外のモノマーユニットを有していても良い。
【0062】
水溶性ポリエステル樹脂の製造方法には特に限定はなく、従来公知のポリエステル樹脂の製造方法を適用できる。
【0063】
(水溶性樹脂以外の塩(成分β))
上記水溶性樹脂を含む水溶性樹脂組成物は、水溶性樹脂以外の塩(成分β)を含有してもよい。
当該成分βとしては、水溶性樹脂組成物の中性水への溶解性および耐熱性を向上させる観点から、下記一般式(2)で示される有機塩化合物が好ましい。
(R-SO n+ (2)
(前記一般式(2)中、Rは置換基を有していてもよい炭素数1~30の炭化水素基を示し、nは1または2の数を示し、nが1のとき、Xn+はナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、アンモニウムイオン、またはホスホニウムイオンを示し、nが2のとき、Xn+はマグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオン、または亜鉛イオンを示す。)
【0064】
上記一般式(2)中、Rは、水溶性樹脂組成物の中性水への溶解性および耐熱性を向上させる観点から、置換基を有していても良く、置換基を含めた炭素数が1~30の炭化水素基を示す。この炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基の何れであってもよい。この炭化水素基が脂肪族炭化水素基の場合、この炭化水素基の炭素数は、水溶性樹脂組成物の中性水への溶解性および耐熱性を向上させる観点から、1以上が好ましく、4以上がより好ましく、8以上がさらに好ましく、30以下が好ましく、25以下がより好ましく、20以下がさらに好ましい。この炭化水素基が脂環式炭化水素基の場合、この炭化水素基の炭素数は、水溶性樹脂組成物の中性水への溶解性および耐熱性を向上させる観点から、3以上が好ましく、5以上がより好ましく、6以上がさらに好ましく、10以上がよりさらに好ましく、30以下が好ましく、25以下がより好ましく、20以下がさらに好ましい。この炭化水素基が芳香族炭化水素基の場合、この炭化水素基の炭素数は、水溶性樹脂組成物の中性水への溶解性および耐熱性を向上させる観点から、6以上が好ましく、8以上がより好ましく、10以上がさらに好ましく、30以下が好ましく、25以下がより好ましい。
【0065】
また、上記置換基としては、水溶性樹脂組成物の中性水への溶解性および耐熱性を向上させる観点から、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、およびケイ素原子、並びにハロゲン原子からなる群より選ばれる1種以上を含むものが好ましく、中でも炭素数1~22の炭化水素基または炭素数1~22のハロゲン化アルキル基が好ましく、炭素数1~16の炭化水素基または炭素数1~22のハロゲン化アルキル基がより好ましく、炭素数1~12の炭化水素基またはハロゲン化アルキル基がさらに好ましく、炭素数1~12の炭化水素基がよりさらに好ましい。
【0066】
上記一般式(2)中、Xn+は、水溶性樹脂組成物の中性水への溶解性および耐熱性を向上させる観点から、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオン、亜鉛イオン、またはホスホニウムイオンを示し、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン、アンモニウムイオン、またはホスホニウムイオンが好ましく、ナトリウムイオン、リチウムイオン、アンモニウムイオン、またはホスホニウムイオンがより好ましく、リチウムイオン、またはホスホニウムイオンがさらに好ましく、ホスホニウムイオンがよりさらに好ましい。ホスホニウムイオンの中でも、水溶性樹脂組成物の中性水への溶解性および耐熱性を向上させる観点から、テトラアルキルホスホニウムイオンが好ましく、テトラブチルホスホニウムイオンがより好ましい。
【0067】
上記一般式(2)中、nは、水溶性樹脂組成物の中性水への溶解性および耐熱性を向上させる観点から、1が好ましい。
【0068】
水溶性樹脂組成物中の上記有機塩化合物の含有量は、水溶性樹脂組成物の中性水への溶解性を向上させる観点から、上記有機塩化合物のアルキルスルホン酸イオン(R-SO )の物質量(mol)と、水溶性樹脂の水酸性基の物質量(mol)とスルホン酸塩基の物質量(mol)との合計の比(上記有機塩化合物のアルキルスルホン酸イオンの物質量/水溶性樹脂の水酸性基の物質量とスルホン酸塩基の物質量の合計)が、0.005以上が好ましく、0.01以上がより好ましく、0.02以上がさらに好ましく、0.03以上がさらに好ましく、水溶性樹脂組成物の耐熱性を向上させる観点から、0.35以下が好ましく、0.25以下がより好ましく、0.2以下がさらに好ましい。
【0069】
(相溶化剤(成分γ))
水溶性樹脂は、相溶化剤を含有させた水溶性樹脂組成物としてもよい。この相溶化剤としてはBondfast(登録商標)7B、Bondfast 7M(以上、住友化学社製)、ロタダー(登録商標)AX8840(アルケマ社製)、JONCRYL(登録商標)ADR4370S、JONCRYL ADR4368CS、JONCRYL ADR4368F、JONCRYL ADR4300S(以上、BASF社製)、ARUFON(登録商標)UG4035、ARUFON UG4040、ARUFON UG4070(以上、東亜合成社製)が例示できる。酸無水物基を有する反応性相溶化剤としては、ユーメックス(登録商標)1010(三洋化成社製)、アドマー(登録商標)(三井化学社製)、モディパー(登録商標)A8200(日本油脂社製)、OREVAC(登録商標)(アルケマ社製)、FG1901、FG1924(以上、クレイトンポリマー社)、タフテック(登録商標)M1911、タフテックM1913、タフテックM1943(以上、旭化成ケミカルズ社製)が例示できる。イソシアネート基を有する反応性相溶化剤としてはカルボジライトL(登録商標)日清紡社製が例示できる。
【0070】
水溶性樹脂組成物の前記成分α100質量部に対する前記成分γの含有量は、印刷層7などの層強度の観点から、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましく、同様の観点から、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
【0071】
水溶性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を含有していても良い。他の成分の例としては、上記成分A以外の樹脂、安息香酸ポリアルキレングリコールジエステル等の可塑剤、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ガラス球、黒鉛、カーボンブラック、カーボン繊維、ガラス繊維、タルク、ウォラストナイト、マイカ、アルミナ、シリカ、カオリン、ウィスカー、炭化珪素等の充填材、エラストマー等が挙げられる。
【0072】
上記エラストマーとしては、アクリル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、およびシリコーン系エラストマーが例示できる。これらの中でもアクリル系エラストマー、およびスチレン系エラストマーからなる群より選ばれる1種以上が好ましく、アクリル系エラストマーがより好ましい。スチレン系エラストマーとしては、スチレン-ブタジエン共重合体、およびスチレン-ブタジエン-エチレン共重合体からなる群より選ばれる1種以上が好ましい。アクリル系エラストマーとしてはメタクリル酸-アクリル酸アルキル共重合体が好ましい。上記エラストマーの市販品としては、クラリティ(登録商標)LA2250、クラリティLA2140、クラリティLA4285(以上、クラレ社製)が例示できる。上記オレフィン系エラストマーとしては、Kraton(登録商標)ERSポリマー(クレイトンポリマー社製)、Kraton Aポリマー、Kraton Gポリマー(以上、クレイトンポリマー社製)、「タフテックH」シリーズ、「タフテックP」シリーズ(旭化成ケミカルズ社製)、セプトン(登録商標)、ハイブラー(登録商標)(以上、クラレプラスチックス社)が例示できる。
【0073】
上記成分α100質量部に対する水溶性樹脂組成物の上記エラストマーの含有量は、印刷層7などの層強度向上の観点から、0.1質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましく、同様の観点から、100質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、40質量部以下がさらに好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。
以上が、30℃以上の温水に溶解可能な材料の一例である温度応答性の水溶性樹脂、およびこの水溶性樹脂を含む水溶性樹脂組成物についての詳細な説明である。
【0074】
そして、この第1実施形態においては、水性溶媒の洗浄による印刷層7の除去、脱離を可能とするために、印刷層7は、第1樹脂フィルム層1の積層間および第2樹脂フィルム層2の積層間ではなく、第1樹脂フィルム層1の外面側の表面11および内面側の表面13、ならびに第2樹脂フィルム層2の外面側の表面21および内面側の表面23から選ばれる少なくとも1面に選択的に形成されているのが好ましい。つまり、第1樹脂フィルム層1の積層間および第2樹脂フィルム層2の積層間には印刷層7を含まない構成であるのが好ましい。
また、樹脂素材により構成される第3フィルム層3をさらに含むシート材により構成された容器の場合には、第1樹脂フィルム層1の積層間、第2樹脂フィルム層2の積層間、および第3フィルム層の積層間に印刷層7を含まない構成であるのが好ましい。
【0075】
例えば、この印刷層7が、第1樹脂フィルム層1の外面側の表面11に形成されている構成が例示される。
図5を用いてさらに詳しく説明すると、この構成では、第1樹脂フィルム層1の外面側の表面11、つまり第1樹脂フィルム層1の第1-1基材層において第2樹脂フィルム層2と対向する表面とは反対側の表面に印刷層7が形成されている。そして、この印刷層7は、容器内側から容器外側に向かって順に、第1-1基材層の表面に形成された水性溶媒に溶解可能な下地層7-3、この下地層7-3の表面に形成されたインキ層7-2、およびこのインキ層7-2の表面に形成されたコート層7-1を備え、印刷層7として水性溶媒による洗浄により脱離可能である。
【0076】
さらに、この印刷層7が、第1樹脂フィルム層1の内面側の表面13および/または第2樹脂フィルム層2の外面側の表面21のうち、フィルム接合部の接合面6を除く部分に形成されている構成が、変形例として示される。
図6を用いてさらに詳しく説明すると、この変形例では、第1樹脂フィルム層1の内面側の表面13、つまり第1樹脂フィルム層1の第1-4基材層において第2樹脂フィルム層2と対向する表面におけるフィルム接合部の接合面6を除く部分に印刷層7としてインキ層7-2が形成され、さらに、第2樹脂フィルム層2の外面側の表面21、つまり第2樹脂フィルム層2の第2-5基材層において第1樹脂フィルム層1と対向する表面におけるフィルム接合部の接合面6を除く部分に印刷層7としてインキ層7-2が形成されている。なお、これらのインキ層7-2は、バインダー樹脂の少なくとも一部が水性溶媒に溶解可能な材料により構成されている。
【0077】
さらにまた、印刷層7が、収容領域と対向するフィルム層の表面(第2樹脂フィルム層2が製袋されて収容領域が形成されている場合には第2樹脂フィルム層2の内面側の表面23)に形成されている構成が、他の変形例として示される。このような構成の容器は、リサイクルの際に、収容領域の表面に付着、残留している収容物の洗浄と同時に印刷層7の脱離が可能となる。
【0078】
〔第2実施形態において回収する容器の構成〕
次に、図7および図8を用いて、本実施形態に係る容器のリサイクル方法における第2実施形態において回収する容器の構成についてより詳細に説明する。
【0079】
この第2実施形態において回収する容器は、第1樹脂フィルム層1、第2樹脂フィルム層2および樹脂素材および/または非樹脂素材により構成される第3フィルム層3を含む複数のフィルム層が積層されたシート材により構成され、第3フィルム層3の内側に収容物を直接的に、つまり第3フィルム層3に収容物が直接接触するように収容する収容領域が形成されており、さらに、第1実施形態と同様に、第1樹脂フィルム層1と第2樹脂フィルム層2との間に、フィルム接合部と、充填材封入部5とを有する。
具体的には、この容器は、その最外フィルム層として第1樹脂フィルム層1と、この第1樹脂フィルム層1の内側に配置された第2樹脂フィルム層2と、この第2樹脂フィルム層2の内側に配置された樹脂素材および/または非樹脂素材により構成される第3フィルム層3とを含む複数のフィルム層が積層されたシート材により構成される。つまり、最外フィルム層である第1樹脂フィルム層1の内側に第2樹脂フィルム層2が配置され、この第2樹脂フィルム層2の内側に第3フィルム層3が配置され、この第3フィルム層3の内側に、シート材の周縁部の少なくとも一部どうしが接合されることによって製袋されて形成された収容物を収容する収容領域(第3フィルム層3により形成された内容器)が存在する。
【0080】
なお、この内容器を形成する第3フィルム層3には、開口部としてスパウト103などが設けられていても良い。また、第3フィルム層3と第2樹脂フィルム層2とは、全体にわたって非接合であるか、あるいは第3フィルム層3と第2樹脂フィルム層2との少なくとも一部が互いに接合された状態であると、収容物を使用する際にこの内容器が容易に縮小して、収容物が最後まで排出され易くなる。但し、第3フィルム層3と第2樹脂フィルム層2とが全体にわたって非接合である場合でも、内容器となる第3フィルム層3が第2樹脂フィルム層2の内側に保持される構成であることが好ましい。そして、この第3フィルム層3と第2樹脂フィルム層2との間には、上記したような内容器の縮小をし易くするために、外気を導入させる外気導入部が設けられていても良い。
【0081】
そして、この第2樹脂フィルム層2と第3フィルム層3との少なくとも一部が接合されている場合においては、この第2樹脂フィルム層2と第3フィルム層3との接合は、第1樹脂フィルム層1と第2樹脂フィルム層2とが接合しているフィルム接合部よりも易剥離性であるのが好ましい。
特に、この第2樹脂フィルム層2と第3フィルム層3との接合は、第2樹脂フィルム層2の内面側の表面23および/または第3フィルム層3の外面側の表面31に備わる、コロナ処理、パウダー処理、シリコーン等のオイル処理のいずれかの易剥離性処理がされた面がヒートシール等により接合されている構成か、もしくは、第2樹脂フィルム層2と第3フィルム層3との接合層にイージーピール性の基材層が用いられて接合されている構成であるのがより好ましく、第2樹脂フィルム層2の内面側の表面23および第3フィルム層3の外面側の表面31の少なくとも一部に備わる、コロナ処理された面どうしがヒートシールにより接合されている構成であるのがさらに好ましい。このような構成により、フィルム接合部を備える第1樹脂フィルム層1および第2樹脂フィルム層2(外容器)と、第3フィルム層3(内容器)とを容易に分離することができるからである。
【0082】
そして、第2実施形態において回収する容器の第1樹脂フィルム層1、第2樹脂フィルム層2および第3フィルム層3は、いずれもシート材の基材となる基材層であり、少なくとも、第1樹脂フィルム層1および第2樹脂フィルム層2は樹脂素材により構成される樹脂基材層である。この樹脂素材としては、第1実施形態の第1樹脂フィルム層1および第2樹脂フィルム層2において示した好適材料と同じものが例示される。なお、これも同様に、基材層(フィルムの基材となる層)単一により構成されていても良く、あるいは基材層または基材層とこれ以外の層(付加層や接合層など)とが複数積層された構成であっても良く、また、この積層は、ヒートシールによる接合により積層された(ラミネート接合層が含まれない)構成、あるいは、ドライラミネート、押出ラミネート、共押出成形などによる接合により積層されたラミネート接合層が含まれる構成のいずれであっても良い。
さらに、分離する第3フィルム層3は、樹脂素材により構成されていても良いが、これに限定されるものではなく、金属材(アルミフィルム、銅フィルムなど)、紙材、ストーンペーパー、セラミック等の非樹脂素材により構成されていても良い。
【0083】
例えば、この第2実施形態において回収する容器のシート材の構成の一例としては、以下の層構造が示される。
内容器を構成する第3フィルム層3は、例えば図7および図8に示すように、第3-1基材層、第3-2基材層および第3-3基材層をこの順に積層することにより構成された3層構造をなしている。
このうち第3-1基材層は、例えば、直鎖状低密度ポリエチレンにより構成されている。第3-1基材層の主な機能としては、外容器とのヒートシール性(外容器を構成する第2樹脂フィルム層2とのヒートシール性)を確保することが挙げられる。
第3-2基材層は、例えば、第3-2基材層における第3-1基材層側の面にシリカおよび/またはアルミナが蒸着された延伸ナイロンにより構成された透明蒸着延伸ナイロンの層である。第3-2基材層の主な機能としては、ガスバリア性および耐ピンホール性を確保することが挙げられる。
第3-3基材層は、例えば、直鎖状低密度ポリエチレンにより構成されている。第3-3基材層の主な機能としては、第3フィルム層3どうしのヒートシール性を確保することが挙げられる。
なお、第3フィルム層3の層構造は、ここで説明した構造に限らない。また、第1樹脂フィルム層1および第2樹脂フィルム層2の構造は、上記した第1実施形態において回収する容器と同様の構成が例示される。
【0084】
また、この第2実施形態においても、回収する第1樹脂フィルム層1および第2樹脂フィルム層2がいずれも共通の樹脂により構成された素材を含み、この素材が、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)などのポリエチレン系素材、または延伸ポリプロピレン(OPP)、未延伸ポリプロピレン(CPP)、アイソタクチックPP、シンジオタクチックPP、アタクチックPP、ランダムPP、ブロックPPなどのポリプロピレン系素材、またはポリエチレンテレフタレート(PET)、非晶性ポリエチレンテレフタレート(非晶性PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)などのポリエステル系素材、または延伸ナイロン(ONy)、未延伸ナイロン(CNy)、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、MXD6などのポリアミド系素材のいずれかであるのがより好ましく、上記ポリエチレン系素材であるのが特に好ましい。分離して回収する容器がポリエチレン系素材により構成されているため、ポリエチレン系素材のリサイクルシステムが構築でき、リサイクル材の物性および品質がより高まるからである。
【0085】
さらに、シート材の第1樹脂フィルム層1における、最も外面側に位置する最外面層がポリエチレンテレフタレート(PET)などにより構成され、この第1樹脂フィルム層1における最外面層を除く層はポリビニルアルコール(PVA)により構成されており、シート材の第2樹脂フィルム層2がポリビニルアルコール(PVA)により構成されている容器を分離して回収するのもより好ましい。ポリビニルアルコールは洗浄によって溶解除去が可能であるため、ポリエチレンテレフタレートのリサイクルシステムが構築でき、リサイクル材の物性および品質がより高まるからである。
【0086】
例えば、第1樹脂フィルム層1が、外面側の表面11から内面側の表面13に向かって順に、PETにより構成される第1-1基材層、およびPVAにより構成される第1-2基材層が積層され、第2樹脂フィルム層2がPVAにより構成される単層である構成の容器を分離して回収するのが、ポリエチレンテレフタレート材へのリサイクルが容易となるため非常に好ましい。
【0087】
そして、この第2実施形態において回収する容器では、第1樹脂フィルム層1の外面側の表面11および内面側の表面13、第2樹脂フィルム層2の外面側の表面21および内面側の表面23、ならびに第3フィルム層3の外面側の表面31および内面側の表面33から選ばれる少なくとも1面に、インク層7-2を含み、フィルム層表面から水性溶媒による洗浄により脱離可能である印刷層7が形成されているのが好ましい。回収した容器の細断物から印刷層7を水性溶媒による洗浄により容易に脱離させることができ、この洗浄した細断物を用いて形成した再生樹脂の着色を抑制することができるからである。
【0088】
ここで、この第2実施形態において回収する容器における印刷層7も、前述した第1実施形態と同様に、印刷インキにより構成されるインキ層7-2を少なくとも含む層であり、このインキ層7-2に加えて、インキ層7-2を保護する機能を有するコート層7-1などを含んでも良い。そして、このインキ層7-2は、例えば、オフセット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、などによって形成することができる。さらに、コート層7-1は、無色印刷層であるメジウム印刷層であっても良い。
なお、この第2実施形態においても、印刷層7の脱離をより促進するために、印刷層7が形成されるフィルム層の表面に、フィルム層の基材層以外の層(付加層)として、印刷層7の下地となりインキのりを高める機能を有する層を備えていても良い。
【0089】
そして、これも前述した第1実施形態と同様に、この印刷層7は、水性溶媒に溶解可能な下地層7-3と、この下地層7-3の表面に形成されたインキ層7-2と、このインキ層7-2の表面に形成された水性溶媒に溶解可能なコート層7-1とを含む構成など、印刷層7として水性溶媒による洗浄により脱離可能な構成であれば良い。
また、この印刷層7は、これも前述した第1実施形態と同様に、30℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上の温水洗浄によりフィルム層の表面から脱離可能である材料により構成されているのが好ましい。同様に、この印刷層7の厚さは、0.5μm以上であることが好ましい。そして、洗浄による脱離をより容易とするために、30μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
【0090】
そして、この第2実施形態においても、水性溶媒の洗浄による印刷層7の除去、脱離を可能とするために、印刷層7は、第1樹脂フィルム層1の積層間および第2樹脂フィルム層2の積層間ではなく、第1樹脂フィルム層1の外面側の表面11および内面側の表面13、ならびに第2樹脂フィルム層2の外面側の表面21および内面側の表面23から選ばれる少なくとも1面に選択的に形成されているのが好ましい。つまり、第1樹脂フィルム層1の積層間および第2樹脂フィルム層2の積層間には印刷層7を含まない構成であるのが好ましい。
また、第3フィルム層3の積層間にも印刷層7を含まない構成であるのがより好ましい。
【0091】
例えば、印刷層7が、第1樹脂フィルム層1の外面側の表面11および/または第2樹脂フィルム層2の内面側の表面23に形成されている構成が例示される。
図7を用いて詳しく説明すると、この構成では、第1樹脂フィルム層1の外面側の表面11、つまり第1樹脂フィルム層1の第1-1基材層において第2樹脂フィルム層2と対向する表面とは反対側の表面に印刷層7が形成され、さらに、第2樹脂フィルム層2の内面側の表面23、つまり第2樹脂フィルム層2の第2-4基材層において第3フィルム層3と対向する表面に印刷層7が形成されている。なお、これらの印刷層7は、水性溶媒に溶解可能な下地層7-3を備えているため、水性溶媒による洗浄により脱離可能となっている。
このような構成の容器を回収して、第1樹脂フィルム層1および第2樹脂フィルム層2を分離し、細断および洗浄を行うことにより、印刷層7の脱離が非常に容易となる。
【0092】
また、印刷層7が、第2樹脂フィルム層2の内面側の表面23および/または第3フィルム層3の外面側の表面31に形成されている構成も例示される。
図8を用いて詳しく説明すると、この構成では、第2樹脂フィルム層2の内面側の表面23、つまり第2樹脂フィルム層2の第2-4基材層において第3フィルム層3と対向する表面に印刷層7としてインキ層7-2が形成され、さらに、第3フィルム層3の外面側の表面31、つまり第3フィルム層3の第3-1基材層において第2樹脂フィルム層2と対向する表面に印刷層7としてインキ層7-2が形成されている。なお、これらのインキ層7-2は、バインダー樹脂の少なくとも一部が水性溶媒に溶解可能な材料により構成されている。
この構成の場合、例えば第2樹脂フィルム層2の内面側の表面23に収容物やその成分などを表示する文字を印刷した文字印刷層(好ましくは第2樹脂フィルム層2の内面側の表面23の面積に対して50%未満の面積、より好ましくは30%未満の面積である文字印刷層)が形成され、第3フィルム層3の外面側の表面31に図形、模様などを印刷した図柄印刷層(好ましくは文字を含まない図柄印刷層)が形成されていると、容器から第1樹脂フィルム層1および第2樹脂フィルム層2を分離して回収し、細断後に、細断物から文字印刷層のみを洗浄により脱離させれば良いため極めて好適である。
【0093】
〔本実施形態に係る容器のリサイクル方法の各工程について〕
次に、図1図4を用いて、本実施形態に係る容器のリサイクル方法の各工程について詳細に説明する。
本実施形態に係る容器のリサイクル方法は、少なくとも(1)回収工程、(2)細断および洗浄工程、(3)再生樹脂形成工程、ならびに(4)シート材形成工程を含む。以下、各工程について具体的に説明する。
【0094】
<(1)回収工程>
本実施形態に係る容器のリサイクル方法では、まず、例えば図1図2(a)および(b)、ならびに図4(a)に示すような、前述した容器を回収する。この容器は、充填材封入部5を備えることから、他の容器と分別して回収することが容易である。なお、本発明に係る容器のリサイクル方法における「容器を回収する」とは、前述したような、充填材が封入された容器を回収することだけでなく、充填材が封入された容器から充填材を除去した容器本体を回収することや、充填材が封入された容器や充填材が除去された容器本体からスパウト103や天マチ部102、キャップなどを除去したものを回収することも包含する。さらに、変形例(第2実施形態)として、充填材が封入された容器や充填材が除去された容器本体から、図3および図4(b)に示すような、第1樹脂フィルム層1および第2樹脂フィルム層2(外容器)を分離して回収することも包含する。つまり、この回収工程において回収する容器には、充填材が封入された容器、充填材が除去された容器本体、およびこれらの外容器が包含される。なお、外容器を分離して回収することにより、より品質の良いリサイクル材料およびリサイクル材を得ることができる。
【0095】
<(2)細断および洗浄工程>
次に、図2および図4の(c)、(d)に示すように、前述した回収工程において回収した容器、容器本体、あるいはこれらの外容器を細断して細断物とし、この細断物をアルカリ水、酸性水、温水などの水性溶媒を含む洗浄水や、有機溶媒などにより洗浄して印刷層7、または収容物残渣と印刷層7を除去する。なお、前述した第2実施形態では、収容領域と接触していない第1樹脂フィルム層1および第2樹脂フィルム層2を分離して回収しているため、収容物残渣の除去は不要である。
【0096】
ここで、この細断および洗浄工程では、印刷層7の洗浄による脱離が非常に容易となることから、前述した回収工程において回収した容器、容器本体、あるいはこれらの外容器を、長辺が100mm以下に細断するのが好ましく、60mm以下に細断するのがより好ましい。
【0097】
また、環境負荷軽減などの観点から、前述した回収工程において水性溶媒による洗浄により脱離可能な印刷層7が形成されている容器を回収し、この細断および洗浄工程では、回収した容器を細断後、30℃以上の温水洗浄により細断物から印刷層7等を除去するのが好ましい。この細断および洗浄工程における温水の温度は、印刷層7を効率よく除去する観点から30℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましく、60℃以上がさらに好ましい。この温水の温度の上限は、リサイクル工程における温度制御の容易性の観点から、100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましく、80℃以下がさらに好ましい。なお、この洗浄方法は、例えば、細断物を洗浄水とともに洗浄槽に投入して攪拌し、必要であれば濯ぎを行い、物理的脱水(遠心分離等)、乾燥を行う方法などが例示される。
【0098】
<(3)再生樹脂形成工程>
次に、図2および図4の(e)に示すように、前述した細断および洗浄工程において細断、洗浄され、印刷層7等が除去されたリサイクル原料である細断物を用いて、樹脂ペレット等の再生樹脂を形成する。このような印刷層7が除去された細断物を原料とすることにより、得られる再生樹脂のインク着色が少なく、容器へのリサイクルも可能なリサイクル材料である再生樹脂を得ることができる。なお、この再生樹脂形成方法は、例えば、洗浄後の細断物を溶融し、押出や圧偏等によって樹脂ペレットを成形する方法などが例示される。
【0099】
この再生樹脂形成工程では、例えば、新しい樹脂原料(バージン原料)を主原料とし、これに前述した細断物や他のリサイクル原料を混合して再生樹脂を形成しても良いが、前述した細断および洗浄工程において洗浄され印刷層7が除去された細断物を主原料として再生樹脂を形成しても、得られる再生樹脂のインク着色が少なく、物性および品質が非常に安定したリサイクル材料を得ることができる。
ここで、この「主原料」とは、再生樹脂形成原料中の割合が80質量%以上であることを意味し、90質量%以上であっても良く、95質量%以上であっても良く、100質量%であっても良い。
【0100】
<(4)シート材形成工程>
さらに、図2および図4の(f)に示すように、少なくとも、前述した再生樹脂形成工程で形成された再生樹脂(樹脂ペレット等)を用いて、充填材を封入可能な容器を構成することが可能な上記シート材の少なくとも一部を形成する。このシート材は、少なくとも第1樹脂フィルム層1および第2樹脂フィルム層2を含む複数のフィルム層が積層され、この第1樹脂フィルム層1と第2樹脂フィルム層2との間に、これらが接合されているフィルム接合部と、部分的に非接合であり充填材封入が可能である充填材封入部5とを備える。
【0101】
そして、このシート材形成工程は、上記再生樹脂を用いて、上記第1樹脂フィルム層1および/または第2樹脂フィルム層2の少なくとも一部を形成するものであるのが好ましい。このようにして得られたリサイクル材であるシート材により構成された容器は、内容器を備える場合、収容物にリサイクルフィルムが接しないため、リサイクルフィルム中に含まれる不純物が収容物に移行し難い。
【0102】
また、このシート材形成工程は、上記再生樹脂を用いて、上記第1樹脂フィルム層1の少なくとも一部を形成するものであるのがより好ましい。このようにして得られたリサイクル材であるシート材により構成された容器は、内容器を備えない場合でも、リサイクルフィルム中に含まれる不純物が収容物に移行し難いからである。特に、収容物が付着した容器をリサイクルする場合において、上記のような構成とすると非常に好ましい。
【0103】
なお、上記のように、本実施形態に係る容器のリサイクル方法は、さらに「(5)上記シート材形成工程によって形成されたシート材を用いて、充填材封入部5に充填材が封入された容器を形成する容器形成工程」を含んでも良い。
このようにして、収容された収容物を使い切った後の容器(充填材封入容器)をリサイクル原料として、充填材が封入された容器へのリサイクルシステムを構築することができる。
【0104】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含する。
<1> 下記(1)~(4)の工程を含む、容器のリサイクル方法;
(1)第1樹脂フィルム層および第2樹脂フィルム層を含む複数のフィルム層が積層されたシート材により構成され、
前記シート材の周縁部の少なくとも一部どうしが接合されることによって製袋されて、前記第2樹脂フィルム層の内側に収容物を収容する収容領域が形成されており、
前記第1樹脂フィルム層と前記第2樹脂フィルム層との間に、前記第1樹脂フィルム層と前記第2樹脂フィルム層とが接合しているフィルム接合部と、充填材が封入されていて前記フィルム接合部よりも前記シート材の厚み方向に膨らんでいる充填材封入部と、を有する容器を回収する回収工程、
(2)前記回収工程において回収した前記容器を細断して細断物とし、前記細断物を洗浄する細断および洗浄工程、
(3)前記細断および洗浄工程において細断および洗浄された前記細断物を用いて再生樹脂を形成する再生樹脂形成工程、
(4)前記再生樹脂形成工程において形成された前記再生樹脂を用いて、前記シート材の少なくとも一部を形成するシート材形成工程。
<2>前記回収工程の前記容器は、前記第2樹脂フィルム層が、前記第1樹脂フィルム層の内側に配置されている、<1>に記載の容器のリサイクル方法。
<3>前記回収工程の前記容器が、前記第1樹脂フィルム層の外面側および内面側の表面、ならびに前記第2樹脂フィルム層の外面側および内面側の表面から選ばれる少なくとも1面にインキ層を含む印刷層が形成されており、
前記印刷層が、前記フィルム層の前記表面から、前記細断および洗浄工程における水性溶媒による洗浄により前記細断物から脱離可能である、<1>または<2>に記載の容器のリサイクル方法。
<4>前記細断および洗浄工程が、30℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上の温水洗浄により前記細断物から前記印刷層を脱離する工程を含む、<3>に記載の容器のリサイクル方法。
<5>前記回収工程の前記容器が、前記第1樹脂フィルム層、前記第2樹脂フィルム層および樹脂素材により構成される第3フィルム層を含む前記シート材により構成され、
前記シート材の周縁部の少なくとも一部どうしが接合されることによって製袋されて、前記第3フィルム層の内側に収容物を収容する収容領域が形成されている、<1>または<2>に記載の容器のリサイクル方法。
<6>前記回収工程の前記容器が、前記第1樹脂フィルム層、前記第2樹脂フィルム層および第3フィルム層を含む前記シート材により構成され、
前記シート材の周縁部の少なくとも一部どうしが接合されることによって製袋されて、前記第3フィルム層の内側に収容物を収容する収容領域が形成されており、
前記回収工程において、前記容器から前記第1樹脂フィルム層および前記第2樹脂フィルム層を分離して回収する、<1>または<2>に記載の容器のリサイクル方法。
<7>前記回収工程の前記容器は、前記第1樹脂フィルム層の内側に前記第2樹脂フィルム層が配置され、前記第2樹脂フィルム層の内側に前記第3フィルム層が配置されている、<5>または<6>に記載の容器のリサイクル方法。
<8>前記回収工程の前記容器が、前記第2樹脂フィルム層と前記第3フィルム層との少なくとも一部が互いに接合され、
前記第2樹脂フィルム層と前記第3フィルム層との前記接合が、前記フィルム接合部の前記接合よりも易剥離性である、<5>~<7>のいずれか1つに記載の容器のリサイクル方法。
<9>前記第2樹脂フィルム層と前記第3フィルム層との前記接合が、前記第2樹脂フィルム層の内面側の表面および前記第3フィルム層の外面側の表面の少なくとも一部に備わるコロナ処理された面どうしがヒートシールにより接合されている、<8>に記載の容器のリサイクル方法。
<10>前記回収工程の前記容器が、前記第1樹脂フィルム層の外面側および内面側の表面、前記第2樹脂フィルム層の外面側および内面側の表面、ならびに前記第3フィルム層の外面側および内面側の表面から選ばれる少なくとも1面にインキ層を含む印刷層が形成されており、
前記印刷層が、前記フィルム層の前記表面から前記細断および洗浄工程における水性溶媒による洗浄により前記細断物から脱離可能である、<5>~<9>のいずれか1つに記載の容器のリサイクル方法。
<11>前記細断および洗浄工程が、30℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上であり、そして100℃以下、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下の温水洗浄により前記細断物から前記印刷層を脱離する工程を含む、<10>に記載の容器のリサイクル方法。
<12>前記細断および洗浄工程において、前記回収工程において回収した前記容器の長辺を100mm以下、好ましくは60mm以下に細断する、<1>~<11>のいずれか1つに記載の容器のリサイクル方法。
<13>前記シート材形成工程が、前記再生樹脂を用いて、前記シート材の前記第1樹脂フィルム層および/または前記第2樹脂フィルム層の少なくとも一部を形成する工程である、<1>~<12>のいずれか1つに記載の容器のリサイクル方法。
<14>前記シート材形成工程が、前記再生樹脂を用いて、前記シート材の前記第1樹脂フィルム層の少なくとも一部を形成する工程である、<13>に記載の容器のリサイクル方法。
<15>前記再生樹脂形成工程が、洗浄された前記細断物を主原料として再生樹脂を形成する工程である、<1>~<14>のいずれか1つに記載の容器のリサイクル方法。
<16>前記回収工程の前記容器が、前記シート材の前記フィルム層がいずれも共通の樹脂により構成された素材を含み、
前記共通の樹脂により構成された素材がポリエチレン系素材であって、前記ポリエチレン系素材が、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、およびエチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)からなる群から選ばれる少なくとも1つである、<1>~<15>のいずれか1つに記載の容器のリサイクル方法。
<17>前記回収工程の前記容器が、前記シート材の前記第1樹脂フィルム層における外面側に位置する最外面層を除く層がポリビニルアルコール(PVA)により構成されており、
前記シート材の前記第1樹脂フィルム層を除く前記フィルム層が、いずれもポリビニルアルコール(PVA)により構成されている、<1>~<15>のいずれか1つに記載の容器のリサイクル方法。
<18><1>~<17>のいずれか1つに記載の容器のリサイクル方法により形成された前記シート材により構成され、前記充填材封入部に充填材が封入された、容器。
【符号の説明】
【0105】
1 第1樹脂フィルム層
2 第2樹脂フィルム層
3 第3フィルム層
5 充填材封入部
6 フィルム接合部の接合面
7 印刷層
7-1 コート層
7-2 インキ層
7-3 下地層
11 第1樹脂フィルム層外面側表面
13 第1樹脂フィルム層内面側表面
21 第2樹脂フィルム層外面側表面
23 第2樹脂フィルム層内面側表面
31 第3フィルム層外面側表面
33 第3フィルム層内面側表面
101 底マチ部
102 天マチ部
103 スパウト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8