(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂用射出装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/18 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
B29C45/18
(21)【出願番号】P 2021098438
(22)【出願日】2021-06-14
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000227054
【氏名又は名称】日精樹脂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(72)【発明者】
【氏名】萩原 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】飯島 透
(72)【発明者】
【氏名】村田 博文
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-085781(JP,A)
【文献】特開2020-157599(JP,A)
【文献】国際公開第2020/044642(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端にノズルを有し、後部に第1落下口を有する加熱筒と、この加熱筒に回転可能で且つ軸方向移動可能に収納されるスクリューと、前記加熱筒を支える射出台とを備え、この射出台又は前記加熱筒に設けられているホッパから熱硬化性の樹脂材料を前記第1落下口を介して前記加熱筒内へ落下させる熱硬化性樹脂用射出装置であって、
前記加熱筒は、前記ノズルと前記第1落下口との間に、前記樹脂材料を前記加熱筒内へ落下させる第2落下口を少なくとも1つ備え、
この第2落下口は、着脱自在の蓋で閉じられて
おり、
前記第2落下口は、平坦な受け面を有し、
前記蓋を覆うヒータを外し、前記蓋を外した状態で、前記受け面に載せる第1断熱板と、この第1断熱板に載せられる中間ブロックと、この中間ブロックに載せられ前記ホッパを支えるホッパ取付台とを取付けるようにし、
前記中間ブロックは、上面が前記加熱筒の上面と同じ又は前記加熱筒の上面から上になるようにし、
前記ホッパ取付台は、冷媒を流す冷媒通路を備えており、
前記ホッパ取付台の前記ノズル側の面を前面と呼ぶときに、これらの前面より前記ノズル側の前記ヒータからの熱を遮断するために、
前記ホッパ取付台の前面に第2断熱板を付設したことを特徴とする熱硬化性樹脂用射出装置。
【請求項2】
先端にノズルを有し、後部に第1落下口を有する加熱筒と、この加熱筒に回転可能で且つ軸方向移動可能に収納されるスクリューと、前記加熱筒を支える射出台とを備え、この射出台又は前記加熱筒に設けられているホッパから熱硬化性の樹脂材料を前記第1落下口を介して前記加熱筒内へ落下させる熱硬化性樹脂用射出装置であって、
前記加熱筒は、前記ノズルと前記第1落下口との間に、前記樹脂材料を前記加熱筒内へ落下させる第2落下口を少なくとも1つ備え、
この第2落下口は、着脱自在の蓋で閉じられており、
前記第2落下口は、平坦な受け面を有し、
前記蓋を覆うヒータを外し、前記蓋を外した状態で、前記受け面に載せる第1断熱板と、この第1断熱板に載せられる中間ブロックと、この中間ブロックに載せられ前記ホッパを支えるホッパ取付台とを取付けるようにし、
前記中間ブロックは、上面が前記加熱筒の上面と同じ又は前記加熱筒の上面から上になるようにし、
前記ホッパ取付台は、冷媒を流す冷媒通路を備えて
おり、
前記加熱筒の外周面において前記中間ブロックで覆う面を除いた面を覆う左ブロック及び右ブロックとを取付けるようにし、
前記左ブロック及び前記右ブロックは、冷媒を流す冷媒通路を備えていることを特徴とする熱硬化性樹脂用射出装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の熱硬化性樹脂用射出装置であって、
前記ホッパ取付台に前記中間ブロックを一体化して、ホッパ取付ブロックにしたことを特徴とする熱硬化性樹脂用射出装置。
【請求項4】
請求項
2記載の熱硬化性樹脂用射出装置であって、
前記左ブロック及び前記右ブロックの前記ノズル側の面を前面と呼ぶときに、これらの前面より前記ノズル側の前記ヒータからの熱を遮断するために、
前記左ブロックの前面に第3断熱板を付設し、前記右ブロックの前面に第4断熱板を付設したことを特徴とする熱硬化性樹脂用射出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂の射出に好適な熱硬化性樹脂用射出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂は、ある温度以上で軟らかくなる樹脂である。一方、熱硬化性樹脂は、所定の温度以上で硬化反応(キュア)が進行する樹脂である。
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の両方を考慮した射出装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ロングスクリュ(L/D16~22)が好ましい通常の熱可塑性樹脂やショートスクリュ(L/D8~14)が好ましい成形材料(たとえば熱硬化性樹脂・・・以下省略)なる説明が特許文献1に開示されている。
【0004】
熱硬化性樹脂は、金型内で硬化反応(キュア)を促すため、射出装置内では温度を上げ過ぎないように注意する必要があり、取り扱いが難しい。
長さLは、加熱筒における樹脂材料の滞留時間に比例する。
成形品が大型であれば滞留時間は長くすることができ、L/Dを大きくすることができる。一方、成形品が小型のときは、滞留時間が長すぎると加熱筒内で硬化反応(キュア)が始まる。そこで成形品が小型のときは、L/Dを小さくする。
また、成形品が中型であるときは、L/Dが中程度であることが好まれる。
【0005】
熱硬化性樹脂の射出装置において、小型、中型、大型の3種類の成形品を射出成形することが予定される場合、L/Dが小さなスクリュを備えた小型射出装置と、L/Dが中程度のスクリュを備えた中型射出装置と、L/Dが大きなスクリュを備えた大型射出装置とからなる3基の熱硬化性樹脂用射出装置を設置することが理想とされる。
【0006】
ただし、熱可塑性樹脂に比較して、熱硬化性樹脂の生産規模は小さい。生産規模が小さい熱硬化性樹脂のために、3基の熱硬化性樹脂用射出装置を設置することは、費用及び設置面積の点で、容認され難い。
例えば、1基で、小型、中型、大型の3種類の成形品を射出成形することができる熱硬化性樹脂用射出装置であれば、設備費用が圧縮でき、設置面積が最小となり、好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、成形品の大きさの変化に対応可能な熱硬化性樹脂用射出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、先端にノズルを有し、後部に第1落下口を有する加熱筒と、この加熱筒に回転可能で且つ軸方向移動可能に収納されるスクリューと、前記加熱筒を支える射出台とを備え、この射出台又は前記加熱筒に設けられているホッパから熱硬化性の樹脂材料を前記第1落下口を介して前記加熱筒内へ落下させる熱硬化性樹脂用射出装置であって、
前記加熱筒は、前記ノズルと前記第1落下口との間に、前記樹脂材料を前記加熱筒内へ落下させる第2落下口を少なくとも1つ備え、
この第2落下口は、着脱自在の蓋で閉じられており、
前記第2落下口は、平坦な受け面を有し、
前記蓋を覆うヒータを外し、前記蓋を外した状態で、前記受け面に載せる第1断熱板と、この第1断熱板に載せられる中間ブロックと、この中間ブロックに載せられ前記ホッパを支えるホッパ取付台とを取付けるようにし、
前記中間ブロックは、上面が前記加熱筒の上面と同じ又は前記加熱筒の上面から上になるようにし、
前記ホッパ取付台は、冷媒を流す冷媒通路を備えており、
前記ホッパ取付台の前記ノズル側の面を前面と呼ぶときに、これらの前面より前記ノズル側の前記ヒータからの熱を遮断するために、
前記ホッパ取付台の前面に第2断熱板を付設したことを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、先端にノズルを有し、後部に第1落下口を有する加熱筒と、この加熱筒に回転可能で且つ軸方向移動可能に収納されるスクリューと、前記加熱筒を支える射出台とを備え、この射出台又は前記加熱筒に設けられているホッパから熱硬化性の樹脂材料を前記第1落下口を介して前記加熱筒内へ落下させる熱硬化性樹脂用射出装置であって、
前記加熱筒は、前記ノズルと前記第1落下口との間に、前記樹脂材料を前記加熱筒内へ落下させる第2落下口を少なくとも1つ備え、
この第2落下口は、着脱自在の蓋で閉じられており、
前記第2落下口は、平坦な受け面を有し、
前記蓋を覆うヒータを外し、前記蓋を外した状態で、前記受け面に載せる第1断熱板と、この第1断熱板に載せられる中間ブロックと、この中間ブロックに載せられ前記ホッパを支えるホッパ取付台とを取付けるようにし、
前記中間ブロックは、上面が前記加熱筒の上面と同じ又は前記加熱筒の上面から上になるようにし、
前記ホッパ取付台は、冷媒を流す冷媒通路を備えており、
前記加熱筒の外周面において前記中間ブロックで覆う面を除いた面を覆う左ブロック及び右ブロックとを取付けるようにし、
前記左ブロック及び前記右ブロックは、冷媒を流す冷媒通路を備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2記載の熱硬化性樹脂用射出装置であって、
前記ホッパ取付台に前記中間ブロックを一体化して、ホッパ取付ブロックにしたことを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項2記載の熱硬化性樹脂用射出装置であって、
前記左ブロック及び前記右ブロックの前記ノズル側の面を前面と呼ぶときに、これらの前面より前記ノズル側の前記ヒータからの熱を遮断するために、
前記左ブロックの前面に第3断熱板を付設し、前記右ブロックの前面に第4断熱板を付設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、熱硬化性樹脂用射出装置において、第1落下口の他に、少なくとも1つの第2落下口を加熱筒に備える。少なくとも1つの第2落下口は、ノズルと第1落下口との間に配置される。
例えば、大型の成形品に対しては第1落下口を使用し、中型又は小型の成形品に対して第2落下口を使用する。
【0016】
また、例えば、第2落下口を2つにし、2つの内で第1落下口に近い方を後部第2落下口、2つの内でノズルに近い方を前部第2落下口と呼び替えると、大型の成形品に対しては第1落下口を使用し、中型の成形品に対して後部第2落下口を使用し、小型の成形品に対して前部第2落下口を使用する。
結果、1基で、小型、中型、大型の3種類の成形品を射出成形することができる。
すなわち、本発明により、成形品の大きさの変化に対応可能な熱硬化性樹脂用射出装置が提供される。
加えて、請求項1に係る発明では、ホッパ取付台とその前方のヒータとの間に第2断熱板を設置した。
ヒータからホッパ取付台へ向かう熱が、第2断熱板で遮断される。ホッパ取付台を冷却する冷媒がヒータからの熱で温められる心配はなく、冷媒の所要量を減らすことができる。
【0017】
請求項2に係る発明では、ヒータを外し、蓋を外した状態で、第1断熱板を載せ、この第1断熱板にホッパ取付台を載せる。
第1断熱板で加熱筒からホッパ取付台へ向かう熱を断熱することができ、落下する樹脂材料がホッパ取付台の箇所で加熱される心配はない。
加えて、ホッパ取付台は冷媒で強制冷却されるため、落下する樹脂材料がホッパ取付台の箇所で加熱される心配はない。
結果、熱硬化性の樹脂材料の温度管理が好ましく行われる。
加えて、請求項2に係る発明では、加熱筒に左ブロック及び右ブロックを付設し、これらを冷媒で冷却するようにした。
左ブロック及び右ブロックは冷媒で強制冷却されるため、落下する樹脂材料が左ブロック及び右ブロックの箇所で加熱される心配はない。
【0018】
請求項3に係る発明では、ホッパ取付台に中間ブロックを一体化して、ホッパ取付ブロックにした。部品点数が低減できる。部品点数が少なくなることで、模様変え作業が容易になり、模様変え作業の迅速化が図れる。
【0021】
請求項4に係る発明では、左ブロック及び右ブロックと、その前方のヒータとの間に断熱板を設置した。
ヒータから左ブロック及び右ブロックへ向かう熱が、断熱板で遮断される。左ブロック及び右ブロックを冷却する冷媒がヒータからの熱で温められる心配はなく、冷媒の所要量を減らすことができる。
結果、熱硬化性の樹脂材料の温度管理が、より好ましく行われる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る熱硬化性樹脂用射出装置を含む射出成形装置の側面図である。
【
図2】
図1の2-2線断面図(ヒータ及びスクリューは省略)である。
【
図3】
図1の3-3線断面図(ヒータ及びスクリューは省略)である。
【
図4】本発明で使用する交換部品を説明する図である。
【
図5】蓋を加熱筒から外した形態を説明する図である。
【
図8】模様変えした後の熱硬化性樹脂用射出装置を含む射出成形装置の側面断面図である。
【
図9】模様変えした後の熱硬化性樹脂用射出装置の側面図である。
【
図10】模様変えした後の熱硬化性樹脂用射出装置を含む射出成形装置の側面断面図である。
【
図11】本発明の変更例で使用する交換部品の説明図である。
【
図15】ホッパが加熱筒に設けられている射出成形装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0024】
【0025】
図1に示すように、射出成形装置10は、型締装置11と、射出装置20と、型締装置11及び熱硬化性樹脂用射出装置20(以下、射出装置20と略記する。)を支えるベッド12とを主要部とする装置である。
型締装置11は、金型13を型締めする装置であり、作図の関係で一部(固定盤14)だけを示した。
【0026】
射出装置20は、ベッド12に敷設されたレール21に支持される移動台22で、水平移動可能に支持されている。例えば、移動台22と型締装置11側の固定盤14とに渡された射出装置移動シリンダ23によって、ノズル24が、金型13にタッチする位置から金型13から十分に離れた位置までの間、往復移動される。
射出装置移動シリンダ23は、液圧シリンダや電動シリンダが採用できる。
【0027】
射出装置20は、移動台22で支持される射出台40と、この射出台40で支持される加熱筒27と、この加熱筒27へ樹脂材料を供給するホッパ28と、加熱筒27に回転可能で且つ軸方向移動可能に収納されるスクリュー29と、射出台40に取付けられたスクリュー移動シリンダ31と、このスクリュー移動シリンダ31のピストンロッド32で支持される移動板33と、この移動板33で支持されスクリュー29を回転するスクリュー回転機構34とを備えている。
【0028】
ホッパ28は、この例では射出台40に設けたが、後述する
図15で説明するように加熱筒27に設けてもよい。
スクリュー移動シリンダ31は、液圧シリンダや電動シリンダが採用できる。
スクリュー回転機構34は、電動モータや油圧モータが採用できる。
【0029】
なお、スクリュー29とスクリュー回転機構34とは、中継軸35で連結されている。 中継軸35で連結することで、スクリュー29の長さを適正に保つ。射出台40に円筒軸受36を設け、この円筒軸受36で、回転自在に且つ軸方向移動可能に中継軸35が支えられる。
【0030】
さらには、加熱筒27には、射出台40と重なる部位に第1落下口37が設けられ、この第1落下口37よりノズル24に寄った部位に第2落下口としての後部第2落下口38が設けられ、この後部第2落下口38よりノズル24に寄った部位に第2落下口としての前部第2落下口39が設けられている。
【0031】
第2落下口は、後部第2落下口38のみ、又は前部第2落下口39のみであってもよい。又は、第2落下口は、3個以上であってもよい。
すなわち、加熱筒27は、ノズル24と第1落下口37との間に、熱硬化性樹脂材料を加熱筒27内へ落下させる第2落下口38、39を少なくとも1つ備えていることを構造的な特徴とする。
【0032】
スクリュー29には螺旋溝が設けられている。スクリュー29が前進限位置にあるとき、螺旋溝の先端から第1落下口37の中心までの距離をL1とし、螺旋溝の先端から後部第2落下口38の中心までの距離をL2とし、螺旋溝の先端から前部第2落下口39の中心までの距離をL3とする。
【0033】
なお、特許文献1では、熱硬化性樹脂のスクリューは、L/Dが8~14の範囲とされたが、本発明者らの研究では、熱硬化性樹脂に対して、L/Dの範囲は8~22の範囲がより好ましいことが分かった。
そこで、この例では、距離L1は、スクリュー29の外径の20倍とし、距離L2は、スクリュー29の外径の15倍とし、距離L3は、スクリュー29の外径の10倍に設定した。ただし、距離L1~L3は、適宜変更可能である。
【0034】
後部第2落下口38と前部第2落下口39とは、各々蓋41で塞がれている。そのうえで、加熱筒27に、ゾーン区分された第1ヒータ43、第2ヒータ44、第3ヒータ45が巻かれている。なお、第1ヒータ43~第3ヒータ45は、加熱筒27の基部側から先端に、この順に配置される。
【0035】
射出台40は、第1落下口37を囲う部位に第1冷媒通路46を備えている。第1冷媒通路46に水などの冷媒を流すことにより、ホッパ28から落下する樹脂材料が、事前に加熱されることを防止する。
【0036】
加熱・計量工程:スクリュー回転機構34でスクリュー29を所定方向へ回転しつつ、ホッパ28から加熱筒27へ樹脂材料を供給する。樹脂材料はスクリュー29の螺旋溝に沿ってノズル24近傍まで加熱筒27内を移動する。この移動の際に樹脂材料は所定温度まで加熱され、加熱された樹脂材料が加熱筒27の前部に溜まる。この溜まった樹脂材料の反力でスクリュー29は後退(ノズル24から離れるように移動)する。スクリュー29が所定位置まで後退すると、スクリュー29の回転を停止する。以上により、加熱と計量がなされる。
【0037】
射出工程:ノズル24を金型13にタッチした状態で、スクリュー移動シリンダ31により、スクリュー29を前進させる。この前進により、樹脂材料がノズル24を介して金型13へ射出される。
【0038】
次に、蓋41の形状を説明する。
図2に示すように、加熱筒27は厚肉の円筒である。
図3に示すように、蓋41は、加熱筒27の一部を切り取ったような形状のパーツである。蓋41は、ボルト42で加熱筒27に取付けられている。ボルト42の頭は蓋41から突出させない。突出させなければ、ヒータ(
図1、符号43~45)の取付けに支障がでない。
【0039】
次に、蓋41と交換する交換部品50を、
図4に基づいて説明する。
図4に示すように、交換部品50は、ホッパ取付台51と、このホッパ取付台51の前面(図面で表側の面。以下同じ)にビス52で取付けられる第2断熱板53と、ホッパ取付台51に上から挿入するボルト54と、ホッパ取付台51の下に配置される中間ブロック55と、この中間ブロック55に上から挿入するボルト56と、中間ブロック55の下に配置される第1断熱板57と、中間ブロック55の左下に配置される左ブロック58と、この左ブロック58に左から挿入するボルト59と、中間ブロック55の右下に配置される右ブロック61と、この右ブロック61に右から挿入するボルト62と、左ブロック59の前面にビス63で固定される第3断熱板64と、右ブロック61の前面にビス65で固定される第4断熱板66と、第1落下口(
図1、符号37)の上方開口を塞ぐ盲板67及びボルト68と、
図1に示す交換用ヒータ71とからなる。
【0040】
中間ブロック55がホッパ取付台51と別体であると、次に述べる利点がある。
第1に、中間ブロック55とホッパ取付台51の間にも、断熱板を挟むことができる。加熱筒からホッパ取付台51へ向かう熱をより強く遮断することができる。
【0041】
第2に、中間ブロック55とホッパ取付台51の材質を、異ならせることができる。
炭素鋼(0.5C)の熱伝導率は53W/mKであり、ステンレス鋼(SUS304)の熱伝導率は16W/mKである。
ホッパ取付台51を炭素鋼とし、中間ブロック55をSUS304とすることで、加熱筒27からホッパ取付台51に向かう伝熱量を低減することができ、ホッパ取付台51に供給する冷媒の所要量を低減することができる。
【0042】
交換用ヒータ71は、第2ヒータ44の軸長さの半分程度の軸長さの円筒ヒータである。
また、ホッパ取付台53は、水などの冷媒を流す第2冷媒通路72を有し、左ブロック58及び右ブロック61は、各々、冷媒を流す第3冷媒通路73を有している。
【0043】
以上に説明した交換部品50を、前部第2落下口(
図1、符号39)に取付ける手順を説明する。
【0044】
図1において、加熱筒27から第2ヒータ44を取り外す。第2ヒータ44は保管場所に移し、そこで保管する。射出台40からホッパ28を取り外す。
次に、
図5に示すように、ボルト42を外し、蓋41を外す。蓋41が外されると、平坦な受け面74が現れる。ボルト42及び蓋41は保管場所に移し、そこで保管する。
【0045】
次に、
図6及び
図7に示すように、受け面74に第1断熱板57を載せる。この第1断熱板57に中間ブロック55を載せ、この中間ブロック55及び第1断熱板57をボルト56で加熱筒27に固定する。
次に、中間ブロック55にホッパ取付台51を載せ、このホッパ取付台51をボルト54で中間ブロック55に固定する。
【0046】
図6に示すように、左ブロック58を加熱筒27に当て、ボルト59で固定する。右ブロック61を加熱筒27に当て、ボルト62で固定する。すなわち、加熱筒27の外周面において中間ブロック55で覆う面を除いた面を覆う左ブロック58及び右ブロック61を取付ける。結果、加熱筒の外周の殆どを、中間ブロック55と、左ブロック58と、右ブロック61で囲ったことになる。
【0047】
図7に示すように、第1断熱板57と中間ブロック55がボルト56で加熱筒27に固定され、このような中間ブロック55にボルト54でホッパ取付台51が固定されている。
ホッパ取付台51は、ボルト54を通すためのボルト穴の他に、ホッパ(
図1、符号28)を固定するボルトをねじ込むねじ穴75を必要個数(例えば、4個×2列=8個)備えている。
【0048】
図6において、加熱筒27の半径をR1とする。そして、加熱筒27の中心から中間ブロック55の上面までの高さH1は、半径R1と同じ又は半径R1より大きく設定する。これにより、上位のホッパ取付台51を
図6の表裏方向へ延ばすことができる。結果、小さな中間ブロック55に、オーバーハングするようにして、大きなホッパ取付台51を載せることができる。
【0049】
ホッパ取付台51の大きさ(平面積)はホッパ(
図1、符号28)によって定まる。一方、中間ブロック55の大きさは、比較的自由に定めることができる。
中間ブロック55が小さければ、蓋(
図5、符号41)の
図5表裏方向の長さを小さくすることができる。
【0050】
以上により、
図1に示す形態の射出装置20を、
図8に示す形態に模様替えすることができる。
すなわち、
図8に示すように、前部第2落下口39にホッパ28を臨ませる。第1落下口37の上方開口は盲板67で塞ぐ。ホッパ取付台51と第3ヒータ45との間に、交換用ヒータ71を被せる。これで、L/DがL3である射出装置20が得られた。
【0051】
図1と
図8とを、比較すると明らかなように、L1であったL/DをL3に替えるにあたり、スクリュー29、加熱筒27、射出台40、移動台22、射出装置移動シリンダ23、中継軸35などを、交換する必要はない。
結果、設備費用の高騰を抑制しつつ、1基で、小型、大型の2種類の成形品を射出成形することができる射出装置20が容易に得られる。
【0052】
図9に示すように、ホッパ取付台51の前面に第2断熱板53が取付けられている。交換用ヒータ71からホッパ取付台51に向かう熱は第2断熱板53で遮断される。
また、右ブロック61の前面に第4断熱板66が取り付けられている。交換用ヒータ71から右ブロック61に向かう熱は第4断熱板66で遮断される。右ブロック61の奥に配置される左ブロック(
図6、符号58)も同様である。
【0053】
結果、ホッパ28から落下する樹脂材料が加熱筒内に到達する前に加熱されることは無くなる。加えて、ホッパ取付台51と右ブロック61(及び奥の左ブロック)とに供給する冷媒の量を低減することができる。
【0054】
同様にして
図10に示すように、後部第2落下口38にホッパ28を臨ませる。第1落下口37の上部開口は盲板67で塞ぐ。ホッパ取付台51と第2ヒータ44との間に、交換用ヒータ71を被せる。これで、L/DがL2である射出装置20が得られた。
以上により、設備費用の高騰を抑制しつつ、1基で、小型、中型、大型の3種類の成形品を射出成形することができる射出装置20が容易に得られる。
【0055】
次に、本発明に係る変更例を説明する。
この変更例では、
図4において、別体であったホッパ取付台51と中間ブロック55とを一体化した。
【0056】
すなわち、
図11に示すように、ホッパ取付台(
図4、符号51)に、中間ブロック(
図4、符号55)を一体化して、1個のホッパ取付ブロック77とした。併せて、ボルト78は、十分な長さのロングボルトとした。その他は、
図4と同じであるため、
図4の符号を流用して、詳細な説明は省く。
【0057】
図12に示すように、加熱筒27の受け面74に第1断熱板57を載せ、この第1断熱板57にホッパ取付ブロック77を載せ、これらを長いボルト78で固定する。
この変更例では、
図4に示すボルト56が不要になり、且つホッパ取付台51と中間ブロック55との2部品が、1個のホッパ取付ブロック77になったため、部品点数の低減が図れる。部品点数が少なくなれば、交換部品50の交換作業が容易になり、作業時間が短くなると共に部品紛失のリスクが小さくなる。
【0058】
次に、さらなる変更例を、
図13及び
図14に基づいて、説明する。
図6において、ホッパ取付台51は第2冷媒通路72を有し、この第2冷媒通路72に水などの冷媒を流すことで、ホッパ取付台51の温度上昇が抑制され、ホッパ(
図1、符号28)から落下する樹脂材料が加熱されることはない。
加えて、加熱筒27に左ブロック58と、右ブロック61とを付設し、これらを強制冷却することにより、ホッパ取付台51の温度上昇がさらに抑制される。
【0059】
ただし、ホッパ取付台51の強制冷却のみで、ホッパ取付台51の温度上昇が許容範囲に収まるときには、左ブロック58及び右ブロック61は、省くことができる。省くことにより、ボルト59、62をも省くことができ、設備コストの低減を図ることができる。
すなわち、
図13に示すように、加熱筒27の受け面74に、第1断熱板57を載せ、その上に中間ブロック55を載せ、その上にホッパ取付台51を載せる。
【0060】
または、
図14に示すように、加熱筒27の受け面74に、第1断熱板57を載せ、その上にホッパ取付ブロック77を載せる。
【0061】
次に、ホッパ28が、加熱筒27に設けられている具体例を、
図15に基づいて説明する。
図15に示すように、第1落下口37は、射出台40の外に設けられている。そして、ホッパ28は、加熱筒27に直接的に設けられている。
図1と共通する構成要素には、
図1の符号を流用して詳細な説明は省略する。
【0062】
図15の構成であれば、第1落下口37の上に、ホッパ取付台51等を介して、ホッパ28を設けることができる。すなわち、第1落下口37の断面は、
図6、
図12、
図13又は
図14のような構成にすることができる。
【0063】
図15において、前部第2落下口39へホッパ28を移すときには、第2ヒータ44と交換用ヒータ71とを交換し、前部第2落下口39の蓋41と第1落下口37側のホッパ取付台51及びホッパ28を交換する。後部第2落下口38についても同様である。
【0064】
図1の構造では、
図4又は
図11で説明したような交換部品50は、非使用時に、保管しておく必要があり、保管コストが嵩む。
対して、
図15の構造であれば、
図4又は
図11で説明したような交換部品50は、第1落下口37と後部第2落下口38と前部第2落下口39との何れかに常設されているため、保管コストは発生しない。保管しないため、部品の紛失リスクが軽減される。
【0065】
尚、請求項1においては、蓋と交換する交換部品の内訳は、
図4や
図11に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、熱硬化性の樹脂材料を射出する射出装置に好適である。
【符号の説明】
【0067】
20…熱硬化性樹脂用射出装置(射出装置)、24…ノズル、27…加熱筒、28…ホッパ、29…スクリュー、37…第1落下口、38…第2落下口(後部第2落下口)、39…第2落下口(前部第2落下口)、40…射出台、41…蓋、43…ヒータ(第1ヒータ)、44…ヒータ(第2ヒータ)、45…ヒータ(第3ヒータ)、51…ホッパ取付台、53…第2断熱板、55…中間ブロック、57…第1断熱板、58…左ブロック、61…右ブロック、64…第3断熱板、66…第4断熱板、72…ホッパ取付台に設けた冷媒通路(第2冷媒通路)、73…左右ブロックに設けた冷媒通路(第3冷媒通路)、74…受け面、77…ホッパ取付ブロック。